撮像におけるコントラストを強調するための組成物および方法
【課題】表面に親水性のポリマーを備え、コンピュータ断層撮影に用いられる比較的高濃度のコントラスト強調剤を含むリポソームの組成物の提供。
【解決手段】コレステロールと、少なくとも1種のリン脂質と、ポリマー鎖で誘導体化された少なくとも1種のリン脂質からなる平均直径を150ナノメータ未満のリポソームにヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入された組成物。
【解決手段】コレステロールと、少なくとも1種のリン脂質と、ポリマー鎖で誘導体化された少なくとも1種のリン脂質からなる平均直径を150ナノメータ未満のリポソームにヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入された組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
いくつかの医学的なX線撮像(X-ray imaging)技術は、相違する器官、組織、細胞等を含む被験体(subject)の関心領域(regions of interest)の様々なコントラスト(contrast)を検出することができる。これらの撮像技術のいくつかは、関心領域のコントラストを増加するため、1種以上のコントラスト強調剤(contrast-enhancing agents)の被験体への投与を利用する。このコントラスト強調剤は、相違する関心領域(areas of interest)間に存在するコントラストの相違を強調することができ、また薬剤(agents)の使用がなければ存在できないコントラストの相違を作り出すことができる。
【0002】
医学的なX線撮像は、特に、コントラストの相違の検出に用いる機器または機械(instruments or machines)に関して発展してきた。これらの発展としては、機器の感度の増加、機器の解像度の増加等が挙げられる。これらの発展は、1つには、かつてない医学的な撮像方法をもたらした。方法の一例として、全身撮像(whole-body imaging)は、被験体の全身の血管系の情報を明らかにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのX線撮像に用いる機器の発展に比べて、コントラスト強調剤の発展は実現していない。所望の溢血(extravasation)、腎臓毒性(renal toxicity)および被験体の体の特定領域の標的障害(inability to target specific areas)を超えて、X線を利用した医学的な撮像に用いる最新のコントラスト強調剤を、とりわけ、被験体の体を迅速に点検する(rapid clearance)ための全身撮像に適用するには限界がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面は、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成するものであり、この図面には、コントラスト強調剤の製剤(formulations)、その製剤を含有する医薬組成物(pharmaceutical compositions)、その製剤の製造方法およびその製剤の撮像(imaging)における使用方法が、下記の説明とともに説明されており、作成、組成物、方法等の実施例を説明するのに役立つものである。当然のことながら、この実施形態は、図解を目的として示すものであって、この実施の形態に限定するものではない。当然のことながら、下記のように、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、この図面に説明された実施形態の変更、修正および逸脱(deviations)が可能である。
【図1】コントラスト強調剤を含むリポソーム、または、コントラスト強調剤と関連付けられたリポソーム(liposomes containing or associated with contrast-enhancing agents)を調製する方法の一例100を説明するものである。
【図2】コントラスト強調剤を含むリポソーム、または、コントラスト強調剤と関連付けられたリポソームを調製する方法の他の一例200を説明するものである。
【図3】コントラスト強調剤を含むリポソーム、または、コントラスト強調剤と関連付けられたリポソームを調製する方法の他の例300を説明するものである。
【図4】4℃でPBSで透析したときのリポソーム化イオヘキソール製剤の一実施例に対する生体外安定性試験(in vitro stability test)の結果の例400を示すものである。全ヨウ素量は30mgI(mg iodine)である。
【図5】37℃でPBSに対して透析したときのリポソーム化イオヘキソール製剤(liposomaliohexol formulation)の一実施例に対する生体外血漿安定性試験(in vitro plasma stability test)の例の結果500を示すものである。全ヨウ素量(The total iodine content)は28mgI(mg iodine)である。
【図6】ポソーム化イオヘキサノール製剤の一実施例[475mgI/kgの処方で2.2kgのウサギ(rabbit)の静脈に注入する]が2回の追加注入で投与された静脈内投与後(intravenous administration)の異なる注入後時間(post-injection times)における複数の関心領域の時間減衰曲線(time-attenuation curves)の例600を示すものである。
【図7】34.8mgI/mlヨウ素IV注入(iodine IV injection)でリポソーム化イオヘキサノールを2.2kgのウサギに注入した一実施例の強調前および強調後(pre- and post-enhancement)のコンピュータ断層撮影(CT)撮像の例700を示すものである。左側のパネル(Left Panels)705,715はコントラスト前(pre-contrast)、右側のパネル(Right Panels)710,720は、注入後2時間18分、上側のパネル(Upper panels)705,710は、肝臓の位置に合わせて撮影した撮像、下側のパネル(Lower panels)715,720は、心臓の中間の位置(mid heart level)を撮影した撮像。
【図8】体積レンダリングされた(volume-rendered)ウサギの胴体(torso)のCT撮像の例800を示すものである。左側のパネル805は、コントラスト注入前の右側面図、右側のパネル810は、475mgI/kgのリポソーム化イオヘキサノールの一実施例を注入後2時間18分の右側面図。右側のパネル815に強調された血管床が見られることに注意。
【図9】リポソーム化イオヘキサノールの一実施例の注入前の撮像されたウサギの生体内(in vivo)の心臓905および注入後の時系列に撮像された複数のウサギの生体内の心臓910,915,920,925,930の体積レンダリングされたCT撮像の例900を示すものである。
【図10】超高解像度のCTスキャン(1cmあたり24線対)(24 line pair per cm)による死後のウサギ(心臓が動かない)[post-mortem rabbit (no cardiac motion)]の厚切りレンダリング(thick-slab rendering)を示すものである。ウサギは、リポソーム化イオヘキサノールの一実施例の2回目の注入後3.5時間で死んだ(sacrificed)。撮像は、0.5cmの視野(0.5-cm field of view)で1024×1024マトリクス(1,024 X 1,024 matrix)に合うように再製像(reconstructed)された。
【図11】ウサギの左側の冠状動脈(coronary artery)の高倍率の撮像の例1100を示すものである。
【図12】マイクロCT(micro CT)により10×10−3秒の間隔で得られたマウスの心臓1205,1210,1215,1220,1225,1230,1235,1240,1245を低速度で撮影した(time-lapse)冠状(coronal)の撮像の例1200を示すものである。
【図13】マイクロCTにより得られた腫瘍(ヒト扁平上皮細胞癌)[tumor (human squamous cell carcinoma)]を含むヌードマウス(nude mouse)の腹部領域(abdominal region)の撮像の例1300を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[詳細な説明]
[定義]
選ばれた用語または語句の定義は、以下に、かつこの開示全体に含まれている。これらの複数の定義は、用語の範囲内に含まれ、かつ実施に使用することができる複数の実施例および/または組成物の形態の例を含んでいる。これらの例は、これらの例に限定することを意図するものではなく、他の実施例を実施することが可能である。全ての用語の単数形および複数形は、それぞれの意味に含まれるものである。
【0006】
ここで「X線撮像(X-ray imaging)」とは、X線発生源を使用する多くの手順のいずれかに関係する。X線撮像の例は、コンピュータ断層撮影(Computed tomography)等を含むものである。
【0007】
ここで使用される「コンピュータ断層撮影」または「CT」または「CAT」は、X線放射線(X-ray radiation )を発生し且つ機器が回転しながら被験体の複数の領域にX線放射線を向ける回転X線機器または回転X線機械(rotating X-ray instrument or machine)を使用する手順に関係する。被験体に吸収されない放射線は、一般にデータとして検出され、記録される。そのデータは、通常、被験体の異なる複数の領域によるX線の差分吸収(differential absorption)に基づいて、器官および臓器の詳細な断面の撮像またはスライス(slices)を作成するコンピュータに送られる。高解像度のCTは、「マイクロCT」と呼ばれることがある。
【0008】
ここで「全身撮像(Whole body imaging)」は、例えばCTを使用して、被験体の全身の撮像を得る手順に関係する。全身撮像の一種において、全身の血管系(vasculature system)を検査することができる。血管系を検査する撮像は、一般に「血液プール撮像(blood pool imaging)」と呼ばれている。
【0009】
[説明]
本出願は、1以上のコントラスト強調剤(contrast-enhancing agents)を含むリポソーム(liposomes)、または1以上のコントラスト強調剤と関連付けられた(associated with)リポソームからなる組成物の例を開示している。一例において、リポソームは、比較的高濃度(relatively high concentrations)のコントラスト強調剤を含み、または比較的高濃度のコントラスト強調剤と関連付けられている。一例において、リポソームは、X線撮像(例えば、CT撮像)用の1種以上のコントラスト強調剤を含んでいる。一例において、コントラスト強調剤は、放射性(radioactive)を持っていない。
【0010】
一例において、リポソームは、このリポソームに結合し(attached)、またはこのリポソームと関連付けられた(associated with)1以上の親水性ポリマーを有している。一例において、親水性ポリマーはリポソームの表面に結合し、または関連付けられている。このリポソームは、被験体に投与されて、被験体の体内でコントラストを増大させることができる。一例においては、増大したコントラストは、長時間(an extended period of time)継続する。
【0011】
また、本出願は、リポソームおよびコントラスト強調剤を含む医薬組成物(pharmaceutical compositions)の例、および、コントラスト強調剤を含むリポソーム組成物の製造方法の例を開示している。また、本願は、X線撮像におけるこのリポソーム組成物の使用方法の例を開示している。
【0012】
[コントラスト強調剤]
ここで用いられる「コントラスト強調剤」は、通常、媒体(medium)を通過し、且つ媒体と相互作用をする場合の放射線(radiation)の減衰(attenuation)または、放射線のパワーまたは強度の低下(loss of intensity or power)に影響を及ぼす物質(substance)に関係する。コントラスト強調剤は、減衰を増加させるか、または低下させることができるものであることは勿論である。通常、ここで言及するコントラスト強調剤は、放射線の減衰を増加させることができるものである。一例において、ここで述べられているコントラスト強調剤は、X線撮像用のコントラスト強調剤である。一例において、コントラスト強調剤は、CTに用いることができる。一例においては、ここで用いられるコントラスト強調剤は、非放射性である。一つの具体例において、コントラスト強調剤は、ヨウ素を含有することができ、「ヨウ素含有(iodinated)」と呼ぶことができる。
【0013】
コントラスト強調剤は、様々な方法で分類することができる。一つの分類においては、例えば、ヨウ素含有コントラスト強調剤は、水溶性[例えば、モノヨードピリジン誘導体(monoiodinated pyridine derivatives)、ジヨードピリジン誘導体(di-iodinated pyridine derivatives)、トリヨードベンゼン環化合物(tri-iodinated benzene ring compounds)等]、不水溶性[例えば、プロピルアイオドン(propyliodone)等]、または油性(例えば、ケシ油中のヨウ素、ヨウ素を含むケシ油のヨウ化脂肪酸のエチルエステル等)とすることができる。
【0014】
一例において、ヨウ素含有コントラスト強調剤の1グループ(a grouping)は、水溶性である。この水溶性のヨウ素含有コントラスト強調剤は、トリヨウ化安臭香酸(tri-iodinated benzoic acid)の誘導体にすることができる。これらの化合物は、1以上のベンゼン環を有している。これらの化合物は、イオン性(ionic)であってもよく、また非イオン性(nonionic)であってもよい。好適な非イオン性の化合物としては、メトリザミド(metrizamide)、イオヘキソール(iohexol)、イオパミドール(iopamidol)、イオペントール(iopentol)、イオプロマイド(iopromide)、イオバゾール(ioversol)、イオトロラン(iotrolan)、イオジヘキサノール(iodixanol)等があるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
好適なイオン性のコントラスト強調剤の化合物は、弱酸性(約4.0〜6.5のpKa)または弱塩基性(約6.5〜8.5のpKa)である。通常、酸は1以上のプロトンを放出または供与する能力を有している。これらのプロトン化された形態において、酸は、通常、実質的に電気的に中性または帯電していない。プロトン化されていない形態においては、酸は、通常、実質的にマイナスに帯電している。好適な弱酸性剤は、1以上のカルボキシル基を有している。カルボキシル基は、プロトンを供与する能力を有している。カルボキシル基は、ベンゼン環に結合でき、そして/または、安臭香酸の一部にもなる。このような安臭香酸の例としては、アセトリゾエート(acetrizoate)、ジアトリゾエート(diatrizoate)、イオダミド(iodamide)、イオグリケート(ioglicate)、イオサラメート(iothalamate)、イオキシサラメート(ioxithalamate)、メトリゾエート(metrizoate)、ナトリウムメグルミンイオクサグレート(sodium meglumine ioxaglate)等があるが、これに限定されるものではない。
【0016】
通常、塩基は、1以上のプロトンを受容する能力を有している。これらのプロトン化された形態において、塩基は、通常、実質的にプラスに帯電している。プロトン化されていない形態においては、塩基は、通常、実質的に中性または帯電していない。好適な弱塩基性剤は、1以上の第1級アミン基を有している。アミンはプロトンを受容する能力を有している。弱塩基性剤としては、アミド(amides)がある。
【0017】
[リポソーム]
ここで用いる「リポソーム」は、通常、内部に空洞を有する球状(spherical)のまたはほぼ球状の粒子(particles)をいう。リポソームの壁は、脂質(lipids)の二分子層(bilayer)を含んでいる。これらの脂質は、リン脂質(phospholipids)とすることができる。多くの脂質および/またはリン脂質が、リポソームを形成するために用いられる。一つの例は、典型的なリン脂質によって水中で自然発生的に二分子層の小胞体を形成するか、または脂質の二分子層に安定的に組み込むことができる疎水基の部分と極性頭部基の部分と(hydrophobic and polar head group moieties)を有する両親媒性の脂質である。疎水基の部分は、二分子層の内部すなわち二分子膜を構成する疎水性の部位に接触しており、極性頭部基の部分は、二分子層の外部すなわち極性表面(polar surface)に配向している(oriented)。
【0018】
ここで用いられる「リン脂質」には、ホスファチジン酸(phosphatidic acid)(PA)、ホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycerol)(PG)、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)(PC)、卵ホスファチジルコリン(egg phosphatidylcholine)(EPC)、リソホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine)(LPC)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)(PE)、ホスファチジルイノシトール (phosphatidylinositol)(PI)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)(PS)およびこれらの2種以上の混合物があるが、これらに限定されるものではない。このタイプの小胞形成脂質(vesicle-forming lipids)は、典型的にはアシル鎖のような、2つの炭化水素鎖と極性頭部基とを有している。このクラス(class)に含まれるものとしては、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)(PE)、ホスファチジン酸(phosphatidic acid)(PA)、ホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycerol)(PG)、ホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol)(PI)、スフィンコミエリン(sphingomyelin)(SM)、さらに他のリン脂質がある。これらのリン脂質は、完全に飽和または部分的に飽和している。これらは、天然のまたは合成されたものである。他の例では、リポソームに含まれる脂質としてグリコリピド(glycolipids)がある。
【0019】
ここで述べられているリポソームの例に用いられるリン脂質は、約14から約24までの間の炭素原子の長さを有する2つの炭化水素鎖からなり、いずれも不飽和度が異なっている。これらのリン脂質のいくつかの例を以下に示す。以下に列挙したリン脂質は、単独または他のリン脂質と組み合わせて用いることができるが、このリスト(lists)が全てではない。ここに列挙されていない他のリン脂質を用いることもできる。
【0020】
[リン脂質]
1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Myristoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Myristoyl-2-Stearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン
(1-Myristoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Myristoyl-2-Stearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(POPA)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(POPE)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(POPG)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(POPS)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
(1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phosph-L-Serine])、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Pahnitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Myristoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
(1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glyceio-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-StearoyI-2-LinoleoyI-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-LinoIeoyI-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Stearoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、
1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Arachidonoyi-sn-GIycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycero1)])、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−オレオイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Oleoyl-2-Myristoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine、1−オレオイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Oleoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine、1−オレオイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Oleoyl-2-Stearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DMPA)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DMPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DMPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DMPG)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(DMPS)、1,2−ジペンタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipentadecanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DPPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DPPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(DPPS)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diheptadecanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DSPA)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DSPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DSPG)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジブロモステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dibromostearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジノナデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dinonadecanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジアラチドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diarachidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジヘネイコサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diheneicosanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dibehenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジトリコサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Ditricosanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジリグノセロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dilignoceroyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジミリストレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dimyristoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジミリステライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dimyristelaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミテライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitelaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dipalmitoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DOPA)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DOPE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DOPG)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(DOPS)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dielaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dielaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dielaidoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dilinolenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dilinolenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dilinolenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dieicosenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dierucoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])および1,2−ジネルボノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dinervonoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)。
【0021】
リポソーム組成物は、脂肪アルコール、脂肪酸および/またはコレステロールエステルまたは他の受容性医薬賦形剤(pharmaceutically acceptable excipients)が含まれるように製造することができる。例えば、リポソームは、大部分がリン脂質で構成された小胞またはリポソームを安定化させる脂質を含むことができる。例えば、約25〜40モル%のコレステロールを用いることができる。
【0022】
一つの具体例においては、リポソームのタイプとして「立体的に安定したリポソーム(sterically stabilized liposomes)」を用いることができる。立体的に安定したリポソームは、柔軟な水溶性(親水性)の高分子鎖[flexible water soluble(hydrophilic)polymer chains)を含んだ表面、またはこの高分子鎖で覆われた表面をもっている。これらの高分子鎖は、リポソームと血液血漿成分(blood plasma components)との間の相互作用を防止することができ、血漿成分は、血液の細胞によってリポソームを取り込み(uptake)、血液からリポソームを取り除く役割を果たす。立体的に安定したリポソームは、単核食細胞系(mononuclear phagocyte system)の器官、主に肝臓および脾臓[細網内皮系(reticulendothelial system またはRES]に取り込まれるのを防ぐことができる。このような立体的に安定したリポソームは「長循環リポソーム(long circulating liposomes)」とも呼ばれている。
【0023】
立体的に安定したリポソームは、高分子鎖で誘導体化(derivatized)された脂質またはリン脂質を含むことができる。通常用いられる脂質またはリン脂質としては、上記したいずれのものも用いることができる。一つの典型的なリン脂質は、活性化されたポリマーと結合しやすい反応性の高いアミノ基をもつホスファチジルエタノールアミン(PE)である。典型的なPEとしては、ジステアリルPE(distearyl PE)(DSPE)がある。
【0024】
立体的に安定したリポソームに用いるのに好適なポリマーの例としては、親水性ポリマーのポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリメチルオキサゾリン(polymethyloxazoline)、ポリエチルオキサゾリン(polyethyloxazoline)、ポリハイドロオキシプロピルメタクリルアミド(polyhydroxypropyl methacrylamide)、ポリメタクリルアミド(polymethacrylamide)、ポリジメチルアクリルアミド(polydimethylacrylamide)、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ハイドロオキシメチルセルロース(hydroxymethylcellulose)やハイドロオキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)のような誘導体化されたセルロース(derivatized celluloses)が含まれるが、これらに限定されるものではない。ポリリジン(Polylysine)を用いることができる。PEのような好適な脂質に結合したこれらのポリマーを含む共役脂質ポリマー(Lipid-polymer conjugates)を用いることができる。他の例のポリマーを用いることができる。
【0025】
一つの具体例において、脂質またはリン脂質に誘導体化されるポリマーとしては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)がある。PEGは、いくつもの多様な分子量を有している。一つの例において、PEG鎖(PEG chain)は、約1,000〜10,000ダルトン(daltons)の分子量を有している。リポソームが一度生成されると、リポソームの表面にPEG鎖による親水性鎖(hydrophilic chains)のコーティング(coating)がなされることにより、このようなコーティングがなされていないリポソームの血液循環時間を十分に延ばすことができる。このようなリポソームは「ペグ化リポソーム(PEGylated liposomes)」と呼ばれている。ペグ化リポソームとしては、アルザコーポレーション(ALZA Corporation)が提供するいわゆるステルス(登録商標)リポソーム[STEALTHS(R)]がある。
【0026】
ペグ化リポソームは、その表面にPEGを有するリポソームも含むものであり、このPEGは、リポソームを被験体に投与した後のある時間にリポソームから放出される。一つの例においては、PEGまたは他の親水性ポリマーが、リポソームの表面および/またはリポソームの表面を構成する脂質分子に接合する1以上の結合(bonds)または連結(linkages)が存在する。一つの例においては、結合または連結が開裂(cleaved)して、リポソームからPEGが分離される。例えば、PEGは1以上のジスルフィド結合(disulfide bonds)によって脂質に結合している。ジスルフィド結合は遊離チオール(free thiol)によって開裂して、リポソームからPEGを放出する。他のタイプの開裂可能な連結または結合は、ポリマーをリポソームに結合するために用いられる。他のタイプの薬剤または化合物は、結合または連結を開裂するために用いられる。
【0027】
一つの例において、使用されるリポソームの組成は、上述のした約14から24の間の長さの炭素鎖をもつ1以上のリン脂質が約60モル%と75モル%の間の組成となっている。1モル%と20モル%の間のリポソーム組成物がポリマー鎖で誘導体化されたリン脂質となるように、少量のリン脂質が1以上の親水性ポリマーにと関連付けられている。さらに、用いられるリポソームは、25モル%と40モル%との間のコレステロールまたは脂肪酸アルコール、脂肪酸および/または他のコレステロールエステルまたは一般にリポソームの安定化を目的とする他の受容性医薬賦形剤を有している。
【0028】
他の例においては、リポソームは、一般に「配位子(ligand)」と呼ばれる1以上の一つまたは複数の分子を有している。この分子は、リポソームの表面から接近可能(accessible)であり、例えば、1以上の特定の分子または抗原に結合または接合している。これらの配位子は、特定の細胞または組織をリポソームのダイレクト(direct)またはターゲット(target)とし、分子または抗原を細胞または組織上に又は関連付けて(associated with)結合させることができる。このリガンドは、抗体または抗体の断片にすることができる。抗体は、単一クローン(monoclonal)の抗体または断片とすることができる。このようなリポソームは、「ターゲットリポソーム(targeted liposomes)」と呼ばれるタイプのものである。
【0029】
一つの例において、ターゲットリポソームは、抗体分子をリポソームの外側表面(outer surface)に結合するために変成(modified)された脂質またはリン脂質を有することができる。これらの変成脂質には、異なる複数のタイプがある。変成脂質は、脂質に関連付けられているスペーサー鎖(spacer chain)を含んでいる。このスペーサー鎖としては、親水性ポリマーがある。典型的な親水性ポリマーとしては、その官能性を有する末端に抗体を結合する末端官能性(end-functionalized)のポリマーがある。末端官能基(functionalized end group)は、抗体のスルフヒドリル基(sulfhydryl groups)と選択的に結合するマレイミド基(maleimide group)でもよい。他の末端官能基としては、抗体のスルフヒドリル基と反応するブロモアセタミド(bromoacetamide)およびジスルフィド基(disulfide groups)でもよく、抗体のアミン基(amine groups)と反応する活性化エステル(activated ester)およびアルデヒド基でもよい。ヒドラジド基(hydrazide groups)は、アルデヒドに対して反応性があり、生物学的に関連のある多数の化合物を生成する。ヒドラジドは、活性化エステルまたはカルボジイミド活性化カルボキシル基(carbodiimide-activated carboxyl groups)によってアシル化(acylated)することができる。アシル化種(acylating species)として反応するアシルアジド基(acyl azide groups)は、ヒドラジドから容易に得ることができ、配位子を含むアミノと結合することができる。
【0030】
他の例では、リン脂質はビオチン分子(biotin molecule)によって変成させられる。ビオチン化されたリポソームの表面に抗体の分子を結合させるために、リポソームが生成されると、抗体の分子はまたビオチンで変成させられて、アビジン(avidin)の存在下で培養される。ビオチン化PEのようにビオチン化された脂質は、商業的に入手可能である。
【0031】
他の例において、脂質は、ターゲット分子(targeting molecule)をリポソームの表面に結合するために用いられる基質(substrate)によって変成される。典型的には、ビオチンで例示された基質は、例えば5,000ドルトン未満と比較的小さく、脂質の二分子層構造の最小の破裂によって多重膜のリポソーム内に入りこむことができる。この基質は、血流中で寿命を終えたリポソームにターゲット分子が確実に結合し続けられるように、ターゲット分子と不可逆的に結合することができる。
【0032】
[コントラスト強調剤を含むリポソームの調製]
リポソームは種々の方法で調製することができる。方法の例としては、乾燥した脂質を水和させる方法、脂質の揮発性有機溶液を水溶液(aqueous solution)に入れて有機溶剤を蒸発させる方法、脂質と洗剤または界面活性剤との水溶液を透析して洗剤または界面活性剤を除去する方法、およびその他の方法があるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0033】
リポソームは1種以上のコントラスト強調剤を含むことができ、またはこのコントラスト強調剤と関連付ける(associated with)ことができる。一例において、リポソームは、コントラスト強調剤を含んでいる。リポソームの製造工程においては、コントラスト強調剤は、所望のいかなるときでも加えることができる。例えば、コントラスト強調剤は、リポソームが生成される前にリポソーム化合物と関連付けられる。コントラスト強調剤は、リポソームが生成されるときにリポソーム化合物と化合(combine)させることができる。コントラスト強調剤は、リポソームが生成された後に加えることもできる。コントラスト強調剤をリポソームと関連付ける他の方法も存在する。通常、本来的に親水性のコントラスト強調剤は、リポソーム粒子の内部空洞に位置することができ、または内部空洞と関連付けることができる。本来的に親油性のコントラスト強調剤は、リポソーム粒子の脂質二分子層に位置するか、または脂質二分子層と関連付けることができる。ここでいうコントラスト強調剤は、通常、リポソームの内部空洞に位置するか、または内部空洞と関連付けられている。この例のリポソームは、ヨウ素含有コントラスト強調剤を用いたときに、少なくとも30mgヨウ素/ミリリットル(I/ml)のリポソーム懸濁液(liposome suspension)を含んでいる。リポソームの一例では、約35〜250mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例では、約37〜200mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例では、約80〜160mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例では、約100〜120mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例は、約85mg〜100mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例は、100mgI/ml以上のリポソーム懸濁液を含んでいる。
【0034】
コントラスト強調剤をリポソームにローディングする(loading)種々の方法がある。方法の例は、図1〜3のフローチャートを参照することでより理解することができる。説明を容易にする目的のため、図示された手順は一連のブロックとして明示され、記載されている。この手順はこのブロックの順番に限定されるものではなく、異なった順番および/または明示され、記載されたもの以外のブロックもあり得る。さらに、方法の例を実行するには、描かれたブロックに補足するブロックが必要な場合もある。ブロックは組み合わせたり、分けることにより多種の構成にすることができる。さらに、記載されたブロックではなく、ブロックの追加および/または別の手順を追加的に採用することができる。図は一連において生じる種々の行為を記載しているが、種々の行為は、同時、実質的に並行、および/または実施的に異なった時点で生じたものである。図1〜図3のチャートは、記載された例の実行に限定することを目的とするものではない。
【0035】
図1には、コントラスト強調剤を含む、またはコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームの生成方法の例100が示されている。この方法には、使用される1種以上のコントラスト強調剤を選択することが含まれている(ブロック105)。また、この方法には、1種以上のコントラスト強調剤の存在下でリポソームを生成することが含まれている(ブロック110)。通常、ブロック110として示されているステップ(step)は、リポソームを用意するために、前に説明した複数の方法を使用して実行してもよい。これら複数の方法には、乾燥された脂質を水和させる方法、脂質の揮発性有機溶剤を水溶液に入れて有機溶剤を蒸発させる方法、脂質と洗剤または界面活性剤との水溶液を透析して洗剤または界面活性剤を除去する方法、およびその他の方法を含めることができる。
【0036】
図2には、コントラスト強調剤を含む、またはコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームの他の生成方法の例200が示されている。この方法には、使用される1種以上のコントラスト強調剤を選択することが含まれている(ブロック205)。またこの方法には、使用される1種以上のコントラスト強調剤を濃縮することが含まれている(ブロック210)。また、この方法には、1以上のコントラスト強調剤の存在下でリポソームを生成することも含まれている(ブロック215)。またこの方法には、リポソームを濃縮することが含まれている(ブロック220)。
【0037】
1種以上のコントラスト強調剤の濃縮(ブロック210)は、種々の方法を用いて行うことができる。一つの例としては、商業的に入手可能な1種以上のコントラスト強調剤の溶液を濃縮する方法がある。一つの例としては、コントラスト強調剤を溶液から沈殿させて、沈殿したコントラスト強調剤をもとの有機溶液よりも高濃度の液体中で懸濁させる。他の例としては、溶液中のコントラスト強調剤を蒸発により濃縮することができる。蒸発の一例としては、回転式蒸発(rotary evaporation)がある。他の方法も用いることができる。一つの例としては、コントラスト強調剤の溶液を少なくとも10%まで濃縮する。一つの例としては、コントラスト強調剤の溶液を100%[即ち2倍(2-fold)]以上に濃縮する。他の例としては、固体状のコントラスト強調剤を、比較的高濃度の液体に(例えば、商業的に入手可能な溶液より高濃度で)溶解する。一つの例としては、溶液中におけるコントラスト強調剤の溶解度を高めるために加熱する。他の例としては、コントラスト強調剤がより溶解し易い溶媒を用いる。
【0038】
リポソーム懸濁液の粘性は、リポソームの濃度によって決まり、通常、リポソームの内容物(liposome contents)の粘度によって決まるものではないのはもちろんである。例えば、リポソームに封入された(encapsulated)コントラスト強調剤は、ゲル相(gel phase)を形成し、または(例えば、温度が低い場合は)リポソーム内で結晶化さえ起こす。通常、これは、リポソーム懸濁液に悪影響を与えるものではなく、(例えば、リポソームからコントラスト強調剤が漏出するおそれを低下させることによって)リポソーム懸濁液の安定化を容易にする。リポソームを溶液中で生成した後、溶液中のリポソームの数を実質的に変えることなく溶液の体積を小さくして、より濃縮されたリポソーム溶液を得るために、リポソームの溶液を濃縮することができる。リポソームの濃縮(ブロック220)は、様々な方法を用いて行うことができる。リポソームが水溶液中にあるときに、脱水と呼ばれる水の除去によりリポソームを濃縮する。脱水方法の一例としては、ダイアフィルトレーション(diafiltration)がある。ダイアフィルトレーションの一例としては、リポソームの懸濁液をフィルターまたは膜を通過させて、リポソームが懸濁している液の量を低下させる。他の方法の例としては、イオン交換(ion exchage)、超遠心分離法(ultracentrifugation)を用いたリポソームの洗浄(washing)、透析(dialysis)等がある。これらの方法により、リポソームの懸濁液は、約35〜250mgI/mlの濃度のリポソーム懸濁液となる。リポソームの一例は、37mgI/ml〜200mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例は、100mgI/ml以上のリポソーム懸濁液を含んでいる。また、これらの方法は、リポソーム懸濁液から不純物も除去する。一つの例では、不純物には、リポソームに封入できない、または関連付けることができないコントラスト強調剤が含まれている。
【0039】
図3には、コントラスト強調剤を含む、またはコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームの他の生成方法の例300が示されている。この方法300では、ローディング剤(loading agent)の存在下でのリポソームが生成される(ブロック305)。またこの方法では、リポソームの界面と外部との間のイオン勾配(ion gradient)が構築(establishing)される(ブロック310)。この方法では、1種以上のイオン化したヨウ素化ベンゼン(ionic iodinated benzenes)がリポソーム内にローディングされる(ブロック315)。
【0040】
図3に示された方法は、アクティブ・ローディング法(active loading method)またはリモート・ローディング法(remote loading method)に関するタイプ(type)またはクラス(class)である。アクティブ・ローディングまたはリモート・ローディングの一つの例においては、リポソームが生成されたかまたは部分的に生成された後に、リポソームによりまたはリポソーム内に含有されることとなる1種以上のコントラスト強調剤(例えば、複数種のコントラスト強調剤)がリポソームに入る。通常、このような生成されたリポソームは、生成のプロセスが完了したリポソームである。部分的に生成されたリポソームは、生成のプロセスが完了していないかもしれない。
【0041】
一つの方法の例においては、生成されたリポソームのうちの1つのリポソームでは、そのリポソームの外部と内部との間にイオン勾配が構築される(例えば、リポソームの外部における1以上のイオンの濃度は、リポソームの内部のイオン濃度と異なる)。リポソーム内部に運び込まれたコントラスト強調剤は、リポソームの外部からリポソームの内部に移動することができる。この移動は、コントラスト強調剤がリポソームの膜を通過することによる移動である。通常、コントラスト強調剤は、実質的に電気的に中性または帯電していない膜を通過して移動することができる。この移動は、濃度勾配(concentration gradient)に基づくものである(例えば、リポソームの外部におけるコントラスト強調剤の濃度は、リポソームの内部におけるコントラスト強調剤の濃度よりも高い)。この移動は、イオン勾配に基づくものである。この移動を、他の因子または種々の因子の組み合わせに基づくものとしてもよい。一度リポソームの内部に移動すると、リポソームの外部と比較した場合のリポソームの内部のイオン濃度の差は、コントラスト強調剤がリポソームの外部に移動することを遅くし、またはコントラスト強調剤がリポソームの外部に移動するのを防止する。一つの例においては、リポソームの外部と比較した場合のリポソームの内部のイオン濃度の差は、コントラスト強調剤がリポソームの外部に移動するのを遅らせるまたは防止するように、コントラスト強調剤を化学的に変化させる。
【0042】
イオン勾配の一例としては、pH勾配(pH gradient)がある。水和リポソームは、選択された内部および外部のpHを有している。このpHは、リポソームが生成された環境のpHに基づいて選択されたものである。水和されたリポソームが存在する外部溶液(external solution)は、選択された内部pHと異なるpHが得られるまで滴定される。また、外部溶液は、選択された内部pHと異なるpHを有する他の溶液と交換してもよい。例えば、リポソームの存在下でもとの外部溶液のpHは5.5であるが、滴定または溶液の交換を行ってpHが8.5になるようにすることができる。コントラスト強調剤がリポソーム内に入ると、リポソーム内部のコントラスト強調剤は、1以上のプロトンを受容または供与することにより化学的に変化する。コントラスト強調剤は、1以上のプロトンを受容または供与して帯電する。帯電したコントラスト強調剤は、リポソームの膜を通過することができない、または通過する能力が抑制される。これらのリポソームにおいて、コントラスト強調剤はリポソームから抜け出る(exit)ことができない、またはリポソームから抜け出る能力が低下する。
【0043】
他のアクティブ・ローディングまたはリモート・ローディングの例においては、生成されたリポソームまたは部分的に生成されたリポソームが、ローディング剤を含有することがある。例えば、リポソームは、ローディング剤の存在下で生成されている。ローディング剤は、コントラスト強調剤がリポソーム内に入るのを補助し、または容易にする。ローディング剤は、例えば水酸化物イオン濃度のようなリポソーム内部におけるある種の状態を構築するのを容易にする。ローディング剤は、コントラスト強調剤の1種以上がプロトンを受容または供与することを容易にするというような、コントラスト強調剤の化学的変化を容易にする。ローディング剤は、リポソームに入っているコントラスト強調剤がリポソームから離れるのを防ぐまたは遅らせることができる。
【0044】
アプローチの一例では、弱酸性のコントラスト強調剤(約4.0〜6.5のpKa)が、リポソームにローディングされる。このような薬剤は、弱い両親媒性(amphiphatic)を呈している。この弱酸性の薬剤は、プロトン化された形態においては、実質的に帯電していない。弱酸性の薬剤は、プロトン化されていない形態においては、実質的にマイナスに帯電している。通常、このような弱酸性の薬剤は、1以上の遊離カルボキシル基(free carboxyl groups)を有している。このような遊離カルボキシル基は、これらがプロトンを供与することによりイオン化することが可能である。弱酸性のコントラスト強調剤の例としては、アセトリゾエート(acetrizoate)、ジアトリゾエート(diatrizoate)、イオダミド(iodamide)、イオグリケート(ioglicate)、イオサラメート(iothalamate)、イオキシサラメート(ioxithalamate)、メトリゾエート(metrizoate)、イオクサグレート(ioxaglate)等がある。
【0045】
このアプローチの一例としては、リポソームが酢酸カルシウム[例えば、(CH3COO)2Ca])の存在下で生成される。酢酸カルシウムは、ローディング剤になり得るものである。酢酸カルシウムは、リポソームの内部と外部溶液内とに存在する。そして、酢酸カルシウムは、例えば希釈よって、外部の相(phase exterior)からリポソーム内へ移動する。リポソーム内部の酢酸カルシウムは、カルシウムイオンと酢酸イオンとに解離する。酢酸イオンは、リポソーム内で水と結合して、酢酸と水酸化物イオンになる。リポソームの外部溶液を希釈することにより、リポソーム内の酢酸は、リポソームの外に放出され、外部溶液に入って、リポソーム内の水酸化物イオンから分離する。これにより、リポソームの内部がリポソームの外部よりもより塩基性になるpH勾配ができあがる。特に弱酸性コントラストの強調剤がプロトン化され帯電していない程度のpHの外部の相に、弱酸性コントラスト強調剤を加えると、コントラスト強調剤はリポソーム内に移動する。このような移動は、薬剤の外部から内部への濃度勾配により生じる。このような移動は、アンモニアがリポソームから抜け出るような浸透平衡(osmolar equilibrium)を補助する力によって起こる。このような移動は、これらの補助力がその他の力に付加され、またはこれらの力が組み合わされることによって生じる。コントラスト強調剤がリポソーム内部に移動するとき、コントラスト強調剤は1以上のプロトンを供与してマイナスに帯電し、コントラスト強調剤がリポソームの外に移動するのが遅くなりまたは防止される。このアプローチに対して、追加、代替、変化したアプローチが存在する。
【0046】
アプローチの一例では、弱塩基性のコントラスト強調剤(約6.5〜8.5のpKa)は、リポソーム内にローディングされる。このような薬剤は、弱い両親媒性(amphiphatic)を呈している。弱塩基性の薬剤は、通常、中性のpHまたはその近傍では荷電していない。弱塩基性の薬剤は、プロトン化されていない形態においては、実質的に帯電していない。弱塩基性の薬剤は、プロトン化された形態においては、実質的にプラスに帯電している。通常、このような弱塩基性の薬剤は、1以上の第1級アミン基を有している。このような第1級アミン基は、プロトンを受容することによりイオン化が可能である。このような弱塩基性の薬剤としては、アミド(amides)がある。
【0047】
このアプローチの一例では、硫酸アンモニウム[(NH4)S04]の存在下でリポソームが生成される。硫酸アンモニウムは、ローディング剤となり得る。硫酸アンモニウムは、リポソームの内部と外部溶液内に存在する。硫酸アンモニウムは、例えば希釈よって外部の相(phase exterior)からリポソーム内へと移動することができる。リポソーム内の硫酸アンモニウムは、アンモニウムイオン(NH4+)と硫酸イオン(SO4−)とに解離する。リポソーム内のアンモニウムイオンは、アンモニアと水酸化物イオンに解離する。リポソームに対して外部溶液を希釈することにより、リポソーム内のアンモニウムはリポソームの外に放出され、外部溶液に入って、リポソーム内の水酸化物イオンから分離する。これにより、リポソーム内部がリポソームの外部よりもより酸性になるpH勾配ができあがる。特に弱塩基性のコントラスト強調剤がプロトン化されず帯電しない程度のpHの外部の相に、弱塩基性のコントラスト強調剤を加えると、コントラスト強調剤はリポソーム内に移動する。このような移動はリポソームの外部から内部へのコントラスト強調剤の濃度勾配により生じる。このような移動は、アンモニアのようにリポソームから抜け出るような浸透平衡を補助する力によって生じる。このような移動は、これらの補助力がその他の力に付加され、またはこれらの力が組み合わされることによって生じる。コントラスト強調剤がリポソーム内部に移動するとき、コントラスト強調剤は1以上のプロトンを受容してプラスに帯電し、コントラスト強調剤がリポソームの外に移動するのが遅くなりまたは防止される。これのアプローチに対して、追加、代替、変化したアプローチが存在する。また、他にも種々のアクティブ・ローディング法またはリモート・ローディング法がある。
【0048】
リポソームが生成された後は、リポソームを操作する技術を使用することができる。例えば、標準的な技術で生成されるリポソームの調製は、その生成後のサイズおよびラメラリティ(lamellarity)(即ち、厚さ)によって異なる。リポソームを高せん断力(high shearing)にさらすような技術、リポソームを複数の膜を通して押し出す技術、またはリポソームの超音波処理(sonication)技術は、所望のサイズのリポソームを選択するか、またはリポソームが所望のサイズを持つようにリポソームを変成するのに用いられる。これらの方法によってリポソームを操作した後のリポソームのサイズ分け(size distribution)により、所望のサイズのリポソームが確実に得られる。フラウンホーファー回折(Fraunhofer diffraction)および動的光散乱(dynamic light scattering)(DLS)のような技術は、リポソームをサイズ分けする手段として用いられている。これらの技術では、フラウンホーファー回折の場合では、通常、測定するリポソームと同じ光散乱特性(light scattering properties)を有する球体の直径を、同等の球径(equivalent spherical diameter)として測定する。DSLの場合では、測定するリポソームと同じ拡散係数(diffusion coefficient)を有する球体の直径を、同等の球径として測定する。通常、この例のリポソームの平均直径は、150nm以下となっている。リポソームを調製する例では、平均直径は、約120nm以下である。リポソームを調製する例では、平均直径は、約100nm以下とすることができる。当然のことながら、他のサイズのリポソームも使用することができる。
【0049】
一つの具体例では、リポソーム1ml当たり30mgのイオヘキソール(iohexol)でキャリーオーバー(carrying over)するナノスケールのリポソーム製剤(nano-scale liposomal formulation)をパッシブ・ローディング(passive loading)を用いて調製する。この調製では、この量のコントラスト強調剤が封入されるのを許容するために、二分子層の脂質の組成が以下の記載に合うよう調整される。一例においては、C16鎖(C16 chain)の長さを有する純粋なDPPC(1,2-ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)(1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphatidylcholine)を、40モル%のコレステロールおよび5モル%のmPEG−DSPE[N−(カルボニルメトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファジルエタノールアミン[N-(carbonylmethoxypolyethyleneglycol 2000)-1,2-distearoyl-sn- glycero-3-phosphatidylethanolamine]](長い循環特性(long circulating properties)を与える共役ポリエチレングリコール脂質)と共に用いることにより、水素化大豆PC(HSPC)[Soy PC (HSPC)]、C16の脂質とC18の脂質の混合物、またはC18鎖の純粋なDSPC(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)が使用可能な場合より20%以上も、活性分子のリポソーム内へのカプセル化(encapsulation)を高めることができる。DLSで測定したリポソームの平均直径が100.6±3nmで、55モル%のDPPC、40モル%のコレステロール、5モル%のmPEG−DSPEの調製したもの及び350mgI/mgのイオヘキソール溶液(iohexol solution)を用いて全体で30mgI/mlの濃度になるようにする。
【0050】
他の具体例においては、リポソーム1mlに対してイオヘキソール(iohexol)80mgでキャリーオーバーするリポソーム製剤(liposomal formulation)を、パッシブ・ローディングを用いて調製する。この調製では、350mgI/mlのイオヘキソール溶液が少なくとも400〜450mgI/mlに濃縮されて、前段落で述べたリポソームの調整に用いられる。リポソームが得られた後は、リポソーム懸濁液を濃縮する。この調製を用いることにより85mgI/mlを超える濃度のリポソーム懸濁液が得られる。
【0051】
[医薬組成物および被験体への投与]
1以上のコントラスト強調剤を含む、またはこのコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームは、被験体への投与に用いるのに好ましい医薬組成物である。この組成物は、通常、関心領域(area of interest)へ組成物を搬送(delivers)する経路(route)を使って投与される。一例において、コントラスト強調剤の組成物は、被験体の静脈内、動脈内、皮下、または他の経路を通して非経口で被験体に投与される。
【0052】
特定の医薬組成物の調製は、通常、組成物を患者に投与する方法によって決まる。当然のことながら、医薬組成物は、塩(salt)、緩衝剤、防腐剤、他の賦形剤(vehicles)および他の任意の薬剤を含んでいる。非経口の投与に好ましい組成物は、殺菌した調製液、ピロゲンが入っていない(pyrogen-free)調製液、水性調製液または油性調製液からなり、これらの調製液は、通常被験体の血液と等浸透圧(isotonic)になっている。この水性調製液(aqueous preparation)は、好ましくは、分散剤または湿潤剤および懸濁化剤(dispersing or wetting agents and suspending agents)を用いた公知の方法で調製されている。また、殺菌された注入可能な調製液は、注入可能に殺菌された溶液でも、非経口で受容できる無毒の希釈剤(diluent)または溶剤(solvent)中の懸濁液でもよい。受容性の賦形剤(acceptable vehicles)および溶剤としては、水、リンゲル液(Ringer's solution)、等浸透の塩化ナトリウムまたは他の塩、ブドウ糖(dextrose)、リン酸塩、緩衝生理食塩水(buffered saline)等、またはこれらを組み合わせたものを使用することができる。
【0053】
医薬組成物としては、安定剤、防腐剤、緩衝剤、酸化防止剤、または他の添加物を用いることができる。これに加えて、殺菌した不揮発性油(fixed oils)も溶剤または懸濁溶剤として用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸を注入可能な調製液中で使用することができる。キャリア製剤(carrier formulations)としては、レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)[マック出版社(Mack Publishing Co.,)、イーストン・ピーエー(Easton, Pa)]に掲載されているキャリア製剤を投与するのが好ましい。医薬組成物は、ユニットの剤形として便利に提供することができる。非経口投与では、医薬組成物をあるサイト(site)に搬送する注射器(syringe)、カテーテル(catheter)または同様の装置を使用することが考えられる。搬送により、少なくとも初期(initially)には、医薬組成物が被験体の循環系(circulatory system)を通して全身的に分配される(distributed)ことになる。通常、この医薬組成物は、被験体の撮像(imaging)を行う前の時点で被験体に投与されるが、撮像中に組成物が投与されることもある。医薬組成物の投与量は、被験体の1以上の組織のコントラストが増加する量とするのが好ましい。通常は、最終的に、担当の医師または技術者により、被験体への医薬組成物の投与量が決定されるのが好ましい。通常、コントラストの増加は、どの水準(level)においても、医薬組成物中のコントラスト強調剤を用いない現状を上回る水準となり得る。コントラストの増加例では、血管系(vasculature)を含む1以上の器官系(organ systems)に対して少なくとも約50HU(heat unit)、少なくとも約100HU、またはそれ以上のコントラストの増加が得られる。
【0054】
[用途]
コントラスト強調剤を含むリポソームの組成物またはその医薬組成物は、被験体に投与されると、被験体の血液および/または器官内のコントラスト強調剤の水準(level)を維持することができ、その結果、コントラストが増加して、X線撮像技術による検出が可能になる。このコントラストの増加により、長時間(extended period of time)の検出が可能になる。特定の用途によっては、ここで述べられている組成物は、数分から数時間、数日までの循環に対して半減期(half lives)を有している。一例においては、8〜24時間の循環に対して半減期を得ることができる。一例では、組成物の投与により、投与後、少なくとも30分検出し続ける程度にコントラストを増加することができる。他の例では、組成物の投与により、投与後、少なくとも5分検出し続ける程度にコントラストを増加することができる。これらの組成物は、解剖学的(anatomic)、機能的(functional)および分子的(molecular)な撮像を含む多くの用途がある。例えば、ここで述べた組成物は、心臓病学(cardiology)、腫瘍学(oncology)、神経学(neurology)および他の分野の用途に用いることができる。
【0055】
一つの具体例としては、血液プール撮像(blood pool imaging)があり、虚血(ischemia)の検出に用いることができ、いくつかのケースでは虚血の定量化(quantify)に用いることができる。例えば、通常、医薬組成物の注入で血管系全体のコントラストが変化することにより、虚血の存在での血流の低下を検出できる。虚血性腸疾患(ischemic bowel disease)、肺閉塞症(pulmonary embolism)を引き起こす虚血や、心筋症(cardiomyopathy)等になるタイプの虚血を含む種々のタイプの虚血を検出することができる。他の用途においては、動脈瘤(aneurysms)も検出するこができる。一つの具体例としては、ここで述べた組成物は、狭窄(stenosis)を検出、試験および/または判断するために心臓の撮像に用いることができ、例えば、血管形成(angioplasty)を行うような狭窄の治療、改善に用いることができる。このような技術の有効性は、ここで述べたようなコントラスト強調剤の調製剤を使用することを通して高められる。
【0056】
一つの具体例としては、ここで述べた組成物があり、心筋微小循環不全(myocardial microcirculatory insufficiencies)の検出に用いることができる。心筋微小循環(Myocardial microcirculation)は、心外膜動脈(epicardial arteries)が閉塞する兆候を示す前に閉塞の兆候を示すことが知られている。このため、心筋微小循環の閉塞を検出することにより、危険な状態にある患者における発症前のアテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)を、従来の方法よりも早く検出できる。ここで示された組成物は、心筋微小循環の閉塞の検出を容易にすることができる。
【0057】
他の具体例としては、ここで示された組成物は、腫瘍および癌の広い範囲を検出し、特徴付ける(characterize)ことができる。これらの応用は、循環系において長時間存在する立体的に安定したリポソームの特性によっ容易になり、例えば、腫瘍のように血管系が「漏れやすい(leaky)」部位の溢血に対して容易になる。腫瘍部の血管系の漏れは、新生血管系(neovasculature)の割合が高くなることに起因するものと考えられており、腫瘍の大きさが増大するにつれて血管形成(angiogenesis)が継続して行われる結果をもたらす。このような血管系の漏れとの遭遇することで、リポソームは、循環を離れて、静水圧(hydrostatic pressure)により溢血流体(extravasate fluid)に流される(driven with)。このようなリポソームは、通常、溢血後には循環系に戻ることがない。圧較差(pressure gradient)がこのような戻りを止めるからである。このような方法は、初期の腫瘍および転移性の腫瘍の両方の検出に用いることができる。
【0058】
他の具体例の組成物は、腫瘍の「病期分類(staging)」および/または分類(classification)に用いられる。これらの応用は、とりわけ進行段階の違いによる腫瘍または癌の血管系の「漏れ」の差異に依存する(depend on)。
【0059】
一つの具体例の組成物は、脊髄(spinal code)損傷の監視および特徴付け(characterizing)の分野ならびに脊髄損傷の治療の分野に用いられる。典型的な脊髄損傷は、例えば、自動車事故で生じたものであり、脊髄の周囲組織も損傷している。周囲組織の治療行為は、脊髄の治療に悪影響を及ぼすことがあると考えられている。周囲組織の治療で生じる周囲組織の新生血管系の形成は、脊髄治療を妨げると考えられている。周囲組織の治療と周囲組織の新生血管系の形成を抑制することにより、脊髄を治療することが考えられている。その次に、周囲組織を治療することができる。ここで示されたコントラスト強調剤の組成物は、治療および脊髄の周囲組織の治療抑制の監視に有用である。
【0060】
ここで示された組成物については、他にも種々の応用がある。例えば、組成物は、炎症(inflammation)、再かん流傷害(reperfusion injuries)等の検出や監視に用いることができる。
【0061】
さらに、コントラスト強調剤の組成物から構成されたリポソームは、例えばリポソームの表面の付着抗体(attaching antibodies)によって、被験体の体内における所望の細胞や組織をターゲット(targeted)とすることができる。このターゲット化(targeting)により、ターゲットとされる体の部位のコントラストを強調することができる。コントラスト強調剤の組成物は、体内や前述したように漏れのある血管を除く低い溢血において比較的長い滞留時間(residence time)を有しており、比較的腎臓に無毒であり、体の特定部位をターゲットとするために用いられる。さらに、イオン化されたコントラスト強調媒体に伴う有毒性の問題に関連する従来の浸透圧は、リポソームでの封入においては問題とならない。高い浸透圧の相は、リポソームの内部に存在し、通常、血液には晒されないからである。
【0062】
[実施例]
[実施例1]イオヘキソールを含むペグ化リポソーム(PEGylated Liposomes)の調製
リポソーム化イオヘキソール製剤(liposomal iohexol formulations)の実施例は、下記のように製造することができる。簡単に言うと、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)(DPPC)と、コレステロール(chol)と、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン[N-(carbonyl-methoxypolyethyleneglycol 2000)-1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine](DSPE-MPEG2000)とが、55:40:5のモル比となる脂質の混合物を65℃のエタノールに溶解した。そして、このエタノール溶液をイオヘキソール(350mgI/ml)で1.5〜2時間水和した。10mlのライペック・サーモライン・エクストルーダ(Lipex Thermoline extruder)[ノーザンリピッズ、カナダ国、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバ(Northern Lipids, Vancouver, British Columbia, Canada)]によりリポソームを絞り出し(extruded)、0.2μmのヌクレオポア膜(Nucleopore membrane)[ウオーターマン・インコーポレイテッド、マサチューセッツ州、ニュートン(Waterman Inc. , Newton Massachusetts)]に5回通過させ、0.1μmのニュークレオポア膜(Nucleopore membrane)[ウオーターマン・インコーポレイテッド、マサチューセッツ州、ニュートン(Waterman Inc. , Newton Massachusetts)に7回通過させた。そして、300,000分子量カットオフ(molecular weight cutoff)(MWCO)の透析袋内でリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffer saline)(PBS)に対してリポソームを夜通し透析して、遊離イオヘキソール(free iohexol)を除去した。
【0063】
生成されたリポソーム化イオヘキソール製剤の実施例のサイズは、改良型BI−90角度計(modified BI-90 goniometer)、JDSユニフェース532nmレーザー(a JDS uniphase 532 nm laser)、浜松ホトニクス光電子増倍管(Hamamastu photomultiplier)およびブルックヘブンDLSソフトウエア3.16版(Brookhaven DLS Software Version 3.16)を用いて、動的光散乱(DLS)により判定することができる。リポソーム化イオヘキソールのカプセル(liposomal iohexol capsules)の平均直径は、DLSで判定されたナノスケール・レンジ(nano-scale range)において100.6nm(STD=3.0nm)であった。
【0064】
リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例のイオヘキソール濃度は、紫外−可視分光光度計(UV-Vis spectrophotometer)を用いて245nmでの吸収を測定することによって判定することができる。そして、ヨウ素に換算(equivalent)した濃度を計算することができる。本実施例の調製においては、脂質水和時間(1.5時間および2時間)を異ならせることにより、異なったイオヘキソールのローディング濃度(それぞれ30および34.8mgI/ml)が得られた。この30mgI/mlのイオヘキソールリポソーム化製剤(iohexol liposomal formulation)を以下に示す生体外安定性試験(in vitro stability tests)に用い、34.8mgI/mlのイオヘキソールのリポソーム化製剤を以下に示す生体内CT撮像実験(in vivo CT imaging experiment)に用いた。
【0065】
リポソーム化イオヘキソール製剤の浸透圧は、例えば、ベープロ[Vapro(R)]蒸気圧浸透圧計[ウエストコル・インコーポレイテッド(Wescor Inc.)]により測定することができる。本実施例のイオヘキソール製剤の浸透圧は、305〜315mmol/kgの範囲であった。
【0066】
[実施例2]イオヘキソールを含むペグ化されたリポソームの生体外安定性
リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例の生体外安定性は、4℃のPBS内および37℃の血漿内の両方において、リポソーム化イオヘキソール製剤からのイオヘキソールの漏出(leakage)を測定することにより判定することができる。この手順では、1mlのリポソーム化イオヘキソール製剤の実施例を300,000MWCOの透析袋内に配置し、4℃における250mlのPBSに対して透析を行った。各時点(0,1,2,3,8,24時間および3,4,5,6,8,10,18日)において、紫外線吸収に基づくイオヘキソール測定(UV absorption-based iohexol measurement)のために、1mlの透析液を除去した。各時点において少なくとも3つのデータが得られた。測定後、サンプルは一定の体積を維持するためにPBSに戻した。
【0067】
血漿内における安定性を測定するため、リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例では、25℃における250mlのPBSに対して1時間透析を行って遊離イオヘキソールを除去することができる。この実験では、1mlのリポソーム化イオヘキソール製剤を4mlのヒト血漿(human plasma)を含む300,000MWCOの透析袋内に配置し、37℃における250mlのPBSに対して透析を行った(1:4の割合を選択した)。0,1,2,3,4,5,6および8時間の各時間で、外部の相の1mlを除去し、紫外−可視吸収(UV-vis absorption)により分析した。また、血漿組成物は透析袋から漏出し、245nmの有限吸光度(finite absorbance)を有するため、PBSと血漿の混合物をPBSに対して透析する対照実験(control experiment)を行った。リポソーム化イオヘキソール製剤試験のために、外部の相の吸光度を差し引き、その結果得られた吸光の痕跡(absorbance traces)から、リポソーム化イオヘキソール製剤からのイオヘキソールの漏出を表すことができる。この結果は、PBSおよびヒト血漿中でリポソーム化イオヘキソール製剤が安定していることを示している。
【0068】
図4にイオヘキソールの漏出のカーブの例400が示されている。リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例(30mgI/ml)について、4℃における250mlのPBSに対して透析を行った。0,1,2,3,8,24時間および3,4,5,6,8,10,18日のサンプル時点(example time points)405において、イオヘキソールの量に対する透析液の試験を行った。漏出のカーブの例410は、各時点のデータを通る線を描くことにより得られる。このデータは、透析の1時間後にカーブが安定したことを示している。8時間後の封入されたイオヘキソール全体に対して、リポソーム化イオヘキソールが7.4%漏出したことが示され、4℃における平衡透析(equilibrium dialysis)による18日間でリポソーム化イオヘキソールが7.8%漏出したことが示された。したがって、リポソーム化イオヘキソール製剤の寿命は18日より長いことになる。
【0069】
図5には、イオヘキソールと血漿の混合物の漏出のカーブの例500が示されている。
【0070】
前もってPBSに対する1時間の透析を行ったリポソーム化イオヘキソールは、この調査では、リポソームからのイオヘキソールの漏出に対する血漿の寄与を特定するために用いられている。0,1,2,3,8,24時間および3,4,5,6,8,10,18日のサンプル時点505において、イオヘキソールの量に対する透析液の試験を行った。漏出曲線の例510は、各時点のデータを通る線を描くことにより得られる。このデータは、3時間後に曲線が安定し、8時間で封入されたイオヘキソール全体に対して、リポソーム化イオヘキソール製剤が2.3%漏出したことが示しされており、PBS内に蓄えられた際に観察される漏出を超えている。合わせて、この結果は、リポソーム化イオヘキソール製剤が18日間保管されて注入されても約90%の封入がされていることになる。
【0071】
[実施例3]ウサギの体内におけるイオヘキソールを含むペグ化されたリポソームの撮像を用いた生体内の調査
2.2kgのメスのウサギに、35mg/kgのケタミン(ketamine)と5mg/kgのキシラジン(xylazine)の筋肉注射を行い、続いて歯先円錐(face cone)から得られる2%のイソフルレン(isoflurane)の蒸気によって麻酔をかけた。気管挿管(tracheal intubation)および耳静脈(ear vein)への静脈カテーテル留置の後に、20mgのペントバルビタール(pentobarbital)を静脈内に入れた。この動物の肺は、ピークが15cmH2Oの気道内圧(peak airway pressure of 15 cm H2O)で1分間当たり25呼吸(25breaths min-1)に設定した圧力調整ベンチレータ(pressure control ventilator)を用いて通気した。
【0072】
動物をCTスキャナに移送した後、動物に0.25mgのパンクロニウム(pancuronium)[筋肉弛緩剤(muscle relaxant)]を加えて、撮像収集の間の最小限の動作(insure minimal)を保証した。ペントバルビタール(pentobarbital)を、1回の投与で10〜20mgを30〜60分毎に補足的に加えた。最初の胸部および腹部の体積撮像(volume image)は、一つのスライスが1.25ピッチ相当でスライスの視準(collimation)および厚み1.3mmの渦巻状走査モード(spiral scanning mode)(100mAs,120keV)において4つの薄片フィリップスMX8000 MDCTスキャナ(4 slice Phillips MX8000 MDCT scanner)を用いて得た。撮像は、標準再構成粒(standard reconstruction kernel)[「B」粒(the "B" kernel)]を用いて、512×512のマトリックス(matrix)に再構成した。0.5秒のガントリ回転速度(gantry rotation speed)を用いた。各撮像の手順の間、ウサギは、呼気口(exhalation port)の上にある水中気泡管(underwater bubbler tube)を用いて、20cmH2O(例えば、肺の全容量に近似)に固定された気道内圧で無呼吸が保たれていた。次に、34mgI/mlのリポソーム化イオヘキソール製剤15mlを、体積撮像を繰り返すことにより手動で注入(hand-injection)し、そして、15mlのリポソーム化イオヘキソール製剤懸濁液による2回目の注入をして、3回の体積撮像(third volume image)を行った。2回の注入で1kg当たりの総投与量が475mgのヨウ素が加えられた。そして、2回目の強調剤注入の後、初期の約12,60,90,120,150,180分に繰り返し体積撮像を行った。そして、最後の撮像を取得し(コントラスト剤の注入後3.5時間まで)、動物にペントバルビタールを過剰投与して安楽死させ、動きアーチファクト(artifact)のない[同じ気道内圧と撮像取得設定(image acquisition settings)]最終の高解像度撮像を得た。最後に、超シャープ再構成粒(ultra sharp reconstruction kemal)(「D」粒および1024×1024の撮像マトリックス)を用いて、超高解像度撮像スキャン(ultrahigh resolution scan)を得て、心原性(cardiogenic)の動作がない状態で、解剖学的な評価を詳細に行った。
【0073】
[実施例4]撮像再構成
次に、心臓の3D表示画面用の最小の視野[5cm×5cm、0.1mmボクセルサイズ(voxel size)]を用いて、実施例3で示されたような入手した各スキャンのオフライン再構成の実施例を行った。拡大された心腔は、フィリップスMXVワークステーションソフトウエア(4.1版)[Philips MXV workstation software(version 4.1)]から提供され体積レンダリングソフトウエア(volume rendering software)を好ましい設定に選択することにより、視覚化される。設定が確定すると、同じレンダリングおよび同じ表示設定が全ての時点で用いられる。付加的な構成は、種々の時点で分割(segmented)されている。定量分析(quantitative analysis)は、大動脈、心臓、腎臓(中心および皮質)、肝臓、筋肉および脾臓の関心領域(regions of interest)(ROI)の特定(locating)によって行われる。平均のハウンドフィールド単位(Hounsfield units)(HU)は各時点で特定され、各構造時間におけるコントラスト濃度のいかなる減少の追跡(tracking)も可能となる。スライスまたはROIのスライス箇所は、時点から時点におけるウサギの解剖学的構造(anatomic configuration)のわずかな変化により調整される。
【0074】
[実施例5]イオヘキソールを含むペグ化リポソームの生体内における時間−減衰
実施例4で説明した撮像分析(image analysis)の例は、大動脈、腎臓[髄質(medulla)および皮質(cortex)]、肝実質(liver parenchyma)、背筋(back muscle)、左主冠動脈(left main coronary artery)、肺動脈(pulmonary artery)および主気管支内(main stem bronchus)[対照値(control value)として]の関心領域で行ったものであり、時間に対してプロットしたものをグラフ600(図6)に示した。平均の減衰(Mean attenuations)(ハウンドフィールド単位)は、これらの各場所の時間におけるコントラストの減衰を量るため、実施例3において定められた時点で判定した。このデータは、種々の関心領域での長時間のコントラストが強調され、かつ維持されていることを示している。コントラスト注入後3.5時間に減衰した大動脈605、肺動脈615および肝臓皮質内の平均減衰は、200HU(130HUの強調)であり、腎臓皮質625の減衰は75HU(25HUの強調)であった。血液プール(blood pool)内の減衰は、注入後すぐに上昇し、調査した3.5時間、実質的に一定に継続した。肝実質620内の減衰では、わずかな上昇が観察された。腎臓核630内では、一時的な上昇が観察され、調査の初期においてクリアランス(clearance)はほとんど見られず、その後においてはクリアランスは全く見られなかった。左主冠動脈上にある(placed over)小さな関心領域では、ベースライン(base line)で9HUの減衰を示し、ピークの値は118HUを示した。図7には、肝臓の位置(level of the liver)にリポソームを注入した後、0時間のベースライン(baceline)705の撮像と、2時間18分で得られた強調ピーク(peak enhanced)710の撮像とが示されている。また図7には、心臓中央の位置(level of the mid-heart)にリポソームを注入した後、0時間のベースライン715の撮像と、2時間18分で得られた強調ピーク720の撮像とが示している。
【0075】
これらのデータは、コントラストを強調させるペグ化リポソーム製剤の例の滞留時間が3時間以上になることを示している。さらに、これらのデータは、筋肉内ではコントラストの強調が低くなることを示し、リポソーム化イオヘキソールが血管内に滞留し、急激な溢血を起こさないことを示している。さらに、肝実質内のコントラスト強調は、組成物のクリアランスが実質的に肝臓によるものであり、腎臓によるものではないことを示している。
【0076】
[実施例6]イオヘキソールを含むペグ化リポソーム投与後の心臓の生体内撮像
さらに、撮像800(図8)、900(図9)、1000(図10)および1100(図11)のウサギの心臓の例の撮像を分析した。図8には、ウサギの全体の体積レンダリング撮像800が示されており、リポソーム化イオヘキソール製剤の注入前の撮像805と注入後2時間18分の撮像810が示されている。血管815には、リポソームによる血管系の強調が見られる。この結果は、同じディスプレイとレンダリングパラメータ(rendering parameters)を用いて血管を確認したところでは、リポソームの投与前は血管815を確認できなかったものが、リポソームの注入後2時間以上たっても血管815が確認できることを示している。この強調は、リポソームの2回目の投与による注入後、3時間以上たって動物を安楽死させた時点まで継続することができる。
【0077】
図9には、コントラスト前(pre-contrast)の撮像905並びにリポソーム化イオヘキソール製剤の投与後20分の撮像910、投与後1時間15分の撮像915、投与後1時間51分の撮像920、投与後2時間38分の撮像925および投与後3時間23分の撮像930からなるウサギの心臓の体積撮像900が示されている。ディスプレイおよびレンダリングの全パラメータは、全ての撮像において同一である。4つの心腔(heart chambers)の生体構造は、関連付けられた大血管に伴ってはっきりと確認することができる。左上のパネル(panel)905では血液プールがなく、注入後3時間23分に表される最後のパネル930までは血液プールが不明瞭(opacity)であるが継続的に強調されている(persistent enhanced)ことに留意されたい。目に見える構造として、右心室(right ventricle)935(RV)、左心室(left ventricle)940(LV)、動脈945(Ao)、肺動脈950(PA)および下大静脈(inferior vena cava)855(IVC)が示されている。これらの撮像は、リポソーム化イオヘキソールの投与後3時間経ってもコントラストが継続していることを実証した。
【0078】
図10には、ウサギが安楽死させられて心臓が動かなくなった後に超高解像で得た心臓の厚切り(thick-slab)のレンダリング1000が示されている。標識付きの構造(labeled structures)として、右心室1005(RV)、左心室1010(LV)および大動脈1015(Ao)が示されている。
【0079】
図11には、リポソーム化イオヘキソール製剤の2回目の注入後3時間における高倍率条件下のウサギの左冠状動脈(left coronary artery)の撮像1100が示されている。左のパネル1105には、リポソーム化イオヘキソールの一実施形態の2回目の注入後3時間18分において撮像したウサギの生体内の心臓の1.3mm厚のCTスライス(CT slice)が示されている。右のパネル1110には、同じデータ設定の体積レンダリングビュー(volume rendered view)が示されている。左冠状動脈(符号1115,1110で示されている)は、109HUまで強調されている。
【0080】
[実施例7]イオヘキソールまたはイオジキサノール(iodixanol)を含むペグ化リポソームの調製
リポソーム製剤の実施例は、以下のように生成する。約350mgI/mlのイオヘキソール溶液またはイオジキサノール溶液を、回転蒸留(rotary evaporation)により、約400〜450mgI/mlの濃度まで濃縮した。そして、これらのイオヘキソールまたはイオジキサノールの溶液は、実施例1で説明したように、リポソームの調製に用いられる。そして、得られたリポソームの懸濁液を、実施例1で説明したように、一連のヌクレオポアのトラックエッチ膜(nucleopore track-etch membranes)を通して絞り出して、100nmの均一サイズを有するリポソームを得た。そして、このリポソームの懸濁液を洗浄して、100,000ダルトン・カットオフ(Dalton cutoff)のマイクロクロス(R)モジュール[Microkros(R) modules]を用いたダイアフィルトレーション(diafiltration)によって、リポソームを約2.5倍に濃縮した。ヨウ素濃度が85〜100mgI/mlのリポソーム懸濁液を得た。
【0081】
[実施例8]イオヘキソールを含むペグ化リポソーム投与後のマウスの心臓および腫瘍の生体内撮像
マウスの撮像には、特にマイクロCTシステム(micro CT system)が用いられる。このシステムでは、動物を回転クレードル(rotatable cradle)に垂直に設置し(vertically positioned)、固定されたX線源およびX線検出器(stationary X-ray source and detector)が用いられる。このシステムとしては、0.3/1.0mm二重焦点(dual 0.3/1.0 mm focal spot)の高フラックス回転陽子X線管(high flux rotating anode X-ray tube)[フィリップスSRO0950(Philips SRO 09 50)]がある。このシステムからのフラックス(flux)は、心臓の動きが不鮮明になる(motion blur from the heart)のを制限する程度に短い10msの照射をサポートするのに十分である。2048×2048の撮像マトリックス[マイクロフォトニクスX線撮像スターカメラ、フォトニクスサイエンス、イギリス、サセックス、イースト(Microphotonics X-ray Image Star camera, Photonics Science, East Sussex, UK]をカバー(covering)する50×50マイクロ画素の高解像検出器を、106×106mmの活動領域入力(active area input)を超えて(over)用いた。有効検出ピッチ(effective detector pitch)を100ミクロンまで低減した2×2配列の画素を組み合わせたハードウエア機能を用いた。
【0082】
撮像は、後述の典型的な80kVp,170mA、10msのX線パラメータを用いて実施した。プロジェクション(projection)は、全部で260のプロジェクションを使用して、0.5のステップ角(step angle)を有し、1900[即ち、1800+ファン角(fan angle)]を超える(over)円軌道(circular orbit)を獲得することができる。各プロジェクションは、獲得可能な約8〜10分にセットした。スキャニング(scanning)は、線源と対象物の距離が400mm(sod=400mm)[source-to-object distance(sod=400 mm)]、対象物と検出器の距離が40mm(odd=40mm)[object-to-detector distance (odd =40 mm)]、線源と検出器の距離が440mm(sdd=440mm)となるように動物を配置して行い、検出器のナイキストサンプル(Nyquist sample)に合致した幾何学的な焦点ぼけ(geometric blur of the focal)を得た。この結果、各撮像の測定照射は17.64Rに設定される。
【0083】
これらのプロジェクション撮像は、パーカーウエイティング(Parker weighting)を用いたフェルカンプアルゴリズム(Feldkamp algorithm)の断層撮影像(tomograms)を再構成するのに使用した。この目的のため、コブラEXXIMソフトウエアパッケージ(EXXIMコンピューティング・コーポレイション、カルフォルニア州リバーモア)[Cobra EXXIM software package (EXXIM Computing Corp, Livermore, CA)]を用いた。用いた配列(geometry)の拡大要因(magnification factor)が1.1であったため、90ミクロンの撮像面における有効デジタルサンプリング(effective digital sampling)で等方性(isotropic)の1024×1024×1024の配列として、データを再構成した。全てのデータセット(datasets)により、喚気を同期化(ventilatory synchronization)[呼気終末(on end expiration)]することができ、EGCサイクル(ECG cycle)と異なった点における心臓を開閉(cardiac gating)することができるようになった。温度(36.5±1℃)と心拍数(heart rate)(RR=90〜100ms)は、両方ともに撮像調査中において比較的安定していた。
【0084】
この調査を実行するため、実施例7で説明したリポソーム懸濁液1/2mlをマウスの尻尾の静脈に注入した。撮像および撮像の再構成は、前述と同様に行った。データは、血液中において700HUの安定した混濁(stable opacification)を示した。この安定した混濁は、例えば、心臓および呼吸器官(respiratory)の開閉された(gated)撮像を容易にし、低速度撮影(time-lapse)の撮像を可能にする。図12には、10ミリ秒間隔で低速度撮影されたマウスの心臓の冠状撮像(coronal images)1200の例が示されている。心室が強調されているのを確認することができる。
【0085】
他の調査においては、ヒト扁平上皮細胞癌(FaDu)[human squamous cell carcinoma(FaDu)]が右脇腹に埋め込まれたヌードマウスに、実施例7で説明したリポソーム懸濁液を注入した。図13には、リポソーム懸濁液の注入後4時間のマウスの腹部のマイクロCT冠状撮像1300が示されている。腫瘍1305は、腫瘍内の血管系や血管の周囲の組織が段階的に混濁しているような血管系が示された撮像の中に確認することができる。また、腫瘍の中に溢血(血管から組織内部への血液の漏出)を確認することもできる。
【0086】
腫瘍内(ガン内)の血管の位置および腫瘍(ガン内)の非血管部は、死体解剖(necropsy)後の組織学的な試験で確認することができた。また、マウスの左側には、炎症したリンパ節(転移性)1310も見られる。
【0087】
上記の説明は、好ましい具体例および選択された変形例について言及したものである。
【0088】
修正および変更は、上述の詳細な説明を読み理解する当業者であれば理解できるであろう。ここで説明した具体例は、添付した請求の範囲またはそれと同等の範囲内に限り、このような全ての変更および修正を含むものと解釈されることを意図するものである。
【技術分野】
【0001】
[背景]
いくつかの医学的なX線撮像(X-ray imaging)技術は、相違する器官、組織、細胞等を含む被験体(subject)の関心領域(regions of interest)の様々なコントラスト(contrast)を検出することができる。これらの撮像技術のいくつかは、関心領域のコントラストを増加するため、1種以上のコントラスト強調剤(contrast-enhancing agents)の被験体への投与を利用する。このコントラスト強調剤は、相違する関心領域(areas of interest)間に存在するコントラストの相違を強調することができ、また薬剤(agents)の使用がなければ存在できないコントラストの相違を作り出すことができる。
【0002】
医学的なX線撮像は、特に、コントラストの相違の検出に用いる機器または機械(instruments or machines)に関して発展してきた。これらの発展としては、機器の感度の増加、機器の解像度の増加等が挙げられる。これらの発展は、1つには、かつてない医学的な撮像方法をもたらした。方法の一例として、全身撮像(whole-body imaging)は、被験体の全身の血管系の情報を明らかにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのX線撮像に用いる機器の発展に比べて、コントラスト強調剤の発展は実現していない。所望の溢血(extravasation)、腎臓毒性(renal toxicity)および被験体の体の特定領域の標的障害(inability to target specific areas)を超えて、X線を利用した医学的な撮像に用いる最新のコントラスト強調剤を、とりわけ、被験体の体を迅速に点検する(rapid clearance)ための全身撮像に適用するには限界がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面は、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成するものであり、この図面には、コントラスト強調剤の製剤(formulations)、その製剤を含有する医薬組成物(pharmaceutical compositions)、その製剤の製造方法およびその製剤の撮像(imaging)における使用方法が、下記の説明とともに説明されており、作成、組成物、方法等の実施例を説明するのに役立つものである。当然のことながら、この実施形態は、図解を目的として示すものであって、この実施の形態に限定するものではない。当然のことながら、下記のように、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、この図面に説明された実施形態の変更、修正および逸脱(deviations)が可能である。
【図1】コントラスト強調剤を含むリポソーム、または、コントラスト強調剤と関連付けられたリポソーム(liposomes containing or associated with contrast-enhancing agents)を調製する方法の一例100を説明するものである。
【図2】コントラスト強調剤を含むリポソーム、または、コントラスト強調剤と関連付けられたリポソームを調製する方法の他の一例200を説明するものである。
【図3】コントラスト強調剤を含むリポソーム、または、コントラスト強調剤と関連付けられたリポソームを調製する方法の他の例300を説明するものである。
【図4】4℃でPBSで透析したときのリポソーム化イオヘキソール製剤の一実施例に対する生体外安定性試験(in vitro stability test)の結果の例400を示すものである。全ヨウ素量は30mgI(mg iodine)である。
【図5】37℃でPBSに対して透析したときのリポソーム化イオヘキソール製剤(liposomaliohexol formulation)の一実施例に対する生体外血漿安定性試験(in vitro plasma stability test)の例の結果500を示すものである。全ヨウ素量(The total iodine content)は28mgI(mg iodine)である。
【図6】ポソーム化イオヘキサノール製剤の一実施例[475mgI/kgの処方で2.2kgのウサギ(rabbit)の静脈に注入する]が2回の追加注入で投与された静脈内投与後(intravenous administration)の異なる注入後時間(post-injection times)における複数の関心領域の時間減衰曲線(time-attenuation curves)の例600を示すものである。
【図7】34.8mgI/mlヨウ素IV注入(iodine IV injection)でリポソーム化イオヘキサノールを2.2kgのウサギに注入した一実施例の強調前および強調後(pre- and post-enhancement)のコンピュータ断層撮影(CT)撮像の例700を示すものである。左側のパネル(Left Panels)705,715はコントラスト前(pre-contrast)、右側のパネル(Right Panels)710,720は、注入後2時間18分、上側のパネル(Upper panels)705,710は、肝臓の位置に合わせて撮影した撮像、下側のパネル(Lower panels)715,720は、心臓の中間の位置(mid heart level)を撮影した撮像。
【図8】体積レンダリングされた(volume-rendered)ウサギの胴体(torso)のCT撮像の例800を示すものである。左側のパネル805は、コントラスト注入前の右側面図、右側のパネル810は、475mgI/kgのリポソーム化イオヘキサノールの一実施例を注入後2時間18分の右側面図。右側のパネル815に強調された血管床が見られることに注意。
【図9】リポソーム化イオヘキサノールの一実施例の注入前の撮像されたウサギの生体内(in vivo)の心臓905および注入後の時系列に撮像された複数のウサギの生体内の心臓910,915,920,925,930の体積レンダリングされたCT撮像の例900を示すものである。
【図10】超高解像度のCTスキャン(1cmあたり24線対)(24 line pair per cm)による死後のウサギ(心臓が動かない)[post-mortem rabbit (no cardiac motion)]の厚切りレンダリング(thick-slab rendering)を示すものである。ウサギは、リポソーム化イオヘキサノールの一実施例の2回目の注入後3.5時間で死んだ(sacrificed)。撮像は、0.5cmの視野(0.5-cm field of view)で1024×1024マトリクス(1,024 X 1,024 matrix)に合うように再製像(reconstructed)された。
【図11】ウサギの左側の冠状動脈(coronary artery)の高倍率の撮像の例1100を示すものである。
【図12】マイクロCT(micro CT)により10×10−3秒の間隔で得られたマウスの心臓1205,1210,1215,1220,1225,1230,1235,1240,1245を低速度で撮影した(time-lapse)冠状(coronal)の撮像の例1200を示すものである。
【図13】マイクロCTにより得られた腫瘍(ヒト扁平上皮細胞癌)[tumor (human squamous cell carcinoma)]を含むヌードマウス(nude mouse)の腹部領域(abdominal region)の撮像の例1300を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[詳細な説明]
[定義]
選ばれた用語または語句の定義は、以下に、かつこの開示全体に含まれている。これらの複数の定義は、用語の範囲内に含まれ、かつ実施に使用することができる複数の実施例および/または組成物の形態の例を含んでいる。これらの例は、これらの例に限定することを意図するものではなく、他の実施例を実施することが可能である。全ての用語の単数形および複数形は、それぞれの意味に含まれるものである。
【0006】
ここで「X線撮像(X-ray imaging)」とは、X線発生源を使用する多くの手順のいずれかに関係する。X線撮像の例は、コンピュータ断層撮影(Computed tomography)等を含むものである。
【0007】
ここで使用される「コンピュータ断層撮影」または「CT」または「CAT」は、X線放射線(X-ray radiation )を発生し且つ機器が回転しながら被験体の複数の領域にX線放射線を向ける回転X線機器または回転X線機械(rotating X-ray instrument or machine)を使用する手順に関係する。被験体に吸収されない放射線は、一般にデータとして検出され、記録される。そのデータは、通常、被験体の異なる複数の領域によるX線の差分吸収(differential absorption)に基づいて、器官および臓器の詳細な断面の撮像またはスライス(slices)を作成するコンピュータに送られる。高解像度のCTは、「マイクロCT」と呼ばれることがある。
【0008】
ここで「全身撮像(Whole body imaging)」は、例えばCTを使用して、被験体の全身の撮像を得る手順に関係する。全身撮像の一種において、全身の血管系(vasculature system)を検査することができる。血管系を検査する撮像は、一般に「血液プール撮像(blood pool imaging)」と呼ばれている。
【0009】
[説明]
本出願は、1以上のコントラスト強調剤(contrast-enhancing agents)を含むリポソーム(liposomes)、または1以上のコントラスト強調剤と関連付けられた(associated with)リポソームからなる組成物の例を開示している。一例において、リポソームは、比較的高濃度(relatively high concentrations)のコントラスト強調剤を含み、または比較的高濃度のコントラスト強調剤と関連付けられている。一例において、リポソームは、X線撮像(例えば、CT撮像)用の1種以上のコントラスト強調剤を含んでいる。一例において、コントラスト強調剤は、放射性(radioactive)を持っていない。
【0010】
一例において、リポソームは、このリポソームに結合し(attached)、またはこのリポソームと関連付けられた(associated with)1以上の親水性ポリマーを有している。一例において、親水性ポリマーはリポソームの表面に結合し、または関連付けられている。このリポソームは、被験体に投与されて、被験体の体内でコントラストを増大させることができる。一例においては、増大したコントラストは、長時間(an extended period of time)継続する。
【0011】
また、本出願は、リポソームおよびコントラスト強調剤を含む医薬組成物(pharmaceutical compositions)の例、および、コントラスト強調剤を含むリポソーム組成物の製造方法の例を開示している。また、本願は、X線撮像におけるこのリポソーム組成物の使用方法の例を開示している。
【0012】
[コントラスト強調剤]
ここで用いられる「コントラスト強調剤」は、通常、媒体(medium)を通過し、且つ媒体と相互作用をする場合の放射線(radiation)の減衰(attenuation)または、放射線のパワーまたは強度の低下(loss of intensity or power)に影響を及ぼす物質(substance)に関係する。コントラスト強調剤は、減衰を増加させるか、または低下させることができるものであることは勿論である。通常、ここで言及するコントラスト強調剤は、放射線の減衰を増加させることができるものである。一例において、ここで述べられているコントラスト強調剤は、X線撮像用のコントラスト強調剤である。一例において、コントラスト強調剤は、CTに用いることができる。一例においては、ここで用いられるコントラスト強調剤は、非放射性である。一つの具体例において、コントラスト強調剤は、ヨウ素を含有することができ、「ヨウ素含有(iodinated)」と呼ぶことができる。
【0013】
コントラスト強調剤は、様々な方法で分類することができる。一つの分類においては、例えば、ヨウ素含有コントラスト強調剤は、水溶性[例えば、モノヨードピリジン誘導体(monoiodinated pyridine derivatives)、ジヨードピリジン誘導体(di-iodinated pyridine derivatives)、トリヨードベンゼン環化合物(tri-iodinated benzene ring compounds)等]、不水溶性[例えば、プロピルアイオドン(propyliodone)等]、または油性(例えば、ケシ油中のヨウ素、ヨウ素を含むケシ油のヨウ化脂肪酸のエチルエステル等)とすることができる。
【0014】
一例において、ヨウ素含有コントラスト強調剤の1グループ(a grouping)は、水溶性である。この水溶性のヨウ素含有コントラスト強調剤は、トリヨウ化安臭香酸(tri-iodinated benzoic acid)の誘導体にすることができる。これらの化合物は、1以上のベンゼン環を有している。これらの化合物は、イオン性(ionic)であってもよく、また非イオン性(nonionic)であってもよい。好適な非イオン性の化合物としては、メトリザミド(metrizamide)、イオヘキソール(iohexol)、イオパミドール(iopamidol)、イオペントール(iopentol)、イオプロマイド(iopromide)、イオバゾール(ioversol)、イオトロラン(iotrolan)、イオジヘキサノール(iodixanol)等があるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
好適なイオン性のコントラスト強調剤の化合物は、弱酸性(約4.0〜6.5のpKa)または弱塩基性(約6.5〜8.5のpKa)である。通常、酸は1以上のプロトンを放出または供与する能力を有している。これらのプロトン化された形態において、酸は、通常、実質的に電気的に中性または帯電していない。プロトン化されていない形態においては、酸は、通常、実質的にマイナスに帯電している。好適な弱酸性剤は、1以上のカルボキシル基を有している。カルボキシル基は、プロトンを供与する能力を有している。カルボキシル基は、ベンゼン環に結合でき、そして/または、安臭香酸の一部にもなる。このような安臭香酸の例としては、アセトリゾエート(acetrizoate)、ジアトリゾエート(diatrizoate)、イオダミド(iodamide)、イオグリケート(ioglicate)、イオサラメート(iothalamate)、イオキシサラメート(ioxithalamate)、メトリゾエート(metrizoate)、ナトリウムメグルミンイオクサグレート(sodium meglumine ioxaglate)等があるが、これに限定されるものではない。
【0016】
通常、塩基は、1以上のプロトンを受容する能力を有している。これらのプロトン化された形態において、塩基は、通常、実質的にプラスに帯電している。プロトン化されていない形態においては、塩基は、通常、実質的に中性または帯電していない。好適な弱塩基性剤は、1以上の第1級アミン基を有している。アミンはプロトンを受容する能力を有している。弱塩基性剤としては、アミド(amides)がある。
【0017】
[リポソーム]
ここで用いる「リポソーム」は、通常、内部に空洞を有する球状(spherical)のまたはほぼ球状の粒子(particles)をいう。リポソームの壁は、脂質(lipids)の二分子層(bilayer)を含んでいる。これらの脂質は、リン脂質(phospholipids)とすることができる。多くの脂質および/またはリン脂質が、リポソームを形成するために用いられる。一つの例は、典型的なリン脂質によって水中で自然発生的に二分子層の小胞体を形成するか、または脂質の二分子層に安定的に組み込むことができる疎水基の部分と極性頭部基の部分と(hydrophobic and polar head group moieties)を有する両親媒性の脂質である。疎水基の部分は、二分子層の内部すなわち二分子膜を構成する疎水性の部位に接触しており、極性頭部基の部分は、二分子層の外部すなわち極性表面(polar surface)に配向している(oriented)。
【0018】
ここで用いられる「リン脂質」には、ホスファチジン酸(phosphatidic acid)(PA)、ホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycerol)(PG)、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)(PC)、卵ホスファチジルコリン(egg phosphatidylcholine)(EPC)、リソホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine)(LPC)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)(PE)、ホスファチジルイノシトール (phosphatidylinositol)(PI)、ホスファチジルセリン(phosphatidylserine)(PS)およびこれらの2種以上の混合物があるが、これらに限定されるものではない。このタイプの小胞形成脂質(vesicle-forming lipids)は、典型的にはアシル鎖のような、2つの炭化水素鎖と極性頭部基とを有している。このクラス(class)に含まれるものとしては、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolamine)(PE)、ホスファチジン酸(phosphatidic acid)(PA)、ホスファチジルグリセロール(phosphatidylglycerol)(PG)、ホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositol)(PI)、スフィンコミエリン(sphingomyelin)(SM)、さらに他のリン脂質がある。これらのリン脂質は、完全に飽和または部分的に飽和している。これらは、天然のまたは合成されたものである。他の例では、リポソームに含まれる脂質としてグリコリピド(glycolipids)がある。
【0019】
ここで述べられているリポソームの例に用いられるリン脂質は、約14から約24までの間の炭素原子の長さを有する2つの炭化水素鎖からなり、いずれも不飽和度が異なっている。これらのリン脂質のいくつかの例を以下に示す。以下に列挙したリン脂質は、単独または他のリン脂質と組み合わせて用いることができるが、このリスト(lists)が全てではない。ここに列挙されていない他のリン脂質を用いることもできる。
【0020】
[リン脂質]
1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Myristoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Myristoyl-2-Stearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ミリストイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン
(1-Myristoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ミリストイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Myristoyl-2-Stearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(POPA)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(POPE)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(POPG)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(POPS)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
(1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Palmitoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−パルミトイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Palmitoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phosph-L-Serine])、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Palmitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−パルミトイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Pahnitoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Myristoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート
(1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glyceio-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-StearoyI-2-LinoleoyI-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-LinoIeoyI-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Stearoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Linoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、
1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Arachidonoyi-sn-GIycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1−ステアロイル−2−アラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Arachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycero1)])、1−ステアロイル−2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1-Stearoyl-2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1−オレオイル−2−ミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Oleoyl-2-Myristoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine、1−オレオイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Oleoyl-2-Palmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine、1−オレオイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1-Oleoyl-2-Stearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DMPA)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DMPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DMPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DMPG)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dimyristoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(DMPS)、1,2−ジペンタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipentadecanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DPPA)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DPPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DPPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dipalmitoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(DPPS)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Diphytanoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diheptadecanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DSPA)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DSPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DSPG)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Distearoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジブロモステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dibromostearoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジノナデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dinonadecanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジアラチドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diarachidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジヘネイコサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diheneicosanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dibehenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジトリコサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Ditricosanoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジリグノセロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dilignoceroyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジミリストレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dimyristoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジミリステライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dimyristelaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミテライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitelaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dipalmitoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)(DOPA)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)(DOPE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])(DOPG)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])(DOPS)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dielaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dielaidoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジエライドイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dielaidoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Dilinoleoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dilinolenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Dilinolenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジリノレノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Dilinolenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dieicosenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジアラチドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Diarachidonoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])、1,2−ジエルコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dierucoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphate)、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine)、1,2−ドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](1,2-Docosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-rac-(1-glycerol)])、1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](1,2-Didocosahexaenoyl-sn-Glycero-3-[Phospho-L-Serine])および1,2−ジネルボノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dinervonoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)。
【0021】
リポソーム組成物は、脂肪アルコール、脂肪酸および/またはコレステロールエステルまたは他の受容性医薬賦形剤(pharmaceutically acceptable excipients)が含まれるように製造することができる。例えば、リポソームは、大部分がリン脂質で構成された小胞またはリポソームを安定化させる脂質を含むことができる。例えば、約25〜40モル%のコレステロールを用いることができる。
【0022】
一つの具体例においては、リポソームのタイプとして「立体的に安定したリポソーム(sterically stabilized liposomes)」を用いることができる。立体的に安定したリポソームは、柔軟な水溶性(親水性)の高分子鎖[flexible water soluble(hydrophilic)polymer chains)を含んだ表面、またはこの高分子鎖で覆われた表面をもっている。これらの高分子鎖は、リポソームと血液血漿成分(blood plasma components)との間の相互作用を防止することができ、血漿成分は、血液の細胞によってリポソームを取り込み(uptake)、血液からリポソームを取り除く役割を果たす。立体的に安定したリポソームは、単核食細胞系(mononuclear phagocyte system)の器官、主に肝臓および脾臓[細網内皮系(reticulendothelial system またはRES]に取り込まれるのを防ぐことができる。このような立体的に安定したリポソームは「長循環リポソーム(long circulating liposomes)」とも呼ばれている。
【0023】
立体的に安定したリポソームは、高分子鎖で誘導体化(derivatized)された脂質またはリン脂質を含むことができる。通常用いられる脂質またはリン脂質としては、上記したいずれのものも用いることができる。一つの典型的なリン脂質は、活性化されたポリマーと結合しやすい反応性の高いアミノ基をもつホスファチジルエタノールアミン(PE)である。典型的なPEとしては、ジステアリルPE(distearyl PE)(DSPE)がある。
【0024】
立体的に安定したリポソームに用いるのに好適なポリマーの例としては、親水性ポリマーのポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリメチルオキサゾリン(polymethyloxazoline)、ポリエチルオキサゾリン(polyethyloxazoline)、ポリハイドロオキシプロピルメタクリルアミド(polyhydroxypropyl methacrylamide)、ポリメタクリルアミド(polymethacrylamide)、ポリジメチルアクリルアミド(polydimethylacrylamide)、ポリ乳酸(polylactic acid)、ポリグリコール酸(polyglycolic acid)、ハイドロオキシメチルセルロース(hydroxymethylcellulose)やハイドロオキシエチルセルロース(hydroxyethylcellulose)のような誘導体化されたセルロース(derivatized celluloses)が含まれるが、これらに限定されるものではない。ポリリジン(Polylysine)を用いることができる。PEのような好適な脂質に結合したこれらのポリマーを含む共役脂質ポリマー(Lipid-polymer conjugates)を用いることができる。他の例のポリマーを用いることができる。
【0025】
一つの具体例において、脂質またはリン脂質に誘導体化されるポリマーとしては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)がある。PEGは、いくつもの多様な分子量を有している。一つの例において、PEG鎖(PEG chain)は、約1,000〜10,000ダルトン(daltons)の分子量を有している。リポソームが一度生成されると、リポソームの表面にPEG鎖による親水性鎖(hydrophilic chains)のコーティング(coating)がなされることにより、このようなコーティングがなされていないリポソームの血液循環時間を十分に延ばすことができる。このようなリポソームは「ペグ化リポソーム(PEGylated liposomes)」と呼ばれている。ペグ化リポソームとしては、アルザコーポレーション(ALZA Corporation)が提供するいわゆるステルス(登録商標)リポソーム[STEALTHS(R)]がある。
【0026】
ペグ化リポソームは、その表面にPEGを有するリポソームも含むものであり、このPEGは、リポソームを被験体に投与した後のある時間にリポソームから放出される。一つの例においては、PEGまたは他の親水性ポリマーが、リポソームの表面および/またはリポソームの表面を構成する脂質分子に接合する1以上の結合(bonds)または連結(linkages)が存在する。一つの例においては、結合または連結が開裂(cleaved)して、リポソームからPEGが分離される。例えば、PEGは1以上のジスルフィド結合(disulfide bonds)によって脂質に結合している。ジスルフィド結合は遊離チオール(free thiol)によって開裂して、リポソームからPEGを放出する。他のタイプの開裂可能な連結または結合は、ポリマーをリポソームに結合するために用いられる。他のタイプの薬剤または化合物は、結合または連結を開裂するために用いられる。
【0027】
一つの例において、使用されるリポソームの組成は、上述のした約14から24の間の長さの炭素鎖をもつ1以上のリン脂質が約60モル%と75モル%の間の組成となっている。1モル%と20モル%の間のリポソーム組成物がポリマー鎖で誘導体化されたリン脂質となるように、少量のリン脂質が1以上の親水性ポリマーにと関連付けられている。さらに、用いられるリポソームは、25モル%と40モル%との間のコレステロールまたは脂肪酸アルコール、脂肪酸および/または他のコレステロールエステルまたは一般にリポソームの安定化を目的とする他の受容性医薬賦形剤を有している。
【0028】
他の例においては、リポソームは、一般に「配位子(ligand)」と呼ばれる1以上の一つまたは複数の分子を有している。この分子は、リポソームの表面から接近可能(accessible)であり、例えば、1以上の特定の分子または抗原に結合または接合している。これらの配位子は、特定の細胞または組織をリポソームのダイレクト(direct)またはターゲット(target)とし、分子または抗原を細胞または組織上に又は関連付けて(associated with)結合させることができる。このリガンドは、抗体または抗体の断片にすることができる。抗体は、単一クローン(monoclonal)の抗体または断片とすることができる。このようなリポソームは、「ターゲットリポソーム(targeted liposomes)」と呼ばれるタイプのものである。
【0029】
一つの例において、ターゲットリポソームは、抗体分子をリポソームの外側表面(outer surface)に結合するために変成(modified)された脂質またはリン脂質を有することができる。これらの変成脂質には、異なる複数のタイプがある。変成脂質は、脂質に関連付けられているスペーサー鎖(spacer chain)を含んでいる。このスペーサー鎖としては、親水性ポリマーがある。典型的な親水性ポリマーとしては、その官能性を有する末端に抗体を結合する末端官能性(end-functionalized)のポリマーがある。末端官能基(functionalized end group)は、抗体のスルフヒドリル基(sulfhydryl groups)と選択的に結合するマレイミド基(maleimide group)でもよい。他の末端官能基としては、抗体のスルフヒドリル基と反応するブロモアセタミド(bromoacetamide)およびジスルフィド基(disulfide groups)でもよく、抗体のアミン基(amine groups)と反応する活性化エステル(activated ester)およびアルデヒド基でもよい。ヒドラジド基(hydrazide groups)は、アルデヒドに対して反応性があり、生物学的に関連のある多数の化合物を生成する。ヒドラジドは、活性化エステルまたはカルボジイミド活性化カルボキシル基(carbodiimide-activated carboxyl groups)によってアシル化(acylated)することができる。アシル化種(acylating species)として反応するアシルアジド基(acyl azide groups)は、ヒドラジドから容易に得ることができ、配位子を含むアミノと結合することができる。
【0030】
他の例では、リン脂質はビオチン分子(biotin molecule)によって変成させられる。ビオチン化されたリポソームの表面に抗体の分子を結合させるために、リポソームが生成されると、抗体の分子はまたビオチンで変成させられて、アビジン(avidin)の存在下で培養される。ビオチン化PEのようにビオチン化された脂質は、商業的に入手可能である。
【0031】
他の例において、脂質は、ターゲット分子(targeting molecule)をリポソームの表面に結合するために用いられる基質(substrate)によって変成される。典型的には、ビオチンで例示された基質は、例えば5,000ドルトン未満と比較的小さく、脂質の二分子層構造の最小の破裂によって多重膜のリポソーム内に入りこむことができる。この基質は、血流中で寿命を終えたリポソームにターゲット分子が確実に結合し続けられるように、ターゲット分子と不可逆的に結合することができる。
【0032】
[コントラスト強調剤を含むリポソームの調製]
リポソームは種々の方法で調製することができる。方法の例としては、乾燥した脂質を水和させる方法、脂質の揮発性有機溶液を水溶液(aqueous solution)に入れて有機溶剤を蒸発させる方法、脂質と洗剤または界面活性剤との水溶液を透析して洗剤または界面活性剤を除去する方法、およびその他の方法があるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0033】
リポソームは1種以上のコントラスト強調剤を含むことができ、またはこのコントラスト強調剤と関連付ける(associated with)ことができる。一例において、リポソームは、コントラスト強調剤を含んでいる。リポソームの製造工程においては、コントラスト強調剤は、所望のいかなるときでも加えることができる。例えば、コントラスト強調剤は、リポソームが生成される前にリポソーム化合物と関連付けられる。コントラスト強調剤は、リポソームが生成されるときにリポソーム化合物と化合(combine)させることができる。コントラスト強調剤は、リポソームが生成された後に加えることもできる。コントラスト強調剤をリポソームと関連付ける他の方法も存在する。通常、本来的に親水性のコントラスト強調剤は、リポソーム粒子の内部空洞に位置することができ、または内部空洞と関連付けることができる。本来的に親油性のコントラスト強調剤は、リポソーム粒子の脂質二分子層に位置するか、または脂質二分子層と関連付けることができる。ここでいうコントラスト強調剤は、通常、リポソームの内部空洞に位置するか、または内部空洞と関連付けられている。この例のリポソームは、ヨウ素含有コントラスト強調剤を用いたときに、少なくとも30mgヨウ素/ミリリットル(I/ml)のリポソーム懸濁液(liposome suspension)を含んでいる。リポソームの一例では、約35〜250mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例では、約37〜200mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例では、約80〜160mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例では、約100〜120mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例は、約85mg〜100mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例は、100mgI/ml以上のリポソーム懸濁液を含んでいる。
【0034】
コントラスト強調剤をリポソームにローディングする(loading)種々の方法がある。方法の例は、図1〜3のフローチャートを参照することでより理解することができる。説明を容易にする目的のため、図示された手順は一連のブロックとして明示され、記載されている。この手順はこのブロックの順番に限定されるものではなく、異なった順番および/または明示され、記載されたもの以外のブロックもあり得る。さらに、方法の例を実行するには、描かれたブロックに補足するブロックが必要な場合もある。ブロックは組み合わせたり、分けることにより多種の構成にすることができる。さらに、記載されたブロックではなく、ブロックの追加および/または別の手順を追加的に採用することができる。図は一連において生じる種々の行為を記載しているが、種々の行為は、同時、実質的に並行、および/または実施的に異なった時点で生じたものである。図1〜図3のチャートは、記載された例の実行に限定することを目的とするものではない。
【0035】
図1には、コントラスト強調剤を含む、またはコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームの生成方法の例100が示されている。この方法には、使用される1種以上のコントラスト強調剤を選択することが含まれている(ブロック105)。また、この方法には、1種以上のコントラスト強調剤の存在下でリポソームを生成することが含まれている(ブロック110)。通常、ブロック110として示されているステップ(step)は、リポソームを用意するために、前に説明した複数の方法を使用して実行してもよい。これら複数の方法には、乾燥された脂質を水和させる方法、脂質の揮発性有機溶剤を水溶液に入れて有機溶剤を蒸発させる方法、脂質と洗剤または界面活性剤との水溶液を透析して洗剤または界面活性剤を除去する方法、およびその他の方法を含めることができる。
【0036】
図2には、コントラスト強調剤を含む、またはコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームの他の生成方法の例200が示されている。この方法には、使用される1種以上のコントラスト強調剤を選択することが含まれている(ブロック205)。またこの方法には、使用される1種以上のコントラスト強調剤を濃縮することが含まれている(ブロック210)。また、この方法には、1以上のコントラスト強調剤の存在下でリポソームを生成することも含まれている(ブロック215)。またこの方法には、リポソームを濃縮することが含まれている(ブロック220)。
【0037】
1種以上のコントラスト強調剤の濃縮(ブロック210)は、種々の方法を用いて行うことができる。一つの例としては、商業的に入手可能な1種以上のコントラスト強調剤の溶液を濃縮する方法がある。一つの例としては、コントラスト強調剤を溶液から沈殿させて、沈殿したコントラスト強調剤をもとの有機溶液よりも高濃度の液体中で懸濁させる。他の例としては、溶液中のコントラスト強調剤を蒸発により濃縮することができる。蒸発の一例としては、回転式蒸発(rotary evaporation)がある。他の方法も用いることができる。一つの例としては、コントラスト強調剤の溶液を少なくとも10%まで濃縮する。一つの例としては、コントラスト強調剤の溶液を100%[即ち2倍(2-fold)]以上に濃縮する。他の例としては、固体状のコントラスト強調剤を、比較的高濃度の液体に(例えば、商業的に入手可能な溶液より高濃度で)溶解する。一つの例としては、溶液中におけるコントラスト強調剤の溶解度を高めるために加熱する。他の例としては、コントラスト強調剤がより溶解し易い溶媒を用いる。
【0038】
リポソーム懸濁液の粘性は、リポソームの濃度によって決まり、通常、リポソームの内容物(liposome contents)の粘度によって決まるものではないのはもちろんである。例えば、リポソームに封入された(encapsulated)コントラスト強調剤は、ゲル相(gel phase)を形成し、または(例えば、温度が低い場合は)リポソーム内で結晶化さえ起こす。通常、これは、リポソーム懸濁液に悪影響を与えるものではなく、(例えば、リポソームからコントラスト強調剤が漏出するおそれを低下させることによって)リポソーム懸濁液の安定化を容易にする。リポソームを溶液中で生成した後、溶液中のリポソームの数を実質的に変えることなく溶液の体積を小さくして、より濃縮されたリポソーム溶液を得るために、リポソームの溶液を濃縮することができる。リポソームの濃縮(ブロック220)は、様々な方法を用いて行うことができる。リポソームが水溶液中にあるときに、脱水と呼ばれる水の除去によりリポソームを濃縮する。脱水方法の一例としては、ダイアフィルトレーション(diafiltration)がある。ダイアフィルトレーションの一例としては、リポソームの懸濁液をフィルターまたは膜を通過させて、リポソームが懸濁している液の量を低下させる。他の方法の例としては、イオン交換(ion exchage)、超遠心分離法(ultracentrifugation)を用いたリポソームの洗浄(washing)、透析(dialysis)等がある。これらの方法により、リポソームの懸濁液は、約35〜250mgI/mlの濃度のリポソーム懸濁液となる。リポソームの一例は、37mgI/ml〜200mgI/mlのリポソーム懸濁液を含んでいる。リポソームの一例は、100mgI/ml以上のリポソーム懸濁液を含んでいる。また、これらの方法は、リポソーム懸濁液から不純物も除去する。一つの例では、不純物には、リポソームに封入できない、または関連付けることができないコントラスト強調剤が含まれている。
【0039】
図3には、コントラスト強調剤を含む、またはコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームの他の生成方法の例300が示されている。この方法300では、ローディング剤(loading agent)の存在下でのリポソームが生成される(ブロック305)。またこの方法では、リポソームの界面と外部との間のイオン勾配(ion gradient)が構築(establishing)される(ブロック310)。この方法では、1種以上のイオン化したヨウ素化ベンゼン(ionic iodinated benzenes)がリポソーム内にローディングされる(ブロック315)。
【0040】
図3に示された方法は、アクティブ・ローディング法(active loading method)またはリモート・ローディング法(remote loading method)に関するタイプ(type)またはクラス(class)である。アクティブ・ローディングまたはリモート・ローディングの一つの例においては、リポソームが生成されたかまたは部分的に生成された後に、リポソームによりまたはリポソーム内に含有されることとなる1種以上のコントラスト強調剤(例えば、複数種のコントラスト強調剤)がリポソームに入る。通常、このような生成されたリポソームは、生成のプロセスが完了したリポソームである。部分的に生成されたリポソームは、生成のプロセスが完了していないかもしれない。
【0041】
一つの方法の例においては、生成されたリポソームのうちの1つのリポソームでは、そのリポソームの外部と内部との間にイオン勾配が構築される(例えば、リポソームの外部における1以上のイオンの濃度は、リポソームの内部のイオン濃度と異なる)。リポソーム内部に運び込まれたコントラスト強調剤は、リポソームの外部からリポソームの内部に移動することができる。この移動は、コントラスト強調剤がリポソームの膜を通過することによる移動である。通常、コントラスト強調剤は、実質的に電気的に中性または帯電していない膜を通過して移動することができる。この移動は、濃度勾配(concentration gradient)に基づくものである(例えば、リポソームの外部におけるコントラスト強調剤の濃度は、リポソームの内部におけるコントラスト強調剤の濃度よりも高い)。この移動は、イオン勾配に基づくものである。この移動を、他の因子または種々の因子の組み合わせに基づくものとしてもよい。一度リポソームの内部に移動すると、リポソームの外部と比較した場合のリポソームの内部のイオン濃度の差は、コントラスト強調剤がリポソームの外部に移動することを遅くし、またはコントラスト強調剤がリポソームの外部に移動するのを防止する。一つの例においては、リポソームの外部と比較した場合のリポソームの内部のイオン濃度の差は、コントラスト強調剤がリポソームの外部に移動するのを遅らせるまたは防止するように、コントラスト強調剤を化学的に変化させる。
【0042】
イオン勾配の一例としては、pH勾配(pH gradient)がある。水和リポソームは、選択された内部および外部のpHを有している。このpHは、リポソームが生成された環境のpHに基づいて選択されたものである。水和されたリポソームが存在する外部溶液(external solution)は、選択された内部pHと異なるpHが得られるまで滴定される。また、外部溶液は、選択された内部pHと異なるpHを有する他の溶液と交換してもよい。例えば、リポソームの存在下でもとの外部溶液のpHは5.5であるが、滴定または溶液の交換を行ってpHが8.5になるようにすることができる。コントラスト強調剤がリポソーム内に入ると、リポソーム内部のコントラスト強調剤は、1以上のプロトンを受容または供与することにより化学的に変化する。コントラスト強調剤は、1以上のプロトンを受容または供与して帯電する。帯電したコントラスト強調剤は、リポソームの膜を通過することができない、または通過する能力が抑制される。これらのリポソームにおいて、コントラスト強調剤はリポソームから抜け出る(exit)ことができない、またはリポソームから抜け出る能力が低下する。
【0043】
他のアクティブ・ローディングまたはリモート・ローディングの例においては、生成されたリポソームまたは部分的に生成されたリポソームが、ローディング剤を含有することがある。例えば、リポソームは、ローディング剤の存在下で生成されている。ローディング剤は、コントラスト強調剤がリポソーム内に入るのを補助し、または容易にする。ローディング剤は、例えば水酸化物イオン濃度のようなリポソーム内部におけるある種の状態を構築するのを容易にする。ローディング剤は、コントラスト強調剤の1種以上がプロトンを受容または供与することを容易にするというような、コントラスト強調剤の化学的変化を容易にする。ローディング剤は、リポソームに入っているコントラスト強調剤がリポソームから離れるのを防ぐまたは遅らせることができる。
【0044】
アプローチの一例では、弱酸性のコントラスト強調剤(約4.0〜6.5のpKa)が、リポソームにローディングされる。このような薬剤は、弱い両親媒性(amphiphatic)を呈している。この弱酸性の薬剤は、プロトン化された形態においては、実質的に帯電していない。弱酸性の薬剤は、プロトン化されていない形態においては、実質的にマイナスに帯電している。通常、このような弱酸性の薬剤は、1以上の遊離カルボキシル基(free carboxyl groups)を有している。このような遊離カルボキシル基は、これらがプロトンを供与することによりイオン化することが可能である。弱酸性のコントラスト強調剤の例としては、アセトリゾエート(acetrizoate)、ジアトリゾエート(diatrizoate)、イオダミド(iodamide)、イオグリケート(ioglicate)、イオサラメート(iothalamate)、イオキシサラメート(ioxithalamate)、メトリゾエート(metrizoate)、イオクサグレート(ioxaglate)等がある。
【0045】
このアプローチの一例としては、リポソームが酢酸カルシウム[例えば、(CH3COO)2Ca])の存在下で生成される。酢酸カルシウムは、ローディング剤になり得るものである。酢酸カルシウムは、リポソームの内部と外部溶液内とに存在する。そして、酢酸カルシウムは、例えば希釈よって、外部の相(phase exterior)からリポソーム内へ移動する。リポソーム内部の酢酸カルシウムは、カルシウムイオンと酢酸イオンとに解離する。酢酸イオンは、リポソーム内で水と結合して、酢酸と水酸化物イオンになる。リポソームの外部溶液を希釈することにより、リポソーム内の酢酸は、リポソームの外に放出され、外部溶液に入って、リポソーム内の水酸化物イオンから分離する。これにより、リポソームの内部がリポソームの外部よりもより塩基性になるpH勾配ができあがる。特に弱酸性コントラストの強調剤がプロトン化され帯電していない程度のpHの外部の相に、弱酸性コントラスト強調剤を加えると、コントラスト強調剤はリポソーム内に移動する。このような移動は、薬剤の外部から内部への濃度勾配により生じる。このような移動は、アンモニアがリポソームから抜け出るような浸透平衡(osmolar equilibrium)を補助する力によって起こる。このような移動は、これらの補助力がその他の力に付加され、またはこれらの力が組み合わされることによって生じる。コントラスト強調剤がリポソーム内部に移動するとき、コントラスト強調剤は1以上のプロトンを供与してマイナスに帯電し、コントラスト強調剤がリポソームの外に移動するのが遅くなりまたは防止される。このアプローチに対して、追加、代替、変化したアプローチが存在する。
【0046】
アプローチの一例では、弱塩基性のコントラスト強調剤(約6.5〜8.5のpKa)は、リポソーム内にローディングされる。このような薬剤は、弱い両親媒性(amphiphatic)を呈している。弱塩基性の薬剤は、通常、中性のpHまたはその近傍では荷電していない。弱塩基性の薬剤は、プロトン化されていない形態においては、実質的に帯電していない。弱塩基性の薬剤は、プロトン化された形態においては、実質的にプラスに帯電している。通常、このような弱塩基性の薬剤は、1以上の第1級アミン基を有している。このような第1級アミン基は、プロトンを受容することによりイオン化が可能である。このような弱塩基性の薬剤としては、アミド(amides)がある。
【0047】
このアプローチの一例では、硫酸アンモニウム[(NH4)S04]の存在下でリポソームが生成される。硫酸アンモニウムは、ローディング剤となり得る。硫酸アンモニウムは、リポソームの内部と外部溶液内に存在する。硫酸アンモニウムは、例えば希釈よって外部の相(phase exterior)からリポソーム内へと移動することができる。リポソーム内の硫酸アンモニウムは、アンモニウムイオン(NH4+)と硫酸イオン(SO4−)とに解離する。リポソーム内のアンモニウムイオンは、アンモニアと水酸化物イオンに解離する。リポソームに対して外部溶液を希釈することにより、リポソーム内のアンモニウムはリポソームの外に放出され、外部溶液に入って、リポソーム内の水酸化物イオンから分離する。これにより、リポソーム内部がリポソームの外部よりもより酸性になるpH勾配ができあがる。特に弱塩基性のコントラスト強調剤がプロトン化されず帯電しない程度のpHの外部の相に、弱塩基性のコントラスト強調剤を加えると、コントラスト強調剤はリポソーム内に移動する。このような移動はリポソームの外部から内部へのコントラスト強調剤の濃度勾配により生じる。このような移動は、アンモニアのようにリポソームから抜け出るような浸透平衡を補助する力によって生じる。このような移動は、これらの補助力がその他の力に付加され、またはこれらの力が組み合わされることによって生じる。コントラスト強調剤がリポソーム内部に移動するとき、コントラスト強調剤は1以上のプロトンを受容してプラスに帯電し、コントラスト強調剤がリポソームの外に移動するのが遅くなりまたは防止される。これのアプローチに対して、追加、代替、変化したアプローチが存在する。また、他にも種々のアクティブ・ローディング法またはリモート・ローディング法がある。
【0048】
リポソームが生成された後は、リポソームを操作する技術を使用することができる。例えば、標準的な技術で生成されるリポソームの調製は、その生成後のサイズおよびラメラリティ(lamellarity)(即ち、厚さ)によって異なる。リポソームを高せん断力(high shearing)にさらすような技術、リポソームを複数の膜を通して押し出す技術、またはリポソームの超音波処理(sonication)技術は、所望のサイズのリポソームを選択するか、またはリポソームが所望のサイズを持つようにリポソームを変成するのに用いられる。これらの方法によってリポソームを操作した後のリポソームのサイズ分け(size distribution)により、所望のサイズのリポソームが確実に得られる。フラウンホーファー回折(Fraunhofer diffraction)および動的光散乱(dynamic light scattering)(DLS)のような技術は、リポソームをサイズ分けする手段として用いられている。これらの技術では、フラウンホーファー回折の場合では、通常、測定するリポソームと同じ光散乱特性(light scattering properties)を有する球体の直径を、同等の球径(equivalent spherical diameter)として測定する。DSLの場合では、測定するリポソームと同じ拡散係数(diffusion coefficient)を有する球体の直径を、同等の球径として測定する。通常、この例のリポソームの平均直径は、150nm以下となっている。リポソームを調製する例では、平均直径は、約120nm以下である。リポソームを調製する例では、平均直径は、約100nm以下とすることができる。当然のことながら、他のサイズのリポソームも使用することができる。
【0049】
一つの具体例では、リポソーム1ml当たり30mgのイオヘキソール(iohexol)でキャリーオーバー(carrying over)するナノスケールのリポソーム製剤(nano-scale liposomal formulation)をパッシブ・ローディング(passive loading)を用いて調製する。この調製では、この量のコントラスト強調剤が封入されるのを許容するために、二分子層の脂質の組成が以下の記載に合うよう調整される。一例においては、C16鎖(C16 chain)の長さを有する純粋なDPPC(1,2-ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン)(1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphatidylcholine)を、40モル%のコレステロールおよび5モル%のmPEG−DSPE[N−(カルボニルメトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファジルエタノールアミン[N-(carbonylmethoxypolyethyleneglycol 2000)-1,2-distearoyl-sn- glycero-3-phosphatidylethanolamine]](長い循環特性(long circulating properties)を与える共役ポリエチレングリコール脂質)と共に用いることにより、水素化大豆PC(HSPC)[Soy PC (HSPC)]、C16の脂質とC18の脂質の混合物、またはC18鎖の純粋なDSPC(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)が使用可能な場合より20%以上も、活性分子のリポソーム内へのカプセル化(encapsulation)を高めることができる。DLSで測定したリポソームの平均直径が100.6±3nmで、55モル%のDPPC、40モル%のコレステロール、5モル%のmPEG−DSPEの調製したもの及び350mgI/mgのイオヘキソール溶液(iohexol solution)を用いて全体で30mgI/mlの濃度になるようにする。
【0050】
他の具体例においては、リポソーム1mlに対してイオヘキソール(iohexol)80mgでキャリーオーバーするリポソーム製剤(liposomal formulation)を、パッシブ・ローディングを用いて調製する。この調製では、350mgI/mlのイオヘキソール溶液が少なくとも400〜450mgI/mlに濃縮されて、前段落で述べたリポソームの調整に用いられる。リポソームが得られた後は、リポソーム懸濁液を濃縮する。この調製を用いることにより85mgI/mlを超える濃度のリポソーム懸濁液が得られる。
【0051】
[医薬組成物および被験体への投与]
1以上のコントラスト強調剤を含む、またはこのコントラスト強調剤と関連付けられたリポソームは、被験体への投与に用いるのに好ましい医薬組成物である。この組成物は、通常、関心領域(area of interest)へ組成物を搬送(delivers)する経路(route)を使って投与される。一例において、コントラスト強調剤の組成物は、被験体の静脈内、動脈内、皮下、または他の経路を通して非経口で被験体に投与される。
【0052】
特定の医薬組成物の調製は、通常、組成物を患者に投与する方法によって決まる。当然のことながら、医薬組成物は、塩(salt)、緩衝剤、防腐剤、他の賦形剤(vehicles)および他の任意の薬剤を含んでいる。非経口の投与に好ましい組成物は、殺菌した調製液、ピロゲンが入っていない(pyrogen-free)調製液、水性調製液または油性調製液からなり、これらの調製液は、通常被験体の血液と等浸透圧(isotonic)になっている。この水性調製液(aqueous preparation)は、好ましくは、分散剤または湿潤剤および懸濁化剤(dispersing or wetting agents and suspending agents)を用いた公知の方法で調製されている。また、殺菌された注入可能な調製液は、注入可能に殺菌された溶液でも、非経口で受容できる無毒の希釈剤(diluent)または溶剤(solvent)中の懸濁液でもよい。受容性の賦形剤(acceptable vehicles)および溶剤としては、水、リンゲル液(Ringer's solution)、等浸透の塩化ナトリウムまたは他の塩、ブドウ糖(dextrose)、リン酸塩、緩衝生理食塩水(buffered saline)等、またはこれらを組み合わせたものを使用することができる。
【0053】
医薬組成物としては、安定剤、防腐剤、緩衝剤、酸化防止剤、または他の添加物を用いることができる。これに加えて、殺菌した不揮発性油(fixed oils)も溶剤または懸濁溶剤として用いることができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸を注入可能な調製液中で使用することができる。キャリア製剤(carrier formulations)としては、レミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)[マック出版社(Mack Publishing Co.,)、イーストン・ピーエー(Easton, Pa)]に掲載されているキャリア製剤を投与するのが好ましい。医薬組成物は、ユニットの剤形として便利に提供することができる。非経口投与では、医薬組成物をあるサイト(site)に搬送する注射器(syringe)、カテーテル(catheter)または同様の装置を使用することが考えられる。搬送により、少なくとも初期(initially)には、医薬組成物が被験体の循環系(circulatory system)を通して全身的に分配される(distributed)ことになる。通常、この医薬組成物は、被験体の撮像(imaging)を行う前の時点で被験体に投与されるが、撮像中に組成物が投与されることもある。医薬組成物の投与量は、被験体の1以上の組織のコントラストが増加する量とするのが好ましい。通常は、最終的に、担当の医師または技術者により、被験体への医薬組成物の投与量が決定されるのが好ましい。通常、コントラストの増加は、どの水準(level)においても、医薬組成物中のコントラスト強調剤を用いない現状を上回る水準となり得る。コントラストの増加例では、血管系(vasculature)を含む1以上の器官系(organ systems)に対して少なくとも約50HU(heat unit)、少なくとも約100HU、またはそれ以上のコントラストの増加が得られる。
【0054】
[用途]
コントラスト強調剤を含むリポソームの組成物またはその医薬組成物は、被験体に投与されると、被験体の血液および/または器官内のコントラスト強調剤の水準(level)を維持することができ、その結果、コントラストが増加して、X線撮像技術による検出が可能になる。このコントラストの増加により、長時間(extended period of time)の検出が可能になる。特定の用途によっては、ここで述べられている組成物は、数分から数時間、数日までの循環に対して半減期(half lives)を有している。一例においては、8〜24時間の循環に対して半減期を得ることができる。一例では、組成物の投与により、投与後、少なくとも30分検出し続ける程度にコントラストを増加することができる。他の例では、組成物の投与により、投与後、少なくとも5分検出し続ける程度にコントラストを増加することができる。これらの組成物は、解剖学的(anatomic)、機能的(functional)および分子的(molecular)な撮像を含む多くの用途がある。例えば、ここで述べた組成物は、心臓病学(cardiology)、腫瘍学(oncology)、神経学(neurology)および他の分野の用途に用いることができる。
【0055】
一つの具体例としては、血液プール撮像(blood pool imaging)があり、虚血(ischemia)の検出に用いることができ、いくつかのケースでは虚血の定量化(quantify)に用いることができる。例えば、通常、医薬組成物の注入で血管系全体のコントラストが変化することにより、虚血の存在での血流の低下を検出できる。虚血性腸疾患(ischemic bowel disease)、肺閉塞症(pulmonary embolism)を引き起こす虚血や、心筋症(cardiomyopathy)等になるタイプの虚血を含む種々のタイプの虚血を検出することができる。他の用途においては、動脈瘤(aneurysms)も検出するこができる。一つの具体例としては、ここで述べた組成物は、狭窄(stenosis)を検出、試験および/または判断するために心臓の撮像に用いることができ、例えば、血管形成(angioplasty)を行うような狭窄の治療、改善に用いることができる。このような技術の有効性は、ここで述べたようなコントラスト強調剤の調製剤を使用することを通して高められる。
【0056】
一つの具体例としては、ここで述べた組成物があり、心筋微小循環不全(myocardial microcirculatory insufficiencies)の検出に用いることができる。心筋微小循環(Myocardial microcirculation)は、心外膜動脈(epicardial arteries)が閉塞する兆候を示す前に閉塞の兆候を示すことが知られている。このため、心筋微小循環の閉塞を検出することにより、危険な状態にある患者における発症前のアテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)を、従来の方法よりも早く検出できる。ここで示された組成物は、心筋微小循環の閉塞の検出を容易にすることができる。
【0057】
他の具体例としては、ここで示された組成物は、腫瘍および癌の広い範囲を検出し、特徴付ける(characterize)ことができる。これらの応用は、循環系において長時間存在する立体的に安定したリポソームの特性によっ容易になり、例えば、腫瘍のように血管系が「漏れやすい(leaky)」部位の溢血に対して容易になる。腫瘍部の血管系の漏れは、新生血管系(neovasculature)の割合が高くなることに起因するものと考えられており、腫瘍の大きさが増大するにつれて血管形成(angiogenesis)が継続して行われる結果をもたらす。このような血管系の漏れとの遭遇することで、リポソームは、循環を離れて、静水圧(hydrostatic pressure)により溢血流体(extravasate fluid)に流される(driven with)。このようなリポソームは、通常、溢血後には循環系に戻ることがない。圧較差(pressure gradient)がこのような戻りを止めるからである。このような方法は、初期の腫瘍および転移性の腫瘍の両方の検出に用いることができる。
【0058】
他の具体例の組成物は、腫瘍の「病期分類(staging)」および/または分類(classification)に用いられる。これらの応用は、とりわけ進行段階の違いによる腫瘍または癌の血管系の「漏れ」の差異に依存する(depend on)。
【0059】
一つの具体例の組成物は、脊髄(spinal code)損傷の監視および特徴付け(characterizing)の分野ならびに脊髄損傷の治療の分野に用いられる。典型的な脊髄損傷は、例えば、自動車事故で生じたものであり、脊髄の周囲組織も損傷している。周囲組織の治療行為は、脊髄の治療に悪影響を及ぼすことがあると考えられている。周囲組織の治療で生じる周囲組織の新生血管系の形成は、脊髄治療を妨げると考えられている。周囲組織の治療と周囲組織の新生血管系の形成を抑制することにより、脊髄を治療することが考えられている。その次に、周囲組織を治療することができる。ここで示されたコントラスト強調剤の組成物は、治療および脊髄の周囲組織の治療抑制の監視に有用である。
【0060】
ここで示された組成物については、他にも種々の応用がある。例えば、組成物は、炎症(inflammation)、再かん流傷害(reperfusion injuries)等の検出や監視に用いることができる。
【0061】
さらに、コントラスト強調剤の組成物から構成されたリポソームは、例えばリポソームの表面の付着抗体(attaching antibodies)によって、被験体の体内における所望の細胞や組織をターゲット(targeted)とすることができる。このターゲット化(targeting)により、ターゲットとされる体の部位のコントラストを強調することができる。コントラスト強調剤の組成物は、体内や前述したように漏れのある血管を除く低い溢血において比較的長い滞留時間(residence time)を有しており、比較的腎臓に無毒であり、体の特定部位をターゲットとするために用いられる。さらに、イオン化されたコントラスト強調媒体に伴う有毒性の問題に関連する従来の浸透圧は、リポソームでの封入においては問題とならない。高い浸透圧の相は、リポソームの内部に存在し、通常、血液には晒されないからである。
【0062】
[実施例]
[実施例1]イオヘキソールを含むペグ化リポソーム(PEGylated Liposomes)の調製
リポソーム化イオヘキソール製剤(liposomal iohexol formulations)の実施例は、下記のように製造することができる。簡単に言うと、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(1,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)(DPPC)と、コレステロール(chol)と、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン[N-(carbonyl-methoxypolyethyleneglycol 2000)-1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine](DSPE-MPEG2000)とが、55:40:5のモル比となる脂質の混合物を65℃のエタノールに溶解した。そして、このエタノール溶液をイオヘキソール(350mgI/ml)で1.5〜2時間水和した。10mlのライペック・サーモライン・エクストルーダ(Lipex Thermoline extruder)[ノーザンリピッズ、カナダ国、ブリティッシュコロンビア州、バンクーバ(Northern Lipids, Vancouver, British Columbia, Canada)]によりリポソームを絞り出し(extruded)、0.2μmのヌクレオポア膜(Nucleopore membrane)[ウオーターマン・インコーポレイテッド、マサチューセッツ州、ニュートン(Waterman Inc. , Newton Massachusetts)]に5回通過させ、0.1μmのニュークレオポア膜(Nucleopore membrane)[ウオーターマン・インコーポレイテッド、マサチューセッツ州、ニュートン(Waterman Inc. , Newton Massachusetts)に7回通過させた。そして、300,000分子量カットオフ(molecular weight cutoff)(MWCO)の透析袋内でリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffer saline)(PBS)に対してリポソームを夜通し透析して、遊離イオヘキソール(free iohexol)を除去した。
【0063】
生成されたリポソーム化イオヘキソール製剤の実施例のサイズは、改良型BI−90角度計(modified BI-90 goniometer)、JDSユニフェース532nmレーザー(a JDS uniphase 532 nm laser)、浜松ホトニクス光電子増倍管(Hamamastu photomultiplier)およびブルックヘブンDLSソフトウエア3.16版(Brookhaven DLS Software Version 3.16)を用いて、動的光散乱(DLS)により判定することができる。リポソーム化イオヘキソールのカプセル(liposomal iohexol capsules)の平均直径は、DLSで判定されたナノスケール・レンジ(nano-scale range)において100.6nm(STD=3.0nm)であった。
【0064】
リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例のイオヘキソール濃度は、紫外−可視分光光度計(UV-Vis spectrophotometer)を用いて245nmでの吸収を測定することによって判定することができる。そして、ヨウ素に換算(equivalent)した濃度を計算することができる。本実施例の調製においては、脂質水和時間(1.5時間および2時間)を異ならせることにより、異なったイオヘキソールのローディング濃度(それぞれ30および34.8mgI/ml)が得られた。この30mgI/mlのイオヘキソールリポソーム化製剤(iohexol liposomal formulation)を以下に示す生体外安定性試験(in vitro stability tests)に用い、34.8mgI/mlのイオヘキソールのリポソーム化製剤を以下に示す生体内CT撮像実験(in vivo CT imaging experiment)に用いた。
【0065】
リポソーム化イオヘキソール製剤の浸透圧は、例えば、ベープロ[Vapro(R)]蒸気圧浸透圧計[ウエストコル・インコーポレイテッド(Wescor Inc.)]により測定することができる。本実施例のイオヘキソール製剤の浸透圧は、305〜315mmol/kgの範囲であった。
【0066】
[実施例2]イオヘキソールを含むペグ化されたリポソームの生体外安定性
リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例の生体外安定性は、4℃のPBS内および37℃の血漿内の両方において、リポソーム化イオヘキソール製剤からのイオヘキソールの漏出(leakage)を測定することにより判定することができる。この手順では、1mlのリポソーム化イオヘキソール製剤の実施例を300,000MWCOの透析袋内に配置し、4℃における250mlのPBSに対して透析を行った。各時点(0,1,2,3,8,24時間および3,4,5,6,8,10,18日)において、紫外線吸収に基づくイオヘキソール測定(UV absorption-based iohexol measurement)のために、1mlの透析液を除去した。各時点において少なくとも3つのデータが得られた。測定後、サンプルは一定の体積を維持するためにPBSに戻した。
【0067】
血漿内における安定性を測定するため、リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例では、25℃における250mlのPBSに対して1時間透析を行って遊離イオヘキソールを除去することができる。この実験では、1mlのリポソーム化イオヘキソール製剤を4mlのヒト血漿(human plasma)を含む300,000MWCOの透析袋内に配置し、37℃における250mlのPBSに対して透析を行った(1:4の割合を選択した)。0,1,2,3,4,5,6および8時間の各時間で、外部の相の1mlを除去し、紫外−可視吸収(UV-vis absorption)により分析した。また、血漿組成物は透析袋から漏出し、245nmの有限吸光度(finite absorbance)を有するため、PBSと血漿の混合物をPBSに対して透析する対照実験(control experiment)を行った。リポソーム化イオヘキソール製剤試験のために、外部の相の吸光度を差し引き、その結果得られた吸光の痕跡(absorbance traces)から、リポソーム化イオヘキソール製剤からのイオヘキソールの漏出を表すことができる。この結果は、PBSおよびヒト血漿中でリポソーム化イオヘキソール製剤が安定していることを示している。
【0068】
図4にイオヘキソールの漏出のカーブの例400が示されている。リポソーム化イオヘキソール製剤の実施例(30mgI/ml)について、4℃における250mlのPBSに対して透析を行った。0,1,2,3,8,24時間および3,4,5,6,8,10,18日のサンプル時点(example time points)405において、イオヘキソールの量に対する透析液の試験を行った。漏出のカーブの例410は、各時点のデータを通る線を描くことにより得られる。このデータは、透析の1時間後にカーブが安定したことを示している。8時間後の封入されたイオヘキソール全体に対して、リポソーム化イオヘキソールが7.4%漏出したことが示され、4℃における平衡透析(equilibrium dialysis)による18日間でリポソーム化イオヘキソールが7.8%漏出したことが示された。したがって、リポソーム化イオヘキソール製剤の寿命は18日より長いことになる。
【0069】
図5には、イオヘキソールと血漿の混合物の漏出のカーブの例500が示されている。
【0070】
前もってPBSに対する1時間の透析を行ったリポソーム化イオヘキソールは、この調査では、リポソームからのイオヘキソールの漏出に対する血漿の寄与を特定するために用いられている。0,1,2,3,8,24時間および3,4,5,6,8,10,18日のサンプル時点505において、イオヘキソールの量に対する透析液の試験を行った。漏出曲線の例510は、各時点のデータを通る線を描くことにより得られる。このデータは、3時間後に曲線が安定し、8時間で封入されたイオヘキソール全体に対して、リポソーム化イオヘキソール製剤が2.3%漏出したことが示しされており、PBS内に蓄えられた際に観察される漏出を超えている。合わせて、この結果は、リポソーム化イオヘキソール製剤が18日間保管されて注入されても約90%の封入がされていることになる。
【0071】
[実施例3]ウサギの体内におけるイオヘキソールを含むペグ化されたリポソームの撮像を用いた生体内の調査
2.2kgのメスのウサギに、35mg/kgのケタミン(ketamine)と5mg/kgのキシラジン(xylazine)の筋肉注射を行い、続いて歯先円錐(face cone)から得られる2%のイソフルレン(isoflurane)の蒸気によって麻酔をかけた。気管挿管(tracheal intubation)および耳静脈(ear vein)への静脈カテーテル留置の後に、20mgのペントバルビタール(pentobarbital)を静脈内に入れた。この動物の肺は、ピークが15cmH2Oの気道内圧(peak airway pressure of 15 cm H2O)で1分間当たり25呼吸(25breaths min-1)に設定した圧力調整ベンチレータ(pressure control ventilator)を用いて通気した。
【0072】
動物をCTスキャナに移送した後、動物に0.25mgのパンクロニウム(pancuronium)[筋肉弛緩剤(muscle relaxant)]を加えて、撮像収集の間の最小限の動作(insure minimal)を保証した。ペントバルビタール(pentobarbital)を、1回の投与で10〜20mgを30〜60分毎に補足的に加えた。最初の胸部および腹部の体積撮像(volume image)は、一つのスライスが1.25ピッチ相当でスライスの視準(collimation)および厚み1.3mmの渦巻状走査モード(spiral scanning mode)(100mAs,120keV)において4つの薄片フィリップスMX8000 MDCTスキャナ(4 slice Phillips MX8000 MDCT scanner)を用いて得た。撮像は、標準再構成粒(standard reconstruction kernel)[「B」粒(the "B" kernel)]を用いて、512×512のマトリックス(matrix)に再構成した。0.5秒のガントリ回転速度(gantry rotation speed)を用いた。各撮像の手順の間、ウサギは、呼気口(exhalation port)の上にある水中気泡管(underwater bubbler tube)を用いて、20cmH2O(例えば、肺の全容量に近似)に固定された気道内圧で無呼吸が保たれていた。次に、34mgI/mlのリポソーム化イオヘキソール製剤15mlを、体積撮像を繰り返すことにより手動で注入(hand-injection)し、そして、15mlのリポソーム化イオヘキソール製剤懸濁液による2回目の注入をして、3回の体積撮像(third volume image)を行った。2回の注入で1kg当たりの総投与量が475mgのヨウ素が加えられた。そして、2回目の強調剤注入の後、初期の約12,60,90,120,150,180分に繰り返し体積撮像を行った。そして、最後の撮像を取得し(コントラスト剤の注入後3.5時間まで)、動物にペントバルビタールを過剰投与して安楽死させ、動きアーチファクト(artifact)のない[同じ気道内圧と撮像取得設定(image acquisition settings)]最終の高解像度撮像を得た。最後に、超シャープ再構成粒(ultra sharp reconstruction kemal)(「D」粒および1024×1024の撮像マトリックス)を用いて、超高解像度撮像スキャン(ultrahigh resolution scan)を得て、心原性(cardiogenic)の動作がない状態で、解剖学的な評価を詳細に行った。
【0073】
[実施例4]撮像再構成
次に、心臓の3D表示画面用の最小の視野[5cm×5cm、0.1mmボクセルサイズ(voxel size)]を用いて、実施例3で示されたような入手した各スキャンのオフライン再構成の実施例を行った。拡大された心腔は、フィリップスMXVワークステーションソフトウエア(4.1版)[Philips MXV workstation software(version 4.1)]から提供され体積レンダリングソフトウエア(volume rendering software)を好ましい設定に選択することにより、視覚化される。設定が確定すると、同じレンダリングおよび同じ表示設定が全ての時点で用いられる。付加的な構成は、種々の時点で分割(segmented)されている。定量分析(quantitative analysis)は、大動脈、心臓、腎臓(中心および皮質)、肝臓、筋肉および脾臓の関心領域(regions of interest)(ROI)の特定(locating)によって行われる。平均のハウンドフィールド単位(Hounsfield units)(HU)は各時点で特定され、各構造時間におけるコントラスト濃度のいかなる減少の追跡(tracking)も可能となる。スライスまたはROIのスライス箇所は、時点から時点におけるウサギの解剖学的構造(anatomic configuration)のわずかな変化により調整される。
【0074】
[実施例5]イオヘキソールを含むペグ化リポソームの生体内における時間−減衰
実施例4で説明した撮像分析(image analysis)の例は、大動脈、腎臓[髄質(medulla)および皮質(cortex)]、肝実質(liver parenchyma)、背筋(back muscle)、左主冠動脈(left main coronary artery)、肺動脈(pulmonary artery)および主気管支内(main stem bronchus)[対照値(control value)として]の関心領域で行ったものであり、時間に対してプロットしたものをグラフ600(図6)に示した。平均の減衰(Mean attenuations)(ハウンドフィールド単位)は、これらの各場所の時間におけるコントラストの減衰を量るため、実施例3において定められた時点で判定した。このデータは、種々の関心領域での長時間のコントラストが強調され、かつ維持されていることを示している。コントラスト注入後3.5時間に減衰した大動脈605、肺動脈615および肝臓皮質内の平均減衰は、200HU(130HUの強調)であり、腎臓皮質625の減衰は75HU(25HUの強調)であった。血液プール(blood pool)内の減衰は、注入後すぐに上昇し、調査した3.5時間、実質的に一定に継続した。肝実質620内の減衰では、わずかな上昇が観察された。腎臓核630内では、一時的な上昇が観察され、調査の初期においてクリアランス(clearance)はほとんど見られず、その後においてはクリアランスは全く見られなかった。左主冠動脈上にある(placed over)小さな関心領域では、ベースライン(base line)で9HUの減衰を示し、ピークの値は118HUを示した。図7には、肝臓の位置(level of the liver)にリポソームを注入した後、0時間のベースライン(baceline)705の撮像と、2時間18分で得られた強調ピーク(peak enhanced)710の撮像とが示されている。また図7には、心臓中央の位置(level of the mid-heart)にリポソームを注入した後、0時間のベースライン715の撮像と、2時間18分で得られた強調ピーク720の撮像とが示している。
【0075】
これらのデータは、コントラストを強調させるペグ化リポソーム製剤の例の滞留時間が3時間以上になることを示している。さらに、これらのデータは、筋肉内ではコントラストの強調が低くなることを示し、リポソーム化イオヘキソールが血管内に滞留し、急激な溢血を起こさないことを示している。さらに、肝実質内のコントラスト強調は、組成物のクリアランスが実質的に肝臓によるものであり、腎臓によるものではないことを示している。
【0076】
[実施例6]イオヘキソールを含むペグ化リポソーム投与後の心臓の生体内撮像
さらに、撮像800(図8)、900(図9)、1000(図10)および1100(図11)のウサギの心臓の例の撮像を分析した。図8には、ウサギの全体の体積レンダリング撮像800が示されており、リポソーム化イオヘキソール製剤の注入前の撮像805と注入後2時間18分の撮像810が示されている。血管815には、リポソームによる血管系の強調が見られる。この結果は、同じディスプレイとレンダリングパラメータ(rendering parameters)を用いて血管を確認したところでは、リポソームの投与前は血管815を確認できなかったものが、リポソームの注入後2時間以上たっても血管815が確認できることを示している。この強調は、リポソームの2回目の投与による注入後、3時間以上たって動物を安楽死させた時点まで継続することができる。
【0077】
図9には、コントラスト前(pre-contrast)の撮像905並びにリポソーム化イオヘキソール製剤の投与後20分の撮像910、投与後1時間15分の撮像915、投与後1時間51分の撮像920、投与後2時間38分の撮像925および投与後3時間23分の撮像930からなるウサギの心臓の体積撮像900が示されている。ディスプレイおよびレンダリングの全パラメータは、全ての撮像において同一である。4つの心腔(heart chambers)の生体構造は、関連付けられた大血管に伴ってはっきりと確認することができる。左上のパネル(panel)905では血液プールがなく、注入後3時間23分に表される最後のパネル930までは血液プールが不明瞭(opacity)であるが継続的に強調されている(persistent enhanced)ことに留意されたい。目に見える構造として、右心室(right ventricle)935(RV)、左心室(left ventricle)940(LV)、動脈945(Ao)、肺動脈950(PA)および下大静脈(inferior vena cava)855(IVC)が示されている。これらの撮像は、リポソーム化イオヘキソールの投与後3時間経ってもコントラストが継続していることを実証した。
【0078】
図10には、ウサギが安楽死させられて心臓が動かなくなった後に超高解像で得た心臓の厚切り(thick-slab)のレンダリング1000が示されている。標識付きの構造(labeled structures)として、右心室1005(RV)、左心室1010(LV)および大動脈1015(Ao)が示されている。
【0079】
図11には、リポソーム化イオヘキソール製剤の2回目の注入後3時間における高倍率条件下のウサギの左冠状動脈(left coronary artery)の撮像1100が示されている。左のパネル1105には、リポソーム化イオヘキソールの一実施形態の2回目の注入後3時間18分において撮像したウサギの生体内の心臓の1.3mm厚のCTスライス(CT slice)が示されている。右のパネル1110には、同じデータ設定の体積レンダリングビュー(volume rendered view)が示されている。左冠状動脈(符号1115,1110で示されている)は、109HUまで強調されている。
【0080】
[実施例7]イオヘキソールまたはイオジキサノール(iodixanol)を含むペグ化リポソームの調製
リポソーム製剤の実施例は、以下のように生成する。約350mgI/mlのイオヘキソール溶液またはイオジキサノール溶液を、回転蒸留(rotary evaporation)により、約400〜450mgI/mlの濃度まで濃縮した。そして、これらのイオヘキソールまたはイオジキサノールの溶液は、実施例1で説明したように、リポソームの調製に用いられる。そして、得られたリポソームの懸濁液を、実施例1で説明したように、一連のヌクレオポアのトラックエッチ膜(nucleopore track-etch membranes)を通して絞り出して、100nmの均一サイズを有するリポソームを得た。そして、このリポソームの懸濁液を洗浄して、100,000ダルトン・カットオフ(Dalton cutoff)のマイクロクロス(R)モジュール[Microkros(R) modules]を用いたダイアフィルトレーション(diafiltration)によって、リポソームを約2.5倍に濃縮した。ヨウ素濃度が85〜100mgI/mlのリポソーム懸濁液を得た。
【0081】
[実施例8]イオヘキソールを含むペグ化リポソーム投与後のマウスの心臓および腫瘍の生体内撮像
マウスの撮像には、特にマイクロCTシステム(micro CT system)が用いられる。このシステムでは、動物を回転クレードル(rotatable cradle)に垂直に設置し(vertically positioned)、固定されたX線源およびX線検出器(stationary X-ray source and detector)が用いられる。このシステムとしては、0.3/1.0mm二重焦点(dual 0.3/1.0 mm focal spot)の高フラックス回転陽子X線管(high flux rotating anode X-ray tube)[フィリップスSRO0950(Philips SRO 09 50)]がある。このシステムからのフラックス(flux)は、心臓の動きが不鮮明になる(motion blur from the heart)のを制限する程度に短い10msの照射をサポートするのに十分である。2048×2048の撮像マトリックス[マイクロフォトニクスX線撮像スターカメラ、フォトニクスサイエンス、イギリス、サセックス、イースト(Microphotonics X-ray Image Star camera, Photonics Science, East Sussex, UK]をカバー(covering)する50×50マイクロ画素の高解像検出器を、106×106mmの活動領域入力(active area input)を超えて(over)用いた。有効検出ピッチ(effective detector pitch)を100ミクロンまで低減した2×2配列の画素を組み合わせたハードウエア機能を用いた。
【0082】
撮像は、後述の典型的な80kVp,170mA、10msのX線パラメータを用いて実施した。プロジェクション(projection)は、全部で260のプロジェクションを使用して、0.5のステップ角(step angle)を有し、1900[即ち、1800+ファン角(fan angle)]を超える(over)円軌道(circular orbit)を獲得することができる。各プロジェクションは、獲得可能な約8〜10分にセットした。スキャニング(scanning)は、線源と対象物の距離が400mm(sod=400mm)[source-to-object distance(sod=400 mm)]、対象物と検出器の距離が40mm(odd=40mm)[object-to-detector distance (odd =40 mm)]、線源と検出器の距離が440mm(sdd=440mm)となるように動物を配置して行い、検出器のナイキストサンプル(Nyquist sample)に合致した幾何学的な焦点ぼけ(geometric blur of the focal)を得た。この結果、各撮像の測定照射は17.64Rに設定される。
【0083】
これらのプロジェクション撮像は、パーカーウエイティング(Parker weighting)を用いたフェルカンプアルゴリズム(Feldkamp algorithm)の断層撮影像(tomograms)を再構成するのに使用した。この目的のため、コブラEXXIMソフトウエアパッケージ(EXXIMコンピューティング・コーポレイション、カルフォルニア州リバーモア)[Cobra EXXIM software package (EXXIM Computing Corp, Livermore, CA)]を用いた。用いた配列(geometry)の拡大要因(magnification factor)が1.1であったため、90ミクロンの撮像面における有効デジタルサンプリング(effective digital sampling)で等方性(isotropic)の1024×1024×1024の配列として、データを再構成した。全てのデータセット(datasets)により、喚気を同期化(ventilatory synchronization)[呼気終末(on end expiration)]することができ、EGCサイクル(ECG cycle)と異なった点における心臓を開閉(cardiac gating)することができるようになった。温度(36.5±1℃)と心拍数(heart rate)(RR=90〜100ms)は、両方ともに撮像調査中において比較的安定していた。
【0084】
この調査を実行するため、実施例7で説明したリポソーム懸濁液1/2mlをマウスの尻尾の静脈に注入した。撮像および撮像の再構成は、前述と同様に行った。データは、血液中において700HUの安定した混濁(stable opacification)を示した。この安定した混濁は、例えば、心臓および呼吸器官(respiratory)の開閉された(gated)撮像を容易にし、低速度撮影(time-lapse)の撮像を可能にする。図12には、10ミリ秒間隔で低速度撮影されたマウスの心臓の冠状撮像(coronal images)1200の例が示されている。心室が強調されているのを確認することができる。
【0085】
他の調査においては、ヒト扁平上皮細胞癌(FaDu)[human squamous cell carcinoma(FaDu)]が右脇腹に埋め込まれたヌードマウスに、実施例7で説明したリポソーム懸濁液を注入した。図13には、リポソーム懸濁液の注入後4時間のマウスの腹部のマイクロCT冠状撮像1300が示されている。腫瘍1305は、腫瘍内の血管系や血管の周囲の組織が段階的に混濁しているような血管系が示された撮像の中に確認することができる。また、腫瘍の中に溢血(血管から組織内部への血液の漏出)を確認することもできる。
【0086】
腫瘍内(ガン内)の血管の位置および腫瘍(ガン内)の非血管部は、死体解剖(necropsy)後の組織学的な試験で確認することができた。また、マウスの左側には、炎症したリンパ節(転移性)1310も見られる。
【0087】
上記の説明は、好ましい具体例および選択された変形例について言及したものである。
【0088】
修正および変更は、上述の詳細な説明を読み理解する当業者であれば理解できるであろう。ここで説明した具体例は、添付した請求の範囲またはそれと同等の範囲内に限り、このような全ての変更および修正を含むものと解釈されることを意図するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を製造する方法であって、
脂質溶液を調製するように、コレステロールと、少なくとも1種のリン脂質と、ポリマー鎖で誘導体化された少なくとも1種のリン脂質とを有機溶媒に溶解するステップと、
リポソームを含むリポソーム溶液を調製するように、ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤の水溶液で前記脂質溶液を水和するステップと、但し、前記リポソームは、少なくとも一部に前記ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入されており、
前記リポソーム溶液内の前記リポソームの平均直径を150ナノメータ未満に縮小するように、前記リポソーム溶液を押し出すステップと、
前記リポソーム溶液のヨウ素濃度が85mgI/mlを超えるように前記リポソーム溶液を濃縮するステップとを含む組成物を製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のリン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー鎖で誘導体化された少なくとも1種のリン脂質は、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が、イオヘキソール及び/またはイオジキサノールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リポソーム溶液内の前記リポソームの平均直径が、約100nmである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質溶液を水和するステップの前に、前記ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤の水溶液を濃縮するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リポソームを含む組成物であって、
前記リポソームは、
少なくとも1種のリン脂質と、
ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質と、
コレステロールとからなり、
前記リポソームの平均直径は、約150ナノメータ未満であり、
前記リポソームは、リポソーム溶液の濃度が85mgI/mlを超えるように少なくとも1種のヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入されていることを特徴とする組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のリン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質は、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを含んでいる請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記リポソームは、加圧滅菌されていない請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
コントラスト強調剤が本質的に無い懸濁媒体をさらに備えている請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のリン脂質のモル濃度が約55〜75mol%であり、
前記ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質のモル濃度が約1〜20mol%であり、
前記コレステロールのモル濃度が約25〜40mol%である請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のリン脂質は、モル濃度が約58〜59mol%の硬化大豆ホスファチジルコリンを含み、
前記ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質は、モル濃度が約5〜6mol%のN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを含み、
前記コレステロールは、モル濃度が約36〜37mol%である請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
被験体の血流に組成物を導入して前記被験体の関心領域の像をキャプチャする方法であって、
前記組成物は、リポソームからなり、
前記リポソームは、
少なくとも1種のリン脂質と、
ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質と、
コレステロールとからなり、
前記リポソームの平均直径は、約150ナノメータ未満であり、
前記リポソームは、リポソーム溶液の濃度が85mgI/mlを超えるように少なくとも1種のヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入されているものであり、
前記関心領域にX線を照射し被験体の関心領域の像をキャプチャする方法。
【請求項1】
組成物を製造する方法であって、
脂質溶液を調製するように、コレステロールと、少なくとも1種のリン脂質と、ポリマー鎖で誘導体化された少なくとも1種のリン脂質とを有機溶媒に溶解するステップと、
リポソームを含むリポソーム溶液を調製するように、ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤の水溶液で前記脂質溶液を水和するステップと、但し、前記リポソームは、少なくとも一部に前記ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入されており、
前記リポソーム溶液内の前記リポソームの平均直径を150ナノメータ未満に縮小するように、前記リポソーム溶液を押し出すステップと、
前記リポソーム溶液のヨウ素濃度が85mgI/mlを超えるように前記リポソーム溶液を濃縮するステップとを含む組成物を製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のリン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー鎖で誘導体化された少なくとも1種のリン脂質は、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が、イオヘキソール及び/またはイオジキサノールを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リポソーム溶液内の前記リポソームの平均直径が、約100nmである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質溶液を水和するステップの前に、前記ヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤の水溶液を濃縮するステップを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
リポソームを含む組成物であって、
前記リポソームは、
少なくとも1種のリン脂質と、
ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質と、
コレステロールとからなり、
前記リポソームの平均直径は、約150ナノメータ未満であり、
前記リポソームは、リポソーム溶液の濃度が85mgI/mlを超えるように少なくとも1種のヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入されていることを特徴とする組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のリン脂質は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質は、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを含んでいる請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記リポソームは、加圧滅菌されていない請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
コントラスト強調剤が本質的に無い懸濁媒体をさらに備えている請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のリン脂質のモル濃度が約55〜75mol%であり、
前記ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質のモル濃度が約1〜20mol%であり、
前記コレステロールのモル濃度が約25〜40mol%である請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種のリン脂質は、モル濃度が約58〜59mol%の硬化大豆ホスファチジルコリンを含み、
前記ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質は、モル濃度が約5〜6mol%のN−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−1,2−ジステアロル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを含み、
前記コレステロールは、モル濃度が約36〜37mol%である請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
被験体の血流に組成物を導入して前記被験体の関心領域の像をキャプチャする方法であって、
前記組成物は、リポソームからなり、
前記リポソームは、
少なくとも1種のリン脂質と、
ポリマーで誘導体化された少なくとも1種のリン脂質と、
コレステロールとからなり、
前記リポソームの平均直径は、約150ナノメータ未満であり、
前記リポソームは、リポソーム溶液の濃度が85mgI/mlを超えるように少なくとも1種のヨウ素含有非放射性コントラスト強調剤が封入されているものであり、
前記関心領域にX線を照射し被験体の関心領域の像をキャプチャする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−49702(P2013−49702A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248028(P2012−248028)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−509455(P2007−509455)の分割
【原出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(511117082)マーバル バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2007−509455(P2007−509455)の分割
【原出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(511117082)マーバル バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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