説明

撥水撥油剤組成物

【課題】繊維製品などの基材に優れた撥水撥油性を付与し、その加工処理において、ロールへのポリマー付着性防止に優れる撥水撥油剤組成物を提供する。
【解決手段】第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体であって、第1重合体の存在下で、第2単量体が重合されており、第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体(a)を含み、第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体(b)を含む含フッ素重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品(例えば、カーペット)、紙、不織布、石材、静電フィルター、防塵マスク、燃料電池の部品に、優れた撥水性、撥油性、防汚性を付与する含フッ素重合体およびこの重合体を含む処理剤組成物、特に表面処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の含フッ素化合物が提案されている。含フッ素化合物には、耐熱性、耐酸化性、耐候性などの特性に優れているという利点がある。含フッ素化合物の自由エネルギーが低い、すなわち、付着し難いという特性を利用して、含フッ素化合物は、例えば、撥水撥油剤および防汚剤として使用されている。例えば、例えば、米国特許第5247008号明細書には、アクリル酸またはメタクリル酸のパーフルオロアルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のアミノアルキルエステルとの共重合体の水性分散物である、繊維製品、皮革、紙および鉱物基材のための仕上げ剤が記載されている。
【0003】
また従来、洗濯やドライクリーニング等に対する撥水撥油性の耐久性向上を目的として、フルオロアルキル基含有重合性単量体とともに接着性基を有する単量体を共重合させたり、フルオロアルキル基を含有する重合体と皮膜強度の高いポリマーとをブレンドする試みがなされている。塗料(コーティング剤)の分野では多層構造を有する粒子重合体を用いることでフッ素の特性を維持し、加工性の新たな特性を付与することに成功している(例えば、特開平06−56944号公報)。
【0004】
また、耐久性、低温キュア等の特性を持たせるために多層構造粒子重合体の組成物が提唱されている。(例えば、特開平02−001795号公報、特開平07−278422号公報、特開平11−172126号公報、特開平2007−291373号公報)
【0005】
また、従来の一般的な水性分散液を希釈して調合される撥水撥油剤加工浴では、処理される生地が入るときに受ける機械的衝撃により分散液が壊れ、エマルション粒子が凝集、沈降が起こったりして、撥ロールにポリマーが付着して生地汚れとなる、ロール汚れとなるなどのトラブルがしばしば発生していた。夾雑物の安定性に優れる方法がいくつか提案されているが(例えば、特開平9−118877号公報、WO2004/069924号公報)、近年の撥水撥油加工の多様性に伴って、必ずしも十分に満足のいく安定性を提供するにはいたっていない。また、ロールにポリマーが付着する問題については、ポリマーの粘着性が高いほど問題が起こりやすい。また、フルオロアルキル基含有重合体のフルオロアルキル基の炭素数が6以下では重合体の融点が低下することで炭素数8以上のものより粘着性が高くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5247008号明細書
【特許文献2】特開平06−56944号公報
【特許文献3】特開平02−001795号公報
【特許文献4】特開平07−278422号公報
【特許文献5】特開平11−172126号公報
【特許文献6】特開平2007−291373号公報
【特許文献7】特開平9−118877号公報
【特許文献8】WO2004/069924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は繊維製品などの基材に優れた撥水撥油性を付与し、その加工処理において、ロールへのポリマー付着性防止に優れる撥水撥油剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記問題点を解決するために、粘着性の高いポリマー部分の生成を抑え、高い撥水撥油性を発揮し、かつ耐久性にも優れる撥水撥油剤組成物を提供することを目的として鋭意検討を行なった。その結果、特定の化学構造を有する重合単位を持った重合体とフルオロアルキル基を含むモノマーの重合単位を有する重合体の重合開始時刻を変更することにより上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、
第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体であって、
第1重合体の存在下で、第2単量体が重合されており、
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体(a)を含み、
第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体(b)を含む含フッ素重合体を提供する。
本発明は、
第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体の製法であって、
製法は、
(I)第1単量体を重合して第1重合体を得る工程、および
(II)第1重合体の存在下で、第2単量体を重合することによって、第2重合体を得る工程
を有してなり、
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体を含み、
第1単量体は、非フッ素非架橋性単量体を含んで成り、
第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体を含んで成る製法をも提供する。
【0010】
本発明において、第1単量体はハロゲン化オレフィン単量体を含んでも含まなくてもどちらでもよい。第1単量体はハロゲン化オレフィン単量体を含まないことが好ましい。
好ましい態様において、本発明は、
第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体であって、
第1重合体の存在下で、第2単量体が重合されており、
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体(a)を含み、
第1単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体(b)を含まず、
第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体(b)を含む含フッ素重合体を提供する。
好ましい態様において、本発明は、
第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体の製法であって、
製法は、
(I)第1単量体を重合して第1重合体を得る工程、および
(II)第1重合体の存在下で、第2単量体を重合することによって、第2重合体を得る工程
を含んでなり、
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体を含み、
第1単量体は、非フッ素非架橋性単量体を含んで成り、ハロゲン化オレフィン単量体を含まず、
第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体を含んで成る製法をも提供する。
さらに、本発明は、上記の含フッ素重合体を必須成分とする撥水撥油剤をも提供する。
【0011】
含フッ素重合体は、含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位およびハロゲン化オレフィンなどの非フッ素単量体から誘導された繰り返し単位を有する。
含フッ素重合体は、分割仕込みによって製造できる。分割仕込みにより、単量体の二段重合を行う。分割仕込みとは、1種以上の単量体の仕込み(重合開始)に遅らせて、他の1種以上単量体の仕込み(重合開始)を行うことを意味する。二段重合とは、1種以上の単量体を含む第1単量体を重合して得られた第1重合体の存在下で、他の1種以上の単量体を含む第2単量体の重合を行うことを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の目的は繊維製品などの基材に優れた撥水撥油性を付与し、その加工処理において、ロールへのポリマー付着性防止に優れる撥水撥油剤組成物を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の含フッ素重合体は、第1単量体から誘導される繰り返し単位および第2単量体から誘導される繰り返し単位を有する。第1重合体と第2重合体は、共重合していてよい。すなわち、第1重合体と第2重合体は、化学的に結合していても良い。あるいは、第1重合体と第2重合体は、化学結合を形成せず、物理的に結合していてもよい。物理的結合の例は、第1重合体がコアを形成し第2重合体がシェルを形成しているコア/シェル構造である。コア/シェル構造において、第1重合体と第2重合体が化学的に結合していないことがあるが、化学的に結合していてもよい。
【0014】
本発明においては、単量体として、含フッ素単量体(a)およびハロゲン化オレフィン単量体(b)を使用する。必要により非フッ素非架橋性単量体(c)、および/または非フッ素架橋性単量体(d)を使用してもよい。
【0015】
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方が含フッ素単量体を含む。第1単量体が含フッ素単量体を含み、第2単量体が含フッ素単量体を含まないことが好ましい。
第2単量体はハロゲン化オレフィン単量体を含む。第2単量体はハロゲン化オレフィン単量体のみからなってもよい。
第1単量体が非フッ素非架橋性単量体を含んでいてよい。第2単量体が非フッ素非架橋性単量体を含まないことが好ましい。第2単量体が非フッ素非架橋性単量体を含まないことによって、含フッ素重合体を含む処理剤の加工処理において、ロールへポリマーが付着することによるロール汚れを防止する性能が優れている。
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方が非フッ素架橋性単量体を含んでいてもよい。含フッ素重合体が非フッ素架橋性単量体を含む場合には、第1単量体が非フッ素架橋性単量体を含まず、第2単量体が非フッ素架橋性単量体を含んでもよいし、あるいは第1単量体が非フッ素架橋性単量体を含み、第2単量体が非フッ素架橋性単量体を含まなくてよい。
【0016】
第1単量体と第2単量体における単量体の好ましい種類には次のような態様がある。
【0017】
【表1】

【0018】
ハロゲン化オレフィン単量体が第1単量体と第2単量体の両方に存在してもよい(例えば、態様8および9)。
本発明においては、態様2(第1単量体が含フッ素単量体および非フッ素非架橋性単量体であり、第2単量体がハロゲン化オレフィン単量体である)が特に好ましい。
含フッ素単量体および非フッ素架橋性単量体のそれぞれが第1単量体と第2単量体の両方に存在する態様も好ましい。すなわち、含フッ素単量体が第1単量体と第2単量体の両方に存在する以外は態様1〜9と同様の態様、非フッ素架橋性単量体が第1単量体と第2単量体の両方に存在する以外は態様1〜9と同様の態様も好ましい。
【0019】
(a)含フッ素単量体
含フッ素単量体は式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y は、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示される含フッ素単量体である。Zは、例えば、炭素数1〜20の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基、例えば、式−(CH−(式中、xは1〜10である。)で示される基、あるいは、式−SON(R)R−または式−CON(R)Rで示される基(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキレン基または分枝状アルキレン基である。)、あるいは、式−CHCH(OR)CH−(式中、Rは、水素原子、または、炭素数1〜10のアシル基(例えば、ホルミルまたはアセチルなど)を表す。)で示される基、あるいは、式−Ar−CH−(式中、Arは、置換基を必要により有するアリーレン基である。)で示される基、-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であってよい。Xの具体例は、H、Me(メチル基)、Cl、Br、I、F、CN、CFである。
【0020】
含フッ素単量体(a)は、一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示されるアクリレートエステルまたはアクリルアミドであることが好ましい。
【0021】
含フッ素単量体(a)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(1)において、Xが、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0022】
上記式(1)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜12、例えば1〜6、特別には4〜6であることが好ましい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−C817等である。
【0023】
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)であることが好ましい。脂肪族基は、アルキレン基(特に炭素数は1〜4、例えば1または2である。)であることが好ましい。芳香族基または環状脂肪族基は、置換または非置換であってよい。S 基または SO2基はRf基に直接に結合していてよい。
【0024】
含フッ素単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0025】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0026】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0027】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0028】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0029】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0030】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
【0031】
(b)ハロゲン化オレフィン単量体
ハロゲン化オレフィン単量体(b)は、1〜10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2〜20のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィン単量体(b)は、炭素数2〜20の塩素化オレフィン、特に1〜5の塩素原子を有する炭素数2〜5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィン単量体(b)の好ましい具体例は、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンである。
【0032】
(c)非フッ素非架橋性単量体
非フッ素非架橋性単量体(c)は、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素非架橋性単量体(c)は、架橋性官能基を有さない。非フッ素非架橋性単量体(c)は、架橋性単量体(d)とは異なり、非架橋性である。非フッ素非架橋性単量体(c)は、好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する非フッ素単量体である。非フッ素非架橋性単量体(c)は、好ましくは、フッ素を含まないビニル単量体である。非フッ素非架橋性単量体(c)は一般には、1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。
【0033】
好ましい非フッ素非架橋性単量体(c)は、式:
CH=CA−T
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
Tは、水素原子、炭素数1〜20の鎖状または環状の炭化水素基、またはエステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜20の有機基である。]
【0034】
炭素数1〜20の鎖状または環状の炭化水素基の例は、炭素数1〜20の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜20の芳香脂肪族炭化水素基である。
【0035】
エステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜20の有機基の例は、-C(=O)-O-Q および-O-C(=O)-Q(ここで、Qは、炭素数1〜20の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜20の芳香脂肪族炭化水素基)である。
【0036】
非フッ素非架橋性単量体(c)の好ましい例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが含まれる。非フッ素非架橋性単量体(c)はこれらの例に限定されない。
【0037】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は1〜30であってよく、例えば、6〜30(例えば、10〜30)であってよい。例えば、非フッ素非架橋性単量体(c)は、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。
【0038】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体であってよい。環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(B)は、(好ましくは一価の)環状炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。一価の環状炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状炭化水素基としては、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は4〜20であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4〜20、特に5〜12の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数7〜20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。環状炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。(メタ)アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であるが、メタクリレート基が好ましい。環状炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート等が挙げられる。
【0039】
(d)非フッ素架橋性単量体
本発明の含フッ素重合体は、非フッ素架橋性単量体(d)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。非フッ素架橋性単量体(d)は、フッ素原子を含まない単量体である。非フッ素架橋性単量体(d)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。非フッ素架橋性単量体(d)は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。非フッ素架橋性単量体(d)は、反応性基を有するモノ(メタ)アクリレート、(メタ)ジアクリレートまたはモノ(メタ)アクリルアミドであってよい。あるいは、非フッ素架橋性単量体(d)は、ジ(メタ)アクリレートであってよい。
【0040】
非フッ素架橋性単量体(d)としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0041】
非フッ素非架橋性単量体(c)および/または非フッ素架橋性単量体(d)を共重合させることにより、撥水撥油性や防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善することができる。
【0042】
含フッ素重合体において、含フッ素単量体(a)100重量部に対して、
ハロゲン化オレンフィン(b)の量が2〜500重量部、例えば5〜200重量部、特に20〜150重量部であり、
非フッ素非架橋性単量体(c)の量が1000重量部以下、例えば0.1〜300重量部、特に1〜200重量部であり、
非フッ素架橋性単量体(d)の量が50重量部以下、例えば30重量部以下、特に0.1〜20重量部であってよい。
同様の種類の単量体(例えば、ハロゲン化オレフィン単量体および含フッ素単量体)が第1単量体と第2単量体の両方に含まれる場合に、第1単量体における同種単量体(特に、ハロゲン化オレフィン単量体)と第2単量体における同種単量体(特に、ハロゲン化オレフィン単量体)の重量比は、3〜97:97〜3、例えば5〜90:95〜10、特に10〜70:90〜30であってよい。
【0043】
本発明における含フッ素重合体は通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。
【0044】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部、例えば0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0045】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50〜2000重量部、例えば、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0046】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0047】
放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0048】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1〜50重量部、例えば10〜40重量部の範囲で用いてよい。
【0049】
一般に、第1単量体を含む液で重合反応を行って第1重合体を製造し、次いで、第1重合体および第2単量体を含む液で重合体反応を行って第2重合体を製造し、第1重合体と第2重合体から構成される含フッ素重合体を得る。第1重合体の重合中に第2重合体の重合を開始させてもよいし、あるいは第1重合体の重合完了後に第2重合体の重合を開始させてもよい。第1重合体の重合反応(すなわち、第1単量体の重合反応)が10%以上(すなわち、10〜100%)、例えば40%以上(すなわち、40〜100%)、特に70%以上(すなわち、70〜100%)終了した後に、第2重合体の重合を開始させてよい。重合反応終了割合%(すなわち、重合反応進行割合%)は、反応済みの単量体(重合した単量体)のモル%を意味する。例えば、重合反応が10%終了している場合に、重合済み単量体が10モル%であり、未反応(未重合)単量体が90モル%である。第1単量体が少なくとも2種の単量体の組合せである場合には、第1単量体のモル%は、第1単量体における少なくとも2種の単量体の合計モルに基づく。
【0050】
第1重合体の重合中とは、第1重合体の重合反応(すなわち、第1単量体の重合反応)が完全に終了していないことを意味する。例えば、第1重合体の重合が10%以上〜40%未満、40%以上〜70%未満、または70%以上〜100%未満(特に80%〜99%、特別に85%〜98%)終了した後に、第2重合体の重合を開始させてよい。
第1重合体の重合完了後とは、第1重合体の重合反応(すなわち、第1単量体の重合反応)が約100%終了していることを意味する。
【0051】
第1重合体の重合中に第2重合体の重合を開始させる場合には、第2重合体は、第1単量体および第2単量体から誘導される繰り返し単位を有する。第1重合体の重合完了後に第2重合体の重合を開始させる場合には、第2重合体は、第2単量体のみから誘導される繰り返し単位を有する。
【0052】
第1単量体の仕込みは、一括(一時)で行ってもよいし、あるいは連続的に行ってもよい。第1単量体の仕込みは一時に行うことが好ましい。
第2単量体の仕込みは、一括で行ってもよいし、あるいは連続的に行ってもよい。第2単量体における少なくとも1種の単量体がガス状である場合に、第2単量体の連続的な仕込みは、第2単量体の重合中で単量体ガスの圧力が一定になるように行うことが好ましい。
本発明の含フッ素重合体において、第1重合体は、第2重合体に化学結合しているかまたは化学結合していない。
【0053】
第2単量体の重合を開始させる時点において、重合系の中に未反応の非フッ素非架橋性単量体が実質的に存在しないことが好ましい。実質的に存在しないとは、第2単量体の重合を開始させる時点において、未反応の非フッ素非架橋性単量体の量が、仕込んだ非フッ素非架橋性単量体に対して、10モル%以下、好ましくは6モル%以下、特に2モル%、特別に1モル%以下であることを意味する。非フッ素非架橋性単量体が実質的に存在しないことによって、含フッ素重合体を含む処理剤の加工処理において、ロールへポリマーが付着することによるロール汚れを防止する性能が優れている。
【0054】
本発明の含フッ素重合体は、乳化重合により製造することが好ましい。第1重合体および第2重合体によって形成される水性分散体の粒子において、第2重合体が第1重合体を包囲していてよく、含フッ素重合体は、第2重合体のシェルによって第1重合体のコアが包囲されているコア/シェル構造を有していてよい。
【0055】
含フッ素重合体は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品など)に適用することができる。繊維製品に適用される溶液における含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.5重量%〜20重量%、あるいは、1重量%〜5重量%であってよい。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着または噴霧してよい。処理された繊維製品は、撥油性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃〜200℃で加熱される。
【0056】
あるいは、含フッ素重合体はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維製品に適用してよい。
【0057】
処理される繊維製品は、典型的には、布であり、これには、織物、編物および不織布、衣料品形態の布およびカーペットが含まれるが、繊維または糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。繊維製品材料は、天然繊維(例えば、綿または羊毛など)、化学繊維(例えば、ビスコースレーヨンまたはレオセルなど)、または、合成繊維(例えば、ポリエステル、ポリアミドまたはアクリル繊維など)であってよく、あるいは、繊維の混合物(例えば、天然繊維および合成繊維の混合物など)であってよい。本発明の製造重合体は、セルロース系繊維(例えば、綿またはレーヨンなど)を疎油性および撥油性にすることにおいて特に効果的である。また、本発明の方法は一般に、繊維製品を疎水性および撥水性にする。
【0058】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。製造重合体を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
あるいは、繊維状基材は紙であってもよい。製造重合体を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0059】
本発明の表面処理剤は、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であることが好ましい。表面処理剤は、含フッ素重合体(表面処理剤の活性成分)および媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなる。表面処理剤において、含フッ素重合体の濃度は、例えば、0.01〜50重量%であってよい。
【0060】
本発明の表面処理剤は、含フッ素重合体および水性媒体を含んでなることが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100重量部に対して、80重量部以下、例えば0.1〜50重量部、特に5〜30重量部である。)をも含有する媒体を意味する。含フッ素重合体は、乳化重合によって、含フッ素重合体の分散液を製造することが好ましい。表面処理剤は、含フッ素重合体の粒子が水性媒体に分散する水性分散液であることが好ましい。分散液において、含フッ素重合体の平均粒子径は、0.01〜200マイクロメートル、例えば0.1〜5マイクロメートル、特に0.05 〜 0.2マイクロメートルであることが好ましい。平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定することができる。
【0061】
本発明の表面処理剤は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、該表面処理剤を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本発明の表面処理剤に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などを添加して併用することも可能である。基材と接触させる処理液における含フッ素化合物の濃度は0.01〜10重量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05〜10重量%であってよい。
【0062】
本発明の表面処理剤(例えば、撥水撥油剤)で処理される被処理物としては、繊維製品が好ましい。繊維製品としては種々の例を挙げることができる。例えば、綿、麻、羊毛、絹などの動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維などの無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。
繊維製品は、繊維、糸、布等の形態のいずれであってもよい。
【0063】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である含フッ素重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0064】
次に、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
以下において、部または%は、特記しない限り、重量部または重量%を表す。
試験の手順は次のとおりである。
【0065】
シャワー撥水性試験
シャワー撥水性試験をJIS−L−1092に従って行った。シャワー撥水性試験は(下記に記載されている表1に示されるように)撥水性No.によって表された。
体積が少なくとも250mlであるガラス漏斗、および、250mlの水を20秒間〜30秒間にわたって噴霧することができるスプレーノズルを使用する。試験片フレームは、直径が15cmの金属フレームである。サイズが約20cmx20cmである3枚の試験片シートを準備し、シートを試験片ホルダーフレームに固定し、シートにしわがないようにする。噴霧の中心をシートの中心に置く。室温の水(250mL)をガラス漏斗に入れ、試験片シートに(25秒〜30秒の時間にわたって)噴霧する。保持フレームを台から取り外し、保持フレームの一方の端をつかんで、前方表面を下側にし、反対側の端を堅い物質で軽くたたく。保持フレームを180°さらに回転させ、同じ手順を繰り返して、過剰な水滴を落とす。湿った試験片を、撥水性が不良から優れた順で、0、50、70、80、90および100の評点をつけるために、湿潤比較標準物と比較する。結果を3回の測定の平均から得る。
【0066】
撥油性試験
処理済み試験布を温度21℃、湿度65%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(表2に示す)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度65%の恒温恒湿室で行う。試験液を試験布上に 0.05ml静かに滴下し、30秒間放置後、液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥水性は、パスした試験液の最高点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでFail、1、2、3、4、5、6、7および8の9段階で評価する。
【0067】
【表2】

【0068】
撥水撥油性の洗濯耐久性
JIS L-0217-103法による洗濯を10または20回繰り返して行い、その後の撥水撥油性を評価する(HL-10, HL-20)。
【0069】
耐水圧試験
AATCC 127-2003 耐水圧試験法に準拠し、耐水圧測定装置を使用し、耐水圧を測定した。
【0070】
粘着性試験
固体をアルミカップに1g秤量し、60℃1時間加熱を行った後、ポリマー部分に指をあてて引き離したときの粘着性を以下のように評価した。
○: 粘着性が全く感じられない
△: 粘着性がわずかに感じられる。
×: 粘着性が感じられる。
××: 強い粘着性が感じられる
【0071】
製造例1
500mLオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)11g、純水150g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応13FMA 91%終了,StA 90%終了)後、塩化ビニル(VCM)20gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0072】
製造例2
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応13FMA 85%終了,StA 94%終了)後、塩化ビニル(VCM)46gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0073】
製造例3
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で3時間反応させた(重合反応約100%終了)。その後、塩化ビニル(VCM)46gを圧入充填し、さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0074】
製造例4
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応13FMA 85%終了,StA 94%終了)後、塩化ビニル(VCM)46g、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)5gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0075】
製造例5
1Lオートクレーブにステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で3時間反応させた(重合反応約100%終了)。その後、塩化ビニル(VCM)46g、CF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0076】
製造例6
500mLオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(Cl)=CH2 (n=2.0)(13FClA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)11g、純水150g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応13FClA 78%終了,StA 90%終了)後、塩化ビニル(VCM)20gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0077】
製造例7
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(Cl)=CH2 (n=2.0)(13FClA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応13FClA 77%終了,StA 94%終了)後、塩化ビニル(VCM)46gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Aに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0078】
比較製造例1
500mLオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)11g、純水150g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)20gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Bに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0079】
比較製造例2
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)46gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Bに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0080】
比較製造例3
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、ステアリルアクリレート(StA)160g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、第1重合体の水性分散液を得た。1Lオートクレーブにフラスコ内を窒素置換後、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、塩化ビニル(VCM)46gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、第2重合体の水性分散液を得た。第1重合体および第2重合体の水性分散液を20対80の重量で混合し、水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Bに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0081】
比較製造例4
500mLオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 40g、ステアリルアクリレート(StA)9g、純水150g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCM)20gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応13FMA 85%、StA 91%、VCM 11%終了)後、CF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 5g、ステアリルアクリレート(StA)2gを添加し、さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Bに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0082】
比較製造例5
1LオートクレーブにCF3CF2-(CF2CF2)n-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 (n=2.0)(13FMA) 45g、純水400g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル82g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル5.4g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル5.4gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で40分反応させた(重合反応82%終了)後、塩化ビニル(VCM)46g、ステアリルアクリレート(StA)160gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.2gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(重量比)は、表Bに示すとおりであった。重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した。
【0083】
実施例1
製造例1において製造した水性液体(5g、7.5g、および48gのそれぞれ)を純水により希釈して、試験溶液(1000g)を調製した。1枚のナイロンタフタ布(510mm x 205mm)をこの試験溶液に浸し、マングルに通し、160℃で2分間、ピンテンターで処理した。試験布を撥水性試験に付した。上記手順と同じ手順を、1枚のPETタフタ布(510mm x 205mm)について繰り返した。その後夫々の試験布を未洗濯(HL0)、洗濯10回(HL10)、洗濯20回(HL20)に分けて、夫々についてシャワー撥水試験、撥水試験、撥油試験に使用した。結果を表Aに示す。
【0084】
実施例2〜7および比較例1〜5
製造例2〜7および比較製造例1〜5において製造したポリマーを実施例1と同様に処理し、シャワー撥水性試験、撥油性試験を行った。結果を表Aおよび表Bに示す。
【0085】
表中、略号の意味は次のとおりである。

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の含フッ素重合体を含む処理剤組成物は、繊維製品(例えば、カーペット)、紙、不織布、石材、静電フィルター、防塵マスク、燃料電池の部品に、優れた撥水性、撥油性、防汚性を付与する撥水撥油剤および防汚剤などとして使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体であって、
第1重合体の存在下で、第2単量体が重合されており、
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体(a)を含み、
第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体(b)を含む含フッ素重合体。
【請求項2】
第1単量体が含フッ素単量体(a)を含む請求項1に記載の含フッ素重合体。
【請求項3】
第2単量体が含フッ素単量体(a)を含む請求項1または2に記載の含フッ素重合体。
【請求項4】
第2単量体が非フッ素非架橋性単量体(c)を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項5】
第1単量体が非フッ素非架橋性単量体(c)を含む請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項6】
第2単量体が非フッ素架橋性単量体(d)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項7】
第1重合体が含フッ素単量体(a)に加えて、さらに非フッ素非架橋性単量体(c)、および必要により存在する、非フッ素架橋性単量体(d)を含んでなる請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項8】
第2重合体がハロゲン化オレフィン単量体のみからなる請求項1〜7のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項9】
第2重合体がハロゲン化オレフィン単量体に加えて、含フッ素単量体(a)および非フッ素架橋性単量体(d)の少なくとも一方を含んでなる請求項1〜8のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項10】
含フッ素単量体(a)が、
(A)式:
CH2=C(-X)-C(=O)-Y-Z-Rf
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y は、-O- または -NH-であり、
Zは、直接結合または二価の有機基であり、
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で示されるものである請求項1〜9のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項11】
含フッ素単量体(a)が、
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (I)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基である。]
で示されるものである請求項1〜10のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項12】
含フッ素単量体のフルオロアルキル基の炭素数が6以下である請求項10または11に記載の含フッ素重合体。
【請求項13】
ハロゲン化オレフィン単量体(b)は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2〜20のオレフィンである請求項1〜12のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項14】
ハロゲン化オレフィン単量体(b)は、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンまたはヨウ化ビニリデンである請求項1〜13のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項15】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、フッ素原子を含まず、架橋性官能基を有さず、1つの炭素−炭素二重結合を有する単量体である請求項1〜14のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項16】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、式:
CH=CA−T
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
Tは、水素原子、炭素数1〜30の鎖状または環状の炭化水素基、またはエステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜20の有機基である。]
で示される請求項1〜14のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項17】
非フッ素非架橋性単量体(c)において、Tが、炭素数12〜30の長鎖の炭化水素基および飽和の環状炭化水素基である請求項16に記載の含フッ素重合体。
【請求項18】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、一般式:
CH=CACOOA
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
は、C2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートである請求項1〜14のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項19】
非フッ素架橋性単量体(d)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物である請求項1〜18のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項20】
第1単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体(b)を含まない請求項1〜19のいずれかに記載の含フッ素重合体。
【請求項21】
第1単量体から形成されている第1重合体と、第2単量体から形成されている第2重合体を含んでなる含フッ素重合体の製法であって、
製法は、
(I)第1単量体を重合して第1重合体を得る工程、および
(II)第1重合体の存在下で、第2単量体を重合することによって、第2重合体を得る工程
を有してなり、
第1単量体および第2単量体の少なくとも一方は、含フッ素単量体を含み、
第1単量体は、非フッ素非架橋性単量体を含んで成り、
第2単量体は、ハロゲン化オレフィン単量体を含んで成る製法。
【請求項22】
第1重合体の重合中に第2重合体の重合を開始させる請求項21に記載の製法。
【請求項23】
第1重合体の重合完了後に第2重合体の重合を開始させる請求項21に記載の製法。
【請求項24】
第1単量体の重合反応が10%以上、例えば40%以上、特に70%以上終了した後に、第2重合体の重合を開始させる請求項21に記載の製法。
【請求項25】
第2単量体の重合を開始させる時点において、重合系の中に未反応の非フッ素非架橋性単量体が実質的に存在しない請求項21に記載の製法。
【請求項26】
請求項1〜20のいずれかに記載の含フッ素重合体を必須成分とする撥水撥油剤。
【請求項27】
水性媒体をも含有する請求項26に記載の撥水撥油剤。
【請求項28】
水性分散液である請求項26に記載の撥水撥油剤。
【請求項29】
請求項26に記載の撥水撥油剤で処理することからなる、基材を処理する方法。
【請求項30】
請求項26に記載の撥水撥油剤によって処理された繊維製品。

【公開番号】特開2013−82886(P2013−82886A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152256(P2012−152256)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】