説明

撥水性ポリエステル組成物及びポリエステル繊維

【課題】優れた撥水性能を有し、かつ良好な風合と染色性を有する合成繊維を提供する。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成される成分を主たる繰返し単位とするポリエステル、シリコーン化合物、不活性微粒子からなるポリエステル組成物であって、該シリコーン化合物が下記一般式(1)


[Xはカルボキシル基及び水酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基である。]で表される数平均分子量が10,000以下である変性シリコーン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変性シリコーン化合物を含有するポリエステル組成物に関し、特に優れた撥水性、低摩耗性の特性を有するポリエステル組成物、及びそれを用いたポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
布帛の撥水加工方法としては、布帛をフッ素系撥水剤やシリコーン系撥水剤で布帛表面をコーティング処理する方法は良く知られている。撥水加工の問題点としては、使用時の摩擦や洗濯などの影響で、表面をコーティングしている撥水剤の剥離などの影響で撥水性能が低下するといった問題点がある。それに対し、シリコーン系撥水剤を使用して洗濯耐久性を向上させた撥水性布帛が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、シリコーン系撥水剤やフッ素系撥水剤で変性した熱可塑性樹脂を布帛表面に塗布することにより、耐久性のある撥水性布帛が得られる事が開示されている(例えば特許文献2参照。)。また、布帛表面に微細な凸部を形成させることにより、耐久性のある撥水性布帛が得られることが開示されている(例えば特許文献3参照。)。
しかし、これらの方法では、着用時や洗濯時の擦れや揉みにより皮膜に亀裂が生じたり、剥離したりする事で撥水性能が低下するという問題があった。
【0003】
また、フッ素系モノマーやケイ素系モノマーの低温プラズマ重合により、布帛を構成する繊維表面に撥水層を形成させる方法が提案されている(例えば特許文献4参照。)。一方、フッ素系樹脂を鞘とした芯鞘複合繊維(例えば特許文献5参照。)、フッ素樹脂を混連分散させたポリエステル繊維や芯鞘複合繊維(例えば特許文献6〜8参照。)が開示されている。しかし、これらの方法でも洗濯やドライクリーニングによる撥水性能の低下を抑えることはできず耐久性に問題があり、さらにアルカリ減量加工時に混練分散させた粒子が脱落して撥水機能が低下するという問題があった。さらに、ポリテトラフルオロエチレン及びその共重合体等の含フッ素ポリマーからなる合成繊維もしられているが、この繊維はヤング率が高いため風合が硬く、一般衣料用に使用できないと共に、染色する事ができないという問題があった。
【0004】
さらに、フッ素系ポリマーとポリエステル樹脂を横断面形状において横断面中心から放射線方向に複数個を交互に円形状に回転方向に分割配置した状態で紡糸し、アルカリ減量処理などでポリエステル成分を減量することで、撥水性の高いフッ素系ポリマーが繊維表面の凸部となるようにした複合繊維(例えば特許文献9参照。)が開示されているが、特性の異なる2種類のポリマーによる複合繊維であるため、非常に複雑な口金を必要とするために製造コストが高くなり、更にアルカリ減量段階で2種類のポリマーの界面が割れるなどの不具合が生じるなどの問題があった。
【0005】
【特許文献1】特公昭61−9432号公報
【特許文献2】特開平09−195169号公報
【特許文献3】特開2004−256939号公報
【特許文献4】特開平04−343764号公報
【特許文献5】特開昭53−31851号公報
【特許文献6】特開昭62−238822号公報
【特許文献7】特開平06−136616号公報
【特許文献8】特開平06−220718号公報
【特許文献9】特開2000−178834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない、優れた撥水性能を有し、かつ良好な風合と深色染色性を有するポリエステル繊維を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成される成分を主たる繰返し単位とするポリエステル、シリコーン化合物、不活性微粒子からなるポリエステル組成物であって、
該シリコーン化合物が下記一般式(1)
【化1】

[上記式(1)中、R,R,Rは同一若しくは異なっても良く、一部若しくは全部がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数18個以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基を表す。R,R,Rは同一若しくは異なっても良い炭素数10個以下のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基又はアルキルアリーレン基を表す。Rは炭素数10個以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基を表わし、Xはカルボキシル基及び水酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であり、nは1〜100である。]
で表される数平均分子量が10,000以下である変性シリコーン化合物であって、得られるポリエステル組成物重量に対し1.0〜20.0重量%含有されており、該ポリエステル組成物に含有されている変性シリコーン化合物のうち、ポリエステル組成物重量に対して0.2〜5.0重量%が該ポリエステルに共重合されており、残りの変性シリコーン化合物がポリエステル組成物中に配合されており、該ポリエステルに共重合されている変性シリコーン化合物の重量が該ポリエステル組成物に含有されている変性シリコーン化合物の重量に対して50重量%以下であり、該不活性微粒子の平均粒子径が0.01〜0.5μmの範囲であって、該不活性微粒子の粒子径が0.5μmを超える粒子の頻度分布率が20重量%以下である不活性微粒子をポリエステル組成物重量に対して0.1〜5.0重量%含有するポリエステル組成物により解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、着用、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない優れた撥水性を示し、且つ良好な風合と深色の染色性を有する合成繊維を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を詳しく説明する。本発明の第一は芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成される成分を主たる繰り返し単位とするポリエステル、シリコーン化合物、不活性微粒子からなるポリエステル組成物である。
【0010】
本発明で使用される変性シリコーン化合物は、上に示した一般式(1)で示されるものであり、上記式(1)中、R,R,Rは同一若しくは異なっても良く、一部若しくは全部がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数18個以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基を表す。R,R,Rは同一若しくは異なっても良い炭素数10個以下のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基又はアルキルアリーレン基を表す。Rは炭素数10個以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基を表わし、Xはカルボキシル基及び水酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であり、nは1〜100であり、且つ平均分子量が10,000以下である変性シリコーン化合物である。
【0011】
公知の変性シリコーン化合物には、上記の片末端二反応性官能基変性型構造のほかに、長鎖状に延びているシロキサン構造の両末端にそれぞれ1個のカルボキシル基又はヒドキシル基等のポリエステル原料と反応しうる官能基を有する両末端変性型、同シロキサン構造の片末端に1個の上記の官能基を有する片末端一反応性官能基変性型、側鎖に複数個の官能基を有する側鎖変性型があるが、両末端変性型はポリエステル主鎖に直線上に組み込まれるため、成形した際にポリエステル成形品表面に撥水機能を有する官能基が現れにくいことから、望むべき撥水性を得ることができない。また、片末端一反応性官能基変性型及び側鎖変性型は、重縮合反応に関与する官能基と、変性シリコーン化合物の末端又は側鎖と反応するため、重縮合反応を阻害することがある上、ポリエステルと相溶性が悪く、均一にブレンドすることが困難であるため、製糸時の断糸発生や、毛羽の原因となり好ましくない。さらにブリードアウトしやすいという問題を有しているため好ましくない。更に上記一般式(1)においてR〜Rが上記のような官能基でない場合には、望むべき撥水性を得ることができなかったり、変性シリコーン化合物がポリエステルと適度に且つ充分に混和しない事がある。また混合できても、当該ポリエステル組成物を紡糸した繊維を染色工程、その他の加熱加工工程、又は洗濯処理をしている間に変性シリコーン化合物がポリエステル組成物からブリードアウトしたりする事があるので好ましくない。これらの官能基の中でもR〜Rは置換されていない炭素数1〜6個のアルキル基であること、R,R,Rは置換されていない炭素数1〜4個のアルキレン基であること、Rは炭素数4個以下のアルキル基であることが好ましい。
【0012】
また、該変性シリコーン化合物の数平均分子量は10,000以下である事が必要であり、好ましくは300以上6,000以下、更に好ましくは500以上1,000以下である。数平均分子量が10,000より大きい場合は、ポリエステルとの相溶性が悪化し、ポリエステル中に均一にブレンドすることが困難であり、ポリエステル繊維とした場合に断糸、毛羽、ブリードアウトなどの問題を有しており好ましくない。
【0013】
さらに、該変性シリコーン化合物は、得られるポリエステル組成物に対して1.0〜20.0重量%含有されることが必要である。4.0〜19.0重量%含有される事が好ましい。1.0重量%より少ない場合は、変性シリコーン化合物含有ポリエステル組成物が十分な撥水性を発現することができず、20.0重量%より多い場合には、ブレンド状態にあるシリコーン化合物がポリエステル組成物中に均一分散できず、製糸時の断糸発生や、毛羽の原因となり好ましくない。ここで含有されているとは、後述のように変性シリコーン化合物がポリエステルに対して化学結合により分子鎖に取り込まれ共重合されている状態と、ポリエステルとは化学結合せずにブレンド状態で存在する状態の双方を含んでいることを指している。
【0014】
また、そのポリエステル組成物中に含有されている変性シリコーン化合物は、ポリエステル組成物重量に対して0.2〜5.0重量%がポリエステルに共重合されている必要がある。且つその残余分はポリエステル組成物中に配合されている必要がある。つまりその残余分はブレンドされた状態で存在しており、ポリエステル主鎖と化学結合により結合していないことを表している。1.5〜3.0重量%が共重合されていることが好ましい。共重合されている変性シリコーン化合物の量が0.2重量%より少ないとポリエステル中でブレンドされている変性シリコーン化合物の分散性が悪化し、共重合量が5.0重量%より多い場合は得られるポリエステルの物性が著しく低下するため好ましくない。
【0015】
さらにそのポリエステルに共重合されている変性シリコーン化合物の重量が該ポリエステル組成物に含有されている変性シリコーン化合物の重量に対して50重量%以下であることが必要である。ポリエステル組成物中で、ポリエステルに共重合されている変性シリコーン化合物の重量が該ポリエステル組成物に含有されている変性シリコーン化合物の重量に対して50重量%を越えると、変性シリコーン化合物がより均一にポリエステル組成物中に分散し、含有量が増えても目的とする撥水性能を達成する事ができないので好ましくない。より好ましくは、共重合されている変性シリコーン化合物の重量が含有されている変性シリコーン化合物の重量に対して10〜45重量%である。 我々は洗濯耐久性のある撥水性とを両立するために鋭意検討した結果、上記一般式(1)で表される特定の化学構造を有する変性シリコーン化合物を用い、通常のポリエステルの製造工程に投入する事により、驚くべき事に一部はポリエステル主鎖に対して共重合され、残りの成分はブレンド状態でポリエステル組成物中に存在する事を見出した。更にこのポリエステル組成物を溶融紡糸等により繊維化したり、その後、染色等の処理を行ってもこの状態を維持できることも確認して、上記目的を達成できる構成を見出したものである。共重合されている変性シリコーン化合物とブレンド状態にある変性シリコーン化合物の量及び構造は後述のように、H−NMR測定により区別・特定する事ができる。また上述の片末端二反応性官能基変性型、すなわち変性シリコーン化合物のシロキサン構造の片末端に2つの反応性官能基がある構造であることは、特開2002−48777号公報に記載されているように分子中に3個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂反応物をゲル浸透クロマトグラフィーにて分析する事によっても確認することができる。
【0016】
本発明のポリエステル組成物は、さらに平均粒子径が0.01〜0.5μmの範囲であって、かつ粒子径が0.5μmを超える粒子の頻度分布が20重量%以下である不活性微粒子をポリエステル組成物の全重量を基準として0.1〜5.0重量%含有している必要がある。
【0017】
その不活性微粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、シリコーンパウダー、カオリナイト、硫酸バリウム、酸化チタン等が挙げられ、これらよりなる群から少なくとも1種の化合物から構成されることが好ましい。また、不活性微粒子は単一種であっても、複数種を併用しても良い。更にこれらの中でも特に炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカゾルが好ましく使用される。また、リン酸カルシウムとしては活性水素原子を持たない第三リン酸カルシウムが特に好ましく使用される。
【0018】
本発明における不活性微粒子は、平均粒子径が0.01〜0.5μmの範囲である必要がある。平均粒子径が0.5μmを超えると、ゾル又は芳香族ポリエステル反応原液等の製造工程中で沈降しやすく、安定に供給・分散する事ができない。一方、平均粒子径が0.01μm未満では、粒子の比表面積が大きすぎ、芳香族ポリエステル反応中に容易に凝集粒子を形成し、製糸時の断糸が増大するため好ましくない。該不活性微粒子の平均粒子径は0.02〜0.4μmの範囲が好ましく、0.03〜0.3μmの範囲が更に好ましい。
【0019】
本発明における不活性微粒子においては、粒径が0.5μmを超える粒子の頻度分率が20重量%以下である必要がある。粒径が0.5μmを超える粒子の頻度分率が20重量%を超えると、得られたポリエステル組成物を製糸化後、アルカリ減量しても繊維表面に形成される微細孔が大きくなり、染色時の深色効果が得られないので好ましくない。また撥水性効果も劣る事がある。該不活性微粒子中の粒径が0.5μmを超える粒子の頻度分率は15重量%以下の範囲が好ましく10重量%以下の範囲が更に好ましい。
【0020】
本発明における不活性微粒子含有量はポリエステル組成物重量に対して0.1〜5.0重量%の範囲にある必要がある。該含有量が0.1重量%未満の場合、最終的に得られるポリエステル繊維の深色染色性が不十分となり、また、5重量%を超える場合は得られるポリエステル繊維の強度や耐熱性、耐光性が低下する為好ましくない。該含有量は0.15〜3重量%の範囲が好ましく、0.2〜1.0重量%の範囲が更に好ましい。
【0021】
本発明のポリエステル組成物においては、芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成される成分を主たる繰り返し単位とするポリエステルと上記変性シリコーン化合物からなる。芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールを繰り返し単位とするポリエステルは対応する芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体並びにジオールとから合成されるポリエステルであって、汎用樹脂としてその物性を損なわない範囲で目的に応じて他の成分が共重合されていても良い。エステル形成性誘導体とは炭素数1〜6個の低級アルキルエステル、炭素数6〜12個の低級アリールエステル、酸ハロゲン化物を挙げる事ができる。主たる繰り返し単位とは、ポリエステルを構成する全繰り返し単位中70モル%がその芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成される成分で構成されていることを表している。
【0022】
その芳香族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、無水フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル又は5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸ジメチル等を挙げることができる。またエステル形成性誘導体としては、上記のようなジメチルエステルその他の低級アルキルエステル以外に、酸塩化物を用いても良い。これらの中でも特に、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル又は2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを用いることが好ましい。
【0023】
またジオールとして、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールプロピオン酸、ポリ(エチレンオキシド)グリコール又はポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等を挙げることができ、特にエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール又は1,4−ブタンジオールを用いることが好ましい。
【0024】
これらのジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体並びにジオールはそれぞれ1種ずつを単独で用いても、2種以上を併用してもどちらでもよい。またこれらの好ましい組み合わせから得られるポリエステルであるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレン−2,6−ナフタレートが本発明のポリエステル組成物を構成するポリエステルとして好ましい。
【0025】
尚本発明におけるポリエステルには、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸若しくはトリメリット酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸若しくはその誘導体、グリセリン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム若しくはジメチロールプロピオン酸カリウム等の多価ヒドロキシ化合物若しくはその誘導体又はp−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を、本発明の目的を達成する範囲内であれば共重合してもよい。
【0026】
本発明のポリエステル組成物には通常ポリエステルの製造時に通常用いられるリチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム若しくはチタン等の金属化合物触媒、着色防止剤・酸化防止剤としてのリン化合物、艶消し剤としての二酸化チタン又はその他のポリエステルの改質に用いられ、上述の不活性微粒子以外の不活性微粒子や有機化合物等を本発明の目的を奏する範囲内で含んでいてもよい。
【0027】
本発明におけるポリエステルの製造方法としては、概ね公知の任意の方法で合成すればよい。芳香族ジカルボン酸等がテレフタル酸等の場合では通常、テレフタル酸とアルキレングリコールとを直接エステル化反応させる方法、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル交換反応させる方法、又はテレフタル酸とアルキレンオキサイドを反応させる方法によってテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第一段の反応を行い、引続いて重合触媒の存在下に減圧加熱して所望の重合度になるまで重縮合させる第二段の反応によって製造される。この重縮合させる工程が始まる前までに上述した反応性変性シリコーン化合物をポリエステル製造完了前の適切な段階で反応槽内に供給すればよい。この供給段階は上記の範囲内において、ポリエステルに共重合される量を多くしたい場合にはより早い段階で供給し、配合(ブレンド状態)量を多くしたい場合にはより遅い段階で供給する事が好ましい。この適切な段階は試行錯誤で容易に見出すことができる。また、我々は通常のポリエステルの製造工程の製造条件を大幅に変更することなく、通常の製造条件で製造でき且つ目的とする撥水特性を兼ね備えた化合物について鋭意研究を継続した結果、上記一般式(1)で表される化合物を見出すに至った。また上記の不活性微粒子については、第一段の反応の当初から第二段の重縮合反応が終了するまでに反応槽に供給することが好ましいが、第一段の反応当初から終了後までに反応槽に供給する事がより好ましい。
【0028】
第一段階の反応がエステル交換反応の場合の反応温度は、通常180〜230℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaである。また、第二段階の反応(重縮合反応)時の反応温度は、通常200〜260℃であり、反応圧力は通常60〜0.1kPaである。このようなエステル交換反応及び重縮合反応は一段で行っても、複数段階に分けて行っても良い。
【0029】
これらの反応段階で用いるエステル交換触媒としては、ナトリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、チタン、亜鉛又はマンガン等の金属化合物を使用するのが好ましい。重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物又はスズ化合物を使用するのが好ましい。触媒の使用量は、エステル交換反応、重縮合反応を進行させるために必要な量であるならば、特に限定されるものではなく、また複数の触媒を併用することも可能である。
【0030】
また第一段階の反応が直接エステル化反応の場合には、触媒を用いることなく、原料である芳香族ジカルボン酸自体がエステル化触媒となりうるので、触媒を用いなくでも直接エステル化反応が進行する。直接エステル化反応の場合であっても必要に応じて上記の触媒を加えることができ、触媒を用いることを除外するものではない。
【0031】
また、第一段階の反応の途中、第二段階の反応の途中若しくは反応終了後のいずれかにおいて安定剤を添加することも好ましい。その安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート等の酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、若しくはポリリン酸等のリン化合物、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が好ましい。
【0032】
重縮合段階においては溶融粘度のモニターすること等の手法により目的とするポリエステルの重合度(分子量、固有粘度)であることを確認できるまで、上記の条件にて重縮合反応を行う。そして目的とする分子量に到達したことを確認した後、重縮合反応を終了し、反応槽から吐出し冷却後チップ状にカットすることによりポリエステルを得ることができる。そのチップを乾燥後、後述のポリエステル繊維等の製造に用いる事ができる。また一旦チップ状に成形することなく、重縮合反応終了後のポリエステルからそのままポリエステル繊維を製造しても良い。 本発明のポリエステル組成物の固有粘度(溶媒:1,1,2,2−テトラクロルエタン40重量%とフェノール60重量%の混合溶媒)は特に制限は無いが、通常、繊維やフィルム、ボトル等の樹脂成型品において通常使用することができる範囲であることが好ましく、具体的には0.40〜1.00dL/gの範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.50〜0.80dL/gである。また、該ポリエステル組成物は固相重合によって固有粘度を高めることも好ましく実施される。
【0033】
本発明の第二に係るポリエステル繊維及び複合繊維は、上述のポリエステル組成物を用いて通常知られるポリエステル繊維及び複合繊維に適用される方法と同様の方法で製造することができる。繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、円形断面のほか、楕円形断面、三角断面、星型断面であってもよい。本発明における複合繊維は、公知のいずれの方法も採用することができるが、特に撥水性を発現させるためには、いわゆる「芯鞘構造」の「鞘」として使用することが好ましい。この際、単芯構造であっても、海島型の多芯構造であってもよい。
【0034】
また、紡糸方法も特に限定はなく、長繊維、短繊維、スパンボンド、メルトブロー紡糸のいずれの方法も採用することができる。紡糸速度も特に限定はなく、紡糸に引続いて延伸、仮撚加工を施してもよい。例えば500〜3500m/分の速度で溶融紡糸し、延伸、熱処理する方法、1000〜5000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸、仮撚加工を同時に又は続いて行う方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法等を採用することができる。 本発明のポリエステル繊維は繊維表面に凹凸構造を発現させるため、深色染色効果を発現させるためにはアルカリ減量処理を施すことが好ましい。アルカリ減量処理は公知の方法を採用する事ができるが、前述の手法により得られたポリエステル繊維を用いて織編物の状態にした後に、アルカリ減量処理を施すことにより、ポリエステル繊維表面の凹凸構造を発現させることができ、繊維表面に当たった可視光線が乱反射することで本発明の課題の1つである深色染色性を発現する事ができ、同時に繊維を構成するポリエステル組成物に撥水性が付与されており、更に繊維表面が凸凹になっていることで水との接触角が増大し、撥水性を更に改善することが可能となる。
【0035】
ここで、本発明のポリエステル繊維のアルカリ減量速度は、濃度10g/L、100℃の水酸化ナトリウム水溶液中において、2.5〜5.0重量%/時間の範囲にあることが好ましい。アルカリ減量速度が2.5重量%/時間より小さい場合、アルカリ減量加工工程が長時間となり、5.0重量%/時間より大きい場合は、最終的なアルカリ減量率の調整が困難になり好ましくない。アルカリ減量速度は3.0〜4.5重量%/時間の範囲が更に好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)固有粘度:
1,1,2,2−テトラクロルエタン40重量%とフェノール60重量%の混合溶媒中に試料を溶解して定法に従って35℃にて測定した。
(2)接触角:
試験片から単糸を採取し、協和界面科学(株)社製 自動微小接触角測定装置「MCA−2」を使用し、蒸留水を使用して単糸表面の接触角を測定した。アルカリ減量後の接触角が120deg以上を本発明の目的を達成できているレベルであると判断した。
(3)撥水性:
JIS−L−1092(スプレー法)(1992)により測定した。その測定後の布帛の状態から当該JIS規格に記載の以下の基準に従って0〜100点の点数で評価を行った。
100点:表面に湿潤や水滴の付着が無いもの。
90点:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの。
80点:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの。
70点:表面の半分以上に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの。
50点:表面全体に湿潤を示すもの。
0点:表面及び裏面が全体に湿潤を示すもの。
(4)洗濯耐久性:
JIS−L−0271−103に規定される洗濯を10回繰返した。その洗濯終了後、上記の撥水性の評価を行った。洗濯後の点数が80点以上を本発明の目的を達成できているレベルであると判断した。
(5)製糸性:
紡糸工程における製糸性について、以下の4段階評価で表した。
◎:毛羽発生・糸切れが無く、非常に良好。
○:やや毛羽の発生があるものの糸切れが無く良好。
△:やや毛羽の発生があり、糸切れが発生(1〜2回/hr)
×:毛羽が発生・糸切れが多発(3回/hr以上)
これらの評価の中で○以上が実用的に使用可能な評価結果である。
(6)含有シリコーン化合物量:
H−NMR法にてポリエステル組成物中に含有している変性シリコーン量を定量した。更にポリエステル試料を適切な溶媒に溶解させて後貧溶媒を加えて再沈殿操作を行い、濾過により得られた固形物についてもH−NMR測定を行った。後者の再沈殿操作後の測定結果の値からポリエステル中に共重合している変性シリコーン化合物の量を定量し、前者の再沈殿前の測定結果の値と、後者の測定結果の値との差からブレンドしているシリコーン化合物量を定量した。また変性シリコーン化合物の化学構造においてはブレンドしている成分については再沈殿操作の溶媒中の成分を回収成分を、共重合されている成分については再沈殿後のポリエステルを加水分解後の残渣成分を測定する事により行うことができる。
(7)アルカリ減量速度:
繊維を布帛に成形した試験片を、濃度10g/L、100℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浴比30で浸して、布帛の重量減少率が20%になるまでアルカリ減量処理を施し、重量減少率を時間に対してプロットしてアルカリ減量速度を求めた。
【0037】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、変性シリコーン化合物(一般式(1)で示され、Xが水酸基、R乃至Rがメチル基、Rがトリメチレン基、R及びRがメチレン基、Rがエチル基、n=約9である化合物:チッソ(株)社製、商品名 FM−DA11 平均分子量=1,000)10重量部、酢酸マンガン4水塩0.031重量部を反応器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で3時間かけて140℃から240℃まで昇温して、生成するメタノールを系外に留出しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応を終了させた後、安定剤としてリン酸0.024重量部及び重縮合反応触媒として三酸化アンチモン0.04重量部、及び不活性微粒子として平均粒子径0.06μmの第三リン酸カルシウムの20重量%エチレングリコールスラリー2.6重量部(ポリエステル組成物重量に対して0.5重量%となる量)を添加した後、285℃まで昇温して、減圧下で重縮合反応を実施してポリエステル組成物を得た。このポリエステル組成物の固有粘度を測定した所、0.65dL/gであった。また、該ポリエステル組成物中の含有変性シリコーン化合物量は8.5wt%であった。ポリエステル組成物の評価結果を表1、3に示した。
【0038】
該ポリエステルを乾燥させた後、一軸押出機にて285℃で溶融し、孔径0.2mmΦの丸孔押出ノズルホール数24個を有する紡糸口金から紡糸押出し温度290℃で吐出させ、1200m/分、90℃に設定された加熱ゴデットロールと、3800m/分、120℃に設定された延伸加熱ゴデットロールを介して巻き取り、75デニール/24フィラメントのポリエステル原糸を得た。次いで得られたポリエステル原糸を経糸及び緯糸に使用して平織物を製織し、この布帛を常法により精錬、乾燥したのち、180℃でヒートセットした。また、その一部を常法により減量率が20%となるようにアルカリ減量した。原糸及びアルカリ減量した布帛から単糸を抜出し、接触角測定を実施した。また、織物は前述の方法で撥水性能の評価を実施した。結果を表3に示した。表中変性シリコーン化合物において水酸基、カルボキシル基等が一般式(1)のようにシロキサン構造の鎖の片方のみにある化合物を「片末端」と表し、双方ある化合物を「両末端」と表し、水酸基、カルボキシル基が分子中に無いものを「非変性」と表した。また反応性官能基の数とは変性シリコーン化合物1分子中の水酸基、カルボキシル基等の数を表す。
【0039】
[実施例2,3]
変性シリコーン化合物含有量が表1に記載の量となるように変性シリコーン化合物(FM−DA11)の添加量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。
【0040】
[実施例4,5]
使用する変性シリコーン化合物を商品名 FM−DA21(一般式(1)で示され、Xが水酸基、R乃至Rがメチル基、Rがトリメチレン基、R及びRがメチレン基、Rがエチル基、n=約63である化合物:チッソ(株)社製、平均分子量5,000)とし、含有量が表1に記載の量となるように添加量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。
【0041】
[実施例6]
テレフタル酸ジメチル100重量部、トリメチレングリコール70重量部、変性シリコーン化合物(FM−DA11)10重量部、テトラ−n−ブチルチタネート0.053重量部を反応器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で3時間かけて140℃から210℃まで昇温して、生成するメタノールを系外に留出しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応を終了させた後、実施例1と同様の種類、量の不活性微粒子を反応槽に添加して、265℃まで昇温して、減圧下で重縮合反応を行う他は実施例1と同様に実施してポリエステル組成物を得た。ポリエステル組成物の評価結果を表1、3に示した。
【0042】
該ポリエステル組成物を乾燥させた後、一軸押出機にて260℃で溶融し、孔径0.2mmΦの丸孔押出ノズルホール数24個を有する紡糸口金から紡糸押出し温度265℃で吐出させ、1200m/分、60℃に設定された加熱ゴデットロールと、3800m/分、160℃に設定された延伸加熱ゴデットロールを介して巻き取り、77デニール/24フィラメントのポリエステル原糸を得た。次いで得られたポリエステル原糸を経糸及び緯糸に使用して平織物を製織し、この布帛を常法により精錬、乾燥したのち、160℃でヒートセットした。また、その一部を常法により減量率が30%となるようにアルカリ減量した。原糸及びアルカリ減量した布帛から単糸を抜出し、接触角測定を実施した。また、織物は前述の方法で撥水性能の評価を実施した。結果を表3に示した。
【0043】
[実施例7〜12]
添加する不活性微粒子の種類・平均粒径を表2に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1、3に示した。
【0044】
[比較例1]
変性シリコーン化合物含有量が表1に記載の量となるように変性シリコーン化合物(FM−DA11)の添加量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。製糸工程での断糸が多発し、安定生産が困難であり、原糸サンプルを確保する事ができなかった。結果を表2、3に示した。
【0045】
[比較例2]
変性シリコーン化合物含有量が表1に記載の量となるように変性シリコーン化合物(FM−DA11)の添加量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。
【0046】
[比較例3〜9]
変性シリコーン化合物を表1に記載の構造を有するシリコーン化合物とし、含有量が表1に記載の量となるように添加量を調整したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。それぞれの例で用いたシリコーン化合物は以下の通りである。
・比較例3で用いた化合物:n=約200である以外は実施例1で用いた化合物と同じ
・比較例4で用いた化合物:一般式(1)で表される化合物で、R乃至Rがメチル基、Rがトリメチレン基、−R−CR(R−X)の部分が−COH、n=約10である化合物
・比較例5で用いた化合物:一般式(1)で表される化合物で、R乃至Rがメチル基、−R−O−R−CR(R−X)の部分が−CCOOH、n=約10である化合物
・比較例6で用いた化合物:一般式(1)で表される化合物で、R乃至Rがメチル基、Rがトリメチレン基、−R−CR(R−X)の部分が−OOCC(CH)=CH、n=約10である化合物
・比較例7で用いた化合物:一般式(1)で表される化合物でR及びRがメチル基、R及び−R−O−R−CR(R−X)の部分が−C−O−COH、n=約9である化合物
・比較例8で用いた化合物:一般式(1)で表される化合物でR及びRがメチル基、R及び−R−O−R−CR(R−X)の部分がCCOOH、n=約10である化合物
以上すべてチッソ(株)社製
・比較例9で用いた化合物:下記式(2)で表されるポリジメチルシロキサンであって、m=約65である化合物
【0047】
【化2】

【0048】
[比較例10]
変性シリコーン化合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。
【0049】
[比較例11]
添加する不活性微粒子の種類を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。
【0050】
[比較例12]
不活性微粒子を添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表2、3に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により、着用、洗濯を繰返しても撥水性能の低下が少ない優れた撥水性を示し、且つ良好な風合と深色染色性を有する合成繊維を得ることができ、耐久撥水性が要求される衣料用途、産業資材用途の素材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成される成分を主たる繰返し単位とするポリエステル、シリコーン化合物及び不活性微粒子からなるポリエステル組成物であって、
該シリコーン化合物が下記一般式(1)
【化1】

[上記式(1)中、R,R,Rは同一若しくは異なっても良く、一部若しくは全部がハロゲン原子で置換されていても良い炭素数18個以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基を表す。R,R,Rは同一若しくは異なっても良い炭素数10個以下のアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基又はアルキルアリーレン基を表す。Rは炭素数10個以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキルアリール基を表わし、Xはカルボキシル基及び水酸基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基であり、nは1〜100である。]
で表される数平均分子量が10,000以下である変性シリコーン化合物であって、得られるポリエステル組成物重量に対し1.0〜20.0重量%含有されており、該ポリエステル組成物に含有されている変性シリコーン化合物のうち、ポリエステル組成物重量に対して0.2〜5.0重量%が該ポリエステルに共重合されており、残りの変性シリコーン化合物がポリエステル組成物中に配合されており、該ポリエステルに共重合されている変性シリコーン化合物の重量が該ポリエステル組成物に含有されている変性シリコーン化合物の重量に対して50重量%以下であり、該不活性微粒子の平均粒子径が0.01〜0.5μmの範囲であって、該不活性微粒子の粒子径が0.5μmを超える粒子の頻度分布率が20重量%以下である不活性微粒子をポリエステル組成物重量に対して0.1〜5.0重量%含有するポリエステル組成物。
【請求項2】
不活性微粒子が炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、シリコーンパウダー、カオリナイト、硫酸バリウム及び酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物から構成される請求項1記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
リン酸カルシウムが第三リン酸カルシウムである請求項2記載のポリエステル組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル組成物を溶融紡糸して得られるポリエステル繊維。
【請求項5】
請求項4に記載のポリエステル繊維にアルカリ減量処理を施されたポリエステル繊維。

【公開番号】特開2008−248164(P2008−248164A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93078(P2007−93078)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】