説明

撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらを用いて製造された物品とその製造法、およびそれら物品を装着した製品

【課題】 従来のクロロシラン系の撥水撥油防汚化学吸着剤は、1.被膜の耐摩耗性や耐水性が乏しいという課題があった。また、製膜に基材表面の活性水素基とクロロシリル基の脱塩酸反応を用いているため2.製膜時多量の塩酸が発生して、大気中で使用できないという大きな課題があった。さらに、被膜の膜厚がナノメートルレベルであり、基材表面の粗さのみに頼るため、3.撥水性能が劣るという課題があった。さらにまた、4.フッ化炭素基を含んでいたため、廃棄時に焼却するとフッ酸が発生して環境を汚染するという課題があった。

【解決手段】 前記課題を解決するため、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらを用いて製造された物品とその製造法、およびそれら物品を装着した製品に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、基材表面と化学結合する撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、および基材表面と化学結合した表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚膜が形成された物品とその製造方法、およびそれら物品を装着した製品に関するものである。
【0003】
なお、ここでいう基材には、金属、半導体、セラミック、ガラス、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石等があり、撥水撥油防汚膜が形成された物品には、建物の窓ガラス、または自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラス、電磁誘導調理器の天板等があり、さらにそれらを装着した製品には建物、または乗り物、太陽エネルギー利用装置、電磁誘導調理器等がある。
【背景技術】
【0004】
一般にフッ化炭素基含有クロロシラン系の吸着剤と非水系の有機溶媒よりなる化学吸着液を用い、液相で化学吸着して単分子膜状の撥水撥油防汚性化学吸着膜を形成できることはすでによく知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような溶液中での化学吸着単分子膜の製造原理は、基材表面の水酸基などの活性水素とクロロシラン系の吸着剤のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
【特許文献1】特開平05−193056号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のクロロシラン系の撥水撥油防汚化学吸着剤は、膜と基材表面との化学結合のみを用いるため、そのまま用いると、1.被膜の耐摩耗性や耐水性が乏しいという課題があった。
【0007】
また、製膜に基材表面の活性水素基とクロロシリル基の脱塩酸反応を用いているため、2.製膜時多量の塩酸が発生して、大気中で処理できないという大きな課題があった。
【0008】
さらに、被膜の膜厚がナノメートルレベルであり、基材表面の粗さのみに頼るため、3.撥水性能が劣るという課題があった。
さらにまた、4.フッ化炭素基を含んでいたため、廃棄時に焼却するとフッ酸が発生して環境を汚染するという課題があった。
【0009】
本発明の第1の目的は、従来のようなクロロシラン系界面活性剤を用いても、撥水性に優れ、且つ耐摩耗性や耐水性に優れた撥水撥油防汚膜が形成可能な撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらを用いて製造された物品とその製造法、およびそれら物品を装着した製品を提供することを目的とする。
【0010】
第2の目的は、撥水性に優れ、且つ被膜形成時に塩酸ガスの発生が無いかあるいは極めて少なく、通常の空気雰囲気中での製膜が可能な撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらを用いて製造された物品とその製造法、およびそれら物品を装着した製品を提供することを目的とする。
【0011】
第3の目的は、多少被膜は厚くなるが、膜自体が凸凹であり撥水性能が優れた撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらを用いて製造された物品とその製造法、およびそれら物品を装着した製品を提供することを目的とする。
【0012】
第4の目的は、撥水性に優れ、且つ廃棄時に焼却してもフッ酸の発生がない撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらを用いて製造された物品とその製造法、およびそれら物品を装着した製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために提供される第1の発明群は、第1から第11の発明からなる。
【0014】
その中の第1番目の発明は、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0015】
第2番目の発明は、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0016】
第3番目の発明は、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0017】
第4番目の発明は、第1乃至3の発明において、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質として、CH3−[Si(CHO]−SiCl3、またはCH3−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、CH3−[Si(CHO]−Si(CHCl、Cl3SiO−[Si(CHO]−SiCl3、ClSi(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHCl、(nは、0又は12以下の整数)を用い、クロロシリルキ基を主成分とする物質としてClSi(OSiClCl(mは0または整数)またはアルコキシシリル基を主成分とする物質として(AO)Si(OSi(OA)(OA)(mは、0または整数、Aはアルキル基)を用いることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0018】
第5番目の発明は、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0019】
第6番目の発明は、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0020】
第7番目の発明は、第1乃至3および6の発明において、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比を、それぞれ1:10〜20:1にしておくことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0021】
第8番目の発明は、第2、3、5および6の発明において、微粒子あるいは中空の微粒子が透明であり、サイズが5乃至50,000nmであることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0022】
第9番目の発明は、乾燥雰囲気中で、
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、
あるいは少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを非水系有機溶媒を用いて希釈混合することを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0023】
第10番目の発明は、第9の発明において、非水系有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0024】
第11番目の発明は、第9および10の発明において、乾燥雰囲気として、窒素ガスまたは湿度が5%以下の空気を用いることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0025】
さらに、第2の発明群は、第12から第26の発明からなる。その中の第12番目の発明は少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0026】
第13番目の発明は、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0027】
第14番目の発明は、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0028】
第15番目の発明は、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0029】
第16番目の発明は、第12乃至15の発明において、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質としてCH3−[Si(CHO]−Si(OA)3、またはCH3−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、CH3−[Si(CHO]−Si(CHOA、(OA)3SiO−[Si(CHO]−Si(OA)3、(OA)Si(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、(OA)Si(CHO−[Si(CHO]−Si(CHOA、(nは、0または12以下の整数、Aはアルキル基)を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0030】
第17番目の発明は、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0031】
第18番目の発明は、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0032】
第19番目の発明は、第13、15および18の発明において、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比を、それぞれ1:10〜20:1にしておくことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0033】
第20番目の発明は、第12乃至15および17,18の発明において、シラノール縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルチタン酸エステルキレート類、及び酸化チタンを用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0034】
第21番目の発明は、第12乃至15および17,18の発明において、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0035】
第22番目の発明は、第12乃至15および17,18の発明において、シラノール縮合触媒に、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを添加混合して用いることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0036】
第23番目の発明は、
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合ことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0037】
第24番目の発明は、
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合することを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0038】
第25番目の発明は、第23および24の発明において、有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いることを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0039】
第26番目の発明は、第23および24の発明において、希釈混合を窒素ガスまたは湿度が35%以下の空気中で行うことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0040】
第3の発明群は、第27から第32の発明からなる。その中の第27番目の発明は、第12〜22の発明の撥水撥油防汚処理剤に於いて、有機溶媒の代わりに、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0041】
第28番目の発明は、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0042】
第29番目の発明は、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0043】
第30番目の発明は、第27〜29の発明の撥水撥油防汚処理剤に於いて、水系溶媒として、アルコール、またはアルコールを含む水、または界面活性剤を含む水、または界面活性剤とアルコールを含む水を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤である。
【0044】
第31番目の発明は、第23〜26の発明の撥水撥油防汚処理剤の製造方法に於いて、有機溶媒の代わりに、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0045】
第32番目の発明は、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、
あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子とを、
空気中で水系溶媒を用いて希釈混合することを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法である。
【0046】
また、第4の発明群は、第33から第35の発明からなる。その中の第33番目の発明は、第1乃至8、12乃至22、27乃至30の発明において提供される撥水撥油防汚処理剤を、基材表面に接触反応させ、前記基材表面と化学結合した表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚性の被膜を形成することを特徴とする撥水撥油防汚膜の製造方法である。
【0047】
第34番目の発明は、基材が、金属、半導体、セラミック、ガラス、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石であり、第1乃至8、12乃至22、27乃至30の発明の撥水撥油防汚処理剤を用いて表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚膜が基材表面に結合形成された物品である。
【0048】
第35番目の発明は、第34番目の発明に於ける物品が、建物の窓ガラス、電磁誘導調理器の天板、または自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラスであり、それらを装着したことを特徴とする製品である。
【0049】
さらに詳しくは、第1の発明群において、乾燥雰囲気中で、
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを非水系有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0050】
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤
を提供するものである。
【0051】
また、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを非水系有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0052】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤
を提供するものである。
【0053】
ここで、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質として、H3C−[Si(CHO]−SiCl3、またはH3C−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、H3C−[Si(CHO]−Si(CHCl、Cl3SiO−[Si(CHO]−SiCl3、ClSi(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHCl、(nは、0又は12以下の整数)を用い、クロロシリルキ基を主成分とする物質としてClSi(OSiClCl(mは0または整数)またはアルコキシシリル基を主成分とする物質として(AO)Si(OSi(OA)(OA)(mは、0または整数、Aはアルキル基)を用いると、廃棄時に焼却してもふっ酸を発生させないので都合がよい。
【0054】
また、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比をそれぞれ1:10〜20:1にしておくと、被膜強度を向上でき、耐摩耗性や耐水性に優れた撥水撥油防汚膜を提供する上で都合がよい。
【0055】
さらに、微粒子あるいは中空の微粒子が透明であり、サイズが5nm乃至400nmであれば、被膜の透明度を保ったままで、撥水性能が格段に優れた撥水撥油防汚処理剤を提供できて都合がよい。一方、サイズが400nm乃至50μであると、透明性は損なわれるが、撥水撥油防汚性を大幅に向上する上で都合がよい。
【0056】
またこのとき、非水系有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いると、撥水撥油防汚処理剤の白濁を防げて、ポットライフを長くする上で都合がよい。
また、乾燥雰囲気として、窒素ガスまたは湿度が5%以下の空気を用いると、処理剤調合時に撥水撥油防汚処理剤の白濁を防げて、ポットライフを長くする上で都合がよい。
【0057】
一方、第2の発明群において、
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0058】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする通常の空気雰囲気中での製膜が可能な撥水撥油防汚処理剤
を提供するものである。
【0059】
また、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0060】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする通常の空気雰囲気中での製膜が可能な撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする通常の空気雰囲気中での製膜が可能な撥水撥油防汚処理剤
を提供するものである。
【0061】
ここで、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質として、H3C−[Si(CHO]−Si(OA)3、またはH3C−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、H3C−[Si(CHO]−Si(CHOA、(OA)3SiO−[Si(CHO]−Si(OA)3、(OA)Si(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、(OA)Si(CHO−[Si(CHO]−Si(CHOA、(nは、0または12以下の整数、Aはアルキル基)を用いると、廃棄時に焼却してもふっ酸を発生させないので都合がよい。
【0062】
さらに、微粒子あるいは中空の微粒子が透明であり、サイズが5nm乃至400nmであれば、被膜の透明度を保ったままで、撥水性能が格段に優れた撥水撥油防汚処理剤を提供できて都合がよい。一方、サイズが400nm乃至50μmであると、透明性は損なわれるが、撥水撥油防汚性を大幅に向上する上で都合がよい。
【0063】
また、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比を、それぞれ1:10〜20:1にしておくと、被膜強度を向上でき、耐摩耗性や耐水性に優れた撥水撥油防汚膜を提供する上で都合がよい。
【0064】
さらに、シラノール縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルチタン酸エステルキレート類、及び酸化チタンを用いると、製膜時間を短縮できて都合がよい。
【0065】
また、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると、さらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
さらにまた、シラノール縮合触媒に、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを添加混合して用いると、さらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
【0066】
またこのとき、非水系有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いると、水分の混入が少なくなりポットライフを長くする上で都合がよい。
また、乾燥雰囲気として、窒素ガスまたは湿度が5%以下の空気を用いると、水分の混入が少なくなり処理剤のポットライフを長くする上で都合がよい。


【0067】
さらにまた、第3の発明群においては、第2の発明群の撥水撥油防汚処理剤の製造方法に於いて、有機溶媒の代わりに、水系溶媒を用い、通常の空気雰囲気中での製膜が可能で且つ環境負荷が少ない撥水撥油防汚処理剤を提供するものである。
【0068】
また、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、
あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子とを、
空気中で水系溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0069】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤を提供するものである。
【0070】
さらにまた、第4の発明群は、第1乃至第3の発明群の処理剤を用いて処理した表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚膜が基材表面に結合形成された物品を提供するものであり、さらに、それら物品を組み込んだ製品を提供するものである。
【0071】
前記撥水撥油防汚処理剤は、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石等の基材表面に、室温で接触反応させるだけで、高性能な撥水撥油防汚性の被膜を形成できるので、高性能な撥水撥油防汚膜が形成された物品や、それら物品を装着した建物、電磁誘導調理器、または自動車、太陽電池、および太陽熱温水器等の製品を提供する上で非常に都合がよい。
【発明の効果】
【0072】
以上説明したように、第1及び第4の発明群では、撥水性能に優れ且つ耐摩耗性や耐水性に優れた撥水撥油防汚膜を容易に形成でき、それらを用いて製造された表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚膜が基材表面に結合形成された物品とそれら物品を装着した製品を低コストで提供できる効果がある。
【0073】
また、第2及び第4の発明群では、主剤としてクロロシリル基を含まないアルコキシシラン系の物質を用いた撥水撥油防汚処理剤であるため、被膜形成時に塩酸ガスの発生が無いかあるいは極めて少ないことより、製造設備を簡略化できる効果がある。
【0074】
さらにまた、第1,及び第2,第4の発明群の内、主剤としてメチルシリルキ基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質、あるいはメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質を用いた発明では、廃棄時に焼却しても、フッ酸の発生がないので、環境を汚染しない効果がある。
また、第3及び第4の発明群では、処理液の主要溶媒として、水系溶媒を用いるため、有機溶剤の使用量を削減できることにより、環境負荷を大幅に低減できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
本発明は、主として耐久性が高く且つ撥水撥油防汚性能が高い撥水撥油防汚処理膜を形成できる撥水撥油防汚処理剤とその製造方法、およびそれらの応用に関するものである。
【0076】
以下、本発明の実施の形態である撥水撥油防汚処理剤とその製造方法およびそれを用いた撥水撥油防汚処理膜の作成、およびそれを用いた物品と製品について詳細に説明する。
【0077】
(実施の形態1)
まず、第1番目の発明群の撥水撥油防汚処理剤について、その製造方法と共に使用例を実施の形態として説明する。
【0078】
1番目の発明群では、
乾燥雰囲気中で、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを非水系有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0079】
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、非水系有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤
を提供する。
【0080】
また、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを非水系有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0081】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤を提供する。
【0082】
ここで、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質として、H3C−[Si(CHO]−SiCl3、またはH3C−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、H3C−[Si(CHO]−Si(CHCl、Cl3SiO−[Si(CHO]−SiCl3、ClSi(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHCl、(nは、0又は12以下の整数)を用い、クロロシリルキ基を主成分とする物質としてClSi(OSiClCl(mは0または整数)またはアルコキシシリル基を主成分とする物質として(AO)Si(OSi(OA)(OA)(mは、0または整数、Aはアルキル基)を用いると、廃棄時に焼却してもふっ酸を発生させない作用がある。
【0083】
また、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比をそれぞれ1:10〜20:1にしておくと、被膜強度を向上でき、耐摩耗性や耐水性に優れ撥水撥油防汚膜を製造できる作用がある。
【0084】
さらに、微粒子あるいは中空の微粒子が透明であり、サイズが5nm乃至400nmであれば、被膜の透明度を保ったままで、撥水性能が格段に優れた撥水撥油防汚処理剤を提供できて都合がよい。一方、サイズが400nm乃至50μであると、透明性は損なわれるが、表面粗さが大きくできて撥水撥油防汚性を大幅に向上できる。
【0085】
またこのとき、非水系有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いると、撥水撥油防汚処理剤の白濁を防げて、ポットライフの長い処理剤を製造できる作用がある。
また、乾燥雰囲気として、窒素ガスまたは湿度が5%以下の空気を用いると、処理剤調合時に撥水撥油防汚処理剤の白濁を防げて、さらにポットライフの長い処理剤を製造できる作用がある。
【0086】
次に、第2番目の発明群の撥水撥油防汚処理剤について、その製造方法と共に使用例を実施の形態として説明する。
【0087】
第2の発明群では、
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0088】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含む撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含む撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含む撥水撥油防汚処理剤
を提供する。
【0089】
また、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0090】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含む通常の空気雰囲気中での製膜が可能な撥水撥油防汚処理剤、
あるいは、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする通常の空気雰囲気中での製膜が可能な撥水撥油防汚処理剤
を提供するものである。
【0091】
ここで、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質として、H3C−[Si(CHO]−Si(OA)3、またはH3C−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、H3C−[Si(CHO]−Si(CHOA、(OA)3SiO−[Si(CHO]−Si(OA)3、(OA)Si(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、(OA)Si(CHO−[Si(CHO]−Si(CHOA、(nは、0または12以下の整数、Aはアルキル基)を用いると、廃棄時に焼却してもふっ酸を発生させない作用がある。
【0092】
さらに、微粒子あるいは中空の微粒子が透明であり、サイズが5nm乃至400nmであれば、被膜の透明度を保ったままで、撥水性能が格段に優れた撥水撥油防汚処理剤を提供できて都合がよい。一方、サイズが400nm乃至50μmであると、透明性は損なわれるが、表面凸凹を大きくできて撥水撥油防汚性を大幅に向上できる作用がある。
【0093】
また、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比を、それぞれ1:10〜20:1にしておくと、被膜強度を向上でき、耐摩耗性や耐水性に優れた撥水撥油防汚膜を製造できる作用がある。
【0094】
さらに、シラノール縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルチタン酸エステルキレート類、及び酸化チタンを用いると、製膜時間を短縮できて製造コストを軽減できる作用がある。
【0095】
また、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると、さらに製膜時間を短縮できて都合がよい。
さらにまた、シラノール縮合触媒に、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを添加混合して用いると、さらに製膜時間を短縮できて製造コストを軽減できる作用がある。
【0096】
またこのとき、非水系有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いると、水分の混入が少なくなりポットライフを長くする上で都合がよい。
また、乾燥雰囲気として、窒素ガスまたは湿度が5%以下の空気を用いると、水分の混入が少なくなり、さらにポットライフの長い処理剤を製造できる作用がある。
【0097】
さらにまた、第3番目の発明群の撥水撥油防汚処理剤について、その製造方法と共に使用例を実施の形態として説明する。
【0098】
第3の発明群は、第2の発明群の撥水撥油防汚処理剤の製造方法に於いて、有機溶媒の代わりに、水系溶媒を用い撥水撥油防汚処理剤を製造提供するものである。水系溶媒を用いれば、通常の空気雰囲気中での製膜が可能で且つ環境負荷を少なくする上で都合がよい。
【0099】
また、少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、
あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子とを、
空気中で水系溶媒を用いて希釈混合することにより、
【0100】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤、
あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤を提供するものである。
【0101】
この場合も、前期と同様に、水系溶媒を用いれば、通常の空気雰囲気中での製膜が可能で且つ環境負荷を少なくする上で都合がよい。
【0102】
ここで、水系溶媒として、アルコール、またはアルコールを含む水、または界面活性剤を含む水、または界面活性剤とアルコールを含む水を用いることは、有機溶媒を用いる場合に比べて環境負荷を大幅に低減できて作用がある。
【0103】
さらに、第4番目の発明群の実施の形態を説明するが、第4の発明群は、第1乃至第3の発明群の処理剤を用いて処理した表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚膜が基材表面に結合形成された物品を提供するものであり、さらに、それら物品を組み込んだ製品を提供するものである。
【0104】
前記撥水撥油防汚処理剤を用いれば、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石等の基材表面に、室温で処理剤を接触反応させるだけで、表面に微細な凸凹を有する高性能な撥水撥油防汚性の被膜を形成できるので、高性能な撥水撥油防汚膜が形成された物品を低コストで製造できる作用がある。
【0105】
また、この様な撥水撥油防汚膜は、そのままでも被膜強度は実用レベルにあるが、より一層強度を増加させたい場合には、被膜形成後、空気中で200〜300℃(基材が破壊される温度以下が前提。)で20〜30分程度加熱すれば、ほぼ完全に被膜内の脱水反応が完了し、格段に被膜強度を向上できる。さらに、加熱温度を高くすれば、焼結効果が増すが、非酸化性雰囲気である窒素雰囲気中でも、400℃程度が限界である。
【0106】
さらにまた、物品として、建物の窓ガラス、または自動車用窓ガラス、太陽電池および太陽熱温水器用カバーガラス板、電磁誘導調理器用天板を用い、表面に撥水撥油防汚性の被膜を形成すると、撥水撥油防汚効果が高い高性能製品を低コストで製造できる作用がある。
【0107】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、以下の実施例においては、とくに記載していない限り分子組成比はモル比を意味する。また、特に記載のない%は重量%を意味する。
なお、本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。

【実施例1】
【0108】
まず、1番目の発明群の撥水撥油防汚処理剤について、2つの実施例を用いて詳細に製造方法とそれを用いた処理方法を説明する。
【0109】
例えば、湿度5%以下の乾燥雰囲気中(35%以下の空気なら良いが、5%以下の空気あるいは窒素ガスがより好ましい。)で、あらかじめクロロシリル基を主成分とする物質として、ClSi(OSiClCl(mは0または整数、Cl基がメトキシ基であるアルコキシシリル基を主成分とする物質でも、被膜形成後空気中で水分を吸収して加水分解するので問題はなかった。)を非水系溶媒である含水率が50ppm程度(含水率が100ppm以下なら実用上は問題なかった。)で、水をほとんど含まないヘキサデカンに0.005mol/Lの濃度(0.1mol/L以下の濃度が好ましい。)になるように溶解した溶液に、微粒子あるいは中空の微粒子として、大きさがおよそ100nmの透明シリカ製中空微粒子を0.5g/L混合分散させた。
【0110】
その後、さらに、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質として、CF3−(CF2−(CH−SiCl3を、0.005mol/Lの濃度(0.1〜0.001mol/L以下の濃度が好ましい。)になるように添加して(この場合、クロロシリル基を主成分とする物質とフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質の分子組成比は1:1になる。)撥水撥油防汚処理剤(以下、複合膜形成溶液という。)を作成した。
【0111】
次に、例えば自動車用窓ガラス(建物用窓ガラスや太陽電池、太陽熱温水器の保護ガラス、あるいはIH調理器のセラミック製やガラス製天板等にも同様に使用できた。)に用いられるガラス板をよく洗浄し、乾燥後、表面に前記複合膜形成溶液を塗布し1、2時間反応させた。
【0112】
このとき、ガラス板表面は水酸基すなわち活性水素を多数含み、且つ吸着水で被われているので、前記ガラス板表面で二つの物質のSiCl基と前記水酸基や吸着水とが脱塩酸反応して、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質が混合反応し、シリカ製中空微粒子含んだ状態で−SiO−結合を介して前記ガラス板表面に結合する。
【0113】
すなわち、図1に示すように、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質は、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1に、クロロシリル基を主成分とする物質は、シロキサン結合(シロキサン基を主成分とする物質)2に変化する。すなわち、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1はシリカ製中空微粒子3を含んだ状態で前記−SiO−結合を介して、ガラス板4表面やシロキサン基を主成分とする物質2と結合する。一方、クロロシリル基を主成分とする物質は、シロキサン基を主成分とする物質2に変化してシリカ製中空微粒子3を含んだ状態で前記−SiO−結合を介して、ガラス板4表面やフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1と結合する。
【0114】
そこで、表面の余分な複合膜形成溶液を洗浄除去(沸点が、200度以下の有機溶媒、例えばオクタン等を用いれば、有機溶媒は放置しておくだけで蒸発するので、この工程は、実用上は、省略可能であった。)して空気中に取り出すと、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1とシロキサン基を主成分とする物質2とシリカ製中空微粒子3を含み、且つ水酸基5を多数含む複合膜6(可視光に対する透過率は、99%以上)を前記ガラス板4表面に形成できた。(図1(a))
【0115】
その後、前記複合膜が形成されたそれぞれのガラス板を200〜400℃、30〜120分程度の条件で加熱処理を行うと、膜中に残っていた水酸基5が脱水反応して、ポリシロキサン結合を形成し網目状のシリカ膜7に変化して撥水撥油性の複合膜8を製造できた。(図1(b))
【0116】
その結果、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1とシロキサン基を主成分とする物質2とシリカ製中空微粒子3よりなる耐摩耗性で耐候性が高く且つ100nm〜150nmレベルの凸凹を有する撥水撥油性被膜9となり、高耐久超撥水撥油防汚性の自動車用窓ガラス板を製造できた(図2)。
【0117】
このときの撥水撥油防汚性のガラス板の水滴接触角は、物質1と物質2の組成に依存した。フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質の混合比を1:10乃至1:0(好ましくは1:10〜20:1)の範囲で変化させ、さらに添加微粒子の粒径を5nm乃至50μmの範囲で変化させれば、水滴接触角は140±20度の範囲で制御できた。また、0.02mol/Lの水滴に対する転落角は16度以下に制御できた。さらに、このときの臨界表面エネルギーは、3乃至0.1mN/mに制御であった。
【0118】
なお、微粒子として、透明なシリカやアルミナ、ジルコニア等の透明微粒子を用いても、大きさが400nmを超えると被膜が白濁したが、5乃至300nm程度であれば、被膜は完全に透明であり、反射防止効果もあった。
【0119】
さらにまた、中空微粒子を用いた場合には、中空でない微粒子に比べて表面反射防止効果が高かった。また、中空の微粒子の場合にも、透明性を確保するには、粒形は5nm乃至400nmが最適であった。しかしながら、撥水撥油効果のみ期待する場合には、中空でなくとも効果は同じであった。また、撥水効果を高めるのに適したサイズは、5nm乃至50μであった。
【0120】
なお、複合膜形成溶液の溶媒を蒸発させて被膜を形成する場合には、複合膜形成溶液に用いる非水系の溶媒の沸点は、低いほど早く蒸発除去できるので都合がよいが、取扱いの上では50〜200℃程度がよかった。
【0121】
一方、非水系の有機溶媒で洗浄する場合には、複合膜形成溶液に用いる非水系の溶媒の沸点は、高いほど安定しているが、取扱いの上では150〜350℃程度がよかった。
【0122】
また、複合膜形成溶液のフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質の分子組成比を変えて、複合膜に含まれるフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1とシロキサン基を主成分とする物質2の分子組成比を、好ましくは1:10〜20:1(より好ましくは1:3〜3:1)にしておくと、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質100%(すなわち、クロロシリル基を主成分とする物質を含まない。)に微粒子を添加して作成した被膜の場合に比べて大幅に耐摩耗性を向上できた。
【0123】
また、このままでも被膜強度は実用レベルにあるが、より一層強度を増加させたい場合には、被膜形成後、空気中で200〜300℃(基材が破壊される温度以下が前提。)で20〜30分程度加熱すれば、−Si(OC25)基が吸着水と反応して生成された≡SiOH基の大部分が脱水反応して、ポリシロキサン結合を形成し網目状のシリカ膜に変化して、耐摩耗性、且つ離水性(滑水性ともいう)に優れたフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質とシロキサン基を主成分とする物質と微粒子よりなる表面が凸凹の防汚性の複合膜となり、高耐久性且つ水切り特性に優れた防汚性のガラス板を製造できた。
【0124】
さらに、微粒子を含む複合膜が形成された窓ガラス板を不活性ガスである窒素ガス中で400℃30分程度の加熱処理を行うとほぼ完全に被膜内の脱水反応が完了し、格段に被膜強度を向上できた。
【0125】
ここで、加熱温度を高くすれば、焼結効果が増すが、非酸化性雰囲気である窒素雰囲気中でも、400℃程度がが限界であった。
【0126】
なお、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基のみを主成分とする物質として、一般には、以下のような物質が挙げられる。
CF3−(CF2n−(R)m−SiXpCl3-p
(但し、nは0または16以下の整数、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エチニル基、シリコン若しくは酸素原子を含む置換基、mは0又は1、XはH,アルキル基,アルコキシル基,含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基の置換基、pは0、1または2)
【0127】
さらに、具体的には、以下に示す(1)-(11)が挙げられる。
(1) CF3CH2O(CH215SiCl3
(2) CF3(CH22Si(CH32(CH215SiCl3
(3) CF3(CH26Si(CH32(CH29 SiCl3
(4) CF3COO(CH215SiCl3
(5)CF3(CF27−(CH22SiCl3
(6)CF3(CF2−(CH22SiCl3
(7) CF3(CF2−(CH22SiCl3
(8) CF3(CF27−C64SiCl3
(9)[CF3(CF2(CH22SiCl
(10)[CF3(CF2(CH22SiCl
(11)CF3(CF27−(CH22SiCH3Cl
【0128】
また、クロロシリル基を主成分とする物質として、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2等が利用できた。
一般には、Cl3Si(−OSiCl2−Cl(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
【0129】
さらにまた、アルコキシシリル基を主成分とする物質として、一般式(AO)Si(OSi(OA)(OA)で表される物質を用いても同様の結果が得られた。
また、Si(OCHやSi(OC、SiH(OCH3、SiH2(OCH2等が利用できた。
一般には、(CHO)3Si(−OSi(OCH2−OCH(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
【0130】
このとき、クロロシリル基を主成分とする物質の代わりにアルコキシ基を主成分とする物質を用いても、アルコキシ基を主成分とする物質は、当然脱塩酸反応はしないが、フッ化炭素基およびクロロシリル基を含む化学吸着剤が反応して発生する塩酸が触媒となり、製膜後空気中の水分を吸収してシロキサン結合を形成する。
【0131】
なお、クロロシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質を混合して用いても良いことは言うまでもない。
【0132】
さらに、非水系溶媒としては、含水率が100ppm以下なら実用に供し得るが、脱水した炭化水素系溶媒やフッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒を用いることが可能であり、特に沸点が50〜350℃のものが使用に適していた。
【0133】
具体的に使用可能なもとして、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、ノナン、工業ガソリン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等を挙げることができる。
【0134】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0135】
なお、クロロシリル基を主成分とする物質、あるいはアルコキシシリル基を主成分とする物質を添加した場合、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシシリル基を主成分とする物質と微粒子のみで作成した被膜に比べて、膜中のフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質の密度を2〜3倍向上できた。
【0136】
また、本実施例において、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシ基を主成分とする物質は、必ずしも添加しなくとも良いが、添加しておいた方が、添加してない場合に比べ、被膜強度を5〜10倍程度強化できた。なお、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシ基を主成分とする物質を含まない場合でも、耐摩耗性は多少劣ったが、実用レベルにはあった。
【実施例2】
【0137】
実施例1において、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質の代わりに、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質、例えばCH3−[Si(CHO]−SiCl3を用い、その他を同条件とした場合、撥油性はやや劣ったが、その他はほぼ同様の結果であった。
【0138】
なお、ここで、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質の混合比を1:10乃至1:0(より好ましくは1:10乃至20:1)の範囲で変化させ、さらに添加微粒子の粒径を5nm乃至50μmの範囲で変化させれば、水滴接触角は135±20度の範囲で制御できた。また、0.02mLの水滴に対する転落角は12度以下に制御できた。さらに、臨界表面エネルギーは、5乃至0.4mN/mに制御できた。
【0139】
また、微粒子として、透明なシリカやアルミナ、ジルコニア等の透明微粒子を用いても、大きさが400nmを超えると被膜が白濁したが、5乃至400nm程度であれば、被膜は完全に透明であり、反射防止効果もあった。
さらにまた、中空微粒子の場合は、中空でない微粒子に比べて表面反射防止効果が高かった。また、透明性を確保するには、粒形は5nm乃至400nmが最適であった。しかしながら、撥水撥油効果のみ期待する場合には、中空でなくとも効果は同じであった。また、撥水効果を高めるのに適したサイズは、5nm乃至50μであった。
【0140】
一方、本実施例において、微粒子の添加を省略すると、耐久性は実施例1と同等に維持でき、実際に使用可能なレベルのガラス板は得られたが、撥水性は、せいぜい108度であり、離水性も微粒子を添加した場合に比べて劣る撥水撥油防汚膜であった。なお、その他はほぼ同様の結果であった。
【0141】
また、クロロシリル基を主成分とする物質、あるいはアルコキシシリル基を主成分とする物質を添加しなかった場合、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質、あるいはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子で作成した被膜に比べて、膜中のメチルシリルキ基とシリル基を主成分とする物質の密度が多少低下して耐摩耗性が劣化したが、それでも実用に供し得るレベルではあった。
【0142】
なお、ここで、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質を混合して用いてもよいことは言うまでもない。
【0143】
本実施例において、メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質として、一般に、以下に示される物質、CH3−[Si(CHO]−SiCl3、またはCH3−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、CH3−[Si(CHO]−Si(CHCl、Cl3SiO−[Si(CHO]−SiCl3、ClSi(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHCl、(nは、0又は12以下の整数)が上げられる。
【0144】
具体的には、CH3−[Si(CHO]−SiCl3や、CH3−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHCl等が使用できた。
【0145】
なお、ここで、両末端にSiCl基を有する物質、例えば、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHClをいる場合には、前述と同様の方法で被膜を形成後、さらに、最表面を(CH3SiClのみを含む処理剤で処理することで、最表面に残った水酸基をほぼ完全に除去でき、最表面が全て(CH3SiO−の撥水撥油防汚膜を形成できた。
【0146】
一方、クロロシリルキ基を主成分とする物質として、一般には、Cl3Si(−OSiCl2−Cl(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
具体的には、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2等が利用できた。
さらにまた、アルコキシシリル基を主成分とする物質として、一般には、(AO)Si(OSi(OA)(OA)(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
具体的には、Si(OCHやSi(OC、SiH(OCH3、SiH2(OCH2等が利用できた。
【0147】
なお、実施例1および2において、クロロシリル基を主成分とする物質やアルコキシ基を主成分とする物質は、必ずしも添加しなくとも良いが、添加しておいた方が、添加してない場合に比べ、被膜の耐摩耗性を10倍以上強化できた。
【0148】
また、微粒子や中空の微粒子も必ずしも添加しなくてもよいが、添加しない場合には、水滴接触角が105度乃至120度程度であり、添加した場合に比べて大幅に性能が劣化した。しかしながら、このレベルの被膜でも十分に実用性はあった。
【実施例3】
【0149】
次に、2番目の発明群の撥水撥油防汚処理剤について、2つの実施例を用いて詳細に製造方法とそれを用いた処理方法を説明する。
【0150】
例えば、相対湿度35%の乾燥雰囲気中(60%の雰囲気中でも調合自体は問題ないが、湿度が高いほど、処理剤のポットライフが短くなる。35%以下なら、通常ポットライフを1ヶ月以上保てるので好ましい。したがって、窒素ガス雰囲気中でも良いことは言うまでもない。)で、あらかじめアルコキシシリル基を主成分とする物質として、(CHO)SiOSi(OCH(ここで、CH基がCl基で置き換えられたクロロシリル基を主成分とする物質でも使用可能であるが、この場合は、塩酸が発生するので5%以下の乾燥雰囲気中で行うほうがよい。また、クロロシリル基を主成分とする物質を用いる場合には、多少とも発生する塩酸が触媒になるので、後工程で述べるシラノール縮合触媒は必ずしも添加する必要がない。)を非水系溶媒である含水率が50ppm程度(含水率が300ppm以下なら実用上は問題なかったが、少ないほど、処理剤のポットライフを長く保てた。)で、水をほとんど含まないシリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に(好ましくい濃度は、0.05〜1%程度)になるように溶かして複合膜形成溶液とした。ヘキサメチルジシロキサンに0.005mol/Lの濃度(0.1mol/L以下の濃度が好ましい。)になるように溶解した溶液に、微粒子あるいは中空の微粒子として、大きさがおよそ200nmの透明シリカ製微粒子を0.5g/L混合分散させた。
【0151】
その後、さらに、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質として、CF3−(CF2−(CH−Si(OCH33(nは正数)を0.005mol/L、有機物のシラノール縮合触媒として、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを0.0001mol/Lの濃度(0.00001乃至0.01mol/Lが好ましい。)になるように添加(この場合、アルコキシシリル基を主成分とする物質とフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子組成比は1:1になる。)して複合膜形成溶液(撥水撥油防汚処理剤)を作成した。
【0152】
なお、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシシリル基を主成分とする物質の分子組成比を、好ましくは1:10〜20:1(より好ましくは、1:3〜3:1)にしておくと、撥水性及び耐久性に優れた被膜が得られた。
【0153】
次に、例えば、建物用窓ガラス(自動車用窓ガラスや太陽電池、太陽熱温水器の保護ガラス、あるいはIH調理器のセラミック製やガラス製天板等にも同様に使用できた。)に用いられるガラス板をよく洗浄し、乾燥後、普通の空気中で(相対湿度57%、別の実験では70%でも問題なかった。)表面に前記複合膜形成溶液を塗布し1、2時間反応させた。
【0154】
このとき、ガラス板表面は水酸基すなわち活性水素を多数含み、且つ吸着水で被われているので、前記ガラス板表面で、触媒を介して二つの物質のSi(OCH3)基と前記水酸基や吸着水とが脱アルコール反応して、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質1とアルコキシシリル基を主成分とする物質2が混合反応し、且つシリカ製微粒子含んだ状態で−SiO−結合を介して前記ガラス板表面に結合する。
【0155】
すなわち、実施例1と同様に、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質は、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質に、アルコキシシリル基を主成分とする物質は、シロキサン結合(シロキサン基を主成分とする物質)に変化して、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質は、シリカ製微粒子含んだ状態で前記−SiO−結合を介してガラス板表面やシロキサン基を主成分とする物質と結合する。一方、アルコキシシリル基を主成分とする物質は、シロキサン基を主成分とする物質に変化してシリカ製微粒子含んだ状態で前記−SiO−結合を介して、ガラス板表面やフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質と結合する。
【0156】
そこで、表面の余分な複合膜形成溶液を洗浄除去(沸点が、200度以下の有機溶媒、例えばオクタン等を用いれば、有機溶媒は放置しておくだけで蒸発するので、この工程は、実用上は、省略可能であった。)して空気中に取り出すと、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1とシロキサン基を主成分とする物質2とシリカ製微粒子を含む複合膜(可視光に対する透過率は、98%以上)を前記ガラス板表面に形成できた。
【0157】
その後、前記複合膜が形成されたそれぞれのガラス板を200〜300℃(基材耐熱範囲であれば高いほど良好な被膜強度が得られるが、被膜の耐熱性が限界である。)30〜120分程度の条件で加熱処理を行うと、膜中に残っていた水酸基が脱水反応して、ポリシロキサン結合を形成し網目状のシリカ膜に変化する。その結果、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質とシロキサン基を主成分とする物質とシリカ製微粒子よりなる耐摩耗性で耐候性が高く且つ表面が凸凹で膜厚が250nm〜300nmの撥水撥油性の複合膜となり、高耐久超撥水撥油防汚性の窓ガラス板を製造できた。より凸凹の大きな被膜を得るには、微粒子を大きくすればよいが、あまり大きな粒子を用いると、製膜はうまくいかなかった。透明な被膜を得るには5nm〜400nm、透明でなくともよければ、400nm〜50μ程度の粒径が取り扱いしやすかった。
【0158】
このときの撥水撥油防汚性のガラス板の水滴接触角は、物質1と物質2の組成に依存した。フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の混合比を1:10乃至2:0の範囲で変化させ、さらに添加微粒子の粒径を5nm乃至50μmの範囲で変化させれば、水滴接触角は140±20度の範囲で制御できた。また、0.02mLの水滴に対する転落角は15度以下に制御できた。さらに、臨界表面エネルギーは、3乃至0.1mN/mに制御できた。
【0159】
なお、微粒子として、透明なシリカやアルミナ、ジルコニア等の透明微粒子を用いても、大きさが400nmを超えると被膜が白濁したが、5乃至300nm程度であれば、被膜は完全に透明であり、反射防止効果もあった。
さらにまた、中空微粒子の場合は、中空でない微粒子に比べて表面反射防止効果が高かった。また、透明性を確保するには、粒形は5nm乃至400nmが最適であった。しかしながら、撥水撥油効果のみ期待する場合には、中空でなくとも効果は同じであった。また、撥水効果を高めるのに適したサイズは、5nm乃至50μであった。
【0160】
なお、複合膜形成溶液の溶媒を蒸発させて被膜を形成する場合には、複合膜形成溶液に用いる非水系の溶媒の沸点は、低いほど早く蒸発除去できるので都合がよいが、取扱いの上では50〜200℃程度がよかった。
【0161】
一方、非水系の有機溶媒で洗浄する場合には、複合膜形成溶液に用いる非水系の溶媒の沸点は、高いほど安定しているが、取扱いの上では150〜350℃程度がよかった。
【0162】
また、複合膜形成溶液のフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子組成比を変えて、複合膜に含まれるフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質1とシロキサン基を主成分とする物質2の分子組成比を、好ましくは1:10〜20:1(より好ましくは1:3〜3:1)にしておくと、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質100%(すなわち、アルコキシシリル基を主成分とする物質を含まない。)に微粒子を添加して作成した被膜の場合に比べて大幅に耐摩耗性を向上できた。
【0163】
また、このままでも被膜強度は実用レベルにあるが、より一層強度を増加させたい場合には、被膜形成後、空気中で200〜300℃(基材が破壊される温度以下が前提。)で20〜30分程度加熱すれば、−Si(OC25)基が吸着水と反応して生成された≡SiOH基の大部分が脱水反応して、ポリシロキサン結合を形成し網目状のシリカ膜に変化して、耐摩耗性、且つ離水性(滑水性ともいう)に優れたフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質とシロキサン基を主成分とする物質と微粒子よりなる表面が凸凹の防汚性の複合膜となり、実施例1とほぼ同様の物性を有する高耐久性且つ水切り特性に優れた防汚性のガラス板を製造できた。
【0164】
さらにまた、微粒子を含む複合膜が形成された窓ガラス板を不活性ガスである窒素ガス中で400℃30分程度の加熱処理を行うとほぼ完全に被膜内の脱水反応が完了し、格段に被膜強度を向上できた。
なお、加熱温度を高くすれば、焼結効果が増すが、非酸化性雰囲気である窒素雰囲気中でも、400℃が限界である。
【0165】
なお、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基のみを主成分とする物質として、一般には、以下のような物質が挙げられる。
CF3−(CF2n−(R)m−SiXp(OA)3-p
(但し、nは0または16以下の整数、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エチニル基、シリコン若しくは酸素原子を含む置換基、mは0又は1、XはH,アルキル基,アルコキシル基,含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基の置換基、pは0、1または2、OAは、アルコキシ基を表す。)
【0166】
さらに、具体的には、以下に示す(1)-(11)が挙げられる。
(1) CF3CH2O(CH215Si(OCH33
(2) CF3(CH22Si(CH32(CH215Si(OCH33
(3) CF3(CH26Si(CH32(CH29 Si(OCH33
(4) CF3COO(CH215Si(OCH33
(5)CF3(CF27−(CH22Si(OCH33
(6)CF3(CF2−(CH22Si(OCH33
(7) CF3(CF2−(CH22Si(OCH33
(8) CF3(CF27−C64Si(OCH33
(9)[CF3(CF2(CH22Si(OCH33
(10)[CF3(CF2(CH22Si(OCH33
(11)CF3(CF27−(CH22SiCH3(OCH33
【0167】
また、アルコキシシリル基を主成分とする物質として、Si(OCH34、SiH(OCH33、SiH2(OCH32等が利用できた。
一般には、(H3CO)3Si(−OSi(OCH32−OCH3(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
【0168】
さらにまた、クロロシリル基を主成分とする物質として、一般式ClSi(OSiClClで表される物質を用いても同様の結果が得られた。
また、SiClや、SiHCl3、SiH2Cl2等が利用できた。
一般には、Cl3Si(−OSiCl2−Cl(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
【0169】
このとき、アルコキシ基を主成分とする物質は、当然脱塩酸反応はしないが、、クロロシリル基を主成分とする物質が含まれていれば、シラノール縮合触媒が含まれてなくとも反応して発生する塩酸が触媒となり、製膜後空気中の水分を吸収してシロキサン結合を形成する。
【0170】
なお、アルコキシシリル基を主成分とする物質とクロロロシリル基を主成分とする物質を混合して用いても良いことは言うまでもない。
【0171】
さらに、非水系溶媒としては、水を含まない炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒を用いることが可能であるが、特に沸点が50〜350℃のものが使用に適していた。
【0172】
具体的に使用可能なものは、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、ノナン、工業ガソリン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等を挙げることができる。
【0173】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0174】
なお、本実施例において、アルコキシシリル基を主成分とする物質またはクロロシリル基を主成分とする物質は、必ずしも添加しなくとも良いが、添加しておいた方が、添加してない場合に比べ、被膜強度をより強化できた。
なお、アルコキシシリル基を主成分とする物質を含まない場合にでも、耐摩耗性は多少劣ったが、実用レベルにはあった。
また、シラノール縮合触媒として、一般に、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルチタン酸エステルキレート類、及び酸化チタンを利用できた。
【0175】
一方、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0176】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3とシラノール触媒であるジブチル錫アセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を5〜10分程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0177】
さらにまた、シラノール触媒の代わりに、クロロシリル基を主成分とする物質、例えば、SiClを用いた場合にも、多少の塩酸の発生を伴ったが、ほぼ同様の性能の被膜を形成できた。なお、この場合には、塩酸がシラノール縮合触媒として作用するので、シラノール触媒の添加は不要であった。
【0178】
なお、上述のケチミン化合物の代わりに、有機酸、またはアルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物をそれぞれ単独で同じ濃度で用いた場合、ケチミン化合物を用いた場合とほぼ同様で必要反応時間は、30分程度であった。
【0179】
一方、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物にシラノール縮合触媒を加え混合比1:1で((ここでは、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチル錫アセチルアセトネートを1:1で混合して用いた。なお、混合比は、1:9〜9:1で効果が顕著であった。)用いると、反応時間をさらに数倍早くでき、製膜時間を5〜10分まで短縮できた。
【0180】
ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0181】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【0182】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0183】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認できた。
【実施例4】
【0184】
実施例3において、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質の代わりに、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質、例えばCH3−[Si(CHO]−Si(OCH33を用い、その他を同条件とした場合、撥油性はやや劣ったが、その他はほぼ同様の結果であった。
なお、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質を混合して用いてもよいことは言うまでもない。
【0185】
同様に、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の混合比を1:10乃至1:0(より好ましくは1:10乃至20:1)の範囲で変化させ、さらに添加微粒子の粒径を5nm乃至50μmの範囲で変化させれば、水滴接触角は135±20度の範囲で制御できた。また、0.02mol/Lの水滴に対する転落角は14度以下に制御できた。さらに、臨界表面エネルギーは、5乃至0.2mN/mに制御できた。
【0186】
また、微粒子として、透明なシリカやアルミナ、ジルコニア等の透明微粒子を用いても、大きさが400nmを超えると被膜が白濁したが、5乃至300nm程度であれば、被膜は完全に透明であり、反射防止効果もあった。
さらにまた、中空微粒子の場合は、中空でない微粒子に比べて表面反射防止効果が高かった。また、透明性を確保するには、粒形は5nm乃至400nmが最適であった。しかしながら、撥水撥油効果のみ期待する場合には、中空でなくとも効果は同じであった。また、撥水効果を高めるのに適したサイズは、5nm乃至50μであった。
【0187】
一方、本実施例において、微粒子の添加を省略すると、撥水性は、せいぜい107度であり、離水性も微粒子を添加した場合に比べて劣る撥水撥油防汚膜であったが、アルコキシシリル基を主成分とする物質、あるいはクロロシリル基を主成分とする物質の有無にかかわらず、実際に使用可能なレベルのガラス板は得られた。
【0188】
アルコキシシリル基を主成分とする物質、あるいはクロロシリル基を主成分とする物質を添加しなかった場合、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質あるいはクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子で作成した被膜に比べて、膜中のメチルシリルキ基とシリル基を主成分とする物質の被膜密度が多少低下して耐摩耗性が劣化したが、それでも実用に供し得るレベルであった。
【0189】
本実施例において、メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質として、一般に、以下に示される物質、CH3−[Si(CHO]−Si(OCH33、またはCH3−[Si(CHO]−Si(CH)(OCH3、CH3−[Si(CHO]−Si(CHOCH3、(H3CO)3SiO−[Si(CHO]−Si(OCH33、(H3CO)Si(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)(OCH3、H3COSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CH(OCH3)、(nは、0又は12以下の整数)が上げられる。
【0190】
具体的には、CH3−[Si(CHO]−Si(CH)(OCH3、CH3−[Si(CHO]−Si(CHOCH3、(H3CO)3SiO−[Si(CHO]−Si(OCH33、(H3CO)Si(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)(OCH3、H3COSi(CHO−Si(CHO−Si(CH(OCH3)等が使用できた。
なお、ここで、両末端にSi(OCH33基を有する物質、例えば、(H3CO)3SiO−[Si(CHO]−Si(OCH33をいる場合には、前述と同様の方法で被膜を形成下後、さらに、最表面を(CH3SiOCH3のみを含む処理剤で処理することで、最表面が(CH3SiO−の撥水撥油防汚膜を形成できた。
【0191】
また、アルコキシリルキ基を主成分とする物質として、一般には、(H3CO)3Si(−OSi(OCH32−(OCH33(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
具体的には、Si(OCH34、SiH(OCH33、SiH2(OCH32等が利用できた。
【0192】
さらにまた、クロロシリル基を主成分とする物質として、一般には、ClSi(OSiClClで表される物質等が利用できる。
具体的には、SiClやSiHCl3、SiH2Cl2等が利用できた。
【0193】
なお、実施例3および4においても、アルコキシ基を主成分とする物質やクロロシリル基を主成分とする物質は、必ずしも添加しなくとも良いが、添加しておいた方が、添加してない場合に比べ、被膜の耐摩耗性を10倍以上強化できた。
【0194】
また、微粒子や中空の微粒子も必ずしも添加しなくてもよいが、添加しない場合には、水滴接触角が105度乃至120度程度であり、添加した場合に比べて大幅に性能が劣化した。しかしながら、このレベルでも十分に実用性はあった。
【実施例5】
【0195】
あらかじめ、大きさがおよそ100nmの透明シリカ製微粒子(光学特性を別にすれば、中空でなくとも撥水撥油効果は同じであった。また、撥水効果を高めるのに適したサイズは、5nm乃至50μmであった。)を体積比で10%のエタノールを含む水溶媒に0.5g/Lの濃度になるように混合し、超音波分散機(いわゆるホモジナイザーやミキサーを用いてもよい。)で10分間程度処理して、十分分散させた。
【0196】
さらに、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質として、例えば、CF3(CF27(CH22Si(Si(OCH3やCF3(CF27(CH22Si(SiCH(OCH)とアルコキシシリル基を主成分とする物質としてSi(OCHを分子組成比で2:1になるように秤量し、体積比で10%のエタノールを含む水系溶媒に0.01mol/Lなるように混合し、同様に分散して、それぞれの−Si(OCH)基の一部が加水分解され−Si(OH)3基、=Si(OH)基、あるいは≡SiOH基に変換された物質を含む完全に透明な複合膜形成溶液を作成した。
【0197】
なお、ここで、スターラーによる単なる撹拌では、多少濁った液が得られのみで、放置するとフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質がすぐに分離してしまい、安定した処理液は得られなかったが、超音波分散機で分散した前記処理液の場合、室温で溶液のポットライフは3ヶ月以上あった。
【0198】
しかしながら、実施例3、4と同様にシラノール触媒を添加しておくと製膜速度は速くできたが、ポットライフが1週間程度と短くなってしまった。この場合、2,3日で使用してしまう場合には問題なかったが、実用上はやや使用しづらかった。
【0199】
次に、よく洗浄して乾燥した磁器製(耐熱ガラス製でも同じであった。)の電磁調理器のトッププレートを用意し、この複合膜形成溶液を、空気中で(相対湿度57%、別の実験では70%でも問題なかった。)前記磁器製のトッププレート表面に塗布し、1時間程度放置した。このとき、水−アルコール溶媒は大部分蒸発するが、磁器製のトッププレート表面は水酸基が多数含まれているので、前記フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質やアルコキシシリル基を主成分とする物質の≡SiOH基に変換した部分と前記磁器製のトッププレート表面の水酸基が脱水反応して、磁器製のトッププレート表面全面に亘り表面と化学結合したフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質とシロキサン基を主成分とする物質と透明シリカ製微粒子を含む複合膜を前記磁器製のトッププレート表面に形成できる。
【0200】
そこで引き続いて、表面に残った複合膜形成溶液の水エタノール溶媒が完全に蒸発してしまう前、すなわち被膜が完全に硬化してしまう前にエタノールで未反応の余分なフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質やアルコキシシリル基を主成分とする物質を洗浄除去すると、略130nm程度の厚みのフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質とシロキサン基を主成分とする物質と透明シリカ製微粒子を含む表面が凸凹の複合膜が前記磁器製のトッププレート表面に形成できた。なお、エタノールを含むウエスでふき取った場合には、略300nm厚みとなった。
【0201】
このとき、複合膜形成溶液中のフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質やアルコキシシリル基を主成分とする物質は、水とアルコールの混合溶媒中でアルコキシシリル基の一部が加水分解して−Si(OH)基に変換されており、窯業製品製のトッププレートの表面は水酸基すなわち活性水素を多数含む(ガラス製の製品でも同じ)ので、前記−Si(OH)3基と磁器製のトッププレート表面の水酸基が脱水反応して、フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質と、シロキサン基を主成分とする物質と、微粒子が混合した状態で−SiO−結合を介して前記磁器製のトッププレートの表面に結合する。
【0202】
しかしながら、この状態では、−SiOH基の一部が脱水反応せずに膜中にのこる。そこで、さらに複合膜が形成されたそれぞれの磁器製のトッププレートを空気中で120〜300℃30分程度の加熱処理を行うと、未反応の−SiOH基が完全に脱水反応して、ポリシロキサン結合を形成し網目状のシリカ膜に変化して、耐摩耗性、且つ離水性(滑水性ともいう)に優れたフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質とシロキサン基を主成分とする物質と、透明微粒子よりなる水滴接触角が156度の撥水撥油防汚性の複合膜で被われた磁器製のトッププレートを製造できた。
【0203】
なお、ここで、不活性ガスである窒素ガス雰囲気中で300〜400℃30分程度の加熱処理を行うと、被膜が酸化されることもなく、さらに耐摩耗製に優れた撥水撥油防汚性の複合膜で被われた磁器製のトッププレートを製造できた。
さらに、CF3(CF27(CH22Si(Si(OCH3)の代わりに、実施例3及び4で用いたシリルメチル基とアルコキシシリル基を主成分とする物質に代えてみたが、撥油性が少し劣った以外は、ほぼ同様の結果であった。
【実施例6】
【0204】
実施例5に於いて、未反応の余分なフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質やアルコキシシリル基を主成分とする物質を洗浄除去する、あるいはふき取り除去する工程を省いても、表面の水滴接触角が略150度で膜厚が数百ナノメートルの被膜が得られた。なお、この条件でも、透明度はそれほど損なわれず、下地が磁器製のトッププレートのような不透明なものの場合には、実用上光沢も全く問題なかった。
【0205】
なお、実施例5および6に於いて、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシシリル基を主成分とする物質の分子組成比を、好ましくは1:10〜1:0(より好ましくは1:3〜3:1)にしておくと、被膜の表面エネルギーを5〜0.1mN/mの間で制御できた。
【0206】
また、このときの防汚性磁器製のトッププレートの水滴接触角は、主として微粒子の添加量に依存するが、おおむねアルコキシシリル基を主成分とする物質と等量添加すれば、水滴接触角は略155度程度に制御できた。また、水滴に対する転落角は10度以下に制御でき、洗浄時の水切りが良くなった。
【0207】
さらにまた、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の総濃度が0.05mol/Lでも同様の被膜が得られたが、0.01〜0.0001mol/Lになるように調製しておくと、処理液のゲル化を防止でき、寿命を1ヶ月程度まで確保できた。
【0208】
なお、アルコキシシリル基を主成分とする物質であるSi(OCHを除き同様の条件で撥水撥油防汚磁器製のトッププレートを試作してみたが、被膜の耐摩耗強度はやく1/3程度まで弱くなったが、ほぼ同様の結果で、実用に供し得る防汚性の磁器製のトッププレートを製造できた。
【実施例7】
【0209】
一方、実施例5に於いて、水−アルコール溶媒にさらに陽イオン界面活性剤である下記化学式(化1)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩が0.0005mol/Lになるように調製された水−アルコール−界面活性剤溶媒に代えて同様の実験を行ってみた。この場合、処理液のポットライフは長くなったが、ほぼ同様の被膜が形成できた。
【0210】
【化1】

【0211】
また、水−アルコール溶媒にさらに陽イオン界面活性剤である下記化学式(化1)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩が0.005mol/Lになるように添加して同様の実験を行ってみたが、ほぼ同様の被膜が形成できた。
【0212】
なお、実施例5,6,7に於いて、アルコールには、いわゆるアルコール類が全て使用できたが、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコールで好結果が得られた。
【0213】
また、界面活性剤としては、中性乃至弱アルカリ性の界面活性剤であれば使用できるが、中でも調合処理液のpHが5乃至11になるものでないと高性能の被膜を形成できなかった。pHが5未満の場合、密度の高い被膜が形成できなかった。一方、pHが12を超えると、被膜の一部が破壊された。
なお、下記化学式(化2)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩の内、特に好ましいものは、Rの炭素数が12〜16であった。
【化2】

【0214】
さらにまた、フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基のみを主成分とする物質として、一般には、以下のような物質が挙げられる。
CF3−(CF2n−(R)mSiXp(OA)3-p
(但し、nは0または16以下の整数、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エチニル基、シリコン若しくは酸素原子を含む置換基、mは0又は1、XはH,アルキル基,アルコキシ基,含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基の置換基、pは0、1または2、Aは、CH、C、C等のアルキル基)
【0215】
具体的には、一般式CF3−(CF2−(CH−Si(OA)3またはCF3−(CF2−(CH−SiA(OA)、[CF3−(CF2−(CH−Si(OA)、[CF3−(CF2−(CH−SiOA(nは0又は16以下の整数、Aはアルキル基)で表される物質が挙げられる。
【0216】
さらに、具体的には、以下に示す物質(1)-(19)が挙げられる。
(1) CF3CH2O(CH215Si(OCH3
(2) CF3(CH22Si(CH32(CH215Si(OCH3
(3) CF3(CH26Si(CH32(CH29 Si(OCH3
(4) CF3COO(CH215Si(OCH3
(5) CF3(CF27(CH22Si(OCH3
(6) CF3(CF2(CH22Si(OCH3
(7) CF3(CF2764Si(OCH3
(8) CF3CH2O(CH215Si(OC3
(9) CF3(CH22Si(CH32(CH215Si(OC3
(10) CF3(CH26Si(CH32(CH29 Si(OC3
(11) CF3COO(CH215Si(OC3
(12) CF3(CF27(CH22Si(OC3
(13) CF3(CF25(CH22Si(OCH3
(14) CF3(CF2764Si(OC3
(15)[CF3(CF2(CH22Si(OCH
(16)[CF3(CF2(CH22SiOCH
(17)[CF3(CF2(CH22Si(OC
(18)[CF3(CF2(CH22SiOC
(19) CF3(CF27(CH22SiCH(OCH
また、アルコキシシリル基のみを主成分とする物質として、一般には、Si(OA)、または(AO)Si(OSi(OA)OSi(OA)(nは、0または1、2の整数、Aはアルキル基)表される物質が挙げられる。
【0217】
さらに、具体的には、以下に示す物質(1)-(8)が挙げられる。
(1)Si(OCH
(2)SiH(OCH3
(3)SiH2(OCH2
(4)(CHO)3SiOSi(OCH2OCH
(5)Si(OC
(6)SiH(OC3
(7)SiH2(OC2
(8)(HO)3SiOSi(OC2OC
【0218】
なお、以上の実施例全てにおいて、基材としては、金属、半導体、セラミック、ガラス、プラスチック、窯業製品、合成樹脂、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石等の物品に適用できた。
さらに、ここで、部材最表面が、水に濡れないかほとんど濡れない場合、たとえば、ポリ塩化ビニルや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタノール、ポリエーテルサルファン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、液晶ポリマー、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーンゴム等の場合、
表面をシランや、アルキルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、アルキルチタン化合物、アルコキシチタン化合物、アルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルミニウム化合物を含む可燃ガスをフレームバーナーで処理する方法、前記と同様のガスを含む大気圧プラズマ処理、同プラズマ処理、あるいはコロナ処理することで、表面をあらかじめ親水化処理しておけばよかった。
【0219】
また、実際に、建物の窓ガラス、電磁誘導調理器用天板、または自動車用窓ガラス、太陽電池および太陽熱温水器用カバーガラスの場合、部材を試作してそれらを装着した製品を製造してみたが、何れも撥水撥油防汚性に優れた装置が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0220】
なお、本願発明の処理剤で処理が可能な物品やそれを用いた製品は、何ら限定されるものではないが、一般に、表面が水に濡れる材料(表面は塗料などで塗装されていても良い。)に適用できる。一方、表面が水に濡れない材料、例えば、合成樹脂類は、表面をプラズマ処理、あるいはコロナ処理して、親水性に加工すれば適用できる。
【0221】
具体的には、
(a)刃物の例
包丁、鋏、ナイフ、カッター、彫刻刀、剃刀、バリカン、鋸、カンナ、ノミ、錐、千枚通し、バイト、ドリルの刃、ミキサーの刃、ジューサーの刃、製粉機の刃、芝刈り機の刃、パンチ、押切り、ホッチキスの刃、缶切りの刃、または手術用メス等。
【0222】
(b)針の例
鍼術用の針、縫い針、ミシン針、畳針、注射針、手術用針、安全ピン等。
【0223】
(c)窯業製品の例
陶磁器製、ガラス製、セラミックス製またはほうろうを含む製品等。例えば衛生陶磁器(例えば便器、洗面器、風呂等)、食器(例えば、茶碗、皿、どんぶり、湯呑、コップ、瓶、コーヒー沸かし容器、鍋、すり鉢、カップ等)、花器(水盤、植木鉢、一輪差し等)、水槽(養殖用水槽、鑑賞用水槽等)、化学実験器具(ビーカー、反応容器、試験管、フラスコ、シャーレ、冷却管、撹拌棒、スターラー、乳鉢、バット、注射器)、瓦、タイル、ほうろう製食器、ほうろう製洗面器、ほうろう製鍋、各種コンクリート製品。
【0224】
(d)鏡の例
手鏡、姿見鏡、浴室用鏡、洗面所用鏡、自動車用鏡(バックミラー、サイドミラー)、ハーフミラー、ショーウィンドー用鏡、デパートの商品売り場の鏡等。
【0225】
(e)成形用部材の例
プレス成形用金型、注型成形用金型、射出成形用金型、トランスファー成形用金型、真空成形用金型、吹き込み成形用金型、押し出し成形用ダイ、インフレーション成形用口金、繊維紡糸用口金、カレンダー加工用ロールなど。
【0226】
(f)装飾品の例
腕時計、メガネフレームや真珠、真珠、ルビー、エメラルド、ガーネット、キャッツアイ、ダイヤモンド、トパーズ、ブラッドストーン、アクアマリン、サードニックス、トルコ石、瑪瑙、大理石、アメジスト、カメオ、オパール、水晶、ガラス等の宝石、さらに白金、金、銀、銅、アルミ、チタン、錫あるいはそれらの合金やステンレス製の指輪、腕輪、ブローチ、ネクタイピン、イヤリング、ネックレス等の貴金属装飾製品等。
【0227】
(g)食品成形用型の例
ケーキ焼成用型、クッキー焼成用型、パン焼成用型、チョコレート成形用型、ゼリー成形用型、アイスクリーム成形用型、オーブン皿、製氷皿等。
【0228】
(h)調理器具の例
鍋、釜、やかん、ポット、フライパン、ホットプレート、焼き物調理用網、油切り、タコ焼きプレート等。
【0229】
(i)紙の例:グラビア紙、撥水撥油紙、ポスター紙、高級パンフレット紙
【0230】
(j)樹脂の例
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、アラミド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリアセタール、ポリフェンレンオキサイド等
【0231】
(k)家庭電化製品の例
テレビジョン、ラジオ、テープレコーダー、オーディオ、CD、冷凍関係機器の冷蔵庫、冷凍庫、エアコン、ジューサー、ミキサー、扇風機の羽根、照明器具、文字盤、パーマ用ドライヤー等。
【0232】
(l)スポーツ用品の例
スキー、釣竿、棒高跳び用のポール、ボート、ヨット、ジェットスキー、サーフボード、ゴルフボール、ボーリングのボール、釣糸、魚網、釣り浮き等。
【0233】
(m)乗り物部品に適用する例
(1) ABS樹脂:ランプカバー、インストルメントパネル、内装部品、オートバイのプロテクター、(2) セルロースプラスチック:自動車のマーク、ハンドル(3) FRP(繊維強化樹脂):外板バンパー、エンジンカバー、(4)フェノール樹脂:ブレーキ(5) ポリアセタール:ワイパーギヤ、ガスバルブ、キャブレター部品(6) ポリアミド:ラジエータファン(7) ポリアリレート:方向指示レンズ、計器板レンズ、リレーハウジング(8) ポリブチレンテレフタレート:リヤエンド、フロントフェンダ(9) ポリアミノビスマレイミド:エンジン部品、ギヤボックス、ホイール、サスペンジョンドライブシステム(10)メタクリル樹脂:ランプカバーレンズ、計器板とカバー、センターマーク(11)ポリプロピレン:バンパー(12)ポリフェニレンオキシド:ラジエーターグリル、ホイールキャップ(13)ポリウレタン:バンパー、フェンダー、インストルメントパネル、ファン(14)不飽和ポリエステル樹脂:ボディ、燃料タンク、ヒーターハウジング、計器板
【0234】
(n)事務用品の例
万年筆、ボールペン、シャ−プペンシル、筆入れ、バインダー、机、椅子、本棚、ラック、電話台、物差し、製図用具等。
【0235】
(o)建材の例
屋根材、外壁材、内装材。屋根材として窯瓦、スレート瓦、トタン(亜鉛メッキ鉄板)など。外壁材としては木材(加工木材を含む)、モルタル、コンクリート、ケイカル板、窯業系サイジング、金属系サイジング、レンガ、石材、プラスチック材料、アルミ等の金属材料など。内装材としては木材(加工木材を含む)、アルミ等の金属材料、プラスチック材料、紙、繊維など。
【0236】
(p)石材の例
花コウ岩、大理石、みかげ石等。たとえば建築物、建築材、芸術品、置物、風呂、墓石、記念碑、門柱、石垣、歩道の敷石など。
【0237】
(q)楽器および音響機器の例
打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、木管楽器、金管楽器などの楽器、およびマイクロホン、スピーカなどの音響機器等。具体的には、ドラム、シンバル、バイオリン、チェロ、ギター、琴、ピアノ、フルート、クラリネット、尺八、ホルンなどの打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、木管楽器、金管楽器などの楽器、およびマイクロホン、スピーカ、イヤホーンなどの音響機器。
【0238】
(r)繊維製品の例
いわゆるアパレル製品であり、一般の天然繊維製品、合成繊維製品、毛皮製品、皮革製品、紙製品も含む。具体的には、衣類、帽子、ネクタイ、靴、鞄、傘、レインコート、スポーツ衣類、壁用クロス、カーテン、ジュータン、家具、乗り物の内装、シート類、生理用品、紙おしめ、寝具、シーツ、漁網等。
【0239】
(s)その他
魔法瓶、真空系機器、電力送電用碍子またはスパークプラグ等の撥水撥油防汚効果の高い高耐電圧性絶縁碍子等からなる基材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】本発明の撥水撥油防汚処理剤を用いた撥水撥油防汚性ガラス板の製造工程を示したものであり、(a)は実施例1における複合被膜形成後のガラス板表面、(b)は実施例1における焼成後の複合膜が形成された防汚性のガラス板の表面をそれぞれ分子レベルまで拡大した断面概念図。
【図2】本発明の撥水撥油防汚処理剤を用いて製作したガラス板の断面構造概念図。
【符号の説明】
【0241】
1 フッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質
2 シロキサン基を主成分とする物質2
3 シリカ製中空微粒子ガラス板
4 ガラス板
5 水酸基
6 水酸基を多数含む複合膜
7 防汚性の複合膜
8 撥水撥油性の複合膜
9 凸凹を有する撥水撥油性被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項2】
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項3】
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項4】
メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質として、CH3−[Si(CHO]−SiCl3、またはCH3−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、CH3−[Si(CHO]−Si(CHCl、Cl3SiO−[Si(CHO]−SiCl3、ClSi(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)Cl、ClSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CHCl、(nは、0又は12以下の整数)を用い、クロロシリルキ基を主成分とする物質としてClSi(OSiClCl(mは0または整数)またはアルコキシシリル基を主成分とする物質として(AO)Si(OSi(OA)(OA)(mは、0または整数、Aはアルキル基)を用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項5】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項6】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項7】
メチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比をそれぞれ1:10〜20:1にしておくことを特徴とする請求項1、3および6のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項8】
微粒子あるいは中空の微粒子が透明であり、サイズが5〜50μmであることを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項9】
乾燥雰囲気中で、
少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質、
あるいは少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質とクロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシシリル基を主成分とする物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを非水系有機溶媒を用いて希釈混合することを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項10】
非水系有機溶媒として、含水率が100ppm以下の有機溶媒を用いることを特徴とする請求項9に記載の撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項11】
乾燥雰囲気として、窒素ガスまたは湿度が5%以下の空気を用いることを特徴とする請求項9および10のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項12】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項13】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、有機溶媒を含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項14】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項15】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項16】
メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質としてCH3−[Si(CHO]−Si(OA)3、またはCH3−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、CH3−[Si(CHO]−Si(CHOA、(OA)3SiO−[Si(CHO]−Si(OA)3、(OA)Si(CH)O−[Si(CHO]−Si(CH)(OA)、(OA)Si(CHO−[Si(CHO]−Si(CHOA、(nは、0または12以下の整数、Aはアルキル基)を用いたことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。

【請求項17】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項18】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、シラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子と、有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項19】
メチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比、あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質の分子混合比を、それぞれ1:10〜20:1にしておくことを特徴とする請求項13、15および18のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項20】
シラノール縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルチタン酸エステルキレート類、及び酸化チタンを用いたことを特徴とする請求項12乃至15および17,18のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項21】
シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項12乃至15および17,18のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項22】
シラノール縮合触媒に、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを添加混合して用いることを特徴とすることを請求項12乃至15および17,18のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項23】
少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは、少なくともメチルシリルキ基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子
とを有機溶媒を用いて希釈混合ことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項24】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子、
あるいは少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質とシラノール縮合触媒またはクロロシリル基を含む物質と微粒子あるいは中空の微粒子とを有機溶媒を用いて希釈混合することを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項25】
有機溶媒として、含水率が300ppm以下の有機溶媒を用いることを特徴とする請求項23および24のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項26】
希釈混合を窒素ガスまたは湿度が35%以下の空気中で行うことを特徴とする請求項23および24のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項27】
請求項12〜22のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤に於いて、有機溶媒の代わりに、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項28】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項29】
フッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤。
【請求項30】
水系溶媒として、アルコール、またはアルコールを含む水、または界面活性剤を含む水、または界面活性剤とアルコールを含む水を用いたことを特徴とする請求項27〜29のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤。
【請求項31】
請求項23〜26のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤の製造方法に於いて、有機溶媒の代わりに、水系溶媒を用いたことを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項32】
少なくともフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子と、
あるいはフッ化炭素基と炭化水素基とアルコキシシリル基を主成分とする物質と、アルコキシシリル基を主成分とする物質と、微粒子あるいは中空の微粒子とを、
空気中で水系溶媒を用いて希釈混合することを特徴とする撥水撥油防汚処理剤の製造方法。
【請求項33】
少なくとも、請求項1乃至8、12乃至22、27乃至30のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤を基材表面に接触反応させ、前記基材表面に撥水撥油防汚性の被膜を形成することを特徴とする撥水撥油防汚膜の製造方法。
【請求項34】
少なくとも、基材が、金属、半導体、セラミック、ガラス、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石であり、請求項1乃至8、12乃至22、27乃至30のいずれか1項に記載の撥水撥油防汚処理剤を用いて表面に微細な凸凹を有する撥水撥油防汚膜が形成された物品。
【請求項35】
請求項34項に記載の物品が、建物の窓ガラス、電磁誘導調理器の天板、または自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラスであり、それらを装着したことを特徴とする製品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−138091(P2009−138091A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315547(P2007−315547)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(503002662)
【Fターム(参考)】