説明

撥水剤及び撥水加工法

【課題】 工業的に有利にかつ、環境にやさしく、安価で、耐久性に優れた高度の撥水性を有する繊維製品に加工生産する。
【解決手段】 繊維製品を、水性ポリウレタン界面活性剤の存在下にエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体、及びフッ素系水性分散体を処理することで、環境に重大な悪影響をおよぼすフッ素の使用量を減らすことで、環境にやさしく、安価で、耐久性に優れた、繊維製品に対する撥水加工を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製品の撥水加工法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、衣料分野においては、実用性と共にファッション性の観点から、撥水性に優れた繊維製品の開発が強く望まれている。従来より高度な撥水性を示す加工剤としてパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系水性分散体が大量に使用されている。
【0003】
しかし、原材料の高騰及びパーフルオロアルキル基を使用したフッ素系水性分散体の環境汚染が懸念されており、それに変わる安価で、耐久性に優れた撥水剤及び撥水加工法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、パーフルオロアルキル基を使用したフッ素系水性分散体に変わる撥水剤と撥水加工の手段について種々検討を重ねた結果、本発明に到達した。本発明は、繊維製品の様々な要求に対する耐久性に優れた撥水剤及び撥水加工方法を提供する物である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、繊維製品を、撥水性に優れた最終製品に仕上げるための工業的に有利かつ安価な撥水剤及び撥水加工法を開発することを目的に鋭意検討を重ねた結果、今回、水性ポリウレタン界面活性剤の存在下にエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体及びフッ素系水性分散体を処理剤として処理することにより、上記目的を達成出来ることを見いだし、本発明を開発するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば、繊維製品を、水性ポリウレタン界面活性剤の存在下にエポシキ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合されて得られる水性分散体、フッ素系水性分散体により処理することを特徴とする繊維製品の撥水加工法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明に使用する水性ポリウレタン界面活性剤(A)の存在下にエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水分散体(B)、及びフッ素系水分散体(C)は、以下に示すような構造を有する。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
本発明で使用するポリウレタン界面活性剤(A)の主鎖原料(P)としては、ポリエーテル化合物を使用することができる。
【0012】
2個以上の活性水素基含有化合物(Y)としてはアミン類が挙げられ、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン等が、それぞれ挙げられる。
【0013】
イソシアネート化合物(X)としては、トリレンジイソシアネート、ポリフェニルポリメチルポリイソシアネートで代表されるイソシアネート化合物が挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体(B)としてはラジカル重合性化合物が用いられ、例えばアクリル酸、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、n−ブチルメタアクリレート、n−ヘキシルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、シリコーンマクロモノマーメタアクリレート等のα・β不飽和カルボン酸及びそのエステルまたはスチレン等α・β不飽和エチレンを持つアリール化合物が主として用いられる。
【0015】
それに、エポキシ基を付加したラジカル重合性化合物として、グリシジルメタアクリレート等が副成分として用いられる。
【0016】
上述のエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水分散体(B)をラジカル乳化重合させる際に用いられる重合触媒としては、2,2‘−アゾビス(2−アミノジノプロパン)ハイドロクロリド、アゾビスジクロヘキサンカルボニトリル等のアゾビス系開始剤等が好ましい代表例である。
【0017】
本発明に使用される、フッ素系水分散体(C)は、一般に、フッ素系撥水撥油剤として知られるフッ素系重合体が包含される。
【0018】
本発明において(A)及び(B)、(C)の三つの異なる樹脂成分の共存が撥水性の向上に著しい効果を発現するのは、次のように考えられる。フッ素系水分散体(C)は極性がきわめて低く、極性の高い水などの分子を遠ざけようとする。
【0019】
この性質を利用して、極性のある水性ポリウレタン界面活性剤(A)の存在下にエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水分散体(B)と(C)を適量混合する事により。繊維製品への加工時に(C)が、ブロック化され繊維上に効果的に撥水性を発揮されるように配列する。
【0020】
また、本発明では、(A)及び(B)、(C)、の各必須成分以外に、反応性官能基の架橋剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0021】
必須成分(A)及び(B)、(C)、と架橋剤の配合は、充分注意をはらった上で作業することが必要で、特にカチオン性物質とアニオン性物質の混合を浴安定性の点から避けなければならない。
【0022】
これらの樹脂等配合液の加工方法は、繊維製品を処理液に浸漬又は、パディング法で付与するのが好ましく付与後乾燥・熱処理を行う。
【0023】
乾燥は、110〜150℃で数分間水分を除去する程度に行い、熱処理は、140〜170℃で数分間が好ましい。乾燥・熱処理は、両者をかねて行うことも出来る。
【0024】
本発明においては、(A)及び(B)、(C)、の各必須成分の合計総付着量は、繊維重量に対して0.5〜20重量%owfが好ましい。
【0025】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、かかる製造例及び実施例に制約されるものではない。
【0026】
なお、以下の実施例中において%、部とあるのはいずれも重量基準である。
【実施例1】
【0027】
ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール(水酸基価54.8)204.7部とメチルエチレンケトン102.6部及び2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートと2,4−トリレンジイソシアネートの80:20の混合物34.8部を攪拌機と温度計のついた丸底フラスコに入れ、80℃にて3時間反応させて、2.45%の遊離のイソシアネート基を含むウレタンポリマー溶液を得た。
【0028】
別のフラスコに、268.2部のメチルエチルケトンと4.73部のジエチレントリアミンをいれて均一に混合し、これらに上記のウレタンプレポリマー溶液133.9部を2時間要して滴下ロートから徐々に加えて50℃で10分間反応し、ポリウレタン尿素ポリアミン溶液を得た。
【0029】
次いで5.05部のエピクロルヒドリンと36.6部のイオン交換水を混合したものを366.1部のポリウレタン尿素ポリアミンに加えて、50℃で1時間反応し、続いて70%グリコール酸水溶液5.8部とイオン交換水300部を加えて、減圧下に、メチルエチルケトンを留去し、イオン交換水を加えて濃度を調節し、樹脂分30%の均一で安定な低粘度の水性ポリウレタン界面活性剤を得た。
【0030】
丸底フラスコに合成した水性ポリウレタン界面活性剤を15部、メタクリル酸10部、メチルメタクリレート30部、2−エトキシエチルアクリレート10部、グリシジルメタクリレート10部、シリコーンマクロモノマーメタアクリレート10部、スチレン30部、及びイオン交換水885部を攪拌混合し2,2‘−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロリド0.5部を加え、液温70℃まで1時間掛け昇温しさらにその後3時間熟成し乳化重合を終えた。
【0031】
コットン繊維を、合成したエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体5.0%、アサヒガートAG−955(旭硝子(株)製)5.0%に調整し、上記布の10倍量の処理液に漬けた。
【0032】
布を取り出しマングルにてピックアップ率100%で絞り、120℃の温風乾燥機にて3分間乾燥を行った。さらに160℃の温風乾燥機にて2分間熱処理を行った。
【実施例2】
【0033】
実施例1と同様にポリエステル繊維を、実施例1と同様に合成したエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体5.0%、アサヒガートAG−E082(旭硝子(株)製)5.0%に調整し、上記布の10倍量の処理液に漬けた。
【0034】
布を取り出しマングルにてピックアップ率100%で絞り、120℃の温風乾燥機にて1分間乾燥を行った。さらに170℃の温風乾燥機にて1分間熱処理を行った。
【0035】
撥水試験は, JIS−K6404−8法に基づいてスプレーテスターを使用して試験を行った。
【0036】
洗濯耐久性を試験するために、家庭洗濯JIS−L0217法に基づいて洗濯試験を行った。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品を、水性ポリウレタン界面活性剤の存在下にエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体及びフッ素系水性分散体を処理することを特徴とする繊維製品の撥水加工法。
【請求項2】
上記加工法において、上記処理液を、繊維製品に浸漬する行程と、処理液を相互に架橋反応行わせそして繊維に固着を行わせるための加熱処理する工程を含むことを特徴とする繊維製品の撥水加工法。
【請求項3】
上記加工法において使用される、水性ポリウレタン界面活性剤の存在下にエポキシ基を持つエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる水性分散体からなる撥水剤。