説明

撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置及び光学機器

【課題】撥水撥油防汚機能に加え、耐摩耗性や耐候性等の耐久性、水滴離水性、撥油性、防汚性が向上した撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置及び光学機器を提供する。
【解決手段】ガラス基材11の表面の少なくとも一部を覆うようにその表面に結合固定された第1の微粒子12aと、第1の微粒子12aの表面の少なくとも一部を覆うようにその表面に結合固定され、第1の微粒子12aよりも粒径の小さな第2の微粒子13と、
第1及び第2の微粒子12a、13の表面に形成された撥水撥油防汚性薄膜15aとを有することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置及び光学機器に関し、より具体的には高耐久性で且つ撥水撥油防汚性の被膜が表面に形成された撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
各種部材の表面に撥水性、撥油性及び防汚性を付与するために、フッ化炭素基含有クロロシラン系の吸着剤と非水系の有機溶媒よりなる溶液を用い、液相で化学吸着して単分子膜状の撥水撥油防汚性の化学吸着膜単分子膜を形成できることが既によく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような溶液中での単分子膜の製造原理は、基材表面のヒドロキシル基等の活性水素とクロロシラン系の吸着剤のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−132637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の化学吸着膜は吸着剤を平坦なガラス基材に適用した場合において、水滴接触角は高々120度程度止まりであり、水滴や汚れが自然に除去されるようにするためには撥水撥油防汚性や離水性が不十分であるという課題があった。また、特許文献1記載の化学吸着膜単分子膜が適用された撥水撥油防汚性ガラスは、耐摩耗性や耐候性等の耐久性も乏しいという課題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、撥水撥油防汚機能に加え、耐摩耗性や耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性ともいう)、撥油性、防汚性が向上した撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法並びにそれらを用いたガラス窓、太陽エネルギー利用装置及び光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明の第1の態様は、ガラス基材の表面の少なくとも一部を覆うように該ガラス基材の表面に結合固定された第1の微粒子と、前記第1の微粒子の表面の少なくとも一部を覆うように該第1の微粒子の表面に結合固定された、前記第1の微粒子よりも粒径の小さな第2の微粒子と、前記第1及び第2の微粒子の表面に形成された撥水撥油防汚性薄膜とを有することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラスを提供することにより上記課題を解決するものである。
ガラス基材の表面に第1の微粒子を結合固定し、更に第1の微粒子の表面に第2の微粒子を結合固定することにより、複雑な凹凸を有する表面構造を形成できる。そのため、平坦な表面を有する場合によりも撥水撥油防汚性を向上できる。また、少なくとも第1及び第2の微粒子の表面に撥水撥油防汚性薄膜を形成することにより、一般に親水性を有するガラス基材の表面に撥水性、撥油性及び防汚性を付与できる。
【0008】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、前記第1の微粒子の粒径が100nm以上5mm以下であり、前記第2の微粒子の粒径が前記第1の微粒子の粒径の1/100以上1/5以下であってもよい。
上記のように粒径の異なる2種類の微粒子を用いることにより、いわゆるフラクタル構造の表面構造が得られるため、大幅に撥水撥油防汚性に優れた撥水撥油防汚性ガラスを提供できる。
【0009】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、前記ガラス基材、前記第1及び第2の微粒子がいずれも透明であり、前記第1の微粒子の粒径が400nm以下であってもよい。
ガラス基材、第1及び第2の微粒子がいずれも透明であり、第1の微粒子の粒径が可視光の最短波長(400nm)よりも小さく(好ましくは100nm程度)、かつ第2の微粒子の粒径が数nm〜数十nm(好ましくは5〜25nm程度)であるため、入射光の散乱や乱反射が抑制され、透明度及び光学特性に優れた撥水撥油防汚性ガラスを提供できる。
【0010】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、前記第1の微粒子が前記ガラス基材に融着可能な素材からなり、該ガラス基材の表面に融着していてもよい。
或いは、前記第1の微粒子が、バインダを介して前記ガラス基材の表面に結合固定されていてもよい。
第1の微粒子が融着又はバインダを介してガラス基材の表面に結合固定されているため、撥水撥油防汚性ガラスの表面の耐摩耗性及び耐候性等を向上できる。
【0011】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、前記第2の微粒子が前記第1の微粒子に融着可能な素材からなり、該第1の微粒子の表面に融着していてもよい。
或いは、前記第2の微粒子が、バインダを介して前記第1の微粒子の表面に結合固定されていてもよい。
第2の微粒子が融着又はバインダを介して第1の微粒子の表面に結合固定されているため、撥水撥油防汚性ガラスの表面の耐摩耗性及び耐候性等を向上できる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、前記第1及び第2の微粒子が、ガラス、シリカ、アルミナ及びジルコニアからなる群より選択される材質からなるものであってもよい。
第1及び第2の微粒子がガラス、シリカ、アルミナ及びジルコニアからなる群より選択される材質からなるため、撥水撥油防汚性ガラスの表面の耐久性を向上できる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、前記撥水撥油防汚性薄膜が単分子膜であることが好ましい。
撥水撥油防汚性薄膜が単分子膜であるため、得られる撥水撥油防汚性ガラスの色調や透明度を損なうことがない。
【0014】
本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスにおいて、表面の臨界表面エネルギーは理想的には低いほど良いが、1mN/m以上3mN/m以下であることが好ましい。
表面の臨界表面エネルギーが上記範囲であるため、得られる撥水撥油防汚性ガラスの撥水性、撥油性及び防汚性の全てを向上できる。
【0015】
本発明の第2の態様は、溶媒に分散させた第1の微粒子を含む第1の分散液をガラス基材の表面に塗布し、該溶媒を蒸発させた後、前記ガラス基材の表面に前記第1の微粒子を結合固定する工程Aと、溶媒に分散させた第2の微粒子を含む第2の分散液を前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に塗布し、該溶媒を蒸発させた後、前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に前記第2の微粒子を結合固定する工程Bと、前記第1及び第2の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程Cとを有することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラスの製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
工程A及びBにおいて、ガラス基材の表面に第1及び第2の微粒子を結合固定することにより、ガラス基材の表面に複雑な凹凸を形成できる。そのため、平坦なガラス基材及び第1の微粒子のみが表面に結合固定されたガラス基材よりも撥水性、撥油性及び防汚性を向上できる。また、工程Cにおいて、少なくとも第1及び第2の微粒子の表面に撥水撥油防汚性薄膜を形成することにより、撥水性、撥油性及び防汚性を更に向上できる。
【0016】
本発明の第2の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、前記工程Aにおいて、前記ガラス基材の表面に前記第1の微粒子を融着してもよい。
或いは、前記第1の溶液が、溶媒の蒸発及び/又はその後の化学反応によりバインダを生成する第1のバインダ前駆体を含み、前記工程Aにおいて、前記バインダを介して前記ガラス基材の表面に前記第1の微粒子を結合固定してもよい。
融着又はバインダを介してガラス基材の表面に第1の微粒子を結合固定するため、撥水撥油防汚性ガラスの表面の耐摩耗性及び耐候性等を向上できる。
【0017】
本発明の第2の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、前記工程Bにおいて、前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に前記第2の微粒子を融着してもよい。
或いは、前記第2の溶液が、溶媒の蒸発及び/又はその後の化学反応によりバインダを生成する第2のバインダ前駆体を含み、前記工程Bにおいて、前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面にバインダを介して前記第2の微粒子を結合固定してもよい。
融着又はバインダを介して第1の微粒子の表面に第2の微粒子を結合固定するため、撥水撥油防汚性ガラスの表面の耐摩耗性及び耐候性等を向上できる。
【0018】
工程A及び/又はBにおいてバインダを介して第1及び/又は第2の微粒子を結合固定する本発明の第2の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、前記第1及び/又は第2のバインダ前駆体が、ゾル−ゲル法により透明な金属酸化物を形成する金属ゾル前駆体であってもよい。
ゾル−ゲル法により透明な金属酸化物を形成する金属ゾル前駆体をバインダ前駆体として用いることにより、製造される撥水撥油防汚性ガラスの透明度を損なうことなく第1及び第2の微粒子をそれぞれガラス基材及び第1の微粒子の表面に結合固定できる。
【0019】
本発明の第2の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、前記工程A及び/又はBの後で、結合固定されなかった前記第1及び/又は第2の微粒子を洗浄除去してもよい。
【0020】
本発明の第2の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、前記工程Cにおいて、前記ガラス基材、前記第1及び第2の微粒子の表面官能基と反応して結合を形成する反応基とフッ化炭素基とを有する化合物を含む反応液を前記第1及び第2の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に接触させ、前記表面官能基と前記反応基との反応により形成された結合を介して該表面に結合固定された前記化合物の被膜を形成してもよい。
表面官能基と反応基との反応により形成された結合を介して撥水撥油防汚性薄膜を第1及び第2の微粒子の表面に結合固定することにより、撥水撥油防汚性薄膜の耐久性を向上できる。
【0021】
この場合において、前記反応基がアルコキシシリル基であり、前記反応液が、
(1)カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルおよびチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1または2以上の化合物、及び/又は
(2)ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、およびアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物を縮合触媒として含んでいてもよい。
反応基としてアルコキシシリル基を用いることにより、反応時にハロゲン化水素等の有害な副生成物の生成を防ぐことができると共に、反応液が縮合触媒を含んでいるため、撥水撥油防汚性薄膜の形成に必要な処理時間を短縮できる。
【0022】
更に、前記工程Cの後で余分な前記反応液を洗浄除去してもよい。
余分な反応液を洗浄除去することにより、撥水撥油防汚性薄膜を単分子膜とすることができるため、製造される撥水撥油防汚性ガラスの透明度を損なうことがない。
【0023】
本発明の第3の態様は、ガラス基材、第1及び第2の微粒子がいずれも透明であり、第1の微粒子の粒径が400nm以下である本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスを有するガラス窓を提供することにより上記課題を解決するものである。
撥水性、撥油性及び防汚性に加え、透明度及び耐久性にも優れたガラス窓を提供できる。
【0024】
本発明の第4の態様は、ガラス基材、第1及び第2の微粒子がいずれも透明であり、第1の微粒子の粒径が400nm以下である本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスを有する太陽エネルギー利用装置を提供することにより上記課題を解決するものである。
撥水性、撥油性及び防汚性に加え、耐久性及び耐候性にも優れ、入射光の散乱や乱反射が抑制されるため光エネルギーの利用効率にも優れた太陽エネルギー利用装置を提供できる。
【0025】
本発明の第5の態様は、ガラス基材、第1及び第2の微粒子がいずれも透明であり、第1の微粒子の粒径が400nm以下である本発明の第1の態様に係る撥水撥油防汚性ガラスを有する光学機器を提供することにより上記課題を解決するものである。
撥水性、撥油性及び防汚性に加え、耐久性及び耐候性にも優れ、入射光の散乱や乱反射が抑制されるため透明性や光学特性にも優れた光学装置を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、撥水撥油防汚機能に加え、耐摩耗性や耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性ともいう)、撥油性、防汚性が向上した撥水撥油防汚性ガラスとその製造方法が提供される。また、本発明によれば、撥水性、撥油性及び防汚性に加え、透明度及び耐久性にも優れたガラス窓、撥水性、撥油性及び防汚性に加え、耐候性及び光エネルギーの利用効率にも優れた太陽エネルギー利用装置、及び撥水性、撥油性及び防汚性に加え、耐久性、透明度及び光学特性にも優れた光学機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撥水撥油防汚性ガラスの断面構造を模式的に説明した説明図である。
【図2】同撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、ガラス基材の表面に第1の微粒子を融着する工程の説明図である。
【図3】同撥水撥油防汚性ガラスの製造方法において、第1の微粒子が融着されたガラス基材の表面にバインダを介して第2の微粒子をする結合固定する工程の説明図である。
【図4】実施例1において製造した撥水撥油防汚性ガラスの表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図1〜3は単なる概略説明図であり、ガラス基材、第1及び第2の微粒子、及び撥水撥油防汚性薄膜を形成する化合物の大きさについては、必ずしも実際の大きさの比率を反映していない。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る撥水撥油防汚性ガラス10は、ガラス基材11の表面の少なくとも一部を覆うようにその表面に融着(結合固定の一例)した第1の微粒子12aと、ガラス基材(11)の表面に融着した第1の微粒子12aの表面の少なくとも一部を覆うようにその表面に結合固定された、第1の微粒子12aよりも粒径の小さな第2の微粒子13と、第1及び第2の微粒子12a、13の表面に形成された撥水撥油防汚性薄膜15aとを有する。第2の微粒子13は、バインダの一例であるゾル−ゲル法により形成されたシリカ被膜14を介して、ガラス基材(11)の表面に融着した第1の微粒子12aの表面に結合固定されている。
【0029】
撥水撥油防汚性ガラス10は、溶媒に分散させた第1の微粒子12を含む第1の分散液をガラス基材11の表面に塗布し、溶媒を蒸発させた後、ガラス基材11の表面に第1の微粒子12を融着(結合固定の一例)する工程A(図2参照)と、溶媒に分散させた第2の微粒子13と、テトラアルコキシシラン(バインダ前駆体の一例)とを含む第2の分散液を第1の微粒子が結合固定されたガラス基材11aの表面に塗布し、溶媒を蒸発させた後、第1の微粒子が結合固定されたガラス基材11aの表面に、ゾル−ゲル法により形成されたシリカ被膜(バインダの一例)14を介して第2の微粒子13を結合固定する工程B(図3参照)と、ガラス基材11、第1及び第2の微粒子12a、13の表面官能基と反応して結合を形成する反応基とフッ化炭素基とを有する化合物15を含む反応液を第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面に接触させ、第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面に表面官能基と反応基との反応により形成された結合を介してその表面に結合固定された撥水撥油防汚性薄膜15aを形成する工程C(図1参照)とを有する方法により製造される。
以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0030】
(1)工程A
工程Aにおいて用いられるガラス基材11の形状については特に制限はなく、レンズ、プリズム等の平板状以外の形状のものを用いることもできる。また、ガラス基材11の大きさについても特に制限はなく、任意の大きさのものを用いることができる。更に、ガラス基材11の材質についても特に制限はなく、ソーダ石灰ガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミックス等の任意の材質のものを用いることができ、ポリメタクリル酸メチル等からなるアクリルガラス(プレキシガラス)等の有機材料を用いることもできる。
【0031】
第1の分散液と接触させる前に、ガラス基材11の表面を洗浄し、表面に付着した汚れを除去しておくことが好ましい。洗浄には、洗浄液中への浸漬(加熱、撹拌及び超音波照射等を併用してもよい。)、エキシマレーザーの照射等の任意の方法を用いることができる。
【0032】
ガラス基材11と同様、工程Aにおいて用いられる第1の微粒子12の形状について特に制限はないが、球状又は略球状であることが好ましい。第1の微粒子12の大きさは、50nm〜5mm、好ましくは50nm〜400nm、より好ましくは100〜200nmである。特に、ガラス窓、太陽エネルギー利用装置、光学機器等に用いるために透明度が必要とされる撥水撥油防汚性ガラス10の製造のためには、入射光の散乱や乱反射による透明度の低下を抑制するために、第1の微粒子12の大きさは、可視光の波長よりも短い400nm以下である必要がある。第1の微粒子12の材質についても特に制限はなく、ソーダ石灰ガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミックス、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の任意の材質のものを用いることができ、ポリメタクリル酸メチル等からなるアクリルガラス(プレキシガラス)等の有機材料を用いることもできる。特に、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の硬質の無機酸化物からなる微粒子を用いる場合には、得られる撥水撥油防汚性ガラス10の表面の硬度及び耐摩耗性を向上できる。
【0033】
第1の分散液の調製には、第1の微粒子12を均一に分散でき、ガラス基材11及び第1の微粒子12と反応したり、膨潤や変形を起こしたりしない限りにおいて任意の溶媒を用いることができるが、揮発性、安全性、環境負荷及び経済性等の観点から、水、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール系溶媒及びこれらの混合溶媒が好ましい。溶媒の量は、第1の微粒子12の大きさ及び比重等に依存するため一義的に決定することは困難であるが、例えば、第1の微粒子12の重量の4〜200倍(第1の分散液に含まれる第1の微粒子12の濃度が約0.5〜約20重量%)、好ましくは10〜100倍、より好ましくは10〜50倍である。溶媒の量が少なすぎると、得られる第1の分散液がスラリー状になり、第1の微粒子12をガラス基材11の表面に均一に分散することが困難になり、逆に多すぎると作業効率が低下する。
【0034】
ガラス基材11の表面に第1の分散液を塗布後、溶媒を蒸発させると、ガラス基材11の表面に第1の微粒子12を均一に分散させることができる(図2(B)参照)。第1の分散液の塗布には、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法を用いることができる。
【0035】
次いで、ガラス基材11の表面を加熱し、第1の微粒子(12)が表面に融着したガラス基材11aを得る。加熱温度及び加熱時間は、用いられるガラス基材11及び第1の微粒子12の材質等に依存するため一義的に決定することは困難であるが、例えば、ガラス基材11としてソーダ石灰ガラス、第1の微粒子12としてシリカ微粒子を用いる場合には、650℃で30分〜1時間程度加熱することにより、第1の微粒子(12)が表面に融着したガラス基材11aが得られる(図2(C)参照)。なお、図2(C)には、一例としてガラス基材11とその表面に融着した第1の微粒子12aの界面付近が互いに融合した状態を示しているが、両者の間に界面が存在していてもよい。
【0036】
(2)工程B
工程Bにおいて用いられる第2の微粒子13の形状について特に制限はないが、球状又は略球状であることが好ましい。第2の微粒子13の大きさは、第1の微粒子12の粒径の1/100以上1/5以下であり、1nm〜50μm、好ましくは5nm〜80nm、より好ましくは5〜50nmである。特に、ガラス窓、太陽エネルギー利用装置、光学機器等に用いるために透明度が必要とされる撥水撥油防汚性ガラス10の製造のためには、入射光の散乱や乱反射による透明度の低下を抑制するために、第2の微粒子13の大きさは、可視光の波長よりも短い400nm以下、かつ第1の微粒子12の粒径の1/100以上1/5以下である必要がある。第2の微粒子13の材質についても特に制限はなく、ソーダ石灰ガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ガラスセラミックス、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の任意の材質のものを用いることができ、ポリメタクリル酸メチル等からなるアクリルガラス(プレキシガラス)等の有機材料を用いることもできる。特に、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の硬質の無機酸化物からなる微粒子を用いる場合には、得られる撥水撥油防汚性ガラス10の表面の硬度及び耐摩耗性を向上できる。
【0037】
第2の分散液の調製に用いられるバインダ前駆体としては、ゾル−ゲル法により透明な金属酸化物の被膜を形成できる物質、より具体的には、テトラアルコキシシランSi(OR)(Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等の低級アルキル基。以下同じ。)、ホウ酸トリアルコキシドB(OR)、アルミニウムトリアルコキシドAl(OR)、チタンテトラアルコキシドTi(OR)等の金属アルコキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
第2の分散液の調製には、第2の微粒子13を均一に分散でき、第1の微粒子を融着したガラス基材11a及び第2の微粒子13と反応したり、膨潤や変形を起こしたりしないことに加え、金属アルコキシドを溶解させることができ、かつこれらと反応して分解させない溶媒が用いられる。用いることができる溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール系溶媒及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0039】
第2の分散液の調製に用いられる溶媒の量は、第2の微粒子13の大きさ及び比重等に依存するため一義的に決定することは困難であるが、例えば、第2の微粒子13の重量の4〜200倍(第2の分散液に含まれる第2の微粒子13の濃度が約0.5〜約20重量%)、好ましくは10〜100倍、より好ましくは10〜50倍である。溶媒の量が少なすぎると、得られる第2の分散液がスラリー状になり、第1の微粒子12をガラス基材11の表面に均一に分散することが困難になり、逆に多すぎると作業効率が低下する。
【0040】
第1の微粒子(12)を融着したガラス基材11aの表面に第2の分散液を塗布後、溶媒を蒸発させると、第1の微粒子を融着したガラス基材11aの表面に、ゾル−ゲル法により形成されたシリカ被膜(以下、「シリカ被膜」と略称する場合もある。)14を介して第2の微粒子13を均一に分散した状態で結合固定できる(図3(B)参照)。第2の分散液の塗布には、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法を用いることができる。次いで、更に熱処理を行い、シリカ被膜14を焼結させると、より強固に第2の微粒子13を第1の微粒子を融着したガラス基材11aの表面に結合固定できる。焼結温度を高くすると、シリカ被膜14が融解又は軟化し、第2の微粒子13を融着させることもできる。このとき、第2の分散液中に、金属アルコキシドの5%程度のリン酸又はホウ酸を添加しておくと、シリカ被膜14の融点を500℃程度まで低下させることができるので、600℃で30分程度の焼結により、第1の微粒子を融着したガラス基材11aの表面に第2の微粒子13を融着できる。
【0041】
本実施の形態では、工程Aにおいてガラス基材11の表面に第1の微粒子12を直接融着させ、工程Bにおいて第1の微粒子を融着したガラス基材11aの表面にシリカ被膜14を介して第2の微粒子13を結合固定させたが、工程A及びBのいずれにおいても、第1及び第2の微粒子12、13の結合固定に両者の方法を用いることができる。また、ガラス基材11、第1及び第2の微粒子12、13のいずれかが有機材料である場合にも、可能であれば融着による結合固定を行うこともできる。但し、有機材料は無機材料よりも融点及び軟化温度が低く、熱分解を起こしやすいため、無機材料の場合よりも加熱温度を低くする必要がある。更に、バインダとして光硬化性樹脂や接着剤(エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤)を用いてもよい。
【0042】
また、本実施の形態においては、工程Aにおいてガラス基材11をそのまま第1の微粒子が融着したガラス基材11aの製造に用いたが、工程Aの前にガラス基材11よりも低い温度で第1の微粒子12を融着する被膜をガラス基材11の表面に形成してもよい。被膜としては、透明性を有しガラス基材11よりも低い温度で第1の微粒子12を融着することのできる任意の被膜(透明被膜)を用いることができるが、ゾルゲル法により形成された酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の金属酸化物の乾燥ゲル膜が好ましい。
【0043】
縮合触媒(詳細については後述する。)を含む金属アルコキシドの溶液をガラス基材11の表面に塗布後溶媒を蒸発させると、空気中の水分によるアルコキシル基の加水分解により生成するヒドロキシル基とアルコキシル基との間で縮合反応が起こり、ガラス基材11の表面に金属酸化物の透明な乾燥ゲル膜が形成される。未焼結の乾燥ゲル膜の表面および内部には、ガラス基材11よりも多くの遊離のヒドロキシル基が存在するため、ガラス基材11よりも低い温度で第1の微粒子12と融着できる。
【0044】
透明被膜の一例であるシリカの乾燥ゲル膜の形成は、テトラメトキシシラン(Si(OCH)等のテトラアルコキシシラン、縮合触媒および溶媒を混合して得られるゾル溶液をガラス基材11の表面に塗布し、溶媒を蒸発させることにより行うことができる。
用いることのできる縮合触媒、助触媒、溶媒の種類、テトラアルコキシシランの濃度、触媒の添加量については後述する。
【0045】
ゾル溶液の塗布は、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法により行うことができる。また、乾燥ゲル膜の膜厚は、撥水撥油防汚性ガラス10の製造に用いる第1の微粒子12の粒径にもよるが、5〜50nmが好ましい。このようにして得られる、シリカの乾燥ゲル膜を表面に有するガラス基材11を用いて撥水撥油防汚性ガラス10の製造を行うと、工程Aにおける加熱処理を300度以下の低温で行うことが可能となる。そのため、予め風冷強化されたガラス基材11を用いた場合にも、高温で加熱することにより強化度を劣化させることなく第1の微粒子が融着したガラス基材11aを製造できる。
【0046】
(3)工程C
第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面に表面官能基と反応基との反応により形成された結合を介して、その表面に結合固定された撥水撥油防汚性薄膜15aを形成し、撥水撥油防汚性ガラス10を製造するのに用いる反応液は、フッ化炭素基を含むアルコキシシラン化合物(反応基とフッ化炭素基とを有する化合物の一例)と、第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面のヒドロキシル基(表面官能基の一例)とアルコキシシリル基との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合することにより調製される。
【0047】
フッ化炭素基を含むアルコキシシラン化合物としては、下記の一般式(I)で表されるアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0048】
(I)CF(CF−Y−Z−(CH−Si(OR)
【0049】
上式において、mは0〜20の整数を、nは0〜9の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
また、Yは、(CH(kは1〜3の整数を表す)および単結合のいずれかを表し、Zは、O(エーテル酸素)、COO、Si(CH、および単結合のいずれかを表す。
【0050】
式(I)で表されるフッ化炭素基を含むアルコキシシラン化合物としては、下記(1)〜(12)に示す化合物が挙げられる。
【0051】
(1)CFCHO(CH15Si(OCH
(2)CF(CHSi(CH(CH15Si(OCH
(3)CF(CF(CHSi(CH(CHSi(OCH
(4)CF(CF(CHSi(CH(CHSi(OCH
(5)CFCOO(CH15Si(OCH
(6)CF(CF(CHSi(OCH
(7)CFCHO(CH15Si(OC
(8)CF(CHSi(CH(CH15Si(OC
(9)CF(CF(CHSi(CH(CHSi(OC
(10)CF(CF(CHSi(CH(CHSi(OC
(11)CFCOO(CH15Si(OC
(12)CF(CF(CHSi(OC
【0052】
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルおよびチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
【0053】
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
【0054】
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
【0055】
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
【0056】
反応液を第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面に塗布し、室温の空気中で反応させると、アルコキシシリル基と第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面のヒドロキシル基とが縮合反応を起こし、下記の化1で示されるような構造を有するフッ化炭素基を含む撥水撥油防汚性薄膜15aを生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合は第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面または隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本はガラス基材1の表面のケイ素原子と結合している。
【0057】
【化1】

【0058】
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bの表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、第1及び第2の微粒子が結合固定されたガラス基材11bをよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
【0059】
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
【0060】
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
【0061】
例えば、縮合触媒として、ジブチルスズオキサイドの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にして処理を行うと、反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
【0062】
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にして反応性ガラス基材4の製造を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
【0063】
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
【0064】
また、用いることができる有機酸も特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
【0065】
反応液の調製には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤または蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
【0066】
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
【0067】
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
【0068】
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
【0069】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物および縮合触媒を除去すると、撥水撥油防汚性薄膜15aで表面が覆われた撥水撥油防汚性ガラス10が得られる。
【0070】
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0071】
反応後、余分な反応液を溶媒で洗浄除去せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、撥水撥油防汚性ガラス10の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、撥水撥油防汚性ガラス10の表面に共有結合により固定されていないが、フッ化炭素基を有しているため撥水撥油防汚性を有している。そのため、多少耐久性に劣る点を除けば、このままの状態でも撥水撥油防汚性ガラス10として使用できる。
【0072】
本実施の形態においては、アルコキシシラン化合物を用いた場合について説明したが、フッ化炭素基を有するハロシラン化合物を用いてもよい。ハロシラン化合物を用いる場合には、縮合触媒および助触媒が不要であること、アルコール系溶媒が使用できないこと、アルコキシシラン化合物より加水分解を受けやすいので、乾燥溶媒を用い、乾燥空気中(相対湿度30%以下)で反応を行うことを除き、アルコキシシラン化合物と同様に反応液の調製及び第1の微粒子が融着したガラス基材11aとの反応を行うことができる。
【0073】
単分子膜状の撥水撥油防汚性薄膜15aの膜厚は高々1nm程度であるため、第1及び第2の微粒子が融着したガラス基材11bの表面に形成された5〜50nm程度の凸凹はほとんど損なわれることがない。また、この凸凹の効果(いわゆる「蓮の葉効果」)により、撥水撥油防汚性ガラス10の見かけ上の表面エネルギーを小さくでき、水滴接触角は、140°以上(本実施の形態では150°程度)となり、超撥水が実現できる。
【0074】
また、工程Cにおいて用いることができるフッ化炭素基を含むハロシラン化合物としては、下記(21)〜(26)に示す化合物が挙げられる。また、下記(27)〜(32)に示すイソシアネートシラン化合物を用いることもできる。
【0075】
(21)CFCHO(CH15SiCl
(22)CF(CHSi(CH(CH15SiCl
(23)CF(CF(CHSi(CH(CHSiCl
(24)CF(CF(CHSi(CH(CHSiCl
(25)CFCOO(CH15SiCl
(26)CF(CF(CHSiCl
(27)CFCHO(CH15Si(NCO)
(28)CF(CHSi(CH(CH15Si(NCO)
(29)CF(CF(CHSi(CH(CHSi(NCO)
(30)CF(CF(CHSi(CH(CHSi(NCO)
(31)CFCOO(CH15Si(NCO)
(32)CF(CF(CHSi(NCO)
【0076】
撥水撥油防汚性ガラス10は、150度程度の水滴接触角を有している。種々の体積の水滴(0.02〜0.08ml)を用いた検討結果より、水滴接触角が150度以上のとき、水滴の体積に関係なく転落角は15度以下となることを確認している。そのため、撥水撥油防汚性ガラス10を乗り物や建築物の窓ガラス板として用いた場合、ほとんどの水滴は表面にとどまることができずに転落する。
【0077】
撥水撥油防汚性ガラス10は、耐摩耗性および耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性)、ならびに防汚性に優れており、撥水撥油防汚機能が要求される乗り物や建築物のガラス窓に用いることができる。撥水撥油防汚性ガラス10を用いることのできる乗り物としては、自動車、鉄道車両、船舶等が挙げられ、運転席、客室等の別を問わずあらゆる窓の窓用ガラス板として用いることができる。特に、運転席用のガラス窓に用いた場合には、運転席からの視認性を向上できる効果も有している。また、撥水撥油防汚性ガラス10を用いることのできる建築物としては、一戸建て住宅、集合住宅、オフィスビル等の任意の建築物が挙げられる。
【0078】
また、撥水撥油防汚性ガラス10を太陽エネルギー利用装置に道いると、汚れの付着、入射光の散乱及び乱反射等による太陽光エネルギーの利用効率の低下を抑制できると共に、耐久性及び耐候性に優れ、屋外の過酷な環境下でも長期間にわたって使用可能な太陽エネルギー利用装置が提供される。太陽エネルギー利用装置の具体例としては、太陽熱温水器、太陽電池、温室等が挙げられる。
【0079】
また、撥水撥油防汚性ガラス10は、撥水撥油防汚機能が要求される光学機器用の部材にも適用できる。光学機器用の部材としては、カメラ、分光計等のレンズ、プリズム、ミラー、PDP等の表示装置のフェイスプレート等が挙げられ、耐摩耗性および耐候性等の耐久性、水滴離水性(滑水性ともいう)、防汚性に優れた撥水撥油防汚性反射防止膜を形成でき、光学性能に優れた光学装置や、表面反射の少ないPDPディスプレイ等を提供できる。
【実施例】
【0080】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。これらの実施例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:撥水撥油防汚性ガラスの製造(1)
平均粒径が約130nmの第1のシリカ微粒子をエタノールに分散させて第1の分散液を作製した。これを平板状のガラス基材である太陽熱温水器用のガラス板の表面に塗布し、エタノール溶媒を蒸発させた後、630℃で25分加熱して第1のシリカ微粒子をガラス基材の表面に融着した。なお、シリカの融点は2000℃以上であるため、第1のシリカ微粒子同士が互いに融着することはなかった。一方、ガラス基材の表面と接触している第1のシリカ微粒子は、ガラスの軟化と共にガラス基材の表面に陥入し表面に融着された。その後、第1のシリカ微粒子が融着したガラス基材の表面を洗浄し、表面に融着しなかった第1のシリカ微粒子を除去した。
【0081】
次いで、テトラメトキシシランのメタノール溶液に微量の水及びリン酸を加えて作製したゾル−ゲル溶液(シリカ濃度2%)を、第1のシリカ微粒子が融着したガラス基材の表面に塗布後乾燥し、数ナノメートル程度の膜厚を有するシリカ被膜を形成した。平均粒径が約15nm程度の第2のシリカ微粒子をエタノールに分散後、シリカ被膜の全面に塗布後、エタノールを蒸発させ、更に600℃で30分焼結した、その後、表面に融着しなかった第2のシリカ微粒子を洗浄除去した。
【0082】
このとき、上記のゾル−ゲル溶液にリン酸又はホウ酸を固形分にして5%程度添加しておくと、シリカ被膜の融点を500℃程度まで低減できるので、600℃で30分程度の焼結温度で第2のシリカ微粒子を十分融着できた。また、この加熱条件では、第1のシリカ微粒子に由来する凸凹を損なうことはなかった。
【0083】
99重量部のヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランCF(CF(CHSi(OCH、1重量部のジブチルスズジアセチルアセトナート(縮合触媒)をそれぞれ秤量後、ヘキサメチルジシロキサンに溶解し、濃度1重量%程度の反応液を作製した。第1及び第2のシリカ微粒子が融着したガラス基材の表面に反応液を塗布し、室温で反応させた。このとき、第1及び第2のシリカ微粒子並びにシリカ被膜の表面にはヒドロキシル基が多数含まれているので、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン−Si(OCH)基とヒドロキシル基が、縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記化学式(化2)に示したような結合を形成し、フッ化炭素基を含む撥水撥油防汚性薄膜が表面と化学結合した状態で約1ナノメートル程度の膜厚で形成された。
【0084】
【化2】

【0085】
その後、ジクロロメタンで余分な反応液を洗浄除去すると、表面全面に亘り表面と化学結合したフッ化炭素基を含む撥水撥油防汚性薄膜(単分子膜)で被われた、撥水撥油防汚性及び反射防止機能を有する太陽熱温水器用の撥水撥油防汚性ガラスを製造できた。このようにして得られた撥水撥油防汚性ガラスの表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。第1及び第2のシリカ微粒子がそれぞれガラス基材及び第1のシリカ微粒子の表面に融着したことにより、表面に複雑な凹凸が形成されており、後述するように、平坦なガラス基材の表面に撥水撥油防汚性薄膜を形成した場合よりも撥水性、撥油性及び防汚性が向上していることが確認された。しかし、製造に使用した第1及び第2のシリカ微粒子の大きさがいずれも可視光の波長よりも短かったため、透明度はほとんど劣化しなかった。
【0086】
なお、第1及び第2のシリカ微粒子の融着の際の焼成温度は、250℃以上基材の軟化温度未満であれば高いほど微粒子を強固にガラス表面に融着できるが、あまり高すぎるとシリカ被膜中又はガラス基材の内部までシリカ微粒子が埋没してしまった。したがって、加熱温度は、基材の軟化度程度又はそれ以下でなくてはならない。
【0087】
一方、このとき、形成された微粒子表面の撥水撥油防汚性薄膜は、シリカ微粒子の表面エネルギーを小さくする作用があり、フラクタル構造を有する凸凹と併せて、基材表面の見かけ上の表面エネルギーを大きく低減できる作用がある。実際に水滴接触角を測定したところ、多少のバラツキは観測されたものの、接触角は150°程度であり、臨界表面エネルギーも1〜3mN/m程度であった。
【0088】
このようにして得られた撥水撥油防汚性ガラスを太陽熱温水器に装着し実用化試験を行うと、空気中の粉塵や雨水による汚れもほとんど付着せず、普通のガラスを装着した場合に比べて初期値で平均3%程度集熱効率を向上できた。また、普通のガラスの場合、1年も使用すると表面が汚れ、光利用効率が30%程度も低下したが、この太陽熱温水器では、1年後でも汚れによる効率低下は5%以下であった。
【0089】
実施例2:撥水撥油防汚性ガラスの製造(2)
実施例1と同様の方法を用い、太陽電池製造時に光入射面に用いる透明ガラス基板表面に、あらかじめ大きさの異なる微粒子(平均粒径50nmのシリカ微粒子と平均粒径10nmのシリカ微粒子を1:10程度に混合して用いた。)を融着したガラス基板を作成しておき、太陽電池セルを形成した後にフッ化炭素基を含む撥水撥油防汚性薄膜を形成すると、太陽電池の表面近傍断面がフラクタル構造で、撥水撥油効果が高く(水滴接触角で153度)、かつ高い光透過性(500nm近傍の光の透過率が約98%であった。)を有する反射防止機能を有する膜で覆われた太陽電池を製造できた。さらにまた、このセルで実用化試験を行った結果では、半年経過後でも空気中の粉塵や雨水による汚れもほとんど付着せず、普通のガラスを装着した場合に比べて平均3%程度光利用効率を向上できた。また、普通のガラスの場合、1年も使用すると表面が汚れ、光利用効率が30%程度も低下したが、この太陽電池では、1年後でも汚れによる効率低下はほとんどみられなかった。なお、このときの水滴接触角は153°程度であったが、水滴接触角が140°以上であれば、実用上ほぼ同様の効果が得られた。
【0090】
実施例3:撥水撥油防汚性ガラスの製造(3)
実施例1と同様の方法を用いて撥水撥油防汚性反射防止膜を形成したレンズを製作し、光学機器に装着しテスト使用してみたが、指紋の付着がほとんど無く、しかも光透過率は反射防止マルチコート膜と同等であり、光学特性に遜色がなく、防汚性に優れたレンズを製作できた。
【0091】
実施例4:撥水撥油防汚性ガラスの製造(4)
実施例1と同様の方法を用いて表面に撥水撥油防汚性反射防止膜を形成したPDP(プラズマディスプレイパネル)のフェイスプレートを製作し、テスト使用してみたが、指紋の付着がほとんど無く、さらに室内の蛍光灯等がフェイスプレート表面へ写り込むのを効率よく低減でき、視認性を大幅に向上できた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、撥水性、撥油性及び防汚性に加え、耐久性や耐候性が要求される建物や乗り物のガラス窓、太陽熱温水器、太陽電池及び温室等の太陽エネルギー利用装置の集光部材、及び光学機器及び表示装置の光透過性部材等に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0093】
10 撥水撥油防汚性ガラス
11 ガラス基材
11a 第1の微粒子が融着したガラス基材
11b 第1及び第2の微粒子が表面に結合固定されたガラス基材
12 第1の微粒子
12a ガラス基材の表面に融着した第1の微粒子
13 第2の微粒子
14 ゾル−ゲル法により形成されたシリカ被膜
15 反応基とフッ化炭素基とを有する化合物
15a 撥水撥油防汚性薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材の表面の少なくとも一部を覆うように該ガラス基材の表面に結合固定された第1の微粒子と、
前記第1の微粒子の表面の少なくとも一部を覆うように該第1の微粒子の表面に結合固定された、前記第1の微粒子よりも粒径の小さな第2の微粒子と、
前記第1及び第2の微粒子の表面に形成された撥水撥油防汚性薄膜とを有することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項2】
前記第1の微粒子の粒径が100nm以上5mm以下であり、前記第2の微粒子の粒径が前記第1の微粒子の粒径の1/100以上1/5以下であることを特徴とする請求項1記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項3】
前記ガラス基材、前記第1及び第2の微粒子がいずれも透明であり、前記第1の微粒子の粒径が400nm以下であることを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項4】
前記第1の微粒子が前記ガラス基材に融着可能な素材からなり、該ガラス基材の表面に融着していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項5】
前記第1の微粒子が、バインダを介して前記ガラス基材の表面に結合固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項6】
前記第2の微粒子が前記第1の微粒子に融着可能な素材からなり、該第1の微粒子の表面に融着していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項7】
前記第2の微粒子が、バインダを介して前記第1の微粒子の表面に結合固定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項8】
前記第1及び第2の微粒子が、ガラス、シリカ、アルミナ及びジルコニアからなる群より選択される材質からなるものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項9】
前記撥水撥油防汚性薄膜が単分子膜であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項10】
表面の臨界表面エネルギーが1mN/m以上3mN/m以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラス。
【請求項11】
溶媒に分散させた第1の微粒子を含む第1の分散液をガラス基材の表面に塗布し、該溶媒を蒸発させた後、前記ガラス基材の表面に前記第1の微粒子を結合固定する工程Aと、
溶媒に分散させた第2の微粒子を含む第2の分散液を前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に塗布し、該溶媒を蒸発させた後、前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に前記第2の微粒子を結合固定する工程Bと、
前記第1及び第2の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に撥水撥油防汚性薄膜を形成する工程Cとを有することを特徴とする撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項12】
前記工程Aにおいて、前記ガラス基材の表面に前記第1の微粒子を融着することを特徴とする請求項11記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項13】
前記第1の溶液が、溶媒の蒸発及び/又はその後の化学反応によりバインダを生成する第1のバインダ前駆体を含み、前記工程Aにおいて、前記バインダを介して前記ガラス基材の表面に前記第1の微粒子を結合固定することを特徴とする請求項11記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項14】
前記工程Bにおいて、前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に前記第2の微粒子を融着することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項15】
前記第2の溶液が、溶媒の蒸発及び/又はその後の化学反応によりバインダを生成する第2のバインダ前駆体を含み、前記工程Bにおいて、前記第1の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面にバインダを介して前記第2の微粒子を結合固定することを特徴とする請求項11から13のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項16】
前記第1及び/又は第2のバインダ前駆体が、ゾル−ゲル法により透明な金属酸化物を形成する金属ゾル前駆体であることを特徴とする請求項13及び15のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項17】
前記工程A及び/又はBの後で、結合固定されなかった前記第1及び/又は第2の微粒子を洗浄除去することを特徴とする請求項11から16のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項18】
前記工程Cにおいて、前記ガラス基材、前記第1及び第2の微粒子の表面官能基と反応して結合を形成する反応基とフッ化炭素基とを有する化合物を含む反応液を前記第1及び第2の微粒子が結合固定された前記ガラス基材の表面に接触させ、前記表面官能基と前記反応基との反応により形成された結合を介して該表面に結合固定された前記化合物の被膜を形成することを特徴とする請求項11から17のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項19】
前記反応基がアルコキシシリル基であり、前記反応液が、
(1)カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルおよびチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1または2以上の化合物、及び/又は
(2)ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、およびアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物を縮合触媒として含むことを特徴とする請求項18記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項20】
前記工程Cの後で、余分な前記反応液を洗浄除去することを特徴とする請求項18及び19のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスの製造方法。
【請求項21】
請求項3から10のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスを有するガラス窓。
【請求項22】
請求項3から10のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスを有する太陽エネルギー利用装置。
【請求項23】
請求項3から10のいずれか1項記載の撥水撥油防汚性ガラスを有する光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222199(P2010−222199A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72963(P2009−72963)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】