説明

撥水性ポリエステル繊維及びそれから成る布帛

【課題】布帛等の繊維構造物に撥水後加工処理を施さなくても優れた撥水性能を有し、又長期間の使用や繰返しの洗濯等による撥水性の低下がなく、且つ着色した際に色の深みと鮮明性を呈するポリエステル繊維及びそれを含む布帛に関するものである。
【解決手段】特定の含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物を添加したポリエステルからなるポリエステル繊維をアルカリ減量してなるポリエステル繊維において、下記式(2)で表されるエステル反応性シリコーンをポリエステル100重量部に対し2〜20重量部含有する撥水性ポリエステル繊維とすることにより解決する。
【化1】


[上記式中、Rはアルキル基を表し、nは1〜100の整数]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間にわたる使用においても撥水性の低下がなく、且つ繊維表面に特殊な微細孔を有し、着色した際に色の深みと鮮明性に優れ且つヌメリ感の良好な撥水性ポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル繊維は多くの優れた特性を有するがゆえに合成繊維として広く使用されている。しかしながら、ポリエステル繊維は羊毛や絹の如き天然繊維、レーヨン、アセテートやアクリル系繊維に比較して、着色した際に色に深みがないため発色性、鮮明性に劣る欠点がある。そのため様々な改良が行われてきた。例えば特開昭58−104215号公報では特定のリン化合物や金属をポリエステル内に添加し、その後アルカリ溶液でアルカリ減量することにより繊維表面に微細孔を形成させることにより色の深味や鮮明性が向上することが提案されている。
【0003】
こうした方法により鮮明性で深色性のポリエステル布帛が開発されてきたが、こうした中で、近年益々スポーツ用、カジュアル用に向けて撥水機能やよりヌメリ感の付与など、更なる高機能化、風合いの改良が求められている。
【0004】
従来より、繊維、糸、布帛等に撥水性を付与する方法として、例えば特開平5−106171号公報等に示されるように、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂を含有する撥水性樹脂分散液等で処理して表面にこれらの樹脂を付着せしめて、撥水処理を施すことは広く行われている。しかしながら、これらの加工処理で得られた繊維、糸、布帛等には撥水性はあるものの、耐久性が低く、使用に伴って処理した樹脂が、その表面から脱落して撥水性を失い易いという欠点を有している。又十分な撥水耐久性を付与する程の量を処理すると布帛の風合いが硬くなるという問題点があった。そのためにポリエステル繊維のスポーツウェア分野等撥水耐久性と風合いが共に要求される分野への応用が大きく制限されていた。
こうした現状に鑑み高耐久撥水性のあるポリエステル繊維の開発が大いに望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−104215号公報
【特許文献2】特開平5−106171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような現状に鑑み、布帛等の繊維構造物に撥水後加工処理を施さなくても優れた撥水性能を有し、又長期間の使用や繰返しの洗濯等による撥水性の低下がなく、且つ着色した際に色の深みと鮮明性を呈するポリエステル繊維を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物を添加したポリエステルからなるポリエステル繊維をアルカリ減量してなるポリエステル繊維に下記式(2)で表されるエステル反応性シリコーンをポリエステル100重量部に対し2〜20重量部含有する撥水性ポリエステル繊維とする。
【0008】
【化1】

[上記式中、Rはアルキル基を表し、nは1〜100の整数]
【発明の効果】
【0009】
含金属リン化合物等及び特定のエステル形成性シリコーンを含有させたポリエステル繊維にアルカリ減量を施すことにより含金属リン化合物を溶出し、繊維表面に微細孔を形成させ、優れた耐久撥水性と着色した際に色の深みと鮮明性を呈するポリエステル繊維及びそれからなる布帛とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の撥水ポリエステル繊維ついて詳述する。
本発明のポリエステル繊維で用いるポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびこれらを主体として、これらのジカルボン酸成分またはグリコール成分をイソフタル酸、5−ナトリウムイソフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールまたはペンタエリスリトール等で共重合したものを挙げることができる。なかでも機械的性質、成形性等のバランスのとれたポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0011】
本発明の撥水性ポリエステル繊維は上記のポリエステルを使用し、撥水性を付与するために下記式(2)で示されるエステル反応性シリコーンを含有するポリエステルポリマーとする。
【0012】
【化2】

[上記式中、Rはアルキル基を表し、nは1〜100の整数]
【0013】
ここでエステル反応性シリコーンを含有するポリエステルとは、エステル反応性シリコーンがポリエステルに対して化学結合により分子鎖に取り込まれて共重合されている状態とポリエステルとは化学結合せずブレンド状態で存在する両方を意味する。共重合していない成分はブレンド状態でポリエステル組成物中に安定に存在し、繊維化での悪影響を及ぼさない。これはエステル反応性シリコーン共重合ポリエステルが未反応のエステル反応性シリコーン部分を安定化するのではないかと推定している。
【0014】
本発明におけるエステル反応性シリコーン含有ポリエステルを得る方法としては、公知の任意の方法で合成すればよい。例えば、ジカルボン酸成分がテレフタル酸の場合、テレフタル酸とアルキレングリコールとを直接エステル化反応させる方法と、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとアルキレングリコールとをエステル交換反応や又はテレフタル酸とアルキレンオキサイドを反応させる方法によってテレフタル酸のグリコールエステルを生成させる第一段の反応を行い、引続いて重合触媒の存在下に減圧加熱して所望の重合度になるまで重縮合させる第二段の反応によって製造する方法があるが、どちらの方法でも可能である。エステル反応性シリコーン化合物の添加時期は、共重合の割合を満足させる観点から、このポリエステルの重縮合反応の前から重縮合反応の終了以前に行なうのが好ましく、複数回に分けて添加しても良い。そして、この添加時期や添加量、反応時間によって上記共重合しているエステル反応性シリコーン化合物の割合を調整することができる。
【0015】
ここで該エステル反応性シリコーン成分は2〜20重量%含有する必要がある。2重量%未満では、十分な撥水性が得られず、20重量%を超える場合には、繊維としての強度が低下するために長期間の製糸ランニング時に安定した生産が困難になる。
【0016】
更にエステル反応性シリコーンのうち、ポリエステルと共重合しているものが、エステル反応性シリコーンの全重量に対して、20〜50重量%の範囲であることが好ましい。20%未満ではブレンド状態のエステル反応性シリコーンのポリエステル中への分散性が悪化し製糸性が低下し好ましくなく、50%を超える場合はヌメリ感が低下したり又毛羽が発生したり製糸性が低下し好ましくない。好ましくはエステル反応性シリコーンの共重合量はエステル反応性シリコーンの全重量に対して25〜40%重量である。
【0017】
本発明で使用する含金リン化合物は下記一般式(1)で表されるリン化合物である。
【化3】

[式中、R1及びR2は一価の有機基であってR1及びR2は同一でも異なってもよく、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であって、mはMがアルカリ金属の場合は1、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2]
【0018】
上記含金属リン化合物を得るには通常正リン酸又は対応する正リン酸エステル(モノ、ジ、又はトリ)と所定量の対応する金属の化合物とを溶媒の存在下加熱反応させることによって容易に得られる。この際の溶媒として対象ポリエステルの原料として使用するグリコールを使用するのが好ましい。
【0019】
含金リン化合物の添加量はポリエステル酸成分に対して0.1〜3モル%とする必要がある。0.1モル%未満では色の深みや鮮明性が発現できず、3モル%を超える場合には、得られた繊維の強度が充分でなく、その後の織編みの工程にて安定した繊維製品の製造が困難となる。
【0020】
上記含金属リン化合物と併用するアルカリ土類金属化合物としてはアルカリ土類金属の有機カルボン酸塩、例えば酢酸カルシウム、しゅう酸カルシウム、安息香酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩等が挙げられる。
【0021】
上記含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物は予め反応させること無く前述のエステル反応性シリコーン含有ポリエステルの反応系に添加する必要がある。こうすることによって不溶性粒子をポリエステル中に均一な超微粒子状態で生成せしめることができる。予め外部で上記含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物を反応させて不溶性粒子とした後にポリエステル反応系に添加したのではポリエステル中の不溶性粒子の分散性が悪くなり最終的に得られるポリエステル繊維の色の深味や鮮明性が得られない。
【0022】
上記得られたポリエステルは公知の方法により製糸する。例えば、得られたシリコーン含有ポリエステルを溶融状態で繊維状に押出し、それを500〜3500m/分の速度で溶融紡糸し、延伸、熱処理する方法、1000〜5000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸する方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法などが好ましく挙げられる。 得られたエステル反応性シリコーン含有ポリエステル繊維は液量500ピコリットルの純水に対する単繊維の接触角が110度以上好ましくは115度以上である必要がある。110度未満の場合では、布帛にした場合に十分な撥水性を示さない。
【0023】
また、エステル反応性シリコーンを含有することにより繊維に様々な撥水性とともに他の特性を付与できる。特に式(2)で表されるエステル反応性シリコーンを含有させることにより、繊維化後に独特のヌメリタッチを付与することが出来る他に、エステル反応性シリコーン含有させることにより、繊維形成時にポリエステルの非晶部分の配向を乱す効果や光の屈折率を変化させるため濃染効果が可能になる。これらの効果は(式2)から分かるように片末端にエステル反応性基があるためポリエステルに共重合された部分のポリオルガノシロキサン部分はポリマー主鎖からペンダント状に分岐して存在することにより、より効果が大きくなるものと推定している。
【0024】
このようにして得られたポリエステル繊維から含金属リン化合物、アルカリ土類金属化合物等を除去するには、必要に応じて延伸熱処理又は仮撚加工等を施した後、又は更に布帛にした後、アルカリ化合物の水溶液で処理することにより容易に行うことができる。
ここで使用するアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等をあげることができる。なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0025】
かかるアルカリ化合物の水溶液の濃度は、アルカリ化合物の種類、処理条件によって異なるが、通常0.01〜40重量%の範囲が好ましく、特に0.1〜30重量%の範囲が好ましい。処理温度は常温〜100℃の範囲が好ましく、処理時間は1〜4時間の範囲で通常行われる。また、このアルカリ化合物の水溶液の処理によって溶出除去する量は、繊維重量に対して2重量%以上の範囲にすべきである。好ましくは2〜40%である。このようにアルカリ化合物の水溶液で処理することによって、繊維軸方向に配列し、且つ度数分布の最大値が繊維軸の直角方向の幅が0.1〜0.3μmの範囲であって繊維軸方向の長さが0.1〜5μmの範囲になる大きさを有する微細孔を繊維表面及びその近傍に多数形成せしめることができ、染色した際に優れた色の深みを呈するようになる。2%未満では微細孔が少なく色の深味が得られず、40%を超える場合では繊維の強度が低下し好ましくない。
【0026】
なお、本発明の方法により得られるポリエステル繊維には、必要に応じて任意の添加剤、例えば触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤等が含まれていても良い。
このようにして得られる繊維を使用した織編物は、優れた撥水性能を有し、長期間の使用や繰返しの洗濯等による撥水性の低下がなく、且つヌメリ感、触感を有し、着色した際に色の深みと鮮明性を呈するという優れた布帛とすることができる。。
【0027】
本発明の撥水性ポリエステル繊維の断面形状は、用途等に応じて任意の形状とすることができ、例えば円形の他、三角、偏平、星型、V型等の異形断面またはそれらの中空断面が例示できる。
上記により得られた混繊糸は公知の方法により製織編され布帛とし、公知のアルカリ減量装置を用いて含金属アルカリ化合物、アルカリ土類化合物からなる不溶性粒子を溶出し、その後染色等の仕上げ加工に供すことができる。
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
測定方法は下記の方法で実施した。
(1)強度
20℃、65%RHの雰囲気下で引張試験機により、試料長20cm、速度20cm/分の条件で破断時の強度を測定した。測定数は10とし、その平均をそれぞれの強度とした。
【0030】
(2)ヌメリ感
熟練した5人のパネラーによる官能評価で、全員が極めて良好と判定したものを(優)、3人以上が良好と判断したものを(可)、3人以上が不良と判定したものを(不良)と、三段階にランク付けした。
【0031】
(3)含有シリコーン化合物量:
H−NMR法にてポリエステル組成物中に含有している変性シリコーン量を定量した。更にポリエステル試料を適切な溶媒に溶解させて貧溶媒を加えて再沈殿操作を行い、濾過により得られた固形物についてもH−NMR測定を行った。後者の再沈殿操作後の測定結果の値からポリエステル中に共重合している変性シリコーン化合物の量を定量し、前者の再沈殿前の測定結果の値と、後者の測定結果の値との差からブレンドしているシリコーン化合物量を定量した。また変性シリコーン化合物の化学構造においてはブレンドしている成分については再沈殿操作の溶媒中の成分を回収成分を、共重合されている成分については再沈殿後のポリエステルを加水分解後の残渣成分を測定することにより行うことができる。
【0032】
(4)紡糸性:
紡糸工程における紡糸性について、以下の4段階評価で表した。
◎:毛羽発生・糸切れが無く、非常に良好。
○:やや毛羽の発生があるものの糸切れが無く良好。
△:やや毛羽の発生があり、糸切れが発生(1〜2回/hr)
×:毛羽が発生・糸切れが多発(3回/hr以上)
これらの評価の中で○以上が実用的に使用可能な評価結果である。
【0033】
(5)撥水性
各実施例および比較例で得られたポリエステル繊維を経糸及び緯糸に使用して、平織物を製織し、この布帛を常法により精錬、乾燥したのち、180℃でヒートセットした。また、その一部を常法により減量率が30重量%となるようにアルカリ減量した。このようにして得られたアルカリ減量後の布帛を、JIS−L−1092(スプレー法)(1992)により測定した。その測定後の布帛の状態から該JIS規格に記載の以下の基準で0〜100点の点数で評価を行った。
100点:表面に湿潤や水滴の付着が無いもの。
90点:表面に湿潤しないが、小さな水滴の付着を示すもの。
80点:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの。
70点:表面の半分以上に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの。
50点:表面全体に湿潤を示すもの。
0点:表面及び裏面が全体に湿潤を示すもの。
【0034】
(6)深色性
JIS Z 8729(色の表示方法−L*a*b*表色系及び−L*u*v*表色系)に記載のL*を深色性を表す値とし、光源D65、視野角は10°として求めた。
【0035】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)、エステル反応性シリコーン(チッソ製FM−DA11)10部をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から230℃まで昇温して生成するエタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行った。続いて得られた反応生成物に、0.5部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.693モル%)と0.31部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して1/2倍モル)とを8.5部のエチレングリコール中で120℃の温度において全還流下60分間反応せしめて調整したリン酸エステルカルシウム塩の透明溶液9.31部に室温下0.57部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して0.9倍モル)を溶解せしめて得たリン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシウムとの混合透明溶液9.88部を添加し、重合缶に移した。次いで1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて230℃から285℃まで昇温した。その後、1mmHg以下の減圧下、重合温度285℃で更に3時間、合計4時間30分重合した。ここで得られたポリマーを0.3mmφ×0.6mmL−72ホールの紡糸口金からトータル吐出量30g/minで押し出し、1000m/minで巻き取った。巻き取った未延伸糸を90度で3.8倍に延伸し、180℃で熱処理することにより150dtex/72フィラメントの糸条を得た。撚数3,100T/mで撚糸し、セット温度75℃で撚止め加工し、これを用いて巾148cm、長さ55m、目付け98g/m2 の織物を作成した。
【0036】
この織物を常法によりヒートセット後、3.5%の水酸化ナトリウム水溶液で80℃×10分にて13%の減量率で処理すると共にシボ立てさせた。このアルカリ減量処理後の布帛をDianix BlackHG―FS(三菱化成工業製)15%owfで130℃で60分間染色後、水酸化ナトリウム1g/lおよびハイドロサルファイト1g/lを含む水溶液にて70℃で20分間還元洗浄して黒色布を得た。得られた布帛の撥水性、黒深色性に優れたものであり、しなやかでヌメリ感のある風合を有していた。
【0037】
[実施例2]
実施例1においてエステル反応性シリコーンを2部用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。深色性、ヌメリ感も良好であった。
【0038】
[実施例3]
実施例1においてエステル反応性シリコーンを20部用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。深色性がありヌメリ感も最も良好であった。
【0039】
[実施例4]
実施例1において0.3部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.416モル%)と0.19部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して1/2倍モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。深色性がありヌメリ感も良好であった。
【0040】
[実施例5]
実施例1において3.0部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して4.16モル%)と1.9部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して1/2倍モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0041】
[比較例1]
実施例1においてエステル反応性シリコーンを1部用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0042】
[比較例2]
実施例1においてリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.0693モル%)を添加しない以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0043】
[比較例3]
実施例1において0.05部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.0693モル%)と0.031部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して1/2倍モル)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0044】
[比較例4]
エステル反応性シリコーン、リン化合物共に含有しない以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
高耐久性の撥水性を有し色の深味や鮮明性に優れるポリエステル布帛として、スポーツ用、カジュアル用、紳士婦人スーツ等の衣料用として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを構成する酸成分に対して0.1〜3モル%の下記式(1)で表される含金属リン化合物(a)及び該含金属リン化合物に対して0.5〜1.2倍モルのアルカリ土類金属化合物(b)を(a)と(b)とを予め反応させることなく添加したポリエステルからなるポリエステル繊維をアルカリ減量してなるポリエステル繊維であって、ポリエステルが下記式(2)で表されるエステル反応性シリコーンをポリエステル100重量部に対し2〜20重量部含有することを特徴とする撥水性ポリエステル繊維。
【化1】

[式中、R1及びR2は一価の有機基であってR1及びR2は同一でも異なってもよく、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であって、mはMがアルカリ金属の場合は1、Mがアルカリ土類金属の場合は1/2]
【化2】

[上記式中、Rはアルキル基を表し、nは1〜100の整数]
【請求項2】
エステル反応性シリコーンの一部がポリエステルと共重合しており、ポリエステルと共重合しているエステル反応性シリコーンの量が、エステル反応性シリコーンの全含有量に対して、20〜50重量%の範囲である請求項1記載の撥水性ポリエステル繊維。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の撥水性ポリエステル繊維を含むポリエステル布帛。

【公開番号】特開2009−7685(P2009−7685A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167683(P2007−167683)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】