説明

撥水耐油剤及び撥水耐油紙、並びに、撥水耐油紙の製造方法

【課題】高い安全性と共に、優れた撥水性及び耐油性を発揮しうる撥水耐油剤及び撥水耐油紙を提供すること。
【解決手段】炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体の配合量が0.1〜10質量%、及び、アニオン性ポリアクリルアミドの配合量が1〜10質量%であることを特徴とする撥水耐油剤。さらには、無サイズ紙に当該撥水耐油剤を処理することで製造されることを特徴とする撥水耐油紙およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水耐油剤及び撥水耐油紙、並びに、撥水耐油紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系化合物からなる撥水耐油剤で表面処理された撥水耐油紙は、優れた撥水性及び耐油性を兼ね備えているために、フライ、ハンバーガー等の食品用の包装紙等として広く使用されている。
【0003】
従来、撥水耐油剤に使用されているのは炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物である。
【0004】
しかし、撥水耐油紙中に残存する可能性のあるパーフルオロオクタン酸による人体及び環境への影響の懸念から、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水耐油剤の使用に規制がかかりつつあり、使用できない場面がある。
【0005】
そこで、例えば、国際公開第2005/090423号パンフレットには、炭素数が8未満のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物を使用した撥水撥油剤並びに撥水撥油紙が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/090423号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、炭素数が8未満のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水耐油剤は、安全性の点で問題はないが、撥水性及び耐油性の点で、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水耐油剤よりも性能が劣る。したがって、炭素数が8未満のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水耐油剤により表面処理された撥水耐油紙は、従来の撥水耐油紙よりも、撥水性及び耐油性が低いという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、高い安全性と共に、優れた撥水性及び耐油性を発揮しうる撥水耐油剤及び撥水耐油紙を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体、及び、アニオン性ポリアクリルアミドを含む撥水耐油剤、並びに、当該撥水耐油剤によって処理された原料又は表面処理された原紙からなる撥水耐油紙によって達成される。
【0010】
前記炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体はアニオン性であることが好ましい。
【0011】
前記パーフルオロアルキル基の炭素数は6であることが好ましい。
【0012】
本発明の撥水耐油剤における前記炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体の配合量は0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0013】
本発明の撥水耐油剤における前記アニオン性ポリアクリルアミドの配合量は1〜10質量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の撥水耐油剤は、炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物を実質的に含まないことが好ましい。
【0015】
前記炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物としては、パーフルオロオクタン酸又はその塩若しくはエステルが挙げられる。
【0016】
本発明の撥水耐油紙において、前記原紙は無サイズ紙であることが好ましい。
【0017】
本発明は、上記撥水耐油剤によって原料を処理する工程を含む撥水耐油紙の製造方法にも関する。
【0018】
本発明の製造方法は、上記撥水耐油剤によって原紙を表面処理する工程を更に含むことができる。
【0019】
前記原紙は無サイズ紙であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の撥水耐油剤及び撥水耐油紙は、高い安全性を備え、且つ、優れた撥水性及び耐油性を発揮することができる。
【0021】
すなわち、本発明では、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物を使用しないので、パーフルオロオクタン酸が生成することがない。したがって、人体及び環境に対して安全である。
【0022】
また、本発明の撥水耐油剤は、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系化合物からなる撥水耐油剤と同等又はそれ以上の撥水性及び/又は耐油性を発揮することができる。したがって、本発明の撥水耐油紙は、フライ、ハンバーガー等の良好な耐油性と耐水性が求められる食品用包装紙として好適に使用することができる。しかも、本発明の撥水耐油紙は透気抵抗度が30〜50秒の範囲となるため、通気性に優れており、特に、水蒸気の透過性に優れている。
【0023】
なお、ポリアクリルアミドは通常はバインダーとして使用されているが、一般に、バインダーは耐油性を阻害すると認識されている。しかし、本発明では、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体と共にアニオン性ポリアクリルアミドを併用することによって、予想外に耐油性を向上させることができる。しかも、ポリアクリルアミドは、ポリビニルアルコール及びデンプンのように使用時に別途加熱して溶解させる必要がないので、使用性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(撥水耐油剤)
本発明の撥水耐油剤は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体、及び、アニオン性ポリアクリルアミドを必須に含む。本発明において「撥水耐油剤」とは、そのままの状態で紙、合成紙、フィルム等の各種の基体の表面処理に使用可能な組成物を意味する。
【0025】
炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有する限り特に限定されるものではないが、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐フルオロアルキル基を有する含フッ素重合体が好ましく、更に、補外ガラス転移終了温度(Teg)が25℃以上である含フッ素重合体がより好ましい。炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物はアニオン性であることが好ましい。
【0026】
補外ガラス転移終了温度(Teg)とは、含フッ素重合体のエネルギー入力差−温度曲線(DSC曲線)における変曲点の1つである(JIS K7121−1987参照)。含フッ素重合体の補外ガラス転移終了温度は25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、35℃以上が更により好ましく、40℃以上が特に好ましい。なお、本明細書においては、アクリレートとメタクリレートを総称して、(メタ)アクリレートと表記する。(メタ)アクリルアミド等についても同様である。
【0027】
前記含フッ素重合体は、少なくとも、
(a)55〜99質量部の、一般式(I):
【0028】
【化1】

{式中、
Rfは、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐フルオロアルキル基を表し、
Aは、A基の隣の酸素原子と結合する炭素原子を有しており、必要に応じて一つ又は複数の酸素、硫黄及び/又は窒素原子を含むことができる二価有機基を表し、
11及びR12のうち一方は水素原子、他方は水素原子、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン原子、CFX12基(但し、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換又は非置換のベンジル基、或いは置換又は非置換のフェニル基を表す}で示される少なくとも1種の含フッ素(メタ)アクリレートモノマー、及び
(b)1〜45質量部の、一般式(II):
【0029】
【化2】

(式中、
20は、水素原子又はスルホン酸基含有基を表し、
21は、水素原子又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、
22は、水素原子又はメチル基を表す)で示される少なくとも1種の窒素含有モノマー
からなるものが好ましい。
【0030】
含フッ素(メタ)アクリレートモノマー(a)において、Rf基は、アルキル基の水素原子の2以上がフッ素原子に置換された基である。Rf 基は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。Rf 基の炭素数は、1〜6、例えば、2〜6、特に4又は6である。Rf基中のフッ素原子数は、(Rf基中のフッ素原子数)/(Rf基に対応する同一炭素数のアルキル基中の水素原子数)×100(%)で表現した場合、60%以上が好ましく、特に80%以上が好ましく、とりわけ実質的に100%であるのが好ましい。なお、以下において、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基をパーフルオロアルキル基と記す。Rf基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0031】
Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2等である。
【0032】
11又はR12はハロゲン原子であってよいが、好ましいハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子である。
【0033】
本発明におけるRf基を有する(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリレートのエステル残基中にRf 基が存在する化合物をいう。Rf基を有する(メタ)アクリレートは1種であっても2種以上であってもよい。
【0034】
含フッ素(メタ)アクリレートモノマー(a)としては、下記化合物が挙げられる。
CH2=CR’COOCH2CH2Rf、CH2=CR’COOCH2CH2N(CH2CH2CH3)CORf、
CH2=CR’COOCH(CH3)CH2Rf、CH2=CR’COOCH2CH2N(CH3)SO2Rf、
CH2=CR’COOCH2CH2N(CH3)CORf、CH2=CR’COOCH2CH2N(CH2CH3)SO2Rf、
CH2=CR’COOCH2CH2N(CH2CH3)CORf、CH2=CR’COOCH2CH2N(CH2CH2CH3)SO2Rf、
CH2=CR’COOCH(CH2Cl)CH2OCH2CH2N(CH3)SO2Rf。
【0035】
上記において、R’は、水素原子、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基、ハロゲン原子、CFX基(但し、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である)、シアノ基、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換又は非置換のベンジル基、或いは、置換又は非置換のフェニル基(特に、水素原子又はハロゲン原子又はメチル基)を示し、Rfは上記と同様の意味(Rfは、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐フルオロアルキル基を表す)を示し、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0036】
AはS(硫黄原子)又はN(窒素原子)を含まないことが好ましい。Aとしてはアルキレン基がより好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が特に好ましい。
【0037】
含フッ素(メタ)アクリレートモノマー(a)の具体例は、次のとおりである。
F(CF2)5CH2OCOCR’=CH2、F(CF2)4CH2CH2OCOCR’=CH2、F(CF2)6CH2CH2OCOCR’=CH2
H(CF2)6CH2OCOCR’=CH2、H(CF2)4CH2OCOCR’=CH2、H(CF2)4CH2CH2OCOCR’=CH2
F(CF2)2CH2CH2OCOCR’=CH2、(CF3)2 CFCH2CH2OCOCR’=CH2、(CF3)2 CF(CF2)3CH2CH2OCOCR’=CH2
【0038】
F(CF2)6SO2N(C3H7)CH2CH2OCOCR’=CH2、F(CF2)6CON(C3H7)CH2CH2OCOCR’=CH2
F(CF2)6CH2CH(CH3)OCOCR’=CH2、F(CF2)6(CH2)4OCOCR’=CH2
F(CF2)6SO2N(CH3)CH2CH2OCOCR’=CH2、F(CF2)6CON(CH3)CH2CH2OCOCR’=CH2
F(CF2)6SO2N(C2H5)CH2CH2OCOCR’=CH2、F(CF2)6CON(C2H5)CH2CH2OCOCR’=CH2
F(CF2)6CONHCH2CH2OCOCR’=CH2、(CF3)2CF(CF2)3(CH2)3OCOCR’=CH2
(CF3)2CF(CF2)3CH2CH(OCOCH3)OCOCR’=CH2、(CF3)2CF(CF2)3CH2CH(OH)CH2OCOCR’=CH2
上記式中、R’は水素原子又はハロゲン原子又はメチル基を示す。
【0039】
窒素含有モノマー(b)の例は、(b−1)スルホン酸基含有モノマー、及び、(b−2)アクリルアミドである。
【0040】
スルホン酸基含有モノマー(b−1)の例は、一般式(III):
【0041】
【化3】

{式中、
Bは、1〜5個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキレン基を表し、
Mは、水素又は1価のアルカリ金属又はNR30(R30は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(炭素数1〜10)又はヒドロキシアルキル基(炭素数1〜10)である)を表し、
21は、水素原子又は1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、
22は、水素原子又はメチル基を表す}である。
【0042】
スルホン酸基含有モノマー(b−1)において、Mがアルカリ金属である場合に、Mの例は、カリウム、ナトリウム、リチウムである。Mが第4級アンモニウム塩である例はN(CH3)4である。Bの例は、プロピレン、ブチレン、ペンテンである。
【0043】
スルホン酸基含有(b−1)の具体例は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−エチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドブタンスルホン酸等である。好ましくは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。
【0044】
含フッ素重合体は、単量体(a)及び(b)に加えて、他の単量体(c)からなるものでもよい。他の単量体(c)の例としては、エチレン、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル)、ハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニリデン)、アクリロニトリル、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルアルキルケトン、ビニルアルキルエーテル、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
含フッ素重合体の質量平均分子量は、例えば2000〜5000000、特に3000〜5000000、特別に10000〜1000000であってよい。含フッ素重合体の質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めたものである(ポリスチレン換算)。
【0046】
含フッ素重合体(特に、含フッ素共重合体)において、
単量体(a)の量は、60〜95質量部、例えば、65〜90質量部、
単量体(b)の量は、5〜40質量部、特に10〜30質量部、例えば15〜25質量部、
単量体(c)は単量体(a)及び(b)の合計100質量部に対して0〜20質量部、例えば0.1〜8質量部であってよい。
【0047】
前記含フッ素重合体は、溶液重合、乳化重合等の通常の重合方法によって製造可能である。また、重合反応の条件も任意に選択できる。
【0048】
重合は、少なくとも一種の開始剤を、例えば、モノマー全質量に対して0.1〜2.0質量%の割合で使用することで実施可能である。前記開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化スクシニル、過ピバル酸tert−ブチル等の過酸化物、又は、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾジカーボンアミド等のアゾ化合物を使用することができる。
【0049】
重合は、40℃から反応混合物の沸点までの温度範囲で行うことができる。重合は60〜90℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0050】
溶液重合は有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、N,N-ジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ハイドロフルオロエーテル類等が挙げられる。有機溶媒は単量体の合計100質量部に対して、50〜2000質量部、例えば、50〜1000質量部の範囲で用いることができる。
【0051】
乳化重合は水性媒体中で実施することができる。水性媒体とは、水を含み、揮発性有機溶媒の含有量が1質量%以下である液体を意味しており、具体的には水又は水を含む共沸混合物が好ましい。前記揮発性有機溶媒とは、常温で揮発するアルコール等の有機溶媒を意味しており、具体的には1×10Paにおける沸点(以下、単に「沸点」という。)が100℃以下である有機溶媒である。なお、水と共沸混合物を作る溶媒は該揮発性有機溶媒には含まれないものとする。
【0052】
前記含フッ素重合体は、乳化剤が存在しなくとも、自己乳化してエマルション(特に、水性エマルション)を形成可能であり、或いは、水に溶解して水溶液を形成可能である。必要に応じて、エマルションが乳化剤(乳化剤の量は、含フッ素重合体100質量部に対して、例えば0.01〜40質量部、特に0.1〜20質量部である。)を含んでいてもよい。
【0053】
前記含フッ素重合体は、例えば、ダイキン化学工業(株)製ユニダインTG−8111として市販されている。
【0054】
本発明の撥水耐油剤において、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体の濃度は、例えば、0.01〜50質量%であってよく、0.1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が更により好ましい。
【0055】
アニオン性ポリアクリルアミドは、アニオン性である限り特に限定されるものではないが、アクリルアミド系モノマーとアニオン性モノマー、並びに、任意の他のモノマーとの共重合により得られるものが好ましい。
【0056】
アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド及びメタクリルアミドが好ましい。また、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN−t−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミドもアクリルアミド系モノマーとして使用することもできる。
【0057】
アニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩類;アコニット酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1,2,4−トリカルボン酸等の不飽和トリカルボン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩類;1−ペンテン−1,1,4,4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、3−ヘキセン−1,1,6,6−テトラカルボン酸等の不飽和テトラカルボン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩類;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩類;ビニルホスホン酸、α−フェニルビニルホスホン酸等の不飽和ホスホン酸、そのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等の塩類等が挙げられる。これらを単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0058】
アニオン性モノマーの使用量は、アニオン性ポリアクリルアミド用のモノマーの合計量に対して0.01〜40質量%が好ましい。
【0059】
上記他のモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ビスアクリルアミド酢酸等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、ジアリルマレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の2官能性ビニルモノマー、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルアミン、トリアリルイソシアヌレート、及びトリアリルトリメリテート等の3官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリレート、テトラアリルアミン塩、及びテトラアリルオキシエタン等の4官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、及びトリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオンエート等の水溶性アジリジニル化合物、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の水溶性の多官能エポキシ化合物、並びに3−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシラン等のシリコン系化合物等が例示でき、これらを単独で使用することができ、又はその2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0060】
上記他のモノマーの使用量は、アニオン性ポリアクリルアミド用のモノマーの合計量に対して0〜5質量%とすることができる。
【0061】
アニオン性ポリアクリルアミドは、所定の反応容器に、構成成分であるモノマーを、例えば、その合計濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%となるように仕込み、公知慣用の重合開始剤を使用し、反応温度40〜100℃、1〜10時間の条件下で行うことによって合成することができる。もちろん、使用するモノマー成分の特徴に合わせて、モノマーを連続滴下する、あるいはモノマーを分割して添加する等により反応を行うこともできる。
【0062】
アニオン性ポリアクリルアミドの製造に使用する重合開始剤は、特に限定されるものではなく、公知慣用のものが使用される。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩、過ホウ素酸ナトリウム、過ホウ素酸カリウム、過ホウ素酸アンモニウム等の過ホウ素酸塩、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウム等の過炭酸塩、並びに過リン酸ナトリウム、過リン酸カリウム、過リン酸アンモニウム等の過リン酸塩等が例示できる。これらの開始剤は、単独又は2種以上併用してもよい。重合開始剤の使用量は、アニオン性ポリアクリルアミド用のモノマーの合計量に対して0.01〜5質量%の範囲が好ましい。
【0063】
これらの重合開始剤は、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤としても使用することができる。前記還元剤としては、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の有機アミン、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ化合物、並びに、アルドース等の還元糖が例示できる。
【0064】
アニオン性ポリアクリルアミドの分子量を調整する為、必要に応じて公知慣用の連鎖移動剤を使用してもよい。例えば、アリルアルコール、アリルアミン、(メタ)アリルスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のアリル化合物、メルカプトエタノール、チオグリコール酸及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、イソプロピルアルコール、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独又は2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、アニオン性ポリアクリルアミド用のモノマーの合計量に対して、0〜10質量%の範囲とすることができる。
【0065】
アニオン性ポリアクリルアミドは、固形分濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の水溶液であり、25℃における粘度(ブルックフィールド回転粘度計)が10〜15,000mPa・sである形態で存在することが好ましい。
【0066】
アニオン性ポリアクリルアミドのpHは、反応終了後、酸又はアルカリを用いて適宜調整することができる。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、並びに蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸が使用可能であり、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸化物、並びに、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン塩基が使用可能である。これらを単独又は2種以上を混合して使用してもよい。なお、アルカリの中では、アンモニアが好ましい。
【0067】
アニオン性ポリアクリルアミドは、ポリアクリルアミド中に存在するカルバモイル基を酸又はアルカリ等で加水分解したものであってもよい。
【0068】
上記加水分解に使用する酸又はアルカリとしては、既述したものを使用することができ、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらのなかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが、加水分解効率の点で好ましい。
【0069】
上記酸又はアルカリは、ポリアクリルアミドの重合反応終了後、或いは、反応時間を短縮するために95%以上重合反応終了時点で添加するのが好ましい。酸又はアルカリの使用量は、アニオン性ポリアクリルアミド用モノマーの合計量に対して0〜30質量%とすることができ、好ましくは2〜15質量%である。
【0070】
本発明で使用するアニオン性ポリアクリルアミドは、特開平5−302298号公報記載の方法に従って、尿素類の存在下に重合して得ることもできる。
【0071】
前記尿素類としては、尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、尿素を単独で使用することが経済的に好ましい。尿素類の使用量は、アニオン性ポリアクリルアミド用のモノマーの合計量に対して、5〜30質量%が好ましい。
【0072】
前記アニオン性ポリアクリルアミドは、例えば、星光PMC(株)製ST−5006及びST−5010として市販されており、容易に入手可能である。
【0073】
本発明の撥水耐油剤において、アニオン性ポリアクリルアミドの濃度は、例えば、0.01〜50質量%であってよく、0.1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が更により好ましい。
【0074】
本発明の撥水耐油剤は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体、及び、アニオン性ポリアクリルアミドの他に、他の任意成分を含むことができる。前記他の任意成分としては、例えば、既述した有機溶媒、水性媒体等が挙げられる。
【0075】
本発明の撥水耐油剤は、紙力剤、サイズ剤、消泡剤、浸透剤等の通常の紙の製造工程で用いられる公知の添加剤を、必要に応じて含んでもよい。公知の添加剤としては、例えば、デンプン、カチオン変性デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、酸化デンプン、酵素変性デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアミドアミン、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン変性体、尿素若しくはメラミンホルムアルデヒドの縮合物又は予備縮合物、メチロール−ジヒドロキシエチレン−尿素及びその誘導体、ウロン、メチロール−エチレン−尿素、メチロール−プロピレン−尿素、メチロール−トリアゾン、ジシアンジアミド−ホルムアルデヒドの縮合物等の樹脂、AKD、カチオン性アクリル樹脂、デンドリマー型アルコール系浸透剤、アセチレングリコール系浸透剤等の浸透剤;シリコーン系消泡剤、デンドリマー型アルコール系消泡剤、アセチレングリコール系消泡剤等の消泡剤が挙げられる。
【0076】
本発明の撥水耐油剤は任意の形態とすることができ、例えば、溶液、エマルション又はエアゾールの形態であってよい。
【0077】
本発明の撥水耐油剤は、人体及び環境への安全性の点で、炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物を実質的に含まないことが好ましい。ここで、「実質的に」とは、組成物の全質量の5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは1.0×10−6質量%以下を意味している。本発明の撥水耐油剤は炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物を全く含まないことが最も好ましい。
【0078】
前記炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物としては、パーフルオロオクタン酸又はその塩若しくはエステルが好ましい。パーフルオロオクタン酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩等が挙げられる。パーフルオロオクタン酸のエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル等が挙げられる。
【0079】
(撥水耐油紙)
本発明の撥水耐油紙は上記撥水耐油剤で処理された原料から構成されることができる。
【0080】
ここで、「原料」とは、紙の原料であり、天然繊維、化学繊維又はこれらの混合物を主成分とする。原料の代表例はパルプである。なお、紙力剤、サイズ剤、消泡剤、浸透剤等の紙の製造工程で通常使用される公知の添加剤等を必要に応じて含んでいてもよい。
【0081】
この態様の本発明の撥水耐油紙の製造方法は上記撥水耐油剤によって原料を処理(内添)する工程を含む。
【0082】
内添の場合、抄紙工程で紙層を形成する前のパルプスラリーに上記撥水耐油剤を添加する方法が好ましい。このとき、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体、及び、アニオン性ポリアクリルアミドを予め混合した混合物を添加してもよく、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体、及び、アニオン性ポリアクリルアミドを別体として調製しておき、これらを同時に添加してもよく、一方を先に添加し、その後に他方を添加してもよい。特に、アニオン性ポリアクリルアミドを添加後に、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体を添加すると、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を効率よくパルプへ定着させることができる点で好ましい。
【0083】
内添の場合、アニオン性ポリアクリルアミドの添加量は、パルプスラリー中の乾燥パルプ質量に対して0.05〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。0.05質量%未満であると十分な耐油効果が得られ難く、1.0質量%を超えると、薬剤コストの点や乾燥ドライヤーへの貼り付きなどが起こりやすい点で、好ましくない。また、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体の添加量は、パルプスラリー中の乾燥パルプ質量に対して0.3〜1.2質量%が好ましく、0.4〜0.7質量%がより好ましい。0.3質量%未満であると十分な耐油効果が得られ難く、1.2質量%を超えると、薬剤コストの点や乾燥ドライヤーからの剥離が起こりやすい点で、好ましくない。なお、内添の際にはポリアミドエポキシ樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、メラミン樹脂等のカチオン性の副資材を使用すると、本発明の性能を阻害することなくアニオン性ポリアクリルアミドをパルプへ定着させることができる。
【0084】
一方、本発明の撥水耐油紙は、原紙に上記撥水耐油剤を表面処理されることで得ることもできる。
【0085】
原紙は特に限定されるものではなく、撥水耐油紙に一般的に使用されるものを使用することができる。原紙は天然繊維、化学繊維又はこれらの混合物から構成されることができる。天然繊維としては、例えば、広葉樹、針葉樹等の木材繊維;麻、竹、藁、ケナフ、マニラ麻等の非木材繊維;等の天然パルプが挙げられる。化学繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル等の合成繊維;アセテート、レーヨン等の半合成繊維が挙げられる。また、カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプも使用できる。原紙としては、天然繊維が好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)等の木材繊維が好ましい。原紙は、一種類又は二種類以上の上記繊維を一般的な抄紙機で抄紙することによって製造することができる。抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機、又は、これらの組み合わせ等を使用することができる。
【0086】
原紙を構成する繊維は、必要に応じて、予め叩解されてもよい。叩解手段は特に限定されるものではなく、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、ビーター等の一般的な叩解装置を使用することができる。叩解度についても限定されるものではないが、100〜600mlC.S.F.が好ましく、300〜500mlC.S.F.がより好ましい。
【0087】
原紙には、湿潤時の強度を向上させるために湿潤紙力増強剤を添加することが好ましい。湿潤紙力増強剤は一種類でもよく、二種類以上を併用してもよい。湿潤紙力増強剤は、原紙の抄紙時に添加することが好ましい。湿潤紙力増強剤としては一般的なものを使用することができ、例えば、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂等を使用することができる。湿潤紙力増強剤は、例えば、原紙の0.02〜3質量%、好ましくは0.05〜1質量%の範囲で使用することができる。
【0088】
また、原紙には、乾燥時の強度を向上させるために乾燥紙力増強剤を添加してもよい。乾燥紙力増強剤は一種類でもよく、二種類以上を併用してもよい。乾燥紙力増強剤も、原紙の抄紙時に添加することが好ましい。乾燥紙力増強剤としては一般的なものを使用することができ、例えば、両性ポリアクリルアミド系樹脂等を使用することができる。乾燥紙力増強剤は、例えば、原紙の0.1〜3質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で使用することができる。
【0089】
原紙には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されている填料を添加してもよい。填料としては、例えば、クレー、カオリン、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、合成非晶質シリカ、ゼオライト等の無機系填料;スチレン系又は(メタ)アクリル系樹脂ピグメント、ポリエチレン等の有機系填料が挙げられる。填料は一種類でもよく、二種類以上を併用してもよい。填料は、原紙の抄紙時に添加することが好ましい。填料は、例えば、原紙の0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%の範囲で使用することができる。
【0090】
また、原紙には、上記以外にも各種添加剤が使用できる。例えば、染料、顔料、スライムコントロール剤、定着剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、消泡剤等を適宜使用することができる。
【0091】
原紙の坪量は特に限定されるものではないが、例えば、30〜250g/mとすることができる。30〜100g/mが好ましい。
【0092】
原紙は、サイズ剤で処理されたサイズ紙でもよく、サイズ剤で処理されていない未サイズ紙でもよいが、耐油性の点では、無サイズ紙であることが好ましい。
【0093】
サイズ剤は公知のものを適宜使用できる。例えば、原紙が酸性抄紙の場合はロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、石油樹脂サイズ剤、ワックスサイズ剤等を硫酸バンドでパルプに定着させることができる。原紙が中性抄紙の場合は、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸をカチオン性デンプンで定着させることができる。サイズ剤の使用量は、パルプの種類、灰分、サイズ剤の性能にもよるが、一般的にはパルプに対して0.5質量%以下の添加量が望ましい。
【0094】
この態様の本発明の撥水耐油紙の製造方法は上記撥水耐油剤によって原紙を表面処理する工程(外添)を含む。前記表面処理は、例えば、原紙に上記撥水耐油剤を塗工又は含浸させることによって実施可能である。塗工又は含浸は、オンマシン、オフマシンでのサイズプレス法、又は、コーティング法で行うことが好ましい。サイズプレス法は、類似のゲートロールコーター、メタリングサイズプレス、フィルムサイズプレス等を利用できる。コーティング法は、グラビアコーター、フレキソコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアコーター等のコーティングシステムを利用できる。
【0095】
この態様では、上記撥水耐油剤を原紙の表面に塗工又は含浸した後、室温又はそれ以上の温度で乾燥し、必要な場合には熱処理を施すことが好ましい。乾燥、熱処理等を行うことで、本発明の撥水耐油紙は、より優れた撥水性及び/又は耐油性を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の撥水耐油剤は、高い撥水性及び耐油性が求められる用途において好適に使用可能であり、例えば、繊維製品、皮革等の各種の基体の表面処理、並びに、撥水耐油紙の製造に好適に使用することができる。
【0097】
そして、本発明の撥水耐油紙は、優れた撥水性及び耐油性が求められる用途において好適に使用可能であり、例えば、防汚性能が求められる各種衣料や産業用資材、食品の包装材料等、種々の用途に用いられている。また、本発明の撥水耐油紙は通気性にも優れているので、例えば、鮮度保持剤包装紙、脱酸素剤包装紙等にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0098】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0099】
[原紙の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ80質量%、広葉樹晒クラフトパルプ20質量%を使用し、ダブルディスクリファイナーでカナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が370mlC.S.F.の原料パルプスラリーを調製した。この原料パルプスラリーに、硫酸アルミニウムを対パルプ質量あたり固形分濃度で0.5質量%添加し、さらにエピクロルヒドリン系湿潤紙力増強剤(星光PMC社製WS4002:固形分濃度12.5%)を0.15質量%添加して原料スラリーを調製した。この原料スラリーを長網抄紙機により坪量73g/m2になるように抄紙した。
【0100】
[実施例1]
表1に示すように、耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)及びアニオン性ポリアクリルアミド(星光PMC社製ST5006:固形分濃度30%)を、それぞれ、1.15質量%及び2質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。前記原紙を抄紙後に、同長網抄紙機に備え付けたサイズプレスコーターを用いて、前記撥水耐油剤を固形分2g/mの割合で原紙に塗布して得られた撥水耐油紙を実施例1とした。
【0101】
[実施例2]
表1に示すように、耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)及びアニオン性ポリアクリルアミド(星光PMC社製ST5010:固形分濃度40%)を、それぞれ、1.15質量%及び2質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。前記原紙を抄紙後に、同長網抄紙機に備え付けたサイズプレスコーターを用いて、前記撥水耐油剤を固形分2g/mの割合で原紙に塗布して得られた撥水耐油紙を実施例2とした。
【0102】
[比較例1]
表1に示すように、耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)及びノニオン性ポリアクリルアミド(ハリマ化成社製ハリコート1057:固形分濃度20%)を、それぞれ、1.15質量%及び2質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。前記原紙を抄紙後に、同長網抄紙機に備え付けたサイズプレスコーターを用いて、前記撥水耐油剤を固形分2g/mの割合で原紙に塗布して得られた撥水耐油紙を比較例1とした。
【0103】
[比較例2]
表1に示すように、耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)及びポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製VF−17)を、それぞれ、1.15質量%及び2質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。但し、ポリビニルアルコールは別途100℃に加熱した水に溶解させたものを混合した。前記原紙を抄紙後に、同長網抄紙機に備え付けたサイズプレスコーターを用いて、前記撥水耐油剤を固形分2g/mの割合で原紙に塗布して得られた撥水耐油紙を比較例2とした。
【0104】
[比較例3]
表1に示すように、耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)及びデンプン(日本コーンスターチ社製SK−20)を、それぞれ、1.15質量%及び2質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。但し、デンプンは別途100℃に加熱した水に溶解させたものを混合した。前記原紙を抄紙後に、同長網抄紙機に備え付けたサイズプレスコーターを用いて、前記撥水耐油剤を固形分2g/mの割合で原紙に塗布して得られた撥水耐油紙を比較例3とした。
【0105】
[比較例4]
表1に示すように、耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)を、1.15質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。前記原紙を抄紙後に、同長網抄紙機に備え付けたサイズプレスコーターを用いて、この撥水耐油剤を固形分2g/mの割合で原紙に塗布して得られた撥水耐油紙を比較例4とした。
【0106】
[耐油性評価]
3Mキット法(TAPPI・RC−338)に準じて実施例1〜2及び比較例1〜4の耐油性を数値評価した。数値が大きい程、耐油性に優れる。結果を表1に示す。
【0107】
[撥水性評価]
JIS P−8187に準じて実施例1〜2及び比較例1〜4のR値を測定した。数値が大きい程、撥水性に優れる。結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例1〜2及び比較例1〜4の結果から明らかなように、本発明の撥水耐油剤により表面処理された実施例1〜2の撥水耐油紙は耐油性と共に撥水性にも優れるものであった。一方、アニオン性ポリアクリルアミドに代えてノニオン性ポリアクリルアミドを含む撥水耐油剤を使用して得られた比較例1の撥水耐油紙は耐油性に優れるものの撥水性に劣るものであった。また、一方、アニオン性ポリアクリルアミドに代えて、それぞれ、ポリビニルアルコール又はデンプンを含む撥水耐油剤を使用して得られた比較例2又は3の撥水耐油紙も耐油性に優れるものの撥水性に劣るものであった。
【0110】
耐油剤のみを塗布した比較例4の撥水耐油紙は、耐油性及び撥水性が共に低く、特に撥水性が全く実用に耐えないものであった。
【0111】
[実施例3]
耐油剤(ダイキン工業社製TG−8111:固形分濃度20%)及びアニオン性ポリアクリルアミド(星光PMC社製ST5006:固形分濃度30%)を、それぞれ、5.75質量%及び10質量%の濃度となるように水と混合して、撥水耐油剤を調製した。針葉樹晒クラフトパルプ80質量%、広葉樹晒クラフトパルプ20質量%を使用し、ダブルディスクリファイナーでカナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が370mlC.S.F.の原料パルプスラリーを調製した。この原料パルプスラリーに、前記撥水耐油剤を対パルプ質量あたり固形分濃度で1.0質量%添加し、さらにポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(星光PMC社製WS4002:固形分濃度12.5%)を0.15質量%添加して原料スラリーを調製した。この原料スラリーを長網抄紙機により坪量73g/m2になるように抄紙して、撥水耐油紙を得た。実施例1と同様に撥水性及び耐油性を評価したところ、撥水性はR6であり、耐油性は10級であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体、及び、アニオン性ポリアクリルアミドを含む撥水耐油剤。
【請求項2】
前記炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体がアニオン性である、請求項1記載の撥水耐油剤。
【請求項3】
前記パーフルオロアルキル基の炭素数が6である、請求項1又は2記載の撥水耐油剤。
【請求項4】
前記炭素数6以下のパーフルオロアルキル基含有化合物を重合して得られる含フッ素共重合体の配合量が0.1〜10質量%である、請求項1乃至3のいずれかに記載の撥水耐油剤。
【請求項5】
前記アニオン性ポリアクリルアミドの配合量が1〜10質量%である、請求項1乃至4のいずれかに記載の撥水耐油剤。
【請求項6】
炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物を実質的に含まない、請求項1乃至4のいずれかに記載の撥水耐油剤。
【請求項7】
前記炭素数8のパーフルオロアルキル基含有化合物がパーフルオロオクタン酸又はその塩若しくはエステルである、請求項6記載の撥水耐油剤。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の撥水耐油剤によって処理された原料からなる撥水耐油紙。
【請求項9】
原紙に請求項1乃至7のいずれかに記載の撥水耐油剤を表面処理した撥水耐油紙。
【請求項10】
前記原紙が無サイズ紙である、請求項9記載の撥水耐油紙。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれかに記載の撥水耐油剤によって原料を処理する工程を含む撥水耐油紙の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれかに記載の撥水耐油剤によって原紙を表面処理する工程を含む撥水耐油紙の製造方法。
【請求項13】
前記原紙が無サイズ紙である、請求項12記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−219220(P2012−219220A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88398(P2011−88398)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(507369811)特種東海製紙株式会社 (11)
【Fターム(参考)】