説明

播種装置

【課題】搬送部のベルトがスリップしない位置に駆動源を設置するとともに、搬送物の重量が最も増加される位置に別途駆動源を設けて、搬送部を円滑に搬送可能とし、作業効率を向上させた播種装置を提供する。
【解決手段】駆動源7により育苗箱8を搬送する搬送部3上に、搬送始端側sから順に、育苗箱8に床土を充填する床土充填部9と、この充填した床土に播種する播種部13と、この播種した床土を覆土する覆土部14と、この覆土した床土に灌水する灌水部15とを備え、床土充填部9から覆土部14までの搬送部3上に載置される育苗箱8の総重量を二分する搬送部3の位置に駆動源7を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源により育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端部から順に、育苗箱に床土を充填する床土充填部と、充填した床土に灌水する灌水部と、灌水させた床土に播種する播種部と、播種した床土を覆土する覆土部とを備える播種装置に関し、より詳細には、床土充填部から覆土部までの搬送部上に載置される育苗箱の総重量を二分する搬送部の位置に駆動源を配設する播種装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の播種装置には、各作業機が配置された搬送部(搬送ベルト)により搬送される育苗箱に、床土機で床土を入れ、その床土の表面を均平にした後、育苗箱隅部の余分な床土を取り除き、床土に灌水して播種機により播種し、これに覆土機で覆土するが、搬送ベルトを搬送上手側から供給搬送ベルトと前処理搬送ベルトと播種搬送ベルトに分割し、前処理搬送ベルト上に床土機等を配置し、播種搬送ベルト上に播種機と覆土機等を設け、各搬送ベルトによる搬送箱数をカウントする箱数計数センサ−を設け、箱数計数センサ−ごとに搬送箱数を集計し、その各集計値が設定値に達することにより各搬送ベルトと各作業機を順次停止して、所望数に対する処理箱数の過不足をなくして無駄の解消と播種能率を向上させるもの(例えば、特許文献1)や、コンベアの送り経路上に床土供給装置と、水稲用の第1播種装置と、野菜・花卉用の第2播種装置とを備えると共に、第1播種装置を用いた育苗箱に対する水稲の播種処理と、第2播種装置を用いた育苗箱に支持状態のポットトレーに対する野菜・花卉の播種処理との一方を選択する機構を備え、この機構で選択された播種処理モードに対応して育苗箱の余分の床土を取除く第1回転ブラシの高さを切換える制御手段を備えることで、水稲の播種処理と野菜・花卉の播種処理とに兼用可能なプラントで播種処理モードの切換を容易に行うもの(例えば、特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−284815号公報
【特許文献2】特開平10−276589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような播種装置では、装置後端部に設置された1台の駆動部(モータ)により、搬送部上に複数載置され、搬送始端側から各作業機による処理に伴い、順に重量が増加する育苗箱を搬送させるため、搬送部下手側のベルトが頻繁にスリップしてしまい、その都度ベルトの一時的な搬送停止によって、育苗箱を円滑に搬送できないという問題があった。
また、特許文献2のような播種装置では、搬送部の駆動部を装置に2台備えているものの、1方は搬送部の高速駆動用および他方を搬送部の低速駆動用に使い分けており、実質上搬送部を1台の駆動部で搬送させているため、上述同様の問題が生じ、作業効率が悪いという問題があった。
そこで、この発明の目的は、搬送部のベルトがスリップしない位置に駆動源を設置するとともに、搬送物の重量が最も増加される位置に別途駆動源を設けて、搬送部を円滑に搬送可能とし、作業効率を向上させた播種装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、駆動源により育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端側から順に、前記育苗箱に床土を充填する床土充填部と、該充填した床土に播種する播種部と、該播種した床土を覆土する覆土部と、該覆土した床土に灌水する灌水部とを備える播種装置において、前記床土充填部から前記覆土部までの前記搬送部上に載置される前記育苗箱の総重量を二分する前記搬送部の位置に、前記駆動源を配設することを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の播種装置において、前記搬送部は、前記駆動源により、搬送方向の上手側を機体後部側に向けて牽引搬送するとともに、前記搬送方向の下手側を機体後部側に向けて押動搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、駆動源により育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端側から順に、育苗箱に床土を充填する床土充填部と、この充填した床土に播種する播種部と、この播種した床土を覆土する覆土部と、この覆土した床土に灌水する灌水部とを備える播種装置において、床土充填部から覆土部までの搬送部上に載置される育苗箱の総重量を二分する搬送部の位置に駆動源を配設するので、育苗箱の荷重が集中しない位置での搬送部を、駆動源が搬送駆動することで、駆動軸に対する搬送部材のスリップを防止でき、円滑に育苗箱の搬送を行うことができる。従って、作業効率を向上させた播種装置を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、搬送部は、駆動源により、搬送方向の上手側を機体後部側に向けて牽引搬送するとともに、搬送方向の下手側を機体後部側に向けて押動搬送するので、床土充填部から覆土部までの育苗箱の長い搬送工程を、作用方向が異なる2つの搬送部により育苗箱を搬送させることで、育苗箱の搬送力を高めるとともに、駆動軸に対する搬送部材のスリップを防止でき、円滑かつ確実に育苗箱を搬送させることができる。従って、作業効率を向上させた播種装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一例を示す播種装置の全体側面図である。
【図2】搬送部を説明する播種装置の平面模式図である。
【図3】播種装置の播種部および覆土部の間の底面斜視図である。
【図4】播種部および覆土部間に設けた駆動源が搬送部に与える搬送作用方向を示す模式図である。
【図5】搬送部後端の拡大側面図である。
【図6】搬送部が育苗箱から受ける荷重の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明の一例を示す播種装置の全体側面図、図2は搬送部を説明する播種装置の平面模式図を示す。この例の播種装置1は、図1に示すように、複数のスタンド2で立設された、搬送部3を備える機台4の長手方向の搬送部3上には、搬送始端側sから搬送終端側eに向けて適宜間隔で順に各作業部5が配設されるものである。
【0011】
まず、図1に示すように、前後方向に適宜長さを有する機台4内部に沿って架設した、詳細を後述する搬送ベルトvなどからなる搬送部3は、後述する本発明要部の搬送モ−タなどの駆動源7などにより、搬送始端側sから搬送終端側eに向けて周回される。
【0012】
この搬送部3上を、長方形で比較的深さの浅い育苗箱8が、その長辺部を機体前後方向にし、互いに接触し合って切れ目のない連続状態で、搬送部3の周回により搬送始端側sから搬送終端側eに向けて搬送される。
【0013】
そして、搬送部3上の搬送始端側sには、まず床土充填部9が配設される。この床土充填部9は、それぞれ図示しないモ−タにより駆動するコンベヤによって床土ホッパ10内の床土を育苗箱8内に床土としての床土を充填するものである。
【0014】
次いで、それぞれ図示しないモ−タにより駆動される回転ロールで、播種ホッパ12内の種籾を、育苗箱8内の床土上に播種する播種部13が配設される。なお、床土充填部9と、播種部13との間には、育苗箱8内の床土の表面を均平にする均平部11aや、育苗箱8隅部の余分な床土を取り除くスミトリ部11bなどが配設される。
【0015】
さらに、この播種部13の後方には、それぞれ図示しないモ−タによって駆動するコンベヤにより覆土ホッパ15内の覆土を搬出し、育苗箱8内に播種された種籾に覆土する覆土部14が配設される。
【0016】
次いで、この覆土部14の後方には、搬送部3の中央近傍上に設けられた、図示しないモ−タにより駆動するポンプによって床土に灌水し、水分を与える灌水部16が配設される。
【0017】
そして、図2に示すように、搬送部3は、搬送ベルトvを、各作業部5ごとに分割して設置している。具体的には、搬送始端側sの範囲内を搬送させる搬送ベルトv1と、床土充填部9(均平部11aおよびスミトリ部11bを含む)の範囲内を搬送させる搬送ベルトv2と、播種部13の範囲内を搬送させる搬送ベルトv3と、覆土部14の範囲内を搬送させる搬送ベルトv4と、灌水部16の範囲内を搬送させる搬送ベルトv5と、搬送終端側eの範囲内を搬送させる搬送ベルトv6とに分けて設置される。なお、図2では、搬送部3の説明の便宜上、各作業部5の記載を省略して示した。
【0018】
そして、各搬送ベルトv1〜v2,v2〜v3,v3〜v4,v5〜v6間は、ギアg1〜g4で連動連結するとともに、搬送終端側eのギアg5を駆動源7aによって、搬送部3全体を搬送させる構成とされる。なお、搬送ベルトv4〜v5間は、伝達軸Rを介して連結されている。
【0019】
また、搬送部3中央に取付けられた駆動源7bは、後述する本願発明の要部をなす搬送モータである。
【0020】
また、灌水部16内を搬送させる搬送ベルトv5には、複数のローラrを等間隔に設置(図の例では3本だが、設置本数は限定されない)して、搬送ベルトv5を周回させるため、灌水して重量が増加した灌水部16内を搬送される複数の育苗箱8によって搬送ベルトv5がスリップすることなく、これら育苗箱8を確実に搬送することができる。
【0021】
従って、搬送部3により搬送される育苗箱8に床土充填部9で床土を入れ、その床土の表面を均平部11aで均平にした後、スミトリ部11bで育苗箱8隅部の余分な床土を取り除き、播種部13で育苗箱8内の床土に種籾を播種後、覆土部14で覆土させ、最後に灌水部16で灌水して一連の作業を終了するものである。
【0022】
なお、上述した播種装置1における各各作業部5の構造や作用などは、例えば特開平5−284815号公報や特開平8−154429号公報他などに開示される周知の技術であるため、それら詳細な説明は省略する。
【0023】
次に、本願発明の特徴である播種部について詳述する。図3は播種装置の播種部および覆土部の間の底面斜視図、図4は播種部および覆土部間に設けた駆動源が搬送部に与える搬送作用方向を示す模式図、図5は搬送部後端の拡大側面図、図6は搬送部が育苗箱から受ける荷重の変化を示すグラフである。
【0024】
まず、搬送部3を駆動させる駆動源7が、機体中央近傍位置の機体下部に設置される。ここで、図7に示すように、育苗箱8は、搬送始端側sの床土を投入されていない空箱状態から、床土充填部9での床土投入を最初に、機体後方へ向けて各作業部5を通過するごとに、その重量が増加される。特に、作業最初の床土投入時と、作業最後の灌水時における育苗箱8の重量増加が著しい傾向がある。
【0025】
そこで、駆動源7bの設置位置は、図3に示すように、搬送ベルトv1〜v6上であって、搬送始端側sの床土充填部9近傍における最初の育苗箱8の載置位置から、覆土部14で覆土した育苗箱8が、覆土部14から搬出された位置における育苗箱8の載置位置までの全ての育苗箱8の総重量を二分する位置である、播種部13と、覆土部14との間の搬送部3の下部とされる。
【0026】
そして、図4に示すように、搬送ベルトv3の後端部に設けられた駆動軸a1には、駆動源7bのモータ軸7cが連結されるとともに、このモータ軸7cに設けられたギアg3などを介して駆動源7bの駆動力が搬送ベルトv4の前端部に設けられた駆動軸a2に伝達される。
【0027】
従って、搬送部3は、駆動源7bにより搬送ベルトv3の駆動軸a1を介して搬送部3の全体を駆動させるとともに、搬送方向の上手側を機体後部側に向けて牽引搬送する構成とされる。
【0028】
また、図5に示すように、搬送部3は、従来のように、駆動源7aからモータ軸を介して搬送ベルトv6の後端部に設けられた駆動軸a3を駆動させて搬送部3の全体を駆動させるとともに、搬送方向の下手側を機体後部側に向けて押動搬送する構成とされる。
【0029】
以上のような構成にすることで、まず、搬送始端側sの床土充填部9近傍における最初の育苗箱8の載置位置から、覆土部14で覆土した育苗箱8が、覆土部14から搬出された位置における育苗箱8の載置位置までの全ての育苗箱8の総重量を二分する位置に駆動源7を設置したため、育苗箱8の荷重が集中しない位置での搬送部3を、駆動源7bが搬送駆動することで、駆動軸a1,a2に対する搬送ベルトv3,v4(搬送部3)のスリップを防止でき、円滑に育苗箱8の搬送を行うことができる。
【0030】
また、駆動源7bにより搬送ベルトv3の駆動軸a1を介して搬送方向の上手側を機体後部側に向けて牽引搬送するとともに、搬送方向の下手側を機体後部側に向けて押動搬送させるため、床土充填部9から覆土部14までの育苗箱8の長い搬送工程を、作用方向が異なる搬送部3により育苗箱8を搬送させることで、育苗箱8の搬送力を高め、円滑かつ確実に育苗箱8を搬送させることができる。
【0031】
以上詳述したように、この例の播種装置1は、駆動源7により育苗箱8を搬送する搬送部3上に、搬送始端側sから順に、育苗箱8に床土を充填する床土充填部9と、この充填した床土に播種する播種部13と、この播種した床土を覆土する覆土部14と、この覆土した床土に灌水する灌水部15とを備え、床土充填部9から覆土部14までの搬送部3上に載置される育苗箱8の総重量を二分する搬送部3の位置に駆動源7を配設するものである。
【0032】
加えて、搬送部3は、駆動源7により、搬送方向の上手側を機体後部側に向けて牽引搬送するとともに、搬送方向の下手側を機体後部側に向けて押動搬送させる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
なお、この発明は、あらゆる種子や籾など農作物の種籾を播種可能とする播種部を備える播種装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
3 搬送部
7a,7b 駆動源
8 育苗箱
9 床土充填部
13 播種部
14 覆土部
16 灌水部
a1,a2,a3 駆動軸
g1,g2,g3,g4,g5 ギア
v1,v2,v3,v4,v5,v6 搬送ベルト
s 搬送始端側
e 搬送終端側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により育苗箱を搬送する搬送部上に、搬送始端側から順に、前記育苗箱に床土を充填する床土充填部と、該充填した床土に播種する播種部と、該播種した床土を覆土する覆土部と、該覆土した床土に灌水する灌水部とを備える播種装置において、
前記床土充填部から前記覆土部までの前記搬送部上に載置される前記育苗箱の総重量を二分する前記搬送部の位置に、前記駆動源を配設することを特徴とする播種装置。
【請求項2】
前記搬送部は、前記駆動源により、搬送方向の上手側を機体後部側に向けて牽引搬送するとともに、前記搬送方向の下手側を機体後部側に向けて押動搬送することを特徴とする、請求項1に記載の播種装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−50296(P2011−50296A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201409(P2009−201409)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】