説明

撥水離水防汚処理液およびそれを用いた撥水離水性防汚膜とその製造方法およびそれらを用いた製品

【課題】従来のフッ化炭素系の撥水撥油防汚化学吸着液は、撥水撥油防汚性に優れた被膜は得られるが、水滴転落角が高いため離水性が悪い(転落角が高い)という課題があった。
【解決手段】撥水と離水性に優れた防汚膜を提供するため、フッ化炭素系の撥水離水性防汚膜やアルキルシロキサン系の撥水離水性防汚膜に、さらに第3の物質として、離水性に優れた炭化水素基を主成分とする物質を添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水離水防汚処理液およびそれを用いた撥水離水性防汚膜とその製造方法およびそれらを用いて製造した各種製品に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、フッ化炭素系の撥水離水性防汚膜やアルキルシロキサン系の撥水撥油性防汚膜にさらに炭化水素基を主成分とする第3の物質を添加することにより、撥油性は多少劣るが撥水離水性に優れた防汚膜を製造する際に利用できる撥水離水防汚処理液、およびそれを用いて製造したと基材表面と化学結合した撥水離水性防汚膜およびその製造方法、およびそれらをもちいて製造した各種製品に関するものである。
【0003】
なお、ここでいう基材には、金属、半導体、セラミック、ガラス、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石等がある。また、撥水離水性防汚膜が形成された物品には、建物の窓ガラス、または自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラス等がある。さらに、それらを装着した製品には、建物、または乗り物、太陽エネルギー利用装置等がある。
【背景技術】
【0004】
一般にフッ化炭素基含有クロロシラン系の吸着液と非水系の有機溶媒よりなる化学吸着液を用い、液相で化学吸着して単分子膜状の撥水撥油防汚性化学吸着膜を形成できることはすでによく知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような溶液中での化学吸着単分子膜の製造原理は、基材表面の水酸基などの活性水素とクロロシラン系の吸着液のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−193056号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のフッ化炭素系の撥水撥油防汚化学吸着液は、撥水撥油防汚性に優れた被膜は得られるが、水滴転落角が高いため離水性が悪いという課題があった。
【0008】
そこで、前記課題解決の手段として提供される、第1の発明群は、撥水離水性に優れ、且つ耐摩耗性や耐水性に優れた撥水離水性防汚膜が形成可能な撥水離水防汚処理液である。
【0009】
第2の発明群は、撥水離水性に優れ、且つ耐摩耗性や耐水性に優れた防汚膜、及び撥水離水性に優れ、且つ耐摩耗性や耐水性に優れた防汚膜の製造方法である。
【0010】
第3の発明群は、前記撥水離水性防汚膜を形成した物品と、それら物品を装着した各種製品である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、撥水性と離水性に優れた防汚膜を提供するため、フッ化炭素系の撥水離水性防汚膜やジメチルシロキサン基等の官能基を含むアルキルシロキサン系の撥水離水性防汚膜に、さらに第3の物質として、離水性に優れた炭化水素基を主成分とする物質を添加することを最も主要な特徴とする。
【0012】
さらに詳しくは、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
また、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
【0013】
さらにまた、少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液を提供する。
また、少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、非水系有機溶媒とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
【0014】
また、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
また、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
【0015】
このとき、溶媒が非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにクロロシリル基、またはシアノシリル基、アルコキシシリル基を含むと、基材表面と共有結合で処理物質を固定できて都合がよい。
また、溶媒がシラノール縮合触媒または有機酸を含む非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むと、反応時間を短縮できて都合がよい。
【0016】
さらに、溶媒が水系溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むと、有機溶媒による環境汚染を低減する上で都合がよい。
さらにまた、水系溶媒に、アルコールおよび/または陽イオン界面活性剤を含めておくと、水系処理液の安定性を向上できて都合がよい。
【0017】
また、撥水離水性防汚膜として、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2とを含む撥水離水性防汚膜を提供する。
さらに、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含む撥水離水性防汚膜を提供する。。
さらにまた、少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2とを含む撥水離水性防汚膜を提供する。
また、少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含む撥水離水性防汚膜を提供する。
【0018】
また、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2とを含む撥水離水性防汚膜を提供する。
また、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含む撥水離水性防汚膜を提供する。
ここで、撥水離水性防汚膜の基材には、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石が利用できる。
【0019】
さらに、撥水離水性防汚膜の製造方法としては、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含む撥水離水性防汚膜の製造方法を提供する。
また、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含む撥水離水性防汚膜の製造方法を提供する。
【0020】
さらに、少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含む撥水離水性防汚膜の製造方法を提供する。
さらにまた、少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、非水系有機溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含む撥水離水性防汚膜の製造方法を提供する。
また、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含む撥水離水性防汚膜の製造方法を提供する。
【0021】
また、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含む撥水離水性防汚膜の製造方法を提供する。
このとき、溶媒が非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにクロロシリル基、またはシアノシリル基、アルコキシシリル基を含むと、基材表面に結合した撥水離水性防汚膜を製造できて都合がよい。
また、溶媒がシラノール縮合触媒または有機酸を含む非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むと、製造時間を短縮できて都合がよい。
また、溶媒が水系溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むと、環境への負荷を小さくできて都合がよい。
また、水系溶媒がアルコールおよび/または陽イオン界面活性剤を含むと、処理液の凝集分離を押さえ、長時間安定に処理できて都合がよい。
【0022】
なお、前記撥水離水性防汚膜の製造方法の基材として、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石が利用可能である。
さらにまた、この様な撥水離水性防汚膜や撥水離水性防汚膜の製造方法を用いれば、撥水離水防汚性に優れた物品を製造でき、さらに、それらを装着した撥水離水防汚に優れた製品をも提供できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明を用いれば、撥水撥油性で、且つ離水性に優れた防汚膜を提供できる効果がある。
【0024】
さらに、処理液の主要溶媒として、水系溶媒を用いれば、有機溶液の使用量を削減できることにより、環境負荷を大幅に低減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の撥水離水性防汚膜の概要を説明するために分子レベルまで拡大した概念説明図である。(実施例1)
【図2】図2は、実施例1と比較例1の水滴量に依存した転落格変化を示す。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0026】
前記第1の課題を解決するための手段として提供される第1の発明群は、
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒、
または、フッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒
または、ジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒
または、ジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、非水系有機溶媒
とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
【0027】
また、短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒
または、短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒
とを含む撥水離水防汚処理液を提供する。
【0028】
第2の発明群は、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させることにより、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2とを含む、
または、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させることにより、少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含む、
【0029】
または、少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させることにより、少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2とを含む、
または、少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、非水系有機溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させることにより、少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含む、
【0030】
または、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させることにより、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2とを含む
【0031】
または、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させることにより、少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含む
撥水離水性防汚膜を提供する。
【0032】
第3の発明群は、前記第2の発明群により製造された撥水離水性防汚膜を形成した物品と、それら物品を装着した製品を提供する。
【0033】
本発明の詳細を、以下、実施例を用いて具体的に説明するが、本願発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、ここでいう基材には、金属、半導体、セラミック、ガラス、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石等がある。また、撥水離水性防汚膜が形成された物品には、建物の窓ガラス、または自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラス等がある。さらに、それらを装着した製品には、建物、または乗り物、太陽エネルギー利用装置等がある。
【0034】
以下、一例として、まず、1番目の発明群の撥水離水防汚処理液とその製造方法について説明する。
次に、基材を、表面が親水性の透明基材の代表例であるガラス基板とし、前記処理液を用いた撥水離水防汚膜とその製造方法を詳細に説明する。
なお、本実施例においては、特に記載していない限り分子組成比はモル比を意味する。また、特に記載のない%は、重量%を意味する。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明の撥水離水性防汚膜の概要を分子レベルまで拡大して示したものである。
【0036】
図2は、本発明の実施例である撥水離水性防汚膜を形成したガラス板の転落角変化を比較例と一緒に示している。
【0037】
例えば、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質として、CF3−(CF2−(CH−SiCl3、炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質として、CH3−(CH2−SiCl3を、それぞれ0.01mol/Lの濃度(0.1〜0.001mol/L以下の濃度が好ましい。)になるようにヘキサデカンに添加して(この場合、フッ化炭素基を主成分とする物質と炭化水素基を主成分とする物質2の分子組成比は1:2になる。好ましくは、2:1〜1:10、より好ましくは、1:1〜1:5であった。)撥水離水防汚処理液を調整した。その後、さらに、クロロシロキサン基を主成分とする物質として、ClSi(OSiClCl(mは、0または整数、Cl基がメトキシ基であるアルコキシシリル基を主成分とする物質でも、被膜形成後空気中で水分を吸収して加水分解するので問題はなかった。)を添加した。
【0038】
次に、例えば自動車用窓ガラス(建物用窓ガラスや太陽電池、太陽熱温水器の保護ガラス等にも同様に使用できた。)に用いられる青板ガラス板をよく洗浄し、乾燥後、表面に前記撥水離水防汚処理液を塗布し1〜2時間反応させた。その後、表面に居残った余分な撥水離水防汚処理液をアルコールを用いて洗浄除去するかふき取れば、耐久性に優れ且つ撥水離水性に優れた撥水離水性防汚膜が形成できた。
【0039】
このとき、青板ガラス板表面は水酸基すなわち活性水素を多数含み、且つ吸着水で被われているので、前記ガラス板表面で三つの物質のSiCl基と前記水酸基や吸着水とが脱塩酸反応して、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質を主成分とする物質と、クロロシロキサン基を主成分とする物質が混合反応し、ポリシロキサン結合を含んだ状態で−SiO−を介して前記ガラス板表面に結合する。
【0040】
すなわち、図1に示すように、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質と、炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質を主成分とする物質と、クロロシロキサン基を主成分とする物質が混合反応し、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質は、フッ化炭素基を主成分とする物質1に、炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質は、炭化水素基を主成分とする物質2に、クロロシロキサン基を主成分とする物質は、ポリシロキサン結合を含んだ物質3にそれぞれ反応変化し、それぞれがシロキサン結合4を介して直接あるいは間接に前記ガラス板5表面に結合したフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3を含んだ耐久性に優れ且つ撥水離水性に優れた撥水離水性防汚膜6を形成できた。
【0041】
なお、この被膜の水滴接触角は、102.4°であった。また、水滴転落角は、50マイクロリットルで、8°であり、驚異的に低かった。
また、このとき、フッ化炭素基を主成分とする物質1や炭化水素基を主成分とする物質2は、クロロシロキサン基を主成分とする物質が混合反応してできた網目状のポリシロキサン結合7(シロキサン基を主成分とする物質3)で大部分が囲われているため、耐摩耗性も非常に高かった。
布を用いた加重600g/cmの摩耗試験でも、1万往復で水滴接触角は、100°を維持できた。
【実施例2】
【0042】
実施例1において、クロロシロキサン基を主成分とする物質を除いた他は同条件で試作を行うと、実用レベルではあったが、耐摩耗性は1/3程度まで劣化した。
また、被膜の水滴接触角は、やや高くなり、105°であったが、低転落角度は維持できた。
【0043】
(比較例1)
実施例1において、炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質を除いた他、同条件で試作を行うと、被膜の水滴接触角は、だいぶ高くなり、116°であったが、転落角が23度と大幅に高くなった。
以上の試作結果から、クロロシロキサン基を主成分とする物質の添加は、耐摩耗性の向上に効果が大きいことが判明した。
また、炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質の添加は、水滴転落角を小さくする効果が大きいことが判明した。
実施例1で作成した被膜と、比較例1で作成した被膜の水滴量と転落角度の関係を図2に示す。実施例1の被膜では、転落角度が大幅に改善できていることが判る。
【実施例3】
【0044】
実施例1において、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシリル基を主成分とする物質の代わりに、アルキルシリルキの代表例であるジメチルシリルキ基とクロロシリル基を主成分とする物質、例えばCH3−[Si(CHO]−SiCl3を用い、その他を同条件とした場合、水滴接触角は、101°となり、撥油性がやや劣ったが、その他はほぼ同様の結果であった。
【実施例4】
【0045】
実施例3において、クロロシリル基を主成分とする物質を除いた他は同条件で試作を行うと、被膜の水滴接触角は、やや高くなり、103°であったが、低転落角度は維持できた。なお、耐摩耗性は、実施例2と同様に1/3程度まで劣化した。
【実施例5】
【0046】
実施例1〜4において、クロロシリル基をシアノシリル基に置き換えて、同様の実験を行ってみたがたが、ほぼ同様の結果を得た。
【実施例6】
【0047】
実施例1〜4において、クロロシリル基を全てアルコキシシリルキ基に置き換えて、同様の実験を行ってみたがたが、反応性が悪く、反応時間が2時間以内では実用性のある被膜を形成できなかった。
そこで、さらにシラノール縮合触媒あるいは有機酸を、吸着剤の全体量の0.1%程度添加すると、反応時間が1〜2時間で実施例1〜5と同様に、実用性のある被膜を形成できた。
また、アルコキシシリルキ基の中でも、メトキシシリル基がもっと反応性が高く、量産性に優れていた。なお、この撥水離水防汚処理液は、塩素を含んでおらず、脱アルコール反応であるため、塩酸が発生することもなく普通の大気中での被膜形成が可能であった。
【実施例7】
【0048】
実施例6において、溶媒を水とし、アルコール(吸着剤の1乃至10%、より好ましくは3乃至6%。)および/または陽イオン界面活性剤(吸着剤の1乃至10%)を添加して吸着剤を分散しておくと、撥水離水防汚処理液のポットライフを数日にまで延長できた。
なお、陽イオン界面活性剤を添加しない場合には、吸着剤成分が数時間で凝集してしまった。
【実施例8】
【0049】
実施例6において、フッ化炭素基を主成分とする物質1の代わりに、
短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’として、
CF3−(CF2−(CH−Si(OCH33を用い
長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”として、例えば、下記化学式(化1)に示した側鎖にフッ化炭素基と炭化水素基を持つ有機含フッ素エーテル基または有機含フッ素ポリエーテル基およびメトキシシリル基を含む物質を用い、
【0050】
【化1】

分子組成比で1:1にして調整(好ましくは、5:1〜1:10、より好ましくは、3:1〜1:5であった。)し、その他を同条件とした場合、被膜の水滴接触角は、117°であった。また、水滴転落角は、50マイクロリットルのとき、9°であり、驚異的に低かった。
さらに、耐摩耗性は、実施例1乃至4に比べて9倍程度まで改善できた。
【実施例9】
【0051】
実施例8において、メトキシシロキサン基を主成分とする物質を除いた他は同条件で試作を行うと、被膜の水滴接触角は、やや高くなり、108°であり、低転落角度は維持できたが、やはり、耐摩耗性が1/2程度まで劣化した。
【実施例10】
【0052】
ガラス基材の代わりに、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石を用いてみたが、表面に活性水素を全く含まないプラスチック、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンを除き、撥水性がほぼ同様の撥水離水製膜を形成できた。
なお、表面に活性水素を全く含まないプラスチック、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンの場合でも、前もって、コロナ処理や酸素プラズマ処理を行い表面を親水性に加工しておけば、同様の処理が行え、ほぼ同様の被膜が形成できた。
【実施例11】
【0053】
前記実施例1〜9で処理されたガラスを、それぞれ建物の窓ガラスや自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラスに装着して水滴の付着状況を評価してみたが、装着角度が垂直の建物の窓ガラスはもとより、装着角度が水平に対して25°程度以上の自動車等の乗り物の窓ガラス、太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置のカバーガラスでは、50マイクロリットルの水滴は、滑り落ちてしまい全く残らなかった。
また、水滴接触角が最低でも100°以上あったので、撥油性であり汚れもほとんど付着しなかった。
さらに、乗った埃も、雨滴状の水をかけると、水滴と一緒に流れ落ちてきれいになった。
したがって、建物、および乗り物の雨天時の視認性の向上や、太陽エネルギー利用装置光利用効率の向上に効果があることが確認できた。
【0054】
なお、フッ化炭素基を主成分とする物質1を反応形成する物質として、一般には、以下のような物質が挙げられる。
CF3−(CF2n−(R)m−SiXpCl3-p
(但し、nは0または16以下の整数、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エチニル基、シリコン若しくは酸素原子を含む置換基、mは0又は1、XはH,アルキル基,アルコキシル基,シアノシリル基、含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基の置換基、pは0、1または2。さらに、Cl基は、CN基でも良い。)
【0055】
さらに、具体的には、以下に示す(1)-(11)が挙げられる。
(1) CF3CH2O(CH215SiCl3
(2) CF3(CH22Si(CH32(CH215SiCl3
(3) CF3(CH26Si(CH32(CH29 SiCl3
(4) CF3COO(CH215SiCl3
(5) CF3(CF27−(CH22SiCl3
(6) CF3(CF2−(CH22SiCl3
(7) CF3(CF2−(CH22SiCl3
(8) CF3(CF27−C64SiCl3
(9)[CF3(CF2(CH22SiCl
(10)[CF3(CF2(CH22SiCl
(11) CF3(CF27−(CH22SiCH3Cl
【0056】
また、炭化水素基を主成分とする物質2を反応形成する物質として、一般には、以下のような物質が挙げられる。
CH3−(CH2n−SiXpCl3-p
(但し、nは0または16以下の整数、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、エチニル基、シリコン若しくは酸素原子を含む置換基、mは0又は1、XはH,アルキル基,アルコキシル基,シアノシリル基、含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基の置換基、pは0、1または2。さらに、Cl基は、CN基でも良い。)
【0057】
さらに、具体的には、以下に示す(11)-(31)が挙げられる。
(21) CH3CH2O(CH215SiCl3
(22) CH3(CH22Si(CH32(CH215SiCl3
(23) CH3(CH26Si(CH32(CH29 SiCl3
(24) CH3COO(CH215SiCl3
(25) CH3(CH217SiCl3
(26) CH3(CH210SiCl3
(27) CH3(CH218SiCl3
(28) CH3(CH27−C64SiCl3
(29)[CH3(CH2SiCl
(30)[CH3(CH2SiCl
(31)CH3(CH2SiCH3Cl
【0058】
また、シロキサン基を主成分とする物質3として、反応後シロキサン結合を形成するSiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2等が利用できた。
一般には、Cl3Si(−OSiCl2−Cl(但し、mは整数)で表される化合物が利用できる。
【0059】
さらにまた、クロロシリル基の代わりにメトキシシリルキ基を主成分とする物質として、Si(OCHやSi(OC、SiH(OCH3、SiH2(OCH2等が利用できた。
一般には、(AO)Si(OSi(OA))m(OA)で表される物質(ここで、mは0または整数、Aはアルキル基を表す。)を用いても同様の結果が得られた。
【0060】
なお、クロロシリル基を主成分とする物質とアルコキシシリル基を主成分とする物質を混合して用いても良いことは言うまでもない。
【0061】
さらに、吸着剤として、クロロシリル基を含む物質を用いる場合には、非水系溶媒としては、含水率が100ppm以下なら実用に供し得るが、脱水した炭化水素系溶媒やフッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒を用いることが可能であり、特に沸点が50〜350℃のものが使用に適していた。
【0062】
具体的に使用可能なもとして、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、ノナン、工業ガソリン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等を挙げることができる。
【0063】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0064】
なお、クロロシリル基を主成分とする物質、あるいはアルコキシシリル基を主成分とする物質を添加した場合、フッ化炭素基と炭化水素基とクロロシシリル基を主成分とする物質みで作成した被膜に比べて、膜中のフッ化炭素基と炭化水素基とシリル基を主成分とする物質の密度を2〜3倍向上できた。
【0065】
また、上記実施例において、反応後シロキサン基を主成分とする物質3になる、クロロシリル基を主成分とする物質やアルコキシ基を主成分とする物質は、必ずしも添加しなくとも良いが、添加しておいた方が、添加してない場合に比べ、被膜強度を5〜10倍程度強化できた。なお、クロロシリル基を主成分とする物質またはアルコキシ基を主成分とする物質を含まない場合でも、耐摩耗性は多少劣ったが、実用レベルにはあった。
【0066】
また、シラノール縮合触媒として、一般に、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルチタン酸エステルキレート類、及び酸化チタンを利用できた。
添加量は、吸着剤の1/10〜1/10000程度でよい。より好ましくは、1/100〜1/1000であった。
【0067】
なお、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等の有機酸がシラノール縮合触媒と同様に、同様の濃度で利用できた。
【0068】
実施例1に於いて、未反応の余分なフッ化炭素基を主成分として含む物質1や炭化水素基を主成分として含む物質2、シロキサン基主成分として含む物質3を洗浄除去する(あるいはふき取り除去する。)工程を省いても、表面の水滴接触角が略100度で膜厚が数十ナノメートルの被膜が得られ、この条件でも、実用上透明度も全く問題なかった。
【0069】
また、水−アルコール溶媒に、さらに加える陽イオン界面活性剤としては、下記化学式(化2)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩があり、0.0005mol/Lになるように調製して水−アルコール−界面活性剤溶媒として使用できた。
この場合、処理液のポットライフが改善され、ほぼ同様の被膜が形成できた。
【0070】
【化2】

【0071】
なお、界面活性剤としては、中性乃至弱アルカリ性の界面活性剤であれば使用できるが、中でも調合処理液のpHが5乃至11になるものでないと高性能の被膜を形成できなかった。pHが5未満の場合、密度の高い被膜が形成できなかった。一方、pHが12を超えると、被膜の一部が破壊された。
【0072】
また、下記化学式(化3)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩の内、特に好ましいものは、Rの炭素数が12〜16であった。
【化3】

【0073】
さらにまた、実際に、建物の窓ガラス、電磁誘導調理器用天板、または自動車用窓ガラス、太陽電池および太陽熱温水器用カバーガラスに、テストピースとして試作したガラスを装着してみたが、何れも撥水離水防汚性に優れた性能が得られた。
【0074】
さらにまた、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”である有機含フッ素エーテル基または有機含フッ素ポリエーテル基およびアルコキシシリル基を含む長鎖物質には、下記式(化4または化5)が利用できた。また、耐光性は多少悪くなるが、下記式(化6)で示される物質が利用できたが、何れも平均分子量は1000〜5000程度のものが利用しやすかった。
【0075】
【化4】

【0076】
【化5】

【0077】
【化6】

【0078】
さらに具体的には、下記式(化7)や式(化8)で示される物質が利用できた。
【化7】

【0079】
【化8】

【0080】
さらにまた、シロキサン基を主成分とする物質として(AO)Si(OSi(OA)OA(Pは0〜10、Aは、メチル基やチル基のアルキル基、OAはClまたはNCOでも良い。)が挙げられるが、以下に示す物質(41)-(48)が使用しやすかった。
【0081】
(41)Si(OCH
(42)SiH(OCH3
(43)SiH2(OCH2
(44)(CHO)3Si(OSi(OCH2OCH
(45)Si(OC3
(46)SiH(OC3
(47)SiH2(OC2
(48)(HO)3Si(OSi(OC2OC
ここで、mは、1〜6整数を表す。
【0082】
なお、このようにして作成したガラス板は、乗用車に装着すると、停止していても雨滴が流れてしまい、走行中にはさらに風を直接受けるので、雨滴はほとんど飛散されてしまい、より安全運転できる。
また、本発明の撥水離水防汚性ガラスでは、耐摩耗性も非常に高いので、ワイパーブレードでこすられるウインドシールド用ガラス板としても適用可能であることは明らかである。
【0083】
さらにまた、以上では言及しなかったが、本発明は、自動車のサイドバックミラーに適用しても、雨天時の後方視認性を大幅に改善できた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
なお、本願発明の処理液で処理が可能な物品やそれを用いた製品は、何ら限定されるものではないが、一般に、表面が水に濡れる材料(表面は塗料などで塗装されていても良い。)に適用できる。
一方、表面が水に濡れない材料、例えば、合成樹脂類は、表面をプラズマ処理、あるいはコロナ処理して、親水性に加工すれば適用できる。
【0085】
具体的には、
(a)刃物の例
包丁、鋏、ナイフ、カッター、彫刻刀、剃刀、バリカン、鋸、カンナ、ノミ、錐、千枚通し、バイト、ドリルの刃、ミキサーの刃、ジューサーの刃、製粉機の刃、芝刈り機の刃、パンチ、押切り、ホッチキスの刃、缶切りの刃、または手術用メス等。
【0086】
(b)針の例
鍼術用の針、縫い針、ミシン針、畳針、注射針、手術用針、安全ピン等。
【0087】
(c)窯業製品の例
陶磁器製、ガラス製、セラミックス製またはほうろうを含む製品等。例えば衛生陶磁器(例えば便器、洗面器、風呂等)、食器(例えば、茶碗、皿、どんぶり、湯呑、コップ、瓶、コーヒー沸かし容器、鍋、すり鉢、カップ等)、花器(水盤、植木鉢、一輪差し等)、水槽(養殖用水槽、鑑賞用水槽等)、化学実験器具(ビーカー、反応容器、試験管、フラスコ、シャーレ、冷却管、撹拌棒、スターラー、乳鉢、バット、注射器)、瓦、タイル、ほうろう製食器、ほうろう製洗面器、ほうろう製鍋、各種コンクリート製品。
【0088】
(d)鏡の例
手鏡、姿見鏡、浴室用鏡、洗面所用鏡、自動車用鏡(バックミラー、サイドミラー)、ハーフミラー、ショーウィンドー用鏡、デパートの商品売り場の鏡等。
【0089】
(e)成形用部材の例
プレス成形用金型、注型成形用金型、射出成形用金型、トランスファー成形用金型、真空成形用金型、吹き込み成形用金型、押し出し成形用ダイ、インフレーション成形用口金、繊維紡糸用口金、カレンダー加工用ロールなど。
【0090】
(f)装飾品の例
腕時計、メガネフレームや真珠、真珠、ルビー、エメラルド、ガーネット、キャッツアイ、ダイヤモンド、トパーズ、ブラッドストーン、アクアマリン、サードニックス、トルコ石、瑪瑙、大理石、アメジスト、カメオ、オパール、水晶、ガラス等の宝石、さらに白金、金、銀、銅、アルミ、チタン、錫あるいはそれらの合金やステンレス製の指輪、腕輪、ブローチ、ネクタイピン、イヤリング、ネックレス等の貴金属装飾製品等。
【0091】
(g)食品成形用型の例
ケーキ焼成用型、クッキー焼成用型、パン焼成用型、チョコレート成形用型、ゼリー成形用型、アイスクリーム成形用型、オーブン皿、製氷皿等。
【0092】
(h)調理器具の例
鍋、釜、やかん、ポット、フライパン、ホットプレート、焼き物調理用網、油切り、タコ焼きプレート等。
【0093】
(i)紙の例:グラビア紙、撥水撥油紙、ポスター紙、高級パンフレット紙
【0094】
(j)樹脂の例
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、アラミド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリアセタール、ポリフェンレンオキサイド等
【0095】
(k)家庭電化製品の例
テレビジョン、ラジオ、テープレコーダー、オーディオ、CD、冷凍関係機器の冷蔵庫、冷凍庫、エアコン、ジューサー、ミキサー、扇風機の羽根、照明器具、文字盤、パーマ用ドライヤー等。
【0096】
(l)スポーツ用品の例
スキー、釣竿、棒高跳び用のポール、ボート、ヨット、ジェットスキー、サーフボード、ゴルフボール、ボーリングのボール、釣糸、魚網、釣り浮き等。
【0097】
(m)乗り物部品に適用する例
(1) ABS樹脂:ランプカバー、インストルメントパネル、内装部品、オートバイのプロテクター、(2) セルロースプラスチック:自動車のマーク、ハンドル(3) FRP(繊維強化樹脂):外板バンパー、エンジンカバー、(4)フェノール樹脂:ブレーキ(5) ポリアセタール:ワイパーギヤ、ガスバルブ、キャブレター部品(6) ポリアミド:ラジエータファン(7) ポリアリレート:方向指示レンズ、計器板レンズ、リレーハウジング(8) ポリブチレンテレフタレート:リヤエンド、フロントフェンダ(9) ポリアミノビスマレイミド:エンジン部品、ギヤボックス、ホイール、サスペンジョンドライブシステム(10)メタクリル樹脂:ランプカバーレンズ、計器板とカバー、センターマーク(11)ポリプロピレン:バンパー(12)ポリフェニレンオキシド:ラジエーターグリル、ホイールキャップ(13)ポリウレタン:バンパー、フェンダー、インストルメントパネル、ファン(14)不飽和ポリエステル樹脂:ボディ、燃料タンク、ヒーターハウジング、計器板
【0098】
(n)事務用品の例
万年筆、ボールペン、シャ−プペンシル、筆入れ、バインダー、机、椅子、本棚、ラック、電話台、物差し、製図用具等。
【0099】
(o)建材の例
屋根材、外壁材、内装材。屋根材として窯瓦、スレート瓦、トタン(亜鉛メッキ鉄板)など。外壁材としては木材(加工木材を含む)、モルタル、コンクリート、ケイカル板、窯業系サイジング、金属系サイジング、レンガ、石材、プラスチック材料、アルミ等の金属材料など。内装材としては木材(加工木材を含む)、アルミ等の金属材料、プラスチック材料、紙、繊維など。
【0100】
(p)石材の例
花コウ岩、大理石、みかげ石等。たとえば建築物、建築材、芸術品、置物、風呂、墓石、記念碑、門柱、石垣、歩道の敷石など。
【0101】
(q)楽器および音響機器の例
打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、木管楽器、金管楽器などの楽器、およびマイクロホン、スピーカなどの音響機器等。具体的には、ドラム、シンバル、バイオリン、チェロ、ギター、琴、ピアノ、フルート、クラリネット、尺八、ホルンなどの打楽器、弦楽器、鍵盤楽器、木管楽器、金管楽器などの楽器、およびマイクロホン、スピーカ、イヤホーンなどの音響機器。
【0102】
(r)繊維製品の例
帽子、コート、手袋、スーツ、ズボン、ベスト、呉服、毛皮、靴、鞄、手術着、作業着、レインコート、壁用クロス、カーテンなどのアパレル製品。
【0103】
(s)その他
魔法瓶、真空系機器、電力送電用碍子またはスパークプラグ等の撥水離水防汚効果の高い高耐電圧性絶縁碍子等からなる基材に適用できる。
【符号の説明】
【0104】

1 フッ化炭素基を含む化学吸着分子
2 炭化水素基を含む化学吸着分子
3 ポリシロキサン結合を含んだ物質
4 シロキサン結合
5 ガラス基材
6 撥水離水性防汚膜
7 網目状のポリシロキサン結合



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液。
【請求項2】
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液。
【請求項3】
少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液。
【請求項4】
少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、非水系有機溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液。
【請求項5】
少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液。
【請求項6】
少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含むことを特徴とする撥水離水防汚処理液。
【請求項7】
溶媒が非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにクロロシリル基、またはシアノシリル基、アルコキシシリル基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の撥水離水防汚処理液。
【請求項8】
溶媒がシラノール縮合触媒または有機酸を含む非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の撥水離水防汚処理液。
【請求項9】
溶媒が水系溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載撥水離水防汚処理液。
【請求項10】
水系溶媒がアルコールおよび/または陽イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項9記載の撥水離水防汚処理液。
【請求項11】
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2とを含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項12】
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項13】
少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2とを含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項14】
少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項15】
少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2とを含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項16】
少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3とを含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項17】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の撥水離水性防汚膜の基材が、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石であることを特徴とする撥水離水性防汚膜。
【請求項18】
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項19】
少なくともフッ化炭素基を主成分とする物質1と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項20】
少なくともジメチルシロキサン基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項21】
少なくともジメチルシリルキ基を主成分とする物質4と、炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、非水系有機溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項22】
少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項23】
少なくとも短鎖のフッ化炭素基を主成分とする物質1’と、長鎖のフッ化炭素基と炭化水素基を主成分とする物質1”と炭化水素基を主成分とする物質2と、シロキサン基を主成分とする物質3と、溶媒とを含む撥水離水防汚処理液に部材表面を接触させて反応させる工程を含むことを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項24】
溶媒が非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにクロロシリル基、またはシアノシリル基、アルコキシシリル基を含むことを特徴とする請求項18〜23のいずれか一項に記載の撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項25】
溶媒がシラノール縮合触媒または有機酸を含む非水系有機溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むことを特徴とする請求項18〜23のいずれか一項に記載の撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項26】
溶媒が水系溶媒であり、物質1〜4および1’と1”がさらにアルコキシシリル基を含むことを特徴とする請求項18〜23のいずれか一項に記載の撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項27】
水系溶媒がアルコールおよび/または陽イオン界面活性剤を含むことを特徴とする請求項26記載の撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項28】
請求項17〜27のいずれか一項に記載の撥水離水性防汚膜の製造方法の基材として、金属、半導体、セラミック、プラスチック、窯業製品、合成繊維、天然繊維、紙、皮革、毛皮、木材、竹または石を用いることを特徴とする撥水離水性防汚膜の製造方法。
【請求項29】
請求項17記載の撥水離水性防汚膜または請求項28記載の撥水離水性防汚膜の製造方法を用いて製造された物品を装着した製品。






【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−174001(P2011−174001A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39843(P2010−39843)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(503002662)
【Fターム(参考)】