説明

撮像ユニット及び撮像ユニットの製造方法

【課題】光学部品とケーシングとからなる密閉空間に存在する異物が撮像素子に写り込むことを防止できる撮像ユニットの提供。
【解決手段】撮像素子22がパッケージ21とリッド23とで囲われる密閉空間に露出された撮像ユニットであって、リッド23の撮像素子22と対向する面の光学有効領域を含む領域P1にフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜42とリッド23の外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアQ1を配置した。撮像ユニットの密閉空間に塵や埃等の異物が浮遊し、リッド23の光学有効領域Pに接することがあっても、光学有効領域を含む領域P1はフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されているので、異物は光学有効領域Pに接しても留まることがなく、隣接する捕捉エリアQ1で捕捉されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を備えた撮像ユニット及びこの撮像ユニットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD等の撮像素子を備えたカメラ付き携帯電話、デジタルカメラ、その他の撮像装置が知られている。この撮像装置は、パッケージと称されるケーシングに撮像素子が設けられ、この撮像素子と対向するようにリッドと称されるカバー用板が取り付けられる撮像ユニットを備える。
撮像装置の内部には塵や埃が入り込むと、この塵や埃が撮像ユニットの撮像素子に写り込むことがある。そのため、撮像装置のカバー用板、その他の光学部品の表面に塵や埃が付着することを防止するための種々の技術が知られている。
【0003】
そこで、従来、撮像素子に対向して光学ローパスフィルタを配置し、この光学ローパスフィルタにIRカットフィルタを積層し、このIRカットフィルタの表面全体にフッ素含有化合物からなる異物付着防止膜を形成したデジタルカメラがある(特許文献1)。
この特許文献1では、フッ素含有化合物からなる異物付着防止膜の表面自由エネルギーが低い状態となり、塵や埃等の異物が膜表面から離脱しやすくなる。そのため、カメラ用のブロワーを用いてIRカットフィルタに付着した異物を容易に吹き飛ばすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−163275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
撮像ユニットには、ケーシングとカバー用板とから構成される内部空間が密閉されるものがあり、この密閉空間には撮像素子が露出される。この撮像ユニットは、内部空間に塵や埃が入らないように管理された上で製造されているが、製造後、撮像ユニットに加わる振動、その他の要因により、内部空間に塵や埃等の異物が偶発的に発生することがある。
特許文献1で示された従来例では、レンズの交換時等にカメラの内部に入り込んだ塵や埃を除去することについては効果があるが、撮像ユニットの密閉空間に存在する塵や埃を除去することはできない。
【0006】
つまり、特許文献1で示される従来例では、IRカットガラスの全面にフッ素含有化合物からなる異物付着防止膜が形成されているので、レンズ交換時にカメラ内部に入り込んだ塵や埃の付着をカメラ用のブロワーを用いて効果的に吹き飛ばすことができるものの、撮像ユニットの密閉空間に存在する塵や埃はユニット外に排出されることがないので、外部に排出することができない。
撮像ユニットは製造後にメンテナンスのために分解されることを想定していないので、その密閉空間に製造後に生じた塵や埃を除去することができず、密閉空間に漂う塵や埃等の異物は撮像素子に写り混みやすくなり、撮像される画像が不鮮明となる。
【0007】
本発明の目的は、光学部品とケーシングとからなる密閉空間に存在する異物が撮像素子に写り込むことを防止できる撮像ユニット及び撮像ユニットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[適用例1]
本適用例に係わる撮像ユニットは、撮像素子と、この撮像素子を収納するケーシングと、前記撮像素子に対向配置される光学部品とを備え、前記ケーシングに前記光学部品がこの部品の外縁部で取り付けられ、前記撮像素子は前記ケーシングと前記光学部品とで囲われる密閉空間に露出され、前記光学部品の少なくとも前記撮像素子と対向する面の光学有効領域を含む領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置したことを特徴とする。
この構成の本適用例では、撮像ユニットの製造後に密閉空間に塵や埃等の異物が生じた場合、この異物が光学部品の光学有効領域に接しても、光学有効領域を含む領域はフッ素含有有機珪素化合物膜が形成されているので、その膜から異物が離脱されやすくなる。つまり、フッ素は他の物質に比べて摩擦係数が小さいので、フッ素含有有機珪素化合物膜に付着した異物は滑りやすくなる。
フッ素含有有機珪素化合物膜から離脱された異物は光学有効領域外にありフッ素含有有機珪素化合物膜から形成されていない捕捉エリアで捕捉されることになる。
そのため、密閉空間に異物が浮遊することがなくなり、異物が撮像素子に写り込んで画像が不鮮明となることを防止できる。なお、光学有効領域とは光学部品で透過された光が撮像素子に写し込まれる領域である。
【0009】
[適用例2]
本適用例に係わる撮像ユニットは、前記捕捉エリアには誘電体膜が前記密閉空間に露出していることを特徴とする。
この構成の本適用例では、捕捉エリアに誘電体膜、例えば、二酸化ケイ素(SiO)の層を有する反射防止膜やUV−IRカット膜を形成する。誘電体膜はフッ素含有有機珪素化合物膜に比べて滑りにくいので、異物を捕捉しやすい。そのため、密閉空間に存在する異物を確実に捕捉することができる。その上、反射防止膜やUV−IRカット膜が光学部品に形成されることで、光学部品に反射防止機能やUR−IRカット機能を付加することができる。
【0010】
[適用例3]
本適用例に係わる撮像ユニットは、前記光学部品はリッドであることを特徴とする。
この構成の本適用例では、リッドは撮像素子を覆う部材であるため、パッケージと称されるケーシングとの間で確実な密閉構造をとる。そのため、外部から内部への異物の侵入を防止することで、異物の撮像素子への写り混みを防止することができる。
【0011】
[適用例4]
本適用例に係わる撮像ユニットは、前記ケーシングは前記撮像素子が取り付けられる第一ケーシングと、この第一ケーシングに設けられた第二ケーシングとを備え、前記光学部品は前記第一ケーシングに外縁部が接着固定され前記撮像素子を覆うリッドであり、このリッドと対向配置され前記第二ケーシングに取り付けられた透光性部材を備え、前記リッド、前記透光性部材及び前記第二ケーシングで仕切られた空間が密閉空間とされ、前記リッドは、前記透光性部材に対向する面の光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置したことを特徴とする。
この構成の本適用例では、リッドの両面のフッ素含有有機珪素化合物膜より外側部分にそれぞれ捕捉エリアが配置されているので、第一ケーシングとリッドとで仕切られた密閉空間だけでなくリッド、第二ケーシング及び透光性部材で仕切られた密閉空間に生じる異物をもリッドの捕捉エリアで捕捉することができる。
【0012】
[適用例5]
本適用例に係わる撮像ユニットは、前記透光性部材はカバー用板であり、このカバー用板の前記リッドに対向する面光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置したことを特徴とする。
この構成の本適用例では、カバー用板にもフッ素含有有機珪素化合物膜と捕捉エリアとが形成されているので、リッド、カバー用板及び第二ケーシングで囲われた密閉空間に存在する異物をリッドとカバー用板との双方で効率的に吸着することができる。
【0013】
[適用例6]
本適用例に係わる撮像ユニットは、前記リッドと前記カバー用板との間には光学板部が前記リッドと前記カバー用板にそれぞれ対向して配置され、この光学板部の両面の光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置することを特徴とする。
この構成の本適用例では、第二ケーシングに光学板部が配置されていても、この光学板部に形成された捕捉エリアでリッド、第二ケーシング及びカバー用板で仕切られた密閉空間で生じる異物を捕捉することができる。
【0014】
[適用例7]
本適用例に係わる撮像ユニットの製造方法は、前述の構成の撮像ユニットを製造する方法であって、前記光学部品の少なくとも一面にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成するフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程と、このフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程でフッ素含有有機珪素化合物膜が形成された光学部品と前記撮像素子が予め取り付けられた前記ケーシングとを紫外線硬化型接着剤を介在させて接合する接合工程と、この接合工程で前記ケーシングに接合された前記光学部品の光学有効領域より外側の領域であって前記紫外線硬化型接着剤が設けられた領域を含む領域に紫外線を照射して異物を捕捉する捕捉エリアを形成する捕捉エリア形成工程とを備え、前記接合工程は前記フッ素含有有機珪素化合物膜を前記撮像素子に対向させた状態で前記光学部品を前記ケーシングに接合することを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学部品に紫外線を照射することにより光学部品に形成されたフッ素含有有機珪素化合物膜が消失する。このフッ素含有有機珪素化合物膜が消失したエリアが捕捉エリアとなる。そして、光学部品とケーシングとの接着部分に紫外線を照射することにより、接着部分が硬化する。この接着部分が硬化することで、光学部品がケーシングから離脱することがなくなり、ケーシングと光学部品とで仕切られる空間が密閉空間となる。本適用例では、捕捉エリア形成工程を実施することで、捕捉エリアを形成すると同時に光学部品とケーシングとの接着部分を硬化させることができるので、作業が簡略化される。
【0015】
[適用例8]
本適用例に係わる撮像ユニットの製造方法は、前記捕捉エリア形成工程は、前記フッ素含有有機珪素化合物膜の前記光学有効領域をマスキングし、その後、前記光学部品に紫外線を照射することを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学有効領域をマスキングして紫外線を照射するので、このマスキングした領域に紫外線を照射しても、フッ素含有有機珪素化合物膜が消失することがない。そのため、予め定められた大きさのマスキング材を光学部品の平面の所定位置に配置して紫外線を照射するだけで、フッ素含有有機珪素化合物膜を正確な光学有効領域に形成することができる。
【0016】
[適用例9]
上記適用例に係わる撮像ユニットの製造方法は、前記捕捉エリア形成工程は、前記フッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に紫外線をスポット照射することを特徴とする。
この構成の本適用例では、光学有効領域と外縁部とに挟まれる領域にのみ紫外線をスポット照射するので、マスキングの手間が省けることになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる撮像ユニットの断面図。
【図2】撮像ユニットの部分拡大断面図。
【図3】撮像ユニットの平面図。
【図4】撮像ユニットの製造方法の一例を示す概略図。
【図5】撮像ユニットの製造方法の他の例を示す概略図。
【図6】撮像ユニットの製造方法の他の例を示す概略図。
【図7】フッ素含有有機珪素化合物膜、反射防止膜、基板の最大動摩擦係数を調べるための装置を示す概略図。
【図8】フッ素含有有機珪素化合物膜、反射防止膜、基板の最大動摩擦係数を示すグラフ。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる撮像ユニットが組み込まれた撮像装置の概略断面図。
【図10】本発明の変形例にかかる撮像ユニットが組み込まれた撮像装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図8には第1実施形態が示されている。
図1には第1実施形態にかかる撮像ユニットを有する撮像装置の概略構成の断面図が示されており、図2には撮像ユニットの一部を拡大した断面図が示されており、図3には撮像ユニットの平面図が示されている。
図1において、本実施形態の撮像ユニットは携帯電話に設けられるカメラに用いられるものであり、ハウジング1と、このハウジング1にそれぞれ取り付けられた撮像アッセンブリー2及び透光性部材としてのレンズ3とを備えている。
【0019】
ハウジング1は図示しない携帯電話の筐体に装着された金属又は合成樹脂からなる箱状体であり、互いに対向する面部に開口部1A,1Bが形成されている。この開口部1Aにはレンズ3が設けられ、開口部1Bには撮像アッセンブリー2が設けられており、撮像アッセンブリー2とレンズ3とが取り付けられた状態では、ハウジング1の内部が密閉空間とされる。
レンズ3は石英、無アルカリガラス等からなり、半球部3Aとフランジ部3Bとが一体形成されたものである。半球部3Aがハウジング1の開口部1Aから外部に露出し、フランジ部3Bが開口部1Aに取り付けられる。レンズ3の光軸が撮像アッセンブリー2の中心となるように、レンズ3と撮像アッセンブリー2とが位置決めされている。
【0020】
撮像アッセンブリー2は、ハウジング1の開口部1Bに取り付けられるセラミック製のパッケージ21と、このパッケージ21の中央部分に設けられた板状の撮像素子22と、この撮像素子22に対向して配置されパッケージ21に外縁部が接着固定される光学部品としてのリッド23とを備えている。
リッド23とパッケージ21とで仕切られる空間は密閉空間とされ、この密閉空間に撮像素子22が露出される。
なお、本実施形態では、パッケージ21が第一ケーシングを構成し、ハウジング1が第二ケーシングを構成する。これらのケーシングは、製造後にメンテナンスのために開放されることを前提としておらず、密閉されたままである。
【0021】
パッケージ21は、撮像素子22が取り付けられた平面矩形状の板部21Aと、この板部21Aの厚み方向に形成された起立部21Bとを有するものであり、起立部21Bの内側が凹部とされる。起立部21Bの高さは撮像素子22の厚さ寸法より大きい。
起立部21Bは、その外縁が板部21Aの外縁部に沿って矩形状に形成され、外縁部と内縁部との間の寸法が4辺に渡って幅寸法tとされる。
起立部21Bの全面とリッド23の外縁部との間には接着剤層24が幅寸法tに渡って設けられている。この接着剤層24は紫外線硬化型接着剤から形成されるものであり、例えば、紫外線領域で硬化する接着剤、例えば、硬化領域360nm、粘度480mPa・s、引張強度12.3MPa、硬度42ショアーD、硬化前屈折率、1.48、硬化後屈折率1.51、給水率2.6%、Tg−20.8℃、線膨張係数5.4×10−4(商品名PHOTOBOND300K:サンライズMSI株式会社製)を用いる。
撮像素子22はCCDやC−MOS等から構成されるものであり、図示しない配線の一端が接続されるとともに、この配線がパッケージ21から外部に引き出される。
【0022】
図2において、リッド23は、水晶、石英、無アルカリガラス等からなる基板40を備え、この基板40の撮像素子22と対向する面には誘電体膜41が全面に形成されている。この誘電体膜41の光学有効領域Pを含む領域P1にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が積層されている。
基板40のレンズ3と対向する面においても、誘電体膜41が全面に形成されており、この誘電体膜41の光学有効領域Pを含む領域P1にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されている。なお、本実施形態では、誘電体膜41を省略し、基板40の光学有効領域Pを含む領域P1にフッ素含有有機珪素化合物膜42を基板40の上に直接積層した構成も採用することができる。
【0023】
誘電体膜41としては、本実施形態では、基板40の撮像素子22に対向する面には反射防止膜が設けられ、基板40のレンズ3に対向する面にはUV−IRカット膜が設けられている。
反射防止膜として、低屈折率の酸化ケイ素(SiO)の薄膜と高屈折率の酸化チタン(TiO)の薄膜とが交互に積層された5層構造の無機薄膜を例示できる。この無機薄膜を構成する5層の合計の膜厚は500nm以下である。基板40に成膜するために、複数の蒸着源を備えた成膜装置を用い、これらの蒸着源の一方に酸化ケイ素を収納し、他方に酸化チタンを収納し、これらの蒸着源を用いて基板40の上に酸化ケイ素の薄膜と酸化チタンの薄膜とを交互に成膜する。
また、UV−IRカット膜として、低屈折率の酸化ケイ素(SiO)の薄膜と高屈折率の酸化チタン(TiO)の薄膜とが交互に積層された39層構造の無機薄膜を例示できる。この無機薄膜を構成する39層の合計の膜厚は5000nm以下である。この無機薄膜は反射防止膜を構成する無機薄膜と同様に複数の蒸着源を備えた成膜装置を用いて成膜される。
なお、本実施形態では、誘電体膜41は前述の構成に限定されるものではなく、例えば、低屈折率の酸化ケイ素の薄膜と高屈折率の酸化タンタル(Ta)の薄膜とが交互に積層された構造のものでもよく、さらには、低屈折率の酸化ケイ素の薄膜と高屈折率の酸化ジルコニウムの薄膜とが交互に積層された構造のものでもよい。
【0024】
フッ素含有有機珪素化合物膜42は、その厚さが2nm以上9nm以下である。なお、図1及び図2では、フッ素含有有機珪素化合物膜42をわかりやすくするために、フッ素含有有機珪素化合物膜42が誘電体膜41に比べて厚く図示されている。
フッ素含有有機珪素化合物膜42の成膜は、例えば、信越化学工業株式会社製フッ素含有有機珪素化合物(製品名KY−130)をフッ素系溶剤(住友スリーエム株式会社製:ノベックHFE−7200)で希釈して固形分濃度3%の溶液を調製し、これを多孔質セラミックス製のペレットに1g含浸させ乾燥させたものを蒸発源として使用する。なお、他のフッ素含有有機珪素化合物として、信越化学工業株式会社製フッ素含有有機珪素化合物である製品名:KP−801M、ダイキン工業株式会社製フッ素含有有機珪素化合物である製品名:オプツールDSX,デムナムシリーズS−100等を用いることができる。
フッ素含有有機珪素化合物膜42の成膜では、まず、誘電体膜41が形成された基板40又は誘電体膜41が形成されていない基板40と蒸発源とを真空装置内にセットして減圧排気を行う。そして基板40の温度を約60℃とした状態で蒸発源を約600℃に加熱し、フッ素含有有機珪素化合物を蒸発させ、これを基板40に形成された誘電体膜41の上に成膜し、あるいは、基板40に直接成膜する。
【0025】
図3に示される通り、リッド23は平面矩形状の板状部材であり、その外縁辺はパッケージ21の外縁辺と一致する。
パッケージ21の起立部21Bの内縁辺と撮像素子22の外縁辺との間のうち互いに対向する2辺部の幅寸法はそれぞれ寸法d1であり、残りの2辺部の幅寸法はそれぞれ寸法d2である。
光学有効領域Pとはレンズ3から入射する光が撮像素子22に有効に撮像されるためのリッド23の上のエリアであり、通常、円形である。本実施形態では、光学有効領域Pを含む広い領域P1、具体的には、円形の光学有効領域Pを少なくとも互いに対向する2辺が内接する平面矩形状の領域P1にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されており、この領域P1より外側に位置する領域にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されていない。
【0026】
リッド23の撮像素子22と対向する面の領域P1の外縁と外縁部の内縁、つまり、接着剤層24の内縁とに挟まれる領域には塵や埃等の異物を捕捉する捕捉エリアQ1が配置されている。この捕捉エリアQ1の互いに対向する2辺部の幅寸法はt1であり、残りの2辺部の幅寸法はt2である。
リッド23のレンズ3と対向する面の外縁と領域P1の外縁とに挟まれて塵や埃等の異物を捕捉する捕捉エリアQ2が配置されている。この捕捉エリアQ2の互いに対向する2辺部の幅寸法はT1であり、残りの2辺の幅寸法はT2である。幅寸法t1,t2や幅寸法T1,T2は領域P1の大きさ、リッド23の大きさ、接着剤層24の幅寸法等の関係で設定される。
ここで、図1〜3で示される実施形態では、捕捉エリアQ1,Q2が誘電体膜41から形成されており、動摩擦係数は0.56以上0.76以下である。フッ素含有有機珪素化合物膜42は、その動摩擦係数が0.1以上0.2以下である。つまり、領域P1のフッ素含有有機珪素化合物膜42の動摩擦係数が捕捉エリアQ1,Q2の動摩擦係数より小さいので、フッ素含有有機珪素化合物膜42の上に埃や塵等の異物が付着しようとしても、その表面で転がりやすくなり、動摩擦係数の大きな捕捉エリアQ1,Q2に留まりやすくなる。なお、本実施形態では、レンズ3のフランジ部3Bにおいて光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、フランジ部3Bのフッ素含有有機珪素化合物膜が形成されていない領域を、異物を付着させる捕捉エリアとしてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の撮像ユニットを製造する方法について図4から図6に基づいて説明する。
図4は撮像ユニットの製造方法の第一例を示す概略図である。
[誘電体膜形成工程]
図4(A)において、基板40と同じ材料であって基板40より大きな板材400の両面全てに誘電体膜41を成膜する。なお、板材400はリッド23を複数個(図では16個)取りするのに十分な大きさを有する。
[フッ素含有有機珪素化合物膜形成工程]
そして、図4(B)に示される通り、まず、板材400の両面に成膜された誘電体膜41のうち一面の上にマスキング材M1を配置する。このマスキング材M1は金属板であって、複数個の領域P1を除くように格子状に形成されている。この状態では、領域P1に区画された誘電体膜41が露出する。その後、図4(C)に示される通り、マスキング材M1の上から誘電体膜41の上にフッ素含有有機珪素化合物膜42を成膜する。
【0028】
[捕捉エリア形成工程]
その後、図4(D)に示される通り、マスキング材M1を取り外す。これにより、マスキング材M1でフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されていない領域が誘電体膜41からなる捕捉エリアQ2となる。
以上のフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程と捕捉エリア形成工程とを板材400の他面についても実施する。
[切断工程]
図4(E)に示される通り、両面に誘電体膜41とフッ素含有有機珪素化合物膜42とが形成された板材400を図示しないダイシング装置でダイシング(切断)する。ダイシングされた1つの部材は1個のリッド23を構成する。
【0029】
[接合工程]
図4(F)に示される通り、パッケージ21に撮像素子22を取り付け、さらに、パッケージ21の起立部21Bの上に紫外線硬化型の接着剤を塗布して接着剤層24を形成し、この接着剤層24の上にリッド23を配置してリッド23とパッケージ21との間を接合する。この接合工程は暗室にて行う。
[硬化工程]
図4(G)に示される通り、パッケージ21に接合されたリッド23に金属板からなるマスキング材M2を配置し、紫外線照射を行う。マスキング材M2はフッ素含有有機珪素化合物膜42と同じ大きさである。紫外線照射は水銀ランプ(365nm以下の光)を有するUV照射装置(ECS−4011GX:アイグラフィックス株式会社製)を用い、水銀ランプの照度が2mW/cm以上であり、照射時間が300秒以上である。
接着剤層24が硬化したら、マスキング材M2を取り外す。マスキング材M2が外された後はフッ素含有有機珪素化合物膜42が残ったままとなり、撮像アッセンブリー2が完成する。そして、この撮像アッセンブリー2をハウジング1に取り付け、このハウジング1にレンズ3を取り付けて撮像ユニットを完成させる。なお、以上の工程はクリーンルーム内で行う。また、第一例では、マスキング材M2を用いず、後述するスポット照射を行ってもよい。
【0030】
図5は撮像ユニットの製造方法の第二例を示す概略図である。
[誘電体膜形成工程]
図5(A)において、板材400の一面全てに誘電体膜41を成膜する。その後、板材400の残りの1面全てに誘電体膜41を成膜する。
[フッ素含有有機珪素化合物膜形成工程]
そして、図5(B)に示される通り、板材400の両面に成膜された誘電体膜41のうち一面全てにフッ素含有有機珪素化合物膜42を成膜する。さらに、板材400の他の面に形成された誘電体膜41の面の全てにフッ素含有有機珪素化合物膜42を成膜する。
[切断工程]
両面に誘電体膜41とフッ素含有有機珪素化合物膜42とが形成された板材400を図示しないダイシング装置でダイシングして両面に誘電体膜41とフッ素含有有機珪素化合物膜42とが形成された基板40を構成する。
【0031】
[接合工程]
図5(C)に示される通り、パッケージ21に撮像素子22を取り付け、さらに、パッケージ21の起立部21Bの上に紫外線硬化型の接着剤を塗布して接着剤層24を形成し、この接着剤層24の上に、誘電体膜41とフッ素含有有機珪素化合物膜42とが形成された基板40を配置してこれらを接合する。
[捕捉エリア形成工程及び硬化工程]
その後、図5(D)に示される通り、マスキング材M2を誘電体膜41とフッ素含有有機珪素化合物膜42とが形成された基板40の上に配置する。マスキング材M2は誘電体膜41とフッ素含有有機珪素化合物膜42とが形成された基板40のフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成する領域P1の上に配置する。この状態では、マスキング材M2で覆われていない領域にあるフッ素含有有機珪素化合物膜42の表面が露出されることになる。その状態で、紫外線を照射する。照射条件は前述の例とほぼ同じであるが、水銀ランプの照度が10mW/cm以上である。なお、フッ素含有有機珪素化合物膜42の劣化が始まるのは波長360nm以下の紫外線である。
【0032】
紫外線を照射することで、マスキング材M2で覆われていない領域のフッ素含有有機珪素化合物膜42に紫外線が照射されることになり、このフッ素含有有機珪素化合物膜42が紫外線によって消失する。フッ素含有有機珪素化合物膜42はマスキング材M2が配置された側のみならず撮像素子22に対向する側も消失する。マスキング材M2が配置された側のフッ素含有有機珪素化合物膜42が消失することで、領域P1の外側に誘電体膜41の捕捉エリアQ1が形成される。撮像素子22に対向する側のフッ素含有有機珪素化合物膜42が消失することで、捕捉エリアQ2が形成される。なお、接着剤層24に接しているフッ素含有有機珪素化合物膜42も紫外線照射により消失することになって接着剤層24が誘電体膜41に接することになる。ただし、紫外線照射条件が十分ではない場合にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が残ることもあるので、接着剤層24に接する領域は予めフッ素含有有機珪素化合物膜42を設けない構成としてもよい。
【0033】
なお、本例では、紫外線照射をするにあたり、マスキング材M2を用いていたが、このマスキング材M2を省略することも可能である。
図5(E)に示される通り、フッ素含有有機珪素化合物膜42の領域P1の外側領域に向けて紫外線をスポット照射する。スポット照射するために、水銀ランプで発光した紫外線を図示しないレンズ、その他の光学手段を用いる。
接着剤層24が硬化したら、撮像アッセンブリー2が完成することになり、この撮像アッセンブリー2をハウジング1に取り付け、このハウジング1にレンズ3を取り付けて撮像ユニットを完成させる。
【0034】
図6は撮像ユニットの製造方法の第三例を示す概略図である。
[フッ素含有有機珪素化合物膜形成工程]
図6(A)に示される通り、まず、板材400の一面の上にマスキング材M1を配置する。その後、図6(B)に示される通り、マスキング材M1の上から板材400の上にフッ素含有有機珪素化合物膜42を成膜する。
[捕捉エリア形成工程]
その後、図6(C)に示される通り、マスキング材M1を取り外す。これにより、マスキング材M1でフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されていない領域が捕捉エリアQ2となる。以上のフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程と捕捉エリア形成工程とを板材400の他面についても実施する。
【0035】
[切断工程]
図6(D)に示される通り、両面にフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成された板材400を図示しないダイシング装置でダイシング(切断)する。ダイシングされた1つの部材は1個のリッド23を構成する。
[接合工程]
図6(E)に示される通り、パッケージ21に撮像素子22を取り付け、さらに、パッケージ21の起立部21Bの上に紫外線硬化型の接着剤を塗布して接着剤層24を形成し、この接着剤層24の上にリッド23を配置してリッド23とパッケージ21との間を接合する。
[硬化工程]
図6(F)に示される通り、パッケージ21に接合されたリッド23にマスキング材M2を配置し、紫外線照射を行う。
接着剤層24が硬化したら、マスキング材M2を取り外す。マスキング材M2が外された後はフッ素含有有機珪素化合物膜42が残ったままとなり、撮像アッセンブリー2が完成する。そして、この撮像アッセンブリー2をハウジング1に取り付け、このハウジング1にレンズ3を取り付けて撮像ユニットを完成させる。
【0036】
従って、本実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)撮像素子22がパッケージ21とリッド23とで囲われる密閉空間に露出された撮像ユニットであって、リッド23の撮像素子22と対向する面の光学有効領域Pを含む領域P1にフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜42とリッド23のパッケージ21に取り付けられる外縁部とに挟まれた領域に異物を捕捉する捕捉エリアQ1を配置した。つまり、リッド23の密閉空間に動摩擦係数が小さなフッ素含有有機珪素化合物膜42と、このフッ素含有有機珪素化合物膜42より動摩擦係数の大きい捕捉エリアQ1とを設けた。そのため、撮像ユニットの密閉空間に塵や埃等の異物が浮遊し、リッド23の光学有効領域Pに接することがあっても、光学有効領域Pを含む領域P1はフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されているので、異物は光学有効領域Pに接しても留まることなく離反し、隣接する捕捉エリアQ1で捕捉されることになる。密閉空間に異物が浮遊することがなく捕捉エリアQ1で捕捉されるので、異物が撮像素子22に写り込んで画像が不鮮明となることを防止できる。
【0037】
(2)誘電体膜41はフッ素含有有機珪素化合物膜42だけでなくガラスや水晶等からなる基板40に比べても滑りにくいので、捕捉エリアQ1を反射防止膜やUV−IRカット膜等からなる誘電体膜41とすれば、捕捉エリアQ1で異物を捕捉しやすくなる。
つまり、フッ素含有有機珪素化合物膜42の最大動摩擦係数が0.1〜0.2、水晶からなる基板40の最大動摩擦係数が0.56〜0.59、反射防止膜からなる誘電体膜41の最大動摩擦係数が0.64〜0.76であり、捕捉エリアQ1に誘電体膜41を用いれば、フッ素含有有機珪素化合物膜42との間で動摩擦係数の差が大きくなり、異物の捕捉を効果的に行うことができる。
換言すれば、本実施形態では、リッド23の表面に動摩擦係数の差がある領域を形成する点に特徴があるものであり、光学有効領域Pでは最大動摩擦係数が0.1以上0.2以下であり、この範囲より動摩擦係数が大きな値、好ましくは0.56以上、より好ましくは0.64以上0.76以下の領域を捕捉エリアQ1として設ける点に特徴がある。
【0038】
図7はフッ素含有有機珪素化合物膜、反射防止膜、基板の最大動摩擦係数を調べるための装置を示す概略図である。
図7において、測定装置100は、新東科学株式会社製のポータブル摩擦計であり、装置本体101にフォトセンサを有する測定部102が設けられている。この測定部102に被摩擦物として木綿布103を設け、この木綿布103に被測定物を当接した状態で矢印F方向に測定装置100を移動させて被測定物の動摩擦係数を測定する。被測定物としては、図7に示される通り、水晶の基板40に反射防止膜の誘電体膜41を設け、この誘電体膜41の上にフッ素含有有機珪素化合物膜42を設けたサンプルと、水晶の基板40に反射防止膜の誘電体膜41を設けたサンプルと、水晶の基板40のサンプルの3パターンで実験した。なお、水晶の基板40に反射防止膜の誘電体膜41を設け、この誘電体膜41の上にフッ素含有有機珪素化合物膜42を設けたサンプルでは、フッ素含有有機珪素化合物膜42の厚みを0.7nm、1.9nm、3.1nm、4.5nm、5.9nm、7.2nm、9.1nmとした。
これらの3パターンについて2回測定を行った。
【0039】
図8はフッ素含有有機珪素化合物膜、反射防止膜、基板の最大動摩擦係数を示すグラフである。
図8において、水晶の基板40に反射防止膜の誘電体膜41を設け、この誘電体膜41の上にフッ素含有有機珪素化合物膜42を設けたサンプルAと、水晶の基板40に反射防止膜の誘電体膜41を設けたサンプルBと、水晶の基板40のサンプルCの3パターンにおいて実施例1と実施例2の測定結果が示されている。
サンプルAでは各フッ素含有有機珪素化合物膜42の厚さにかかわらず、実施例1,2とも最大動摩擦係数が0.143μm〜0.197μmの範囲、概ね、0.1μm〜0.2μmの範囲にあることがわかる。これに対して、サンプルBでは、実施例1の最大動摩擦係数が0.641μmであり、実施例2の最大動摩擦係数が0.759μmである。サンプルCでは、実施例1の最大動摩擦係数が0.582μmであり、実施例2の最大動摩擦係数が0.559μmである。
【0040】
(3)本実施形態では、フッ素含有有機珪素化合物膜42と捕捉エリアQ1とを設ける対象をリッド23とした。リッド23は撮像素子22を覆う部材であるため、パッケージ21との間で確実な密閉構造をとる。そのため、外部から内部への異物の侵入を防止することで、異物の撮像素子22への写り混みを効果的に防止することができる。しかも、リッド23とパッケージ21との内部密閉空間に撮像素子22が設けられる撮像アッセンブリー2は撮像ユニットの基本単位を構成するため、少なくとも、撮像アッセンブリー2のリッド23にフッ素含有有機珪素化合物膜42と捕捉エリアQ1とを設けることで、必要な防塵対策をとることができる。
【0041】
(4)レンズ3と撮像アッセンブリー2とをハウジング1に対向して設け、このハウジング1の内部を密閉空間にした。しかも、撮像アッセンブリー2を構成するリッド23のレンズ3と対向する面にフッ素含有有機珪素化合物膜42を設け、このフッ素含有有機珪素化合物膜42より外側に捕捉エリアQ2を配置した。そのため、パッケージ21とリッド23とで仕切られた密閉空間に生じる異物だけでなく、リッド23、ハウジング1及びレンズ3で仕切られた密閉空間に生じる異物をもリッド23の捕捉エリアで捕捉することができる。
【0042】
(5)レンズ3のフランジ部3Bにおいて、光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を設け、このフッ素含有有機珪素化合物膜より外側に異物を捕捉する捕捉エリアを設ければ、リッド23、ハウジング1及びレンズ3で仕切られた密閉空間に生じる異物をレンズ3の捕捉エリアで捕捉することができる。
【0043】
(6)撮像ユニットを製造する方法として、リッド23にフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成するフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程と、このフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程でフッ素含有有機珪素化合物膜42が形成されたリッド23と撮像素子22が予め取り付けられたパッケージ21とを紫外線硬化型接着剤を介在させて接合する接合工程と、この接合工程でパッケージ21に接合されたリッド23の光学有効領域Pを含み光学有効領域Pより外側の領域P1であって接着剤層24を含む領域に紫外線を照射して異物を捕捉する捕捉エリアQ1,Q2を形成する捕捉エリア形成工程と、を備えて構成し、接合工程はフッ素含有有機珪素化合物膜42を撮像素子22に対向させた状態でリッド23をパッケージ21に接合すれば、紫外線を照射することによってフッ素含有有機珪素化合物膜42の領域P1より外側部分が消失して捕捉エリアQ1,Q2が形成されると同時に、接着剤層24を硬化させることができるので、撮像ユニットを製造するための作業を簡略化することができる。
【0044】
(7)紫外線照射の前に、フッ素含有有機珪素化合物膜42の光学有効領域Pを含む領域P1をマスキングすれば、フッ素含有有機珪素化合物膜42を正確な領域P1に形成することができる。
【0045】
(8)紫外線照射を、フッ素含有有機珪素化合物膜42の光学有効領域Pを含む領域P1とリッドの外縁部とに挟まれる領域にスポット照射することで、マスキングの手間が省けることになる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態を図9に基づいて説明する。
図9は第2実施形態にかかる撮像装置の概略構成が示されている。
図9において、第2実施形態の撮像装置は、一眼レフのデジタルカメラであり、ハウジング1と、ハウジング1の開口部1Aに設けられた透光性部材としてのカバー用板5と、ハウジング1の開口部1Bに設けられた撮像アッセンブリー2と、ハウジング1の中央部に設けられた光学板部6とを備えた構成である。カバー用板5には図示しないレンズからの光が入射されるようになっている。
カバー用板5は水晶から形成されており、光学板部6と対向する面の全面に誘電体膜(図示せず)が成膜され、この誘電体膜の光学有効領域を含む領域P1にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が成膜されている。このフッ素含有有機珪素化合物膜42の外縁から外側の領域は異物を捕捉する捕捉エリアQ2である。
【0047】
光学板部6は、カバー用板5に対向する色吸収ガラス61と、撮像アッセンブリー2に対向する水晶製の位相差板62とが積層された構造であり、その外縁部がハウジング1の中央部から突出した取付部1Cに取り付けられている。
色吸収ガラス61のカバー用板5に対向する面の全面に誘電体膜(図示せず)が成膜され、この誘電体膜の光学有効領域を含む領域P1にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が成膜されている。このフッ素含有有機珪素化合物膜42の外縁から外側の領域は異物を捕捉する捕捉エリアQ2である。
位相差板62の撮像アッセンブリー2に対向する面の全面に誘電体膜(図示せず)が成膜され、この誘電体膜の光学有効領域を含む領域P1にはフッ素含有有機珪素化合物膜42が成膜されている。このフッ素含有有機珪素化合物膜42の外縁から外側の領域は異物を捕捉する捕捉エリアQ2である。
第2実施形態の撮像アッセンブリー2の構造並びに製造方法は第1実施形態と同じである。
【0048】
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(3)(5)〜(8)と同様の効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(9)ハウジング1にカバー用板5を設け、このカバー用板5の光学有効領域を含む領域P1にフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜42の外縁から外側の領域を捕捉エリアQ2とした。そして、ハウジング1の内部に色吸収ガラス61と位相差板62とを配置し、色吸収ガラス61の領域P1にフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜42の外縁から外側の領域を捕捉エリアQ2とし、位相差板62に領域P1にフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜42の外縁から外側の領域を捕捉エリアQ2とした。そのため、ハウジング1の中で色吸収ガラス61及び位相差板62とで仕切られる密閉空間に異物があったとしても、これらの密閉空間に露出するリッド23、位相差板62、色吸収ガラス61及びカバー用板5にそれぞれフッ素含有有機珪素化合物膜42と捕捉エリアQ2とが形成されているので、より効率的に異物の捕捉が行える。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第2実施形態では、撮像ユニットの光学部品を、ハウジング1の開口部1Aに設けられたカバー用板5と、ハウジング1の開口部1Bに設けられた撮像アッセンブリー2のリッド23と、ハウジング1の中央部に設けられた色吸収ガラス61及び位相差板62との4枚構成としたが、本発明では、撮像ユニットの光学部品を、図10に示される通り、ハウジング1の開口部1Aに設けられたカバー用板60と、このカバー用板60に積層される色吸収ガラス61と、撮像アッセンブリー2のリッド23との3枚から構成されるものとしてもよい。
【0050】
また、前記各実施形態では、光学有効領域Pを平面円形とし、この光学有効領域Pを含みフッ素含有有機珪素化合物膜42を形成する領域P1を平面矩形状としたが、本発明では、領域P1を光学有効領域Pと同心円上の円形としてもよい。
さらに、フッ素含有有機珪素化合物膜42と捕捉エリアQ1,Q2とを形成する光学部品は前記実施形態のものに限定されるものではない。
また、誘電体膜41を反射防止膜やUV−IRカット膜としたが、UVカット膜やIRカット膜を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、CCD等の撮像素子を備えたカメラ付き携帯電話、デジタルカメラ、その他の撮像装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…ハウジング(第二ケーシング)、2…撮像アッセンブリー、3…レンズ(透光性部材)、5,60…カバー用板、6…光学板部、21…パッケージ(第一ケーシング)、22…撮像素子、23…リッド(光学部品)、24…接着剤層、41…誘電体膜、42…フッ素含有有機珪素化合物膜、P…光学有効領域、P1…領域、Q1,Q2…捕捉エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、この撮像素子を収納するケーシングと、前記撮像素子に対向配置される光学部品とを備え、前記ケーシングに前記光学部品がこの部品の外縁部で取り付けられ、
前記撮像素子は前記ケーシングと前記光学部品とで囲われる密閉空間に露出され、
前記光学部品の少なくとも前記撮像素子と対向する面の光学有効領域を含む領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置した
ことを特徴とする撮像ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載された撮像ユニットにおいて、
前記捕捉エリアには誘電体膜が前記密閉空間に露出していることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載された撮像ユニットにおいて、
前記光学部品はリッドであることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載された撮像ユニットにおいて、
前記ケーシングは前記撮像素子が取り付けられる第一ケーシングと、この第一ケーシングに設けられた第二ケーシングとを備え、
前記光学部品は前記第一ケーシングに外縁部が接着固定され前記撮像素子を覆うリッドであり、このリッドと対向配置され前記第二ケーシングに取り付けられた透光性部材を備え、
前記リッド、前記透光性部材及び前記第二ケーシングで仕切られた空間が密閉空間とされ、
前記リッドは、前記透光性部材に対向する面の光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置したことを特徴とする撮像ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載された撮像ユニットにおいて、
前記透光性部材はカバー用板であり、このカバー用板の前記リッドに対向する面光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置したことを特徴とする撮像ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載された撮像ユニットにおいて、
前記リッドと前記カバー用板との間には光学板部が前記リッドと前記カバー用板にそれぞれ対向して配置され、この光学板部の両面の光学有効領域にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成し、このフッ素含有有機珪素化合物膜と前記外縁部とに挟まれる領域に異物を捕捉する捕捉エリアを配置することを特徴とする撮像ユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された撮像ユニットを製造する方法であって、
前記光学部品の少なくとも一面にフッ素含有有機珪素化合物膜を形成するフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程と、このフッ素含有有機珪素化合物膜形成工程でフッ素含有有機珪素化合物膜が形成された光学部品と前記撮像素子が予め取り付けられた前記ケーシングとを紫外線硬化型接着剤を介在させて接合する接合工程と、この接合工程で前記ケーシングに接合された前記光学部品の光学有効領域より外側の領域であって前記紫外線硬化型接着剤が設けられた領域を含む領域に紫外線を照射して異物を捕捉する捕捉エリアを形成する捕捉エリア形成工程とを備え、前記接合工程は前記フッ素含有有機珪素化合物膜を前記撮像素子に対向させた状態で前記光学部品を前記ケーシングに接合することを特徴とする撮像ユニットの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された撮像ユニットの製造方法において、
前記捕捉エリア形成工程は、前記フッ素含有有機珪素化合物膜の前記光学有効領域をマスキングし、その後、前記光学部品に紫外線を照射することを特徴とする撮像ユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載された撮像ユニットの製造方法において、
前記フッ素含有有機珪素化合物膜の前記光学有効領域と前記外縁部とに挟まれる領域に紫外線をスポット照射することを特徴とする撮像ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109297(P2011−109297A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260676(P2009−260676)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】