説明

撥水紙

【課題】下塗り剤を塗工することなく、少ない撥水剤塗工量でも熱による撥水性の低下が少ない撥水紙を提供することを目的とする。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面にワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の固形分質量比が99.9〜98.0:0.1〜2.0である塗工層を設けた撥水紙である。また、前記ポリアクリルアミド系高分子の濃度0.5質量%水性液の20℃におけるJIS Z 8803−1991に規定されるB型粘度が50〜2000mPa・sである撥水紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱による撥水性の低下が少ない撥水紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種包装用紙材、例えば段ボール、重袋、包装紙などは、輸送中における内容物の品質保全、安全輸送、強度劣化防止のため種々の処理、加工が行われている。特に青果物、水産物などの包装に用いる包装紙材においては、水分による強度劣化防止のため、撥水性を付与したものが広く使用されている。紙材料に撥水性を付与する手段としては、一般にワックス系エマルジョンからなる撥水剤をオンマシンコーターやオフマシンコーターで塗工したり、スプレーを用いて噴霧したりすることが広く行われてきた。
【0003】
近年、特にライナーにおいて古紙パルプの配合率が高まっており、こうしたライナーではワックス系撥水剤を塗工しても、古紙パルプ由来の填料や微細繊維の影響で撥水性が発現し難く、段ボールシートに加工する際の熱処理で、撥水性がさらに低下し易くなっている。その対策としてワックス系撥水剤の塗工量を増やすといった方法が挙げられるが、塗工量の増加によりコストアップとなるばかりでなく、塗工時のコーター汚れが顕著になり生産に支障をきたす場合もある。このため、古紙パルプの配合率が高い紙材料においても、少ない撥水剤塗工量で十分な撥水性を得る方法が求められている。
【0004】
こうした問題の解決方法として、正電荷のコロイダルシリカ水分散体を塗工した紙表面にアニオン性撥水剤を塗工する方法(特許文献1)や、カチオン性共重合体の4級化合物とポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂からなる混合液を下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献2)や、カチオン性共重合体とカルボン酸含有のポリアミドあるいはアルキルケテンダイマーからなる混合液を下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献3)や、アニオン性モノマーと疎水性モノマーを重合させたアクリル系ポリマー乳化物を下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献4)や、特定のアニオン性高分子分散剤存在下で疎水性ビニルモノマーを乳化重合した乳化物を下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献5)などが提案されている。
【0005】
これらの方法は、古紙パルプの配合率が高い紙材料においても、少ない撥水剤塗工量で十分な撥水性を得ることができるが、いずれも下塗り剤を塗工、乾燥後に撥水剤を塗工、乾燥するもので、撥水性付与のために片面当り2回以上の塗工が必要となり、製造が煩雑となるといった問題がある。特に片面当り1回の塗工しかできない製造設備では、下塗り剤を塗工、乾燥した下塗り紙を一度リールに巻き取った後、改めて塗工機にセットして撥水剤を塗工する必要があり、生産効率の低下が著しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−332157号公報
【特許文献2】特開2005−336663号公報
【特許文献3】特開2008−111208号公報
【特許文献4】特開2008−214815号公報
【特許文献5】特開2009−114585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下塗り剤を塗工することなく、少ない撥水剤塗工量でも熱による撥水性の低下が少ない撥水紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、紙支持体にワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子を特定の配合比率で含む塗工層を設けることで前記課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)紙支持体の少なくとも片面に塗工層を設けてなる撥水紙において、該塗工層のワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の固形質量比が99.9〜98.0:0.1〜2.0である撥水紙。
【0010】
(2)前記ポリアクリルアミド系高分子の濃度0.5質量%水性液の20℃におけるJIS Z 8803−1991に規定されるB型粘度が50〜2000mPa・sである(1)に記載の撥水紙。
【0011】
(3)前記塗工層中のワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の合計塗工量が0.1〜1.0g/mである(1)または(2)に記載の撥水紙。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下塗りが不要のため生産効率を低下させることなく、熱による撥水性の低下が少ない撥水紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は紙支持体の少なくとも片面にワックス系撥水剤(A)とポリアクリルアミド系高分子(B)とを含む塗工層を設けた撥水紙であって、(A)と(B)の配合比が特定比率となるように配合したことを特徴とする。
【0014】
本発明では、ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子との混合液を紙支持体に塗工する際に、ポリアクリルアミド系高分子の増粘作用によりワックス系撥水剤の紙支持体内部への浸透を抑制し、ワックス成分を紙支持体表面に定着させるため、熱による撥水性の低下を抑制することができる。このため、ワックス系撥水剤(A)とポリアクリルアミド系高分子(B)との固形分質量比(配合比率)は(A):(B)=99.9〜98.0:0.1〜2.0の範囲とする必要があり、好ましくは(A):(B)=99.8〜99.0:0.2〜1.0の範囲である。ポリアクリルアミド系高分子の配合比率が0.1質量%未満、ワックス系撥水剤が99.9質量%以上であると、熱による撥水性の低下を抑制する効果が不十分となる。逆に、ポリアクリルアミド系高分子の配合比率が2.0質量%以上、ワックス系撥水剤が98.0質量%未満であると、ポリアクリルアミド系高分子に起因する親水性が強まり、十分な撥水性が発現しない。
【0015】
本発明で使用されるポリアクリルアミド系高分子は主にアクリルアミド、メタアクリルアミドなどのモノマーを重合したポリマーであり、前記モノマー以外に、イオン性モノマー、疎水性モノマー、親水性モノマー、分岐構造を付与できるモノマー、架橋構造を付与できる多官能性モノマーなども共重合することができる。
【0016】
イオン性モノマーのうちアニオン性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸およびそれらの塩、またはビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸類およびそれらの塩等が挙げられる。
【0017】
また、カチオン性モノマーとしては、例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミンおよびそれらの塩、およびそれらの4級化物等が挙げられる。
【0018】
疎水性モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ドデシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジグリシジル(メタ)アクリルアミド、N−(4−グリシドキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N−(5−グリシドキシペンチル)アクリルアミド、N−(6−グリシドキシヘキシル)アクリルアミド等のN−(ω−グリシドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等を挙げることができる。
【0019】
親水性モノマーとしては、例えばジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、各種のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等を挙げることができる。
【0020】
分岐構造を付与できるモノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミドのような特定のN−置換アクリルアミド誘導体、あるいは(メタ)アリルスルホン酸およびその塩類等を挙げることができる。
【0021】
架橋構造を付与できるモノマーとしては、例えばメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルアクリルアミドなどの2官能型架橋性モノマー、あるいは1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリル酸ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンアクリレート、トリアクリルモルマール、ジアクリロイルイミド等の多官能型架橋性モノマー等が挙げられる。
【0022】
これらモノマーの重合については、特に制限はなく、溶液重合法、乳化重合法などの従来公知の各種方法により行うことができる。例えば、所定の反応容器に各種モノマー、分散剤および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、撹拌下、加温することにより得られる。モノマーの仕込み方法は同時重合、連続滴下重合等の従来公知の各種方法により行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、またはこれらと亜硫酸水素ナトリウムといった還元剤とを組み合わせた形のレドックス系重合開始剤等を使用することができる。また、前記ラジカル重合開始剤には、アゾ系開始剤を用いてもよい。反応温度は単一重合開始剤の場合では一般に30〜100℃であり、レドックス系重合開始剤の場合ではより低く、一般に5〜90℃である。分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸金属塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩等のイオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルグリセリンホウ酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。また、重合反応によって生成される高分子の分子量は、反応温度、反応時間で適宜調節することができ、ラジカル重合の場合、公知の連鎖移動剤の使用でも調節することができる。こうした分子量調節によりポリアクリルアミド系高分子水分散液の粘度を調節することができる。
【0023】
前記ポリアクリルアミド系高分子の水性液のB型粘度は、固形分質量濃度0.5%、温度20℃において50〜2000mPa・sの範囲が好ましく、より好ましくは100〜1500mPa・sの範囲である。ポリアクリルアミド系高分子水分散液のB型粘度が50mPa・s未満になると、塗工時にワックス系撥水剤が紙支持体内部へ浸透して撥水性の低下を抑制する効果が不十分となるおそれがある。逆に、粘度が2000mPa・sを超えると、ポリアクリルアミド系高分子とワックス系撥水剤とが均一に混合し難くなるおそれがある。なお、本発明におけるB型粘度とは、JIS Z 8803−1991記載の単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法によるものである。また、本発明において水性液とはポリアクリルアミド系高分子の水溶液または微粒子水分散液を意味する。
【0024】
本発明において使用される撥水剤は、ワックス系成分を分散質とする水性エマルジョンが好ましい。このエマルジョンにおいて、分散質となるワックス系成分は、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスやマレイン化石油樹脂などの変性ワックス成分などを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、ワックス系成分はロジン系樹脂あるいは不飽和高級アルコール等を含有しても差し支えない。なお、本発明において例示するポリエチレンワックスは重量平均分子量として1000〜10000、単独でフィルム状に成型できないものである。
【0025】
本発明において、ワックス系撥水剤に用いる分散剤には特に制限はなく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のポリオキシエチレン構造を有する化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアンモニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、アルキルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルピリジニウム硫酸塩、ステアラミドメチルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、アシルアミノエチルピリジニウム塩、アシルコラミノホルミルメチルピリジニウム塩等の第4級アンモニウム塩、ステアロオキシメチルピリジニウム塩、脂肪酸トリエタノールアミン、脂肪酸トリエタノールアミンギ酸塩、トリオキシエチレン脂肪酸トリエタノールアミン、セチルオキシメチルピリジニウム塩、p−イソオクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩等のエステル結合アミンやエーテル結合第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン、1−アセチルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリン、2−アルキル−4−メチル−4−ヒドロキシメチルオキサゾリン等の複素環アミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシドなどのアミン誘導体等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0026】
また、分散剤として保護コロイド作用を有する化合物、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子も使用可能である。該化合物としては、例えばポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニル2−ピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等の不飽和カルボン酸単位の含有量が26質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0027】
次に、本発明において使用するワックス系撥水剤の製造方法について説明する。本発明において使用するワックス系撥水剤を得るための製造方法は特に限定されないが、例えば、可溶化式による乳化分散、機械力式による乳化分散などを挙げることができる。可溶化式による乳化分散では、溶融したワックス系成分と界面活性剤とを混合して加温水を少しずつ注加していく。このとき、油系のW/O乳化状態から可溶化状態を経て水系のO/W乳化状態へと移り、ワックス系成分の微細粒子を析出する。可溶化式による乳化分散は水の注加以外に、非イオン性界面活性剤を用いて温度を上下することによっても行うことができる。機械力式による乳化分散では、ワックス系成分、界面活性剤および水を全量容器に入れて温度80〜90℃に加熱しながらホモミキサーで撹拌し、十分均一になった後ホモジナイザーで分散させる。
【0028】
本発明において、ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子とを含む塗工液には、通常の塗工紙分野で使用される顔料、接着剤等を必要に応じて適宜混合することができる。
【0029】
該顔料の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料や、密実型、中空型、貫通孔型などのプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料を例示できる。
【0030】
前記接着剤の具体例としては、例えば、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロール誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品等の水溶性接着剤、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系(共)重合体ラテックスなどを例示できる。
【0031】
また、塗工液には通常の製紙分野で使用される表面紙力剤、表面サイズ剤等を必要に応じて適宜混合することができる。表面紙力剤、表面サイズ剤の具体例としては、澱粉、酸化澱粉および澱粉変性物、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、スチレン−マレイン酸系共重合体、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、アルキルケテンダイマー等の水分散物等を例示できる。
【0032】
さらに、塗工液には染料、有色顔料、蛍光染料、酸化防止剤、老化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤等の各種助剤を必要に応じて適宜混合して使用することができる。
【0033】
ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子とを含む塗工液の固形分濃度は通常1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲である。
【0034】
ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子とを含む塗工液を紙支持体に塗工する設備としては、2本ロールサイズプレコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター、ブレードコーター、キャレンダー、チャンプレックスコーター、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、ダイスロットコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等から適宜選択することができる。
【0035】
本発明において、ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の合計塗工量は、片面当り0.1〜1g/mの範囲が好ましい。塗工量が0.1g/m未満であると、撥水性が不十分となるおそれがある。塗工量が1g/mを超えると、撥水性が飽和し、経済的にも好ましくない。
【0036】
本発明において使用できる紙支持体としては、ライナー、ボール紙などの板紙や、上質紙、中質紙、クラフト紙等が挙げられる。
【0037】
前記紙支持体に使用されるパルプとしては、例えば、一般に使用されている広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の漂白化学パルプや、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RPM)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプや、亜硫酸パルプ、古紙パルプなどが適宜混合使用される。古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙などが挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じてケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等を混合することができる。
【0038】
紙支持体に内添される填料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や、尿素−ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示できる。填料は2種類以上の混合使用も可能である。
【0039】
紙支持体にはパルプと填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。さらに、染料、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も用途に応じて適宜使用できる。
【0040】
紙支持体の抄紙条件については特に制限はなく、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機、傾斜式抄紙機、各種コンビネーション抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。また、本発明で上記抄紙工程から得られる紙支持体は単層のみならず、2層以上の抄き合せ紙でもよい。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もちろん、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。また、使用した薬剤の添加量は固形分換算の質量部を示す。
【0042】
実施例および比較例で得た撥水紙を以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0043】
(B型粘度)
ポリアクリルアミド系高分子の濃度0.5質量%水性液について、液温を20℃に調整した後、JIS Z 8803−1991記載の単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法でB型粘度を測定した。
【0044】
(撥水度)
得られた評価用撥水紙を23℃、相対湿度50%の環境下において24時間調湿後、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68:2000に規定される方法に準じて撥水度を評価した。また、撥水度の熱劣化を試験するため、定温乾燥機を用いて140℃の条件下で20分間熱処理した後、23℃、相対湿度50%の環境下において24時間調湿して、同様に撥水度を評価した。なお、撥水度の評価はR0からR10で判定され、Rの数字が大きいほど撥水性が良好であることを示している。
【0045】
<実施例1>
(ポリアクリルアミド系高分子水分散液の調製)
水に対してポリアクリルアミド系高分子水分散液(商品名:「ハイホルダーC503」、栗田工業社製)を撹拌しながら点滴して、最終的に固形分濃度0.5%のポリアクリルアミド系高分子水分散液を調製した。このとき、0.5%水分散液のB型粘度は990mPa・sであった。
(撥水処理塗工液の調製)
ワックス系撥水剤(商品名:「WR3936」、星光PMC社製)および前記0.5%ポリアクリルアミド系高分子水分散液をワックス系撥水剤:ポリアクリルアミド系高分子=99.5部:0.5部となるように混合し、最終的に固形分濃度が4%の撥水処理塗工液を調製した。
(撥水紙の作成)
未塗工のジュートライナー(坪量160g/m)の表面に、上記で得た撥水処理塗工液を固形分塗工量(ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の合計)が0.4g/mとなるようメイヤーバーで塗工後、熱風乾燥機にて130℃、15秒間乾燥して撥水紙を得た。
【0046】
<実施例2>
ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の配合比率を、ワックス系撥水剤:ポリアクリルアミド系高分子=99.9部:0.1部とした以外は実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0047】
<実施例3>
ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の配合比率を、ワックス系撥水剤:ポリアクリルアミド系高分子=98部:2部とした以外は実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0048】
<実施例4>
ポリアクリルアミド系高分子水分散液を「ハイモロックFA230(ハイモ社製)」とした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。該ポリアクリルアミド系高分子水分散液の濃度0.5%液のB型粘度は50mPa・sであった。
【0049】
<実施例5>
ポリアクリルアミド系高分子水分散液を「ハイホルダーA774(栗田工業社製)」とした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。該ポリアクリルアミド系高分子水分散液の濃度0.5%液のB型粘度が1800mPa・sであった。
【0050】
<実施例6>
水に対してポリアクリルアミド系高分子粉末(商品名:「アコパール」、MTアクアポリマー社製)を撹拌しながら添加し、ポリアクリルアミド系高分子の固形分濃度が0.5%の水溶液を調製した。このとき、0.5%水溶液の20℃におけるB型粘度は640mPa・sであった。ポリアクリルアミド系高分子を上記の0.5%水溶液とした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0051】
<実施例7>
ポリアクリルアミド系高分子水溶液を「ポリストロン1208F(荒川化学工業社製)」とした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。該ポリアクリルアミド系高分子水分散液の0.5%液のB型粘度が15mPa・sであった。
【0052】
<実施例8>
撥水処理塗工液の最終固形分濃度を0.5%とし、撥水処理塗工液を塗工する紙支持体を晒クラフト紙(坪量70g/m)とし、撥水処理塗工液の塗工量を0.05g/mとした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0053】
<実施例9>
撥水処理塗工液の最終固形分濃度を1%とし、撥水処理塗工液を塗工する紙支持体を晒クラフト紙(坪量70g/m)とし、撥水処理塗工液の塗工量を0.1g/mとした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0054】
<実施例10>
撥水処理塗工液の最終固形分濃度を7%とし、撥水処理塗工液の塗工量を1g/mとした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0055】
<実施例11>
撥水処理塗工液の最終固形分濃度を10%とし、撥水処理塗工液の塗工量を1.5g/mとした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0056】
<比較例1>
ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の配合比率を、ワックス系撥水剤:ポリアクリルアミド系高分子=99.95部:0.05部とした以外は実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0057】
<比較例2>
ワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の配合比率を、ワックス系撥水剤:ポリアクリルアミド系高分子=97部:3部とした以外は実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から明らかなように、実施例1〜11は下塗り剤を塗工することなく、少ない撥水剤塗工量でも熱による撥水性の低下を効果的に抑制することができた。一方、比較例1〜2はポリアクリルアミド系高分子の配合比率が本発明の特定する範囲外であるため、熱による撥水性の低下が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
紙支持体にワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の固形分質量比が99.9〜98.0:0.1〜2.0である塗工層を設けた本発明の撥水紙は、下塗り剤の塗工が不要で、熱による撥水性の低下が少なく、青果物、水産物等を包装する段ボール、重袋、包装紙等の各種包装用紙材として優れた適性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体の少なくとも片面に塗工層を設けてなる撥水紙において、該塗工層中のワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の固形分質量比が99.9〜98.0:0.1〜2.0であることを特徴とする撥水紙。
【請求項2】
前記ポリアクリルアミド系高分子の濃度0.5質量%水性液の20℃におけるJIS Z 8803−1991に規定されるB型粘度が50〜2000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の撥水紙。
【請求項3】
前記塗工層中のワックス系撥水剤とポリアクリルアミド系高分子の合計塗工量が0.1〜1.0g/mであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撥水紙。

【公開番号】特開2011−252245(P2011−252245A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125649(P2010−125649)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】