説明

撥汚性用水性分散液、撥汚性軟質製品およびそれらの製造方法

様々な繊維、ヤーンおよび繊維製品を処理するための撥汚性用水性分散液を開示する。本分散液は公知のフルオロケミカルおよびシリコーン系繊維処理剤に比べて優れた防汚性を与える。本分散液は粘土ナノ粒子成分およびフルオロケミカルを含有して成っていて、それを公知方法で繊維、ヤーンおよび繊維製品に加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、2009年12月10日付けで出願した米国仮出願番号61/285425による優先権の利点を請求するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、粘土ナノ粒子と水性フルオロケミカル(fluorochemical)のコロイド状分散液を包含する撥汚性(soil repellency)用水性分散液に関する。また、本撥汚性用水性分散液による改質を受けさせておいた撥汚性軟質製品も開示し、この製品は結果として向上した防汚特性を示す。そのような軟質製品は繊維、ヤーンおよび繊維製品を含有して成り得る。本明細書では、また、撥汚性用水性分散液の製造方法および撥汚性軟質製品の製造方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
耐汚れ付着性の利点を得ようとして典型的に無機酸化物(即ちシリカ)のサブミクロン粒子をポリアミド繊維に加えることが従来行われてきたが、それらは耐久性が劣りかつ繊維製品の手触りが荒いと言った欠点に苦しんでいた。加うるに、シリカで処理された表面は特定の付着濃度の時に魅力的ではない白色の曇りを有する可能性もある。汚れる度合が低い軟質表面を生じさせようとしてフルオロケミカル樹脂エマルジョンが用いられてきた。
【0004】
表面処理用組成物の使用が特許文献1に教示されており、その組成物はフルオロケミカル樹脂と有機シロキサン共重合体のコロイド状ゾル分散液の混合物で構成されている。そのような混合物を用いると許容される撥汚性を達成する目的で軟質表面に付加させるフルオロケミカルの濃度を有意に低くすることができる。しかしながら、そのようなコロイド状シロキサン系フッ素機能拡張剤は前記軟質表面に荒い感触を与える可能性があり、これは好ましいことではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,225,403号
【発明の概要】
【0006】
環境およびコストが理由でフルオロケミカルの全体的使用量を低くすることが望まれている。このように、フルオロケミカルの使用量が低くても良好な防汚性を維持している撥汚性用組成物が必要とされていることは理解され得るであろう。
【0007】
従って、フルオロケミカルが示す有効性を更に拡張させかつ好ましい防汚性を維持しながら手触りがより柔らかい繊維をもたらすことができれば、これは好ましいことである。
【0008】
本明細書に開示する発明は、伝統的なフルオロケミカルと一緒にすることが可能な粘土ナノ粒子の水性分散液を包含する撥汚性用水性分散液を提供するものである。そのような粘土ナノ粒子を防汚配合物および撥水/油配合物に添加してもよい。この開示する分散液で処理した繊維は、従来のフルオロケミカルおよびシリコーンで処理された繊維に比べて、優れた耐汚れ付着性および乾燥した撥汚性特性を示す。処理された繊維はまた従来のフルオロケミカルまたはシリコーンで処理された繊維に比べて柔らかな手触りおよび良好な耐久性も示す。前記ナノ粒子がフルオロケミカル機能拡張剤として作用することで繊維の重量を基準にしたフッ素の濃度が低くても繊維が防汚特性を示すことが可能になることが
分かるであろう。また、この開示する水性分散液を製造する方法および処理された繊維を製造する方法も提供する。更に、様々な面の処理された繊維を用いて製造したヤーンおよび繊維製品、例えば布およびカーペットなども提供する。
【0009】
粘土ナノ粒子は、繊維表面を柔らかくすることに向けた撥水および撥油処理用フルオロケミカル組成物に入れるフルオロケミカル用の有効な希釈剤であり得る。具体的には、粘土ナノ粒子をフルオロケミカル配合物もしくはエマルジョンに入れると所定の防汚効果に必要なフルオロケミカルの量が驚くべきほど少なくなり、その結果として、従来の配合物に比べてフッ素濃度が実質的に低くても有効な撥汚性がもたらされる。繊維にこの開示する水性分散液を用いた処理を受けさせると、その粘土粒子は本質的に親水性ではあるが、それでも、疎水特性機能拡張剤として有効である(さもなければ、それはフルオロケミカルの濃度のみに依存すると予測されるであろう)。粘土ナノ粒子の水性分散液は特定の条件下でフルオロケミカルのみに期待される利点と同じ利点の多くを与えることが分かるであろう。
【0010】
1つの面として、少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分およびフルオロケミカルを含有して成る撥汚性用水性分散液を提供する。そのような粘土ナノ粒子成分は天然または合成のいずれであってもよい。前記フルオロケミカルは炭素−フッ素部分を含有する如何なる化学品を含有して成っていてもよい。
【0011】
別の面として、表面処理剤を含有して成る繊維を提供し、前記表面処理剤は、少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分およびフルオロケミカルを含有して成る。前記繊維は天然または合成繊維のいずれであってもよく、それには綿、絹、羊毛、レーヨン、ポリアミド、アセテート、オレフィン、アクリル樹脂、ポリプロピレンおよびポリエステルが含まれる。そのような繊維をヤーンに紡績するか或は繊維製品に加工してもよい。
【0012】
さらなる面として、少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分およびフルオロケミカルを含有して成る撥汚性用水性分散液で処理された少なくとも1種の繊維を含有して成る繊維製品を提供する。そのような繊維製品は織布またはカーペットのいずれであってもよい。そのようなカーペットには、カットパイル(cut pile)、撚り、織り、ニードルフェルト(needlefelt)、結節、房状、平織り、フリーズ、ベルベルおよびループパイルが含まれ得る。
【0013】
更に別の面として、撥汚性用水性分散液を製造する方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分を溶媒と接触させることで水性粘土ナノ粒子溶液を生じさせそして前記水性粘土ナノ粒子溶液とフルオロケミカルを接触させることで撥汚性用水性分散液を生じさせることを含んで成る。
【0014】
さらなる面として、この上で考察した撥汚性用水性分散液を用いて撥汚性繊維を製造する方法を提供する。そのような方法は、前記水性分散液を前記繊維に結果として繊維表面に前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が約200ppm(百万部当たりの部−繊維の重量当たりの粒子の重量)から約4000ppm OWF[約500ppmから約1500ppm OWF、約500ppmから約1000ppm OWF、約1000ppmから約1500ppm、約1000ppmから約2000ppm OWFおよび約1500ppmから約2000ppm OWFを包含]の量で存在しかつ前記フルオロケミカルが結果として前記繊維表面上の元素状フッ素含有量が約25ppmから約1000ppm OWF[約25から約500ppm OWF、約75ppmから約150ppm OWF、約75ppmから約200ppm OWF、約100ppmから約200ppm OWFおよび約140ppmから約150ppm OWFを包含]になるような量で存在するような量で加えることを含んで成る。次に、前記繊維を硬化させる(硬化は前記溶液を前
記繊維の上に運ぶ目的で用いた溶媒を乾燥で除去する工程を指し、これを場合により加熱段階を用いて行ってもよい)。同じ工程をヤーンおよび繊維製品にも適用することができる。
【0015】
定義
当業者にほとんど良く知られているであろうが、以下の定義を明瞭にする目的で示す。
ナノ粒子:1つの寸法の長さが100nm未満である多次元粒子。
OWF(繊維の重量を基準):溶媒を乾燥で除去した後に付着している固体の量。
WPU(ウエットピックアップ(Wet Pick−up)):溶媒を乾燥で除去する前の繊維に付着している溶液の重量。
【0016】
発明の詳細な説明
少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分およびフルオロケミカルを含有して成る撥汚性用水性分散液を開示する。前記粘土ナノ粒子成分は、下記の地質学的分類の鉱物を実質的に含有して成る粒子を指し得る:スメクタイト、カオリン、イライト、クロライトおよびアタパルジャイト。そのような分類には、モントモリロナイト、ベントナイト、パイロフィライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、ボルコンスコアイト、バーミキュライト、カオリナイト、ディッカイト、アンチゴライト、アナウキサイト、インデライト、クリソタイル、ブラバイサイト、白雲母、パラゴナイト、バイオタイト、コレンス石、苦土緑泥石、ドンバサイト、須藤石、ペンニン、セピオライトおよびパリゴルスカイトなどの如き具体的粘土が含まれる。そのような粘土ナノ粒子は合成もしくは天然のいずれであってもよく、それには合成ヘクトライトおよびRockwood Additives LtdのLaponite(商標)が含まれる。そのLaponite(商標)粘土ナノ粒子はLaponite RD(商標)、Laponite RDS(商標)、Laponite JS(商標)およびLaponite
S482(商標)であってもよい。
【0017】
フルオロケミカルには、少なくとも1種のフッ素含有重合体もしくはオリゴマーが分散もしくは乳化している液体のいずれも含まれ得る。そのような液体にはまたフッ素を含有しない他の化合物も入っていてもよい。この開示する組成物で用いるフルオロケミカル組成物の例には、アニオン性、カチオン性もしくは非イオン性のフルオロケミカル、例えば米国特許第4,606,737号に開示されているフルオロケミカルアロファネート、米国特許第3,574,791号および4,147,85号に開示されているフルオロケミカルポリアクリレート、米国特許第3,398,182号に開示されているフルオロケミカルウレタン、米国特許第4,024,178号に開示されているフルオロケミカルカルボジイミドおよび米国特許第4,540,497号に開示されているフルオロケミカルグアニジンなどが含まれる。この上に挙げた特許は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。また、有効成分である重合体または界面活性剤に結合しているフッ素化側鎖当たりのフッ素化炭素の数が6に等しいか或はそれ以下の短鎖フルオロケミカルも使用可能である。そのような短鎖フルオロケミカルの製造はフルオロテロマー原料を用いるか或は電気化学フッ素化で実施可能である。この開示する組成物で用いることができる別のフルオロケミカルは、DuPontがCapstone RCP(商標)として販売しているフルオロケミカルエマルジョンである。
【0018】
この開示する撥汚性用水性分散液の製造は様々な技術を用いて実施可能である。1つの技術は、少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分を水と接触させることで水性粘土ナノ粒子溶液を生じさせることを包含する。また、前記粘土を分散させる目的で低分子量のアルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノールなど)を含有する水性溶媒混合物を用いることも可能である。前記粘土ナノ粒子成分を溶液中に約0.01から約25重量%の量で存在させてもよく、それには、約1%から約20%、約0.05%から約15%
、約0.01%から約5%、約0.05%から約5%、約0.5%から約5%および約5%から約15%が含まれる。Laponite(商標)を粘土ナノ粒子として用いる場合、溶液中の濃度を約0.05から約25重量%にするが、それには、約0.05%から1%(重量/重量)および約5%から約15%(重量/重量)が含まれる。次に、前記水性粘土ナノ粒子溶液をフルオロケミカルと接触させることで撥汚性用水性分散液を生じさせる。その一緒にした分散液に存在する元素状フッ素の量(%)をこの分散液中にフッ素原子が約0.0001から約5重量%存在するような量にしてもよく、それには、約0.001%から約2%、約0.001%から約0.8%、約0.005%から約0.5%、約0.005%から約0.15%、約0.01%から約1%、約0.025%から約0.5%および約0.05%から約0.5%が含まれる。Capstone RCP(商標)をフルオロケミカルとして用いる場合、その濃度を当該繊維に加わるウエットピックアップパーセントに応じて約0.005%から約0.5%にするが、それには約0.005%から約0.15%が含まれる。水性分散液を生じさせようとする時、当該粘土ナノ粒子成分の重量パーセントの方がフッ素の重量パーセントよりも高いままであるようにすべきである。粘土ナノ粒子とフッ素の典型的な重量パーセント比を約5000:1から約2:1にするが、それには、約3000:1、約1500:1、約1000:1、約500:1、約100:1、約50:1、約25:1および約10:1が含まれる。
【0019】
この開示する撥汚性用水性分散液を様々な種類の繊維に表面処理剤として加えることができる。そのような繊維は天然もしくは合成いずれかの繊維であってもよく、それには、綿、絹、羊毛、レーヨン、ポリアミド、アセテート、オレフィン、アクリル樹脂、ポリプロピレンおよびポリエステルが含まれる。そのような繊維はまたポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロラクタム、ナイロン6,6またはナイロン6であってもよい。そのような繊維を紡績してヤーンにするか或は様々な繊維製品に織ることも可能である。ヤーンには、低配向ヤーン、部分配向ヤーン、完全延伸ヤーン、平延伸ヤーン、延伸加工ヤーン、エアジェット加工ヤーン、バルクト(bulked)連続フィラメントヤーンおよびスパンステープルが含まれ得る。繊維製品にはカーペットおよび布が含まれ得、カーペットにはカットパイル、撚り、織り、ニードルフェルト、結節、房状、平織り、フリーズ、ベルベルおよびループパイルが含まれ得る。別法として、この開示する撥汚性用水性分散液を繊維ではなくヤーンまたは繊維製品に加えることも可能である。
【0020】
この開示する撥汚性用水性分散液を繊維に当該技術分野で公知の様々な技術を用いて加えることができる。そのような技術には、本撥汚性用水性分散液を当該繊維に噴霧、浸漬、被覆、発泡、塗装、刷毛塗りおよびローリングで加えることが含まれる。本撥汚性用水性分散液をまた当該繊維から紡績したヤーンまたは当該繊維から製造した繊維製品に加えることも可能である。次に、それを加えた繊維、ヤーンまたは繊維製品を約25℃から約200℃(約150℃から約160℃を包含)の温度の熱で約10秒から約40分間(5分間を包含)の時間硬化させる。
【0021】
当該粘土ナノ粒子成分を加えた後、それが当該繊維、ヤーンまたは繊維製品の表面に約200ppmから約4000ppm OWFの量で存在するようにしてもよく、それには、約500ppmから約1500ppm OWF、約500ppmから約1000ppm
OWF、約1000ppmから約1500ppm OWF、約1000ppmから約2000ppm OWFおよび約1500ppmから約2000ppm OWFが含まれる。また、当該フルオロケミカルも結果として当該繊維、ヤーンまたは繊維製品の表面に存在する元素状フッ素含有量が約25ppmから約1000ppm OWFであるような量で存在させてもよく、それには、約25ppmから約500ppm OWF、約75ppmから約150ppm OWF、約75ppmから約200ppm OWF、約100ppmから約200ppm OWFおよび約140ppmから約150ppm OWFが含まれる。前記水性分散液を加える時、当該粘土ナノ粒子成分のOWFの方がフッ素のOW
Fよりも高いままであるようにすべきである。ナノ粒子とフッ素の典型的なOWF比を約80:1から約1.5:1の範囲にしてもよく、それには、約27:1、約20:1、約13:1、約10:1、約7.5:1および約5:1が含まれる。そのような表面濃度の繊維、ヤーンおよび繊維製品をASTM D6540で測定した時にそれらが示すデルタEは約15から約23である。
【0022】
この上に開示した撥汚性用組成物に追加的成分を添加してもよい。そのような成分には、シリコーン、光学的光沢剤、抗菌成分、抗酸化安定剤、着色剤、光安定剤、紫外線吸収剤、塩基染料および酸染料が含まれ得る。光学的光沢剤には、トリアジンタイプ、クマリンタイプ、ベンゾオキサゾールタイプ、スチルベンタイプおよび2,2’−(1,2−エテンジイルジ−4,1フェニレン)ビスベンゾオキサゾールが含まれ得、そのような光沢剤を重量で表して総組成物の約0.005%から約0.2%の量で存在させる。抗菌成分には銀含有化合物が含まれ、そのような抗菌成分を重量で表して総組成物の約2ppmから約1%の量で存在させる。
【0023】
前記ナノ粒子がフルオロケミカル機能拡張剤として働くことで繊維の重量を基準にしたフッ素の濃度が低くても当該繊維が防汚特性を示すことが可能になることが分かるであろう。
【実施例】
【0024】
以下は、この上に開示した撥汚性用水性分散液で処理したナイロン6,6の46オンスカットパイルカーペットの例であり、それを標準的なフルオロケミカルエマルジョンによる処理(比較)および処理なしと比較する。選択する代替のフルオロケミカル、粘土ナノ粒子、繊維および繊維製品が示す表面の化学的性質が異なる場合には、本明細書に記述する変数を若干調整する必要があるであろう。
【0025】
試験方法
ドラム汚れ(Drum soiling)をデルタEとして記録し、それの測定をASTM D6540およびD1776に従って実施する。
【0026】
以下の表1に、以下の様々なカーペットサンプルを示す:(1)様々な面の開示する撥汚性用組成物を用いて処理(サンプル1−12)、(2)標準的フルオロケミカルエマルジョン処理剤を用いて処理(サンプル13−比較)、および(3)未処理(サンプル14−未処理)。
【0027】
【表1】

【0028】
サンプル1−7全部の調製を同様な様式で実施したが、主な差は重量パーセントおよび生じさせるLaponite(商標)原液の種類およびサンプル4−7へのCapstone(商標)RCPの添加である。単に例示の目的で以下にサンプル7の調製方法を記述する:Laponite(商標)RDSが5重量%入っている原液の調製を水を撹拌しながら約38℃に加熱してこれに当該ナノ粘土を増分的に添加することで実施した。添加が終了した後の容器を冷撹拌プレートに移して、撹拌を室温で溶液が分散して透明になるまで継続した。ボトル内で6重量%の量のCapstone(商標)RCP、60重量%の量のLaponite(商標)分散液および残りの脱イオン水を一緒にした。その溶液を振とうし、8オンスの噴霧用ボトルの貯蔵槽の中に注ぎ込んだ後、廃棄用容器の中に詰めた。前記噴霧用ボトルを基部から約12インチの所に位置させたリングスタンドの上に留めた後、下向きの角度に向けた。噴霧のパターンを試験した後、中心をグリッド上に向けた。カーペットの風袋重量を得た後、そのカーペットを前記グリッドの上に前記カーペットの下部右隅が噴霧器に接触するように位置させた。次に、前記カーペットをこのカーペットの下方半分が噴霧されるように動かした。前記カーペットを再び下部左隅に続いて左半分そして次に上部左隅、上半分、上部右隅そして右半分が噴霧されるように動かした後、噴霧器を中心に向けることで完全な被覆を達成した。前記カーペットの表面に噴霧した後、そのカーペットを150℃の対流オーブンに入れて5分間硬化させた。前記の結果として得た分散液をサンプルに約5% WPUになるように噴霧すると、結果として、サンプル表面上の粘土ナノ粒子の量が1500ppm OWFになりかつ元素状フッ素の量が150ppm OWFになった。
【0029】
サンプル8−12の調製を同様に実施したが、但し結果としてもたらされた分散液をサンプルに10% WPUになるように噴霧すると結果としてサンプル表面上の粘土ナノ粒
子の量が約1000-2000ppm OWFになりかつ元素状フッ素の量が約75ppm−200ppm OWFになった。
【0030】
サンプル13の調製を13.3重量%のCapstone(商標)RCP溶液を用いて実施し、そして上述した方法と同様な噴霧パターンに従ってウエットピックアップが10%になるようにすると、結果として表面上の元素状フッ素の量が640ppm OWFになった。
【0031】
次に、これらのサンプルに汚れをASTM D6540に従って付けた。サンプル1−7および13の場合には、各ドラム充填物に未処理対照カーペット(“対照”)を少なくとも1片含めた。
【0032】
以下の表2および3に、サンプル1−14が示したデルタE値を示す。表2では、サンプル1−7および13が示したデルタE値をこの上のパラグラフに記述した対照が示したそれと比較する。表3では、サンプル8−12をフッ素のみで処理したカーペットであるサンプル13と比較する。
【0033】
【表2】

【0034】
サンプル1−7は、残留汚れが対照に比べて17%から31%の範囲の度合で低下したことを示している。
【0035】
【表3】

【0036】
サンプル8−12は、サンプル13に比べて、粘土ナノ粒子が有益であることを示しており、その結果として、デルタEがフッ素の量は3倍であるが粘土ナノ粒子を用いなかったカーペット(サンプル13)に比べてほぼ同じデルタEから1.0の低下がもたらされる。このように、この開示する撥汚性用水性分散液を用いるとドラム汚れの度合が同じまたは向上していることに加えて環境的により優しいカーペット用繊維を達成することができる。
【0037】
この開示する撥汚性用水性分散液、処理された繊維、ヤーンおよび繊維製品およびそれらの製造方法の様々な面をこの上に言及することで本発明を説明してきた。この上に示した詳細な説明を読んで理解した後の人に明確な修飾形および変形が思い浮かぶであろう。そのような修飾形および変形が本請求項の範囲内に入る限りにおいてそれらの全部が本発明に包含されると解釈されるべきであることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥汚性用水性分散液であって、
少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分、および
フルオロケミカル、
を含有して成る水性分散液。
【請求項2】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分がスメクタイト、カオリン、イライト、クロライトおよびアタパルジャイトから成る群より選択される請求項1記載の水性分散液。
【請求項3】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分がモントモリロナイト、ベントナイト、パイロフィライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、ボルコンスコアイト、バーミキュライト、カオリナイト、ディッカイト、アンチゴライト、アナウキサイト、インデライト、クリソタイル、ブラバイサイト、白雲母、パラゴナイト、バイオタイト、コレンス石、苦土緑泥石、ドンバサイト、須藤石、ペンニン、セピオライトおよびパリゴルスカイトから成る群より選択される請求項1記載の水性分散液。
【請求項4】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成成分である請求項1−3記載の水性分散液。
【請求項5】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトである請求項3記載の水性分散液。
【請求項6】
前記フルオロケミカルがフルオロケミカルアロファネート、フルオロケミカルポリアクリレート、フルオロケミカルウレタン、フルオロケミカルカルボジイミドおよびフルオロケミカルグアニジンから成る群より選択される請求項1記載の水性分散液。
【請求項7】
前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下である請求項1記載の水性分散液。
【請求項8】
前記フルオロケミカルがフルオロケミカルウレタンである請求項5記載の水性分散液。
【請求項9】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が分散液中に約0.01から約25重量%の量で存在する請求項1記載の水性分散液。
【請求項10】
前記フルオロケミカルが分散液中に存在するフッ素原子の量が約0.0001から約5重量%であるような量で存在する請求項1記載の水性分散液。
【請求項11】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトであり、それが分散液中に約0.05から約15重量%の量で存在しかつ前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下でありそしてそれが分散液中に存在するフッ素原子の量が約0.005から約0.5重量%であるような量で存在しかつ更に前記粘土ナノ粒子成分と前記フッ素の重量パーセント比が約5000:1から約2:1の範囲である請求項1記載の水性分散液。
【請求項12】
少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分およびフルオロケミカルを含有する表面処理剤を含有して成る繊維。
【請求項13】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分がモントモリロナイト、ベントナイト、パイロ
フィライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、ボルコンスコアイト、バーミキュライト、カオリナイト、ディッカイト、アンチゴライト、アナウキサイト、インデライト、クリソタイル、ブラバイサイト、白雲母、パラゴナイト、バイオタイト、コレンス石、苦土緑泥石、ドンバサイト、須藤石、ペンニン、セピオライトおよびパリゴルスカイトから成る群より選択される請求項12記載の繊維。
【請求項14】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成成分である請求項12−13記載の繊維。
【請求項15】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトである請求項13記載の繊維。
【請求項16】
前記フルオロケミカルがフルオロケミカルアロファネート、フルオロケミカルポリアクリレート、フルオロケミカルウレタン、フルオロケミカルカルボジイミドおよびフルオロケミカルグアニジンから成る群より選択される請求項12記載の繊維。
【請求項17】
前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下である請求項12記載の繊維。
【請求項18】
前記フルオロケミカルがフルオロケミカルウレタンである請求項15記載の繊維。
【請求項19】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が繊維表面に約200ppmから約4000ppm OWFの量で存在する請求項12記載の繊維。
【請求項20】
前記フルオロケミカルが結果として表面フッ素含有量が約25ppmから約1000ppm OWFになるような量で存在する請求項12記載の繊維。
【請求項21】
ポリアミドである請求項12−13または15−20の1項記載の繊維。
【請求項22】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトであり、これが繊維表面に約500ppmから約1500ppm OWFの量で存在しかつ前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下でありそしてそれが繊維表面に約75ppmから約200ppm OWFの量で存在する請求項12記載の繊維。
【請求項23】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトであり、これが繊維表面に約500ppmから約1000ppm OWFの量で存在しかつ前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下でありそしてそれが繊維表面に約75ppmから約200ppm OWFの量で存在する請求項12記載の繊維。
【請求項24】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトであり、これが繊維表面に約1000ppmから約1500ppm OWFの量で存在しかつ前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下でありそしてそれが繊維表面に約75ppmから約200ppm OWFの量で存在する請求項12記載の繊維。
【請求項25】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトであり、これが繊維表面に約1500ppmから約2000ppm OWFの量で存在しかつ前記フルオロケミカル
がフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下でありそしてそれが繊維表面に約75ppmから約200ppm OWFの量で存在する請求項12記載の繊維。
【請求項26】
請求項12、13、16−20および22−25の1項記載の繊維を含有して成る繊維製品。
【請求項27】
前記繊維がポリアミドである請求項26記載の繊維製品。
【請求項28】
請求項12、13、16−20および22−25の1項記載の繊維を含有して成るカーペット。
【請求項29】
前記繊維がポリアミドである請求項28記載のカーペット。
【請求項30】
更にASTM D6540を用いて測定したデルタEが約15から約23であることも包含する請求項28記載のカーペット。
【請求項31】
更にASTM D6540を用いて測定したデルタEが約15から約23であることも包含する請求項29記載のカーペット。
【請求項32】
撥汚性用水性分散液の製造方法であって、
a)少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分を溶媒と接触させることで水性粘土ナノ粒子溶液を生じさせ、そして
b)前記水性粘土ナノ粒子溶液をフルオロケミカルと接触させることで撥汚性用水性分散液を生じさせる、
ことを含んで成る方法。
【請求項33】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分をモントモリロナイト、ベントナイト、パイロフィライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、ボルコンスコアイト、バーミキュライト、カオリナイト、ディッカイト、アンチゴライト、アナウキサイト、インデライト、クリソタイル、ブラバイサイト、白雲母、パラゴナイト、バイオタイト、コレンス石、苦土緑泥石、ドンバサイト、須藤石、ペンニン、セピオライトおよびパリゴルスカイトから成る群より選択する請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成成分である請求項32−33記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトである請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記フルオロケミカルをフルオロケミカルアロファネート、フルオロケミカルポリアクリレート、フルオロケミカルウレタン、フルオロケミカルカルボジイミドおよびフルオロケミカルグアニジンから成る群より選択する請求項32記載の方法。
【請求項37】
前記フルオロケミカルがフルオロケミカルウレタンである請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分を溶液中に約0.01から約25重量%の量で存在させる請求項32記載の方法。
【請求項39】
前記フルオロケミカルを溶液中に存在するフッ素原子の量が約0.0001から約5重量%であるような量で存在させる請求項32記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が合成ヘクトライトであり、それを溶液中に約0.05から約15重量%の量で存在させかつ前記フルオロケミカルがフッ素化炭素をフッ素化側鎖当たりに有する数が6に等しいか或はそれ以下でありそしてそれを分散液中に存在するフッ素原子の量が約0.005から約0.5重量%であるような量で存在させかつ更に前記粘土ナノ粒子成分と前記フッ素の重量パーセント比が約5000:1から約2:1の範囲であるようにする請求項32記載の方法。
【請求項41】
請求項1−11の1項記載の撥汚性用水性分散液を用いて撥汚性繊維を製造する方法であって、
a)前記水性分散液を前記繊維に結果として前記少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分が繊維表面に約1000ppmから約2000ppm OWFの量で存在しかつ前記フルオロケミカルが結果として表面フッ素含有量が約25ppmから約500ppm OWFになるような量で存在するような量で加え、そして
b)前記繊維を熱で硬化させる、
ことを含んで成る方法。
【請求項42】
前記撥汚性用組成物を噴霧、浸漬、被覆、発泡、塗装、刷毛塗りおよびローリングから成る群より選択した技術を用いて加える請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記撥汚性用組成物を噴霧で加える請求項42記載の方法。
【請求項44】
撥汚性用水性分散液であって、
少なくとも1種の粘土ナノ粒子成分、
フルオロケミカル、および
シリコーン、光学的光沢剤、抗菌成分、抗酸化安定剤、着色剤、光安定剤、紫外線吸収剤、塩基染料および酸染料から成る群より選択される成分、
を含有して成る水性分散液。
【請求項45】
請求項44記載の水性分散液を含有して成る繊維。
【請求項46】
請求項45記載の前記繊維を含有して成る繊維製品。
【請求項47】
請求項45記載の前記繊維を含有して成るカーペット。

【公表番号】特表2013−513702(P2013−513702A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543309(P2012−543309)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059888
【国際公開番号】WO2011/072223
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】