説明

撮像ユニット及び撮像装置

【課題】撮像ユニットを大型化することなく、部品点数、組立工数の低減を図ることができ、リワーク性を改善する。
【解決手段】撮像素子ユニット33aを撮影者側で保持すると共に、光学ローパスフィルタ410を被写体側で保持する保持部材610と、撮像素子ユニット33aを保持部材10に固定した際に、これら撮像素子ユニット33aと保持部材610の間を封止して密閉空間を形成する、保持部材610の撮影者側に設けられている第一の封止部材620と、光学ローパスフィルタ410を保持部材610に固定した際に、これら光学ローパスフィルタ410と保持部材610の間を封止して密閉空間を形成する、保持部材610の被写体側に設けられている第二の封止部材630とを備え、第一の封止部材620と第二の封止部材630は光軸に垂直な方向にオフセットして配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光軸上に配設される光学部材及び撮像素子を保持部材で保持する撮像ユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体像を電気信号に変換して撮像するデジタルカメラ等の撮像装置では、撮影光束を撮像素子で受光し、その撮像素子から出力される光電変換信号を画像データに変換して、メモリカード等の記録媒体に記録する。撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)や、CMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が用いられる。
【0003】
このような撮像装置では、撮像素子の被写体側に、光学ローパスフィルタや赤外吸収フィルタが配置されるが、これらフィルタの表面に塵埃等の異物が付着すると、その付着部分が黒い点となって撮影画像に写り込み、画像の見栄えが低下してしまう。
【0004】
特に、レンズ交換可能なデジタル一眼レフカメラでは、シャッタやクイックリターンミラーといった機械的な作動部が撮像素子の近傍に配置されており、それらの作動部から発生した塵埃等の異物が撮像素子やフィルタの表面に付着することがある。また、レンズ交換時に、レンズマウントの開口から塵埃等の異物がカメラ本体内に入り込み、これが付着することもある。
【0005】
このような現象を回避するために、特許文献1には、撮像素子の被写体側の光学素子を圧電素子で振動させることにより、光学素子の表面に付着した塵埃等の異物を除去する技術が提案されている。ここでは、このような光学素子を振動させる手段として、光軸上に配設された光学部材を波状に振動させる振動手段を構成し、光学素子を2つ以上の振動モードで共振振動させることにより、光学部材の表面に付着した塵埃等を除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−26564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方式においては、ミラーボックスに支持される撮像素子保持部材と、振動手段を備えた光学素子を保持する光学素子保持部材とが別体であることから、部品点数が多く、また組立工数が多くなるという課題を有している。
【0008】
また、光学素子ユニットと撮像素子ユニットは両面粘着のゴムシートで封止されているため、リワーク時に両面粘着を引き剥がす作業が困難であるという問題が生じる。
【0009】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、撮像ユニットを大型化することなく、部品点数、組立工数の低減を図ることができ、リワーク性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像ユニットは、撮像手段と、前記撮像手段を撮影者側で保持すると共に、光学部材を被写体側で保持する保持部材と、前記撮像手段を前記保持部材に固定した際に、これら撮像手段と保持部材の間を封止して密閉空間を形成する、前記保持部材の撮影者側に設けられている第一の封止部材と、前記光学部材を前記保持部材に固定した際に、これら光学部材と保持部材の間を封止して密閉空間を形成する、前記保持部材の被写体側に設けられている第二の封止部材とを備え、前記第一の封止部材と前記第二の封止部材は光軸に垂直な方向にオフセットして配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像ユニットを大型化することなく、部品点数、組立工数の低減を図ることができ、リワーク性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの正面側斜視図である。
【図2】本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの背面側斜視図である。
【図3】本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】撮像ユニットまわり保持構造を示すためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
【図5】撮像ユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図6】圧電素子の詳細を説明するための図である。
【図7】保持部材と封止部材の構成を示す図である。
【図8】撮像ユニットから撮像素子ユニットを分解した斜視図である。
【図9】撮像ユニットから光学ローパスフィルタを分解した斜視図である。
【図10】光学ローパスフィルタの表面に付着した塵埃等の異物を除去する動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<1.カメラの全体の概略構成(図1〜図3)>
(1−1.機械的構成(図1、図2))
本実施形態においては、本発明を適用して以下のようなデジタル一眼レフカメラを構成することができるが、まず、そのカメラの全体の概略構成における機械的構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの外観図であり、カメラを前面側(被写体側)から見た斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。図1に示すように、カメラ本体1には、撮影時に撮影者が安定して握り易いように被写体側に突出したグリップ部1aが設けられている。
【0015】
カメラ本体1のマウント部2には、撮影レンズユニット(200a)(図1、2では不図示)が着脱可能に固定される。マウント接点21は、カメラ本体1と撮影レンズユニットとの間で制御信号、状態信号、データ信号等の通信を可能にすると共に、撮影レンズユニット側に電力を供給する。マウント接点21は、電気通信のみならず、光通信、音声通信等が可能なように構成しても良い。マウント部2の横には、撮影レンズユニットを取り外す際に押し込むレンズロック解除ボタン4が配置されている。
【0016】
カメラ本体1内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス5が設けられており、ミラーボックス5内にメインミラー(クイックリターンミラー)6が配設されている。メインミラー6は、撮影光束をペンタダハミラー22(図3を参照)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子33(図3を参照)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
【0017】
カメラ上部のグリップ1a側には、撮影開始の起動スイッチとしてのレリーズボタン7と、撮影時の動作モードに応じてシャッタスピードやレンズ絞り値を設定するためのメイン操作ダイヤル8と、撮影系の上面動作モード設定ボタン10とが配置されている。これら操作部材の操作結果の一部は、LCD表示パネル9に表示される。レリーズボタン7は、第1ストロークでSW1(図3の7a)がONし、第2ストロークでSW2(図3の7b)がONする構成となっている。また、上面動作モード設定ボタン10は、レリーズボタン7の1回の押込みで連写になるか1コマのみの撮影となるかの設定や、セルフ撮影モードの設定等を行うためのものであり、LCD表示パネル9にその設定状況が表示される。
【0018】
カメラ上部の中央には、カメラ本体1に対してポップアップするストロボユニット11と、フラッシュ取り付け用のシュー溝12及びフラッシュ接点13とが設けられている。カメラ上部の右寄りには、撮影モード設定ダイヤル14が配置されている。
【0019】
カメラのグリップ1aに対して反対側の側面には、開閉可能な外部端子蓋15が設けられている。外部端子蓋15を開けた内部には、外部インタフェースとしてビデオ信号出力用ジャック16及びUSB出力用コネクタ17が納められている。
【0020】
図2は、本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの外観図であり、カメラを撮影者側(背面側)から見た斜視図である。図2に示すように、カメラ背面の上方には、ファインダ接眼窓18が設けられている。また、カメラ背面の中央付近には、画像表示可能なカラー液晶モニタ19が設けられている。
【0021】
カラー液晶モニタ19の横には、サブ操作ダイヤル20が配置されている。サブ操作ダイヤル20は、メイン操作ダイヤル8の機能の補助的役割を担うものである。例えば、カメラのAEモードでは、自動露出装置により算出された適正露出値に対する露出補正量を設定するために使用される。シャッタスピード及びレンズ絞り値の各々を使用者の意志により設定するマニュアルモードでは、メイン操作ダイヤル8でシャッタスピードを設定し、サブ操作ダイヤル20でレンズ絞り値を設定するように使用される。また、このサブ操作ダイヤル20は、カラー液晶モニタ19に表示される撮影済み画像の表示を選択するためにも使用される。
【0022】
さらに、カメラ背面には、カメラの動作を起動もしくは停止するためのメインスイッチ43と、クリーニングモードを動作させるためのクリーニング指示操作部材44とが配置されている。クリーニング指示操作部材44は、詳しくは後述するが、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した塵埃等の異物をふるい落とす動作を指示するためのものである。なお、クリーニングモードは、クリーニング指示操作部材44を用いて任意に動作させることもできるし、メインスイッチ43をONした際、或いはOFFした際、或いはその両方のタイミングで自動で動作させることもできる。
【0023】
(1−2.電気的構成(図3))
図3は、本実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、図1、2と共通する部分には同一の符号を付す。カメラ本体1に内蔵されたマイクロコンピュータからなる中央処理装置(以下、「MPU」と称する)100は、カメラの動作制御を司るものであり、各要素に対して様々な処理や指示を実行する。MPU100に内蔵されたEEPROM100aは、時刻計測回路109の計時情報やその他の情報を記憶することができる。
【0024】
MPU100には、ミラー駆動回路101、焦点検出回路102、シャッタ駆動回路103、映像信号処理回路104、スイッチセンサ回路105、測光回路106が接続される。また、LCD駆動回路107、バッテリチェック回路108、時刻計測回路109、電力供給回路110、圧電素子駆動回路111が接続される。これらの回路は、MPU100の制御により動作するものである。
【0025】
MPU100は、撮影レンズユニット200a内のレンズ制御回路201とマウント接点21を介して通信を行う。マウント接点21は、撮影レンズユニット200aが接続されるとMPU100へ信号を送信する機能も有する。これにより、レンズ制御回路201は、MPU100との間で通信を行い、AF駆動回路202及び絞り駆動回路203を介して撮影レンズユニット200a内の撮影レンズ200及び絞り204の駆動を行う。なお、図3では便宜上1枚の撮影レンズ200のみを図示しているが、実際は多数のレンズ群によって構成される。
【0026】
AF駆動回路202は、例えばステッピングモータによって構成され、レンズ制御回路201の制御により撮影レンズ200内のフォーカスレンズ位置を変化させ、撮像素子33に撮影光束の焦点を合わせるように調整する。絞り駆動回路203は、例えばオートアイリス等によって構成され、レンズ制御回路201の制御により絞り204を変化させ、光学的な絞り値を得る。
【0027】
メインミラー6は、図3に示す撮影光軸に対して45°の角度に保持された状態で、撮影レンズ200を通過する撮影光束をペンタダハミラー22へ導くと共に、その一部を透過させてサブミラー30へ導く。サブミラー30は、メインミラー6を透過した撮影光束を焦点検出センサユニット31へ導く。
【0028】
ミラー駆動回路101は、例えばDCモータとギヤトレイン等によって構成され、メインミラー6を、ファインダにより被写体像を観察可能とする位置と、撮影光束から待避する位置とに駆動する。メインミラー6が駆動すると、同時にサブミラー30も、焦点検出センサユニット31へ撮影光束を導く位置と、撮影光束から待避する位置とに移動する。
【0029】
焦点検出センサユニット31は、不図示の結像面近傍に配置されたフィールドレンズ、反射ミラー、2次結像レンズ、絞り、複数のCCDからなるラインセンサ等によって構成され、位相差方式の焦点検出を行う。焦点検出センサユニット31から出力される信号は、焦点検出回路102へ供給され、被写体像信号に換算された後、MPU100に送信される。MPU100は、被写体像信号に基づいて位相差検出法による焦点検出演算を行う。そして、デフォーカス量及びデフォーカス方向を求め、これに基づいて、レンズ制御回路201及びAF駆動回路202を介して撮影レンズ200内のフォーカスレンズを合焦位置まで駆動する。
【0030】
ペンタダハミラー22は、メインミラー6により反射された撮影光束を正立正像に変換反射する。撮影者はファインダ光学系を介してファインダ接眼窓18から被写体像を観察することができる。ペンタダハミラー22は、撮影光束の一部を測光センサ23へも導く。測光回路106は、測光センサ23の出力を得て、観察面上の各エリアの輝度信号に変換し、MPU100に出力する。MPU100は、輝度信号に基づいて露出値を算出する。
【0031】
シャッタユニット(機械フォーカルプレーンシャッタ)32は、撮影者がファインダにより被写体像を観察している時には、シャッタ先幕が遮光位置にあると共に、シャッタ後幕が露光位置にある。次いで、撮影時には、シャッタ先幕が遮光位置から露光位置へ移動する露光走行を行って被写体からの光を通過させ、撮像素子33で撮像を行う。所望のシャッタ秒時の経過後、シャッタ後幕が露光位置から遮光位置へ移動する遮光走行を行って撮影を完了する。シャッタユニット32は、MPU100の指令を受けたシャッタ駆動回路103により制御される。
【0032】
撮像ユニット400は、光学ローパスフィルタ410、圧電素子430、撮像素子33を含む撮像手段である撮像素子ユニット33aが後述する他の部品と共にユニット化されたものである。
【0033】
撮像素子33は、被写体像を光電変換するものであり、本実施の形態ではCMOSセンサが用いられるが、その他にもCCD型、CMOS型及びCID型等様々な形態があり、いずれの形態の撮像デバイスを採用しても良い。撮像素子ユニット33aの前方に配置された光学ローパスフィルタ410は、水晶からなる1枚の複屈折板であり、その形状は矩形状である。圧電素子430は、単板の圧電素子(ピエゾ素子)であり、MPU100の指示を受けた圧電素子駆動回路111により加振され、その振動を光学ローパスフィルタ410に伝えるように構成されている。
【0034】
クランプ/CDS(相関二重サンプリング)回路34は、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うものであり、クランプレベルを変更することも可能である。AGC(自動利得調整装置)35は、A/D変換する前の基本的なアナログ処理を行うものであり、AGC基本レベルを変更することも可能である。A/D変換器36は、撮像素子33のアナログ出力信号をデジタル信号に変換する。
【0035】
映像信号処理回路104は、デジタル化された画像データに対してガンマ/ニー処理、フィルタ処理、モニタ表示用の情報合成処理等、ハードウエアによる画像処理全般を実行する。この映像信号処理回路104からのモニタ表示用の画像データは、カラー液晶駆動回路112を介してカラー液晶モニタ19に表示される。また、映像信号処理回路104は、MPU100の指示に従って、メモリコントローラ38を通じてバッファメモリ37に画像データを保存することもできる。さらに、映像信号処理回路104は、JPEG等の画像データ圧縮処理を行うこともできる。連写撮影等、連続して撮影が行われる場合は、一旦バッファメモリ37に画像データを格納し、メモリコントローラ38を通して未処理の画像データを順次読み出すこともできる。これにより、映像信号処理回路104は、A/D変換器36から入力されてくる画像データの速度に関わらず、画像処理や圧縮処理を順次行うことができる。
【0036】
メモリコントローラ38は、外部インタフェース40から入力される画像データをメモリ39に記憶し、メモリ39に記憶されている画像データを外部インタフェース40から出力する機能を有する。なお、外部インタフェース40は、図1におけるビデオ信号出力用ジャック16及びUSB出力用コネクタ17が相当する。メモリ39としては、カメラ本体に着脱可能なフラッシュメモリ等が用いられる。
【0037】
スイッチセンサ回路105は、各スイッチの操作状態に応じて入力信号をMPU100に送信する。スイッチSW1(7a)は、レリーズボタン7の第1ストローク(半押し)によりONする。スイッチSW2(7b)は、レリーズボタン7の第2ストローク(全押し)によりONする。スイッチSW2(7b)がONされると、撮影開始の指示がMPU100に送信される。また、メイン操作ダイヤル8、サブ操作ダイヤル20、撮影モード設定ダイヤル14、メインスイッチ43、クリーニング指示操作部材44が接続されている。
【0038】
LCD駆動回路107は、MPU100の指示に従って、LCD表示パネル9やファインダ内液晶表示装置41を駆動する。バッテリチェック回路108は、MPU100の指示に従って、バッテリチェックを行い、その検出結果をMPU100に送信する。電源42は、カメラの各要素に対して電源を供給する。時刻計測回路109は、メインスイッチ43がOFFされて次にONされるまでの時間や日付を計測し、MPU100からの指示に従って、計測結果をMPU100に送信する。
【0039】
<2.撮像ユニットの具体的構成(図4〜図9)>
(2−1.カメラ内部における撮像ユニットの概略構成(図4))
次に、本実施形態における撮像ユニット400の概略構成について説明する。図4に示すように、カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順に、ミラーボックス5、シャッタユニット32が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部2の取付面に撮像素子33の撮像面が所定の距離を空けてかつ平行になるように調整されて固定される。
【0040】
(2−2.撮像ユニットの構成(図5))
図5(a)は撮像ユニット400を被写体側から、図5(b)は撮影者側から見た斜視図である。図5(a)、(b)に示すように、光学ローパスフィルタ410は、水晶からなる1枚の複屈折板であり、その形状は矩形状である。この光学ローパスフィルタ410が本発明でいう光学部材に相当するものである。光学ローパスフィルタ410は、撮影有効領域410aの一側方に圧電素子430を配置する周縁部410bを有しており、撮影光軸に対して直交する方向(カメラ左右方向)は非対称である。このようにした光学ローパスフィルタ410の表面には、光学的なコーティングが施されている。
【0041】
圧電素子430は、単板の矩形の短冊形状を呈し、光学ローパスフィルタ410の周縁部410bにおいて、圧電素子430の長辺が光学ローパスフィルタ410の短辺(側辺)に平行になるように配置されて接着保持される(貼着される)。この圧電素子430が本発明でいう加振手段に相当するものである。圧電素子430は、光学ローパスフィルタ410上において四辺のうち一辺に近接して平行に貼着され、一辺に平行な複数の節部を有するように光学ローパスフィルタ410を波状に振動させる。
【0042】
樹脂製又は金属製の保持部材610は、略矩形状の開口部610aを有し、撮影者側で撮像素子ユニット33aを保持すると共に、被写体側で光学ローパスフィルタ410を保持する。保持部材610には、撮影者側に第一の封止部材620、被写体側に第二の封止部材630が一体成型されている。これら封止部材620、630は弾性部材であり、エラストマーでも良いし、弾性体であれば、ウレタンフォームやプラスチック等の高分子重合体でも良い。また、保持部材610と封止部材620、630は一体成型されていると説明したが、別体としてもかまわない。
【0043】
撮像素子ユニット33aは、保持部材610との間で第一の封止部材620に密着し、密着部とは異なる位置で保持部材610にビス500で固定される。
【0044】
光学ローパスフィルタ410は、保持部材610との間で第二の封止部材630に密着する。付勢部材440は、保持部材610にビス510で固定され、光学ローパスフィルタ410の撮影有効領域410a外の4ヶ所において当接して光軸方向で撮影者側に付勢する。
【0045】
460は位相板(偏光解消板)と赤外カットフィルタと光学ローパスフィルタ410に対して屈折方向が90°異なる複屈折板とを貼り合わせた光学部材であり、開口部610aを塞ぐように保持部材610に接着固定される。
【0046】
470は圧電素子430に電圧を印加するための圧電素子用フレキシブルプリント基板であり、圧電素子430に接着固定される。圧電素子430は、電圧の印加により光軸と直交する方向に主として伸縮振動し、光学ローパスフィルタ410を共振(振動)させる。これにより、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した異物をふるい落とすことができる。
【0047】
以上の構成をとることにより、光学ローパスフィルタ410は、付勢部材440と第二の封止部材630とで挟み込まれて振動自在に支持される。
【0048】
(2−3.圧電素子の構成(図6))
図6に示すように、圧電素子430のB面は、光学ローパスフィルタ410に定在波振動を励起するための+相と、G相とに分割されている。また、圧電素子430のC面は、不図示の導電材等により電気的に接続されてB面のG相と同電位に保たれている。B面には圧電素子用フレキシブルプリント基板470が接着等により固着され、+相、G相にそれぞれ所定の電圧を独立して印加できるようになっている。C面が光学ローパスフィルタ410に接着等により固着され、圧電素子430と光学ローパスフィルタ410とが一体的に運動するように構成されている。
【0049】
(2−4.封止部材の構成(図7))
次に、図7を参照して、保持部材610と封止部材620、630の構成について詳述する。図7(a)は図4におけるA−A線断面図、図7(b)は図7(a)の破線囲み部の詳細図である。
【0050】
第一の封止部材620は、撮影者側において保持部材610の開口部610aを囲むように配置される。第一の封止部材620は保持部材610と一体成型により一体化されており、撮影者側の面が撮像素子ユニット33aと当接する。第一の封止部材620は、エラストマー等の弾性部材であり、保持部材610と二色成型で一体化することが可能である。
【0051】
撮像素子ユニット33aは、ビス500により保持部材610に完全に固定される。この状態で、第一の封止部材620は、保持部材610と撮像素子ユニット33aにより所定の間隔で押し潰されて弾性変形しており、撮像素子ユニット33a側を封止することが可能となる。
【0052】
第一の封止部材620の撮像素子ユニット33aとの当接部は、断面形状が一山以上の凸形状で構成される。また、光学部材460は保持部材610の所定の保持部に接着又は融着されて保持される。これにより、保持部材610と撮像素子ユニット33aと第一の封止部材620と光学部材460とにより囲まれる空間は封止され、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成される。
【0053】
一方、第二の封止部材630は、被写体側において保持部材610の開口部610aを囲むように配置される。第二の封止部材630も保持部材610に一体成型により一体化されており、被写体側の面が光学ローパスフィルタ410と当接する。光学ローパスフィルタ410は、付勢部材440の弾性により撮像素子ユニット33a側へと付勢されるので、光学ローパスフィルタ410及び保持部材610により一定力で押し潰されることで弾性変形している。これにより、光学ローパスフィルタ410と保持部材610と第二の封止部材630と光学部材460とにより囲まれる空間は封止され、塵埃等の異物の侵入を防ぐ密閉空間が形成される。光学ローパスフィルタ410と第二の封止部材630は、圧電素子430で振動を与える際の振動伝達部材を兼ねており、該光学ローパスフィルタ410の表面に付着した異物を除去する。
【0054】
ここで、第一の封止部材620と第二の封止部材630の配置構成について詳述する。図7(b)に示すように、第一の封止部材620は第二の封止部材630に対して、光軸に垂直な方向にオフセットして配置される。そして、光軸方向に水平な面内において、第一の封止部材620の光軸から見て外側の側面620hと、第二の封止部材630の光軸から見て中心側の側面630hとの間に間隔があり、重なり合っている部分はない。
【0055】
第二の封止部材630は、光学ローパスフィルタ410を効率良く振動させるために、光学ローパスフィルタ410の振動モードの節の位置を押えるように配置することが望ましい。このため、第二の封止部材630の配置は光学ローパスフィルタ410の固有振動モードに依存しており、配置構成に自由度は大きくない。これに対して、第一の封止部材620は、保持部材610と撮像素子ユニット33aを封止する役割であるため、配置構成に関しては自由度がある。したがって、上述したように第二の封止部材630に対して第一の封止部材620を光軸側にオフセットして配置すると、保持部材610の大きさは第二の封止部材630で決定され、光軸方向に水平な面で投影面積を最小限で構成することが可能である。
【0056】
また、光軸方向に対して、第二の封止部材630の底面630vは、第一の封止部材620の底面620vよりも撮像素子ユニット33a側へ突出している。このように光軸方向においては第一の封止部材620と第二の封止部材630を重なり合う配置関係にすることで、撮像ユニット400の光軸方向の厚みを薄型化することが可能である。
【0057】
(2−5.撮像ユニットの分解、組み立て(図8、図9))
ところで、上述した構造で保持部材610と光学ローパスフィルタ410、光学部材460及び撮像素子ユニット33aが密閉空間を形成する構成であるが、組立工程上でどうしても異物が混入してしまうことがある。このため、撮像ユニット400の完成工程での検査により異物侵入が発見されると、撮像ユニット400を分解して、異物を清掃し、再び組み立てるということが要求される。
【0058】
本実施形態における撮像ユニットの分解、組み立てについて説明する。図8(a)、(b)において、710は撮像ユニット400から撮像素子ユニット33aを取り外したユニットである。第一の封止部材620で密閉空間を形成することで、ビス500を外すのみで撮像素子ユニット33aを取り外すことが可能である。従来技術のように撮像素子ユニットと光学素子ユニットを粘着シート等で密着固定する構成であると、リワーク時に引き剥がす時の光学素子、保持部材の損傷、粘着シートを再利用できない等、多々問題があった。従来と比較すると、本発明を適用することにより、分解、異物清掃、組立の工程を容易に行うことができる。
【0059】
図9(a)、(b)において、720は撮像ユニット400から付勢部材440、光学ローパスフィルタ410、圧電素子430、圧電素子用フレキシブルプリント基板470を取り外したユニットである。第二の封止部材630と光学ローパスフィルタ410の中の異物侵入が確認されたときでも、付勢部材440を取り外すことで、密閉空間内を再度清掃することが可能である。このように、組立工程で密閉空間に異物の侵入が確認されたときも上述したように容易に分解、清掃、再組立が可能であり、作業性が改善される。
【0060】
<3.異物の除去動作(図10)>
次に、図10を参照して、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した塵埃等の異物を除去する動作について説明する。まず、ステップS1で、メインスイッチ43にて電源がONされたか否かを判定する。電源がONされると、ステップ2で、カメラシステムを起動させるための処理を行い、電力供給回路110を制御して各回路へ電力を供給し、システムを初期設定し、カメラとして撮影動作可能にするためのカメラシステムON動作を行う。
【0061】
次に、ステップ3で、撮影者によりクリーニング指示操作部材44が操作されたか否かを判定し、操作されている場合はステップ4に進み、操作されていない場合はステップ5へ進む。なお、本実施形態ではクリーニング指示操作部材44を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、クリーニングモードへの移行を指示するための操作部材は、機械的なボタンに限らず、カラー液晶モニタ19に表示されたメニューから、カーソルキーや指示ボタン等を用いて指示するものであっても良い。
【0062】
次に、ステップ4では、クリーニングモード開始の指令を受けて、カメラ本体1をクリーニングモードの状態に移行させる。まず、電力供給回路110は、クリーニングモードに必要な電力をカメラ本体1の各部へ供給する。また、これに並行して電源42の電池残量を検出して、その結果をMPU100へ送信する。MPU100は、クリーニングモード開始の信号を受け取ると、圧電素子駆動回路111に駆動信号を送る。圧電素子駆動回路111は、MPU100より駆動信号を受け取ると、光学ローパスフィルタ410の定在波振動を励起する周期電圧を生成し、圧電素子430に印加する。周期電圧は定在波振動を励起する周波数を含むある一定の範囲の周波数内で順次変化させるものである。圧電素子430は、印加される電圧に応じて伸縮し、光学ローパスフィルタ410に定在波振動を発生させる。
【0063】
クリーニングモードが終了するとステップ5に進む。ステップ5では、スイッチSW1(7a)、スイッチSW2(7b)、メイン操作ダイヤル8、サブ操作ダイヤル20、撮影モード設定ダイヤル14、他のスイッチ等の信号を受け、カメラ動作を行う。カメラ動作は、一般的に知られるカメラの撮影・設定等を行うモードで、ここでは詳細な説明は省略する。
【0064】
次に、ステップ6で、カメラが待機状態においてメインスイッチ43にて電源がOFFされたか否かを判定し、OFFされるとステップ7に進み、OFFされていなければステップ3に戻る。
【0065】
次に、ステップ7では、ステップ4と同様のクリーニングモードを実行後、ステップ8に進む。ここで、ステップ7におけるクリーニングモードでは、カメラの消費電力、動作時間等を考慮して、圧電素子430の駆動周波数、駆動時間、制御法等のパラメータをステップ4と異ならしめても良いことは言うまでも無い。
【0066】
ステップ8では、MPU100の制御により各回路を終了させるための制御を行い、必要な情報等をEEPROM100aに格納し、電力供給回路110を制御して各回路への電源供給を遮断する電源OFF動作を行う。
【0067】
以上述べたように、撮影者が意図した任意のタイミングだけではなく、電源をOFFするとクリーニングモードが実行される。すなわち、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した異物を除去する動作を行ってから、カメラシステムOFF動作を行うようにしている。
【0068】
ここで、光学ローパスフィルタ410の表面に付着した異物には様々なものが存在するが、一般的に異物が付着した状態で長期間放置すると、クリーニングモードで振動をかけても除去しにくいことが実験的に解明した。これは、環境(温度や湿度)の変化で結露することにより液架橋力等の付着力が増大したり、環境の変化で塵埃が膨潤、乾燥を繰り返すことにより粘着したりすることによるものと考えられる。また、ゴム等の弾性材では、自身に含まれる油脂等が時間と共にブリードして粘着する。そのため、長期間未使用状態となる可能性が高い電源OFF操作のタイミングでクリーニングモードを実行することが、異物を除去しにくい状態になっている可能性の高い長期間未使用状態後の電源ON操作のタイミングで行うよりも、より効率的・効果的である。
【0069】
また、本実施形態では、メインスイッチ43による電源OFF操作時について述べたが、電源ON状態での所定時間経過後に電源OFF時と同様のカメラシステムOFF動作を実行するようにしても良い。この場合も、事前にクリーニングモードを行うようにすれば同様の効果が得られることは言うまでも無い。
【0070】
なお、本発明でいう光学部材は光学ローパスフィルタ410に限定されるものではない。例えば、複屈折板の材質は水晶ではなくニオブ酸リチウムを用いても良い。また、複屈折板と位相板と赤外吸収フィルタの貼り合わせによって構成される光学ローパスフィルタや赤外吸収フィルタ単体に振動させる構成にしても良い。また、複屈折板の前に配置したガラス板単体に振動させる構成にしても良い。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
33:撮像素子、33a:撮像素子ユニット、400:撮像ユニット、410:光学ローパスフィルタ、430:圧電素子、460:光学部材、470:圧電素子用フレキシブルプリント基板、610:保持部材、620:第一の封止部材、630:第二の封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段を撮影者側で保持すると共に、光学部材を被写体側で保持する保持部材と、
前記撮像手段を前記保持部材に固定した際に、これら撮像手段と保持部材の間を封止して密閉空間を形成する、前記保持部材の撮影者側に設けられている第一の封止部材と、
前記光学部材を前記保持部材に固定した際に、これら光学部材と保持部材の間を封止して密閉空間を形成する、前記保持部材の被写体側に設けられている第二の封止部材とを備え、
前記第一の封止部材と前記第二の封止部材は光軸に垂直な方向にオフセットして配置されることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項2】
前記第二の封止部材の底面は、前記第一の封止部材の底面よりも前記撮像手段側へ突出していることを特徴とする請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項3】
前記第二の封止部材に対して前記第一の封止部材を光軸側に配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
前記光学部材と前記第二の封止部材は、加振手段で振動を与える際の振動伝達部材を兼ねており、該光学部材の表面に付着した異物を除去する構成を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像ユニット。
【請求項5】
前記第一の封止部材は弾性部材で構成されており、前記保持部材に一体成型されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像ユニット。
【請求項6】
前記第二の封止部材は弾性部材で構成されており、前記保持部材に一体成型されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像ユニット。
【請求項7】
前記光学部材は光学ローパスフィルタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の撮像ユニットを備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−142395(P2011−142395A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−674(P2010−674)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】