説明

撥水撥油剤組成物およびその製造方法

【課題】物品の表面に充分な動的撥水性および風乾後撥水性を付与でき、かつ環境負荷が低い撥水撥油剤組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記化合物(x)の存在下、下記単量体(a)、下記単量体(b)および下記単量体(c)を含む単量体混合物を重合して得られた共重合体と、媒体とを含む撥水撥油剤組成物。化合物(x):架橋しうる官能基を有するチオール化合物。単量体(a):(Z−Y)Xで表される化合物。Zは炭素数が1〜6のポリフルオロアルキル基等、Yは2価の有機基等、nは1または2、Xは重合性不飽和基である。単量体(b):ハロゲン化オレフィン。単量体(c):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が12〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油剤組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品(繊維製品等。)の表面に撥水撥油性を付与する方法としては、炭素数が8以上のポリフルオロアルキル基(以下、ポリフルオロアルキル基をR基と記す。)を有する単量体に基づく構成単位を有する共重合体を媒体に分散させたエマルションからなる撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理する方法が知られている。
しかし、最近、EPA(米国環境保護庁)によって、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基(以下、パーフルオロアルキル基をR基と記す。)を有する化合物は、環境、生体中で分解し、分解生成物が蓄積する点、すなわち環境負荷が高い点が指摘されている。そのため、炭素数が6以下のR基を有する単量体に基づく構成単位を有し、炭素数が8以上のR基を有する単量体に基づく構成単位をできるだけ減らした撥水撥油剤組成物用の共重合体が要求されている。
【0003】
該共重合体を含む撥水撥油剤組成物としては、たとえば、下記の撥水撥油剤組成物が提案されている。
下記単量体(a)に基づく構成単位および下記単量体(b)に基づく構成単位から実質的になる共重合体を必須とする撥水撥油剤組成物(特許文献1)。
単量体(a):炭素数が6以下のR基を有する単量体等。
単量体(b):炭素数が15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレート等。
【0004】
しかし、該撥水撥油剤組成物で処理された物品は、高所から落下してきた水(降雨)に対する撥水性(以下、動的撥水性と記す。)および洗濯後に強制的に加熱せずに乾燥した後の撥水性(以下、風乾後撥水性と記す。)が不充分である。
【特許文献1】国際公開第02/083809号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、物品の表面に充分な動的撥水性および風乾後撥水性を付与でき、かつ環境負荷が低い撥水撥油剤組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撥水撥油剤組成物は、下記化合物(x)の存在下、下記単量体(a)、下記単量体(b)および下記単量体(c)を含む単量体混合物を重合して得られた共重合体と、媒体とを含むことを特徴とする。
化合物(x):架橋しうる官能基を有するチオール化合物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のポリフルオロアルキル基、または下式(2)で表される基であり、Yは、2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ハロゲン化オレフィン。
単量体(c):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が12〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【0007】
前記化合物(x)は、水酸基を有するチオール化合物であることが好ましい。
前記水酸基を有するチオール化合物は、チオグリセロールであることが好ましい。
前記単量体(a)は、炭素数が4〜6のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記単量体混合物は、下記単量体(d)をさらに含むことが好ましい。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。
【0008】
本発明の撥水撥油剤組成物の製造方法は、界面活性剤、重合開始剤および前記化合物(x)の存在下、媒体中にて前記単量体(a)、前記単量体(b)および前記単量体(c)を含む単量体混合物を重合することを特徴とする。
前記化合物(x)は、水酸基を有するチオールであることが好ましい。
前記水酸基を有するチオール化合物は、チオグリセロールであることが好ましい。
前記単量体(a)は、炭素数が4〜6のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。
前記単量体混合物は、前記単量体(d)をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撥水撥油剤組成物は、物品の表面に充分な動的撥水性および風乾後撥水性を付与でき、かつ環境負荷が低い。
本発明の撥水撥油剤組成物の製造方法によれば、物品の表面に充分な動的撥水性および風乾後撥水性を付与でき、かつ環境負荷が低い撥水撥油剤組成物を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。また、本明細書においては、式(2)で表される基を基(2)と記す。他の式で表される基も同様に記す。また、本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、本明細書における単量体は、重合性不飽和基を有する化合物を意味する。また、本明細書におけるR基は、アルキル基の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換された基であり、R基は、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。
【0011】
<撥水撥油剤組成物>
本発明の撥水撥油剤組成物は、以下の共重合体(A)と、媒体とを必須成分として含み、必要に応じて、界面活性剤、添加剤を含む。
【0012】
(共重合体(A))
共重合体(A)は、化合物(x)の存在下、単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含み、必要に応じて単量体(d)、単量体(e)を含む単量体混合物を重合して得られたものである。
【0013】
化合物(x):
化合物(x)は、架橋しうる官能基を有するチオール化合物である。化合物(x)は、共重合体(A)の末端に架橋しうる官能基を導入する成分である。
共重合体(A)が末端に架橋しうる官能基を有することにより、基材との親和性が高まる;架橋剤を併用した場合の膜の耐久性を向上させることができ、洗濯や摩擦などに対する性能低下を防ぐことができる;等の特徴が得られる。
【0014】
架橋しうる官能基としては、共有結合、イオン結合または水素結合のうち少なくとも1つ以上の結合を有する官能基、または、該結合の相互作用により架橋構造を形成できる官能基が好ましい。また、分子内に活性な有機基、水素やハロゲン等の元素を有する化合物であってもよい。
該官能基としては、水酸基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましく、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基が特に好ましい。
【0015】
化合物(x)としては、水酸基を有するチオール化合物、アミノ基を有するチオール化合物、カルボン酸基をもつメルカプト化合物、メルカプトシラン化合物等が挙げられ、水酸基を有するチオール化合物、メルカプトシラン化合物が好ましく、水酸基を有するチオール化合物が特に好ましい。
化合物(x)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
水酸基を有するチオール化合物としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、α−チオグリセロール、2,3-ジメルカプトプロパノール、2−メルカプトエチルアミン等が挙げられ、α−チオグリセロールが特に好ましい。
メルカプトシラン化合物としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
単量体(a):
単量体(a)は、化合物(1)である。なお、式(1)において、ZとYの境界はZの炭素数が最も少なくなるように定める。
(Z−Y)X ・・・(1)。
【0018】
Zは、炭素数が1〜6のR基(ただし、該R基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)、または基(2)である。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
基としては、R基が好ましい。R基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状が好ましい。
Zとしては、下記の基が挙げられる。
F(CF−、
F(CF−、
F(CF−、
(CFCF(CF−、
2k+1O[CF(CF)CFO]−CF(CF)−等。
ただし、kは、1〜6の整数であり、hは0〜10の整数である。
【0019】
Yは、2価有機基または単結合である。
2価有機基としては、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキレン基は、−O−、−NH−、−CO−、−S−、−SO−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基である。)等を有していてもよい。
【0020】
Yとしては、下記の基が挙げられる。
−CH−、
−CHCH
−(CH−、
−CHCHCH(CH)−、
−CH=CH−CH−、
−S−CHCH−、
−CHCH−S−CHCH−、
−CHCH−SO−CHCH−、
−W−OC(O)NH−A−NHC(O)O−(C2p)−等。
ただし、pは、2〜30の整数である。
Aは、分岐のない対照的なアルキレン基、アリレン基またはアラルキレン基であり、−C12−、−φ−CH−φ−、−φ−(ただし、φはフェニレン基である。)が好ましい。
Wは、下記の基のいずれかである。
−SON(R)−C2d−、
−CONHC2d−、
−CH(RF1)−C2e−、
−C2q−。
ただし、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、dは、2〜8の整数であり、RF1は、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、eは、0〜6の整数であり、qは、1〜20の整数である。RF1としては、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数4または6のパーフルオロアルキル基がより好ましい。
【0021】
nは、1または2である。
Xは、nが1の場合は、基(3−1)〜基(3−5)のいずれかであり、nが2の場合は、基(4−1)〜基(4−4)のいずれかである。
【0022】
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
【0023】
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
【0024】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、共重合体(A)を含む皮膜の柔軟性、物品に対する共重合体(A)の接着性、媒体に対する溶解性、乳化重合の容易性等の点から、炭素数が4〜6のR基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(1)としては、Zが炭素数4〜6のR基であり、Yが炭素数1〜4のアルキレン基であり、nが1であり、Xが基(3−3)である化合物が好ましい。
【0025】
単量体(b):
単量体(b)は、ハロゲン化オレフィンである。
単量体(b)に基づく構成単位を有することにより、共重合体(A)を含む皮膜の強度が向上し、また、共重合体(A)を含む皮膜と基材との接着性が向上する。
【0026】
単量体(b)としては、塩素化オレフィンまたはフッ素化オレフィンが好ましく、具体的には、塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンが挙げられる。基材との相互作用を考慮した場合、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンが特に好ましい。
【0027】
単量体(c):
単量体(c)は、R基を有さず、炭素数が12〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートである。アルキル基の炭素数が12以上であれば、動的撥水性、風乾後撥水性が良好となる。アルキル基の炭素数が30以下であれば、相対的に融点が低く、ハンドリングしやすい。
単量体(c)としては、炭素数が20〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、ベヘニル(メタ)アクリレートがより好ましく、ベヘニルアクリレートが特に好ましい。
【0028】
単量体(d):
単量体(d)は、R基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体である。
単量体(d)に基づく構成単位を有することにより、摩擦耐久性がさらに向上する。
【0029】
架橋しうる官能基としては、共有結合、イオン結合または水素結合のうち少なくとも1つ以上の結合を有する官能基、または、該結合の相互作用により架橋構造を形成できる官能基が好ましい。また、分子内に活性な有機基、水素やハロゲン等の元素を有する化合物であってもよい。
該官能基としては、水酸基、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アミノ基、アルコキシメチルアミド基、シラノール基、アンモニウム基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボキシル基、アルケニル基、スルホン酸基等が好ましく、水酸基、ブロックドイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基が特に好ましい。
【0030】
単量体(d)としては、(メタ)アクリレート類、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、またはビニルエステル類が好ましい。
単量体(d)としては、下記の化合物が挙げられる。
【0031】
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体。
【0032】
3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体。
【0033】
メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド。
【0034】
t−ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、アリル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−(2−ビニルオキサゾリン)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル。
【0035】
トリ(メタ)アリルイソシアヌレート(T(M)AIC、日本化成社製)、トリアリルシアヌレート(TAC、日本化成社製)、フェニルグリシジルエチルアクリレートトリレンジイソシアナート(AT−600、共栄社化学社製)、3−(メチルエチルケトオキシム)イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)シアナート(テックコートHE−6P、京絹化成社製)。ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル(プラクセルFA、FMシリーズ ダイセル化学工業社製)。
【0036】
モノクロロ酢酸ビニル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、sヒクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスルトールテトラビニルエーテル。
【0037】
単量体(d)としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのポリカプロラクトンエステル(プラクセルFA、FMシリーズ ダイセル化学工業社製)が好ましい。
【0038】
単量体(e):
単量体(e)は、単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)および単量体(d)を除く単量体である。
【0039】
単量体(e)としては、下記の化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)メタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシルメタクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、メトキシ−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1、3−ジメチルブチルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル。
【0040】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブテン、イソプレン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ビニルエチレン、ペンテン、エチル−2−プロピレン、ブチルエチレン、シクロヘキシルプロピルエチレン、デシルエチレン、ドデシルエチレン、ヘキセン、イソヘキシルエチレン、ネオペンチルエチレン、(1,2−ジエトキシカルボニル)エチレン、(1,2−ジプロポキシカルボニル)エチレン、メトキシエチレン、エトキシエチレン、ブトキシエチレン、2−メトキシプロピレン、ペンチルオキシエチレン、シクロペンタノイルオキシエチレン、シクロペンチルアセトキシエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヘキシルスチレン、オクチルスチレン、ノニルスチレン。
【0041】
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート。
【0042】
クロトン酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、シトラコン酸アルキルエステル、メサコン酸アルキルエステル、トリアリルシアヌレート、酢酸アリル、N−ビニルカルバゾール、マレイミド、N−メチルマレイミド、側鎖にシリコーンを有する(メタ)アクリレート、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、末端が炭素数1〜4のアルキル基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート、アルキレンジ(メタ)アクリレート等。
【0043】
単量体(a)に基づく構成単位の割合は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、5〜90質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、15〜85質量%が特に好ましい。
単量体(b)に基づく構成単位の割合は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、1〜60質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
単量体(c)に基づく構成単位の割合は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、5〜90質量%が好ましく、5〜85質量%がより好ましく、5〜80質量%が特に好ましい。
【0044】
単量体(d)に基づく構成単位の割合は、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、0〜20質量%が好ましく、摩擦耐久性の点から、0.1〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
単量体(e)に基づく構成単位の割合は、全ての単量体に基づく構成単位(100質量%)のうち、0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。
【0045】
本発明における単量体に基づく構成単位の割合は、NMR分析および元素分析から求める。なお、NMR分析および元素分析から求められない場合は、撥水撥油剤組成物の製造時の単量体の仕込み量に基づいて算出してもよい。
【0046】
共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、1000〜100万が好ましく、3000〜100万が特に好ましい。
共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)で測定される、ポリスチレン換算の分子量である。
【0047】
(媒体)
媒体としては、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、窒素化合物、硫黄化合物、無機溶剤、有機酸等が挙げられる。なかでも、溶解性、取扱いの容易さの点から、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびグリコールエステルからなる群から選ばれた1種以上の媒体が好ましい。
【0048】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1,1−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチルプロパノール、3−メチル−2−ブタノール、1,2−ジメチルプロパノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−へプタノール、2−へプタノール、3−へプタノール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0049】
グリコール、グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコール、グリコールエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0050】
ハロゲン化合物としては、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化エーテル等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロブロモカーボン等が挙げられる。
【0051】
ハロゲン化エーテルとしては、ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、分離型ハイドロフルオロエーテル、非分離型ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。分離型ハイドロフルオロエーテルとは、エーテル性酸素原子を介してR基またはパーフルオロアルキレン基、および、アルキル基またはアルキレン基が結合している化合物である。非分離型ハイドロフルオロエーテルとは、部分的にフッ素化されたアルキル基またはアルキレン基を含むハイドロフルオロエーテルである。
【0052】
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、2−メチルブタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0053】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル等が挙げられる。
エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)等が挙げられる。
【0054】
窒素化合物としては、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。
無機溶剤としては、液体二酸化炭素が挙げられる。
有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、りんご酸、乳酸等が挙げられる。
【0055】
媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。媒体を2種以上混合して用いる場合、水と混合して用いることが好ましい。混合した媒体を用いることにより、共重合体(A)の溶解性、分散性の制御がしやすく、加工時における物品に対する浸透性、濡れ性、溶媒乾燥速度等の制御がしやすい。
【0056】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が挙げられ、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、分散安定性の点から、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤または両性界面活性剤との併用、または、アニオン性界面活性剤の単独が好ましく、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との併用が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との比(ノニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤)は、97/3〜40/60(質量比)が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との特定の組み合わせにおいては、共重合体(A)(100質量%)に対する合計量を、5質量%以下にできるため、物品の撥水性への悪影響を低減できる。
【0057】
ノニオン性界面活性剤としては、界面活性剤s〜sからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0058】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテル、またはポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルである。
界面活性剤sとしては、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、またはポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルが好ましい。界面活性剤sは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基またはポリフルオロアルキル基(以下、アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基およびポリフルオロアルキル基をまとめてR基と記す。)としては、炭素数が4〜26の基が好ましい。R基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。分岐状のR基としては、2級アルキル基、2級アルケニル基または2級アルカポリエニル基が好ましい。R基は、水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されていてもよい。
【0060】
基の具体例としては、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基(オクタデシル基)、ベヘニル基(ドコシル基)、オレイル基(9−オクタデセニル基)、ヘプタデシルフルオロオクチル基、トリデシルフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H−トリデシルフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0061】
ポリオキシアルキレン(以下、POAと記す。)鎖としては、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す。)鎖および/またはポリオキシプロピレン(以下、POPと記す。)鎖が2個以上連なった鎖が好ましい。POA鎖は、1種のPOA鎖からなる鎖であってもよく、2種以上のPOA鎖からなる鎖であってもよい。2種以上のPOA鎖からなる場合、各POA鎖はブロック状に連結されることが好ましい。
【0062】
界面活性剤sとしては、化合物(s11)がより好ましい。
10O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)H ・・・(s11)。
ただし、R10は、炭素数が8以上のアルキル基または炭素数が8以上のアルケニル基であり、rは、5〜50の整数であり、sは、0〜20の整数である。R10は、水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0063】
rが5以上であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、撥水撥油剤組成物の物品への浸透性が良好となる。rが50以下であれば、親水性が抑えられ、撥水性が良好となる。
sが20以下であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、撥水撥油剤組成物の物品への浸透性が良好となる。
【0064】
rおよびsが2以上である場合、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
10としては、直鎖状または分岐状のものが好ましい。
rは、10〜30の整数が好ましい。
sは、0〜10の整数が好ましい。
【0065】
化合物(s11)としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
1837O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)30H、
1835O−(CHCHO)30H、
1633O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)20H、
1225O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
(C17)(C13)CHO−(CHCHO)15H、
1021O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
13CHCHO−(CHCHO)15H、
13CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H。
【0066】
界面活性剤s
界面活性剤sは、分子中に1個以上の炭素−炭素三重結合および1個以上の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤sとしては、分子中に1個の炭素−炭素三重結合、および1個または2個の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤sは、分子中にPOA鎖を有してもよい。POA鎖としては、POE鎖、POP鎖、POE鎖とPOP鎖とがランダム状に連結された鎖、またはPOE鎖とPOP鎖とがブロック状に連結された鎖が挙げられる。
【0067】
界面活性剤sとしては、化合物(s21)〜(s24)が好ましい。
HO−C(R11)(R12)−C≡C−(CR13)(R14)−OH ・・・(s21)、
HO−(AO)−(CR11)(R12)−C≡C−C(R13)(R14)−(OA−OH ・・・(s22)、
HO−C(R15)(R16)−C≡C−H ・・・(s23)、
HO−(AO)−C(R15)(R16)−C≡C−H ・・・(s24)。
【0068】
〜Aは、それぞれアルキレン基である。
uおよびvは、それぞれ0以上の整数であり、(u+v)は、1以上の整数である。
wは、1以上の整数である。
u、v、wが、それぞれ2以上である場合、A〜Aは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
POA鎖としては、POE鎖、POP鎖、またはPOE鎖とPOP鎖とを含む鎖が好ましい。POA鎖の繰り返し単位の数は、1〜50が好ましい。
【0069】
11〜R16は、それぞれ水素原子またはアルキル基である。
アルキル基としては、炭素数が1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基がより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0070】
化合物(s22)としては、化合物(s25)が好ましい。
【0071】
【化1】

【0072】
ただし、xおよびyは、それぞれ0〜100の整数である。
化合物(s25)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(s25)としては、xおよびyが0である化合物、xとyとの和が平均1〜4である化合物、またはxとyとの和が平均10〜30である化合物が好ましい。
【0073】
界面活性剤s
界面活性剤sは、POE鎖と、炭素数が3以上のオキシアルキレンが2個以上連続して連なったPOA鎖とが連結し、かつ両末端が水酸基である化合物からなるノニオン性界面活性剤である。
該POA鎖としては、ポリオキシテトラメチレン(以下、POTと記す。)および/またはPOP鎖が好ましい。
【0074】
界面活性剤sとしては、化合物(s31)または化合物(s32)が好ましい。
HO(CHCHO)g1(CO)(CHCHO)g2H ・・・(s31)、
HO(CHCHO)g1(CHCHCHCHO)(CHCHO)g2H ・・・(s32)。
【0075】
g1は、0〜200の整数である。
tは、2〜100の整数である。
g2は、0〜200の整数である。
g1が0の場合、g2は、2以上の整数である。g2が0の場合、g1は、2以上の整数である。
−CO−は、−CH(CH)CH−であってもよく、−CHCH(CH)−であってもよく、−CH(CH)CH−と−CHCH(CH)−とが混在したものであってもよい。
POA鎖は、ブロック状である。
【0076】
界面活性剤sとしては、下記の化合物が挙げられる。
HO−(CHCHO)15−(CO)35−(CHCHO)15H、
HO−(CHCHO)−(CO)35−(CHCHO)H、
HO−(CHCHO)45−(CO)17−(CHCHO)45H、
HO−(CHCHO)34−(CHCHCHCHO)28−(CHCHO)34H。
【0077】
界面活性剤s
界面活性剤sは、分子中にアミンオキシド部分を有するノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤sとしては、化合物(s41)が好ましい。
(R17)(R18)(R19)N(→O) ・・・(s41)。
【0078】
17〜R19は、それぞれ1価炭化水素基である。
本発明においては、アミンオキシド(N→O)を有する界面活性剤をノニオン性界面活性剤として扱う。
化合物(s41)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
化合物(s41)としては、共重合体(A)の分散安定性の点から、化合物(s42)が好ましい。
(R20)(CHN(→O) ・・・(s42)。
【0080】
20は、炭素数が6〜22のアルキル基、炭素数が6〜22のアルケニル基、炭素数が6〜22のアルキル基が結合したフェニル基、炭素数が6〜22のアルケニル基が結合したフェニル基、または炭素数が6〜13のフルオロアルキル基である。R20としては、炭素数が8〜22のアルキル基、または炭素数が8〜22のアルケニル基、または炭素数が4〜9のポリフルオロアルキル基が好ましい。
【0081】
化合物(s42)としては、下記の化合物が挙げられる。
[H(CH12](CHN(→O)、
[H(CH14](CHN(→O)、
[H(CH16](CHN(→O)、
[H(CH18](CHN(→O)、
[F(CF(CH](CHN(→O)、
[F(CF(CH](CHN(→O)。
【0082】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルの縮合物またはポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルからなるノニオン性界面活性剤である。
置換フェニル基としては、1価炭化水素基で置換されたフェニル基が好ましく、アルキル基、アルケニル基またはスチリル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0083】
界面活性剤sとしては、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテルの縮合物、ポリオキシエチレンモノ(アルケニルフェニル)エーテルの縮合物、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(アルケニルフェニル)エーテル、またはポリオキシエチレンモノ[(アルキル)(スチリル)フェニル〕エーテルが好ましい。
【0084】
ポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルの縮合物またはポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルとしては、ポリオキシエチレンモノ(ノニルフェニル)エーテルのホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンモノ(ノニルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(オクチルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(オレイルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ[(ノニル)(スチリル)フェニル]エーテル、ポリオキシエチレンモノ[(オレイル)(スチリル)フェニル]エーテル等が挙げられる。
【0085】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオールの脂肪酸エステルからなるノニオン性界面活性剤である。
ポリオールとは、グリセリン、ソルビタン、ソルビット、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエーテル、ポリオキシエチレンソルビットエーテルを表わす。
【0086】
界面活性剤sとしては、ステアリン酸とポリエチレングリコールとの1:1(モル比)エステル、ソルビットとポリエチレングリコールとのエーテルとオレイン酸とのl:4(モル比)エステル、ポリオキシエチレングリコールとソルビタンとのエーテルとステアリン酸との1:1(モル比)エステル、ポリエチレングリコールとソルビタンとのエーテルとオレイン酸との1:1(モル比)エステル、ドデカン酸とソルビタンとの1:1(モル比)エステル、オレイン酸とデカグリセリンとの1:1または2:1(モル比)エステル、ステアリン酸とデカグリセリンとの1:1または2:1(モル比)エステルが挙げられる。
【0087】
界面活性剤s
界面活性剤がカチオン性界面活性剤を含む場合、該カチオン性界面活性剤としては、界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤sは、置換アンモニウム塩形のカチオン性界面活性剤である。
【0088】
界面活性剤sとしては、窒素原子に結合する水素原子の1個以上が、アルキル基、アルケニル基または末端が水酸基であるPOA鎖で置換されたアンモニウム塩が好ましく、化合物(s71)がより好ましい。
[(R21]・X ・・・(s71)。
【0089】
21は、水素原子、炭素数が1〜22のアルキル基、炭素数が2〜22のアルケニル基、炭素数が1〜9のフルオロアルキル基、または末端が水酸基であるPOA鎖である。4つのR21は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、4つのR21は同時に水素原子ではない。
21としては、炭素数が6〜22の長鎖アルキル基、炭素数が6〜22の長鎖アルケニル基、または炭素数が1〜9のフルオロアルキル基が好ましい。
21が長鎖アルキル基以外のアルキル基の場合、R21としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
21が、末端が水酸基であるPOA鎖の場合、POA鎖としては、POE鎖が好ましい。
【0090】
は、対イオンである。
としては、塩素イオン、エチル硫酸イオン、または酢酸イオンが好ましい。
【0091】
化合物(s71)としては、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルモノココナッツアミン酢酸塩等が挙げられる。
【0092】
界面活性剤s
界面活性剤が両性界面活性剤を含む場合、該両性界面活性剤としては、界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤sは、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類または酢酸ベタインである。
【0093】
疎水基としては、炭素数が6〜22の長鎖アルキル基、炭素数が6〜22の長鎖アルケニル基、または炭素数が1〜9のフルオロアルキル基が好ましい。
界面活性剤sとしては、ドデシルベタイン、ステアリルベタイン、ドデシルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0094】
界面活性剤s
界面活性剤として、界面活性剤sを用いてもよい。
界面活性剤sは、親水性単量体と炭化水素系疎水性単量体および/またはフッ素系疎水性単量体との、ブロック共重合体、ランダム共重合体、または親水性共重合体の疎水性変性物からなる高分子界面活性剤である。
【0095】
界面活性剤sとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートと長鎖アルキルアクリレートとのブロックまたはランダム共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとフルオロ(メタ)アクリレートとのブロックまたはランダム共重合体、酢酸ビニルと長鎖アルキルビニルエーテルとのブロックまたはランダム共重合体、酢酸ビニルと長鎖アルキルビニルエステルとのブロックまたはランダム共重合体、スチレンと無水マレイン酸との重合物、ポリビニルアルコールとステアリン酸との縮合物、ポリビニルアルコールとステアリルメルカプタンとの縮合物、ポリアリルアミンとステアリン酸との縮合物、ポリエチレンイミンとステアリルアルコールとの縮合物、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられる。
【0096】
界面活性剤sの市販品としては、クラレ社のMPポリマー(商品番号:MP−103、MP−203)、エルフアトケム社のSMAレジン、信越化学社のメトローズ、日本触媒社のエポミンRP、セイミケミカル社のサーフロン(商品番号:S−381、S−393)等が挙げられる。
【0097】
界面活性剤sとしては、媒体が有機溶剤の場合または有機溶剤の混合比率が多い場合、界面活性剤s91が好ましい。
界面活性剤s91:親油性単量体とフッ素系単量体とのブロック共重合体またはランダム共重合体(そのポリフルオロアルキル変性体)からなる高分子界面活性剤。
【0098】
界面活性剤s91としては、アルキルアクリレートとフルオロ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキルビニルエーテルとフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
界面活性剤s91の市販品としては、セイミケミカル社のサーフロン(商品番号:S−383、SC−100シリーズ)が挙げられる。
【0099】
界面活性剤の組み合わせとしては、撥水撥油剤組成物の撥水性、耐久性に優れる点、得られた乳化液の安定性の点から、界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせ、または界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせ、または界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせが好ましく、界面活性剤sが化合物(s71)である上記の組み合わせがより好ましい。
界面活性剤の合計量は、共重合体(A)(100質量部)に対して1〜10質量部が好ましく、1〜7質量部より好ましい。
【0100】
(添加剤)
添加剤としては、浸透剤、消泡剤、吸水剤、帯電防止剤、制電性重合体、防皺剤、風合い調整剤、造膜助剤、水溶性高分子(ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等。)、熱硬化剤(メラミン樹脂、ウレタン樹脂、トリアジン環含有化合物、イソシアネート系化合物等。)、エポキシ硬化剤(イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド、スピログリコール等。)、熱硬化触媒、架橋触媒、合成樹脂、繊維安定剤、無機微粒子等が挙げられる。
【0101】
また、本発明の撥水撥油剤組成物は、必要に応じて、共重合体(A)以外の、撥水性および/または撥油性を発現できる共重合体(たとえば、市販の撥水剤、市販の撥油剤、市販の撥水撥油剤、市販のSR剤等。)、フッ素原子を有さない撥水性化合物等を含んでいてもよい。フッ素原子を有さない撥水性化合物としては、パラフィン系化合物、脂肪族アマイド系化合物、アルキルエチレン尿素化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。
【0102】
(撥水撥油剤組成物の製造方法)
本発明の撥水撥油剤組成物は、下記(i)または(ii)の方法で製造される。
(i)界面活性剤、重合開始剤および化合物(x)の存在下、媒体中にて単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含み、必要に応じて単量体(d)、単量体(e)を含む単量体混合物を重合して共重合体(A)の溶液、分散液またはエマルションを得た後、必要に応じて、他の媒体、他の界面活性剤、添加剤を加える方法。
(ii)界面活性剤、重合開始剤および化合物(x)の存在下、媒体中にて単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含み、必要に応じて単量体(d)、単量体(e)を含む単量体混合物を重合して共重合体(A)の溶液、分散液またはエマルションを得た後、共重合体(A)を分離し、共重合体(A)に媒体、界面活性剤、必要に応じて添加剤を加える方法。
【0103】
重合法としては、分散重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられ、乳化重合が好ましい。また、一括重合であってもよく、多段重合であってもよい。
撥水撥油剤組成物の製造方法としては、界面活性剤、重合開始剤および化合物(x)の存在下、単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含み、必要に応じて単量体(d)、単量体(e)を含む単量体混合物を乳化重合して共重合体(A)のエマルションを得る方法が好ましい。
共重合体の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体、界面活性剤、化合物(x)および水系媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体、界面活性剤、化合物(x)および水系媒体からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。
【0104】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性または油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましく、水系媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は20〜150℃が好ましい。
重合開始剤の添加量は、単量体混合物の100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0105】
単量体混合物の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類またはメルカプタン類が好ましく、アルキルメルカプタン類が特に好ましい。分子量調整剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマ(CH=C(Ph)CHC(CHPh、Phはフェニル基である。)等が挙げられる。
分子量調整剤の添加量は、単量体混合物の100質量部に対して、0〜5質量部が好ましく、0〜3質量部がより好ましい。
【0106】
また、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、2,4,6−トリメルカプトトリアジン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等の多官能メルカプト化合物の存在下で、単量体混合物を重合してもよい。
【0107】
化合物(x)の添加量は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、単量体混合物の100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜4質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が特に好ましい。
【0108】
単量体(a)の割合は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、単量体混合物(100質量%)のうち、5〜90質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、15〜85質量%が特に好ましい。
単量体(b)の割合は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、単量体混合物(100質量%)のうち、1〜60質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%が特に好ましい。
単量体(c)の割合は、動的撥水性および風乾後撥水性の点から、単量体混合物(100質量%)のうち、5〜90質量%が好ましく、5〜85質量%がより好ましく、5〜80質量%が特に好ましい。
【0109】
単量体(d)の割合は、単量体混合物(100質量%)のうち、0〜20質量%が好ましく、摩擦耐久性の点から、0.1〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。
単量体(e)の割合は、単量体混合物(100質量%)のうち、0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。
【0110】
本発明の撥水撥油剤組成物は、共重合体(A)が媒体中に粒子として分散していることが好ましい。共重合体(A)の平均粒子径は、10〜1000nmが好ましく、10〜300nmがより好ましく、10〜250nmが特に好ましい。平均粒子径が該範囲であれば、界面活性剤、分散剤等を多量に用いる必要がなく、撥水性が良好であり、染色された布帛類を処理した場合に色落ちが発生せず、媒体中で分散粒子が安定に存在できて沈降することがない。共重合体(A)の平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定できる。
【0111】
エマルションの固形分濃度は、撥水撥油剤組成物の製造直後は、エマルション(100質量%)中、20〜40質量%が好ましい。なお、該固形分濃度は、共重合体(A)の他、乳化剤も含む濃度である。エマルションにおける共重合体(A)の含有割合は、撥水撥油剤組成物の製造直後は、18〜40質量%が好ましい。
【0112】
本発明の撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、物品の処理時は、撥水撥油剤組成物(100質量%)中、0.2〜5質量%が好ましい。
エマルションまたは撥水撥油剤組成物の固形分濃度は、加熱前のエマルションまたは撥水撥油剤組成物の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0113】
以上説明した本発明の撥水撥油剤組成物にあっては、化合物(x)の存在下、単量体(a)、単量体(b)および単量体(c)を含む単量体混合物を重合して得られた共重合体を含むため、物品の表面に充分な動的撥水性および風乾後撥水性を付与できる。
また、本発明の撥水撥油剤組成物にあっては、環境への影響が指摘されている、パーフルオロオクタン酸(PFOA)やパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびその前駆体、類縁体の含有量(固形分濃度20%とした場合の含有量)を特願2007−333564に記載の方法によるLC−MS/MSの分析値として検出限界以下にすることができる。
【0114】
<物品>
本発明の撥水撥油剤組成物は、物品の撥水撥油処理に用いられる。
本発明の撥水撥油剤組成物で処理される物品としては、繊維(天然繊維、合成繊維、混紡繊維等。)、各種繊維製品、不織布、樹脂、紙、皮革、金属、石、コンクリート、石膏、ガラス等が挙げられる。
【0115】
処理方法としては、たとえば、公知の塗工方法によって物品に撥水撥油剤組成物を塗布または含浸した後、乾燥する方法が挙げられる。
さらに、帯電防止加工、柔軟加工、抗菌加工、消臭加工、防水加工等を行ってもよい。
防水加工としては、防水膜を付与する加工が挙げられる。防水膜としては、ウレタン樹脂やアクリル樹脂から得られる多孔質膜、ウレタン樹脂やアクリル樹脂から得られる無孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、またはこれらを組み合わせた透湿防水膜が挙げられる。
【0116】
本発明の撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理すると、高品位な撥水撥油性を物品に付与できる。また、基材表面への接着性に優れ、低温でのキュアリングでも撥水撥油性を付与できる。また、摩擦や洗濯による性能の低下が少なく、加工初期の性能を安定して維持できる。また、紙へ処理した場合は、低温の乾燥条件でも、優れたサイズ性、撥水撥油性を紙に付与できる。樹脂、ガラスまたは金属表面などに処理した場合には、物品への密着性が良好で造膜性に優れた撥水撥油性皮膜を形成できる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例5〜7、10、11、13、14は実施例であり、例1〜4、8、9、12は比較例である。
【0118】
<共重合体の物性>
下記の回収方法にて回収された共重合体について、分子量の測定を行った。
(回収方法)
エマルションの6gを、2−プロパノール(以下、IPAと記す。)の60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体をデカントした。再度、IPAの12gを加えてよく撹拌した。3000rpmで5分間遠心分離した後、得られた固体を上澄み液から分離し、35℃で一晩真空乾燥して共重合体を得た。
【0119】
(分子量)
回収した共重合体を、0.5質量%のTHF溶液とし、0.45μmのフィルタに通し、分析サンプルとした。該サンプルについて、数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を測定した。測定条件は下記のとおりである。
【0120】
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC、
カラム:TSKgel superHZ4000、superHZ3000、superHZ2500、superHZ2000の4種類を直列でつなげたもの、
測定温度:40℃、
注入量:40μL、
流出速度:0.35mL/分、
溶離液:THF、
標準試料:Polymer laboratories社製、EasiCal PS−2。
【0121】
<試験布の評価>
(撥水性)
試験布について、JIS L1092−1992のスプレー試験にしたがって撥水性を評価した。撥水性は、1〜5の5段階の等級で表した。点数が大きいほど撥水性が良好であることを示す。3等級以上であるものを撥水性が発現しているものとみなす。等級に+(−)を記したものは、当該等級の標準的なものと比べてそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
【0122】
(洗濯耐久性)
試験布について、JIS L0217別表103の水洗い法にしたがって、洗濯を20回繰り返した。洗濯後、室温25℃、湿度60%の部屋で一晩風乾させた後、前記撥水性を評価した。
【0123】
(撥油性)
試験布について、AATCC−TM118−1966の試験方法にしたがって撥油性を評価した。撥油性は、表1に示す等級で表した。等級に+(−)を記したものは、それぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
【0124】
【表1】

【0125】
(動的撥水性)
試験布について、JIS L1092(C)法に記載の方法(ブンデスマン試験)にしたがって、降雨量を100cc/分、降雨水温を20℃、降雨時間10分とする条件で降雨させ、撥水性を評価した。撥水性は、1〜5の5段階の等級で表した。点数が大きいほど撥水性が良好であることを示す。3等級以上であるものを撥水性が発現しているものとみなす。等級に+(−)を記したものは、それぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
【0126】
(洗濯耐久性)
試験布について、JIS L0217別表103の水洗い法にしたがって、洗濯を5回または20回繰り返した。洗濯後、室温25℃、湿度50%の部屋で一晩風乾させた後、前記動的撥水性を評価した。
【0127】
(機械的安定性)
撥水撥油剤組成物の250gを温浴槽で30℃に加温し、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて3000rpmで5分間攪拌した後、茶色ドスキン布にてろ過した。ドスキン布の表面に残った痕跡を観察した。痕跡のないものを5点とし、1点までの5段階で評価した。点数が低いほど機械的安定性が悪いことを示す。
【0128】
(夾雑物安定性)
撥水撥油剤組成物の250gに、スミカロンレッドSE−RPD(住化ケムテックス社製、表中:分散染料R)を、濃度が0.05g/Lとなるように添加した。該液を、温浴槽で30℃に加温し、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて3000rpmで5分間攪拌した後、茶色ドスキン布にてろ過した。ドスキン布の表面に残った痕跡を観察した。痕跡のないものを5点とし、1点までの5段階で評価した。点数が低いほど夾雑物安定性が悪いことを示す。
スミカロンレッドSE−RPDを、ナイロサンブルーN−BLN(クラリアント社製、表中:酸性染料B)に変更し、同様にして夾雑物安定性を評価した。
【0129】
(略号)
単量体(a):
C6FMA:C13OC(O)C(CH)=CH
【0130】
単量体(b):
VCM:塩化ビニル、
VdCl:塩化ビニリデン。
【0131】
単量体(c):
BeA:ベヘニルアクリレート、
STA:ステアリルアクリレート。
【0132】
単量体(d):
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
D−BI:2−イソシアネートエチルメタクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体(下式(5))、
NMAM:N−メチロールアクリルアミド。
【0133】
【化2】

【0134】
単量体(e):
CmFA:F(CFCHCHOC(O)CH=CH(mが6〜16の混合物であり、mが8以上のものが99質量%以上であり、mの平均値は9である。)、
DOM:ジオクチルマレエート。
【0135】
界面活性剤s
PEO−20:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王社製、エマルゲンE430、エチレンオキシド約26モル付加物。)の10質量%水溶液、
SFY465:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエチレンオキシド付加物(日信化学工業株式会社 サーフィノール465、エチレンオキシド付加モル数10)の10質量%水溶液。
【0136】
界面活性剤s
TMAC:トリメチルアンモニウムクロリド(ライオン社製、アーカード18−63)の10質量%水溶液。
【0137】
界面活性剤s
P−204:エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物(日本油脂社製、プロノン204、エチレンオキシドの割合は40質量%。)の10質量%水溶液。
【0138】
分子量調整剤:
nDOSH:n−ドデシルメルカプタン。
【0139】
化合物(x):
TG:α−チオグリセロール、
ME:2−メルカプトエタノール、
MS:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン。
【0140】
重合開始剤:
VA−061A:2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬社製、VA−061)の酢酸塩の10質量%水溶液。
【0141】
媒体:
DPG:ジプロピレングリコール、
水:イオン交換水。
【0142】
〔例1〕
ガラス製ビーカーに、CmFAの154.64g、DOMの13.92g、NMAMの5.96g、nDOSHの2.21g、PEO−20の79.53g、SFY465の17.67g、P−204の22.09g、DPGの66.27g、水の342.42gを入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて混合して混合液を得た。
【0143】
得られた混合液を、60℃に保ちながら高圧乳化機(APVラニエ社製、ミニラボ)を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液をステンレス製反応容器に入れ、40℃以下となるまで冷却した。VA−061Aの1.03gを加えて、気相を窒素置換した後、VCMの41.24gを導入し、撹拌しながら60℃で15時間重合反応を行い、共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく構成単位の割合を表3に示す。
【0144】
〔例2、3、5〜8〕
各原料の仕込み量を表2に示す量に変更した以外は、例1と同様にして共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく構成単位の割合を表3に示す。例5、6、8の共重合体については、分子量の測定を行った。回収率、共重合体の分子量を表4に示す。
【0145】
〔例4〕
ガラス製ビーカーに、C6FMAの186.63g、HEMAの2.33g、nDOSHの2.33g、PEO−20の58.32g、SFY465の11.66g、TMACの11.68g、DPGの69.98g、水の361.59gを入れ、55℃で30分間加温した後、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて混合して混合液を得た。
【0146】
得られた混合液を、50℃に保ちながら高圧乳化機(APVラニエ社製、ミニラボ)を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液をガラス製反応器に入れ、30℃以下に冷却した。VdClの41.37g、VA061−Aの1.09gを加えて、気相を窒素置換した後、撹拌しながら65℃で15時間重合反応を行い、共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく構成単位の割合を表3に示す。
【0147】
〔例9〜14〕
各原料の仕込み量を表2に示す量に変更した以外は、例4と同様にして共重合体のエマルションを得た。各単量体に基づく構成単位の割合を表3に示す。例14の共重合体については、分子量の測定を行った。回収率、共重合体の分子量を表4に示す。
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
<試験布の評価>
例1〜14の共重合体のエマルションを蒸留水で希釈し、固形分濃度を1.0質量%に調整した後、熱硬化剤であるトリメチロールメラミン樹脂(DIC社製、ベッカミンM−3)および熱硬化触媒である有機アミン塩触媒(DIC社製、キャタリストACX)を、それぞれの濃度が0.3質量%となるように添加し、さらに、併用助剤であるブロックドイソシアネート(明成化学工業社製、メーカネートTP−10)を、濃度が0.75質量%となるように添加し、撥水撥油剤組成物を得た。
【0152】
撥水撥油剤組成物に、染色済みナイロン布または染色済みポリエステル布を浸漬し、ウェットピックアップがそれぞれ42質量%、95質量%となるように絞った。これを110℃で90秒間乾燥した後、170℃で60秒間乾燥したものを試験布とした。該試験布について、撥水性(風乾後撥水性)、撥油性、動的撥水性を評価した。結果を表5および表6に示す。例1、5、8、9、14の撥水撥油剤組成物については、機械的安定性、夾雑物安定性も評価した。結果を表7に示す。
【0153】
【表5】

【0154】
【表6】

【0155】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の撥水撥油剤組成物は、繊維製品(衣料物品(スポーツウェア、コート、ブルゾン、作業用衣料、ユニフォーム等。)、かばん、産業資材等。)、不織布、皮革製品、石材、コンクリート系建築材料、等の撥水撥油剤として有用である。また、濾過材料用コーティング剤、表面保護剤として有用である。さらに、ポリプロピレン、ナイロン等と混合して成形、繊維化することにより撥水撥油性を付与する用途にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(x)の存在下、下記単量体(a)、下記単量体(b)および下記単量体(c)を含む単量体混合物を重合して得られた共重合体と、媒体とを含む、撥水撥油剤組成物。
化合物(x):架橋しうる官能基を有するチオール化合物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のポリフルオロアルキル基、または下式(2)で表される基であり、Yは、2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ハロゲン化オレフィン。
単量体(c):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が12〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【請求項2】
前記化合物(x)が、水酸基を有するチオール化合物である、請求項1に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項3】
前記水酸基を有するチオール化合物が、チオグリセロールである、請求項2に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項4】
前記単量体(a)が、炭素数が4〜6のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートである、請求項1〜3のいずれかに記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項5】
前記単量体混合物が、下記単量体(d)をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の撥水撥油剤組成物。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。
【請求項6】
界面活性剤、重合開始剤および下記化合物(x)の存在下、媒体中にて下記単量体(a)、下記単量体(b)および下記単量体(c)を含む単量体混合物を重合する、撥水撥油剤組成物の製造方法。
化合物(x):架橋しうる官能基を有するチオール化合物。
単量体(a):下式(1)で表される化合物。
(Z−Y)X ・・・(1)。
ただし、Zは、炭素数が1〜6のポリフルオロアルキル基、または下式(2)で表される基であり、Yは、2価有機基または単結合であり、nは、1または2であり、Xは、nが1の場合は、下式(3−1)〜(3−5)で表される基のいずれかであり、nが2の場合は、下式(4−1)〜(4−4)で表される基のいずれかである。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
−CR=CH ・・・(3−1)、
−C(O)OCR=CH ・・・(3−2)、
−OC(O)CR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHC(O)OCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOC(O)CR=CH]− ・・・(4−3)、
−OC(O)CH=CHC(O)O− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
単量体(b):ハロゲン化オレフィン。
単量体(c):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が12〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレート。
【請求項7】
前記化合物(x)が、水酸基を有するチオール化合物である、請求項6に記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
【請求項8】
前記水酸基を有するチオール化合物が、チオグリセロールである、請求項7に記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
【請求項9】
前記単量体(a)が、炭素数が4〜6のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートである、請求項6〜8のいずれかに記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記単量体混合物が、下記単量体(d)をさらに含む、請求項6〜9のいずれかに記載の撥水撥油剤組成物の製造方法。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。

【公開番号】特開2010−100766(P2010−100766A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274757(P2008−274757)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】