説明

撥水性ジッパーアセンブリ

【課題】スライダーと収納部との間の嵌合を改良して撥水性を向上させることができ、頭部突合せ形態で配設されたスライダーの撥水性を向上させることができる撥水性ジッパーアセンブリを提供する。
【解決手段】撥水性のスライダーキャップ30及びジッパーの構造。スライダー16の周辺へ流入する水の量を減少させるように、スライダー16を収容する雄型スライダーキャップ30が設けられる。雄型スライダーキャップ30の内面とスナップタブ34とにより画定される雄型スライダーキャップ30のポケット45に、スライダー16のプルタブ17が挿入される。他の実施形態では、ジッパーテープに装着された収納部が追加で設けられる。収納部は、雄型スライダーキャップ30を収容して、スライダー16の周辺及び収納部へ流入する水の量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、改良型の撥水性ジッパー及びジッパー構造を設けるようにジッパーのスライダーにスナップ止めされるスライダーキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
ジッパーを含む物品は湿潤条件に露出されることがあるため、ジッパーの開放スペース又は隙間に水が浸入する。例えば、雨や雪にさらされるか、さもなければ水に濡れる環境(船上又は水の近くなど)で使用されるスーツケース、他のタイプのバッグ、外衣、ジャケットにジッパーが設けられることがある。このような環境では、水がジッパーに浸入してジッパーの下の表面に漏出する。スーツケース及び/又はバッグの中身が濡れてダメージを受け、外衣を着用している人は不快で肌寒さを感じる。
【0003】
ジッパーの歯及び/又はジッパーテープの間に浸透する水の量を減少させる撥水性ジッパーは、周知である。このようなジッパーは、ジッパーテープ又は特殊形状の歯にポリウレタンラミネーションを含み、ともにジッパーへの浸水を減少させるバリヤとなる。しかし、ジッパースライダーとジッパーの端部片との間に見られる間隙にも水が浸入することがある。例えば、コイルジッパーは一般的に、端部片に金属クリンプを有する。スライダーが引き上げられてジッパーを完全に閉めると、スライダーの先端が端部片と接触する。しかし、スライダーと端部片との間に開放スペース又は間隙が生じることがある。また、図4及び図5に示すように、ある用途では、同じジッパーにおいて頭部突合せ形態で当接する2つのスライダーが設けられる。このような形態では、2つのスライダーが相互に接触し、2つのスライダー間の接触点のいずれかの側に開放スペースが生じることがある。スライダーにより生じるこの開放スペースに、水又は他の成分が浸入することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジッパーの撥水性を向上させる試みの中で、いくつかの製品が作られてきた。例えば、ある製品では、ジッパーテープにフードが固定される。フードは、開口エッジを有しており、スライダーを被覆するため、フード内にスライダーが収められる。しかし、スライダーのプルタブがフードのエッジと接触して、ユーザーがプルタブを最後まで引き上げるのを妨げるため、このような設計ではジッパーを完全に閉じるのが困難であった。ゆえに、ユーザーはスライダーをフードに押し込まなければならず、これは一部のユーザーにとって面倒又は困難である。概して、このような設計では、フードとスライダーとの間の嵌合は不充分であった。
【0005】
そのため、ジッパーのスライダーを格納する改良型の被覆部(又は収納部)を設ける必要がある。即ち、スライダーと収納部との間の嵌合を改良して撥水性の向上につなげること必要である。さらに、頭部突合せ形態で配設されたスライダーの撥水性を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態では、撥水性ジッパーテープと、プルタブを包含するスライダーと、スライダーキャップと、を包含する撥水性ジッパーアセンブリが設けられる。スライダーキャップは、外面と、外面と反対側の内面と、を有する胴体部と、胴体部の幅方向端部から突出する第1側壁と、第1側壁と反対側の胴体部の幅方向端部から突出する第2側壁と、第1及び第2側壁の内面の少なくとも一部分の間に延在するスナップタブと、を包含するとよい。胴体部の内面とスナップタブとが、スライダーのプルタブを収容するポケットを画定するとよい。こうして、スライダーキャップの胴体部がスライダーを被覆し、スライダーキャップの先端がスライダーの先端よりも延出して、スライダーの周辺へ流入する水の量を減少させる。
【0007】
他の実施形態では、ジッパーテープに装着される収納部が追加で設けられるとよい。収納部は、外面と、外面と反対側の内面と、少なくとも3つの側壁と、孔と、を包含するとよい。収納部の内面がスライダーキャップの外面と接触するように、スライダー及びスライダーキャップが収納部の孔へ挿入されるとよい。収納部とスライダーキャップとの間の接触は、2つの部品の間の嵌合を改良し、スライダーの周辺及び収納部へ流入する水の量を減少させる。
【0008】
その他の実施形態では、頭部突合せ形態で配設される2つのスライダーが設けられるとよい。雄型スライダーキャップが第1スライダーを収容及び被覆することで、第1スライダーの周辺へ流入する水の量を減少させる。加えて、第2スライダーを被覆してその撥水を行う雌型スライダーキャップが設けられるとよい。雌型スライダーキャップは、外面と、外面と反対側の内面と、先端と、を有する胴体部と、胴体部の幅方向端部から突出する第1側壁と、第1側壁と反対側の胴体部の幅方向端部から突出する第2側壁と、第1及び第2側壁の内面の少なくとも一部分の間に延在するスナップタブと、を包含する。雌型スライダーキャップの胴体部の内面とスナップタブとが、第2スライダーのプルタブを収容するポケットを画定するとよい。こうして、雌型スライダーキャップの胴体部の外面が第2スライダーを被覆し、雌型スライダーキャップの先端が第2スライダーの先端よりも延出して、第2スライダーの周辺へ流入する水の量を減少させる。さらに、雄型スライダーキャップの先端が、雌型スライダーキャップの先端に形成される孔へ挿入されて、第1及び第2スライダーの各先端の周囲へ流入する水の量を減少させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撥水性ジッパーアセンブリによれば、スライダーと収納部との間の嵌合を改良して、スライダーの撥水性を向上することができ、さらに、頭部突合せ形態で配設されたスライダーの撥水性を向上することができる。
【0010】
添付の請求項を実施する最良の態様を含み、当該技術分野の当業者を対象とする充分かつ実行可能な開示が、明細書の残りの部分でさらに詳しく提示される。特徴の異なる同様の参照番号の使用が同様又は類似の部品を指すためのものである以下の添付図が、明細書で参照される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明のある実施形態による雄型スライダーキャップ及びスライダーの斜視図である。
【図1B】図1Aに示す雄型スライダーキャップ及びスライダーの分離した状態の斜視図である。
【図1C】図1Bに示す雄型スライダーキャップをスライダーに取り付けた状態の斜視図である。
【図1D】図1A〜図1Cに示す雄型スライダーキャップ及びスライダーの断面斜視図である。
【図2A】図1A〜図1Dに示す雄型スライダーキャップの上面図である。
【図2B】図2Aに示す雄型スライダーキャップの側面図である。
【図2C】図2Aに示す雄型スライダーキャップの下面図である。
【図2D】図2Aに示す雄型スライダーキャップの前面図である。
【図3A】本発明のある実施形態による収納部と、収納部に格納される雄型スライダーキャップとを説明する斜視図である。
【図3B】収納部に格納された状態の雄型スライダーキャップの斜視図である。
【図3C】図3Bに示す収納部に格納された状態の雄型スライダーキャップの断面図である。
【図4A】本発明のある実施形態による雌型スライダーキャップに格納された状態の雄型スライダーキャップの側面図である。
【図4B】図4Aに示す係合状態の雄型及び雌型スライダーキャップの断面斜視図である。
【図5A】延出形の雌型引手取付部を備えない雌型スライダーキャップが嵌合する時に形成する旋回角を示す概略側面図である。
【図5B】本発明のある実施形態による雌型スライダーキャップが嵌合する時に形成する旋回角を示す概略側面図である。
【図6A】本発明のある実施形態による雌型スライダーキャップの上面図である。
【図6B】図6Aに示す雌型スライダーキャップの側面図である。
【図6C】図6Aに示す雌型スライダーキャップの下面図である。
【図6D】図6Aに示す雌型スライダーキャップの前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のある実施形態によれば、図1Aに示すように、撥水性を向上させるためジッパーのスライダー16にスナップ止めされる雄型スライダーキャップ30が設けられる。図1Bに示すように、雄型スライダーキャップ30の先端40から始まり後端41に向かって、プルタブ17が雄型スライダーキャップ30に挿入される。雄型スライダーキャップ30は、外面42及び内面44を有する胴体部43を有し、雄型スライダーキャップ30のスナップタブ34,35と胴体部43の内面44との間に画定されるポケット45に、プルタブ17が収容される。スナップタブ34,35は、雄型スライダーキャップ30の胴体部43の両側壁に形成された側壁38の内側面からそれぞれ延出している。図1Cに示すように、スナップタブ34,35は、実質的に雄型スライダーキャップ30の全幅に及んでいる。ゆえに、雄型スライダーキャップ30のスナップタブ34,35と内面44との間にポケット45が形成される。このポケット45は、スライダー16のプルタブ17を収容する。ある実施形態においてスナップタブは、狭い間隙により相互に分離された2つの別々の部分である第1部分34と第2部分35で構成される。しかし、他の実施形態では、スナップタブは単一要素を包含して分離間隙を有していない。参照を容易にするため、この開示では2つの部品を包含するものとしてスナップタブ34,35に言及するが、本開示はいかなる点でも限定的でなく、スナップタブは単一要素を包含してもよいことを理解すべきである。
【0013】
図1Bに示すように、スナップタブ34の第1部分の後端側には、ポケット45と連続する開口部47が形成されている。そして、貫通孔に隣接し、スナップタブ34の内面に若干傾いた傾斜部36を含む係合部を有する。図1Dに示すように、傾斜部36は、胴体部43の内面44とスナップタブ34の内面との間隔がポケット45の入口側から雄型スライダーキャップ30の後端41側に向けて狭くなるように形成され、一部のプルタブ17に設けられる被係合部、すなわち孔19に嵌着するような寸法を持つ。プルタブ17の表面及び裏面であって、孔19よりも先端側かつ隣接して設けられる隆起部20も示された図1Bに、孔19が図示されている。図1Cは、傾斜部36が孔19に嵌着した様子を示す。雄型スライダーキャップ30のポケット45にプルタブ17が挿入されると、プルタブ17の先端が傾斜部36を登り始める。完全に挿入されると、傾斜部36はプルタブ17の孔19にスナップ止めされる。スナップタブ34,35は、その幅方向中間位置において、ポケット45の入口側から開口部47に向けて分割されているので、スナップタブ34,35の間の狭い間隙によってこれらの部分が相互から独立して撓曲できるため、プルタブ17の孔19に傾斜部36がスナップ止めされる。また、傾斜部36よりも先端側に形成された段差部、即ち、開口部47を画成する周壁36aに隆起部20が固定され、隆起部20は、プルタブ17がポケット45から引き出されることをさらに防ぐ。こうして、傾斜部36とプルタブ17の孔19及び隆起部20との間の嵌着により、プルタブ17が雄型スライダーキャップ30にスナップ止めされる。
【0014】
雄型スライダーキャップ30により、撥水性が向上する。第一に、雄型スライダーキャップ30の胴体部43の大きさは、プルタブ17を含むスライダー16の全長及び全幅よりも大きく形成されており、雄型スライダーキャップ30の外面42がスライダー16を被覆することで、スライダー16の周辺にある開放スペースを被覆する。図1Dに示すように、雄型スライダーキャップ30の先端40には、距離(d1)だけスライダー16から突出する張り出し部分が設けられる。雄型スライダーキャップ30のこの距離(d1)は、スライダー16とジッパーの端部片18との間に形成されるかもしれない開放スペースよりも大きく形成されており、開放スペースを被覆する。概して、雄型スライダーキャップ30のサイズが大きくなるにつれて、図1Aに示すように、雄型スライダーキャップ30により被覆されるスライダー16の周辺のサイズも大きくなる。こうして、所望通りに雄型スライダーキャップ30のサイズを変更することによって、多かれ少なかれ撥水性が達成されるのである。
【0015】
雄型スライダーキャップ30の胴体部43の両側端から突出する2つの側壁38及び後端側から突出する後壁41によっても撥水性が向上する。例えば、雄型スライダーキャップ30にスライダー16を収納したときにおいて、胴体部43の内面44から各壁38,41の先端までの高さ(h)が、プルタブ17の裏面よりも下垂して、好ましくは、スライダー16の上翼板16aの上面よりも下垂して、スライダー16の周辺に形成される開放スペースを被覆するとよい。しかし、壁38,41は、雄型スライダーキャップ30に他の機能も与える。例えば、壁38,41は、プルタブ17及びスライダー16との嵌着を確実にする。そして、ある実施形態では、スライダーキャップ30を嵌合させる時にユーザーが把持するフィンガグリップとして機能する凹状部分39を側壁38が含むとよい。
【0016】
上記説明では、雄型スライダーキャップ30には、2つの側壁38及び後壁41が形成されていると説明したが、先端側の壁、即ち、前壁は形成されておらず、先端側が開口している。こうすることで、スライダー16に対して雄型スライダーキャップ30をスライドさせながら挿入させることができ、容易にプルタブ17をポケット45に収納させることができる。
【0017】
図1Dに示すように、旧来のスライダー16は、プルタブ17が固定される引手取付部 15を含む。この引手取付部15は、スライダー16の本体よりも突出している。ゆえに、いくつかの実施形態による雄型スライダーキャップ30は、スライダー16の引手取付部15を収めるためドーム状の外面42を含むとよい。加えて、図2Dに示すように、雄型スライダーキャップ30の内面44に引手取付部クリアランス部分32が設けられるとよい。引手取付部クリアランス部分32は、スライダー16の引手取付部15と雄型スライダーキャップ30の内面44との間にクリアランスを設ける。ある実施形態では、図1Bに示すように、プルタブ17の挿入を容易にするガイドとして機能するような寸法を引手取付部クリアランス部分32が有するとよい。
【0018】
雄型スライダーキャップ30のある実施形態は、引張コードなどの引手48の係止部として機能する引手取付部46も含む。引手取付部46は、引手48を取り付けるのに充分であるいかなる寸法又は形状でもよい。いくつかの実施形態では、図1Dに示すように、雄型スライダーキャップ30の引手取付部46は、スライダーキャップ30の胴体部43の外面42の中間位置に形成されており、スライダー16の引手取付部15及び本体よりも上に概ね位置している。しかし、ここで説明する他の実施形態では、雌型スライダーキャップ62が配置(及び形状)の異なる引手取付部80を含んでもよい。また、取り付けられる引手48としては、ファブリック、織紐、金属チェーン、革コードなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、多様な材料で引張コードを構成してもよいし、その他、引張コードだけではなくプルタブ17などに類似した持手であってもよい。
【0019】
本発明の実施形態によるスライダーキャップ(雄型と雌型のいずれかのスライダーキャップ30,62)は、アセタールなどの硬質プラスチック又は様々な金属を含むが、これらに限定されない多様な材料で構成されるとよい。スライダーキャップ30,62のための比較的硬質な材料は、プルタブ17への確実な嵌着及びスナップ動作を維持するのに役立つ。用途に応じて、紫外線に対する耐性を有するか特定の染色堅牢度を有する材料でスライダーキャップ30,62を製作することが望ましい。スライダーキャップ30,62は、射出成形を含むがこれに限定されない多様なプロセスにより製造されるとよい。
【0020】
ある実施形態は、雄型スライダーキャップ30を格納する収納部50も含むとよい。このような実施形態は図3A〜図3Cに図示されている。実際の作業では、図3A〜図3Cの各々のスライダー16及び収納部50がジッパーテープ12に装着されることが理解されるべきである。しかし、スライダー16、雄型スライダーキャップ30、そして収納部50の特徴をより分かりやすく図示するために、図3Aにはジッパーテープ12が示されていない。ジッパーテープ12は、図3B及び図3Cに示されている。
【0021】
収納部50は、少なくとも1つの取付エッジ52と、外面54と、内面55と、側壁56と、雄型スライダーキャップ30を格納する孔57と、を有する。図3Bに示すように、縫製、RF溶着、接着、ステープル留め、テーピングを含むがこれらに限定されない当該技術分野の当業者に周知の方法により、取付エッジ52に沿って収納部50がジッパーテープ12に装着されるとよい。ジッパー10の端部片18を含むが、これに限定されないジッパーテープ12の長さ方向のいかなる場所に収納部50が装着されてもよい。収納部50が端部片18に隣接して装着される場合、端部片18の付近に形成される開放スペースを収納部50が被覆する。
【0022】
収納部50は、多様な材料で構成されてもよい。いくつかの実施形態では、雄型スライダーキャップ30の材料よりも軟質で柔軟な材料で収納部50が構成されるとよい。収納部50が激しい衝撃を受ける実施形態では、収納部50には柔軟材料が望ましい。このような柔軟材料は衝撃を受けて容易に屈曲及び変形するのに対して、比較的硬質の材料はダメージを受けることがある。例えば、ゴム、シリコーン、ファブリック、積層ファブリックで収納部50が構成されるとよい。
【0023】
雄型スライダーキャップ30を収納部50に格納するため、雄型スライダーキャップ30の先端40が収納部50の孔57へ挿入される。図3Cに示すように、格納されると、収納部50の内面55は雄型スライダーキャップ30の外面42と接触する。この接触は、収納部50と雄型スライダーキャップ30との間の嵌合を改良する。加えて、ある実施形態では、高い摩擦係数を備える材料(ゴム又はシリコーンなど)で収納部50が製作されるとよい。こうして、収納部50の内面55が雄型スライダーキャップ30の外面42に「密着する」、あるいは摩擦嵌めされて、収納部50と雄型スライダーキャップ30との間の嵌合をさらに改良する。このような嵌合の改良は、収納部50の孔57の周囲の間隙を減少させ、これが撥水性の向上につながる。対照的に以前の設計では、以前のシステムのスライダーとフードとの間に大きな間隙が設けられるため嵌合が不充分であり、撥水性に関する問題を発生させた。本発明のある実施形態では、収納部50と接触する雄型スライダーキャップ30が設けられて、嵌合を改良することに加えて撥水性の向上にもつながる。
【0024】
図3A及び図3Bに示すように、雄型スライダーキャップ30が収納部50に挿入される距離を増加することによって撥水性をさらに向上させてもよい。挿入距離を増加させると、雄型スライダーキャップ30と収納部50との間により確実な嵌着が行われることにもなる。挿入距離の増加はいくつかの方法で達成される。第一に、いくつかの実施形態では、収納部50に切欠き58が設けられるとよい。切欠き58は、雄型スライダーキャップ30の引手取付部46を収容する寸法を持ち、雄型スライダーキャップ30が収納部50へより完全に格納されるようにする。切欠き58の周辺に形成される開放スペースを被覆するフード60を、切欠き58が任意で含んでもよい。第二に、いくつかの実施形態では、雄型スライダーキャップ30の先端40と、引手取付部46が雄型スライダーキャップ30に装着される箇所との間の距離(d2)を増加させてもよい。距離(d2)が増加すると、収納部50と雄型スライダーキャップ30との間で接触状態にある表面積も増加して、雄型スライダーキャップ30と収納部50との間の撥水性を向上させるとともに、嵌着を確実にする。当該技術分野の当業者には理解できるように、距離(d2)が長過ぎる場合には、撥水性が損なわれる傾向があるので、距離(d2)は少なくともスライダー16の先端よりも長く、スライダー16の一部が収納部50に収納される範囲内であることが好ましい。
【0025】
図4A〜図6Dに示すように、本発明のある実施形態は、ジッパーテープ12上において、頭部突合せ形態で当接する2つのスライダー16に使用される雄型スライダーキャップ30と係合する雌型スライダーキャップ62を含む。図4A〜図5Bに示すジッパーテープ12は、スライダー16及びスライダーキャップ30,62の設計をさらに明白に示すためだけの目的で図示されており、スライダー16に装着されずにこれよりも若干下に示されている。実際の用途では、スライダー16がジッパーテープ12に装着されることが理解されるべきである。
【0026】
雌型スライダーキャップ62の撥水性は、雄型スライダーキャップ30に関して上述したものと類似している。例えば、雌型スライダーキャップ62は、スライダー16を被覆して、スライダー16の周辺に形成される開放スペースへ水が浸入するのを防ぐ。雌型スライダーキャップ62のサイズが大きくなるにつれて、雌型スライダーキャップ62により被覆及び保護されるスライダー16の周辺のサイズも大きくなる。しかし、当該技術分野の当業者なら理解するように、雌型スライダーキャップ62のサイズが大きすぎると、撥水性が損なわれる傾向がある。
【0027】
しかしさらに、雌型スライダーキャップ62は頭部突合せ形態で当接する2つのスライダー16の撥水性を高める。2つのスライダー16が頭部突合せ形態で当接する時には、2つのスライダー16の間の接触点の周囲に開放スペースが形成される。ゆえに、図4Aに示すように、雄型スライダーキャップ30の先端40を収容するとともに2つのスライダー16の間の接触点の周囲に「オーニング」を形成することで、2つのスライダー16が当接する場所に形成される開放スペースを被覆するドーム状外面76を、雌型スライダーキャップ62が含むとよい。即ち、雌型スライダーキャップ62のドーム状外面76は、雄型スライダーキャップ30の外面42の上へ摺動するのである。こうして、雌型スライダーキャップ62の内面78は雄型スライダーキャップ30の外面42と接触する。雌型スライダーキャップ62の側壁70も、雄型スライダーキャップ30の側壁38を包囲する。こうして、この雌型スライダーキャップ62の「オーニング」設計は、頭部突合せ形態で当接する2つのスライダー16の撥水性を高める。オーニング設計は、撥水性を与えるために(雄型スライダーキャップ30又は雌型スライダーキャップ62以外の)第3の要素を必要とする周知の設計を改良したものでもある。本発明のある実施形態では、雌型スライダーキャップ62そのもの(及び雄型スライダーキャップ30とのドッキング)によって撥水性が得られる。
【0028】
図4A及び図6A〜図6Dに示すように、ある実施形態では、雌型スライダーキャップ62の胴体部63の外面76上に、引張コードなどの引手82を取り付ける引手取付部80を設ける。雌型スライダーキャップ62の引手取付部80(「雌型引手取付部」)は、雄型スライダーキャップ30の引手取付部46(「雄型引手取付部」)と異なる形状及び配置でよい。即ち、雌型引手取付部80の先端81が、雌型スライダーキャップ62の先端74よりも突出するように形成され、雌型引手取付部80は一辺が接したダイヤモンドのような形状でよいのである。図6A及び図6Cに示すように、ある実施形態では、雌型スライダーキャップ62の外面76から測定すると、雌型引手取付部80の先端81は中央から幅方向に向けて10〜20度の角度θで延在する。また、先端74が雌型スライダーキャップ62の残りよりも延出するように、雌型スライダーキャップ62の先端74は尖鋭形状でよい。ある実施形態では、先端74は、5〜10度の角度αの尖鋭形状である。先端74はドーム状、カーブ状、他の延出形状でよく、本発明は「尖鋭形状」先端のみに限定されないことが理解されるべきである。先端74により、雌型引手取付部80は雌型スライダーキャップ62よりもさらに延出できる。
【0029】
雌型引手取付部80の形状によりジッパー操作が容易となり、雄型及び雌型スライダーキャップ30,62の間の確実な嵌着を保証するのに役立つ。例えば、図5Aは、延出形の雌型引手取付部80のない雌型スライダーキャップ62を有するジッパーが嵌合する時に形成される旋回角Bを図示している。延出形の雌型引手取付部80がないと、旋回角Bが増大するため、雌型スライダーキャップ62の側壁70がジッパーテープ12上で引きずられてジッパーを閉じるのが困難になる。さらに、旋回角Bの増大により、雌型スライダーキャップ62の外面76が雄型スライダーキャップ30の下側となって整合が得られなくなる。ゆえに、ユーザーは、雄型スライダーキャップ30に重なる適切な位置(適切な位置は図4Aに示されている)に、雌型スライダーキャップ62を配置し直さなければならない。
【0030】
対照的に、図5Bに示すように、延出形の雌型引手取付部80を有する実施形態では旋回角Bが減少して、ジッパーを閉じるのが容易になる。そのうえ、延出形の雌型引手取付部80と尖鋭先端74が雄型スライダーキャップ30の下側へ不適切に押されることがない。むしろ、延出形の雌型引手取付部80と尖鋭先端74は、実際には雄型スライダーキャップ30の先端40を押し下げる。図4Aに示すように、雄型スライダーキャップ30は、雌型スライダーキャップ62に収容されるように設計されているため、雄型スライダーキャップ30の押し下げは適切な整合を促す。
【0031】
図6A〜図6Dに示すように、雌型スライダーキャップ62は、雄型スライダーキャップ30と同じ特徴を多く含む。例えば、雄型スライダーキャップ30に関して上述したような胴体部63、スナップタブ66,67、傾斜部68、周壁68a、開口部65、側壁70、任意の凹状部分72、後壁73、外面76、内面78、引手取付部クリアランス部分64を、雌型スライダーキャップ62も含む。加えて、雌型スライダーキャップ62は、雄型スライダーキャップ30に関して上述したのと同じ材料で構成され、同じ製造プロセスで製作されるとよい。
【0032】
上記は、本発明の実施形態の例示及び開示を目的とするものである。上記を理解すれば、このような実施形態を変更又は変形したものや同等のものを容易に生産できることを、当該技術分野の当業者は認識するだろう。従って、本開示は、限定ではなく例示を目的として提示されており、当該技術分野の当業者には容易に明らかとなる本主題の修正、変形、及び/又は追加を含めることを妨げるものではないことが理解されるべきである。
【0033】
例えば、ロック式又は非ロック式のスライダー16を含む何らかのタイプのスライダー16が、本発明の実施形態で使用されてもよい。ジッパー10は、撥水性ジッパー又は非撥水性ジッパーを含むがこれらに限定されない、何らかのタイプのジッパーでよい。ジッパーは、旧来のNo.5又はNo.8ジッパーを含むがこれらに限定されないいかなるサイズでもよい。スライダー16及び/又はジッパー10のタイプ及びサイズを変更すると、スライダーキャップ30,62、収納部50、又は説明した他のジッパー部品の寸法にも変更が生じる結果となる。
【符号の説明】
【0034】
12 ジッパーテープ
15 引手取付部
16 スライダー
17 プルタブ
18 端部片
19 孔
20 隆起部
30 雄型スライダーキャップ
32 引手取付部クリアランス部分
34,35 スナップタブ
36 傾斜部
38 側壁
39 凹状部分
40 先端
41 後端(後壁)
42 外面
43 胴体部
44 内面
45 ポケット
46 引手取付部
48 引手
50 収納部
52 取付エッジ
54 外面
55 内面
56 側壁
57 孔
58 切欠き
60 フード
62 雌型スライダーキャップ
63 胴体部
64 引手取付部クリアランス部分
66,67 スナップタブ
68 傾斜部
70 側壁
72 凹状部分
73 後壁
74 先端
76 外面
78 内面
80 引手取付部
81 先端
82 引手
d1,d2 距離
h 高さ
B 旋回角
α,θ 角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性ジッパーテープと、
プルタブを包含するスライダーと、
外面と、前記外面と反対側の内面と、を有する胴体部と、前記胴体部の幅方向端部から突出する第1側壁と、前記第1側壁と反対側の前記胴体部の幅方向端部から突出する第2側壁と、前記第1及び第2側壁の内面の少なくとも一部分の間に延在するスナップタブと、を包含するスライダーキャップと、を包含し、
前記胴体部の前記内面と前記スナップタブとが、前記スライダーの前記プルタブを収容するポケットを画定し、前記スライダーキャップの前記胴体部が前記スライダーを被覆するとともに、前記スライダーキャップの先端が前記スライダーの先端よりも延出する、ことを特徴とする撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項2】
前記スライダーキャップ及び前記スライダーは、前記スライダーの摺動方向に沿って、前記ジッパーテープが閉じる方向を先端側、開く方向を後端側とし、
前記スライダーキャップは、前記スライダーキャップの後端側に前記ポケットを有することを特徴とする請求項1に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項3】
前記プルタブが孔を包含し、
前記プルタブの前記孔にスナップ止めされることで前記プルタブを収容する傾斜部を前記スナップタブが包含する、ことを特徴とする請求項1に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項4】
前記スナップタブは、間隙により相互に分離された第1部分と第2部分とを包含し、
前記第1部分が前記傾斜部を包含する、ことを特徴とする請求項3に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項5】
前記スライダーキャップの前記外面が、引手を付けるための引手取付部を包含する、ことを特徴とする請求項1に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項6】
前記スライダーが引手取付部をさらに包含し、
前記スライダーの前記引手取付部と前記スライダーキャップの前記内面との間にクリアランスを設ける凹形の引手取付部クリアランス部分を、前記スライダーキャップの前記内面が画定する、ことを特徴とする請求項1に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項7】
第1端部と第2端部とを有する撥水性ジッパーテープと、
先端とプルタブとを包含するスライダーであって、前記先端が前記ジッパーテープの前記第1端部と対向する状態で前記ジッパーテープに配置されるスライダーと、
外面と、前記外面と反対側の内面と、先端と、を有する胴体部と、前記胴体部の幅方向端部から突出する第1側壁と、前記第1側壁と反対側の前記胴体部の幅方向端部から突出する第2側壁と、前記第1及び第2側壁の内面の少なくとも一部分の間に延在するスナップタブと、を包含し、前記胴体部の前記内面と前記スナップタブとが、前記スライダーの前記プルタブを収容するポケットを画定する、スライダーキャップと、
外面と、前記外面と反対側の内面と、少なくとも3つの側壁と、孔と、を包含する収納部であって、前記孔が前記ジッパーテープの前記第2端部と対向する状態で前記収納部が前記ジッパーテープに装着され、前記スライダーキャップの前記胴体部の前記外面が前記スライダーを被覆し、前記スライダーキャップの前記先端が前記スライダーの前記先端よりも延出し、前記スライダーキャップの前記先端が前記収納部の前記孔に挿入される時に、前記収納部の前記内面の少なくとも一部分が前記スライダーキャップの前記外面の少なくとも一部分と接触する、収納部と、を包含する、ことを特徴とする撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項8】
前記スライダーキャップ及び前記スライダーは、前記スライダーの摺動方向に沿って、前記ジッパーテープが閉じる方向を先端側、開く方向を後端側とし、
前記スライダーキャップは、前記スライダーキャップの後端側に前記ポケットを有することを特徴とする請求項7に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項9】
前記スライダーキャップが第1材料で構成され、
前記収納部が第2材料で構成され、
前記第1材料が前記第2材料よりも硬質である、ことを特徴とする請求項8に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項10】
前記スライダーキャップの前記胴体部の前記外面が、引手を付けるための引手取付部を包含し、
前記スライダーキャップの前記先端が前記収納部の前記孔に挿入される時に、前記引手取付部を収容する切欠きを前記収納部がさらに包含する、ことを特徴とする請求項7に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項11】
第1端部と第2端部とを有する撥水性ジッパーテープと、
各々が先端とプルタブとを包含する第1スライダー及び第2スライダーであって、前記先端が前記ジッパーテープの前記第1端部と対向する状態で前記第1スライダーが前記ジッパーテープに配置され、前記先端が前記ジッパーテープの前記第2端部と対向する状態で前記第2スライダーが前記ジッパーテープに配置される、第1スライダー及び第2スライダーと、
外面と、前記外面と反対側の内面と、先端と、を有する胴体部と、前記胴体部の幅方向端部から突出する第1側壁と、前記第1側壁と反対側の前記胴体部の幅方向端部から突出する第2側壁と、前記第1及び第2側壁の内面の少なくとも一部分の間に延在するスナップタブと、を包含し、前記胴体部の前記内面と前記スナップタブとが、前記第1スライダーの前記プルタブを収容するポケットを画定する、雄型スライダーキャップと、
外面と、前記外面と反対側の内面と、先端と、を有する胴体部と、前記胴体部の幅方向端部から突出する第1側壁と、前記第1側壁と反対側の前記胴体部の幅方向端部から突出する第2側壁と、前記第1及び第2側壁の内面の少なくとも一部分の間に延在するスナップタブと、を包含し、前記胴体部の前記内面と前記スナップタブとが、前記第2スライダーの前記プルタブを収容するポケットを画定する、雌型スライダーキャップと、
前記雄型スライダーキャップの前記胴体部の前記外面が前記第1スライダーを被覆して、前記雄型スライダーキャップの先端が前記第1スライダーの先端よりも延出し、
前記雌型スライダーキャップの前記胴体部の前記外面が前記第2スライダーを被覆して、前記雌型スライダーキャップの先端が前記第2スライダーの先端よりも延出しており、
前記雌型スライダーキャップの前記先端には、前記雄型スライダーキャップの前記先端を挿入可能な孔が形成されることを特徴とする撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項12】
前記雌型スライダーキャップ及び前記雄型スライダーキャップは、前記スライダーの摺動方向に沿って、前記ジッパーテープが閉じる方向を先端側、開く方向を後端側とし、
前記雌型スライダーキャップ及び前記雄型スライダーキャップの後端側に前記ポケットを有することを特徴とする請求項11に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項13】
前記雌型スライダーキャップが、引手を付けるための雌型引手取付部をさらに包含し、
前記雌型引手取付部が、前記雌型スライダーキャップの前記先端よりも延出する、ことを特徴とする請求項11に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項14】
前記雌型スライダーキャップが嵌合する時に、前記雄型スライダーキャップの前記先端が前記雌型スライダーキャップの前記孔に挿入されるように、前記雌型引手取付部が前記雄型スライダーキャップの前記先端を押し下げる、ことを特徴とする請求項11に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項15】
前記雌型スライダーキャップの前記先端が尖鋭部分を包含し、
前記雌型スライダーキャップが嵌合する時に、前記雄型スライダーキャップの前記先端が前記雌型スライダーキャップの前記孔に挿入されるように、前記尖鋭部分が前記雄型スライダーキャップの前記先端を押し下げる、ことを特徴とする請求項11に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。
【請求項16】
前記雄型スライダーキャップの前記先端が前記雌型スライダーキャップの前記孔に挿入される時に、前記雌型スライダーキャップの前記内面の少なくとも一部分が前記雄型スライダーキャップの前記外面の少なくとも一部分と接触する、ことを特徴とする請求項11に記載の撥水性ジッパーアセンブリ。


【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate


【公開番号】特開2011−115572(P2011−115572A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246304(P2010−246304)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】