説明

撥水性ソープフィニッシュ処理液

【課題】 塗装工程が簡便で、十分な撥水効果や汚染防止効果が期待でき、赤ちゃんが接触しても安全な撥水性ソープフィニッシュ処理液を提供すること。
【解決手段】高級脂肪酸のナトリウム塩を主成分とする石鹸の水溶液とワックスを、ワックスの融点付近で攪拌する撥水性ソープフィニッシュ処理液の製造法、並びに、高級脂肪酸のナトリウム塩を主成分とする石鹸の水溶液にワックスが均一に含有されている撥水性ソープフィニッシュ処理液。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、撥水性を有するソープフィニッシュ処理液に関するものである。
わが国における従来の木材塗装は、化学合成塗料が主流であるが、最近は健康・環境面から、天然の脂肪酸からなる石鹸液を木材に塗装するソープフィニッシュが見直されている。
【0002】
しかしながら、このソープフィニッシュは、撥水性がないため、汚れやすい欠点があり、頻繁なメンテナンスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
このようなソープフィニッシュの欠点を補うために、低級アルコールを含む脂肪酸液を木材に塗装して浸透させた後、カルシウム、バリウムなどの複数の金属塩溶液で処理する撥水処理が提案されているが(特許文献1)、脂肪酸溶液を塗装浸透乾燥後に金属塩を塗装しなければならず、塗装工程が煩雑な上、撥水効果や汚染防止効果も十分とはいえない。
【特許文献1】国際公開番号WO2006/073203
【発明の概要】
【0004】
本発明は、このようなソープフィニッシュ処理の現状に鑑み、鋭意検討の結果完成されたものであって、塗装工程が簡便で、十分な撥水効果や汚染防止効果で、赤ちゃんが接触しても安全な撥水性ソープフィニッシュ処理液を提供するものであり、脂肪酸の金属塩と蜜蝋などのワックスを含有する撥水性ソープフィニッシュ処理液並びにその製造法に関するものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗装工程が簡便で、十分な撥水効果や汚染防止効果が期待でき、赤ちゃんが接触しても安全な撥水性ソープフィニッシュ処理液を提供することである。
【0006】
また、健康志向の塗料として植物性油脂取材とした天然オイル系を謳った物も多々ある。しかし、オイル系塗料には自然発火という重大な問題が解決されていない。塗装の際使用したウエス、スポンジ等が発熱し火災に至る可能性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高級脂肪酸金属塩の水溶液とワックスをワックスの融点付近で攪拌することにより長期間安定な撥水性ソープフィニッシュ処理液を製造することができる。
【0008】
また、自然発火の危険性を無くす為、発火点の低いオイル系ワックスに対し発火の危険の無い水性塗料を製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
塗装工程が簡便で、十分な撥水効果や汚染防止効果が得られ、赤ちゃんが接触しても安全な撥水性ソープフィニッシュ処理液が得られた。また、解決しようとする課題で述べた様に自然発火のする危険の無い安全性も実現された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられる高級脂肪酸金属塩は、いわゆる石鹸として古来汎用されてきたアニオン界面活性剤であり、天然素材である。脂肪酸の炭素数は8以上のものが通常使用されており、原料油脂にもよるが、主として、牛脂にはパルミチン酸、ミリスチン酸が含まれており、やし油にはラウリン酸やミリスチン酸が含まれている。また、ワックスは、常温で固体の融点約50ないし70度前後のものであって、パルミチン酸ミリシル等の高級脂肪酸エステルやパルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸を主成分とし、場合によっては高級アルコールや炭水化物を少量含有するものが用いられ、蜜蝋、木蝋等の天然素材のものが好ましい。
【0011】
本発明においては、このような高級脂肪酸の金属塩とワックスを均一に含有する水溶液を製造する。このためには、たとえば、高級脂肪酸の水溶液をワックスの融点付近まで加温してワックスを添加し、攪拌する。
【0012】
また、高級脂肪酸の水溶液にワックスを混合し、ワックスの融点付近まで加温して攪拌してもよい。攪拌は50〜10000rpm程度が好ましく、ワックスの融点付近で攪拌する場合には5000rpm以上が好ましい。均一な溶液になったら、常温まで、50〜300rpm程度に攪拌しながら、徐々に冷却させるのが良い。
【0013】
高級脂肪酸金属塩とワックスの割合は、十分な撥水性が得られる割合であり、たとえば高級脂肪酸金属塩1重量部に対してワックス1〜0.2重量部程度でよい。また、このような高級脂肪酸金属塩とワックスに対して、水は5〜20重量部程度用いるのが良い。
【0014】
例えば、この時グリセリン脂肪酸エステル等の親油性乳化剤を用いて、攪拌する事により、容易に溶液を製造することが出来る。もちろん、塗装に際しては、はけ塗りとかスプレー塗装に適した濃度に希釈して用いても良い。
【0015】
使用する水は、水道水等清浄なものが望ましい。また、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノール等の低級アルコールを1〜2割程度混合して用いてもよい。深海水を使用すれば無菌状態での塗装ができる。もちろん、芳香剤、抗菌剤、防虫剤、耐光剤、着色剤等を適宜混合して用いることもできる。
【実施例1】
【0016】
水0.5リットルに石鹸50グラムと蜜蝋25グラムを混合し、摂氏65度で8000rpmで2時間攪拌した後、250rpmで攪拌しながら室温まで自然冷却させて、撥水性ソープフィニッシュ処理液を製造した。
【実施例2】
【0017】
水5リットルに石鹸500グラムと蜜蝋300グラムおよびイソプロピルアルコール0.5リットルを混合し、摂氏65度で10000rpmで4時間攪拌した後、300rpmで攪拌しながら室温まで自然冷却させて、撥水性ソープフィニッシュ処理液を製造した。
【実施例3】
【0018】
実施例1,2で製造した撥水性ソープフィニッシュ処理液を木片にはけ塗りし、3時間乾燥させたものを、市販の撥水塗装剤と耐汚染性を比較した。市販耐商品としては、まるは油脂化学のヴェネックスを用い、まず、A液をはけ塗り後、3時間乾燥させた後、B液をはけ塗りし、3時間乾燥させた。これらに、醤油、ソースを付着させた後、ティッシュまたは乾いた布などで拭き取ったところ、市販対象商品にはシミ状の物が残る傾向があった。本撥水性ソープフィニッシュ処理液はそれらの汚染、浸透が見られず良く消えて撥水効果が認められる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級脂肪酸のナトリウム塩を主成分とする石鹸の水溶液とワックスを、ワックスの融点付近で攪拌することを特徴とする撥水性ソープフィニッシュ処理液の製造法。
【請求項2】
ワックスが蜜蝋であることを特徴とする請求項1の撥水性ソープフィニッシュ処理液の製造法。
【請求項3】
高級脂肪酸のナトリウム塩を主成分とする石鹸の水溶液に、親油性乳化剤を用いてワックスが均一に含有されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の撥水性ソープフィニッシュ処理液。

【公開番号】特開2010−285597(P2010−285597A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77879(P2010−77879)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(596117119)丸軌木材株式会社 (3)
【Fターム(参考)】