説明

撥水紙

【課題】下塗り剤を塗工することなく、熱による撥水性の低下が少なく、かつ防滑性に優れた撥水紙を提供する。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂水性分散物(A)、ワックス系撥水剤(B)、および顔料を含む表面処理剤層を設けた撥水紙であって、(A):(B)の固形分質量比が1〜50:99〜50となるように混合してなる混合物100質量部に対して顔料を0.5〜40質量部含有させた撥水紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下塗り剤を塗工することなく、熱による撥水性の低下が少なく、かつ防滑性に優れた撥水紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種包装用紙材、例えば段ボール、重袋、包装紙などは、輸送中における内容物の品質保全、安全輸送、強度劣化防止のため種々の処理、加工が行われている。特に青果物、水産物などの包装に用いる包装紙材においては、水分による強度劣化防止のため、撥水性を付与したものが広く使用されている。紙材料に撥水性を付与する手段としては、一般にワックス系エマルジョンからなる撥水剤をオンマシンコーターやオフマシンコーターで塗工したり、スプレーを用いて噴霧したりすることが広く行われてきた。
【0003】
ワックス系撥水剤で撥水性を付与した包装紙材は、ワックス成分に起因して滑りやすく、荷崩れが発生するといった問題があり、特にワックス系撥水剤を塗工した撥水ライナーでは、段ボールシートに加工する際の熱処理で撥水性が大きく低下するといった問題もあった。
【0004】
こうした問題の解決方法としては、コロイダルシリカを含有するアクリルエマルジョンとパラフィンワックスエマルジョンとの混合物を塗工する方法(特許文献1)や、特定のTg範囲の高分子ラテックスと撥水剤と表面強度改良剤の混合物を塗工する方法(特許文献2)などが提案されている。
【0005】
また、近年、特にライナーにおいて古紙パルプの配合率が高まっている。こうしたライナーでは、ワックス系撥水剤を塗工しても、古紙パルプ由来の填料や微細繊維の影響で撥水性が発現しにくく、段ボールシートに加工する際の熱処理で、撥水性がさらに低下しやすくなるといった問題がある。
【0006】
このため、前記方法だけでは十分な撥水性を得ることが難しくなってきており、こうした問題の解決方法として、正電荷のコロイダルシリカ水分散体を塗工した紙表面にアニオン性撥水剤を塗工する方法(特許文献3)や、カチオン性共重合体の4級化合物とポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂からなる混合液を下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献4)や、カチオン性共重合体とカルボン酸含有のポリアミドあるいはアルキルケテンダイマーからなる混合液を下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献5)や、アニオン性モノマーと疎水性モノマーを共重合させたアクリル系ポリマーエマルジョンを下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献6)や、特定のアニオン性高分子分散剤存在下で疎水性ビニルモノマーを乳化重合したエマルジョンを下塗り後、撥水剤を塗工する方法(特許文献7)などが提案されている。
【0007】
これらの方法は、古紙パルプの配合率が高い紙材料において十分な撥水性を得ることができるが、いずれも下塗り剤を塗工、乾燥後に撥水剤を塗工、乾燥するもので、撥水性付与のために片面当り2回以上の塗工が必要となり、製造が煩雑となるといった問題がある。特に片面当り1回の塗工しかできない製造設備では、下塗り剤を塗工、乾燥した下塗り紙を一度リールに巻き取った後、改めて塗工機にセットして撥水剤を塗工する必要があり、生産効率の向上が可能となる撥水紙の開発が強く要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−209396号公報
【特許文献2】特開平7−26495号公報
【特許文献3】特開2004−332157号公報
【特許文献4】特開2005−336663号公報
【特許文献5】特開2008−111208号公報
【特許文献6】特開2008−214815号公報
【特許文献7】特開2009−114585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は下塗り剤を塗工することなく、熱による撥水性の低下が少なく、かつ防滑性に優れた撥水紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂水性分散物、ワックス系撥水剤、および顔料を含む表面処理剤層を紙支持体に設けることで前記課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)紙支持体の少なくとも片面にポリオレフィン系水性樹脂(A)、ワックス系撥水剤(B)、および顔料を含む表面処理剤層を設けた撥水紙であって、(A):(B)の固形分質量比が1〜50:99〜50となるように混合してなる混合物100質量部に対して顔料を0.5〜40質量部含有させた撥水紙。
【0012】
(2)前記表面処理剤の塗工量が0.1〜2.0g/mである(1)に記載の撥水紙。
【0013】
(3)前記ポリオレフィン系水性樹脂(A)が、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルから選択された少なくとも1種のモノマーとオレフィン系化合物との共重合体である(1)または(2)に記載の撥水紙。
【0014】
(4)前記顔料が炭酸カルシウムである(1)〜(3)のいずれか1項に記載の撥水紙。
【0015】
(5)前記炭酸カルシウムの平均粒子径が0.5μm〜6μmである(4)に記載の撥水紙。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下塗りが不要のため生産効率を低下させることなく、熱による撥水性の低下が少なく、防滑性に優れた撥水紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は紙支持体の少なくとも片面にポリオレフィン系水性樹脂(A)、ワックス系撥水剤(B)、および顔料を含む表面処理剤層を設けた撥水紙であって、(A)、(B)および顔料の配合比が特定比率となるように配合したことを特徴とする。
【0018】
本発明で使用されるポリオレフィン系水性樹脂は撥水剤であるワックス成分との親和性が高く、成膜することでワックス成分を固定化するため、熱による撥水性の低下を抑制することができる。
【0019】
また、ポリオレフィン系水性樹脂(A)とワックス系撥水剤(B)との固形分質量比は(A):(B)=1〜50:99〜50の範囲であり、好ましくは(A):(B)=2〜20:98〜80の範囲である。より好ましくは、(A):(B)=5〜10:95〜90の範囲である。ポリオレフィン系水性樹脂が1質量部未満、ワックス系撥水剤が99質量部以上になると熱による撥水性の低下を抑制する効果が不十分となる。逆に、ポリオレフィン系水性樹脂が50質量部以上、ワックス系撥水剤が50質量部未満となると、ワックス量が少なく、十分な撥水性が発現しない。
【0020】
本発明で使用されるポリオレフィン系水性樹脂は、ワックス成分を固定化するため、塗工・乾燥時に十分成膜することが必要であり、最低造膜温度(MFT)は通常0〜80℃の範囲である。また、ポリオレフィン系樹脂は重量平均分子量として10000〜1000000、溶融温度100℃以上、単独でフィルム状に成型可能な化合物である。
【0021】
本発明で使用されるポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン系化合物のホモポリマー、コポリマーを用いることができる。該オレフィン系化合物のホモポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)等の炭素数2〜20のポリ−α−オレフィンを挙げることができ、オレフィン系化合物のコポリマーとしては、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、エチレン−1−オクテンコポリマー、エチレン−1−ヘキセンコポリマー等を挙げることができる。
【0022】
また、ポリオレフィン系樹脂として、前記オレフィン系化合物と他のモノマーを共重合させた共重合体樹脂も用いることができる。オレフィン系化合物と共重合可能なモノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸ビニル、酪酸ビニル、クロトン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、オレイン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等のビニルエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等のように分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物等のα,β−不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジラウリル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジステアリル等のマレイン酸アルキルエステル類等のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸アミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類等が挙げられる。オレフィン系化合物に共重合させるモノマーはこれらの中から単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂として用いる共重合体樹脂の具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
なお、本発明における水性樹脂は水性分散物または水溶性樹脂を意味する。
【0024】
また、前記ポリオレフィン系樹脂のうち、水性樹脂としての安定性の面から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体等が好適に用いられる。これらポリオレフィン系樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂水性分散物に用いる分散剤には特に制限はなく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤が挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のポリオキシエチレン構造を有する化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアンモニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、アルキルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルピリジニウム硫酸塩、ステアラミドメチルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、アシルアミノエチルピリジニウム塩、アシルコラミノホルミルメチルピリジニウム塩等の第4級アンモニウム塩、ステアロオキシメチルピリジニウム塩、脂肪酸トリエタノールアミン、脂肪酸トリエタノールアミンギ酸塩、トリオキシエチレン脂肪酸トリエタノールアミン、セチルオキシメチルピリジニウム塩、p−イソオクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩等のエステル結合アミンやエーテル結合第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン、1−アセチルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリン、2−アルキル−4−メチル−4−ヒドロキシメチルオキサゾリン等の複素還アミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシドなどのアミン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0026】
また、分散剤として保護コロイド作用を有する化合物、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子も使用可能である。該化合物としては、例えばポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニル2−ピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩、アクリル酸−無水マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸交互共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等の不飽和カルボン酸単位の含有量が26質量%以上のカルボキシル基含有ポリマーおよびその塩、ポリイタコン酸およびその塩、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明において使用するポリオレフィン系水性樹脂における樹脂含有率は、成膜条件、目的とする樹脂塗膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではない。しかし、コーティング組成物の粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%であることが好ましく、3〜50質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましく、7〜35質量%が特に好ましい。
【0028】
本発明において使用するポリオレフィン系水性樹脂の粘度は、各種添加剤との混合安定性が向上するという観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量が20質量%のときの、温度25℃、剪断速度20.40s−1において、500mPa・s未満であることが好ましい。5〜300mPa・sがより好ましく、10〜200mPa・sがさらに好ましく、10〜100mPa・sが最も好ましい。粘度が500mPa・sを超えると、粉体材料を安定に分散または混合するのが困難になる場合がある。
【0029】
次に、本発明において使用するポリオレフィン系水性樹脂の製造方法について説明する。本発明において使用するポリオレフィン系水性樹脂を得るための製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)、前記各種の分散剤、および水の混合物を、好ましくは密閉可能な容器中で撹拌および/または加熱する方法を採用することができる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂を撹拌および/または加熱するための容器は、液体を投入できる槽を備え、槽内に投入された分散剤と樹脂粉末ないしは粒状物との混合物を適度に撹拌できるものであればよい。そのような装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として公知公用の装置を使用することができる。中でも、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は、特に限定されないが、樹脂が媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でも十分分散化が達成されるため、高速撹拌(例えば1000rpm以上)は必須ではない。このため、簡便な装置によっても分散物の製造が可能である。
【0031】
この装置の槽内に前記ポリオレフィン系樹脂を投入し、好ましくは40℃以下の温度で撹拌混合する。次いで、槽内の温度を60〜200℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは100〜180℃の範囲に保ちつつ、好ましくは5〜120分間撹拌を続けることにより、ポリオレフィン系樹脂を十分に分散化させ、その後、好ましくは撹拌下で40℃以下に冷却することにより、分散物を得ることができる。このとき、槽内の温度が60℃未満である場合は、ポリオレフィン系樹脂の分散化が困難になる。反対に槽内の温度が200℃を超える場合は、ポリオレフィン系樹脂の分子量が低下するおそれがある。槽内の加熱方法としては槽外部からの加熱が好ましく、例えば、オイルや水を用いて槽を加熱する、あるいはヒーターを槽に取り付けて加熱を行うことができる。槽内の冷却方法としては、例えば、室温で自然放冷する方法や、0〜40℃のオイルまたは水を使用して冷却する方法を挙げることができる。
【0032】
なお、この後、必要に応じてさらにジェット粉砕処理を行ってもよい。ここでいうジェット粉砕処理とは、ポリオレフィン系水性樹脂のような流体を、高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士を衝突させたり、樹脂粒子と衝突板等とを衝突させたりすることで、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することを意味する。そのための装置の具体例としては、A.P.V.GAULIN社製のホモジナイザー、みずほ工業社製のマイクロフルイタイザーM−110E/H等が挙げられる。
【0033】
また、本発明において使用できるポリオレフィン系水溶性樹脂としては、オレフィン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体であり、疎水性不飽和モノマーであるオレフィン系不飽和モノマーとカルボキシル基含有不飽和モノマーまたはその塩を主要構成要素とする共重合体である。オレフィン系不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、イソオクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20程度の直鎖、環状または分岐状のオレフィン系不飽和モノマーが挙げられる。
カルボキシル基含有不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、ムコン酸、メサコン酸、グルタコン酸等のジカルボン酸または該無水物、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機塩基類の塩等が挙げられる。
【0034】
ポリオレフィン系水溶性樹脂に共重合可能なモノマーとしては、前記カルボキシル基含有不飽和モノマーと各種アルコールとのエステル、ハーフエステルが挙げられ、当該エステルの置換基としては、炭素数が1〜18程度の直鎖状、分岐状あるいは環状のアルキル基を例示でき、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0035】
本発明において使用できるポリオレフィン系水溶性樹脂の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、イソブチレン−アクリル酸共重合体、n−ブチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、プロピレン−マレイン酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体などが例示される。
【0036】
本発明において使用される撥水剤は、ワックス系成分を分散質とする水性エマルジョンが好ましい。このエマルジョンにおいて、分散質となるワックス系成分は、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスや、マレイン化石油樹脂などの変性ワックス成分などを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。なお、本発明において例示するポリエチレンワックスは重量平均分子量として1000〜10000、単独でフィルム状に成型できないものである。
【0037】
また、該撥水剤はポリオレフィン系水性樹脂と同様に公知の方法で水性エマルジョン化され、使用する分散剤について特に制限はなく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロースなどの水溶性高分子、マレイン化石油樹脂などの自己乳化性を有する高分子乳化剤などが何れも使用できる。
【0038】
本発明において使用される顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、コロイダルシリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料が挙げられ、これらの1種類を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、密実型、中空型、貫通孔型などのプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料を例示できる。
【0039】
前記顔料の配合量は、通常、ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の合計固形分100質量部に対して、固形分で0.5〜40質量部の範囲であり、好ましくは5〜30質量部の範囲であり、さらに好ましくは10〜20質量部の範囲である。
【0040】
前記顔料の配合量が0.5質量部未満であると防滑効果が不十分となり、逆に40質量部以上になると撥水性が低下しやすくなる。
【0041】
前記顔料のうち、コスト、取り扱いの面から、炭酸カルシウムが好適に用いられ、特に平均粒子径0.5〜6μmのものが好ましい。
【0042】
前記炭酸カルシウムの平均粒子径が0.5μm未満であると撥水性が低下しやすくなるおそれがあり、6μmを超えると炭酸カルシウムが紙表面に定着しにくくなるおそれがある。
【0043】
本発明における平均粒子径とは、マイクロトラック粒度分布計(日機装社製モデルMT3000)を使用して、水分散粒子の平均粒子径(d50%値)により測定したものである。
【0044】
また、炭酸カルシウムには軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの2種があり、軽質炭酸カルシウムは、消石灰スラリーに炭酸ガスを吹き込んで製造されたものや、特開2004−26639号公報のようにクラフト法によるパルプ製造工程で副生される緑液を、生石灰にて苛性化した際に生成する石灰スラッジから製造されたものなどがあり、これらを必要に応じて粉砕して使用することができる。重質炭酸カルシウムは、天然の石灰石を粉砕・分級する方法で調製することが勿論可能であるが、粉粒体として入手できる市販の重質炭酸カルシウムを必要に応じて粉砕・分級してこれに充当させることができる。ここで言う粉砕には、例えば、ロールミル、ジェットミル、乾式ボールミル、衝撃式粉砕機等の乾式粉砕による粉砕、湿式ボールミル、振動ミル、撹拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミル、アトライター、竪型サンドミル、横型サンドミル、ジェットミル等の湿式粉砕機による粉砕が挙げられ、これらの粉砕機を適宜組み合わせて使用する。また、分級方法としては、例えば、共震振動ふるい、ローヘッドスクリーン、電磁スクリーン等のふるい分け、ミクロンセパレーター、サイクロン等の乾式分級、デカンタ型遠心分離機、液体サイクロン、ドラッグ分級機等の湿式分級が挙げられ、これらの分級機を適宜組み合わせて使用する。
【0045】
ポリオレフィン系水性樹脂、ワックス系撥水剤および顔料を含む表面処理剤塗液には、通常の塗工紙分野で使用される接着剤、増粘剤等を必要に応じて適宜混合することができる。
【0046】
前記接着剤の具体例としては、例えば、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロール誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品等の水溶性接着剤、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルの重合体または共重合体ラテックス等のアクリル系(共)重合体ラテックスなどを例示できる。
【0047】
前記増粘剤の具体例としては、例えば、ポリカルボン酸、アクリル系(共)重合体などのアルカリ増粘タイプ、アクリル系高分子、ポリエチレンオキサイドなどの親水性ベースポリマーの両端に親油基を配した会合タイプ、カルボキシルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどの天然由来タイプ等を例示できる。
【0048】
また、表面処理剤塗液には通常の製紙分野で使用される表面紙力剤、表面サイズ剤等を必要に応じて適宜混合することができる。表面紙力剤、表面サイズ剤の具体例としては、澱粉、酸化澱粉および澱粉変性物、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリルアミド系重合体、スチレン−マレイン酸系共重合体、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、アルキルケテンダイマー等の水分散物等を例示できる。
【0049】
さらに、表面処理剤塗液には染料、有色顔料、蛍光染料、酸化防止剤、老化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤等の各種助剤を必要に応じて適宜混合して使用することができる。
【0050】
本発明においてポリオレフィン系水性樹脂、ワックス系撥水剤および顔料を含む表面処理剤の固形分濃度は通常1〜25質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲である。
【0051】
ポリオレフィン系水性樹脂、ワックス系撥水剤および顔料を含む表面処理剤を紙支持体に塗工する設備としては、2本ロールサイズプレコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター、ブレードコーター、キャレンダーによるニップコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、ダイスロットコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等から任意に選択することができる。
【0052】
本発明においてポリオレフィン系水性樹脂、ワックス系撥水剤および顔料を含む表面処理剤の固形分塗工量は、片面当り0.1〜2g/mの範囲が好ましい。固形分塗工量が0.1g/m未満であると撥水性が不十分となり、2g/mを超えると撥水性が飽和し、経済的に好ましくない。
【0053】
本発明において使用できる紙支持体としては、ライナー、ボール紙などの板紙や、上質紙、中質紙、クラフト紙等が挙げられる。
【0054】
前記紙支持体に使用されるパルプとしては、例えば、一般に使用されている広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、亜硫酸パルプ、古紙パルプなどが適宜混合使用される。古紙パルプとしては、段ボール古紙、雑誌古紙などが挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じてケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等を混合することができる。
【0055】
紙支持体に内添される填料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や、尿素・ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示できる。填料は2種類以上の混合使用も可能である。
【0056】
紙支持体にはパルプと填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。さらに、染料、pH調整剤、スライムコントロール剤、消泡剤、粘剤等の抄紙用添加助剤も用途に応じて適宜使用できる。
【0057】
紙支持体の抄紙条件については特に制限はなく、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機、傾斜式抄紙機、各種コンビネーション抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。また、本発明で上記抄紙工程から得られる紙支持体は単層のみならず、2層以上の抄き合せ紙でもよい。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もちろん、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部、および質量%を示す。また、使用した薬剤の添加量は固形分換算の質量部を示す。実施例および比較例で得た撥水紙を以下の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0059】
(撥水度)
得られた評価用撥水紙を23℃、相対湿度50%の環境下において24時間調湿後、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68:2000に規定される方法に準じて撥水度を測定した。また、撥水度の熱劣化を試験するため、定温乾燥機を用いて140℃の条件下で20分間熱処理した後、23℃、相対湿度50%の環境下において24時間調湿して、同様に撥水度を測定した。なお、撥水度の評価はR0からR10で判定され、Rの数字が大きいほど撥水性が良好であることを示している。
【0060】
(滑り角度)
得られた評価用撥水紙を23℃、相対湿度50%の環境下において24時間調湿後、JIS P 8147−1994で規定される摩擦係数試験法の傾斜法により滑り角度を測定した。なお、滑り角度の測定面は撥水処理剤の塗工面同士とした。
【0061】
(顔料の平均粒子径)
マイクロトラック粒度分布計(日機装社製モデルMT3000)を使用して、水分散粒子(顔料)の平均粒子径(d50%値)を測定した。
【0062】
<実施例1>
(撥水処理混合液の調製)
ポリオレフィン系樹脂水性分散物(商品名:「ザイクセンA」/エチレン−アクリル酸共重合体、住友精化社製)、ワックス系撥水剤(商品名:WR3936、星光PMC社製)および顔料(商品名:「FMT60」/重質炭酸カルシウム、ファイマテック社製、粒子径1.84μm)を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤:顔料=5部:95部:10部となるように混合し、最終的に固形分濃度が5%の表面処理剤塗液を調製した。
【0063】
(撥水紙の作成)
未塗工のジュートライナー(坪量160g/m)の表面に、上記で得た表面処理剤塗液を固形分塗工量が0.5g/mとなるようメイヤーバーで塗工後、熱風乾燥機にて130℃、15秒間乾燥して本発明の撥水紙を得た。
【0064】
<実施例2>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=10部:90部とした以外は実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0065】
<実施例3>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=2部:98部とした以外は実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0066】
<実施例4>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=20部:80部とした以外は実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0067】
<実施例5>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=1部:99部とした以外は実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0068】
<実施例6>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=50部:50部とした以外は実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0069】
<実施例7>
ポリオレフィン系樹脂水性分散物(商品名:「HA−1100」/エチレン−酢酸ビニル系共重合体、中央理化工業社製)、ワックス系撥水剤(商品名:「WR3936」、星光PMC社製)および顔料(商品名:「FMT60」/重質炭酸カルシウム、ファイマテック社製、粒子径1.84μm)を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤:顔料=5部:95部:10部となるように混合し、最終的に固形分濃度が5%の表面処理剤塗液を調製した。
上記表面処理剤塗液を用いた以外は実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0070】
<実施例8>
顔料の添加量を20部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0071】
<実施例9>
顔料の添加量を40部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0072】
<実施例10>
顔料をシリカ(商品名:「トクシール」、トクヤマ社製、粒子径17.36μm)とし、顔料の配合比を5部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0073】
<実施例11>
顔料をコロイダルシリカ(商品名:「スノーテックス XS」、日産化学社製、粒子径0.05μm)とし、顔料の配合比を0.5部とした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0074】
<実施例12>
表面処理剤塗液の最終固形分濃度を1%とし、表面処理剤塗液を塗工する紙支持体を晒クラフト紙(坪量70g/m)とし、表面処理剤塗液の固形分塗工量を0.1g/mとした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0075】
<実施例13>
表面処理剤塗液の最終固形分濃度を7%とし、表面処理剤塗液の固形分塗工量を1g/mとした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0076】
<実施例14>
表面処理剤塗液の最終固形分濃度を12%とし、表面処理剤塗液の固形分塗工量を1.8g/mとした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0077】
<実施例15>
顔料を粒子径5.33μmの軽質炭酸カルシウム(商品名:「TP123」、奥多摩工業社製)とした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0078】
<実施例16>
顔料を粒子径0.82μmの重質炭酸カルシウム(商品名:「FMT100」、ファイマテック社製)とした以外は、実施例1と同様にして本発明の撥水紙を得た。
【0079】
<比較例1>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=0.5部:99.5部とした以外は実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0080】
<比較例2>
ポリオレフィン系水性樹脂とワックス系撥水剤の配合比率を、ポリオレフィン系水性樹脂:ワックス系撥水剤=60部:40部とした以外は実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0081】
<比較例3>
顔料の添加量を0.1部とした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0082】
<比較例4>
顔料の添加量を50部とした以外は、実施例1と同様にして撥水紙を得た。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
紙支持体にポリオレフィン系樹脂水性分散物(A)、ワックス系撥水剤(B)、および顔料を含む表面処理剤層を設けた撥水紙であって、(A):(B)の固形分質量比が1〜50:99〜50となるように混合してなる混合物100質量部に対して顔料を0.5〜40質量部含有させた撥水紙は、下塗り剤の塗工が不要で、熱による撥水性の低下が少なく、防滑性にも優れており、水産加工品用ケース、青果物用ケース等に加工される用紙として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙支持体の少なくとも片面にポリオレフィン系樹脂水性分散物(A)、ワックス系撥水剤(B)、および顔料を含む表面処理剤層を設けた撥水紙であって、(A):(B)の固形分質量比が1〜50:99〜50となるように混合してなる混合物100質量部に対して顔料を0.5〜40質量部含有させたことを特徴とする撥水紙。
【請求項2】
前記表面処理剤の塗工量が0.1〜2.0g/mであることを特徴とする請求項1に記載の撥水紙。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂水性分散物(A)が、ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸、α,β−不飽和カルボン酸無水物、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルから選択された少なくとも1種のモノマーとオレフィン系化合物との共重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撥水紙。
【請求項4】
前記顔料が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水紙。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムの平均粒子径が0.5μm〜6μmであることを特徴とする請求項4に記載の撥水紙。

【公開番号】特開2012−36510(P2012−36510A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175043(P2010−175043)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】