説明

撥水・防汚性物品、それを用いて構成された建築用窓ガラス、車両用窓ガラス、ディスプレイ部材、光学部品

【課題】優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)を備えるとともに、これらの特性が長期にわたり持続する耐久性、耐摩耗性、耐傷性を有する撥水・防汚性物品を提供する。
【解決手段】基材上に、無機材料微粒子と有機材料系のバインダ組成物からなる下地膜が形成され、その後大気圧プラズマ処理にてバインダが除去されて形成された表面凹凸部および空隙内部に撥水・防汚材料が被覆或いは含浸された撥水・防汚膜を有することを特徴とする撥水・防汚性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)、防汚性を有し、かつ長期間にわたってその性能を維持できる高耐久の撥水性・防汚性物品と、それを用いて構成された建築用窓ガラス、車両用窓ガラス、ディスプレイ部材、光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた撥水性能を有す膜として、フルオロアルキル基シラン化合物とポリジメチルシロキサン(同誘導体)の混合物を加水分解して得られた溶液と、アルコキシシラン化合物を溶媒中で加水分解して得られた溶液を混合し、ガラス基板に塗布、乾燥し、約250℃で加熱して厚さ20〜200nmの被膜を形成して(例えば、特許文献1参照)いる。この膜は表面層にフルオロアルキルシラン成分が高濃度で規則的に偏析しその隙間をメチル基が埋めているため、表面接触角が大きく、水滴転落角は小さくなり良好な撥水膜を与えるとしている。しかしながら、特許文献1の記載にしたがって得られる撥水性膜では、自動車フロントガラスに要求されるようなワイパーによる摩耗に十分耐える事ができず耐摩耗性、耐久性が課題であった。
【0003】
ガラス基板上に、TEOS等の加水分解物にコロイダルシリカを添加して塗布し、約250℃で焼成して下地層を形成する。この上にフルオロアルキルシランの加水分解物にテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂の分散液を混合し、650℃加熱炉から取り出した下地膜つき基板上に吹き付けて、膜厚4〜1000nmの撥水膜を形成させ、耐摩耗性が向上できるとして(例えば、特許文献2参照)いる。しかしながら、特許文献2の記載にしたがって得られる撥水性膜では、ワイパーなどにより高速で往復摩擦を受ける事でコロイダルシリカによって形成された凹凸によって摩擦が増加して撥水膜の剥離が生じ、十分な耐摩耗性が得られない。また近年自動車のフロントガラスに採用されている合わせガラスのような樹脂フィルムを含有する基材に対しては加熱焼成できない為、適用できない。
【0004】
金属アルコキシドを添加したテトラアルコキシシランを加水分解して得られるゾル溶液と、アルキルトリアルコキシシランを加水分解して得られるゾル溶液との混合物を主成分として得られるコーティング液を基板表面に塗布し、加熱焼成して微細な凹凸状表層を有するゾルゲル膜を形成し、このゾルゲル膜上に撥水膜層を被覆形成する事で密着性、耐摩耗性が高く、長期的に性能が維持できる撥水膜が得られるとして(例えば、特許文献3、4参照)いる。しかしながら、特許文献3又は4の記載にしたがって得られる撥水性膜も、凹凸によって摩擦が増加する傾向にあるため自動車フロントガラスに要求されるような長期間の耐久性に耐えうるだけの耐摩耗性、耐傷性が十分ではなかった。
【0005】
珪素酸化物を主成分とする微小凹凸を有する下地膜を形成し、その上に機能性被膜を形成することで機能性被膜の耐久性を向上できるとしているが、(例えば、特許文献5参照)得られる撥水性膜も、上記同様の理由で耐摩耗性、耐傷性が十分ではなかった。
【特許文献1】特開平8−12375号公報
【特許文献2】特開平8−319137号公報
【特許文献3】特開平9−309745号公報
【特許文献4】特開2005−281132号公報
【特許文献5】特開2004−136630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)を備えるとともに、これらの特性が長期にわたり持続する耐久性、耐摩耗性、耐傷性を有する撥水・防汚性物品を提供することにある。また更に、自動車フロントガラスのように基材加工温度に制約がある場合でも被膜形成可能な低温被膜形成できる撥水・防汚性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0008】
1.基材上に、無機材料微粒子と有機材料系のバインダ組成物からなる下地膜が形成され、その後大気圧プラズマ処理にてバインダが除去されて形成された下地層の表面凹凸部および空隙内部に撥水・防汚材料が被覆或いは含浸された撥水・防汚膜を有することを特徴とする撥水・防汚性物品。
【0009】
2.前記下地層の表面に、オーバーコート膜として大気圧プラズマにて膜厚5nm以上50nm以下の金属元素含有酸化物薄膜を形成し、その後該金属元素含有酸化物薄膜上に撥水・防汚材料が被覆或いは含浸されていることを特徴とする前記1記載の撥水・防汚性物品。
【0010】
3.基材上に、下引膜として大気圧プラズマにて膜厚5nm以上50nm以下の金属元素含有酸化物薄膜が形成された下引膜含有基材を用いることを特徴とする前記1又は2記載の撥水・防汚性物品。
【0011】
4.前記金属元素含有酸化物薄膜が少なくとも珪素原子を含む酸化物薄膜であることを特徴とする前記2又は3記載の撥水・防汚性物品。
【0012】
5.前記下地層及び下引膜の形成が、基材温度15〜150℃で行われることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【0013】
6.前記撥水・防汚膜全体の膜厚が10nm以上200nm以下であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【0014】
7.前記撥水・防汚材料が被覆・含浸される前に1〜3種のカップリング剤で被覆或いは含浸することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【0015】
8.前記撥水・防汚材料が少なくともフッ素系樹脂もしくは含フッ素シリコーン樹脂と下記一般式(1)で示されるシリケート化合物とを含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、nは2以上の整数、R1は全てが異なるか少なくとも2つが同じでいずれも炭素数1〜1000の1価の有機基もしくは水素原子であって、該有機基は酸素原子、窒素原子および珪素原子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよく、該有機基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。)
9.前記基材が透明ガラス板、透明樹脂板、透明樹脂フィルムから選ばれる少なくとも1種であり、かつ、該基材の可視光領域の平均透過率が85%以上であることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【0018】
10.前記1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とする建築用窓ガラス。
【0019】
11.前記1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とする車両用窓ガラス。
【0020】
12.前記1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とするディスプレイ部材。
【0021】
13.前記1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とする光学部品。
【発明の効果】
【0022】
大気圧プラズマにより形成された無機材料を主体とする凹凸表面の下地層を骨格にしている為撥水・防汚膜全体としても高硬度の膜となり傷が入りづらく、また光学的に薄膜なので傷が目立ちにくくなり、耐摩耗・耐傷性に対して極めて優れた撥水・防汚性を維持できる撥水・防汚性物品を得た。また基材からの不純物による溶出を大気圧プラズマにより形成した金属元素含有酸化物薄膜によりパッシベートするため耐候性劣化を抑制できる撥水・防汚性物品を得た。更に、大気圧プラズマで形成された下引膜は撥水・防汚材料との密着性も高く、カップリング剤を設ける事で更に密着性が向上し、耐水性・耐薬品性にも強い膜が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を更に詳しく説明する。
【0024】
本発明の撥水性・防汚性物品は、大気圧プラズマ処理により基材上に密着性の高い凹凸形状および空隙構造を形成することで、その構造表面および内部にコートされた撥水剤・防汚剤を必要最小限だけ表面に露出させることが可能となった。これによって、従来法では不十分であった耐摩耗性、例えばワイパーなどによる高速・長期間の摩擦に対しても、強固で基材との密着性が極めて高い凹凸形状表面が撥水・防汚膜全体を保持し、その周囲に存在する撥水剤・防汚剤を保護できるため、摩耗に対して極めて高い耐久性を得ることが可能となった。
【0025】
また、上記凹凸形状の形成方法を大気圧プラズマ法を用いて行う事で、より密着性が高く、強固な下地層を得ることができ、さらにゾルゲル膜のように焼成時間を必要としない為15〜150℃の低温においても上記強固な下地層を形成できるようになった。
【0026】
≪無機材料微粒子≫
本発明の無機材料微粒子は、平均粒径(D1)が2〜100nmであり、撥水・防汚膜全体の膜厚が10nm以上200nm以下である。無機材料は、可視光での透過性(透明性)を有する無機化合物であれば特に制限はないが、金属元素含有酸化物、窒化物、酸窒化物などが利用できる。酸化物としては、例えば二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al23)、酸化錫(SnO2)、ジルコニア(ZrO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化インジウム(In23)などのセラミック材料が高い透過性と硬度の観点から好ましい。特に、二酸化珪素(SiO2)は材料が豊富で、安全性、コストの観点からもより好ましい。
【0027】
≪バインダ≫
本発明に係るバインダとしては、微粒子を分散させるのに使用することができるものであれば良く、一般にポリマーが使用される。ポリマーの例としては、ポリアルキレングリコール(例、ポリエチレングリコール)、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリブチラール、石油樹脂、ポリスチレン、繊維素系樹脂等を挙げることができる。
【0028】
アクリル樹脂としては、例えば、アルキルアクリレート(例、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート)及び/又はアルキルメタクリレート(例、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート)から得られる単独重合体又は共重合体を挙げることができる。またこれらのモノマーと、他の共重合可能なモノマーとの共重合体も挙げることができる。特に、光硬化時の反応性や硬化後の耐久性、透明性の点からポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。
【0029】
バインダとして界面活性剤を用いることもできる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の非イオン界面活性剤、或いは陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤を挙げることができる。前記ポリマーと界面活性剤を組み合わせて使用することもできる。
【0030】
本発明の上述した無機材料微粒子は、上記バインダの水溶液又は有機溶媒溶液に分散させて、後述する基材上に塗布する。塗布方法は公知の塗布液の塗布方法なら何れの方法であってもよい。例えば、グラビアコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、浸漬法、スプレーコーティング、フローコーティング、カーテンコーティング、スライドコーティング、押出コーティング、エアードクターコーティング、インクジェット法、等を挙げることができる。
【0031】
本発明で好ましく用いることのできる有機溶媒としては、炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチルなど)、グリコールエーテル類等が好ましく、これら溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合して利用できる。
【0032】
≪大気圧プラズマ法≫
次いで、本発明に適用可能な大気圧プラズマ処理装置の詳細について、図を交えて以下説明する。
【0033】
大気圧近傍でのプラズマ表面処理あるいはプラズマCVD処理を行う大気圧プラズマ処理装置は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がないため生産性を高められるだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために表面処理速度あるいは製膜速度が速く、更には通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて均質の膜が得られる。
【0034】
本発明でいう大気圧もしくはその近傍の圧力とは、20kPa〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93kPa〜104kPaが好ましい。
【0035】
また、本発明でいう励起したガスとは、エネルギーを得ることによって、ガス中の分子の少なくとも一部が、今ある状態からより高い状態へ移ることをいい、励起ガス分子、ラジカル化したガス分子、イオン化したガス分子を含むガスがこれに該当する。
【0036】
本発明に適用可能な大気圧プラズマ放電処理装置としては、特に制限はないが、大きく分けて、以下の2つの方式が挙げられる。
【0037】
1つの方法は、プラズマジェット型大気圧プラズマ放電処理装置といわれる方法で、対向電極間に高周波電圧を印加し、その対向電極間に放電ガスを含む混合ガスを供給して、該混合ガスをプラズマ化し、次いでプラズマ化した混合ガスにより表面処理(本発明においては、バインダを除去)する、又は所望の膜形成ガスとを会合、混合した後、透明基材上に吹き付ける方法である。
【0038】
他方の方法は、ダイレクト型大気圧プラズマ放電処理装置といわれる方法で、放電ガスを含む混合ガス、対向電極間に、透明基材を担持した状態で、その放電空間に上記ガスを導入し、対向電極間に高周波電圧を印加し所望の膜を形成する、又は表面処理(本発明においては、バインダを除去)する方法である。
【0039】
図1は、本発明に有用な2周波ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0040】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図1では図示してないが、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0041】
大気圧プラズマ放電処理装置110は、第1電極111と第2電極112から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極111からは第1電源121からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界が印加され、また第2電極112からは第2電源122からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界が印加されるようになっている。第1電源121は第2電源122より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加出来、また第1電源121の第1の周波数ω1は第2電源122の第2の周波数ω2より低い周波数を印加出来る。
【0042】
第1電極111と第1電源121との間には、第1フィルタ123が設置されており、第1電源121から第1電極111への電流を通過しやすくし、第2電源122からの電流をアースして、第2電源122から第1電源121への電流が通過しにくくなるように設計されている。
【0043】
また、第2電極112と第2電源122との間には、第2フィルタ124が設置されており、第2電源122から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源121からの電流をアースして、第1電源121から第2電源122への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0044】
第1電極111と第2電極112との対向電極間(放電空間)113に、ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極111と第2電極112から高周波電界を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置114付近で所望の膜を形成する、又はバインダを除去する。所望の膜を形成する、又は表面処理(バインダを除去)する間は、電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来る限り生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0045】
また、図1に高周波電界強度(印加電界強度)と放電開始電界強度の測定に使用する測定器を示した。125及び126は高周波電圧プローブであり、127及び128はオシロスコープである。
【0046】
図2は、本発明に適用可能なダイレクト型大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0047】
図2に示すダイレクト型大気圧プラズマ放電処理装置は、電源31に接続した2本の電極41が移動ステージ電極47に各々平行になるように併設されている。電極41及び47は、少なくとも一方を誘電体42で被覆されており、その電極41と47との間で形成された空間43に、電極31により高周波電圧が印加される様になっている。
【0048】
なお、電極41、移動ステージ47の内部は中空構造44になっており、放電中は水、オイルなどによって放電により発生する熱をとり、かつ安定な温度に保てるよう熱交換ができるようになっている。
【0049】
また、各ガス供給手段(不図示)により、放電に必要な放電ガスを含むガス22が、流路24を通って、所望の膜を形成する、又はバインダを除去するに必要なガスを含む混合ガス23は流路25を通り、混合空間45で合流、混合される。混合されたガスGは、電極41間を通り、電極41と47との間の空間43に供給され、空間43に高周波電圧が印加されるとプラズマ放電が発生し、ガスGはプラズマ化される。プラズマ化されたガスGにより、薄膜形成用ガスは活性化され化学的な反応を起こし、基材46上で所望の膜を形成する、又は表面処理(バインダを除去)される。
【0050】
基材が乗っているステージ47は、往復走査、もしくは連続走査が可能な構造を有しており、必要に応じて、基材の温度が保てる様に前記電極と同じような熱交換ができる構造になっている。
【0051】
また、基材46上に吹き付けられたガスを排気する廃ガス排気流路48を必要に応じて付けることもできる。これにより空間中に製膜される不要な副生成物を速やかに放電空間45上、あるいは基材46上から除去できる。
【0052】
また、特開2004−353077号公報に記載の様に、電極表面に汚れ防止フィルムなどを貼り合わせることにより、放電前に放電ガスと空隙層の形成に必要なガスを混合させる構造とすることもできる。
【0053】
また、図2に記載の装置では、高周波電源が1周波数帯で行っているが、例えば、特開2003−96569号公報に記載の方法のような各々の電極に異なる周波数の電源を設置する方式で実施することもできる。
【0054】
≪撥水剤・防汚剤≫
本発明の撥水・防汚性物品の撥水・防汚膜に含浸させる撥水・防汚材料としては、特に制限はなく、様々な撥水・防汚材料を適用することができ、例えば、有機系フッ素化合物、有機珪素化合物、含フッ素有機金属化合物等を挙げることができる。また、これらの各化合物は、溶液状態で直接撥水・防汚膜に付与しても、適当な溶媒中に微粒子の状態で分散して付与しても、あるいはポリマー化して付与しても良い。
【0055】
(有機系フッ素化合物)
本発明に適用可能な有機系フッ素化合物の一例としては、有機系フッ素化合物と共重合モノマーとを反応させたポリマーとして、撥水・防汚膜に付与することができる。
【0056】
有機系フッ素化合物ポリマーとしては、下記一般式(2)で表される側鎖を有するポリマーが好ましい。
【0057】
一般式(2)
CF3CF(X)(CF22
上記一般式(2)において、XはF、CF3またはCF2Clを表す。
【0058】
上記一般式(2)で表される側鎖をRf基としたとき、ポリマーを構成する1分子中に少なくともRf基を1個有するポリマーが好ましい。Rf基を有するポリマーの具体例としては、例えば、パーフルオロアルキルエチルアクリレート単独重合物、パーフルオロアルキルエチルメタクリレート単独重合物などのRf基を含有するモノマーの単独重合物、Rf基を含有する2種類以上のコモノマー同志の共重合物、1種類または2種類以上のRf基を含有するコモノマーと溶剤への溶解性や造膜性、耐候性、潤滑性などを付与する1種類以上のコモノマーとの共重合物などが用いられるが、特に限定されるものではない。Rf基を含有するコモノマーと、Rf基を含有しないコモノマーの共重合物を用いる場合、Rf基を含有するコモノマーの組成を減らしていくと撥水性が低下する傾向があり、ポリマー組成中のRf基を含有するコモノマーの組成を20質量%以上、好ましくは40質量%以上とすることが好ましい。
【0059】
Rf基を含有するモノマーとしては、Rf基を含有していれば、他の分岐した末端に塩素原子や水素原子を含んでいてもよいが、好ましくは直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基、またはパーフルオロエーテル基の末端としてRf基を含有するモノマーが好ましい。
【0060】
以下に、ポリマーの側鎖末端が前記一般式(2)で表される構造となり得るアクリレートやメタクリレートなどの不飽和エステル類を例示する。
【0061】
CF3(CF24CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF26(CH22OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF26COOCH=CH2
CF3(CF27(CH22OCOCH=CH2
CF3(CF27(CH22OCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF25(CH22OCOCH=CH2
CF3(CF27SO2N(C37)(CH22OCOCH=CH2
CF3(CF27(CH24OCOCH=CH2
CF3(CF27SO2N(CH3)(CH22OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF27SO2N(C25)(CH22OCOCH=CH2
CF3(CF27CONH(CH22OCOCH=CH2
(CF32CF(CF26(CH23OCOCH=CH2
(CF32CF(CF26CH2CH(OCOCH3)OCOC(CH3)=CH2
(CF32CF(CF26CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
CF3(CF28(CH22OCOCH=CH2
CF3(CF28(CH22OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF28CONH(CH22OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2Cl)CF(CF27CONHCOOCH=CH2
CH2=CHCOOC24OCOCF(CF3)(OC362OC49
CH2=CHCONHC24OCOCF(CF3)OC36OC49
CH2=C(CH3)CONHC24OCOCF(CF3)OC49
一般式(2)で表される側鎖を有するコモノマーと共重合することができるコモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、弗化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステル、ポリ(オキシアルキレン)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、アジリジニル(メタ)アクリレート、ポリシロキサンを有する(メタ)アクリレート、N−ビニルカルバゾール等を挙げることができる。ここで、(メタ)アクリルはメタアクリルとアクリルを、(メタ)アクリレートはメタアクリレートとアクリレートを、それぞれ意味する。
【0062】
また、本発明に適用可能な有機系フッ素化合物の一例としては、有機系フッ素化合物をポリイソシアネート化合物と反応させた反応物として、撥水・防汚膜に付与することができる。
【0063】
上記方法に適用できる有機フッ素系化合物としては、下記一般式(3)で表す化合物を挙げることができる。
【0064】
一般式(3)
f−Q−A
上記一般式(3)において、Rfは炭素数2〜20の1価の含フッ素有機基を表し、Qは単結合または2価の連結基を表し、Aはイソシアネート基と反応性の水素原子を有する基を表す。
【0065】
ここでいう「1価含フッ素有機基」とは、フッ素原子を1個以上を含む1価有機基を意味する。1価含フッ素有機基としては炭化水素基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基である「1価含フッ素炭化水素基」が好ましい。
【0066】
さらに1価含フッ素炭化水素基は、1価芳香族炭化水素基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された「1価含フッ素芳香族炭化水素基」、または1価脂肪族炭化水素基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された「1価含フッ素脂肪族炭化水素基」のいずれであってもよく、1価含フッ素脂肪族炭化水素基が好ましい。また1価含フッ素炭化水素基は、炭素−炭素結合間に1個以上のエーテル性酸素原子、またはチオエーテル性の硫黄原子が挿入されていてもよい。
【0067】
1価含フッ素炭化水素基の炭素数は2〜18が好ましく、特に4〜12が好ましい。また1価含フッ素芳香族炭化水素基の炭素数は6〜12が好ましく、特に6〜8が好ましい。
【0068】
一般式(3)におけるRfの具体例としては、以下の構造が挙げられる。なお以下の例においては、同一分子式を有する構造の異なる基である「構造異性の基」を含むものとする。C25−、C37−[CF3(CF22−、および(CF32CF−の両者を含む]、C49−[CF3(CF23−、(CF32CFCF2−、(CF33C−、CF3CF2CF(CF3)−を含む]、C511−[CF3(CF24−、(CF32CF(CF22−、(CF33CCF2−、CF3CF2CF(CF3)CF2−などの構造異性の基を含む]、C613−[CF3(CF22C(CF32−などの構造異性の基を含む]、C817−、C1021−、C1225−、C1531−、H(CF2t−(ここでtは2〜18の整数である)、(CF32CF(CsF2s−(ここでsは1〜15の整数である)。
【0069】
CF3(CF24OCF(CF3)−、F[CF(CF3)CF2O]sCF(CF3)CF2CF2−、F[CF(CF3)CF2O]tCF(CF3)−、F[CF(CF3)CF2O]uCF2CF2−、F[CF2CF2CF2O]vCF2CF2−、F[CF2CF2O]wCF2CF2−(ただしs、tは1〜10の整数、uは2〜6の整数、v、wは1〜11の整数である。)、C65−、C65CF=CF−、CH2=CHC610−、(Cpp+1)(Cqq+1)C=C(Crr+1)−(ただしp、q、およびrは、それぞれ0〜3の整数でありかつ(p+q+r)は2〜10の整数である。)。
【0070】
また、ペルフルオロアルキル基も用いることができる。ペルフルオロアルキル基は、例えば、C49−(CH22−、C49−(CH23−、C49−(CH24−、C511−(CH22−、C511−(CH23−、C613−(CH22−、C817−(CH22−、C817−(CH23−、C817−(CH24−、C919−(CH22−、C919−(CH23−、C1021−(CH22−。
【0071】
また、C49−(CH22−O−(CH23−、C613−(CH22−O−(CH23−、C817−(CH22−O−(CH23−、C817−(CH23−O−(CH23−、なども用いられる。
【0072】
前記一般式(3)におけるQは、単結合または2価連結基を示す。Qが単結合である場合、RfとAとは直接結合していることを意味する。Qが2価連結基である場合、Qはフッ素原子を含まない2価連結基が好ましい。Qは炭素数1〜22の2価炭化水素基、または、本発明の反応において不活性な原子を含む2価炭化水素基が好ましい。Qが不活性な原子を含む2価炭化水素基である場合、エーテル性の酸素原子またはチオエーテル性の硫黄原子を含む2価炭化水素基、またはイソシアネート基と反応性の水素原子が結合していない窒素原子を含む2価炭化水素基等が挙げられる。
【0073】
また、前記一般式(3)におけるAとしては、水酸基、アミノ基、アルキルアミノ基、またはカルボキシ基が好ましく、特に水酸基であることが、一般式(3)で表される化合の有機溶剤に対する溶解性、合成しやすさ、およびコストの点から好ましい。
【0074】
上記構成からなる一般式(3)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、下記例示化合物中のΦ1は1,4−フェニレン基または1,3−フェニレン基を示す。
【0075】
CF3(CF24CH2OH、CF3(CF25CH2CH2OH、H(CF26CH2CH2OH、CF3(CF27CH2CH2OH、CF3(CF29CH2CH2OH、(CF32CF(CF25CH2CH2OH、CF3(CF27SO2N(CH2CH3)CH2CH2OH、CF3(CF27SO2N(CH3)CH2CH2OH、CF3(CF27CONHCH2CH2OH、CF3(CF27CH2CH(OH)CH2OH、CF3(CF22C(CF3)=C[CF(CF32]OCH2CH2OH、(CF32C=C(CF2CF3)OΦ1COOCH2CH2OH、CF3(CF27SO2N(CH2CH3)CH2CH2NHCH3、CF3(CF27CONHCH2CH2NHCH3、CF3(CF27SO2N(CH2CH3)CH2CH2NHCH3、CF3(CF27SO2N(CH2CH3)CH2CH2COOH、CF3(CF27CONHCH2CH2COOH、CF3(CF27COOH、[(CF32CF]2C=C(CF3)OΦ1COOH。
【0076】
また、前記一般式(3)で表される化合物と共に用いるイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、それらの変成物(ヌレート化変成物、プレポリマー変成物、カルボジイミド変成物等)が挙げられ、また市販品としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型プレポリマーとして、デュラネートTHA−100(旭化成工業株式会社製)、デュラネートTPA−100(旭化成工業株式会社製)、スミジュールN3300(住友バイエルウレタン株式会社製)等を、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマーとして、デュラネート24A−100(旭化成工業株式会社製)、デュラネート22A−75PX(旭化成工業株式会社製)、スミジュールN3200(住友バイエルウレタン株式会社製)等を、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト型プレポリマーとして、デュラネートP−301−75E(旭化成工業株式会社製)、スミジュールHT(住友バイエルウレタン株式会社製)等を挙げることができる。
【0077】
上記、一般式(3)で表される含フッ素化合物を、ポリイソシアネート、水及び有機溶剤を含む溶液に添加、混合した溶液を、撥水・防汚膜上に塗布することで、本発明の撥水・防汚性物品を得ることができる。
【0078】
また、フッ素化オレフィン系重合体を使用することもできる。フッ素化オレフィン系重合体とは、フッ素化オレフィンモノマーを含む重合体をいい、有機溶剤に分散又は溶解するものである。その具体例として、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(エチレン・テトラフロロエチレン)共重合体、(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン)共重合体、(テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体、ポリフッ化ビニルエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、(エチレン・クロロトリフルオロエチレン)共重合体、(フッ化ビニルエーテル・テトラフロロエチレン)共重合体等を挙げることができる。これらは、旭ガラス(株)製「ルミフロン」、大日本インキ化学工業(株)製「フルオネート」、東亞合成(株)製「ザフロン」、ダイキン工業(株)製「ゼッフル」等の塗料用樹脂として販売されている。フッ素化オレフィン系重合体は1種の重合体のみを使用しても2種以上の重合体を併用しても良いが、他のアクリル系成分との相溶性、溶剤に対する溶解性等の加工性と耐雨垂れ汚染性を兼備するという点でフッ化ビニリデン系重合体を含有することが望ましい。
【0079】
一般式(1)で表される化合物と共に、上記一般式(2)或いは(3)を用いることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
【0080】
【化2】

【0081】
式中lおよびmは1〜30の正の整数を表す。これらのうち表面濃縮性、加水分解性、脱離性、入手の容易さの点から、以下の化合物を挙げることができる。
【0082】
【化3】

【0083】
市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフルGH−700などの含フッ素シリケート;三菱化学(株)製のMS57、MS56、MS56Sなどの非フッ素系シリケートなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
またフッ素樹脂とシロキサンがグラフト重合された撥水性樹脂も本発明においては好ましく使用することができ、市販品としては、富士化成工業(株)製のZXシリーズを用いる事ができる。
【0085】
これらの化合物は2種以上を併用してもよい。併用する組合せは目的に応じて適宜選択すればよいが、たとえばカップリング作用を有する有機化合物(カップリング剤)を併用することが好ましい。
【0086】
カップリング剤としては、たとえばメチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シランなどのシランカップリング剤があげられ、アルキルケトオキシム基またはイソシアネート基を含有するものが好ましい。特にリコート性が良好であることから、イソシアネート基またはエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0087】
≪金属元素含有酸化物薄膜≫
本発明の撥水・防汚性物品においては、撥水・防汚膜の表面に金属元素含有酸化物薄膜を設けることが好ましい。また、基材と撥水・防汚膜との間に金属元素含有酸化物薄膜からなる下引膜を設けることが、基材と撥水・防汚膜との密着性を高める観点、基材からの溶出物質のプロテクトの観点から好ましい。
【0088】
本発明に係る金属元素含有酸化物薄膜は、本発明に係る撥水・防汚膜の無機材料微粒子と同様の無機化合物、例えば、二酸化珪素(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化チタン(TiO2)、酸化インジウム(InO3)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta25)、ジルコニア(ZrO2)等のセラミック材料から構成されることが、高い透過性を得られる観点から好ましい。本発明では、精緻なセラミック層を形成する方法として、前述の撥水・防汚膜の形成に好ましく用いられる大気圧プラズマ法を、同様にして金属元素含有酸化物薄膜形成に適用することが好ましい。
【0089】
≪基材≫
本発明の撥水・防汚性物品に適用可能な基材としては、透明性に優れた基材であることが好ましく、透明ガラス基材などの無機質の透明基材やプラスチック基材などの有機質の透明樹脂基材が挙げられる。
【0090】
透明樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、あるいはこれらの樹脂とシリカなどとの有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0091】
本発明においては、本発明の撥水・防汚性、滑水性や耐久性等の優れた特性を付与できる観点から、基材が透明ガラス基材であり、かつ最終的な撥水・防汚性物品として、可視光領域における平均透過率が、85%以上であることが、建築用窓ガラスあるいは車両用窓ガラスに適用した際に、優れた透明性を得ることができる観点から好ましい。
【0092】
本発明でいう可視光領域における平均透過率とは、400〜700nmまでの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。各測定波長における透過率は、従来公知の測定機器を用いることができ、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いて測定することにより、求めることができる。
【0093】
本発明に適用可能なガラス基材としては、表面に官能基(水酸基、アミノ基、チオール基など)を有する無機ガラスや有機ガラス、ソーダライムシリケートガラス基材などのアルカリ含有ガラス基材や、ホウケイ酸ガラス基材などの無アルカリガラス基材等を挙げることができる。また、ガラス基材は、合わせガラス、強化ガラスなどであってもよい。
【実施例】
【0094】
≪下地膜の形成≫
(下地膜)
日産化学工業社製コロイダルシリカ微粒子(一次粒径:4〜6nm)をポリエチレングリコールを20質量%で含む水とアセチルアセトン(容量比:20/1)中に分散させ、0.5質量%のシリカ分散液を得た。予めアセトンで脱脂洗浄し、下記に示す大気圧プラズマ表面処理により表面の汚染物質を除去クリーニングした3mm厚みソーダライムガラス(オプトン社製)基材を用い、該基材上に上記分散液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で30分間乾燥させ、厚さ0.05μmのシリカ微粒子含有塗布膜を形成して下地膜とした。
【0095】
(下引き膜付き下地膜)
下記に示す大気圧プラズマCVD処理を用いてソーダライムガラス基材上にSiO2膜が3nm、5nm、30nm、50nm、75nm、100nmとなるように形成し、それぞれのSiO2下引き膜付きガラス基材上に上記下地膜と同様にしてシリカ微粒子含有塗布膜を形成して下引き膜付き下地膜とした。
【0096】
≪下地層の形成≫
(下地層)
前記下地膜および下引き膜付き下地膜を下記に示す大気圧プラズマ表面処理を用いて10sec間表面処理を行い、表面に凹凸を有する下地層を形成した。
【0097】
(オーバーコート膜)
下記に示す大気圧プラズマCVD処理を用いて、前記下地層表面にSiO2膜が3nm、5nm、30nm、50nm、75nm、100nmとなるように形成し、オーバーコート膜付き下地層を形成した。
【0098】
(大気圧プラズマ表面処理)
図1に記載のジェット方式大気圧プラズマ放電処理装置を用いて以下の条件により、下地膜が形成されたガラス基材あるいは下引き膜付き下地膜が形成されたガラス基材の表面にプラズマを照射して下地層を形成した。
【0099】
<電源条件>
高周波側:パール工業社製高周波電源(13.56MHz) 6W/cm2
低周波側:SEREN社製高周波電源(100kHz) 5W/cm2
<電極条件>
板状電極(長さ50mm)は金属母材とその表面に厚み1mmのセラミックが溶射された2枚の電極を用いた。2枚の電極間のgapは1mmに設定し、それぞれの電極は冷却用の水(25℃)を通水して放電を行った。
【0100】
<ガス条件>
放電ガス;窒素ガス 2slm/cm
反応ガス;酸素ガス 0.1slm/cm
※slm/cm・・・Standard Liter per Minute/単位ガス供給巾(cm)
標準状態:25℃、1atm(1.01325×105)で1分間に供給するガスの流量(L単位)
<処理時間>
被処理物が放電に晒される累計時間が10sec間となるように基材を往復搬送させて表面処理を行った。
【0101】
(大気圧プラズマCVD処理)
図2に記載のダイレクト方式大気圧プラズマ放電処理装置を用いて以下の条件により、下引き膜あるいはオーバーコート膜を形成した。
【0102】
<電源条件>
高周波側:パール工業社製高周波電源(13.56MHz) 8W/cm2
低周波側:SEREN社製高周波電源(100kHz) 6W/cm2
<電極条件>
30mm角型の棒状電極2本と基板を固定する板状電極を用いる。棒状電極および板状電極は母材はステンレス(SUS304)であるが、表面に厚み1mmでセラミックが溶射されている。棒状電極と基材表面との距離(放電ギャップ)を1mmにし、電極内部には冷却用の冷媒(水)を温度25℃で通水して放電を行った。
【0103】
<ガス条件>
原料ガスとしてTEOS(テトラエトキシシラン)をバブリングにより気化させて放電空間に供給し、プラズマのエネルギーによる分解反応を利用して基材表面にSiO2膜を形成させた。
【0104】
放電ガス;窒素ガス 2slm/cm
反応ガス;酸素ガス 0.1slm/cm
薄膜形成用ガス; 500mlガラス製バブリング容器にTEOS原材料を200ml準備し、25℃に保温する。気化したTEOSを放電空間に供給する為のキャリアガスとして窒素ガス0.1slm/cmを供給する。
【0105】
≪カップリング剤の形成≫
GE東芝シリコン(株)製アミノ系シランカップリング剤TSL8331をIPAで1%に希釈し、カップリング剤を調製した。
【0106】
(コーティング)
バーコーターを用いて、各種基材上の乾燥膜厚が0.01μmとなるように塗布した。
【0107】
≪撥水・防汚材料の形成≫
(撥水・防汚材料−1の調製)
富士化成工業(株)製フッ素樹脂材料ZX−007Cと日本ポリウレタン工業(株)製硬化剤コロネートHXをNCOと水酸基価(OH)の比が1.2:1の割合で混合し、室温で十分に攪拌した後、固形分濃度が1%となるようMEK溶媒で希釈し、撥水・防汚材料−1を調製した。
【0108】
(撥水・防汚材料−2の調製)
(シリケート材料の調製)
三菱化学(株)製シリケートMSH−4主剤液に脱イオン水を7質量%で加え、60℃に保温しながら攪拌して加水分解反応させて熟成し、シリケート液を作製した。
【0109】
上記シリケート液と、富士化成工業(株)製フッ素樹脂材料ZX−022−H(不揮発成分45%)と、希釈溶媒IPAを、各々 70:13.3:16.7 の比率で加え、60℃に保温しながら攪拌して熟成し、フッ素樹脂シリケート混合溶液を作製した。上記フッ素樹脂シリケート混合溶液を固形分濃度1%となるようにMEK溶媒で希釈し、撥水・防汚材料−2を調製した。
【0110】
(コーティング)
上記撥水・防汚材料−1および2に対してバーコーターを用いて各々の下地層付き基材表面に乾燥膜厚が0.05μmとなるように塗布し、表1に示す実施例1〜20及び比較例1、2の撥水・防汚性物品を作製した。それぞれの特徴を以下に示す。
【0111】
実施例1
ガラス基材上に下地層のみ形成、その後撥水・防汚材料−1をコートした、
比較例1
下地層なしで撥水・防汚材料−1のみコートした、
実施例2〜5
ガラス基材上に下引膜(膜厚違い)をコートした、
実施例6、7
同じく下引膜をコートした、但し膜厚が厚過ぎる、
比較例2
ガラス基材上に下引き膜(50nm)をコートし、下地層を形成させることなく、撥水・防汚材料−1をコートした、
実施例8〜11
下地層上にオーバーコート塗布した、
実施例12、13
同じくオーバーコート塗布した、但し膜厚が厚過ぎる、
実施例14〜16
下引き膜およびオーバーコート共にあり、
実施例17
同じく下引膜とオーバーコートあり。但し膜厚が厚過ぎる、
実施例18
シランカップリング剤がない、
実施例19、20
撥水・防汚材料−1を撥水・防汚材料−2に変更した。
【0112】
【表1】

【0113】
評価方法
≪初期の撥水性:水の静的接触角測定≫
撥水・防汚性物品の表面に3μLの水を滴下し、接触角測定器(協和界面科学(株)製接触角計CA−DT)を用いて滴下から15sec後の静的接触角を測定し、以下の基準で評価して初期の撥水性評価とした。
◎ 静的接触角が、110°以上
○ 静的接触角が、100°以上110°未満
△ 静的接触角が、90°以上100°未満
× 静的接触角が、90°未満。
【0114】
≪初期滑落性:水の転落角測定≫
撥水・防汚性物品の表面に50μLの水を滴下し、接触角測定器(協和界面科学(株)製接触角計CA−DT)の撥水・防汚性物品を保持しているステージの角度を0°(水平)から90°(鉛直)方向に徐々に傾斜させ、水滴が撥水・防汚性物品を移動し始める角度を測定し、以下の基準で評価して初期の滑落性評価とした。
◎ 転落角が、10°未満
○ 転落角が、10°以上20°未満
△ 転落角が、20°以上30°未満
× 転落角が、30°以上。
≪防汚性試験≫
マジックインキのはじきおよび拭き取り性
油性マジック(ZEBURAマッキー太字)を用いて撥水・防汚性物品の表面に6×50mmの線を引き、マジックインキのはじき度合いおよび拭き取り性の状態から以下の基準で評価し防汚性評価の一つとした。
◎ マジックインキが点状にはじく
○ インキが線状に書けるが、ティッシュで拭くと容易に(5回以内)拭き取れる
△ インキが書け、拭き取るのにティッシュで5回以上拭かなければならない
× インキが書け、ティッシュで拭いても拭き取りづらく、跡が残る事がある。
【0115】
≪指紋の拭き取り易さ≫
撥水・防汚性物品の表面に5〜10秒間人差し指を押し当て、ティッシュで指紋を拭き取ったときの指紋の拭き取り性から以下の基準で評価し防汚性評価の一つとした。
○ 指紋を軽く拭き取る事ができる
△ 指紋は拭き取りづらいが跡が残らない
× 指紋は拭き取りづらく、跡が残る事がある。
【0116】
≪耐摩耗性試験≫
耐摩耗性試験として、往復摩耗試験機(新東科学(株)製HEIDON−14DR)に摩耗材としてフェルト(0.63g/cm3)を取り付け、荷重600g/cm2の条件で各撥水・防汚性物品の表面を速度100mm/secで10000回往復摺動させた。その際、5000回往復終了時にフェルト摩耗材を新しいものに取替え、引き続き5000回の往復摺動を行うことで計10000回の往復摺動を行った。10000回終了時の撥水性および滑落性を上記評価基準で評価して耐摩耗性評価とした。
【0117】
≪耐傷性試験≫
耐傷性試験として、撥水・防汚性物品の表面を#0000のスチールウールに400gf/cm2の荷重を掛けて、ストローク幅100mm、速度100mm/secで10回往復摩擦した後の傷の様子を目視および顕微鏡(KEYENCE(株)製デジタルマイクロスコープVHX−600)で観察し、以下の基準で評価して、耐傷性の評価とした。
【0118】
≪傷の目立ち易さ≫
◎ 目視において傷は全く見えず、顕微鏡観察しても傷は確認できない
○ 目視において傷は全く見えないが、顕微鏡観察すると傷は確認できる
△ 目視でも僅かに傷が見え、顕微鏡観察すると傷多数が見える
× 目視で明らかに傷多数が見える。
【0119】
≪テーバー試験≫
テーバー摩耗試験機において、撥水・防汚性物品の表面を摩耗輪CS−10Fを用い4.9Nの荷重条件で回転速度60rpmのもと合計1000回転摩耗試験を行い、1000回転摩耗する過程において最も高い値を示したヘイズ値を計測して、以下の基準で評価して、テーバー試験の評価とした。
ΔH=(テーバー試験時の最大ヘイズ値)−(テーバー試験前のヘイズ値)
◎ ΔHが、0.3未満
○ ΔHが、0.3以上1.0未満
△ ΔHが、1.0以上2.0未満
× ΔHが、2.0以上。
【0120】
≪耐候性試験≫
耐候性試験として、耐紫外線試験機(岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスターW−13)を用いて、各撥水・防汚性物品の表面に、波長340nm、強度0.6W/cm2の紫外線を、ブラックパネル温度48±2℃の条件で、照射時間20時間+暗黒4時間のサイクルで、1時間毎に30秒間イオン交換水シャワーリングし、合計400時間の紫外線照射を行った。この試験後、撥水・防汚性物品表面に対し、上記の撥水性評価(初期の撥水性)および防汚性評価(マジックインキのはじき・拭き取り性)を行い、以下の基準に従い評価し、耐候性試験の評価とした。
◎ 静的接触角が100°以上
○ 静的接触角が90°以上100°未満
△ 静的接触角が80°以上90°未満
× 静的接触角が80°未満。
【0121】
≪耐温水性≫
耐温水性試験として、各撥水・防汚性物品を50℃のイオン交換水に500時間浸漬させ、取り出して乾燥させた後、水接触角を測定し、以下の基準に従い評価し、耐温水性試験とした。
○ 静的接触角が90°以上
△ 静的接触角が80°以上90°未満
× 静的接触角が80°未満
≪耐薬品性≫
耐薬品性試験として、各撥水・防汚性物品を1.0M/lのNaOH水溶液に1時間浸漬させ、水洗・乾燥させた後、水接触角を測定し、以下の基準に従い評価し、耐薬品性試験とした。
○ 静的接触角が90°以上
△ 静的接触角が80°以上90°未満
× 静的接触角が80°未満。
【0122】
≪光学特性≫
≪透過率≫
撥水・防汚性物品について、積分球式光線透過率測定装置(スガ試験機(株)製HGM−2DP)を用いて可視光領域の平均透過率を測定し、以下の基準で評価し、透過率の評価とした。可視光領域とは、波長400〜720nmとしている。
◎ 可視光領域の平均透過率が90%以上
○ 可視光領域の平均透過率が85%以上90%未満
△ 可視光領域の平均透過率が80%以上85%未満
× 可視光領域の平均透過率が80%未満。
【0123】
≪ヘイズ≫
撥水・防汚性物品および撥水性・防汚性膜を形成する前の基材について、積分球式光線透過率測定装置(スガ試験機(株)製HGM−2DP)を用いてヘイズ値を測定し、下式にしたがって膜形成によるヘイズ値の増加ΔHを求め、下記の基準で評価してヘイズの評価とした。
ΔH=(撥水・防汚性物品のヘイズ値)−(膜形成する前の基材のみのヘイズ値)
◎ ΔHが、0.3未満
○ ΔHが、0.3以上1.0未満
△ ΔHが、1.0以上2.0未満
× ΔHが、2.0以上。
【0124】
≪防汚性試験≫
マジックインキのはじきおよび拭き取り性
油性マジック(ZEBURAマッキー太字)を用いて撥水・防汚性物品の表面に6×50mmの線を引き、マジックインキのはじき度合いおよび拭き取り性の状態から以下の基準で評価し防汚性評価の一つとした。
◎ マジックインキが点状にはじく
○ インキが線状に書けるが、ティッシュで拭くと容易に(5回以内)拭き取れる
△ インキが書け、拭き取るのにティッシュで5回以上拭かなければならない
× インキが書け、ティッシュで拭いても拭き取りづらく、跡が残る事がある。
【0125】
≪指紋の拭き取り易さ≫
撥水・防汚性物品の表面に5〜10秒間人差し指を押し当て、ティッシュで指紋を拭き取ったときの指紋の拭き取り性から以下の基準で評価し防汚性評価の一つとした。
○ 指紋を軽く拭き取る事ができる
△ 指紋は拭き取りづらいが跡が残らない
× 指紋は拭き取りづらく、跡が残る事がある。
【0126】
【表2】

【0127】
表2から本発明の試料はいずれも、優れた撥水性、滑落性(水滴転落性)を備えるとともに、これらの特性が長期にわたり持続する耐久性、耐摩耗性、耐傷性を有することが判る。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明に有用な2周波ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明に適用可能なダイレクト型大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0129】
21、110 大気圧プラズマ放電処理装置
22、G、G° ガス
23 混合ガス
31 電源
31a、31b 高周波電源
41a、41b 電極
42 誘電体
43 放電空間
46、F 基材
47 移動ステージ、移動ステージ電極
111 第1電極
112 第2電極
121 第1電源
122 第2電源
123 第1フィルタ
124 第2フィルタ
126 高周波電圧プローグ
127、128 オシロスコープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、無機材料微粒子と有機材料系のバインダ組成物からなる下地膜が形成され、その後大気圧プラズマ処理にてバインダが除去されて形成された下地層の表面凹凸部および空隙内部に撥水・防汚材料が被覆或いは含浸された撥水・防汚膜を有することを特徴とする撥水・防汚性物品。
【請求項2】
前記下地層の表面に、オーバーコート膜として大気圧プラズマにて膜厚5nm以上50nm以下の金属元素含有酸化物薄膜を形成し、その後該金属元素含有酸化物薄膜上に撥水・防汚材料が被覆或いは含浸されていることを特徴とする請求項1記載の撥水・防汚性物品。
【請求項3】
基材上に、下引膜として大気圧プラズマにて膜厚5nm以上50nm以下の金属元素含有酸化物薄膜が形成された下引膜含有基材を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の撥水・防汚性物品。
【請求項4】
前記金属元素含有酸化物薄膜が少なくとも珪素原子を含む酸化物薄膜であることを特徴とする請求項2又は3記載の撥水・防汚性物品。
【請求項5】
前記下地層及び下引膜の形成が、基材温度15〜150℃で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【請求項6】
前記撥水・防汚膜全体の膜厚が10nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【請求項7】
前記撥水・防汚材料が被覆・含浸される前に1〜3種のカップリング剤で被覆或いは含浸することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【請求項8】
前記撥水・防汚材料が少なくともフッ素系樹脂もしくは含フッ素シリコーン樹脂と下記一般式(1)で示されるシリケート化合物とを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【化1】

(式中、nは2以上の整数、R1は全てが異なるか少なくとも2つが同じでいずれも炭素数1〜1000の1価の有機基もしくは水素原子であって、該有機基は酸素原子、窒素原子および珪素原子から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよく、該有機基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。)
【請求項9】
前記基材が透明ガラス板、透明樹脂板、透明樹脂フィルムから選ばれる少なくとも1種であり、かつ、該基材の可視光領域の平均透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とする建築用窓ガラス。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とする車両用窓ガラス。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とするディスプレイ部材。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項記載の撥水・防汚性物品を用いて構成されることを特徴とする光学部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−120727(P2009−120727A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296450(P2007−296450)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】