説明

撥水性織物および衣料

【課題】環境に配慮した撥水性織物であって、優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料を提供する。
【解決手段】パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸の濃度が0〜5ng/gのフッ素系撥水剤が付着してなる撥水性織物であって、前記織物に、単糸繊度が1.0dtex以上のポリエステルフィラメントAと単糸繊度が0.4dtex以下のポリエステルフィラメントBとを用いて得られた複合糸が含まれ、かつ下記で定義する糸足差が5%以上である。
織物から複合糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×複合糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした複合糸から、ポリエステルフィラメントA(単糸)とポリエステルフィラメントB(単糸)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単糸繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。
糸足差(%)=(LB−LA)/LA×100
ただし、LAはポリエステルフィラメントAの糸長(cm)であり、LBはポリエステルフィラメントBの糸長(cm)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に配慮した撥水性織物であって、優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ衣料、カジュアル衣料、傘地などの用途で撥水性を有する布帛が求められており、フッ素系撥水剤などの撥水剤を布帛に付着させることが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、近年では、パーフルオロオクタン酸(以下「PFOA」ということもある。)やパーフルオロオクタンスルホン酸(以下「PFOS」ということもある。)など、生物に影響を及ぼす可能性のある化合物を含まないかあるいはできるだけ含有量の小さいフッ素系撥水剤を布帛に付着させることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−94645号公報
【特許文献2】特開昭61−70043号公報
【特許文献3】特開2007−247089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロオクタンスルホン酸などを含まないフッ素系撥水剤を付着させた布帛は、撥水性の点で十分ではないことを見出した。本発明はかかる背景に鑑みなされたものであり、その目的は、環境に配慮した撥水性織物であって、優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、PFOAやPFOSなどを含まないフッ素系撥水剤を布帛に付与する際、該布帛として、特定の単糸繊度および糸足差を有する2種のポリエステルフィラメントを含む複合糸を用いてなる織物を用いると、蓮の葉構造の原理により優れた撥水性が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「織物に、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸の濃度が0〜5ng/gのフッ素系撥水剤が付着してなる撥水性織物であって、前記織物に、単糸繊度が1.0dtex以上のポリエステルフィラメントAと単糸繊度が0.4dtex以下のポリエステルフィラメントBとを用いて得られた複合糸が含まれ、かつ下記で定義する糸足差が5%以上であることを特徴とする撥水性織物。」が提供される。
【0007】
織物から複合糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×複合糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした複合糸から、ポリエステルフィラメントA(単糸)とポリエステルフィラメントB(単糸)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単糸繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。
糸足差(%)=(LB−LA)/LA×100
ただし、LAはポリエステルフィラメントAの糸長(cm)であり、LBはポリエステルフィラメントBの糸長(cm)である。
【0008】
その際、目付けが100g/m以下であることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメントAのフィラメント数が5〜25本の範囲内であることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメントBのフィラメント数が45〜200本の範囲内であることが好ましい。また、前記複合糸の総繊度が56dtex以下であることが好ましい。また、下記に定義する、織物のカバーファクターCFが1400〜3500の範囲内であることが好ましい。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0009】
本発明の撥水性織物において、織物の経方向および緯方向の引裂強力が7N以上であることが好ましい。また、織物の撥水ころがり角度が25度以下であることが好ましい。
ただし、撥水ころがり角度とは、水平版上に取りつけた平面状の被測定試料に0.2ccの水を静かに滴下し、この平板を等速度で静かに傾斜させ、水滴がころがりはじめるときの角度である。
また、本発明によれば、前記の撥水性織物を用いてなる衣料が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境に配慮した撥水性織物であって、優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の撥水性織物には、パーフルオロオクタン酸(PFOA)およびパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の濃度(すなわち、PFOAの濃度とPFOSの濃度との合計)が0〜5ng/g(ナノグラム/グラム)のフッ素系撥水剤が付着している。
【0012】
ここで、PFOAおよびPFOSの量は高速液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)で測定したときに5ng/g以下であり、好ましくは1ng/g未満である。該濃度が5ng/gよりも大きい場合、環境上好ましくない。かかる撥水剤は、市販されているものでもよく、例えば、旭硝子(株)製のフッ素系撥水撥油剤であるアサヒガードEシリーズAG−E061、住友スリーエム(株)製のスコッチガードPM3622、PM490、PM930などが好ましく例示される。
【0013】
また、本発明の撥水性織物には、単糸繊度が1.0dtex以上のポリエステルフィラメントAと単糸繊度が0.4dtex以下のポリエステルフィラメントBとを用いて得られた複合糸が含まれる。
ここで、前記ポリエステルフィラメントAにおいて、単糸繊度が1.0dtex以上(好ましくは0.8〜3.0dtex、より好ましくは0.8〜1.5dtex)であることが肝要である。該単糸繊度が1.0dtex未満の場合、得られる撥水性織物の引裂き強力が低下し好ましくない。
また、前記ポリエステルフィラメントAのフィラメント数としては5〜25本の範囲内であることが好ましい。
【0014】
前記ポリエステルフィラメントAを形成するポリマーの種類としてはポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。特に、後記のような熱水収縮率を得る上で、繊維形成性ポリエステルの通常のジカルボン酸成分及びアルキレングリコール成分に、第3成分として、前記通常のジカルボン酸成分とは異なるジカルボン酸(例えばナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸)、前記通常のアルキレングリコール成分とは異なるグリコール成分(例えばジエチレングリコール、ポリエチレングリコール)、ビスフェノールA及びビスフェノールスルフォンの1種以上を共重合させて得られた共重合ポリエステルが好ましい。
【0015】
該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0016】
前記ポリエステルフィラメントAにおいて、単繊維の横断面形状は特に限定されず、丸、三角、扁平、くびれ付扁平などいずれでもよい。また、繊維形態も特に限定されず、紡績糸、長繊維(マルチフィラメント)いずれでもよい。さらには、仮撚捲縮加工や空気加工が施されていてもさしつかえない。
【0017】
一方、前記ポリエステルフィラメントBにおいて、単糸繊度が0.4dtex以下(好ましくは0.00001〜0.4dtex、より好ましくは0.00001〜0.4dtex)であることが肝要である。該単糸繊度が0.4dtexよりも大きいと、得られる軽量織物の撥水性が低下し好ましくない。
【0018】
前記ポリエステルフィラメントBを形成するポリマーの種類としてはポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。特に、後記のような熱水収縮率を得る上で、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0019】
該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0020】
前記ポリエステルフィラメントBにおいて、単繊維の横断面形状は特に限定されず、丸、三角、扁平、くびれ付扁平などいずれでもよい。また、繊維形態も特に限定されず、紡績糸、長繊維(マルチフィラメント)いずれでもよい。さらには、仮撚捲縮加工や空気加工が施されていてもさしつかえない。
【0021】
本発明の撥水性織物は、前記のポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBとを用いて得られた複合糸を含み、かつ該複合糸において、下記で定義する糸足差が5%以上(好ましくは5〜20%)である。かかる糸足差が5%よりも小さい場合は、十分な撥水性が得られず好ましくない。
【0022】
織物から複合糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×複合糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした複合糸から、ポリエステルフィラメントA(単糸)とポリエステルフィラメントB(単糸)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単糸繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。
糸足差(%)=(LB−LA)/LA×100
ただし、LAはポリエステルフィラメントAの糸長(cm)であり、LBはポリエステルフィラメントBの糸長(cm)である。
【0023】
本発明の撥水性織物は、例えば以下の方法により製造することができる。まず、両者の熱水収縮率が下記の関係にあるポリエステルフィラメントA(単糸繊度が1.0dtex以上)およびポリエステルフィラメントB(単糸繊度が0.4dtex以下)を用意する。
FSA(%)−FSB(%)≧5(%)(好ましくは20(%)≧FSA(%)−FSB(%)≧5(%))
ただし、FSAはポリエステルフィラメントAの熱水収縮率(%)であり、FSBはポリエステルフィラメントBの熱水収縮率(%)である。
【0024】
このように、ポリエステルフィラメントAの熱水収縮率がポリエステルフィラメントBの熱水収縮率よりも大きいと、織物に染色加工などの熱処理を行うと、ポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBとの糸足差が発現し、織物表面にポリエステルフィラメントBからなる微小な凸部が現れることにより優れた撥水性が得られる。
【0025】
ここで、前記ポリエステルフィラメントAの熱水収縮率としては12〜40%の範囲内であることが好ましい。一方、前記ポリエステルフィラメントBの熱水収縮率としては1〜10%の範囲内であることが好ましい。なお、かかる熱水収縮率を有するポリエステルフィラメントは前記のようなポリエステルを用いて常法により紡糸、延伸することにより容易に得ることができる。
【0026】
本発明において、複合糸には前記のポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBとが含まれる。該複合糸は前記のポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBのみで構成されることが最も好ましいが、複合糸重量に対して40重量%以下の他の繊維が含まれていてもさしつかえない。
【0027】
前記複合糸の複合方法は特に限定されず、公知のインターレースノズルを用いた空気混繊、複合仮撚、合撚糸、カバリングなどが好適に例示される。なかでも、公知のインターレースノズルを用いた空気混繊が好ましい。
【0028】
前記複合糸において、軽量性に優れた織物を得る上で、混繊糸の総繊度としては56dtex以下(より好ましくは20〜46dtex)であることが好ましい。該総繊度が56dtexよりも大きいと、軽量性に優れた織物が得られないおそれがある。
【0029】
次に、前記の複合糸を用いて織物を製織する。その際、前記の複合糸だけを用いて織物を製織することが最も好ましいが、織物重量に対して50重量%以下であれば他の繊維を用いてもさしつかえない。
【0030】
ここで、織物の組織は特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。また、製織方法も通常の織機(例えば、通常のウオータージェットルームやエアージェットルーム)を用いた通常の製織方法でよい。
【0031】
本発明において、前記のように織物を製造した後、染色加工を施すことが好ましい。織物に染色加工を施すと、染色加工の際の熱により、前記ポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBとが熱収縮し、糸足差が発現するため、織物表面にポリエステルフィラメントBからなる微小な凸部が現れることにより優れた撥水性が得られる。
【0032】
次いで、該織物に撥水水加工を施す。ここで、前述のように、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸の濃度が0〜5ng/g(好ましくは0ng/g)のフッ素系撥水剤を用いる。必要に応じて、制電剤、メラミン樹脂、触媒を混合して撥水剤の濃度が3〜15重量%程度の加工剤とし、ピックアップ率50〜90%程度で、該加工剤を用いて織物の表面を処理することが好ましい。加工剤で織物の表面を処理する方法としては、パッド法、スプレー法などが例示され、なかでも、加工剤を織物内部まで浸透させる上でパッド法が最も好ましい。前記ピックアップ率とは、加工剤の織物(加工剤付与前)重量に対する重量割合(%)である。
【0033】
なお、前記制電剤としては、ポリエチレングリコール基を含有するポリエステル系樹脂、ポリエチレングリコール基を含有するウレタン系樹脂、ポリエチレングリコール基を含有するポリカチオン系化合物とジグリシジルエーテルとの反応物等などが好ましい。高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、スルホン酸塩、燐酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、アミン塩型、第4級アンモニウム塩、イミダリン型4級塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコールエステル型などの非イオン系界面活性剤、イミダリン型4級塩、アラニン型、ベタイン型などの両性界面活性剤などの制電性化合物でもよい。
【0034】
単量体の重合のための熱処理は、好ましくは50〜180℃の温度で0.1〜30分間の条件で乾熱処理または/および湿熱処理することが好ましく、蒸熱処理であってもよい。かかる蒸熱処理は、好ましくは80〜160℃の飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられ、いずれも数秒から数十分の処理を行う。かかる蒸熱処理を行った後、必要に応じて水洗や湯洗あるいは還元洗浄を行うことができる。
【0035】
また、前記撥水加工の前工程および/または後工程で、カレンダー加工を施すと、織物が優れた耐水性を有することとなり好ましい。その際、その際、カレンダー加工の条件としては、温度130℃以上(より好ましくは140〜195℃)、線圧200〜20000N/cmの範囲内であることが好ましい。
【0036】
また、前記染色加工および/または撥水加工および/またはカレンダー加工の、前および/または後において、常法のアルカリ減量加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0037】
かくして得られた織物の表面において、あたかも蓮の葉のように、ポリエステルフィラメントBがふくらみ(凸部)を持ち、そこに空気層ができるため、水滴がのったときに空気の存在により優れた撥水性を呈する。その際、撥水性としては、織物の撥水ころがり角度が25度以下であることが好ましい。
【0038】
ただし、撥水ころがり角度とは、水平版上に取りつけた平面状の被測定試料に0.2ccの水を静かに滴下し、この平板を等速度で静かに傾斜させ、水滴がころがりはじめるときの角度である。
【0039】
また、かかる織物には、単糸繊度が0.8dtex以上のポリエステルフィラメントAが含まれるので、優れた引裂き強力を有する。その際、織物の経方向および緯方向の引裂強力が7N以上であることが好ましい。
【0040】
また、かかる織物において、織物のカバーファクターCFが1400〜3500の範囲内であると優れた防風性や耐水圧が得られ好ましい。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0041】
その際、織物の通気度が、10cc/cm・sec以下であることが好ましい。また、耐水圧が200mmHO以上であることが好ましい。
また、かかる織物において、軽量性の点で100g/m以下(より好ましくは30〜90g/m)であることが好ましい。
【0042】
次に、本発明の衣料は前記の織物を用いてなる衣料である。本発明の衣料は前記の織物を用いているので、環境に配慮した衣料であって、優れた撥水性、高い引裂き強力を兼ね備えている。
なお、前記の織物は環境に配慮した織物であって、優れた撥水性、高い引裂き強力を兼ね備えているので、衣料だけでなく傘地、レインコート地などにも好適に使用される。
【実施例】
【0043】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0044】
(1)熱水収縮率
供試フィラメント糸条を、周長1.125mの検尺機のまわりに10回巻きつけて、かせを調製し、このかせを、スケール板の吊るし釘に懸垂し、懸垂しているかせの下端に、かせの総質量の1/30の荷重をかけて、かせの収縮処理前の長さL1を測定した。
このかせから荷重を除き、かせを木綿袋に入れ、このかせを収容している木綿袋を沸騰水から取り出し、この木綿袋からかせを取り出し、かせに含まれる水をろ紙により吸収除去した後、これを室温において24時間風乾した。この風乾されたかせを、前記スケール板の吊し釘に懸垂し、かせの下部分に、前記と同様に、かせの総質量の1/3の荷重をかけて、収縮処理後のかせの長さL2を測定した。そして、供試フィラメント糸条の沸水収縮率(FS)を、下記式により算出する。
FS(%)=((L1−L2)/L1)×100
【0045】
(2)糸足差(%)
織物から複合糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×複合糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした複合糸から、ポリエステルフィラメントA(単糸)とポリエステルフィラメントB(単糸)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単糸繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。
糸足差(%)=(LB−LA)/LA×100
ただし、LAはポリエステルフィラメントAの糸長(cm)であり、LBはポリエステルフィラメントBの糸長(cm)である。
【0046】
(3)カバーファクターCF
下記式により織物のカバーファクターCFを算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0047】
(4)耐水圧
JIS L1092Bにより耐水圧を測定した。
【0048】
(5)通気度
JIS L1096−8.27.1A法により測定した。
【0049】
(6)撥水性(撥水ころがり角度)
水平版上に取りつけた平面状の被測定試料に0.2ccの水を静かに滴下し、この平板を等速度で静かに傾斜させ、水滴がころがりはじめるときの角度を撥水ころがり角度とした。なお、撥水ころがり角度が小さいほど撥水性が良好であり、25度以下を合格とする。
【0050】
(7)PFOAおよびPFOSの量
次の条件で測定し、ng/gで表示した。
装置:LC−MS/MSタンデム型質量分析計TSQ−7000(サーモエレクトロン)
高速液体クロマトグラフLC−10Avp(島津製作所)
カラム:Capcellpak C8 100mm×2mmi.d.(5μm)
移動層:A;0.5mmol/L酢酸アンモニウム
B;アセトニトリル
流速:0.2mL/min、試料注入量:3μL
CP温度:220℃、イオン化電圧:4.5kv、イオンマルチ:1300v
イオン化法:ESI−Negative
【0051】
[実施例1]
モル比が93/7のテレフタル酸/イソフタル酸とエチレングリコールとからなる共重合ポリエステルを常法により紡糸、延伸して、共重合ポリエステルマルチフィラメント16dtex/12fil(ポリエステルフィラメントA、単糸繊度1.33dtex、熱水収縮率20%)を得た。
一方、ポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸、延伸して、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント22dtex/72fil(ポリエステルフィラメントB、単糸繊度0.31dtex、熱水収縮率7%)を得た。
次いで、前記ポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBとを引き揃えて公知のインターレースノズルを用いて、糸速度600m/minで空気混繊することにより、インターレース混繊糸38dtex/84filを得た。
次いで、通常のウオータージェットルームを使用し、該インターレース混繊糸38dtex/84filを経糸および緯糸に配して平組織にて生機を得た。
次いで、U型ソフサーを用いて95℃で拡布精練し、液流染色機にて120℃リラックス処理した。次いで、テンターを用いて190℃で中間セットし、液流染色機にて130℃の分散染料による染色加工を行い、撥水加工を施した後、テンターを用い170℃でファイナルセットした。その際、撥水加工は下記の加工剤を使用し、ピックアップ率80%で搾液し、130℃で3分間乾燥後170℃で45秒間熱処理を行った。
<加工剤組成>
・ふっ素系撥水剤 8.0wt%
(旭硝子(株)製、アサヒガードEシリーズAG−E061 PFOA:1ng/g未満、PFOS:1ng/g未満)
・メラミン樹脂 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスレジンM−3)
・触媒 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスアクセレレータACX)
・水 91.4wt%
次いで、ロール温度150℃で通常のカレンダー加工を行い、撥水性織物を得た。
得られた撥水性織物において、カバーファクター(CF)が2090、ポリエステルフィラメントAとポリエステルフィラメントBとの糸足差は経13.2%緯12.9%、引裂強力が経9.6N/緯8.3N、撥水ころがり角が経9度/緯11度と大変撥水性に優れたものであり、目付け69g/mと大変軽量なものであった。また、耐水圧は470mmHOであり、通気度は0.5cc/cm・secであった。
次いで、該撥水性織物を用いて衣料を得て着用したところ、撥水性、引裂強力、軽量性、低通気性に優れるものであった。
【0052】
[比較例1]
実施例1において、経糸および緯糸としてポリエチレンテレフタレートからなる仮撚捲縮加工糸(33dtex/72fil、捲縮率13%)を使用した以外は実施例1と同様にした。
得られた撥水性織物において、カバーファクター(CF)が1930、引裂強力が経10.2N/緯9.5N、目付け62g/mと軽量であったが、撥水ころがり角が経26度/緯27度と撥水性に劣っていた。また、耐水圧は410mmHOであり、通気度は0.4cc/cm・secであった。
次いで、該撥水性織物を用いて衣料を得て着用したところ、撥水性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、環境に配慮した撥水性織物であって、優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料が得られ、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物に、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸の濃度が0〜5ng/gのフッ素系撥水剤が付着してなる撥水性織物であって、前記織物に、単糸繊度が1.0dtex以上のポリエステルフィラメントAと単糸繊度が0.4dtex以下のポリエステルフィラメントBとを用いて得られた複合糸が含まれ、かつ下記で定義する糸足差が5%以上であることを特徴とする撥水性織物。
織物から複合糸を抜き取り、0.1cN(0.1g)×複合糸の総繊度(dtex)の荷重をとりつけ、5cmの長さにカットし、カットした複合糸から、ポリエステルフィラメントA(単糸)とポリエステルフィラメントB(単糸)とを取り出し、それぞれ、0.1cN(0.1g)×の単糸繊度(dtex)の荷重をかけて長さを測定し、下記式により糸足差(%)を算出する。
糸足差(%)=(LB−LA)/LA×100
ただし、LAはポリエステルフィラメントAの糸長(cm)であり、LBはポリエステルフィラメントBの糸長(cm)である。
【請求項2】
目付けが100g/m以下である、請求項1に記載の撥水性織物。
【請求項3】
前記ポリエステルフィラメントAのフィラメント数が5〜25本の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の撥水性織物。
【請求項4】
前記ポリエステルフィラメントBのフィラメント数が45〜200本の範囲内である、請求項1〜3のいずれかに記載の撥水性織物。
【請求項5】
前記複合糸の総繊度が56dtex以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の撥水性織物。
【請求項6】
下記に定義する、織物のカバーファクターCFが1400〜3500の範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性織物。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【請求項7】
織物の経方向および緯方向の引裂強力が7N以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の撥水性織物。
【請求項8】
織物の撥水ころがり角度が25度以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の撥水性織物。
ただし、撥水ころがり角度とは、水平版上に取りつけた平面状の被測定試料に0.2ccの水を静かに滴下し、この平板を等速度で静かに傾斜させ、水滴がころがりはじめるときの角度である。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の撥水性織物を用いてなる衣料。

【公開番号】特開2012−122144(P2012−122144A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271441(P2010−271441)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】