説明

撥液、アルカリ耐性コーティング組成物及びパターン形成に適するコーティング

【課題】高アルカリ耐性の撥液コーティングの提供。
【解決手段】a)フッ素含有基を有する少なくとも1つの加水分解性シランの縮合生成物、b)少なくとも1つのカチオン重合性の有機樹脂、特に好ましくはエポキシ基を有する有機樹脂及びc)カチオン性イニシエーターを含むカチオン重合性の複合コーティング組成物により、アルカリ耐性、撥液性コーティングを有するサブストレートが得られる。該組成物は、パターン形成法における使用に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有基を含有する有機/無機重縮重合体ならびに有機樹脂を含むカチオン重合性複合系に基づくコーティング系、このコーティング組成物でコーティングされたサブストレート(substrates)、ならびにそのようなコーティングを有するサブストレートを調製する方法、特にパターン形成法に関する。
【背景技術】
【0002】
低い表面自由エネルギーを有するコーティング材料は、多くの理由から非常に関心をもたれている。低い表面自由エネルギーは、撥液(liquid-repellent)特性及び抗付着特性を提供する。そのため、種々の系(例えば、ペルフルオロカーボン鎖の存在に起因する低い表面自由エネルギーのポリマーとしてPTFEを含む系またはペルフルオロカーボン鎖含有ポリマーを含むアクリル系)が開発されている。ゾル−ゲルベースの系が、ペルフルオロ側鎖を有する加水分解性シランに基づき開発され、そしてグラジエントコーティング(gradient coating)が、これらのフルオロシランから製造されている。これらの材料は、一般的に、Si−O−Si結合の形成をもたらす熱処理によって硬化(cure)または硬化(harden)する。しかし、無機マトリクスに基づくこれらの系は、高いpH値でのSi−O−Si結合の低い安定性に起因してアルカリによる攻撃に対して非常に敏感である。
【0003】
架橋可能なアクリル結合が含まれる場合、光硬化性の系が得られる。しかし、アルカリ攻撃に対する感受性がなお高いようにコーティングが光硬化される場合、無機Si−O−Si結合(無機縮合)形成の際の架橋度は、むしろ乏しい。他の有機重合性化合物の添加は、この状況を変化させない。これは、安定な高度に縮合されたSi−O−Si結合含有マトリクスは、C.J.Brinker、G.W.Scherer:「Sol−Gel Science−The Physics and Chemistry of Sol−Gel−processing」、Academic Press、Boston、San Diego、New York、Sydney(1990)に記載されるように、一般的にそのようなポリマーに適用できない高温での硬化を必要とするからである。
【0004】
上記の系を含むフォトリソグラフィックプロセスは、乏しいアルカリ耐性も欠点としている。しかし、低い表面自由エネルギーコーティングに関して高いアルカリ耐性は、適切なアルカリ性クリーナーでその表面をクリーニングすることまたは高pHの流体と接触する場合でさえも撥液性表面を維持することを可能にするために決定的に重要である。この問題は、現在使用されている低表面自由エネルギー材料についてなお解決されていない。さらにまた、高レゾリューション及び/または高アスペクト比パターンを有する撥液コーティングは、知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、パターン形成法において用いられ得る高アルカリ耐性の撥液コーティングを有するサブストレートを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これら及び他の目的は、本発明に従い、a)フッ素含有基を有する少なくとも1つの加水分解性シランの縮合生成物、b)少なくとも1つのカチオン重合性有機樹脂、及びc)カチオン性イニシエーターを含むカチオン重合性複合コーティング組成物を用いることによって達成される。
【0007】
本発明に従う複合コーティング組成物の使用は、顕著な特性を有するコーティングをもたらす。特に、10を超えるpHを有する高度にアルカリ性の溶液において、これらのコーティングが60℃で数ヶ月安定であったという事実により証明されるように、このコーティング組成物を用いて得られるコーティングが非常に高いアルカリ耐性を有することが見出されたが、このことは全く予期されていなかったことである。さらに、撥液特性は、接触角の測定によって証明されるのとほぼ同じレベルで維持される。そのような化学的耐性は、従来技術に従うハイブリッド材料コーティング(hybrid material coating)により達成されていない。さらに、本発明のコーティング組成物が比較的高いシリケート含量を有していても、これらは、フォトリソグラフィーによるパターン形成のための光感受性特性も提供する。
【0008】
いずれの理論にも束縛されることを望まないが、本発明の驚くべき改善は、少なくとも一部は、カチオン性イニシエーターによって、カチオン重合性樹脂およびカチオン性縮重合プロセスを介して同時に形成される有機重合性骨格と無機シリケート骨格との組合せからもたらされていると考えられる。この樹脂のカチオン重合性基は、カチオン重合プロセスによって重合し得、これは、同時に、無機シリケートネットワーク内の縮合度も増強し得る。
【0009】
フッ化シランにより生じる、このコーティング組成物から調製されるコーティングの低い表面自由エネルギーは、優れた撥液特性をもたらす。明らかに、新しい型の相互侵入ネットワーク(IPN)を含むような非常に特徴的な構造が、本発明に従って、フッ化シランの縮合プロセス及びカチオン性イニシエーターによって増強される有機樹脂のカチオン重合プロセスを用いて形成され、そして他の系においては知られていなかったコーティングの驚くべき安定性をもたらす。フッ化シランは、縮合生成物の形態で、この有機樹脂に添加されることが非常に好ましい。フッ化シランがこの有機樹脂に、モノマーの形態で添加されると、これらのフッ化シランは、有機樹脂と混合せず、そして相分離した構造が形成される。一般的に、相分離構造は、フォトパターニング能力を有さない。
【0010】
硬化したコーティング組成物は、加水分解性シランから形成される有機的に(organically)改変されたシロキサン骨格(無機骨格)及びエポキシ基が用いられる場合、エーテル結合により結合するカチオン重合した樹脂により形成される有機骨格を含む。このように、硬化したコーティング組成物は、有機及び無機成分が組み合わされたハイブリッド材料を示す。
【0011】
本発明の重要な特徴は、カチオン性イニシエーターの存在、すなわち、コーティング組成物の形成及び硬化がカチオン性の重合及び/または縮重合反応を含むという事実である。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、ラジカル重合反応を含む系と比較して、驚異的に改善された化学的耐久性、特にアルカリ耐性は、より安定なネットワークを明らかにもたらす結合、代表的には、エポキシ基の場合のエーテル結合を導くカチオン重合反応の結果であり、その結果、得られるコーティングが高度にアルカリ性の溶液中でほとんど加水分解しないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、組成物1を用いて得ることができる高分解能かつ高アスペクト比のパターンを示す。
【図2】図2は、組成物1を用いて得ることができる高分解能かつ高アスペクト比のパターンを示す。
【図3】図3は、組成物1を用いて得ることができる高分解能かつ高アスペクト比のパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明をより詳細に記載する。
【0014】
本発明のコーティング組成物は、フッ素含有基を有する少なくとも1つの加水分解性シランの縮合生成物を含む。加水分解性シランは、少なくとも1つの加水分解性置換基を含む。
【0015】
フッ素含有基を有する少なくとも1つの加水分解性シランは、加水分解性置換基及び少なくとも1つのフッ素原子(一般的に炭素原子に結合している)を保有する少なくとも1つの非加水分解性置換基を有するシランである。簡単のために、これらのシランを、以下、しばしばフルオロシランと示す。本発明に従い用いられ得るフルオロシランの具体例は、本明細書中に参考として援用される、WO92/21729から得ることができる。
【0016】
このフルオロシランは、好ましくは、フッ素含有基を有する非加水分解性置換基を1つ含むのみであるが、フッ素原子を有さない非加水分解性置換基もさらに含み得る。フルオロシランのフッ素含有基を保有する少なくとも1つの非加水分解性置換基は、1つ以上の炭素原子に結合した、一般的には少なくとも1個、好ましくは少なくとも3個、そして特に少なくとも5個のフッ素原子を含み、そして一般的には30個以下、より好ましくは25個以下、そして特に、21個以下のフッ素原子を含む。これらの炭素原子が脂環式を含む脂肪族原子であることが好ましい。さらに、フッ素原子が結合した炭素原子は、好ましくは、少なくとも2つの原子(好ましくは、炭素及び/または酸素原子(例えば、C1−4アルキレンまたはC1−4アルキレンオキシ(例えば、エチレンまたはエチレンオキシ結合))である)によってケイ素原子から隔てられている。
【0017】
好ましいフッ素含有基を有する加水分解性シランは、一般式(I)のものである:
RfSi(R)(3−b) (I)
ここで、Rfは、炭素原子に結合した1〜30個のフッ素原子を有する非加水分解性置換基であり、Rは、非加水分解性置換基であり、Xは、加水分解性置換基であり、そしてbは、0〜2、好ましくは0または1そして特に0の整数である。
【0018】
一般式(I)において、加水分解性置換基X(これらは互いに同一でも異なっていてもよい)は、例えば、水素またはハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、アルコキシ(好ましくはC1−6アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、及びn−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、及びtert−ブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6−10アリールオキシ(例えば、フェノキシ))、アシルオキシ(好ましくはC1−6アシルオキシ(例えば、アセトキシまたはプロピオニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくはC2−7アルキルカルボニル(例えば、アセチル))、アミノ、好ましくは1〜12個、特に1〜6個の炭素原子を有するモノアルキルアミノまたはジアルキルアミノである。好ましい加水分解性の基は、ハロゲン、アルコキシ基、及びアシルオキシ基である。特に好ましい加水分解性の基は、C1−4アルコキシ基、特にメトキシ及びエトキシである。
【0019】
非加水分解性置換基R(これらは、互いに同一でも異なっていてもよい)は、官能基を含有する非加水分解性の基Rでも、官能基を有さない非加水分解性置換基Rでもよい。一般式(I)において、置換基Rは、存在する場合、好ましくは官能基を有さない基である。
【0020】
官能基を有さない非加水分解性の基Rは、例えば、アルキル(例えば、C1−8アルキル、好ましくはC1−6アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル及びt−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びオクチル))、シクロアルキル(例えば、C3−8シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル))、アルケニル(例えば、C2−6アルケニル(例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル及びブテニル))、アルキニル(例えば、C2−6アルキニル(例えば、アセチレニル及びプロパルギル))、シクロアルケニル及びシクロアルキニル(例えば、C2−6アルケニル及びシクロアルキニル)、アリール(例えば、C6−10アリール(例えば、フェニル及びナフチル))、及び対応するアリールアルキル及びアルキルアリール(例えば、C7−15アリールアルキル及びアルキルアリール(例えば、ベンジルまたはトリル))である。基Rは、1つ以上の置換基(例えば、ハロゲン、アルキル、アリール及びアルコキシ))を含み得る。式(I)において、Rは、存在する場合、好ましくはメチルまたはエチルである。
【0021】
上述のように、式(I)の非加水分解性置換基Rは、1つ以上の官能基も含み得る。そのような基の例を、以下の式(III)における官能基を有する置換基Rcの定義において見出すことができる。
【0022】
非加水分解性置換基Rfは、1個以上の炭素原子に結合した、少なくとも1個、好ましくは少なくとも3個、そして特に少なくとも5個、そして一般的に30個以下、より好ましくは25個以下、そして特に21個以下のフッ素原子を含む。これらの炭素原子が脂環式を含む脂肪族原子であることが好ましい。さらに、フッ素原子が結合した炭素原子は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの原子(好ましくは、炭素及び/または酸素原子(例えば、C1−4アルキレンまたはC1−4アルキレンオキシ(例えば、エチレンまたはエチレンオキシ結合))である)によってケイ素から隔てられている。
【0023】
置換基Rfは、好ましくは20個未満の炭素原子を有し、そしてそれが少なくとも3つの炭素原子を有すること(ここで好ましい範囲は、3〜15個の炭素原子を含む)が好ましい。フッ素原子が結合する炭素原子は、好ましくは脂環式炭素原子を含む脂肪族炭素原子である。Rfは、好ましくは、アルキレンまたはアルキレンオキシ単位を介して珪素原子に結合したフッ化またはペルフルオロ化(perfluorinated)アルキル基を含む。特に好ましい置換基Rfは、CF(CF−Z(ここでn及びZは、以下の式(IV)において定義される通りである)である。Rfの具体例は、CFCHCH、CCHCH、C、n−C13CHCH、i−COCHCHCH、n−C17CHCH、i−CO(CH及びn−C1021CHCHである。n−C13CHCH、n−C17CHCH、及びn−C1021CHCHが特に好ましい。
【0024】
特に好ましいシランは、一般式(IV)の化合物であり、
CF(CF−Z−SiX (IV)
ここでXは、一般式(I)において定義される通りであり、そして好ましくはメトキシまたはエトキシであり、Zは、二価有機性基であり、そしてnは、0〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは5〜10の整数である。好ましくは、Zは、10個以下の炭素原子を含み、そしてZは、より好ましくは、6個以下、特に4個以下の炭素原子を有する二価アルキレンまたはアルキレンオキシ基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、メチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、及びブチレンオキシ)である。エチレンが最も好ましい。
【0025】
具体例は、CFCHCHSiCl(CH)、CFCHCHSiCl(CH、CFCHCHSi(CH)(OCH、CFCHCHSiX、CCHCHSiX、CCHCHSiX、n−C13CHCHSiX、n−C17CHCHSiX、n−C1021CHCHSiX(X=OCH、OCまたはCl);i−CO−CHCHCH−SiCl(CH)、n−C13−CHCH−SiCl(OCHCH、n−C13−CHCH−SiCl(CH)及びn−C13−CHCH−SiCl(CHである。CF−C−SiX、C−C−SiX、C−C−SiX、C13−C−SiX、C17−C−SiX、及びC1021−C−SiXが特に好ましく、ここで、Xは、メトキシまたはエトキシ基である。
【0026】
さらに、本発明者らは、異なる種類のフッ素含有基を有する少なくとも2つの異なる加水分解性シランを用いることによって、特に撥液特性、及び化学物質(例えば、現像(developing)溶液またはアルカリ溶液)に対する耐性に関して、予想外に改善された結果が得られることを見出した。用いられるシランは、好ましくは、その中に含まれるフッ素原子の数またはフッ素含有置換基の長さ(鎖中の炭素原子数)が異なる。
【0027】
これらの改善の理由は明らかではないが、フルオロアルキル基が最上部表面において最適な構成をとるべきであるので、種々の長さのフルオロアルキル基が、より高い密度の構造的構成をもたらしていると考えられる。例えば、C13−C−SiX、C17−C−SiX、及びC1021−C−SiX(Xは上で規定した通り)のうち少なくとも2つが一緒に用いられる場合、最上部表面における高フッ素濃度は、種々の長さのフルオロアルキル基により表され、これは、単独のフルオロシランの添加と比較して顕著な改善をもたらす。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、フッ素原子を含まないさらなる加水分解性シランは、縮合生成物を調製するために用いられ得、このシランは、少なくとも1つのアルキル置換基を有する1つ以上のシラン、少なくとも1つのアリール置換基を有するシラン及び非加水分解性置換基を有さないシランから選択され得る。これらのシランの加水分解性または非加水分解性置換基は、置換されていなくても、置換されていてもよい。適切な置換基の例は、ハロゲンまたはアルコキシのような従来の置換基である。アルキル置換基、アリール置換基を有するかまたは非加水分解性置換基を有さないこれらのシランは、撥液層の物理的特性を調節するために用いられ得る。
【0029】
本発明において用いられ得る好ましいさらなる加水分解性のシランは、一般式(II)のものであり:
SiX(4−a) (II)
ここで、Rは、非加水分解性置換基であり、Xは、加水分解性置換基であり、そしてaは、0〜3の整数である。aが0の場合、シランは、加水分解性基のみを含む。置換基R及びXは、式(I)において定義されるのと同じ意味を有する。Rが必要に応じて置換されたアルキル及び必要に応じて置換されたアリールから独立して選択されること、またはa=0であることが好ましい。Rは、好ましくは、アルキル、好ましくはC1−6アルキル、またはアリール、好ましくはフェニルであり、そしてXは、好ましくは、C1−4アルコキシ、好ましくはメトキシまたはエトキシである。
【0030】
これらのさらなる加水分解性シランの特定の非限定的な例は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、及びジフェニルジエトキシシランである。
【0031】
縮合生成物を調製するために用いられ得るフッ素原子を含まない別のさらなる加水分解性シランは、重合性の基を有するシランから選択され得る。これは、相対的に反応性であり、そしてそれは反応しないままでもあり得るが、コーティングの調製の過程において反応を受け得る官能基であり得る。この官能基は、単独または別の官能基と共に重合または架橋反応を受ける能力を有し得る。重合性の基は、好ましくは、光重合性の基、特にエポキシ基である。
【0032】
このさらなる加水分解性シランは、少なくとも1つの重合性の基を含む少なくとも1つの非加水分解性置換基を含む。重合または架橋され得る重合性の基は、当業者に公知である。この基は、好ましくは、カチオン重合性の基であり;さらに、この基が、光重合性の基であることが好ましい。そのような加水分解性シランは、一般式(II)の構造を有し得、ここで、少なくとも1つの置換基Rは、少なくとも1つの重合性の基を含む置換基Rcである。置換基Rcの例は、以下の式(III)において規定されている。好ましくは、シランは、重合性の基(単数または複数)を有する置換基を1つのみ含む。
【0033】
カチオン重合性の基の具体例は、環式エーテル基(好ましくは、グリシジル及びグリコシドキシを含むエポキシ基)、環式チオエーテル基、スピロオルトエステル基、環式アミド基(ラクタム)、環式エステル基(ラクトン)、環式イミン、1,3−ジオキサシクロアルカン(ケタール)及び電子供与基(例えば、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アリール、CN、またはCOOアルキル)が結合したビニル基(例えば、ビニルエーテル基、イソブテニル基、またはビニルフェニル基)である。好ましいカチオン重合性の基は、エポキシ及びビニルエーテル基であり、特に、その利用性及び反応制御の容易さの点からエポキシ基が特に好ましい。
【0034】
従って、重合性の基を有する好ましい加水分解性シランは、一般式(III)の化合物であり:
RcSi(R)(3−b) (III)
ここで、Rcは、重合性の基を有する非加水分解性置換基であり、Rは、非加水分解性置換基であり、Xは加水分解性置換基であり、そしてbは0〜2、好ましくは0の整数である。
【0035】
重合性の基Rcは、好ましくは、上述のようなカチオン重合性の基である。それにより重合または架橋が可能である非加水分解性置換基Rcのカチオン重合性の基の具体例は、グリシジル及びグリシドキシ基を含むエポキシド基、ならびにビニルエーテル基である。これらの官能基は、酸素または−NH−基により介在されていてもよい、二価有機性基(例えば、アルキレン(シクロアルキレンを含む)、アルケニレンまたはアリーレン架橋基)によって珪素原子に結合する。これらの架橋基の例は、一般式(I)の非加水分解性の基Rについて規定されているすべての基(これらは、酸素または−NH−基により介在されていてもよい)のさらなる二価の等価物である。当然、架橋は、1つ以上の通常の置換基(例えば、ハロゲンまたはアルコキシ)も含み得る。架橋は、好ましくは、C1−20アルキレン、より好ましくは、C1−6アルキレン(これらは、置換されていてもよい)(例えば、メチレン、エチレン、プロピレンもしくはブチレン(特にプロピレン)、またはシクロヘキシルアルキル(特にシクロヘキシルエチル))である。
【0036】
この置換基Rcの具体例は、グリシジルまたはグリシジルオキシC1−20アルキル(例えば、γ−グリシジルプロピル、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル、δ−グリシドキシブチル、ε−グリシドキシペンチル、ω−グリシドキシヘキシル、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)である。最も好ましい置換基Rcは、グリシドキシプロピル及びエポキシシクロヘキシルエチルである。
【0037】
対応するシランの具体例は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、及びエポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシランである。しかし、本発明は、上述の化合物に限定されない。
【0038】
それにより重合または架橋が可能になる非加水分解性置換基Rcの重合性の基のさらなる例は、イソシアネート、ヒドロキシ、エーテル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、必要に応じて置換したアニリノ、アミド、カルボキシル、ビニル、アリル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリルオキシ、メタクリロイルオキシ、メルカプト、及びシアノである。これらの官能基は、二価有機性基(例えば、シクロアルキレンを含むアルキレン、アルケニレンまたはアリーレン架橋基)(これらは酸素または−NH−基により介在されていてもよい)によって珪素原子にも結合する。これらの架橋基の例は、一般式(I)の非加水分解性基Rについて規定されている、全ての基の二価等価物(これらは、酸素または−NH−基により介在されていてもよい)である。当然、架橋は、ハロゲンまたはアルコキシのような1つ以上の通常の置換基を含んでいてもよい。
【0039】
上記の他の重合性基Rcの具体例は、(メト)アクリロイルオキシ−(C1−6)−アルキレン基(ここで、(C1−6)−アルキレンは、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレンを表す)及び3−イソシアナトプロピル基である。対応するシランの具体例は、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N’−(2’−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、ビス−(ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ヒドロキシ−エチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メト)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン及び3−(メト)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0040】
本発明の1つのさらに好ましい実施形態によれば、フッ素原子を含まない少なくとも2つのさらなる加水分解性シランは、縮合生成物を調製するために用いられ、これらの1つは重合性の基を含まず(例えば、式(II)のシラン)、そしてこれらの1つは、重合性の基、特にカチオン重合性の基を含む(例えば、式(III)のシラン)。重合性の基は、好ましくは、光重合性の基である。
【0041】
縮合生成物を調製するために用いられるシランの割合は、所望される用途に従い選択され、そして有機的に改変された無機縮重合物の製造の分野における当業者の知識の範囲内である。フッ素含有基を有する加水分解性シランが、用いられる加水分解性化合物の総量に基づき、0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%の範囲の量で適切に用いられることが見出された。これらの範囲内では、高い撥液性及び非常に均一な表面が得られる。後者は、放射を含む光学用途に特に重要である。なぜならば得られる表面は、しばしば、光の散乱に影響する凹面及び/または凸面を有する傾向にあるからである。従って、上述の範囲は、光硬化及び/または記録用途に特に適する、高い撥液性の、平らな表面を提供する。
【0042】
縮合生成物の調製のために、珪素を含まない他の加水分解性金属化合物も少量用いられ得る。これらの加水分解性化合物は、元素周期表の主族III〜V、特にIII〜IV及び/または遷移族II〜Vの中の少なくとも1つの金属Mから選択され得、好ましくは、Al、B、Sn、Ti、Zr、VまたはZnの加水分解性化合物、特にAl、TiもしくはZrのもの、またはこれらの元素の2つ以上の混合物を含む。これらの化合物は、通常、式MXを満たし、ここで、Xは、式(I)において規定された通りであって、代表的には、アルコキシであり、nは、金属Mの価数に等しい(通常3または4)。1つ以上の置換基Xは、キレート配位子により置換され得る。また、周期表の主族I及びIIの金属(例えば、Na、K、Ca及びMg)、周期表の遷移族VI〜VIIIの中の金属(例えば、Mn、Cr、Fe、及びNi)、及びランタニドの加水分解性化合物が用いられ得る。上で示されるように、これらの他の加水分解性化合物は、一般的に、あったとしても低量(例えば、触媒量)で用いられる。必要に応じた触媒的使用は、以下に説明する。
【0043】
一般的に、上述の加水分解性シランの縮合生成物は、当業者に公知のゾルゲル法に従い、これらの出発化合物の加水分解及び縮合によって調製される。ゾルゲル法は、一般的に、必要に応じて酸または塩基触媒に補助される、これらの加水分解性シランの加水分解を含む。加水分解される種は、少なくとも部分的に縮合する。加水分解及び縮合反応は、例えば、ヒドロキシ基および/またはオキソブリッジを有する縮合生成物の形成をもたらす。加水分解/縮合生成物は、例えば、加水分解のための含水量、温度、時間、pH値、溶媒の型、及び溶媒量のようなパラメータを、所望の縮合度及び粘度を得るために適切に調整することによって制御され得る。
【0044】
さらに、加水分解を触媒するため及び縮合度を調節するために金属アルコキシドを用いることも可能である。この金属アルコキシドについて、上に規定される他の加水分解性化合物、特にアルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドが用いられ得、そして対応する錯体化合物(例えば、錯体配位子としてアセチルアセトンを伴う)が適する。
【0045】
ゾルゲル法において、溶媒が用いられ得る。しかし、溶媒なしでゾルゲル法を実施することも可能である。通常の溶媒(例えば、アルコール(例えば、脂肪族C−Cアルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノール))、ケトン(例えば、C1−6アルキルケトン(例えば、アセトン及びメチルイソブチルケトン))、エーテル(例えば、C1−6ジアルキルエーテル(例えば、ジエチルエーテル)、またはジオールモノエーテル)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、スルホキシド、スルホン、及びグリコール(例えば、ブチルグリコール)、ならびにこれらの混合物)が用いられ得る。アルコールは、好ましい溶媒である。加水分解性シランアルコキシドの加水分解の間に得られるアルコールは、溶媒としての役割を果たし得る。
【0046】
ゾルゲル法のさらなる詳細は、例えば、C.J.Brinker、G.W.Scherer:「Sol-Gel Science-The Physics and Chemistry of Sol-Gel-Processing」、Academic Press、Boston、San Diego、New York、Sydney(1990)中に見出され得る。
【0047】
加水分解性シランモノマーの代わりに、これらのモノマーの既に一部または全部が(プレ)加水分解した種またはプレ縮合物が出発物質として用いられ得る。本発明において用いられる縮合生成物は、用いられるシランの非加水分解性有機置換基に起因する有機的に改変された無機縮重合物を表す。縮合度及び粘度は、所望される特性に依存し、そして当業者により調節され得る。通常、珪素に関してさらに完全な縮合度が、最終硬化生成物において得られる。重合性の基は、コーティング組成物の縮合生成物中に存在する場合、通常、実質的に反応しておらず、そして次の硬化工程の間に重合または架橋するための役割を果たす。
【0048】
複合コーティング組成物は、さらに、少なくとも1つのカチオン重合性の有機樹脂(好ましくは、カチオン光重合性である)を含む。カチオン重合性の樹脂は、好ましくは、当業者に公知のカチオン重合性エポキシ樹脂である。カチオン重合性樹脂は、電子リッチな求核性基(例えば、ビニルアミン、ビニルエーテル、ビニルアリール)を有するかまたは異核基(heteronucleargroup)(例えば、アルデヒド、ケトン、チオケトン、ジアゾアルカン)を有する任意の樹脂であり得る。カチオン重合性の環式基(例えば、環状エーテル、環状チオエーテル、環状イミン、環状エステル(ラクトン)、環状アミド(ラクタム)または1,3−ジオキサシクロアルカン(ケタール))を有する樹脂も特に重要である。カチオン重合性樹脂のさらなる種は、スピロオルトエステル及びスピロオルトカルボネート(例えば、1,5,7,11−テトラオキサスピロ−[5,5]−ウンデカン)である。
【0049】
本明細書中において、用語「カチオン重合性の樹脂」とは、少なくとも2つのカチオン重合性の基を有する有機化合物(モノマー、ダイマー、オリゴマーまたはポリマーまたはこれらの混合物を含む)を指す。この樹脂の融点は、好ましくは、高分解能パターニングをもたらすために、40℃以上である。一般的に、カチオン重合は、熱処理によって促進される。すなわち、重合反応が活性種(プロトン)の拡散に依存するということである。カチオン重合性の有機樹脂が、パターン状曝露プロセスの間の不要な拡散を防ぐため及び高分解能パターニングを得るために室温で固体であることが好ましい。
【0050】
従って、カチオン重合性の有機樹脂は、好ましくは、エポキシ化合物(例えば、エポキシモノマー、ダイマー、オリゴマー、及びポリマー)を含む。コーティング組成物に用いられるエポキシ化合物は、好ましくは、室温(約20℃)で固体であり、より好ましくは、それは、高分解能パターニングをもたらすために、40℃以上の融点を有する。
【0051】
コーティング組成物のためのエポキシ化合物の例は、構造単位(1)及び(2)のうち少なくとも1つを有するエポキシ樹脂である:
【0052】
【化1】

【0053】
さらなる例は、ビスフェノール型のエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(Araldit(登録商標)GY266(Ciba))、ビスフェノールFジグリシジルエーテル)、ノボラック型のエポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック(例えば、ポリ[(フェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)−ω−ホルムアルデヒド])及びクレゾールノボラック)、及びトリフェニロールメタン型のエポキシ樹脂(例えば、トリフェニロールメタントリグリシジルエーテル)、ならびに脂環式エポキシ樹脂(例えば、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエステル)(UVR6110、UVR6128(Union Carbide)))、テトラヒドロ及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、ならびにポリオールのグリシジルエーテルである。さらなる例は、N,N−ビス−(2,3−エポキシプロピル)−4−(2,3―エポキシプロポキシ)アニリン及びビス−{4−[ビス−(2,3−エポキシプロピル)−アミノ]−フェニル}メタンである。
【0054】
この縮合生成物とこのカチオン重合性の有機樹脂との混合重量比は、好ましくは、本発明の複合コーティング組成物において、0.001:1−1:1である。
【0055】
本発明に従う複合コーティング組成物は、カチオン性イニシエーターをさらに含む。カチオン性イニシエーターは、市販されており、そして当該分野において公知である。用いられるカチオン性イニシエーターの特定の型は、例えば、存在するカチオン重合性基の型、イニシエーションの様式(熱または光分解)、温度、放射の型(光分解イニシエーションの場合)等に依存し得る。
【0056】
適切なイニシエーターは、全ての一般的なイニシエーター/イニシエーティング系(カチオン性フォトイニシエーター、カチオン性サーマルイニシエーター、およびこれらの組み合わせを含む)を含む。カチオン性フォトイニシエーターが好ましい。用いられ得るカチオン性イニシエーターの代表としては、オニウム塩(例えば、スルホニウム、ヨードニウム、カルボニウム、オキソニウム、シリセニウム、ジオキソレニウム、アリールジアゾニウム、セレノニウム、フェロセニウム及びインモニウム塩)、ホウ酸塩(例えば、[BFOH]H(BF及び微量の水から得ることができる))及び対応するルイス酸の塩(例えば、AlCl、TiCl、SnCl)、イミド構造またはトリアゼン構造を含む化合物、Meerwein錯体(例えば、[(CO]BF、過塩素酸、アゾ化合物及びペルオキシドが挙げられる。適切なカチオン性サーマルイニシエーターは、1−メチルイミダゾール、(C[SbCl、(C[SbF、(C[ClO、(C[SbCl、(C[ClO、(C[SbCl、(C[BF及び(C[BFである。カチオン性フォトイニシエーターとしては、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩が、感受性及び安定性の点から有利である。カチオンフォトイニシエーターは、市販されており、例は、フォトイニシエーターDegacure(登録商標)KI85(ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート)、Cyracure(登録商標)UVI-6974/UVI-6990、Rhodorsil(登録商標)2074(トリルクミルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート))、Silicolease UV200 Cata(登録商標)(ジフェニルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート))及びSP170(登録商標)(4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]フェニル−スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート)である。
【0057】
カチオン性イニシエーターは、通常の量、コーティング組成物の総固形分に基づき、好ましくは0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%で使用される。
【0058】
主成分は、任意の従来の様式及び順番で組み合わせられ得る。縮合生成物も、有機性のカチオン重合性樹脂の存在下、インサイチュで調製され得る。
【0059】
コーティング組成物は、目的及び所望の特性に従って、さらに従来の添加物を含み得る。具体例は、チキソトロピック剤、さらなる架橋剤、溶媒(例えば、上述の溶媒)、有機及び無機顔料、UV吸収剤、潤滑剤、レベリング剤、湿潤剤、吸着促進剤、及び界面活性剤である。
【0060】
高アルカリ耐性コーティングを有するサブストレートを調製するために、本発明に従う複合コーティング組成物が、任意の所望されるサブストレートに適用され得る。これらの例は、金属、ガラス、セラミック及びプラスチックサブストレートだけでなく、紙、建築材(例えば、(天然)石及びコンクリート)、及びテキスタイルである。金属サブストレートの例としては、銅、アルミニウム、鉄(鋼鉄を含む)および亜鉛ならびに合金(例えば、真鍮)が挙げられる。プラスチックサブストレートの例は、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、及びポリエチレンテレフタラートである。ガラスまたはセラミックサブストレートは、例えば、主にSiO、TiO、ZrO、PbO、B、Al、及び/またはPに基づくものであり得る。サブストレートは、任意の形態(例えば、プレート、シートまたはフィルム)で存在し得る。当然、表面処理したサブストレート(例えば、サンドブラスト(sand-blasted)、コーティングまたはメタライズ(metalized)した表面(例えば、ガルバナイズした鉄プレート)を有するサブストレート)も適切である。特定の実施形態において、サブストレートは、少なくとも1つのベース層と共にコーティングされる。
【0061】
コーティング組成物は、任意の従来法によってサブストレートに塗布され得る。この文脈において、全ての一般的なウェットケミカルコーティング法(wet-chemical coating method)が使用され得る。代表的な方法は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ウェブコーティング、バーコーティング、ブラシコーティング、フローコーティング、ドクターブレードコーティング及びロールコーティングならびに印刷法(例えば、パット印刷、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷及びパッド印刷)である。さらに適切な方法は、ダイレクトコーティングである。
【0062】
塗布の後に、このコーティングは、必要な場合、乾燥され得る。次いで、サブストレートに塗布されたコーティング組成物が、硬化(cured)(硬化(hardened))される。硬化工程は、このカチオン重合性の有機樹脂及び必要に応じた縮合生成物における重合性の基(そのようなシランが組み込まれている場合)のカチオン重合を含む。この硬化工程は、光もしくは放射への曝露によって及び/または加熱によって実施され得る。硬化工程において、無機縮重合物の縮合度が増強され得る。さらに、カチオン重合性の樹脂は、一般的に重合(架橋を含み得る)し、それによって所望の無機−有機ハイブリッド材料を形成する。硬化が、少なくとも部分的に放射によって(すなわち、光重合によって)生じることが好ましい。
【0063】
本発明のコーティングは、このコーティングがアルカリ溶液と接触する場合に特に有用であるが、中性及び/または酸性溶液との組み合わせにおいても効果的である。
【0064】
本発明のコーティング組成物は、金属、プラスチック、改変もしくは非改変の天然物質、セラミック、コンクリート、粘土及び/またはガラスの表面のコーティングに特に適する。金属表面は、金属化合物の表面も含む。言及され得る例は、金属銅、銀、金、プラチナ、パラジウム、鉄、ニッケル、クロム、亜鉛、錫、鉛、アルミニウム及びチタン、ならびにこれらの金属を含有する合金(例えば、(ステンレス)鋼、真鍮及び青銅)である。
【0065】
上記コーティング組成物は、金属及び非金属の酸化物、炭化物、珪化物、窒化物、ホウ化物等の表面(例えば、金属酸化物、炭化物(例えば、炭化珪素、炭化タングステン及び炭化ホウ素)、窒化珪素、二酸化珪素等を含むかまたはこれらからなる表面)にも塗布され得る。
【0066】
(改変または非改変)天然物質の表面の中でも、上記コーティング組成物を使用する有利な様式において、特に、天然石(例えば、砂岩、大理石、花崗岩)、(焼成(fired))粘土及びセルロース材料のものが言及され得るが、一方で、当然、コンクリート、セラミック、磁器、石膏、ガラス及び紙(合成紙を含む)の表面をコートすることも可能である。本明細書中において、用語「ガラス」とは、非常に広範な組成を有する全ての型のガラスを含み、例えば、ソーダ石灰ガラス、カリ・ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホスフェートガラス、光学ガラス、及び古典的ガラスである。
【0067】
上記コーティング組成物でコートされ得る表面を形成するプラスチックの中でも、熱可塑性物質、熱硬化性樹脂、エラストマー及びフォームドプラスチックが挙げられる。そのようなプラスチックの具体例としては:オレフィン型不飽和化合物(olefinicallyunsaturated compound)(例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン及びデセン));ジエン(例えば、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエン);芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン及びその誘導体(例えば、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン));ハロゲン化ビニル化合物(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロエチレン);α,β−不飽和カルボニル化合物(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びフマル酸)及びこれらの誘導体(特に、(アルキル)エステル、アミド、無水物、イミド、ニトリル及び塩(例えば、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メト)アクリルアミド及びマレイン酸無水物));及びビニルアセテートのホモ−及びコポリマーが挙げられる。
【0068】
さらなる例は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート);ポリアミド(例えば、ナイロン);ポリイミド;ポリウレタン;ポリエーテル;ポリスルホン;ポリアセタール;エポキシ樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;(加硫または非加硫)合成ゴム;(加硫)天然ゴム;フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−尿素樹脂;フェノール−メラミン樹脂;アルキド樹脂;及びポリシロキサンである。
【0069】
この種のプラスチックは、当然、通常のプラスチック添加物(例えば、フィラー、顔料、色素、強化材(例えば、(ガラス)ファイバー)、安定化剤、防炎剤、インヒビター及び潤滑剤)を含んでいてもよい。
【0070】
上記コーティング組成物は、特に、構造物及びその部分;交通及び輸送の手段ならびにこれらの部分;商業及び産業目的ならびに研究のためのオペレーティング(operating)器具、装置及び機械ならびにこれらの部分;家庭用品及び家具調度品ならびにこれらの部分;ゲーム、スポーツ及びレジャーのための器具、設備及びアクセサリならびにこれらの部分;ならびに医療目的及び患者のための機器、アクセサリ及びデバイスのコーティングに適する。そのようなコーティング可能な材料及び物品の具体例を、以下に示す。
【0071】
建造物(特にビルディング)及びこれらの部分:
ビルディングの内装及び外装、天然石、コンクリート等でできた床及び階段、床のプラスチックのカバーリング、敷き詰めたまたはルースのカーペット、幅木(base board)(幅木(skirting board))、窓(特に窓枠、窓敷居、ガラスまたはプラスチックのグレージング(glazing)及び窓の取手)、ベネチアンブラインド、ローラーブラインド、ドア
、ドアの取手、WC、風呂及びキッチンの家具類、シャワーキャビネット、サニタリーモジュール(sanitary module)、洗面所、パイプ(特に、汚物の堆積が回避されるべき排水管)、ラジエーター、鏡、ライトスイッチ、壁及び床のタイル、ライト、郵便箱、屋根瓦、樋、アンテナ、パラボラアンテナ、バルコニー及びエスカレーターの手すり、アーキテクチュアルグレージング(architectualglazing)、太陽熱収集機、ウインターガーデン、リフト(lift)の壁、記念物、彫刻及び一般的に、天然石(例えば、花崗岩、大理石)、金属などから作製された芸術作品、特に屋外に構築されたもの。
【0072】
交通及び輸送の手段(例えば、車、トラック、バス、モーターバイク、モーペッド、自転車、鉄道、路面電車、船及び飛行機)ならびにこれらの部分:
ヘッドランプ、内部及び外部のミラー、フロントガラス、リアウインドー、サイドウインドー、自転車及びモーターバイクの泥除け、モーターバイクのプラスチックバイザー、モーターバイクの装置、シート、サドル、ドアハンドル、ステアリングホイール、タイヤリム、燃料タンクポート(特にディーゼル用)、ナンバープレート、網棚、車のルーフコンテナ、及びコクピット。例えば、自動車の外装コーティングは、これらをクリーニング(洗浄)し易くする。
【0073】
商業及び産業目的ならびに研究のためのオペレーティング器具、装置及び機械ならびにこれらの部分:
型(例えば、キャスティングモールド(casting mould)、特に金属製のもの)、ホッパー、充填ユニット、押出成形機、水車、ローラー、コンベアベルト、印刷機、スクリーン−印刷ステンシル、ディスペンシングマシーン(dispensing machine)、(マシーン)ハウジング、射出成形された部品、ドリルビット、タービン、パイプ(内部及び外部)、ポンプ、のこぎり、スクリーン(例えば、スケール(scale)用)、キーボード、スイッチ、ノブ、ボールベアリング、シャフト、スクリュー、ディスプレイ、太陽電池、ソーラーユニット、ツール、ツールハンドル、液体用容器、絶縁体、キャピラリーチューブ、レンズ、実験装置(例えば、クロマトグラフィーカラム及びフード)及びコンピュータ(特にケーシング及びモータースクリーン)。
【0074】
家庭用品及び家具調度品ならびにこれらの部分:
家具用ベニア、家具用ストリップ、ゴミ箱、トイレブラシ、テーブルクロス、焼物(例えば、磁器及び石器製)、ガラス製品、刃物類(例えば、ナイフ)、トレイ、フライパン、ソースパン、ベーキングシート、調理器具(例えば、クッキングスプーン、おろし金、ガーリックプレス等)、インセットクッキングプレート、ホットプレート、オーブン(内部及び外部)、花瓶、壁時計のカバー、テレビ装置(特にスクリーン)、ステレオ装置、(電気)家庭用品のハウジング、ピクチャーグラス(picture glass)、壁紙、ランプ及びライト、革張りされた家具、革製品。
【0075】
特に家具のコーティングは、クリーニングを簡単にし、そして目に見える表面のしみ(mark)を防ぐ。
【0076】
ゲーム、スポーツ及びレジャーのための器具、設備及びアクセサリ:
ガーデンファニチャー、園芸用具、(特にガラスをはめた)温室、ツール、運動場の器具(例えば、すべり台)、ボール、エアベッド、テニスラケット、テーブルテニスバット、テーブルテニステーブル、スキー、スノーボード、サーフボード、公園内のベンチ、運動場等、モーターバイク用衣類、モーターバイクヘルメット、スキー服、スキー靴、スキーゴーグル、スーツ用(for suit)安全ヘルメット、及びダイビングゴーグル。
【0077】
医療目的及び患者のための機器、アクセサリ及びデバイス:
(特に四肢の)プロテーゼ、インプラント、カテーテル、肛門プロテーゼ、歯ブラシ、義歯、眼鏡(レンズ及びフレーム)、(手術及び歯の処置のための)医療機器、ギブス包帯、体温計及び車椅子等、非常に一般的には、(なかでも)衛生状態を改善するための診療器具。
【0078】
上記の物品に加えて、当然、他の物品及びこれらの部分を、有利には、上記のコーティング組成物を用いて、コートすることも可能であり、例は、ジュエリー、コイン、芸術作品(例えば、絵画)、ブックカバー、墓石、壺、標識(例えば、交通標識)、ネオンサイン、交通用光柱、CD、雨具、テキスタイル、ポスト、公衆電話ボックス、公共交通機関のためのシェルター(shelter)、保護用ゴーグル、保護用ヘルメット、ロケット、食品
包装の内側及びオイルキャニスター、(例えば、食品を包装するための)フィルム、電話、給水栓のシール、及び非常に一般的には、ゴムから製造される全ての物品、ボトル、光−、熱−または圧力−感受性の記録物質(記録の前または後、例えば、写真)及び教会の窓、及び(例えば、鉄板製の)落書きを受ける物品(例えば、客車の内部及び外部、地下及び地上の地下鉄の駅の壁等)である。撥液層(liquid-repellent layer)に光感受性を付与することが可能であり、そして光学的グレーチングまたは他の光学的構造を形成することが可能である。
【0079】
本発明に従う複合コーティング組成物は、放射または光への暴露と加熱との組み合わせによって硬化され得る。暴露及び加熱は、同時に及び/または連続して実施され得る。第一に放射と加熱とを組み合わせた処理によって硬化させ、そして引き続き加熱単独によって硬化工程を完了することが有利であり得る。
【0080】
適切な放射は、例えば、カチオン重合性樹脂及び存在する場合シランの重合性の基、ならびに用いられるカチオン性イニシエーターの型に依存する。例えば、UV放射またはレーザー光が用いられてもよい。光または放射線への暴露及び/または加熱の工程の間、カチオン性イニシエーターは、酸を生成し得る。カチオン重合性樹脂及び必要に応じた縮合生成物の重合性の基の重合に加えて、この酸も、シロキサン骨格の硬化(無機縮合)を、特にコーティングが加熱される場合、殆ど完了するまで補助し得る。
【0081】
硬化後、非常に高いアルカリ耐性及び優れた機械的特性を有し、驚くべき良好なフォトパターニング特性も示す、低表面自由エネルギーのコーティングが得られる。
【0082】
従って、この複合コーティング組成物は、有利には、コーティングがパターンを形成するパターン形成法に用いられ得る。これらの方法において、この組成物は、上記のような通常の様式でサブストレートに塗布される。次いで、塗布されたコーティングが、パターン状に硬化され得、引き続いて、硬化していない物質を溶解するように現像(develop)
されて、パターンを形成する。通常、パターン状の硬化は、放射によりもたらされる。例えば、光硬化は、フォトリソグラフィー法または二波長混合法(two wave mixing method)によりもたらされ得る。
【0083】
そのようなパターン形成法において本発明の複合コーティング組成物を用いることによって、アスペクト比H/W≧1(H:パターンの高さ、W:パターン幅)、好ましくはアスペクト比H/W≧3を有する部分を含むパターンを得ることが可能である。100マイクロメーター以下のパターン幅を有する部分を含むパターンを形成することも可能である。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、それを例示する。
【0085】
合成実施例1
加水分解縮合(hydrolytic condensation)生成物を、以下の手順に従い配合した。2
8gのグリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン(0.1モル)、18gのメチルトリエトキシシラン(0.1モル)、7.6gのトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(0.015モル:全加水分解性シランに対し7モル%と等価である)、17.3gの水及び37gのエタノールを室温で攪拌し、引き続き還流条件で24時間加熱し、その後、加水分解縮合物を得た。この縮合生成物を、20重量%の固形分まで2−ブタノール/エタノールにより希釈した。
【0086】
合成実施例2
7.6gのトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランの代わりに4.4gのトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランとヘプタデカフルオロ−1,1,1,2−テトラヒドロデシルトリエトキシシランとの混合物を用いたことを除き、合成実施例1と同じ方法で、加水分解性縮合生成物を得た。得られた縮合生成物も、2−ブタノール/エタノールを用いて20重量%の固形分まで希釈した。
【0087】
コーティング及び評価
実施例1及び2の各々の縮合生成物を、以下の比率に従い混合して組成物1及び2を得た。
【0088】
【表1】

【0089】
コーティング組成物1及び2を、夫々、スピンコーテイング法によりシリコンウエハに塗布した。塗布されたコーティングを、90℃で3分間乾燥した。これらのコーティングの厚さは約18μmであった。次いで、これらのコーティングをUV照射(CANON製マスクアライナー(mask aligner)「MPA 600 super」)に暴露し、そして90℃に4分
間加熱した。次に、これらのコーティングを、メチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレンの混合用溶液(比率2/3)を用いて現像し(develop)(洗い出し)、暴露され
ていない部分を除去した。暴露された部分が硬化し、暴露されていない部分が洗い出されること、及び硬化した(残留した)部分が高い撥液性(liquid-repellency)を有するこ
とを見出すことができる。
【0090】
その後、接触角を測定して、水に対する撥液性のレベルを評価した。自動接触角測定機(Kruss G2)を用いた。以下、Θは、前進接触角(advancing contact angle)を意味
し、そしてΘは、後退接触角(receding contact angle)を意味する。結果を第1表に示す。
【0091】
第1表
【0092】
【表2】

【0093】
引き続き、撥液層を有するコーティングを、60℃の温度で、1ヶ月、アルカリ溶液(NaOH水溶液 pH=10)中に浸漬することによって撥液層のアルカリ耐性を試験した。結果を第2表に示す。
【0094】
第2表
【0095】
【表3】

【0096】
浸漬試験後、シリコンウエハからのこの撥液層の剥離は観察されなかった。組成物1を用いて得ることができる高分解能かつ高アスペクト比のパターンを、図1〜3に示す。これらのパターンの表面は、高撥液性を示す。
【0097】
パターンマスクデザインにより、必要に応じてフォトパターニング条件下で、高アスペクト比を有する所望のパターンを得た。図2の構造において、130℃より高い水に対する接触角が得られる。
【0098】
本発明の撥液層は、非常に大きい水に対する接触角(すなわち高い撥液性)を示した。十分な撥液性は浸漬試験後も維持され、アルカリ溶液中でさえも長期保存を示す。また、サブストレートに対する優れた接着は、浸漬試験後も維持され、アルカリ溶液中でさえも長期保存を示す。加水分解性縮合生成物が種々の長さのフッ化アルキル基を有する2つ以上の加水分解性シラン化合物を含む場合、さらに増強された撥液性が得られる。本発明の撥液性組成物は、フォトリソグラフィーによる優れたパターニング能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フッ素含有基を有する少なくとも1つの加水分解性シランの縮合生成物、
b)少なくとも1つのカチオン重合性有機樹脂、及び
c)カチオン性イニシエーター
を含むカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項2】
前記複合コーティング組成物がカチオン光重合性である(cationically photopolymerizable)、請求項1に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項3】
前記縮合生成物がフッ素原子を含有しない1つ以上のさらなる加水分解性シランを用いることによって調製される、請求項1または請求項2に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項4】
前記1つ以上のさらなる加水分解性シランの少なくとも1つが、少なくとも1つの必要に応じて置換されたアルキル置換基を有するシラン、少なくとも1つの必要に応じて置換されたアリール置換基を有するシラン及び非加水分解性置換基を有さないシランから選択される、請求項3に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項5】
前記1つ以上のさらなる加水分解性シランの少なくとも1つが、重合性の基を有するシランから選択される、請求項3または請求項4に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項6】
前記1つ以上のさらなる加水分解性シランの少なくとも1つが、カチオン重合性の基を有するシランから選択される、請求項3または請求項4に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項7】
前記重合性の基がエポキシ基である、請求項5または6に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項8】
前記カチオン重合性樹脂がカチオン光重合性樹脂である、請求項1〜7のいずれかに記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項9】
前記カチオン重合性樹脂がエポキシ化合物を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項10】
前記エポキシ化合物が室温で固体である、請求項9に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項11】
前記カチオン重合性有機樹脂の融点が40℃以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項12】
前記カチオン重合性樹脂が構造単位(1)及び(2)のうち少なくとも1つを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物
【化1】


【請求項13】
前記カチオン重合性樹脂がビスフェノール型のエポキシ樹脂、ノボラック型のエポキシ樹脂及びトリフェニロールメタン型のエポキシ樹脂から選択される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項14】
(a)前記縮合生成物と(b)前記カチオン重合性有機樹脂との重量混合比((a):(b))が0.001:1〜1:1である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のカチオン重合性複合コーティング組成物。
【請求項15】
アルカリ耐性コーティングを有するサブストレートであって、該コーティングが請求項1〜14のいずれか一項に記載の硬化した複合コーティング組成物を含む、サブストレート。
【請求項16】
前記サブストレートが、前処理されていても予めコートされていてもよい、金属、ガラス、セラミックまたはプラスチックサブストレートから選択される、請求項15に記載のアルカリ耐性コーティングを有するサブストレート。
【請求項17】
前記コーティングがパターニングされている、請求項15または請求項16に記載のアルカリ耐性コーティングを有するサブストレート。
【請求項18】
前記パターンがアスペクト比H/W≧1(H:パターン高さ、W:パターン幅)、を有する部分を含む、請求項17に記載のアルカリ耐性コーティングを有するサブストレート。
【請求項19】
前記パターンがアスペクト比H/W≧3(H:パターン高さ、W:パターン幅)を有する部分を含む、請求項17に記載のアルカリ耐性コーティングを有するサブストレート。
【請求項20】
前記パターンが100マイクロメーター以下のパターン幅を有する部分を含む、請求項17、18または19に記載のアルカリ耐性コーティングを有するサブストレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189653(P2010−189653A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96976(P2010−96976)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【分割の表示】特願2005−507495(P2005−507495)の分割
【原出願日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願人】(500449008)ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク (22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】