説明

播種済み育苗容器搬送方法および播種済み育苗容器搬送装置

【課題】小規模育苗作業における育苗容器の搬送が人手による手作業で行うため、重労働であるという課題がある。
【解決手段】播種済み育苗容器Aを所定期間育苗する育苗器12と、該育苗器12の近傍所定位置に設置した播種用移送台1との間に積み出し装置10および搬送用移送台11を設置し、播種済み育苗容器Aを上下二段に積み上げ、上下二段に積み上げた二段積み育苗容器Aを搬送用移送台11により、播種用移送台1により送り出される後続の二段積み育苗容器Aにより先行二段積み育苗容器Aを押して搬送用移送台11上を移動させて前記育苗器12にまで搬送し、前記搬送用移送台11の終端に搬送された播種済み育苗容器Aを育苗器12内に搬入して所定期間育苗する播種済み育苗容器搬送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種済み育苗容器搬送方法および播種済み育苗容器搬送装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、育苗容器を移送する移送ロールを複数並設した移送台の上方に、床土供給装置と種子供給装置と覆土供給装置を設け、播種用移送台で播種済み育苗容器を積み上げ、10段ほど積み上げた育苗容器を、パレット上に押し出し、数百枚の育苗容器をフォークリフトにより運搬する構成は、公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−323828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、数百枚の育苗容器をフォークリフトにより運搬する構成のため、規模の大きな場合有効であるが、規模の小さい場合、コストが高くなるという課題がある。
播種済みの育苗容器は一枚当たり約7Kgあり、規模の小さい場合でも、手作業での播種済みの育苗容器の運搬は非常な重労働となるが、播種済みの育苗容器は多くの場合所定期間育苗器で育苗するので、育苗器への搬入のため、この運搬の重労働は避けられない。
そこで、本願は、播種済み育苗容器の重ねる段数と運搬を簡便な方法で行えるように工夫し、播種育苗作業の設備も含めた全体コストを低くし、労働の軽減化を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、播種済み育苗容器Aを所定期間育苗する育苗器12と、該育苗器12の近傍所定位置に設置した播種用移送台1との間に積み出し装置10および搬送用移送台11を設置し、播種用移送台1に空の育苗容器Aを供給して、播種用移送台1により移送中の育苗容器Aに上方から床土と水と種子と覆土を供給して播種し、播種用移送台1の終端から播種用移送台1の駆動力による慣性によって積み出し装置10の積み上げ用移送台15に播種済み育苗容器Aを受け渡し、積み出し装置10で播種済みの一枚目育苗容器Aを一旦持ち上げて支持体25により支持して待機させ、この播種済みの一枚目育苗容器Aの下に播種済みの二枚目育苗容器Aを受け入れ、受け入れた播種済みの二枚目育苗容器Aを播種済みの一枚目育苗容器Aごと持ち上げて上下二段に積み上げ、これを反復して上下二段に育苗容器Aを重ね、上下二段に積み上げた先行の二段積み育苗容器Aを送り体37により搬送用移送台11の始端部に送り出して搬送用移送台11に受け渡し、先行の二段積み育苗容器Aは積み上げ用移送台15から送り出された後続の二段積み育苗容器Aにより押され、これを反復して、二段積み育苗容器Aを搬送用移送台11の終端まで移動させ、前記搬送用移送台11の終端に搬送された播種済み育苗容器Aを育苗器12内に搬入して所定期間育苗する播種済み育苗容器搬送方法としたものである。
本発明は、播種用移送台1の終端から積み出し装置10の積み上げ用移送台15の所定位置にまで受け渡された播種済み育苗容器Aを早送りして後続の播種済み育苗容器Aとの間に間隔を形成し、後続の播種済み育苗容器Aが所定位置にまで進む間に播種済みの一枚目育苗容器Aを持ち上げて支持体25により支持して待機させる播種済み育苗容器搬送方法としたものである。
本発明は、前記送り体37は、前後一対の横軸回転の歯車36に掛け回したチエン38うちの下側を移動するチエン38により移動して二段積み育苗容器Aを送り出し、積み出し装置10の積み上げ用移送台15の終端から搬送用移送台11に受け渡す播種済み育苗容器Aを早送りして後続の播種済み育苗容器Aとの間に間隔を形成し、
後続の播種済み育苗容器Aが搬送用移送台11にまで進む間に前記送り体37を上方反転させて戻り移動させる播種済み育苗容器搬送方法としたものである。
本発明は、空の育苗容器Aを移送する播種用移送台1の上方に床土供給装置2と種子供給装置3と覆土供給装置4を設け、前記播種用移送台1の終端には播種済みの育苗容器Aを持ち上げる回転ローラ20と、回転ローラ20により持ち上げた育苗容器Aを支持する支持体25と、該支持体25により播種済みの一枚目育苗容器Aの下に播種済みの二枚目育苗容器Aを上下二段に積み上げ支持されている播種済み二段育苗容器Aを送り出す送り体37とを有する積み出し装置10の積み上げ用移送台15の始端部を接続し、積み上げ用移送台15の終端には播種済み育苗容器Aを搬入して所定期間育苗する育苗器12に搬送する搬送用移送台11の始端部を接続し、該搬送用移送台11は、フレーム45に自由回転の移送ローラー47を複数並設し、前記積み上げ用移送台15から送り出された播種済み二段育苗容器Aが前記積み上げ用移送台15から送り出される後続の播種済み二段育苗容器Aにより押されて搬送用移送台11の終端まで搬送するように構成した播種済み育苗容器搬送装置としたものである。
本発明は、積み出し装置10の積み上げ用移送台15には移送方向に移送ローラー17を複数並設し、該移送ローラー17は、播種用移送台1からの育苗容器Aを受け入れるときは自由回転し、所定位置に迄育苗容器Aが進入すると、積み上げ用モーター18に通電して早送り駆動回転する構成とし、先行育苗容器Aを上方に持ち上げるための後続の育苗容器Aとの間に間隔を形成する構成とした播種済み育苗容器搬送装置としたものである。
本発明は、前記送り体37は、前後一対の横軸回転の歯車36に掛け回したチエン38に取付け、前記積み出し装置10の積み上げ用移送台15の終端または搬送用移送台11の始端には、積み上げ用移送台15から搬送用移送台11に受け渡す播種済み二段育苗容器Aを早送りする早送りローラー48を設けた播種済み育苗容器搬送装置としたものである。
本発明は、前記積み出し装置10の送り体37は播種済み二段育苗容器Aのうちの上段器育苗容器Aの後端に接触する上段当接部70と播種済み二段育苗容器Aのうちの下段器育苗容器Aの後端に接触する下段当接部71とを設け、上段当接部70と下段当接部71は上下二段の育苗容器Aの夫々の後端に共に当接する構成とした播種済み育苗容器搬送装置としたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、播種用移送台1と積み出し装置10と搬送用移送台11とを設置するだけで、播種用移送台1の始端部で空の育苗容器Aを播種用移送台1に供給する作業者と、搬送用移送台11の終端で育苗器12に育苗容器Aを搬入する作業者の二人で作業を行うことができ、人件費を低くでき、それゆえ、小規模な作業場においても、コストを掛けず、連続播種作業を行って、播種作業に要する作業時間を短縮し、しかも、重い播種済み二段育苗容器Aの運搬作業から解放され、供給作業者と搬入作業者の二人作業も可能となって、人件費を低くできる。
請求項2の発明では、後続の播種済み育苗容器Aが進む間に先行する播種済みの一枚目の育苗容器Aを持ち上げて支持体25により支持するので、積み上げが確実にできる。
請求項3の発明では、後続の播種済み育苗容器Aが進む間に先行する播種済みの一枚目の育苗容器Aを早送りするので、送り体37の上方反転を確実にでき、送り出し作業を円滑・確実にする。
請求項4の発明では、搬送用移送台11による搬送は播種用移送台1からの後続の二段積み育苗容器Aにより押して行えるので、搬送用移送台11を軽量に構成でき、そのため、搬送用移送台11の設置を容易にできる。
請求項5の発明では、後続の播種済み育苗容器Aが進む間に先行する播種済みの一枚目の育苗容器Aを持ち上げて支持体25により支持するので、積み上げが確実にできる。
請求項6の発明では、後続の播種済み育苗容器Aが進む間に先行する播種済みの一枚目の育苗容器Aを早送りするので、送り体37の上方反転を確実にでき、送り出し作業を円滑・確実にする。
請求項7の発明では、送り体37の送り出しを円滑かつ確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】播種済み育苗容器搬送装置の概略図。
【図2】積み出し装置の概略平面図。
【図3】同概略正面図。
【図4】同概略側面図。
【図5】積み出し装置の一部省略側面図。
【図6】積み出し装置の一部省略平面図。
【図7】積み出し装置の一部省正面図。
【図8】送り体の斜視図。
【図9】同側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施例を図面により説明すると、1は育苗容器Aに床土と種子と覆土を供給を移送する播種用移送台であり、播種用移送台1の上方始端部側には移送中の育苗容器Aに床土を供給する床土供給装置2を設け、床土供給装置2の移送方向下手側には移送中の育苗容器Aに種子を供給する種子供給装置3を設け、種子供給装置3の移送方向下手側には移送中の育苗容器Aに覆土を供給する覆土供給装置4等を設けている。
即ち、播種用移送台1上には、前記床土供給装置2等の他に、床土を均平する回転ブラシや灌水装置を設け、移送中の育苗容器Aに播種するように構成されていればよい。
播種用移送台1の終端には、積み出し装置10を設ける。積み出し装置10は、播種された育苗容器Aを上下二段重ねにし、二段重ねにした育苗容器Aを搬送用移送台11により育苗器(育苗ハウス)12まで搬送し、播種済み二段育苗容器Aを育苗器12に搬入する。
したがって、小規模な圃場に移植する苗を得るための播種作業と育苗作業を連続して行え、省力化を図る。
【0009】
前記積み出し装置10は、前記播種用移送台1の終端に接続する積み上げ用移送台15を有し、積み上げ用移送台15のフレーム16には移送方向に移送ローラー17を複数並設する。移送ローラー17は、播種用移送台1から育苗容器Aを受け入れるときは自由回転し、所定位置に迄育苗容器Aが進入すると、積み上げ用モーター18に通電し、先行の育苗容器Aを早送り移送して、後続の育苗容器Aとの間に間隔を形成させると同時に、先行育苗容器Aを上方に持ち上げる。
育苗容器Aを上方に持ち上げる構成は任意であるが、本願では回転ローラ20により行う。回転ローラ20はアーム21の先端に回転自在に取付け、アーム21の基部をローラ取付軸22に固定する。23は固定用ボスである。回転ローラ20は、左右一対でかつ前後一対設け、図3において、イ方向に回転しながら移送ローラー17上の育苗容器Aの底面に当接し、そのまま育苗容器Aを持ち上げ、持ち上げられた育苗容器Aが支持体25により支持されると、そのまま、育苗容器Aの底面より離れて退避し、次の育苗容器Aを持ち上げるために待機する。
【0010】
支持体25は、回転ローラ20による育苗容器Aの上昇は許容するが、一旦上昇させた育苗容器Aは下降させないように保持するものである。支持体25は、アーム26の基部を取付軸27に回動自在に取付け、アーム26の上部には前記回転ローラ20上に突き出る支持部28を形成する。支持部28は、上方に至るに従い積み上げ用移送台15の左右中央に向かって次出るように傾斜させた誘導面29に形成し、誘導面29の上端には支持位置にて略水平となる支持面30に形成する。
支持体25は常時バネ31により積み上げ用移送台15の左右中央に向かって回動するように付勢され、積み上げ用移送台15の所定部分に当接させて支持位置にて待機し、育苗容器Aが上昇して誘導面29に当接すると、外側回動して育苗容器Aから退避し、育苗容器Aの底面が誘導面29の上端を通過すると、内側回動して、支持面30が育苗容器Aの底面の下方に位置して支持し、一旦上昇させた育苗容器Aを下降させない。
【0011】
支持体25の上方には、二段重ねにした育苗容器Aを搬送用移送台11に送る送り出し装置35を設ける。送り出し装置35は、積み上げ用移送台15の略左右中央上方位置に、前後一対の歯車36を軸装し、歯車36に一対の送り体37を設けたチエン38を掛け回して構成する。送り出し装置35は、回転ローラ20により育苗容器Aを二段に積み上げると、送り用モーター39に通電し、送り体37により育苗容器Aを搬送用移送台11に送り出し、支持体25上に次の育苗容器Aを積み上げて上下二段重ねにする。
40は始端側の歯車36の回転軸40、41は終端側の歯車36の回転軸である。
搬送用移送台11は、左右一対のフレーム45に支脚46を所定間隔を置いて複数設け、育苗器12と播種用移送台1との間に設置する。フレーム45には複数の移送ローラー47を所定間隔置いて複数設ける。移送ローラー47は全て自由回転とし、駆動回転させない。
【0012】
前記積み上げ用移送台15の終端または搬送用移送台11の始端部には、早送りローラー48を設ける。早送りローラー48は搬送用移送台11に受け渡された育苗容器Aを早送り移送して、後続の二段重ね育苗容器Aが搬送用移送台11に送り出される間に間隔を形成し、送り体37が後続の二段重ね育苗容器Aに接触するのを防止するためのものである。
実施例では、搬送用移送台11の始端部に早送りローラー48を設け、搬送用移送台11には駆動源を設けていないので、早送りローラー48の回転軸49にはプーリー50を設け、搬送用移送台11の始端部に積み出し装置10の積み上げ用移送台15の終端を接続した後に前記歯車36の回転軸回転軸41に設けたプーリー51との間にベルト52を掛け回す。
したがって、搬送用移送台11は軽量構成とし、設置が容易になる。
【0013】
また、搬送用移送台11は、所定長さのものを複数用意し、
播種用移送台1と育苗器(育苗ハウス)12までの距離により複数の搬送用移送台11を接続しても良い。
また、搬送用移送台11の早送りローラー48および移送ローラー47は、前記支持体25の支持面30と略同じ高さに位置させる。
前記積み上げ用移送台15のフレーム16には、育苗容器Aの進入検出スイッチ55を設け、進入検出スイッチ55が育苗容器Aの進入を検知すると、積み上げ用モーター18に通電し、移送ローラー17を駆動回転させて育苗容器Aを早送り移送し、後続の育苗容器Aとの間に間隔を形成させると同時に、回転ローラ20を回転させて育苗容器Aを支持体25が支持するまで上昇させる。
【0014】
前記回転ローラ20のローラ取付軸22には、カム体55Aを設け、カム体55Aの近傍には積み上げ検知スイッチ55Bを設ける。
一枚目の育苗容器Aが支持体25で支持されると、カム体55Aが検知スイッチ55Bに接触し、積み上げ用モーター18への通電を切る。
また、積み上げ用移送台15のフレーム16の所定位置には、支持体25上に育苗容器Aが二段積み上げられたことを検出する重ね検出スイッチ56を設け、重ね検出スイッチ56が二段重ねられたことを検知すると、送り用モーター39に通電し、送り体37により二段重ね育苗容器Aを搬送用移送台11に送り出す。
【0015】
重ね検出スイッチ56の近傍には、検知体57を設ける。検知体57は基部を取付軸58によりフレーム16に回動自在に取付け、検知体57の先端は移送方向の下手側に至るに従い低く傾斜させる。軸58より移送方向の上手側のフレーム16には検知体57を所定位置に待機させるストッパ59を設ける。検知体57の上方回動方向の二段目の育苗容器Aが積み上げられた位置に前記重ね検出スイッチ56を設ける。
前記送り体37の移動路には、二段重ね育苗容器Aの送り出しを検知する送り出し検知スイッチ65を設ける。送り出し検知スイッチ65は、二段重ね育苗容器Aを送り出す送り体37の移動路の終端に臨ませ、送り出し検知スイッチ65に送り出した送り体37が接触する位置に設ける。
【0016】
実施例では、送り出し検知スイッチ65は、終端側の歯車36の上方位置に設ける。
67は回転軸、68は傘歯車、69は歯車である。
図8,図9は、積み出し装置10の送り体37を示し、送り体37は播種済み二段育苗容器Aのうちの上段器育苗容器Aの後端に接触する上段当接部70と播種済み二段育苗容器Aのうちの下段器育苗容器Aの後端に接触する下段当接部71とを設け、上段当接部70と下段当接部71は夫々上下二段の育苗容器Aの後端に共に当接して送り出すように構成する。
【0017】
送り体37は、上部に取付用板部72を設け、取付用板部72の前側に縦板状の前記上段当接部70を設け、上段当接部70の下部に上段当接部70より前方に位置する下段当接部71を設ける。下段当接部71は当接面が上段当接部70より前方に位置すればよいが、送り体37が積み出し装置10の終端で上方回動するときに、育苗容器Aの後端と引っ掛かるのを防止するため、断面コの字形状に形成している。
73は補強板である。
【0018】
(実施例の作用)
播種済み育苗容器Aを所定期間育苗する育苗器12の近傍所定位置に播種用移送台1を設置し、播種用移送台1の終端に積み出し装置10の積み上げ用移送台15の始端部を接続し、積み上げ用移送台15の終端に搬送用移送台11の始端部を接続し、搬送用移送台11の終端を育苗器12の搬入口近傍に設置する。
次に、播種用移送台1の始端部に空の育苗容器Aを供給し、移送中の育苗容器Aは床土供給装置2の下方で床土の供給を受、灌水され、種子供給装置3の下方で種子の供給を受け、覆土供給装置4の下方で覆土の供給を受ける。
【0019】
播種されて播種用移送台1の終端に移送された育苗容器Aは、積み出し装置10の積み上げ用移送台15の移送ローラー17上に乗り移り、慣性により自由回転の移送ローラー17上をそのまま移動して進入検出スイッチ55に接触する。
進入検出スイッチ55に育苗容器Aが接触すると、積み上げ用モーター18に通電し、移送ローラー17を駆動回転させて育苗容器Aを早送り移送し、後続の育苗容器Aとの間に間隔を形成させると同時に、回転ローラ20を回転させて一枚目の育苗容器Aを支持体25が支持するまで上昇させる。
【0020】
支持体25は回転ローラ20により育苗容器Aが上昇すると、バネ31の弾力に抗して上昇する育苗容器Aにより誘導面29が外側に押され、支持体25は外側回動して育苗容器Aから退避し、育苗容器Aの底面が誘導面29の上端を通過すると、バネ31の弾力により内側回動して、支持面30が育苗容器Aの底面の下方に潜り込んで支持し、一旦上昇させた育苗容器Aを下降させずに待機させる。
一枚目の育苗容器Aが支持体25で支持されると、カム体55Aが検知スイッチ55Bに接触し、積み上げ用モーター18への通電を切る。
【0021】
一枚目の育苗容器Aが支持体25に支持されている間に、後続の二枚目育苗容器Aが播種用移送台1の終端から積み出し装置10の積み上げ用移送台15の移送ローラー17上に乗り移り、移送ローラー17上を移動して進入検出スイッチ55に接触し、進入検出スイッチ55は積み上げ用モーター18に通電し、移送ローラー17を駆動回転させて育苗容器Aを早送り移送し、後続の育苗容器Aとの間に間隔を形成させると同時に、回転ローラ20を回転させて二枚目の育苗容器Aを上昇させる。
【0022】
回転ローラ20により二枚目の育苗容器Aが上昇すると、バネ31の弾力に抗して上昇する二枚目の育苗容器Aにより誘導面29が外側に押され、支持体25は外側回動して退避し、二枚目の育苗容器Aの上面を一枚目の育苗容器Aの下面に押し当てて重ね、回転ローラ20は二段重ねのまま育苗容器Aを上昇させ、二枚目の育苗容器Aの底面が誘導面29の上端を通過すると、バネ31の弾力により内側回動して、支持面30が二枚目の育苗容器Aの底面の下方に潜り込んで支持する。
【0023】
二枚目の育苗容器Aが支持体25で支持されると、カム体55Aが検知スイッチ55Bに接触し、積み上げ用モーター18への通電を切り、上下二段重ねが終了する。
このように、播種用移送台1にて播種された播種済み育苗容器Aは上記作動を反復して上下二段に積み上げられる。
支持体25上に育苗容器Aが二段積み上げられると、重ね検出スイッチ56が二段積み上げられたことを検知して、送り用モーター39に通電し、送り体37により二段重ね育苗容器Aをそのまま搬送用移送台11に送り出す。
【0024】
この場合、積み出し装置10の送り体37は播種済み二段育苗容器Aのうちの上段器育苗容器Aの後端に接触する上段当接部70と播種済み二段育苗容器Aのうちの下段器育苗容器Aの後端に接触する下段当接部71とを設け、上段当接部70と下段当接部71は共に上下二段の育苗容器Aの後端に当接して送り出すように構成しているので、二段積み育苗容器Aを確実に送り出す。
【0025】
即ち、送り体37は、上部に取付用板部取付用板部72を設け、取付用板部72の前側に縦板状の前記上段当接部70を設け、上段当接部70の下部に上段当接部70より前方に位置する下段当接部71を設けているので、図9のように、上段当接部70と下段当接部71は共に二段積み育苗容器Aの夫々の後端に当接して送り出す。
また、下段当接部71は断面コの字形状に形成しているので、送り体37が積み出し装置10の終端で上方回動するときに、特に、上段の育苗容器Aの後端と引っ掛かるのを防止する。
【0026】
送り体37により送り出された二段重ね育苗容器Aは、歯車36の回転軸41の回転が増速されて伝達されている搬送用移送台11の早送りローラー48に乗り移り、搬送用移送台11に受け渡された育苗容器Aは早送りローラー48により早送り移送されて、後続の二段重ね育苗容器Aが送られる間に間隔を形成し、送り体37が後続の二段重ね育苗容器Aに接触するのを防止する。
【0027】
また、二段重ね育苗容器Aを送り出した送り体37はそのまま回転して送り出し検知スイッチ65に接触し、送り出し検知スイッチ65に送り体37が接触すると、送り用モーター39への通電を切り、送り体37および搬送用移送台11の早送りローラー48の回転を停止させる。
そして、後続の育苗容器Aが積み出し装置10により上下二段に積み上げられると、搬送用移送台11に送り出される。
【0028】
搬送用移送台11に送り出された二段重ね育苗容器Aは、搬送用移送台11により育苗器12まで搬送し、播種済み育苗容器Aを育苗器12に搬入する。
この場合、搬送用移送台11は、左右一対のフレーム45に支脚46を所定間隔を置いて複数設け、育苗器12と播種用移送台1との間に設置し、フレーム45には複数の移送ローラー47を所定間隔置いて複数設け、該移送ローラー47は全て自由回転とし、駆動回転させないので、搬送用移送台11の早送りローラー48により早送りされた播種済み二段育苗容器Aにより先行する播種済み二段重ね育苗容器Aを押し、播種済み二段重ね育苗容器Aは順に送られて、搬送用移送台11の終端に至る。
【0029】
搬送用移送台11の終端まで送られた播種済み育苗容器Aを育苗器12に搬入して所定期間育苗する。
したがって、搬送用移送台11は一切の駆動装置を不要とし、搬送用移送台11の始端部の早送りローラー48も積み出し装置10の駆動回転を伝達するから、フレーム45と支脚46と早送りローラー48により極めて軽量に構成することができる。
そのため、搬送用移送台11の設置は容易であり、播種用移送台1の設置場所と育苗器12の設置場所の選択範囲を広げることができ、播種育苗作業全般を容易にする。
【0030】
また、播種用移送台1により播種された播種済み育苗容器Aは、そのまま、積み出し装置10で自動的に上下二段に積み上げられ、積み上げが終わると、搬送用移送台11により自動的に育苗器12まで搬送されるので、重い播種済み育苗容器Aの運搬作業から解放され、播種・育苗作業の軽減化を向上させる。
また、搬送用移送台11は、早送りローラー48により育苗容器Aを早送りするものの、積み出し装置10から送り出された後続育苗容器Aにより先行育苗容器Aを搬送できる。
【0031】
したがって、播種用移送台1と積み出し装置10と搬送用移送台11を設置すると、播種用移送台1の始端部で空の育苗容器Aを播種用移送台1に供給する作業者と、搬送用移送台11の終端で育苗器12に育苗容器Aを搬入する作業者の二人で作業を行うことができ、人件費を低くできる。
それゆえ、小規模な作業場においても、コストを掛けず、連続播種作業を行って、播種作業に要する作業時間を短縮し、しかも、重い播種済み育苗容器Aの運搬作業から解放され、供給作業者と搬入作業者の二人作業も可能となって、人件費を低くできる。
【符号の説明】
【0032】
1…播種用移送台、2…床土供給装置、3…種子供給装置、4…覆土供給装置、10…積み出し装置、11…搬送用移送台、12…育苗器(育苗…ウス)、15…積み上げ用移送台、16…フレーム、17…移送ローラー、18…積み上げ用モーター、20…回転ローラ、21…アーム、22…ローラ取付軸、23…固定用ボス、25…支持体、26…アーム、27…取付軸、28…支持部、29…誘導面、30…支持面、31…バネ、35…送り出し装置、36…歯車、37…送り体、38…チエン、39…送り用モーター、40、41…回転軸、45…フレーム、46…支脚、47…移送ローラー、48…早送りローラー、49…回転軸、50…プーリー、51…プーリー、52…ベルト、55…進入検出スイッチ、55A…カム体、55B…積み上げ検知スイッチ、56…重ね検出スイッチ、57…検知体、58…取付軸、59…ストッパ、65…送り出し検知スイッチ、67…回転軸、68…傘歯車、69…歯車、70…上段当接部、71…下段当接部、72…取付用板部、73…補強板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種済み育苗容器Aを所定期間育苗する育苗器12と、該育苗器12の近傍所定位置に設置した播種用移送台1との間に積み出し装置10および搬送用移送台11を設置し、播種用移送台1に空の育苗容器Aを供給して、播種用移送台1により移送中の育苗容器Aに上方から床土と水と種子と覆土を供給して播種し、播種用移送台1の終端から播種用移送台1の駆動力による慣性によって積み出し装置10の積み上げ用移送台15に播種済み育苗容器Aを受け渡し、積み出し装置10で播種済みの一枚目育苗容器Aを一旦持ち上げて支持体25により支持して待機させ、この播種済みの一枚目育苗容器Aの下に播種済みの二枚目育苗容器Aを受け入れ、受け入れた播種済みの二枚目育苗容器Aを播種済みの一枚目育苗容器Aごと持ち上げて上下二段に積み上げ、これを反復して上下二段に育苗容器Aを重ね、上下二段に積み上げた先行の二段積み育苗容器Aを送り体37により搬送用移送台11の始端部に送り出して搬送用移送台11に受け渡し、先行の二段積み育苗容器Aは積み上げ用移送台15から送り出された後続の二段積み育苗容器Aにより押され、これを反復して、二段積み育苗容器Aを搬送用移送台11の終端まで移動させ、前記搬送用移送台11の終端に搬送された播種済み育苗容器Aを育苗器12内に搬入して所定期間育苗する播種済み育苗容器搬送方法。
【請求項2】
請求項1において、播種用移送台1の終端から積み出し装置10の積み上げ用移送台15の所定位置にまで受け渡された播種済み育苗容器Aを早送りして後続の播種済み育苗容器Aとの間に間隔を形成し、後続の播種済み育苗容器Aが所定位置にまで進む間に播種済みの一枚目育苗容器Aを持ち上げて支持体25により支持して待機させる播種済み育苗容器搬送方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記送り体37は、前後一対の横軸回転の歯車36に掛け回したチエン38うちの下側を移動するチエン38により移動して二段積み育苗容器Aを送り出し、積み出し装置10の積み上げ用移送台15の終端から搬送用移送台11に受け渡す播種済み育苗容器Aを早送りして後続の播種済み育苗容器Aとの間に間隔を形成し、後続の播種済み育苗容器Aが搬送用移送台11にまで進む間に前記送り体37を上方反転させて戻り移動させる播種済み育苗容器搬送方法。
【請求項4】
空の育苗容器Aを移送する播種用移送台1の上方に床土供給装置2と種子供給装置3と覆土供給装置4を設け、前記播種用移送台1の終端には播種済みの育苗容器Aを持ち上げる回転ローラ20と、回転ローラ20により持ち上げた育苗容器Aを支持する支持体25と、該支持体25により播種済みの一枚目育苗容器Aの下に播種済みの二枚目育苗容器Aを上下二段に積み上げ支持されている播種済み二段育苗容器Aを送り出す送り体37とを有する積み出し装置10の積み上げ用移送台15の始端部を接続し、積み上げ用移送台15の終端には播種済み育苗容器Aを搬入して所定期間育苗する育苗器12に搬送する搬送用移送台11の始端部を接続し、該搬送用移送台11は、フレーム45に自由回転の移送ローラー47を複数並設し、前記積み上げ用移送台15から送り出された播種済み二段育苗容器Aが前記積み上げ用移送台15から送り出される後続の播種済み二段育苗容器Aにより押されて搬送用移送台11の終端まで搬送するように構成した播種済み育苗容器搬送装置。
【請求項5】
請求項4において、積み出し装置10の積み上げ用移送台15には移送方向に移送ローラー17を複数並設し、該移送ローラー17は、播種用移送台1からの育苗容器Aを受け入れるときは自由回転し、所定位置に迄育苗容器Aが進入すると、積み上げ用モーター18に通電して早送り駆動回転する構成とし、先行育苗容器Aを上方に持ち上げるための後続の育苗容器Aとの間に間隔を形成する構成とした播種済み育苗容器搬送装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記送り体37は、前後一対の横軸回転の歯車36に掛け回したチエン38に取付け、前記積み出し装置10の積み上げ用移送台15の終端または搬送用移送台11の始端には、積み上げ用移送台15から搬送用移送台11に受け渡す播種済み二段育苗容器Aを早送りする早送りローラー48を設けた播種済み育苗容器搬送装置。
【請求項7】
請求項4または請求項5または請求項6において、前記積み出し装置10の送り体37は播種済み二段育苗容器Aのうちの上段器育苗容器Aの後端に接触する上段当接部70と播種済み二段育苗容器Aのうちの下段器育苗容器Aの後端に接触する下段当接部71とを設け、上段当接部70と下段当接部71は上下二段の育苗容器Aの夫々の後端に共に当接する構成とした播種済み育苗容器搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−109938(P2011−109938A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267161(P2009−267161)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000132219)株式会社スズテック (25)
【Fターム(参考)】