説明

撮像用走査式照明装置

【課題】画像センサ等の撮影領域を少ない消費電力で照明できる照明装置を提供する。
【解決手段】光ビームを出射する光源2、CCDカメラ11の撮影領域Aに対して光源1から出射された光ビームを反射しその反射光ビームを2次元走査するガルバノミラー4と、ガルバノミラー4による撮影領域Aの走査周期とCCDカメラ11の画像データを取込む画像取込み部12の画像の取込みタイミングとを同期させる同期制御部6とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段の撮影領域を照らす撮像用走査式照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、横断歩道等における歩行者を、カメラ画像を利用して検出し信号機を制御することで、歩行者の安全や車両の円滑な流れを確保する交通制御システム(例えば、特許文献1等参照)や、高速道路等における交通監視のためにカメラを設置し、カメラの画像から交通異常を検出する車両監視システムが提案されている(例えば、特許文献2等参照)。このようなカメラ画像から対象物を検出する画像センサを用いるシステムでは、夜間等の暗い時にカメラの撮影領域を明るく照らすために照明装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−250756号公報
【特許文献2】特開2002−329195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像センサの撮影領域を照らすための従来の照明装置としては、撮影領域全体を照らすことができる大きな照明装置を用いているため、消費電力が大きいという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、消費電力のかからない撮像用走査式照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明の撮像用走査式照明装置は、光ビームを出射する光源と、光画像を電気画像信号に変換して画像データを取得する撮像手段の撮影領域に対して前記光ビームを2次元走査する光走査手段と、前記光走査手段による前記撮影領域の走査周期と前記撮像手段の取得した画像データの取込みタイミングとを同期させる同期制御手段と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0007】
かかる構成では、同期制御手段により、光走査手段が撮影領域を走査する走査周期と撮像手段の取得した画像データの取込みタイミングとを互いに同期させながら、光走査手段で、光源からの光ビームを反射して撮像手段の撮影領域を2次元走査し、撮像手段で、光走査手段の走査光で照らされた撮影領域の光画像を電気画像信号に変換して画像データを取得するようになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撮像用走査式照明装置によれば、光走査手段の走査光で撮影領域を走査して照らすようにしたので、従来の照明装置のように常時撮影領域全体を照らさなくともよく、撮像用の照明装置の消費電力を格段に低減することができる。また、発熱量も低減できるので、熱による照明装置の劣化等も防げ、照明装置の寿命を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る撮像用走査式照明装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】電磁駆動方式のプレーナ型ガルバノミラーの一例を示す平面図である。
【図3】本発明に係る撮像用走査式照明装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る撮像用走査式照明装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、本実施形態の撮像用走査式照明装置1は、光ビームを出射する光源2と、該光源2の点消灯を制御する光源駆動部3と、光源2から出射された光ビームを反射してこの反射光ビームを後述する撮像手段としてのCCDカメラ11の撮影領域Aに対して図1に点線で示すように2次元走査する光走査手段としての電磁駆動方式のプレーナ型ガルバノミラー(以下、ガルバノミラーとする)4と、該ガルバノミラー4を駆動制御するミラー駆動部5と、ガルバノミラー4の撮影領域に対する光ビーム走査周期とCCDカメラ11で取得した画像データを画像処理するために取込む画像データ取込みタイミングとを同期させる同期制御手段6と、を備えて構成されている。尚、光源2としては、例えばLEDや半導体レーザ等の高輝度スポット光源を用いることが望ましい。
【0012】
電磁駆動方式のプレーナ型ガルバノミラー4は、半導体製造技術を用いて製造する従来公知のもので、その構成例を図2に示す。
ガルバノミラー4は、図2に示すように、固定部4Aに外側トーションバー4B,4Bを介して揺動可能に軸支される外側可動部4Cと、この外側可動部4Cに外側トーションバー4B,4Bと軸方向が直角な内側トーションバー4D,4Dを介して揺動可能に軸支される内側可動部4Eと、内側可動部4E上に配置した反射ミラー4Fと、を備える。固定部4A、外側及び内側トーションバー4B,4B、4D,4D、外側及び内側可動部4C、4Eは、半導体基板により一体形成される。尚、図を簡略化するため図示しないが、外側駆動コイルが、枠状の外側可動部4Cの周縁に沿って巻回されて外側トーションバー4B,4Bの一方を介して固定部4Aに設けた外部接続端子4G,4Gに接続している。また、内側駆動コイルが、内側可動部4Eの周縁に巻回されて両内側トーションバー4D,4D、外側可動部4C、外側トーションバー4B,4Bの他方を介して固定部4Aに設けた外部接続端子4H,4Hに接続している。更に、同じく図示しないが、固定部4Aの外側において、外側可動部4Cと内側可動部4Eを挟んで互いに反対磁極が対向するそれぞれ一対の静磁界発生手段(永久磁石や電磁石等)が、互いに直交方向に配置され、外側トーションバー4B,4Bの軸方向と平行な外側可動部4Cの両端縁部の外側駆動コイル部分及び内側トーションバー4D,4Dの軸方向と平行な内側可動部4Eの両端縁部の内側駆動コイル部分に静磁界を作用させる構成である。
【0013】
このガルバノミラー4は、外側及び内側の駆動コイルにそれぞれ所定の駆動電流を供給すると、駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により電磁力(ローレンツ力)が外側及び内側可動部4C,4Eにそれぞれ作用し、外側及び内側トーションバー4B,4B、4D,4Dのばね力と釣り合う位置まで外側及び内側可動部4C,4Eが回動する。そして、駆動コイルに交流電流を供給することで、外側及び内側可動部4C,4Eが互いに直交する軸回りに揺動し、反射ミラー4Fによる反射光ビームが2次元走査される。
【0014】
前記CCDカメラ11は、従来から周知のように、撮影領域Aの光画像を撮像素子であるCCDにより画像各部の明るさに応じた電荷量として蓄積することにより電気画像信号に変換して電気的な画像データを取得するものである。CCDカメラ11で取得した画像データは、画像取込み部12で取込まれて画像処理部13へ送信され、画像処理部13は、種々の演算処理を行うことにより、例えば撮影領域Aにおける例えば歩行者や車両等の物体を抽出し、その抽出結果を例えば表示部等へ出力する。本実施形態では、これらCCDカメラ11、画像取込み部12及び画像処理部13が、撮像手段として画像センサ10を構成している。
【0015】
次に、本実施形態の撮像用走査式照明装置1の動作について説明する。
光源駆動部3により光源2を点灯させて光ビームをガルバノミラー4の反射ミラー4Fに照射する。ガルバノミラー4には、その外側及び内側駆動コイルにミラー駆動部5から交流電流を供給し、外側及び内側可動部4C,4Eを揺動駆動する。これにより、反射ミラー4Fに照射する光ビームを、CCDカメラ11の撮影領域Aについて2次元走査する。同期制御部6は、例えばガルバノミラー4が撮影領域を1回走査する毎に画像センサ10の画像取込み部12に対して画像取込み指令を出力するようにして、画像センサ10におけるCCDカメラ11の画像取込みタイミングとガルバノミラー4の走査周期とを互いに同期制御する。具体的には、ガルバノミラー4の外側及び内側可動部4C,4Eの揺動位置(撮影領域内の走査位置)は供給される交流電流の電流値と位相から検出することができる。従って、例えば予め交流電流の電流値と位相と撮影領域の走査位置と関係を示すデータマップを同期制御部6に格納し、ミラー駆動部5の供給電流値と位相の検出値から対応する撮影領域の走査位置をマップデータから検索し、ガルバノミラー4の走査位置が撮影領域Aの走査終了点に達したことを検出したときに、同期制御部6は画像取込み部12に対して画像取込み指令を出力するようにする。これにより、CCDカメラ11で、走査光で照らされた撮影領域A全体の画像データをガルバノミラー4の1走査周期毎に取得することができる。画像処理部13は、画像取込み部12から送信される画像データを処理しその処理結果を例えば表示部等へ出力する。これにより、表示部にはガルバノミラー4の走査光ビームで照らされた撮影領域Aの画像が表示される。
【0016】
尚、画像データの取得は、ガルバノミラー4の1走査周期毎に限らず、ガルバノミラー4が撮影領域Aを2回、3回等、所定の複数回走査する毎に同期制御部6から画像取込み指令を出力するよう構成すれば、CCDカメラ11のCCDの蓄積電荷量が多くなり、明るさの明るい画像データを取得できるようになる。
【0017】
かかる本実施形態の撮像用走査式照明装置1によれば、従来の照明装置のように撮影領域A全体を常時照らす必要がないので、照明装置の消費電力を大幅に低減でき、省エネ効果が大きい。また、照明装置の発熱量も大幅に低減できるので、熱による照明装置の劣化を抑制でき、照明装置の寿命を向上できる。
【0018】
次に、本発明の撮像用走査式照明装置の第2実施形態について説明する。
図3は、第2実施形態の構成を示すブロック図である。尚、図1の第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
図3において、本実施形態の撮像用走査式照明装置1′は、第1実施形態の構成に、走査範囲制御手段である走査範囲制御部7を付加した構成である。
【0019】
前記走査範囲制御部7は、画像センサ10で撮影された撮影領域Aの画像データに基づいて、撮影領域A内に物体が存在するときにその検出物体に絞って光ビームを走査するようガルバノミラー4の走査範囲を制御するものである。具体的には、例えば、画像処理部13において画像データから例えば歩行者や車両等の物体が抽出されたとき、画像処理部13から撮影領域A内における検出物体の位置情報を走査範囲制御部7へ出力する。走査範囲制御部7は、入力した位置情報に基づいて、ガルバノミラー4の走査光を検出物体に絞って走査するために、ガルバノミラー4の揺動角度を小さくするようミラー駆動部5の電流値を制御する。これと同時に、ガルバノミラー4の光軸中心を可変制御可能な図示しない光軸調整装置によって、ガルバノミラー4の光軸中心が検出物体の略中心位置になるようガルバノミラー4の向きも制御する。
【0020】
かかる第2実施形態の構成によれば、撮影領域A内で抽出された物体に絞って光ビームを走査することが可能となり、撮影領域Aの必要箇所だけに絞って光を照らすことができるため、第1実施形態より更に消費電力を低減できるようになる。
【0021】
尚、ガルバノミラー4の走査範囲を制御する別の構成例として、例えば撮影対象までの距離に応じてガルバノミラー4の走査範囲を制御する構成が考えられる。即ち、撮影対象物までの距離が遠い場合にガルバノミラー4の揺動角度を小さくして走査範囲を狭く設定し、撮影対象物までの距離が近い場合にガルバノミラー4の揺動角度を大きくして走査範囲を広く設定するようにする。
【0022】
本発明において、光ビームを2次元走査する光走査手段としては、電磁駆動方式のプレーナ型ガルバノミラーに限定するものではなく、例えば、半導体製造技術を用いて製造する圧電駆動方式のプレーナ型ガルバノミラー等、光ビームを2次元走査可能な光走査デバイスであればよい。例えば、前記圧電駆動方式のプレーナ型ガルバノミラーの一例としては、光ビームを反射するミラー部と、このミラー部の周囲に圧電素子を備えて圧電駆動部として機能する4つの可動支持体を配置し、4つの可動支持体の周囲を囲むように固定枠部を設け、ミラー部と4つの可動支持体の互いに近接する端部の内側角部とを連結するトーションバーにより、4つの可動支持体の内側にミラー部を回動可能に軸支し、トーションバーと軸方向が直交するように固定枠部と各可動支持体の内側角部と対角位置にある各外側角部とを連結するトーションバー機能を有する連結部により、固定枠部の内側に4つの可動支持体を回動可能に軸支する構成とし、圧電駆動部の圧電素子に駆動信号を印加してミラー部を揺動駆動する圧電駆動方式のプレーナ型光走査デバイス等がある。
【符号の説明】
【0023】
1、1′ 撮像用走査式照明装置
2 光源
3 光源駆動部
4 ガルバノミラー
5 ミラー駆動部
6 同期制御部
7 走査範囲制御部
10 画像センサ
11 CCDカメラ
12 画像取込み部
13 画像処理部
A 撮影領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射する光源と、
光画像を電気画像信号に変換して画像データを取得する撮像手段の撮影領域に対して前記光ビームを2次元走査する光走査手段と、
前記光走査手段による前記撮影領域の走査周期と前記撮像手段の取得した画像データの取込みタイミングとを同期させる同期制御手段と、
を備えて構成したことを特徴とする撮像用走査式照明装置。
【請求項2】
前記撮像手段から取込んだ画像データに基づいて、前記撮影領域内に物体を検出したときに、前記検出物体に絞って光ビームを走査するよう前記光走査手段の走査範囲を制御する走査範囲制御手段を備える構成とした請求項1に記載の撮像用走査式照明装置。
【請求項3】
前記光走査手段は、半導体製造技術を用いて製造した電磁駆動方式のプレーナ型ガルバノミラーである請求項1又は2に記載の撮像用走査式照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−237789(P2012−237789A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104950(P2011−104950)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】