説明

撥水性多孔質材料の製造方法および撥水性多孔質材料

【課題】 撥水性を有する多孔質材料の製造方法、および、撥水性多孔質材料を提供する。
【解決手段】 多孔質材料を、フッ素混合ガスを用い材料表面をフッ素化して撥水性とする、撥水性多孔質材料の製造方法。また、この製造方法において、フッ素混合ガスとして、フッ素濃度1%以下に不活性ガスで希釈されたフッ素混合ガスを用いる。さらに、多孔質材料を、フッ素混合ガスを用い材料表面をフッ素化して撥水性とすることにより製造された、撥水性多孔質材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性を有する多孔質材料、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性を有する多孔質材料は、その撥水性を活用して気液分離などの分野への応用が期待されている。
撥水性や親水性は材料表面に関わる機能であるために、多孔質材料の全体ではなく表面だけを修飾することで撥水性や親水性を付与する技術が各種知られている。例えば、多孔質膜の表面にフッ素化重合体が保持されてなる撥水性多孔質膜が知られている(特許文献1参照)。プラズマフッ素化処理法を用いて多孔質物品をフッ素化することが知られている(特許文献2参照)。多孔質膜の表面に重合体を保持させてなる親水化多孔質膜が知られている(特許文献3参照)。
フッ素を含まない合成樹脂からなる多孔質膜の表面をフッ素ガスで処理してフッ素化した表面フッ素化多孔質膜、チューブとその湿度調整装置への応用が知られている(特許文献4参照)。
フッ素化のフッ素源として、フッ素分子を用いて多孔質材料をフッ素化して得られることを特徴とするフッ素化多孔質材料が知られている(特許文献5参照)。
このように、多孔質材料の表面を含フッ素修飾する方法は知られていた。しかしながら、これまで、多孔質材料からフッ素ガスを用いて撥水性多孔質材料を得る方法は知られていなかった。
【特許文献1】特開平6−73229号公報
【特許文献2】特表2005−511877号公報
【特許文献3】特開昭63−190602号公報
【特許文献4】特開平5−264069号公報
【特許文献5】特開2004−339488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、撥水性を有する多孔質材料の製造方法を提供し、撥水性多孔質材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は多孔質材料に関して鋭意検討した結果、多孔質材料をフッ素混合ガスと反応させることによって、水との接触角が大きくなり撥水性を付与できることだけでなく、水浸透性の多孔質材料においても撥水性が付与されることで撥水性多孔質材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の目的は、下記の手段によって達成された。
【0005】
(1)多孔質材料を、フッ素混合ガスを用い材料表面をフッ素化して撥水性とする、撥水性多孔質材料の製造方法。
(2)前記フッ素混合ガスが、フッ素濃度1%以下に不活性ガスで希釈されたフッ素混合ガスであることを特徴とする、(1)項記載の撥水性多孔質材料の製造方法。
(3)フッ素化する前の多孔質材料が水浸透性多孔質材料であることを特徴とする、(1)または(2)項記載の撥水性多孔質材料の製造方法。
(4)多孔質材料を、フッ素混合ガスを用い材料表面をフッ素化して撥水性とすることにより製造された、撥水性多孔質材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、元の多孔質材料の強度や形状を保った撥水性多孔質材料を得ることができる。また、本発明の撥水性多孔質材料は、例えば、選択透過膜、気体分離膜、バッテリー用セパレーターなどに適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてフッ素化反応をおこなう多孔質材料とは、日本化学会編「第4版実験化学講座 13−表面・界面」(丸善、1993年刊)99ページに記載されているように、様々な形状・大きさの空孔を有している固体材料である。また、高分子材料を成形して得られるフィルターなどを包含するものである。
多孔質材料の空孔の大きさとして特に制限はないが、孔径が0.01〜100μm程度の場合が好ましく、0.05〜50μm程度の場合がより好ましく、0.1〜10μmmの場合がさらに好ましい。
多孔質材料の空孔の形状としては特に制限はないが、円筒状の直孔や、スポンジ状に丸い孔が分散したものや、網目構造が発達して多孔構造を形成したものや、蜂の巣状の構造体を形成したものや、微小空間が3次元的に相互に連通した細孔構造を有するものなどが挙げられる。これらが組み合わさった構造であってもよい。また、これらが均一に存在するものであっても、不均一に分布しているものであっても良い。
多孔質材料の空孔率として特に制限はないが、10〜90%程度の場合が好ましく、20〜85%程度の場合がより好ましく、30〜80%程度の場合がさらに好ましい。
【0008】
多孔質材料としては、有機高分子材料からなる有機高分子多孔質材料である。用いられる高分子材料としては特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース誘導体、ビニルモノマーの共重合体などが挙げられる。ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロース誘導体である。より好ましくは、ポリスルホン、セルロース誘導体である。
【0009】
多孔質材料の製造方法としては、いずれの方法であってもよい。例えば、多孔質フィルムの製造方法としては、ポリマーを溶剤に溶かして製膜後、非溶剤と接触させることによりポリマーを凝固させる湿式法によるもの、ポリマーにポリマーが溶解しない溶剤で抽出可能な物質を混合してフィルム成形した後に、該溶剤を用いて物質を抽出して微細な孔を形成する方法、微細なフィラーを混合して製膜した後、フィラーを物理的に除去する方法、製膜したフィルムにプラズマ照射などをおこなって微細な孔を開ける方法などが知られている。
【0010】
多孔質材料の形状は、平膜状、球状粒子、破砕粒子、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状、プリーツ状、カートリッジ状など、任意の形状のものを用いることができる。多孔質材料のフッ素化反応をおこなった後で異なる任意の形状に加工してもよい。本発明において、多孔質材料の形状は、それに限定されるものではないが、メンブレンフィルターなどの平膜状多孔質材料であることも好ましい。
【0011】
続いて本発明におけるフッ素化反応について説明する。
ポリマーをフッ素ガスと反応させてフッ素化をおこなうことは、Prog. Inorg. Chem.
1979, 26, 162に初期の報告がまとめられており、J. Fluorine Chem. 2005, 126, 251には最近の報告を含めた総説が書かれている。この反応を用いた表面修飾方法は、プラズマを用いてフッ素原子を含む表面を形成させる方法や、含フッ素化合物を表面にコーティングする方法とは異なり、フッ素化する材料のC−H結合をC−F結合に変換する方法であるため、材料表面の微細な構造を損なうことなく表面のみを修飾することができる点に特徴がある。本発明において「フッ素化反応」とは、このC−H結合をC−F結合に変換すること、および不飽和結合にフッ素が付加すること(例えばC=C結合をCF−CF結合に変換すること)を含めたものをいう。
【0012】
フッ素混合ガスに用いられるフッ素ガスは、フッ素ガスボンベから供給しても良いし、KF・nHF共融混合物を電解したりフッ素を吸蔵している固体(例えばKNiF)を加熱したりするフッ素ガス発生装置を使用して発生させたフッ素ガスを用いても良い。
フッ素ガスは不活性ガスによって任意の濃度に希釈したものを用いる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、パーフルオロ化合物などが挙げられる。なお、この不活性ガスによって希釈されたフッ素ガスのことを本発明においては「フッ素混合ガス」と呼ぶ。
フッ素混合ガス中のフッ素濃度としては、0.01〜10%が好ましく、0.1〜2%がより好ましく、0.2〜1%がさらに好ましく、0.5〜1%が特に好ましい。フッ素化反応中にフッ素混合ガスの濃度を変化させておこなっても良い。なお、本発明におけるフッ素混合ガスの濃度は、体積%で表わされたものである。
【0013】
フッ素化反応の反応温度に特に制限はないが、−78〜200℃が好ましく、−30〜100℃がより好ましく、0〜50℃がさらに好ましく、15〜30℃が特に好ましい。フッ素化反応中に反応温度を変化させておこなっても良い。フッ素化反応をおこなう多孔質材料の大きさやフッ素混合ガスの濃度などの条件によっては、特に温度制御をおこなわないで室温で反応をおこなってもよい。
【0014】
フッ素化反応の反応時間は任意に設定できるが、1秒〜10日が好ましく、10秒〜1時間がより好ましく、1分〜15分がさらに好ましく、5分〜10分が特に好ましい。なお、本発明におけるフッ素化反応の反応時間は、反応容器にフッ素混合ガス導入を開始した時からフッ素混合ガスを取り除く操作を開始した時までの時間とする。これは、フッ素混合ガスの導入中や除去中にもフッ素ガスと材料の反応が起こり得るので、厳密に反応時間を決めることが難しいために便宜上定義するものである。
【0015】
フッ素混合ガス中のフッ素ガス濃度およびフッ素化反応の反応時間の組み合わせとしては、0.01〜5%で1秒〜30分が好ましく、0.1〜1%で1〜15分がより好ましく、0.5〜1%で3〜10分がさらに好ましく、0.5〜1%で5〜10分が特に好ましい。
【0016】
フッ素化反応をおこなう反応装置としてはどのようなものを用いてもよい。例えば、Prog. Inorg. Chem. 1979, 26, 172や、アール・イー・バンクス(R. E. Banks)、ビー・イー・スマート(B. E. Smart)編「オーガノフルオリン・ケミストリー:プリンシプルズ・アンド・コマーシャル・アプリケーションズ(Organofluorine Chemistry: Principles and Commercial Applications)」(プレナム・プレス(Plenum Press)、1994年刊)475〜478ページに記載されているような反応装置の概略図を参考にできる。粉末状の多孔質材料をフッ素化する場合には、工業化学雑誌1970, 73, 1211記載の反応容器も参考にできる。
【0017】
反応容器の材質としては、モネル、インコネルやステンレスなどの金属や合金、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素不活性素材などを用いることができる。これらを組み合わせて成るものでもよい。
【0018】
フッ素混合ガスとの反応は、上述の反応装置を参考にして、容器中に多孔質材料を入れてフッ素混合ガスを流通させながら反応させる流通式でおこなってもよいし、密閉容器中に多孔質材料を入れてフッ素混合ガスを充填して反応させるバッチ式でおこなってもよいし、多孔質材料を連続的に反応容器に搬入・搬出しながら反応させる連続式でおこなってもよい。
【0019】
流通式でおこなう場合、フッ素混合ガスの流速は任意に設定できるが、反応容器の内容量が数秒〜数分で置き換わる程度の流速で流通させるのが好ましい。例えば、内容量100mlの反応容器を用いる場合には、1〜1000ml/minが好ましく、10〜500ml/minがより好ましく、50〜300ml/minが特に好ましい。フッ素化反応中にフッ素混合ガスの流速を変化させておこなうこともできる。反応容器から出てきたフッ素混合ガスを再度反応容器に還流させながらおこなうこともできる。
【0020】
バッチ式でおこなう場合、フッ素混合ガスの圧力は任意に設定できるが、10kPa〜10MPaが好ましく、50kPa〜1MPaがより好ましく、80〜500kPaがさらに好ましい。フッ素化反応中にフッ素混合ガスを追加あるいは放出することで圧力を変化させておこなうこともできる。
【0021】
連続式でおこなう場合、多孔質材料の搬入・搬出速度は、材料の性質として許容できる範囲内であれば任意に設定できる。フッ素混合ガスを流通させている反応容器の中に多孔質材料を搬入する形式の場合、フッ素混合ガスの流速は流通式でおこなう場合に準じる。フッ素混合ガスが充填された反応容器の中に多孔質材料を搬入する形式の場合、フッ素混合ガスの圧力はバッチ式でおこなう場合に準じる。
【0022】
フッ素ガスとの反応中に別の反応性ガスが共存するとフッ素化反応と合わせて別の反応が起こる。これを活用してもよいが、フッ素ガスとの反応をおこなう前に反応容器中を不活性雰囲気にしてからフッ素ガスとの反応をおこなうことが好ましい。不活性雰囲気にする方法としては、反応容器を減圧にした後に不活性ガスで置換する方法や、不活性ガスを流通させて置換する方法などが挙げられる。
【0023】
フッ素ガスとの反応終了後は、容器中に残存しているフッ素ガスが処理されないまま大気中に放出されるのを防止し、また多孔質材料がフッ素ガスと空気に同時に触れることになり、不活性雰囲気での反応ではなくなることを防ぐため、反応容器中からフッ素混合ガスを取り除いてから開封することが好ましい。フッ素混合ガスを取り除く方法としては、反応容器を減圧脱気して不活性ガスで置換する方法や、不活性ガスを流通させて置換する方法などが挙げられる。
【0024】
有機化合物の直接フッ素化反応においては、副生成物としてフッ化水素(HF)が生成する。フッ化水素が共存したままでフッ素化反応をおこなってもよいし、取り除く操作をして反応をおこなってもよい。フッ化水素を反応系から取り除く方法としては、フッ化カリウム(KF)やフッ化ナトリウム(NaF)などのアルカリ金属フッ化物やトリアルキルアミンなどの有機塩基をフッ化水素捕捉剤として反応系中に共存させておく方法や、フッ素混合ガスと共にフッ化水素を流し去る方法などが挙げられる。フッ化水素を流し去る方法においては反応容器ガス出口でフッ化水素捕捉剤と出口ガスを接触させることが好ましい。流通式で反応をおこなう場合にはフッ化水素を流し去る方法が適しており、バッチ式でおこなう場合にはフッ化水素捕捉剤を共存させる方法が適している。
【0025】
フッ素化反応をおこなった後に、十分に取り除けなかったフッ素ガスおよびフッ化水素などの副生成物を除去するために、水洗などによる洗浄操作をおこなうこともできる。
【0026】
本発明における撥水性とは、大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀昭編「化学大辞典」(東京化学同人、1989年刊)1787ページに記載されているように、固体表面が水をはじく性質のことであり、また、水滴が接したときの接触角によって評価し、接触角が大きい場合には撥水性は大きくなる。この水をはじく性質を有する多孔質材料のことを、本発明においては「撥水性多孔質材料」と呼ぶ。これに対し、水滴を多孔質表面に滴下した場合、水をはじかずに多孔質内部に浸透していく性質を有する多孔質材料のことを、本発明における「水浸透性多孔質材料」と呼ぶ。
【0027】
接触角の定義と測定法については、日本化学会編「新実験化学講座 18−界面とコロイド」(丸善、1977年刊)93〜106ページに記載されている。接触角の測定法のうち、本発明においては、この資料の97ページ記載の液滴法に準じて測定した値を用いている。本発明において、接触角は30゜〜150゜が好ましく、40゜〜120゜がより好ましい。なお、フッ素化していない多孔質材料が水の接触角を有する場合、フッ素化によって撥水性となるため水の接触角がフッ素化前と比較して大きくなる。大きくなる度合いは、5゜以上が好ましく、8゜以上がより好ましく、10゜以上が特に好ましい。
【0028】
高分子材料をフッ素化することによって表面を親水的にしたり撥水性にする技術は多く知られている。高分子材料成形品をフッ素化して表面親水化する技術として、例えばポリプロピレン(特開平8−72158、特開平8−302039、特開平10−204195)、ポリカーボネート(特開平11−124681)、ABS樹脂(特開平11−124681)やポリイミド(特開2000−95862)の場合などが知られている。また、フッ素化して表面撥水化する技術として、比重1.6以下であって且つエーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合の何れも含まない材料を選択することが特開2002−194125号公報に記載されている。本発明においては親水化すると知られている高分子や特開2002−194125号公報で選択されていないエーテル結合やカーボネート結合を有する高分子からなる多孔質材料であっても表面撥水化しており、多孔質材料をフッ素化した場合の特徴である。
【0029】
本発明においては、フッ素化する前の多孔質材料が水浸透性多孔質材料であることが好ましい。本発明に用いられる水浸透性多孔質材料は、これに限定されるものではないが、例えば、有機高分子材料からなるミクロフィルターやメンブレンフィルター、具体的にはポリスルホンミクロフィルター(富士写真フイルム(株)、孔径0.1μm)、セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC、孔径0.1μmおよび0.45μm)、セルロースアセテートタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC、孔径0.1μmおよび0.45μm)などが挙げられる。このうち、ポリスルホンミクロフィルター(富士写真フイルム(株)、孔径0.1μm)、セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC、孔径0.1μmおよび0.45μm)は好適に本発明に用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
多孔質材料として、材料1(ポリスルホンミクロフィルター(富士写真フイルム(株)、孔径0.1μm))をフッ素およびヘリウムガス供給口と排気口を備えたポリテトラフルオロエチレン製500ml容器に入れ、ヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージした後、20%フッ素/80%窒素混合ガスを流速10ml/minで、ヘリウムガスを流速190ml/minでそれぞれ吹き込み(1%フッ素混合ガスに相当)10分間反応させた。引き続きヘリウムガスを流速100ml/minで吹き込んで1時間パージしてから容器を開封し、フッ素化された多孔質材料を取り出した。
【0032】
フッ素化前後の重量測定をおこない重量変化を求めた。フッ素化による重量変化は、次式より求めた。(フッ素化後の重量)÷(フッ素化前の重量)。結果を表1に示す。
【0033】
また、フッ素化前後で、液滴法により接触角を測定した。接触角の測定は、協和界面科学(株)DropMaster500を用いておこなった。1μlの水滴を針先に作り、これを多孔質材料の表面に触れさせて液滴を作った。1分後に接触角を測定し、本発明における接触角の値とした。結果を表1に示す。
【0034】
また、フッ素化後の多孔質材料表面の組成を、島津製作所(株)ESCA−3400を用い、X線光電子分光法(ESCA)によって測定した。積分強度比と感度係数から、表面における炭素とフッ素の相対存在比(F/C)を求めた。結果を表1に示す。
【0035】
また、フッ素化前後で、多孔質材料の2ヶ所をピンセットでつまんで、約90゜に曲げてから戻し、多孔質材料の形状の変化を目視で確認することで、強度を比較した。結果を表1に示す。
【0036】
<実施例2>
多孔質材料として材料2(セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC、孔径0.1μm))を用いて、フッ素混合ガス濃度を0.67%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フッ素化と物性測定をおこなった。結果を表1に示す。
【0037】
<実施例3>
多孔質材料として材料3(セルロース混合エステルタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC、孔径0.45μm))を用いて、フッ素混合ガス濃度を0.67%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、フッ素化と物性測定をおこなった。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例4>
多孔質材料として材料4(ポリカーボネートタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC、孔径0.20μm))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、フッ素化と物性測定をおこなった。結果を表1に示す。
【0039】
<比較例1〜3>
フッ素混合ガスを、20%フッ素/80%窒素混合ガス50ml/minとヘリウム50ml/minを混合したガス(10%フッ素混合ガスに相当)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、材料1〜3のフッ素化をおこなった。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表中、●は多孔質材料に水が染み込んでしまうために測定できなかったことを示す。△はフッ素化により多孔質材料が崩壊してしまったために正確な重量が測定できなかったことを示す。○はフッ素化前の多孔質材料と同様の強度であったことを示す。×はフッ素化前の多孔質材料の形状を維持できなかったことを示す。
【0042】
特開2004−339488号公報にはエチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体粒子などの多孔質材料のフッ素化反応として、用いるフッ素混合ガスの濃度が容量比で1〜50%、より好ましくは2〜20%、さらに好ましくは3〜10%であることが記載されている。また、1%未満である場合にはフッ素化反応が緩やかに進行するために反応時間が長くなり好ましくなく、50%を超えるとフッ素化反応が激しくなり温度・圧力の制御が困難になり好ましくないことが記載されている。これに対して、本実施例では、低濃度のフッ素混合ガスを用いてフッ素化反応をおこなった場合、多孔質材料の表面は速やかにフッ素化され撥水性多孔質材料に変換できることがESCAおよび接触角のデータから示される。また、10%のフッ素混合ガスを用いた場合には多孔質材料の崩壊が見られる場合があることもわかる。これは、低濃度のフッ素混合ガスを用いた場合と較べて、ESCAのF/C比は変わらないが重量増加が大きいというデータから、多孔質材料内部までフッ素化が進行したために強度が低下したものと考えられる。よって本発明の1%以下の低濃度のフッ素混合ガスを用い多孔質材料をフッ素混合ガスと反応させる方法により、撥水性多孔質材料を製造できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料を、フッ素混合ガスを用い材料表面をフッ素化して撥水性とする、撥水性多孔質材料の製造方法。
【請求項2】
前記フッ素混合ガスが、フッ素濃度1%以下に不活性ガスで希釈されたフッ素混合ガスであることを特徴とする、請求項1記載の撥水性多孔質材料の製造方法。
【請求項3】
フッ素化する前の多孔質材料が水浸透性多孔質材料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の撥水性多孔質材料の製造方法。
【請求項4】
多孔質材料を、フッ素混合ガスを用い材料表面をフッ素化して撥水性とすることにより製造された、撥水性多孔質材料。

【公開番号】特開2007−138003(P2007−138003A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333069(P2005−333069)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】