説明

撥液性表面

ナノ粒子とポリマー材料との組み合わせをチャンバー内にある表面にイオン化又は活性化技術、特にプラズマ処理、を使って適用することを含む、基材上に撥液性表面を形成するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性の表面を有する基材及び物品と、そのような表面を作るための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品のケーシング、製品の筐体、及びバイオコンシューマブルデバイスなどのプラスチック製品はよく知られており、一般には、複雑な3D構造体を形成するため高温のポリマーメルトを成形して得られる。成形技術には、射出成形はもちろん、圧縮成形、トランスファー成形、押出成形、共押出成形、ブロー成形、回転成形、熱成形(例えば真空成形、反応射出成形など)が含まれる。これらの技術で良好な機械的特性の製品が製造される。更に、たった数秒間の迅速な処理でもって、一貫した製品許容誤差を繰り返して得ることができる。
【0003】
これらの方法で使用されるポリマーは一般に、それらのバルクの物理的特性、例えばガラス転移温度、ヤング率、射出成形に関する要件である流動特性などを基に選ばれ、あるいは結果として得られる製品の物理的特性、例えば耐熱性、可撓性、靱性又は光学的透明性などのために選ばれる。
【0004】
これは、成形された品目の結果として得られた表面の特性は、表面の相互作用が実際のところそれらの用途を決定づけあるいは左右することがあるという事実にもかかわらず、機能にとって理想的でないことがあるということを意味している。例えば、ろ過、保存又は移送のいずれかのために液体の相互作用に抵抗することが必要であるバイオコンシューマブル用途では、表面の濡れなどの表面特性が非常に重要である。本質的に疎水性の材料、例えばポリプロピレンを使用することができるとは言うものの、これらにも不利な点がある。詳しく言えば、それらは水及び水の容積割合の高い溶液に対しては良好なレベルの忌避性を示すとは言うものの、研究室、臨床研究開発の実験室で用いられ、あるいは薬剤の合成で用いられる多くの液体は事実上有機物であり、そのような表面を濡らす。その結果として、基材上に、例えばろ過媒体あるいは容器に、液が多く滞留することが観測され、これは大変に好ましくない。
【0005】
関係する産業では、この問題に対処するために化学的方法に頼ることがよくある。例えば、一部の場合には、好適な化学添加剤をポリマーに含ませて表面特性を改変することがあり、あるいはより望ましい特性を有するコーティングを、例えば浸漬により、又はプラズマ支援化学気相成長などの技術を利用して、適用することがある。しかし、これらの方法には不都合がつきものである。例えば、添加剤はマイグレーションの問題と浸出に悩まされることがある一方で、コーティングは撥液性を低下させるピンホールを生じやすい。
【0006】
更に、製品が向上したレベルの撥液性による恩恵を受ける例えば布帛、衣料品、履物、膜などの他のたくさんの材料に向上した忌避性を提供することが必要とされている。
【0007】
物理的な手段も、表面特性をある程度制御するために用いられている。例えば、製品がミクロレベルで滑らかであるようにすることにより、例えば製品を製造するのに使用する成形型を慎重にダイヤモンドで研磨するようにすることによって、最終表面の湿潤性を低下させることができる。ダイヤモンドでの研磨法は一定の液体を使用するのに有利ではあるが、低表面張力の液体の大部分はなおもポリプロピレンなどの材料に付着して濡らす。
【0008】
表面の化学的性質を変更するのに加えて、表面粗さの変更も低表面エネルギーの材料を創出しその結果滞留の少ない製品を製造するのに利用することができる。例えば、表面粗さは石材などの一定の基材で撥液性に影響を及ぼすことができることが知られている(例えば、Manoudis et al., Journal of Physics: Conference Series 61 (2007) 1361−1366参照)。表面粗さは、ナノ粒子、例えばシリコーン、シリカ又はポリマー物質のナノ粒子を表面に含ませることにより制御することができる。ポリマーナノ粒子の配合物は、微生物忌避コーティングを製造するのにも使用されている(ヨーロッパ特許出願公開第1371690号明細書参照)。
【0009】
ナノ粒子は一般に、通常の塗装技術、例えば吹き付け又は浸漬などを使用しポリマー物質と組み合わせて適用されて、複合表面を形成する。
【0010】
プラズマ蒸着技術は、様々な表面へ、特に布帛の表面へ、ポリマーコーティングを被着するのにかなり広く使用されている。この技術は、従来の湿式の化学的方法に比べ廃棄物がほとんど生じない清浄な乾式の技術であると認められている。この技術を使用すると、電場にさらされた有機分子からプラズマが発生される。これを基材の存在下で行うと、プラズマ中の化合物のラジカルが基材上で重合する。通常のポリマー合成は、モノマー種に極めてよく似た繰り返し単位を有する構造を生じさせる傾向があるのに対し、プラズマを使って生じさせたポリマー網状組織は極度に複雑になることができる。その結果得られたコーティングの性質は、基材の特質に依存することもあり、また使用するモノマーの特質とそれを被着させる条件とに依存することもある。しかし、例えば国際公開第2007/083121号、同第2007/083122号、同第2007/083124号、及び同第2008/053150号各パンフレットに記載された技術が、種々の基材上に非常に撥液性の表面を作り出すことが分かっている。
【0011】
繊維を先の尖ったシリコーンのフィラメントでコーティングするよう布帛の表面にシリコーンガスを凝縮させることにより得られる布帛上の高撥液性表面が、最近報告された。しかし、このようなコーティングの耐洗浄性と耐磨耗性は高くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第1371690号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/083121号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/083122号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2007/083124号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008/053150号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Manoudis et al., Journal of Physics: Conference Series 61 (2007) 1361−1366
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人らは、広範囲の基材上に高撥液性表面を作り出す制御可能な方法を見いだした。
【0015】
本発明によれば、基材上に撥液性表面を形成するための方法であって、プラズマ処理などのイオン化又は活性化技術を使ってチャンバー内の基材にナノ粒子とポリマー材料との組み合わせを適用することを含む方法が提供される。
【0016】
プラズマ処理などのイオン化又は活性化技術を使ってナノ粒子/ポリマー複合表面を作り出すのは、高度の撥液性又は非湿潤特性を有する表面を清浄に且つ効率的に作り出すことができる高度に制御可能な方法である。更に、表面層は基材に分子的に結合され、そのため侵出不能となって、この改質部は基材の一部となる。その結果、表面は強固となり、そして洗浄に対して耐性となることができる。
【0017】
本発明の方法を使用すると、気相の導入中に表面をナノ粗化することが可能であり、そのため特定の特性、例えば高レベルの撥液性などを備えた表面を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ナノ粒子は、チャンバー内にある表面に吹き付け、電着又はゾル−ゲル技術を含めた様々な技術を利用して適用することができる。ナノ粒子を表面の所定の位置に配置したなら、ナノ粒子を表面に付着させる非常に薄いコーティング層を形成するよう、イオン化又は活性化技術を使ってポリマー材料を適用することができる。とは言え、ナノ粒子はとりわけ、チャンバー内で操作することができるイオン化又は活性化技術を使って被着される。とりわけ、ナノ粒子はプラズマ処理を使用して被着される。ナノ粒子の特性に応じて、それらは例えば、ヘリウム又はアルゴンのような不活性ガスなどのキャリヤガス流を使用して、チャンバー内へ導入することができる。そのほかの場合、例えば金属あるいはシリコーンの場合には、それらを蒸発させイオン化又は活性化技術を使って表面上にナノ粒子を形成させることができる。
【0019】
あるいは、ナノ粒子をモノマー中に分散させて、蒸散又は同様の技術によりチャンバー内へ導入することができる。
【0020】
更なる実施形態では、ナノ粒子とポリマー材料の両方を、プラズマ重合などのイオン化又は活性化技術を使って表面に同時に被着させる。このような場合、ナノ粒子は、例えばプラズマ重合チャンバーに加えられる、モノマーガス又はキャリヤガスの流れに含ませてもよい。具体的に言えば、ナノ粒子を液体のモノマー源中に分散させてもよく、あるいはそれらをモノマーの流れがチャンバーに入る際にその流れ中に供給してもよい。次いでそれらを、そのガス流でチャンバー内へ送給する。一般にはそこで、粒子はモノマーと一緒に基材表面に被着する。場合によっては、ナノ粒子自体の特性に応じて、それらは実際のところチャンバー内で蒸発し又は部分的に蒸発しそして基材表面上に再生成してもよく、そこでそれらは最終コーティングの一部となる。過剰のナノ粒子材料はモノマーとともに流出する。
【0021】
表面に含まれるナノ粒子は、任意の使いやすいタイプのものでよい。それらの結晶化度及び/又は大きさは、所望の表面粗さが得られるのを保証するように選ぶことができる。ナノ粒子の正確な性質は、所望の最終用途、モノマーの相容性、及びモノマーとともに導入できる能力などの因子に依存する。例えば、好適なナノ粒子としては、金属又は酸化物などの金属化合物、例えば銀、金、パラジウム又は二酸化チタン、シリコーン、シリカ、あるいは例えばヨーロッパ特許出願公開第1371690号明細書に記載されたようなポリマーナノ粒子を挙げることができ、その明細書の内容は参照することによりここに組み入れられる。
【0022】
使用するナノ粒子は、例えば1〜500nmの、例として1〜100nm、例えば1〜50nm、そして特に1〜30nmの、平均粒子寸法又は粒子直径を有することができる。例えば、ナノ粒子は50〜100nmの平均粒子寸法又は粒子直径を有することができる。ナノ粒子の大きさと形状は、どのようにしてそれらが表面にぎっしりと詰まることができるかに影響を及ぼす。例えば、非常に小さいナノ粒子は表面の小さな割れ目や細孔に詰め込むことができるのに対し、より大きな粒子は外側表面にとどまる傾向がより強い。更に、先の尖ったナノ粒子は、ナノ粒子自体がシリコーンなどの疎水性材料を含む場合に、水などのような液体に対して非常に撥液性であることができる「開放」構造を作り出す効果を有することができる。
【0023】
本発明により処理した基材は、その上に被着したコーティング層がたった数分子の厚さであるので、それらのバルク特性を保持する。
【0024】
プラズマ重合又は表面の改質を受けて基材表面に好適なポリマーコーティング層を形成する又は表面の改質部を形成する任意のモノマーを好適に使用して、表面のポリマー材料を形成することができる。具体的に言えば、基材上に疎水性又は疎油性ポリマーコーティングを作ることができることが当該技術分野で知られているモノマーが、ナノ粒子自体の効果を増進することができるので好ましい。このようなモノマーの例としては、反応性官能基を有する炭素質化合物、特に、実質的に−CF3が多数を占めるパーフルオロ化合物(国際公開第97/38801号パンフレット参照)、パーフルオロアルケン(Wang et al., Chem Mater 1996, 2212−2214)、ハロゲン原子を任意選択的に含有する水素含有不飽和化合物又は炭素原子が少なくとも10のパーハロゲン化有機化合物(国際公開第98/58117号パンフレット参照)、2つの二重結合を含む有機化合物(国際公開第99/64662号パンフレット)、ヘテロ原子が任意選択的に間に配置された少なくとも5つの炭素原子の任意選択的に置換されたアルキル鎖を有する飽和有機化合物(国際公開第00/05000号パンフレット)、任意選択的に置換されたアルキン(国際公開第00/20130号パンフレット)、ポリエーテル置換アルケン(米国特許第6482531号明細書)、及びヘテロ原子を少なくとも1つ有する大員環化合物(米国特許第6329024号明細書)が挙げられ、それらの全てのものの内容は参照によってここに組み入れられる。
【0025】
本発明の方法で使用することができる特定のモノマー群には、次の式(I)の化合物が含まれる。
【0026】
【化1】

【0027】
この式のR1、R2、R3は、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールから独立に選択され、R4は−X−R5基(この式中のR5はハロゲン、アルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合基、式−C(O)O−の基、式−C(O)O(CH2nY−の基(式中のnは1〜10の整数であり、Yはスルホンアミド基である)、又は−(O)p6(O)q(CH2t−の基(式中のR6は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、pは0又は1、qは0又は1であり、そしてtは0又は1〜10の整数であるが、但しqが1の場合は、tは0以外である)であり、表面にポリマー層が形成するのを可能にするのに十分な時間。
【0028】
ここで用いる「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。特に好ましいハロ基はフルオロ基である。「アリール」という用語は、フェニル又はナフチルなどの芳香族環状基、特にフェニル基を指す。「アルキル」という用語は、炭素原子の、好適には長さが最大で炭素原子20個までの、直鎖又は分岐鎖を指す。「アルケニル」という用語は、好適には2〜20の炭素原子を有する、線状の又は枝分かれした不飽和鎖を指す。「ハロアルキル」は、ハロ置換基を少なくとも1つ含む上に定義したとおりのアルキル鎖を指す。
【0029】
1、R2、R3、R5にとって好適なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。アルキル鎖は線状でも枝分かれしていてもよく、環状部分を含んでもよい。
【0030】
5について言うと、アルキル鎖は2以上の炭素原子を含むのが好適であり、好適には2〜20の炭素原子、好ましくは4〜12の炭素原子を含む。
【0031】
1、R2、R3について言うと、アルキル鎖は一般に、1〜6の炭素原子を有するのが好ましい。
【0032】
好ましくはR5はハロアルキルであり、より好ましくはパーハロアルキル基、とりわけ式Cm2m+1のパーフルオロアルキル基(式中のmは1以上、好適には1〜20、好ましくは4〜12、例えば4、6又は8などの、整数である)である。
【0033】
1、R2、R3にとって好適なアルキル基は1〜6の炭素原子を有する。
【0034】
一つの実施形態では、R1、R2、R3のうちの少なくとも1つは水素である。特定の実施形態では、R1、R2、R3は全て水素である。とは言うものの、更なる実施形態では、R3はアルキル基、例えばメチル又はプロピルなどである。
【0035】
Xが−C(O)O(CH2nY−基の場合、nは好適なスペーサー基を提供する整数である。詳しくは、nは1〜5であり、好ましくは約2である。
【0036】
Yにとって好適なスルホンアミド基としては、式−N(R7)SO2-のもの(この式のR7は水素又はアルキル基、例えばC1-4アルキルなど、特にメチル又はエチル、である)が挙げられる。
【0037】
一つの実施形態では、式(I)の化合物は式(II)、すなわち、
CH2=CH−R4 (II)
の化合物である(この式のR4は式(I)に関連して上で定義されているとおりである)。
【0038】
式(II)の化合物において、式(I)のX−R5基内の「X」は結合基である。
【0039】
とは言うものの、好ましい実施形態では、式(I)の化合物は式(III)、すなわち、
CH2=CR7aC(O)O(CH2n5 (III)
のアクリレート(この式中のnとR5は式(I)に関連して上で定義されているとおりであり、R7aは水素、C1-10アルキル、又はC1-10ハロアルキルである)である。とりわけ、R7aは水素又はC1-6アルキル、例えばメチルなど、である。式(III)の化合物の特別な例は、式(IV)、すなわち、
【0040】
【化2】

【0041】
の化合物(この式中のR7aは上で定義されているとおりであり、とりわけ水素であって、xは1〜9、例えば4〜9、好ましくは7の、整数である)である。その場合、式(IV)の化合物は1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアシレートである。
【0042】
特定の実施形態によれば、表面のポリマー材料は、基材を、少なくとも1種は2つの炭素−炭素二重結合を含む1種以上の有機モノマー化合物を含むプラズマにポリマー層が表面に形成するのを可能にするのに十分な時間暴露することにより形成される。
【0043】
好適には、2以上の二重結合を有する化合物は式(V)、すなわち、
【0044】
【化3】

【0045】
の化合物(この式中のR8、R9、R10、R11、R12、R13は全て、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールから独立に選ばれ、Zは橋架け基である)を含む。
【0046】
式(V)の化合物で使用するのに好適な橋架け基Zの例は、ポリマーの技術分野で知られているものである。具体的には、それらには酸素原子が挿入されていてもよい任意選択的に置換されたアルキル基が含まれる。橋架け基Zにとっての好適な任意選択的置換基としては、パーハロアルキル基、特にパーフルオロアルキル基が挙げられる。
【0047】
特に好ましい実施形態では、橋架け基Zとして1以上のアシルオキシ又はエステル基が挙げられる。具体的に言うと、式Zの橋架け基は式(VI)、すなわち、
【0048】
【化4】

【0049】
の基(この式中のnは1〜10、好適には1〜3の整数であり、各R14及びR15は水素、アルキル又はハロアルキルから独立に選ばれる)である。
【0050】
好適には、R8、R9、R10、R11、R12、R13はハロアルキル、例えばフルオロアルキルなど、又は水素である。とりわけ、それらは全てが水素である。
【0051】
好適には、式(V)の化合物は少なくとも1つのハロアルキル基、好ましくはパーハロアルキル基を含む。
【0052】
式(V)の化合物の特別な例として、次のもの、すなわち、
【0053】
【化5】

【0054】
(この式中のR14とR15は上で定義されているとおりであり、R14又はR15の少なくとも一方は水素以外である)が挙げられる。このような化合物の特定の例は、式B、すなわち、
【0055】
【化6】

【0056】
の化合物である。
【0057】
更なる実施形態では、ポリマー材料は、基材をモノマーの飽和有機化合物を含むプラズマにポリマー層が表面に形成するのを可能にするのに十分な時間暴露することによって表面に形成され、この化合物はヘテロ原子を任意選択的に挿入された炭素原子数が少なくとも5の任意選択的に置換されたアルキル鎖を含む。
【0058】
ここで使用する「飽和」という用語は、モノマーが芳香環の一部でない2つの炭素原子間に多重結合(すなわち二重結合又は三重結合)を含まないことを意味する。「ヘテロ原子」という用語は、酸素、イオウ、ケイ素又は窒素原子を包含する。アルキル鎖に窒素原子が挿入されている場合、それは第二アミン又は第三アミンを形成するように置換される。同様に、ケイ素は例えば2つのアルコキシ基により適宜置換される。
【0059】
特に好適なモノマーの有機化合物は、式(VII)、すなわち、
【0060】
【化7】

のもの(この式中のR16、R17、R18、R19、R20は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されているアリールから独立に選ばれ、R21はX−R22基(この式のR22はアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合基又は式−C(O)O(CH2xY−の基(この式のxは1〜10の整数、Yは結合基又はスルホンアミド基である)、又は−(O)p23(O)s(CH2t−基(この式のR23は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、pは0か又は1、sは0か又は1であり、そしてtは0か又は1〜10の整数であるが、但しsが1の場合、tは0以外である)である)である。
【0061】
16、R17、R18、R19、R20にとっての好適なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。アルキル鎖は線状であっても枝分かれしていてもよく、そして環式部分を含むことができ且つ例えば1〜6の炭素原子を有することができる。
【0062】
22について言えば、アルキル鎖は1以上の炭素原子、好適には1〜20の炭素原子、好ましくは6〜12の炭素原子を含むのが好適である。
【0063】
好ましくは、R22はハロアルキル、より好ましくはパーハロアルキル基、特に式Cz2z+1のパーフルオロアルキル基(この式のzは1以上、好適には1〜20、好ましくは6〜12、例えば8又は10などの、整数である)である。
【0064】
Xが−C(O)O(CH2yY−基である場合、yは適当なスペーサー基をもたらす整数である。具体的には、yは1〜5であり、好ましくは約2である。
【0065】
Yにとっての好適なスルホンアミド基としては、式−N(R23)SO2-のもの(この式のR23は水素、アルキル又はハロアルキル、例えばC1-4アルキルなど、特にメチル又はエチル、である)が挙げられる。
【0066】
本発明の方法で使用されるモノマー化合物は好ましくは、任意選択的にハロゲンで置換されたC6-25アルカン、特にパーハロアルカン、とりわけパーフルオロアルカンを含む。
【0067】
別の実施形態によれば、ポリマーコーティングは、基材を任意選択的に置換されたアルキンを含むプラズマに、表面にポリマー層が形成するのを可能にするのに十分な時間暴露することによって形成される。
【0068】
好適には、本発明の方法で用いられるアルキン化合物は、1以上の炭素−炭素三重結合を含む炭素原子鎖を含む。この鎖は、ヘテロ原子が任意選択的に挿入されていてもよく、そして環とその他の官能基とを含む置換基を有することができる。線状であっても枝分かれしていてもよい好適な鎖は、2〜50の炭素原子、より好適には6〜18の炭素原子を有する。それらは、出発物質として用いられるモノマー中に存在していてもよく、あるいはプラズマの適用によってモノマー中で、例えば開環により、作られてもよい。
【0069】
特に好適なモノマーの有機化合物は、式(VIII)、すなわち、
24−C≡C−X1−R25 (VIII)
のもの(この式中のR24は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、X1は結合基又は橋架け基であり、R25はアルキル、シクロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリール基である)である。
【0070】
好適な結合基X1としては、式−(CH2s−、−CO2(CH2p−、−(CH2pO(CH2q−、−(CH2pN(R26)CH2q−、−(CH2pN(R26)SO2−の基(これらの式のsは0か又は1〜20の整数であり、pとqは1〜20の整数から独立に選ばれ、R26は水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである)が挙げられる。R26にとっての特定のアルキル基としては、C1-6アルキル、とりわけメチル又はエチルが挙げられる。
【0071】
24がアルキル又はハロアルキルである場合、それは1〜6の炭素原子を有するのが一般に好ましい。
【0072】
24にとっての好適なハロアルキル基としては、フルオロアルキル基が挙げられる。アルキル鎖は、線状であっても枝分かれしていてもよく、そして環式の部分を含んでもよい。とは言え好ましくは、R24は水素である。
【0073】
好ましくは、R25はハロアルキルであり、より好ましくはパーハロアルキル基、とりわけ式Cr2r+1のパーフルオロアルキル基(この式のrは1以上、好適には1〜20、好ましくは6〜12、例えば8又は10などの、整数である)である。
【0074】
特定の実施形態においては、式(VIII)の化合物は式(IX)、すなわち、
CH≡C(CH2s−R27 (IX)
の化合物(この式のsは上で定義されているとおりであり、R27はハロアルキル、特にパーハロアルキル、例えばC613のようなC6-12パーフルオロ基である)である。
【0075】
別の実施形態においては、式(VIII)の化合物は式(X)、すなわち、
CH≡C(O)O(CH2p27 (X)
の化合物(この式のpは1〜20の整数であり、R27は上記の式(IX)に関連して上で定義されているとおりであり、とりわけC817基である)である。好ましくは、この場合、pは1〜6の整数であり、最も好ましくは約2である。
【0076】
式(VIII)の化合物のそのほかの例は、式(XI)、すなわち、
CH≡C(CH2pO(CH2q27 (XI)
の化合物(この式のpは上で定義されているとおりであるが、とりわけ1であり、qは上で定義されているとおりであるが、とりわけ1であり、R27は式(IX)に関連して定義されているとおりであって、とりわけC613基である)であり、あるいは式(XII)、すなわち、
CH≡C(CH2pN(R26)(CH2q27 (XII)
の化合物(この式のpは上で定義されているとおりであるが、とりわけ1であり、qは上で定義されているとおりであるが、とりわけ1であり、R26は上で定義されているとおりであって、とりわけ水素であり、R27は式(IX)に関連して上で定義されているとおりであって、とりわけC715基である)であり、あるいは式(XIII)、すなわち、
CH≡C(CH2pN(R26)SO227 (XIII)
の化合物(この式pは上で定義されているとおりであるが、とりわけ1であり、R26は上で定義されているとおりであって、とりわけエチルであり、R27は式(IX)に関連して定義されているとおりであって、とりわけC817基である)である。
【0077】
別の実施形態において、上記の方法で用いられるアルキレンモノマーは式(XIV)、すなわち、
28C≡C(CH2nSiR293031 (XIV)
の化合物(この式のR28は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、R29、R30、R31はアルキル又はアルコキシから独立に選択され、とりわけC1-6アルキル又はアルコキシである)である。
【0078】
好ましいR28基は水素又はアルキルであり、とりわけC1-6アルキルである。
【0079】
好ましいR29、R30、R31基はC1-6アルコキシ、とりわけエトキシである。
【0080】
一般には、処理すべき基材を、ガス状態の(任意選択的にはナノ粒子と組み合わせての)被着させるべきモノマーと一緒にプラズマチャンバー内に配置し、チャンバー内にグロー放電を生じさせ、好適な電圧を印加する。印加電圧はパルス化してもよい。
【0081】
ポリマーコーティングは、パルス状の被着条件下と連続波プラズマ被着条件下の両方で製造することができるが、コーティングのより精密な制御を容易にし従ってより均一なポリマー構造の形成を容易にするので、パルス状のプラズマがより好ましかろう。
【0082】
ここで使用する「ガス状態」という表現は、単独であるかあるいは混合物での、ガス又は蒸気を指し、そしてまたエーロゾルも指す。
【0083】
プラズマ重合を有効なやり方で行う正確な条件は、ポリマーの特性、製作材料と細孔の大きさの両者を含めた処理基材の特性などの因子に依存していろいろであり、日常的な方法及び/又は手法を使って決められる。
【0084】
本発明の方法で使用するのに好適なプラズマとしては、高周波(RF)、マイクロ波又は直流(DC)によって発生されるものなどの非平衡プラズマが挙げられる。それらは、当該技術分野で知られているように大気圧又は大気圧より低い圧力で機能することができる。とは言え、それらは特に高周波(RF)により発生される。
【0085】
ガス状プラズマを発生させるのには様々な形態の装置を利用することができる。一般には、これらはプラズマを発生させることができる容器又はプラズマチャンバーを含む。そのような装置の特定の例は、例えば国際公開第2005/089961号パンフレット及び同第02/28548号パンフレットに記載されているが、多くの他の通常のプラズマ発生装置が利用可能である。
【0086】
プラズマチャンバー内に存在するガスは、モノマー単独の蒸気を含むことができるが、必要に応じてそれをキャリヤガスと、具体的にはヘリウム又はアルゴンなどの不活性ガスと組み合わせてもよい。とりわけヘリウムは、モノマーの分解を最小限にすることができるので、好ましいキャリヤガスである。場合によっては、特にそれらが、例えば事前の吹き付け又は電着処理の結果として、あるいは基材のバルク材料中にナノ粒子が含まれている結果として、事前に基材上に存在していない場合には、ナノ粒子がモノマー蒸気及び/又はキャリヤガスと一緒に含まれる。しかし、必要に応じて、存在する場合であっても、ポリマーを被着しているときに追加のナノ粒子を表面に被着させてもよい。表面においてポリマー材料を生じさせるのには、ナノ粒子を表面にしっかりと付着させる効果がある。
【0087】
混合物として使用する場合、キャリヤガスに対するモノマー蒸気の相対量は当該技術分野において慣用の手順に従って適切に決定される。加えるモノマーの量は、ある程度は、使用する特定のモノマーの特性、処理する基材の特性、プラズマチャンバーの大きさなどに依存する。一般に、慣用のチャンバーの場合、モノマーは50〜250mg/minの量で、例えば100〜150mg/minの流量で、送給される。とは言うものの、流量は選定した反応器の大きさと一度に処理することを求められる基材の数とに依存して様々であることが理解されよう。そしてこれはひいては、必要とされる年間処理能力と資本支出などの検討事項に依存する。
【0088】
ヘリウムなどのキャリヤガスは一定の流量で、例えば5〜90スタンダード立方センチメートル/分(sccm)の流量で、例として15〜30sccmで、供給するのが好適である。場合によっては、キャリヤガスに対するモノマーの比は100:0〜1:100の範囲内、例えば10:0〜1:100の範囲内、特におよそ1:0〜1:10の範囲内である。選ばれる正確な比は、プロセスにより必要とされる流量が得られるのを保証するようにされる。
【0089】
場合によっては、予備的な連続出力のプラズマをチャンバー内で例えば15秒〜10分間、例として2〜10分間、生じさせることができる。これは表面の前処理工程として働いて、モノマー自体が表面に容易に付着し、その結果重合が起こるにつれて表面にコーティングが「成長」するのを確実にすることができる。この前処理工程は、モノマーがチャンバー内に導入される前に、不活性ガスのみの存在下において行うことができる。
【0090】
その後、少なくともモノマーが存在するときには、プラズマをパルスプラズマに切り換えて重合を進行させるのが好適である。
【0091】
全ての場合において、高周波電圧、例えば13.56MHzの電圧を印加して、グロー放電を生じさせるのが好適である。これは電極を使って印加され、電極はチャンバーの内部にあっても外部にあってもよいが、より大きなチャンバーの場合には一般に内部にある。
【0092】
好適には、ガス、蒸気又はガス混合物を少なくとも1スタンダード立方センチメートル/分(sccm)、好ましくは1〜100sccmの範囲の流量で供給する。
【0093】
モノマー蒸気の場合は、これを、モノマーの特性、チャンバーの大きさ、及びパルス電圧を印加しながらの特定の操業時における製品の表面積に依存して、80〜300mg/minの流量で、例えば約120mg/minで、供給するのが好適である。とは言うものの、規定の処理時間に関して変動しそしてまたモノマーの特性と必要とされる技術的効果とに依存もする一定の総モノマー供給量であることが、工業規模の用途にとってはより適切であろう。
【0094】
ガス又は蒸気は、任意の慣用の方法を使ってプラズマチャンバーへ送給することができる。例えば、それらをプラズマ領域中へ引き寄せ、注入し、又はポンプで送り込むことができる。具体的に言えば、プラズマチャンバーを使用する場合には、ガス又は蒸気を排気ポンプを使って引き起こされるチャンバー内の圧力の低下の結果としてチャンバー内に引き寄せてもよく、あるいは液体の取り扱いにおいて普通であるように、それらをチャンバー内にポンプで送り込み、スプレーし、滴下し、電気的に電離させ、又は注入してもよい。
【0095】
重合は、0.1〜400mtorr、好適には約10〜100mtorrの圧力に保持した、例えば式(I)の、化合物の蒸気を使って行うのが好適である。
【0096】
印加される場は、連続場又はパルス場として印加される、5〜500W、例えば20〜500Wの出力のもの、好適には約100Wピーク出力のもの、であるのが好適である。使用するときには、パルスは好適には、非常に低い平均出力をもたらすシーケンスで、例えばオン時:オフ時の比が1:100〜1:1500の範囲であるシーケンスで印加される。そのようなシーケンスの特定の例は、出力が20〜50μs間、例えば約30μs間オンであり、1000〜30000μm間、特に約20000μs間オフであるシーケンスである。このやり方で得られる典型的な平均出力は0.01Wである。
【0097】
場は、式(I)の化合物と基材の特性に応じて、30秒〜90分、好ましくは5〜60分、印加するのが好適である。
【0098】
プラズマチャンバーは、多数の基材を収容するのに十分な容積であるのが好適である。
【0099】
本発明により基材を製造するのに特に好適な装置と方法は、国際公開第2005/089961号パンフレットに記載されており、その内容は参照によってここに組み入れられる。
【0100】
特に、このタイプの容積の大きなチャンバーを使用する場合、プラズマはパルス場としての電圧で、0.001〜500W/m3の平均出力で、例えば0.001〜100W/m3、好適には0.005〜0.5W/m3で、作られる。
【0101】
これらの条件は、大きなチャンバー内で、例えば、プラズマ帯域の容積が500cm3より大きい、例えば0.1m3以上、例として0.5〜10m3、好適には約1m3であるチャンバー内で、品質の良好な均一コーティングを被着させるのに特に適している。この方法で形成した層は機械的強度が良好である。
【0102】
チャンバーの寸法は、処理する特定の基材又は一群の基材を収容するように選ばれる。例えば、一般に立方形のチャンバーは広範囲の用途に適しているが、必要ならば、細長い又は長方形の、あるいは実際に円筒状の、もしくは他の任意の適当な形状の、チャンバーを製作してもよい。
【0103】
チャンバーは、バッチ処理を可能にするよう、密閉可能な容器であってもよく、あるいはインライン装置として連続プロセスで利用するのを可能にするよう、基材のための入口と出口を含んでもよい。特に後者の場合、チャンバー内でプラズマ放電を生じさせるために必要な圧力条件は、例えば「ホイッスル漏れ」のある装置で慣用的なように、高容量のポンプを使って維持される。しかし、基材を大気圧で、又はそれに近い圧力で処理して「ホイッスル漏れ」の必要をなくすことも可能である。
【0104】
本発明の方法で使用することができる基材は多様である。それらには、例えば、布帛や、布帛を作るのに用いられる糸又は繊維が含まれる。そのほかの基材としては、完成品の服飾又は衣類全般、特に、トレーニングシューズ及びスポーツシューズ、そしてまたハイファッションシューズを含めた、靴類、例えば国際公開第2007/083124号パンフレットに記載されたファッションアクササリー類、を挙げることができる。更に、基材は、非常に高度の撥液性が望ましいことがある硬質材料、例えばポリマー材料、金属、ガラス、木材、石材、複合材料、コンクリート、レンガ、又はその他の建設材料を含むことができる。これらの硬質材料は、消費財を製造する際に使用するようにしてもよく、あるいはこれらの消費財は既に製作されていてもよい。これらには、例えば、例として国際公開第2007/083122号パンフレットに記載されたような、電気又は電子装置が含まれる。これらには、小さな携帯用電子機器、例えば携帯電話、携帯用小型無線呼出し機、ラジオ、補聴器、ラップトップコンピュータ、ノートパソコン、パームトップコンピュータ、携帯情報端末(PDA)などや、屋外照明装置、ラジオアンテナ及びその他の形態の通信設備、キーボードなどの卓上型機器や、例えば制御室で用いられる計装機器、音響再生で用いられ拡声器、マイクロホン、リンガー、ブザーなどの変換器を利用する装置、またそれらの構成部品、例えばプリント基板(PCB)、トランジスタ、抵抗器、電子部品、半導体チップ、そしてまた音響装置で用いられる薄膜あるいは振動板など、が含まれる。とは言え、とりわけ、コーティングは完全に組み立てた装置、例えば完全に組み立てた携帯電話、あるいはマイクロホンの外表面に適用される。そのような場合、ポリマー層は、液体が内部の構成部品に達するのを防ぐように、例えば外部ケーシング又はフォームカバー、そしてまた制御ボタンやスイッチなどの露出された構成部品に適用される。
【0105】
本出願人らは、装置が異なる基材材料、例えば種々のプラスチック(発泡プラスチックを含む)、金属及び/又はガラス表面の組み合わせなど、を含む場合を含めて、装置の表面全体にわたりポリマー層が形成し、その結果思いもよらぬことに装置全体が撥液性にされる、ということを見いだした。水密の関係にない場合でさえも、例えば周囲のケーシングに融合されていない携帯電話の押しボタンの場合でさえも、このようにして被着されたポリマー層はボタンの縁部の周りから液が装置内へ入り込むのを防ぐのに十分撥液性である。このとおり、例えば携帯電話は、一般に液体による損傷に対し一般に非常に敏感であるが、本発明の処理後には、恒久的な損害を被ることなく、水中に完全に浸漬することができる。
【0106】
コーティングはいかなる液体に浸漬することも必要とせずに行われるので、この処理に付すことの結果として装置が作動する危険はない。
【0107】
更に、基材は、国際公開第2007/083121号パンフレットに記載されたような研究室の消耗品、あるいは国際公開第2008/053150号パンフレットに記載されたような微小流体デバイスを含むことができる。このような基材には、ピペットの先端、ろ過膜、マイクロプレート(96穴プレートを含む)、免疫測定製品(例えばラテラルフローデバイスなど)、遠心チューブ(マイクロ遠心チューブを含む)、マイクロチューブ、標本チューブ、試験管、採血管、平底管、無菌で製作された容器、一般的な実験器具、ビュレット、キュベット、針、皮下注射器、サンプルバイアル/瓶、ねじ蓋容器、秤量瓶、そしてまた流体の閉じ込めと流動のための室と孔とを有する小型化装置であるマイクロ流体デバイス又はナノ流体デバイスが含まれる。
【0108】
織製膜及び不織膜を含めたろ過膜と媒体も、本発明との関連で使用するための基材を構成することができる。
【0109】
このとおり、基材自体は、天然又は合成の繊維又はポリマー、金属、ガラス、そして例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ポリオレフィン、アセタール、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、炭化水素又はフルオロカーボンなど、例としてポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP又はTPX(商標))、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリオキシメチレン(POM)、ナイロン(PA6)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、及びエチレン−クロロトリフルオロエチレン(E−CTFE)など、を含めた各種の材料を含むことができる。
【0110】
上述の本発明の方法を使用して得られた新規な基材は、本発明の更なる実施形態を構成する。
【0111】
次に、本発明を実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0112】
〔例1〕
例えば布帛試料といったコーティングのための基材を、処理用容積が約300リットルのプラズマチャンバーに入れる。このチャンバーを、質量流量制御器及び/又は液体質量流量計及び必要に応じ混合インジェクタ又はモノマーリザーバを通し、必要なガス又は蒸気の供給源に接続する。
【0113】
チャンバーを3〜10mtorrのベース圧力まで排気してから、圧力が80mtorrに達するまでチャンバー内にヘリウムを20sccmで流入させる。その後、300Wで13.56MHzのRFを使用して4分間連続出力プラズマを発生させる。
【0114】
この時間の経過後、1.5mg/mlの濃度で銀のナノ粒子(1〜10nm)を含有している、次式、すなわち、
【0115】
【化8】

【0116】
の1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアシレート(CAS#27905−45−9)をチャンバー内に120mg/minの流量で入れて、プラズマを、出力が30μs間オンであり20ms間オフであるピーク出力100wのパルスプラズマに40分間切り換える。40分の終了後に、プラズマ出力を処理用のガス及び蒸気とともに停止し、チャンバーを排気してベース圧力に戻す。次に、チャンバーを大気圧にして基材を取り出す。
【0117】
耐摩耗性及び耐洗濯性である、非常に撥水性且つ撥油性の表面が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子とポリマー材料との組み合わせをチャンバー内にある表面にイオン化又は活性化技術を使って適用することを含む、基材上に撥液性表面を形成するための方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子が銀、パラジウム、金、シリコーン、シリカ、二酸化チタン又はポリマーのナノ粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ粒子の平均直径が1〜500nmである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー材料が疎水性及び/又は疎油性である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
布帛、繊維、衣料品、靴、電子もしくは電気装置又はその構成部品、研究室用消耗品、ろ過用の媒体又は膜、あるいはマイクロ流体デバイスから選ばれる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
最初の工程において、ナノ粒子を前記チャンバー内の前記基材の表面に配置し、そしてその後の工程において、前記基材をイオン化又は活性化条件に、当該条件下で前記ポリマー材料を生成することができるモノマーの存在下でさらす、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子をイオン化又は活性化技術を利用して前記表面に配置する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
基材をイオン化又は活性化条件に、当該条件下でポリマーを生成することができるモノマーとナノ粒子との存在下でさらして、当該ナノ粒子と当該ポリマー材料とを単一の工程で形成する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子を前記基材へ適用されるモノマー中に分散させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記イオン化又は活性化条件がプラズマ処理を含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記プラズマがパルス状である、請求項11記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー材料を、式(I)、すなわち、
【化1】

の化合物(この式のR1、R2、R3は、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールから独立に選択され、R4は−X−R5基(この式中のR5はハロゲン、アルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合基、式−C(O)O−の基、式−C(O)O(CH2nY−の基(式中のnは1〜10の整数であり、Yはスルホンアミド基である)、又は−(O)p6(O)q(CH2t−基(式中のR6は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、pは0又は1、qは0又は1であり、そしてtは0又は1〜10の整数であるが、但しqが1の場合は、tは0以外である)である)、
式(V)、すなわち、
【化2】

の化合物(この式中のR8、R9、R10、R11、R12、R13は全て、水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールから独立に選ばれ、Zは橋架け基である)、
式(VII)、すなわち、
【化3】

の化合物(この式中のR16、R17、R18、R19、R20は水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されているアリールから独立に選ばれ、R21はX−R22基(この式のR22はアルキル又はハロアルキル基であり、Xは結合基又は式−C(O)O(CH2xY−の基(この式のxは1〜10の整数、Yは結合基又はスルホンアミド基である)、又は−(O)p23(O)s(CH2t−基(この式のR23は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、pは0か又は1、sは0か又は1であり、そしてtは0か又は1〜10の整数であるが、但しsが1の場合、tは0以外である)である)である)、
式(VIII)、すなわち、
24−C≡C−X1−R25 (VIII)
の化合物(この式中のR24は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、X1は結合基又は橋架け基であり、R25はアルキル、シクロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリール基である)、又は、式(XIV)、すなわち、
28C≡C(CH2nSiR293031 (XIV)
の化合物(この式のR28は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル又は任意選択的にハロゲンで置換されたアリールであり、R29、R30、R31はアルキル又はアルコキシから独立に選択され、とりわけC1-6アルキル又はアルコキシである)、
から選ばれるモノマーの重合によって生成させる、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
イオン化又は活性化技術を使用して、撥液性の表面を形成するよう表面に被着されたナノ粒子とポリマー材料との組み合わせを有する基材。

【公表番号】特表2013−517119(P2013−517119A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548475(P2012−548475)
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050025
【国際公開番号】WO2011/086368
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(508216699)ピーツーアイ リミティド (12)
【Fターム(参考)】