説明

撮像素子およびこれを用いた撮像装置

【課題】検出効率の低下や、解像度の劣化を生じることなく、大きく異なる複数の周波数帯域の電磁波による像を撮像する撮像素子およびこれを用いた撮像装置を提供する
【解決手段】撮像素子10は、複数種類の画素群を備える。この複数種類の画素群を構成する画素11、12および13は、それぞれ互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出し、且つ、互いに異なる画素配置パターンまたは画素密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる複数の周波数帯域の電磁波による像を撮像する撮像素子およびこれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大きく異なる複数の周波数帯域で動作可能な光学素子は、さまざまな領域で必要とされている。例えば、赤外光を観察することによって、物や人の温度を検出することができ、テラヘルツ波を観察することにより、人体からの自然放射を映像化して隠匿物を発見したり、物質を被接触で弁別したりすることができる。そこで、可視光と赤外光あるいは可視光とテラヘルツ波の領域で動作する撮像システムを構築すれば、セキュリティや化学分析等の分野での活用が見込まれる。また、車載レーダーでは、約0.1THzのミリ波と、赤外光によるサーモグラフィとを組み合わせて、生き物を感知して衝突を避けることも可能になる。
【0003】
一般に可視光と赤外光、テラヘルツ波、ミリ波など周波数帯が大きく異なる電磁波の画像を検出するには、それぞれ構造や大きさ等が種々異なる撮像素子が必要になる。例えば、マイクロ波やミリ波に対してはアンテナ、テラヘルツ波に対してはボロメータ、光波に対してはフォトダイオード(PD)等が使用される。そこで、このような大きく異なる複数の周波数帯に対応する広帯域の撮像システムは、それぞれの帯域用に構成した撮像システムを併用することによって実現することができる。しかし、そのようなシステムは、構成が複雑かつ大型になることに加え、異なる帯域で検出した画像(映像)間の「対応づけ」のために膨大な処理を必要とする。
【0004】
このため、大きく異なる複数の周波数帯域の電磁波を、一つの撮像素子で撮像できることが望ましい。そこで、同一の基板上に配置した検出器により、可視光による画像と遠赤外線による画像とを、ほぼ同時に取得する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の撮像素子は、可視光検出部と、赤外線検出部とが基板上に交互に2次元的に配列され、さらに、赤外線検出部は、受光面積を増やすために、可視光検出部の上部を覆うように配置された可視光に対して透明な赤外線吸収部に接続されている。これによって、一つの撮像素子により、可視光と遠赤外線との画像を撮像することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−204978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に記載の撮像素子では、赤外線吸収部を可視光検出部の前面に配置したので、赤外光より高い解像度が求められる観察対象からの可視光が、赤外線吸収部を透過する際に吸収されたり、散乱されたりするため、検出効率の低下や、解像度の劣化が生じるという課題があった。
【0007】
また、赤外線検出部と可視光検出部とが同じ密度および同じパターンで配列されているため、赤外線検出部の検出効率を高めるためには、赤外線検出部に接続される赤外線吸収部の面積を大きくしなければならない。このため、赤外線検出部の密度を高くすることができず、その結果、可視光検出部の密度、すなわち可視光による解像度も犠牲にしなければならない。
【0008】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、検出効率の低下や、解像度の劣化を生じることなく、大きく異なる複数の周波数帯域の電磁波による像を撮像する撮像素子およびこれを用いた撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する撮像素子の発明は、複数種類の画素群を備える撮像素子であって、前記複数種類の画素群は、それぞれ互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出し、且つ、互いに異なる画素配置パターンまたは画素密度を有することを特徴とするものである。
【0010】
好適には、前記互いに異なる周波数帯域の電磁波のうち少なくとも2つの電磁波の中心周波数は、5倍以上異なっている。
【0011】
また、前記複数種類の画素群の各画素群は、前記検出する電磁波の前記周波数帯域が高いほど、該画素群を構成する画素密度が高いことが好ましい。あるいは、前記複数種類の画素群の各画素群は、前記検出する電磁波の前記周波数帯域が低いほど、該画素群を構成する画素の検出面の面積が大きいことが好ましい。
【0012】
さらに、前記複数種類の画素群は、それぞれ互いに異なる3以上の周波数帯域の電磁波を検出する3種類以上の画素群であっても良い。
【0013】
また、前記複数種類の画素群は、第1の画素群と第2の画素群とを含み、前記第1の画素群および前記第2の画素群は、互いに積層された第1の検出面および第2の検出面にそれぞれ配列されていても良い。あるいは、前記複数種類の画素群は、第1の画素群と第2の画素群とを含み、前記第1の画素群および前記第2の画素群は、同一の基板の表面と裏面とにそれぞれ形成された第1の検出面および第2の検出面にそれぞれ配列されていても良い。
【0014】
ここで、好適には、前記第1の画素群は、第1の周波数帯域の電磁波を検出し、前記第2の画素群は、前記第1の周波数帯域よりも低い第2の周波数帯域の電磁波を検出し、前記第1の検出面から入射した前記第2の周波数帯域の電磁波は、前記第1の検出面を透過して前記第2の画素群により検出される。
【0015】
さらに、前記複数種類の画素群は、フォトダイオードを有する第1の画素群と、パッチアンテナを有する第2の画素群とを備えることもできる。ここで、前記第1の画素群はCCDとして構成され、前記パッチアンテナの少なくとも一部は、前記第1の画素群の遮光膜を兼ねても良い。
【0016】
また、上記目的を達成する撮像装置の発明は、複数種類の画素群を備える撮像素子であって、前記複数種類の画素群は、複数の互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出し、且つ、配置のパターンまたは密度において、互いに異なっていることを特徴とする撮像素子と、前記互いに異なる周波数帯域の電磁波による被写体の像を、前記撮像素子の検出面に結像させる結像光学系とを備えるものである。
【0017】
好ましくは、前記結像光学系は、前記互いに異なる周波数帯域の電磁波を分岐する分岐部と、前記分岐部により分岐された前記互いに異なる周波数帯域の前記電磁波を合波する合波部と、前記分岐部と前記合波部との間に設けられ、前記互いに異なる周波数帯域の前記電磁波を、それぞれ前記合波部で合波した後前記検出面に結像させる結像素子とを有する。
【0018】
あるいは、前記結像光学系は、第1の誘電体中に前記第1の誘電体とは誘電率の異なる第2の誘電体を分散させてなる複合誘電体で構成された電磁波素子であって、所定の第1の波長の電磁波および前記第1の波長よりも長い所定の第2の波長の電磁波に対して略等しい有効誘電率を有し、前記第2の誘電体の平均的な粒径および平均的な間隔は、前記第1の波長よりも小さい電磁波素子を備えても良い。
【0019】
さらに、好ましくは、前記第1の誘電体と前記第2の誘電体の少なくともいずれか一方は、前記第1の波長と前記第2の波長との間に、誘電率が大きく変化する共振波長を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、それぞれ互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出する複数種類の画素群が、互いに異なる画素配置パターンまたは画素密度を有するので、検出効率の低下や、解像度の劣化を生じることなく、大きく異なる複数の周波数帯域の電磁波による像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る撮像素子の斜視図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係る撮像素子の斜視図である。
【図3】本発明の第3実施の形態に係る撮像素子を示す図である。
【図4】本発明の第4実施の形態に係る撮像素子の画素配置を示す図である。
【図5】本発明の第5実施の形態に係る撮像素子の概略構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第6実施の形態に係る撮像装置の光学系を示す図である。
【図7】図6の結像レンズを構成する複合誘電体の構成を示す模式図である。
【図8】図6の結像レンズの有効誘電率を2πa/λの関数として表したグラフである。
【図9】本発明の第7実施の形態に係る撮像装置の光学系を示す図である。
【図10】本発明の第8実施の形態に係る撮像装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る撮像素子の斜視図である。この撮像素子10は、それぞれ異なる3つの周波数f、fおよびfの電磁波を検出する、第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13をそれぞれ複数有している。以下において、適宜これら複数の第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13から構成される画素群を、それぞれ、第1の画素群、第2の画素群および第3の画素群と呼ぶ。以下の実施例においても同様とする。
【0024】
3つの異なる周波数f、fおよびfは、それぞれ波長の大きく異なる周波数帯域に属し、次の関係を満たす。
>f>f (1)
これら周波数の帯域のうち少なくとも2つは、周波数が大きく異なる。大きく異なるとは、可視光と、赤外光、ミリ波などのように、例えば、中心周波数が互いに5倍以上異なる場合を含む。周波数が5倍も違えば、一般的な光学素子により大きな色収差が発生する。
【0025】
第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13は、それぞれ、周波数f、fおよびfに対応して設けられた検出部を有する。例えば、fを可視光(約400THz〜750THz)、fをテラヘルツ波(約0.3〜3THz)、fをミリ波(約30GHz〜0.3THz)の帯域に属するとすると、第1の画素11はフォトダイオード(PD)の前面に波長フィルタを配置し、第2の画素12はボロメータを用い、第3の画素13は、パッチアンテナを用いて構成することができる。もちろん。周波数f、fおよびfの組み合わせはこれに限られず、紫外線、赤外線等の周波数領域等も含むことができる。また、これに対応する第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13の検出部も、平面アンテナや半導体検出器、温度センサ等種々の検出部を用いることができる。
【0026】
第1の画素11、第2の画素12、第3の画素13は、それぞれ略等しい面積を有し、第1の画素11は、撮像素子10の受光面上に、縦方向および横方向にそれぞれ1画素分の間隔を空けて交互に市松模様の一方の領域を形成するように、規則正しく配列されている。一方、例えば第3の画素13は、互いに縦方向および横方向に3画素分の間隔を空けて配置された正方形の頂点およびその重心位置に配置されている。また、第2の画素12は、第1の画素11と第3の画素13の配置されていない位置に配置されている。このように、画素配置のパターンは、それぞれの画素が形成する画素群ごとに互いに異なっている。
【0027】
また、第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13の画素の各画素群は、検出する電磁波の周波数が高いほど、画素密度が高く配置されている。なお、ここで画素密度は、単位面積当たりの画素数を表している。例えば、図1では表示した領域にある合計100画素のうち、第1の画素が50個、第2の画素が38個、第3の画素が12個となっている。すなわち、第1の画素群、第2の画素群および第3の画素群の画素密度は互いに異なっている。
【0028】
以上のような構成によって、本撮像素子10を撮像装置に適用した場合、一つの撮像素子10により、第1の画素群、第2の画素群および第3の画素群から、それぞれ周波数f、fおよびfの電磁波の2次元データが得られる。すなわち、それぞれの周波数に対応した3つの画像が得られる。また、第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13は、同一の受光面上に配置されているので、互いの画像データを容易に対応付けすることができる。従って、本撮像素子10から出力される、それぞれ周波数f、fおよびfの電磁波の2次元データを画像処理することによって、例えば、可視光の画像上に、テラヘルツ波を観測して得られる画像や、ミリ波を観測して得られる画像などを重ね合わせて表示することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、それぞれ互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出する複数種類の画素群が、互いに異なる画素配置パターンおよび画素密度を有するので、検出効率の低下や、解像度の劣化を生じることなく、大きく異なる複数の周波数帯域の電磁波による像を撮像することができる。
【0030】
すなわち、本実施の形態では、波長の短い周波数fに対応する第1の画素11の前面を、より波長の長い第2の画素12または第3の画素13の検出部の一部が覆うことがないので、高い解像度が求められる観察対象からの周波数fの電磁波が、他の周波数fやfの検出部を透過する際に吸収されたり、散乱されたりすることがなく、検出効率の低下や、解像度の劣化が生じることがない。
【0031】
また、検出する周波数が高いほど、画素密度が高くなるように第1の画素11、第2の画素12および第3の画素13を配置したので、周波数が高いほど空間的に精細な情報を検出することができる。これによって、周波数帯域ごとの解像度の特性に対応して、より高周波数の電磁波により、より高精細の画像を得ることができる。特に、第1の画素群により、高精細が必要とされる可視光領域で高解像度の画像を得ることができる。
【0032】
(第2実施の形態)
図2は、本発明の第2実施の形態に係る撮像素子の斜視図である。この撮像素子20は、それぞれ異なる3つの周波数f、fおよびfの電磁波を検出する、第1の画素21、第2の画素22および第3の画素23をそれぞれ複数有している。周波数f、fおよびfは、第1実施の形態と同様に(1)式の関係を満たすものとする。
【0033】
第1の画素21、第2の画素22および第3の画素23の画素密度は、検出する電磁波の周波数が高いほど、画素密度が高く配置されている。さらに、第1の画素21、第2の画素22および第3の画素23は、検出する電磁波の周波数帯域が低いほど、画素の検出面の面積が大きく構成されている。これは、検出対象の電磁波の波長より小さい検出器では、電磁波を検出することはできるが、検出の際の検出効率が低下してしまうことに基づいている。なお、図2において、第3の画素23は、一部の第1の画素21を囲むように配置されている。
【0034】
本実施の形態によれば、より低い周波数に対応する画素ほどより大きくなるように構成しているので、異なる周波数f、fおよびfの電磁波に対してより均等な検出効率または信号強度で撮像することができる。また、周波数に応じて画素配置パターンや画素密度を異ならせることによって、第1の画素21、第2の画素22および第3の画素23を互いに重なり合わさることなく、高い周波数fに対応した第1の画素21の画素密度を確保しつつ、低い周波数fに対応した第3の画素23の検出感度を高めている。これによって、第1実施の形態と同様に、検出効率の低下や、解像度の劣化が生じることがない。
【0035】
なお、第1および第2実施の形態において、異なる3つの周波数f、fおよびfを検出する撮像素子について例示したが、検出される周波数は3つに限られず、2つまたは4つ以上の周波数帯に対応した撮像素子を構成できる。
【0036】
(第3実施の形態)
図3は、本発明の第3実施の形態に係る撮像素子を示す図であり、(a)は撮像素子30の斜視図であり、(b)は、積層された下側の基板33のみを示す斜視図である。この撮像素子30は、第1の基板31上の第1の検出面32と第2の基板33上の第2の検出面34との2つの検出面を有する。第1の検出面32および第2の検出面34には、それぞれ異なる2つの周波数fおよびfの電磁波を検出する、第1の画素35および第2の画素36がそれぞれ複数配置されている。
【0037】
ここで、周波数fおよびfは、次の関係を満たす。
>f (2)
周波数fの電磁波は、例えば、可視光であり、周波数fの電磁波は、赤外光またはそれよりも周波数の低い電磁波である。より低い周波数fに対応する第2の画素36は、より高い周波数fに対応する第1の画素35に比べ、検出面の面積が大きくなっている。
【0038】
第1の画素35の検出部は、PDにより構成される。一般に、PDを構成する半導体材料の多くは、赤外から低周波側の電磁波に対して透明であり、本実施の形態の第1の画素35も、そのようなPDを備える。したがって、第1の検出面32に対して周波数fとfを有する電磁波が照射されると、第1の画素35による画素群(第1の画素群)が、第1の周波数fの電磁波を検出し、第1の検出面32を透過した周波数fの第2の周波数fの電磁波を、第2の画素36による画素群(第2の画素群)が検出する。
【0039】
本実施の形態によれば、撮像素子30は、より低い周波数に対応する画素ほど大きくなるように構成しているので、異なる周波数fおよびfの電磁波に対してより均等な検出効率で撮像することができる。また、それぞれ第1の画素35の画素群と第2の画素36の画素群とを有する第1の基板31と第2の基板33とを重ね合わせながら、第1の画素35の検出部が周波数fの電磁波に対して透明であるため、周波数fの電磁波が第1の画素35の検出部を透過する際に吸収されたり、散乱されたりすることが無く、検出効率の低下や、解像度の劣化が生じることがない。
【0040】
なお、本実施の形態では、2種類の周波数fおよびfに対応した第1の画素35と第2の画素36とを設けたが、撮像素子が検出するのは2つの周波数帯域に限られず、3つ以上の周波数の電磁波を検出するようにしても良い、その場合、それぞれ異なる周波数に対応した画素群を有する3つ以上の基板を積層する。その際、電磁波の入射側から見て積層される後側の基板上の画素に対応する電磁波は、前側の基板上の各画素の検出部を透過するものとする。あるいは、第2の基板には、第1実施の形態または第2実施の形態で示した撮像素子10または撮像素子20を用いても良い。
【0041】
(第4実施の形態)
図4は、本発明の第4実施の形態に係る撮像素子の画素配置を示す図であり、(a)は平面図を、(b)は断面図を示している。この撮像素子40は、同一の基板の表面と裏面とにそれぞれ第1の検出面41と第2の検出面42とを有している。第1の検出面41および第2の検出面42には、それぞれ異なる2つの周波数fおよびfの電磁波を検出する、第1の画素43および第2の画素44がそれぞれ複数配置され、第1の画素群および第2の画素群を形成している。周波数fと周波数fとは、第3実施の形態と同様に、(2)式の関係を満たし、周波数fの電磁波は、例えば、可視光である。まその場合、第1の画素43の検出部は、例えばPDにより構成される。さらに、より低い周波数fに対応する第2の画素44は、より高い周波数fに対応する第1の画素43に比べ、検出面の面積が大きくなっている。
【0042】
以上のような構成により、撮像素子40が撮像装置に適用された場合、第1の検出面41に対して周波数fとfを有する電磁波が入射すると、第1の画素43による第1の画素群が、第1の周波数帯域fの電磁波を検出し、第1の検出面43を透過した周波数fの第2の周波数帯域fの電磁波を、第2の画素44による第2の画素群が検出する。これによって、周波数fおよびfに対応した2つの画像信号が得られる。
【0043】
本実施の形態によれば、第3実施の形態と同様に、撮像素子40は、異なる周波数fおよびfの電磁波に対してより均等な検出効率または信号強度で撮像することができる。また、第1の画素群の検出部が周波数fの電磁波に対して透明であるため、周波数fの電磁波が第1の画素43の検出部を透過する際に吸収されたり、散乱されたりすることがなく、検出効率の低下や、解像度の劣化が生じることがない。
【0044】
なお、本実施の形態では、撮像素子は表面と裏面とに形成された2つの検出面41、42に配置された2つの画素群を有していたが、何れか一方または双方の検出面に、2種類以上の画素群を配置することも可能である。あるいは、裏面の第2の検出面を透過した電磁波をさらに検出するための、第3の検出面を有する基板を該裏面に接するようにあるいは近接させて配置することもできる。この場合、第3の検出面を、第1実施の形態または第2実施の形態で示した撮像素子10または撮像素子20の画素配置を有するように構成しても良い。
【0045】
(第5実施の形態)
本発明の第5実施の形態に係る撮像素子の概略構成を示す断面図である。撮像素子50は、2つの異なる周波数fおよびfの電磁波の検出機構を一体化して構成している。周波数fは可視光または赤外光の領域にあり、周波数fはfより低く、例えば、ミリ波帯に属する。
【0046】
撮像素子50は、一般的なCCDに基づいた構成を有しており、半導体の基板51上に複数のフォトダイオード(PD)52が2次元的に配列されている。また、撮像素子50は、マイクロレンズアレイ53と、埋め込みチャネル54と転送電極55とを備える。周波数fの光(図5において矢印で示される)は、マイクロレンズアレイ53によって収束され、PD52に照射され、信号電荷に変換される。この電荷は、埋め込みチャネル54および転送電極55により図示しない出力部へ転送される。さらに、PD52以外で光電効果が生じると不要なノイズを生じさせるので、転送電極55の上部には金属製(アルミ製)の遮光膜56が形成されている。
【0047】
さらに、撮像素子50では、上述のような一般的なCCDの構成に加え、基板51の裏面に金属のグランド板57を設けて接地するとともに、遮光膜56に図示しない配線を接続した構成とし、グランド板57と遮光膜56とによりパッチアンテナアレイを構成する。このパッチアンテナにより、周波数fの電磁波を検出する。
【0048】
遮光膜56は、PD52の上方の開口部以外を覆うようにしつつ、複数の領域に区分され、これによってパッチアンテナの形状、配置が適宜設定できる。撮像素子50を上面側から見たとき、PD52とパッチアンテナの配置関係は、市松模様のように交互に升目状に配置されていても良く、図2の第1画素21および第3の画素23のように、パッチアンテナがフォトダイオードを囲むように配置されていても良い。
【0049】
以上のような構成によって、撮像素子50に結像される周波数fとfの電磁波のうち、周波数fの電磁波は、PD52により検出される。一方、周波数fの電磁波は、遮光膜56とグランド板57により構成されるパッチアンテナにより検出される。
【0050】
したがって、本実施の形態によれば、一般的なCCDの構成をベースとしながら、配線とグランド板など単純な構成の付加によって、パッチアンテナ機能を付加して、異なる周波数fおよびfの電磁波を検出することができる。また、パッチアンテナの密度や配置は、種々に設計することが可能であり、これによって、周波数fおよびfの電磁波を検出光率の低下や解像度の劣化を招くことなく良好に検出することができる。
【0051】
なお、第1〜第5実施の形態の撮像素子は、それぞれ周波数f、fまたはf、fおよびfの電磁波を検出するものとしたが、これらの周波数f、fおよびfは、厳密にこれらの周波数の電磁波に限るものではなく、これらの周波数f、fおよびfを中心周波数とする一定の帯域幅を有する電磁波としても良い。その帯域幅は、撮像素子の各画素群の検出部に応じて、種々の帯域幅とすることができる。
【0052】
(第6実施の形態)
図6は、本発明の第6実施の形態に係る撮像装置の光学系を示す図である。なお、本願では、一般に光の領域に分類されない電磁波に対しても、電磁波を物体から撮像素子に導く経路について「光学系」の用語を用いている。この撮像システム60は撮像素子61と、結像レンズ62(電磁波素子)とを含む。撮像素子61は、2つの異なる周波数fおよびfの電磁波を検出する撮像素子であり、例えば、第3〜5実施の形態の各撮像素子30,40および50を用いることができる。結像レンズ62は、周波数fおよび周波数fの電磁波に対して、同一の屈折率を有する素子であり、物体63の像64を撮像素子61上に結像させる。物体の1点を発した電磁波は、結像レンズにより撮像素子上で再び1点に集められて像を形成する。
【0053】
本撮像システムは2つの周波数fおよびfで動作するように構成されており、図中の光線のうち実線はf、破線はfの電磁波に対応する。それぞれの周波数の電磁波による像64は、撮像素子61で電気信号へ変換されて、図示しない画像処理系により画像情報が形成される。通常、周波数が大きく異なる場合、それぞれの帯域における結像系の屈折率差に起因する色収差が発生する。本実施の形態によれば、周波数fおよび周波数fの電磁波に対して、同一の屈折率を有する結像レンズ62を用いたので、色収差の影響を受けることがない。このような結像レンズ62は、以下に図7および図8を用いて説明する複合誘電体を用いることによって構成することができる。なお、以下の説明では電磁波の真空中の波長を用いて説明するが、電磁波の波長λは周波数fに対応し、波長λは周波数fに対応する。
【0054】
図7は、図6の結像レンズを構成する複合誘電体の構成を示す模式図である。この複合誘電体65は、第1の誘電体66中に第1の誘電体66とは誘電率の異なる第2の誘電体67が分散されている。ここで、第1の誘電体66の誘電率をε、第2の誘電体67の誘電率をεとする。簡単のために、第2の誘電体67は全て半径aの球体であり、図には示されていないが、3次元的に配置されて周期p(>a)の正方格子を形成しているものと仮定する。この場合、全体に占める第2の誘電体67の体積占有率は、(3)式で与えられる。
【0055】
【数1】

【0056】
このfを、以後、単に体積占有率と呼ぶ。このような複合誘電体65を、2つの異なる波長の電磁波に対して使用するものとし、使用するそれぞれの電磁波の真空中における波長をλおよびλとする。第2の誘電体67が配列された格子の周期pと第1および第2の電磁波の波長λ,λとの間には、(4)の関係が成立するものとする。
【0057】
【数2】

【0058】
この場合、複合誘電体65に対して実効的な誘電率を定義することができる。これを有効誘電率と呼びεeffで表す。有効誘電率εeffは、(5)式で表されることが知られている(C. L. Holloway et al., IEEE Transactions on Antenna and Propagation, Vol. 51, p.2596-2603 (2003)参照)。
【0059】
【数3】

【0060】
ここで、F(θ)は(6)式で定義される。
【0061】
【数4】

【0062】
図8は、第1の波長であるλを500nmとしたときの(5)式で表される有効誘電率を、2πa/λを横軸にとって表したグラフである。ここで、第1の誘電体66としてSiO(ε(λ)=2.14)を、第2の誘電体67としてZnS(ε(λ)=5.86)をそれぞれ用い、体積占有率をf=0.268とした。第1の誘電体66および第2の誘電体67の誘電率ε(λ)およびε(λ)は、波長λ=500nmに対する値である。このグラフの左端(2πa/λ=0)での有効誘電率はεeff(λ)=2.84である。グラフの左端から2πa/λが増大するにつれて有効誘電率は増大し、2πa/λ=1.39の近傍で、急峻に増大し発散する。これは、第2の誘電体67により構成される誘電率εの誘電体球が共振器として作用することに起因しており、この領域では、複合誘電体65の構造周期を調整することによって、2.84以上の任意の有効誘電率を実現することができる。
【0063】
一方、第2の波長λを100μmとしたとき、第1の誘電体66および第2の誘電体67の誘電率は、それぞれ、ε(λ)=3.88、ε(λ)=9.36である。この場合も、第2の波長λに対する有効誘電率のグラフは図2と同様に、所定の2πa/λで発散する曲線となる。ここで、λはλの、約200倍であることを考慮すれば、第2の波長λの電磁波に対して有効誘電率が発散する第2の誘電体67の半径aの値は、第1の波長λの電磁波に対して、有効誘電率が発散する半径aの値よりもかなり(2桁程度)大きくなる。したがって、0<2πa/λ<1.39を満たすaの範囲では、第2の波長λに対する発散は発生せず、有効誘電率は、εeff(λ)=4.97でほぼ一定値となる。
【0064】
したがって、半径aを適切な値に設定することによって、第1の波長λの電磁波の有効誘電率εeffを、第2の電磁波の有効誘電率εeffと略一致させることが可能である。具体的には、図2において2πa/λ=1.18 のとき、第1の電磁波に対する有効誘電率がεeff=4.98となるので、波長λ=500nmに対しても、波長λ=100μmに対しても、ほぼ同じ値の有効誘電率が得られることになる。誘電体は磁気的応答を示さないため、複合誘電体の実効的な屈折率(有効屈折率)は有効誘電率の平方根に等しい。したがって、上記の例では、複合誘電体は波長λおよびλのいずれに対してもほぼ同じ値の有効屈折率を示す。
【0065】
なお、上記の説明では、2πa/λ=1.39の近傍で、第2の誘電体67を構成する球体の半径aを調整し、第1の波長λの電磁波に対する有効誘電率εeffを、第2の波長λの有効誘電率εeffと同じ値となるようにした。一方、同じく2πa/λ=1.39の近傍で、第1の波長λを調整することによっても、有効誘電率εeffを変化させることが可能である。
【0066】
したがって、上述の複合誘電体65により構成される結像レンズ62を用いることによって、色収差の補正を考慮することなく単純な構成により、2つの周波数fおよびf電磁波に対して同じ屈折率を有する光学系を構成することができる。また、図6では結像レンズ62一つからなる単純な光学系を例示したが、複合誘電体65よりなる複数の素子を用いて光学系を構成しても良い。
【0067】
本実施の形態に係る撮像装置60は、互いに大きく異なる2つの周波数fおよびfの電磁波を検出する2つの画素群を有する撮像素子61と、周波数fおよびfの電磁波に対して略等しい屈折率を有する複合誘電体により構成される結像レンズ62(電磁波素子)を有する結像光学系により構成されているので、大きく異なる2つの周波数帯の電磁波による画像を、単一の撮像装置60より撮像することができる。とくに、複合誘電体65を用いたことにより、光学系を単純化することができ、装置を小型、軽量に構成することが可能になる。これによって、例えば、可視光と赤外光や可視光とミリ波などの組み合わせによる画像を同時に同一の撮像素子61を用いて撮像することができ、さらに、撮像した画像間の対応付けが容易である。
【0068】
(第7実施の形態)
図9は、本発明の第7実施の形態に係る撮像装置の光学系を示す図である。周波数fとfとが大きく異なる場合、それぞれの帯域における結像レンズ(系)の屈折率の差に起因する色収差が、通常の収差補正(レンズ設計)の技術によって十分に補正できない。そこで、この撮像装置70は、それぞれの周波数に対して個別に結像レンズ(系)を設け、それぞれ2つの周波数fおよびfで動作するように構成している。図中の光線のうち実線はf、破線はfの電磁波に対応する。以下にこの撮像装置70の光学系の構成を説明する。なお、撮像対象となるのは周波数fおよびfの電磁波のみであるが、物体から発する電磁波にはそれら以外の周波数成分が含まれていてもよい。
【0069】
撮像装置70は、撮像素子71と、第1のダイクロイックミラー72、第2のダイクロイックミラー73、第1のフィルタ74、第1のミラー75、第1の結像レンズ76、第2のフィルタ77、第2のミラー78および第2の結像レンズ79を含む結像光学系とを備える。
【0070】
第1のダイクロイックミラー72は、周波数fを含む電磁波と周波数fを含む電磁波とを分岐させる素子であり分岐部を構成する。物体80から発した一方の電磁波は直進し、他方の電磁波は、第1のダイクロイックミラー72により反射されて分離される。図9では、周波数fの電磁波が直進し、周波数fの電磁波が反射される例を示しており、以下これに基づいて説明する。
【0071】
第1のダイクロイックミラー72を透過した電磁波は、周波数f以外の成分が第1のフィルタ74によって除去され、第1のミラー75で反射された後に第1の結像レンズ76(結像素子)により撮像素子71上に結像される。ここで、第1の結像レンズ76と撮像素子71との間には、合波部である第2のダイクロイックミラー73が設けられ、周波数fの電磁波を撮像素子71の検出面に向けて反射させる。
【0072】
また、第1のダイクロイックミラー72により反射された電磁波は、周波数f以外の成分が第2のフィルタ77によって除去され、第2のミラー78で反射された後に第2の結像レンズ79(結像素子)により撮像素子71上に結像される。第2の結像レンズ79と撮像素子71との間には、上述の第2のダイクロイックミラー73が配置され、周波数fの電磁波を撮像素子71の検出面に向けて透過させる。
【0073】
したがって、第2のダイクロイックミラー73は、周波数fの電磁波と周波数fの電磁波とを同じ撮像素子71の検出面上に、像81を結像するように合波している。
【0074】
撮像素子71は、例えば、第3〜5実施の形態の各撮像素子30,40または50を用いることができる。それぞれの周波数fおよびfの電磁波による像は、撮像素子71で電気信号へ変換されて、画像処理系により画像情報が作成される。
【0075】
本実施の形態によれば、互いに大きく異なる2つの周波数帯域fおよびfの電磁波を、それぞれ分離して異なる結像レンズ76および79を用いて撮像素子71に結像させているので、大きく異なる2つの周波数帯の電磁波による像81を、単一の撮像装置70により撮像することができる。また、それぞれの結像レンズにより結像されるべき電磁波は単一の周波数に限られるので、その周波数に対して結像レンズの設計を最適化することができ、fおよびfのいずれの周波数に対しても良好な結像性能を容易に得ることができる。
【0076】
(第8実施の形態)
図10は、本発明の第8実施の形態に係る撮像装置の光学系を示す図である。本実施の形態に係る撮像装置90は、3つの周波数f、fおよびfの電磁波を用いて撮像を行う撮像装置である。
【0077】
この撮像装置90は、それぞれの周波数f、f、およびfに対して個別に結像レンズ(系)を設け、3つの周波数f、fおよびfで動作するように構成している。図中の光線のうち一点鎖線は周波数f、実線は周波数f、破線は周波数fの電磁波に相当する。以下にこの撮像装置90の光学系の構成を説明する。
【0078】
撮像装置90は、撮像素子91と、第1のダイクロイックミラー92、第2のダイクロイックミラー93、第3のダイクロイックミラー94、第4のダイクロイックミラー95およびこれらの間に配置される光学素子を含む結像光学系とを備える。第1のダイクロイックミラー92は、物体104から発した電磁波のうち周波数fの電磁波と周波数fおよび周波数fの電磁波とを分岐させる。第2のダイクロイックミラー93は、周波数fの電磁波と周波数fの電磁波とを分岐させる。また、第3のダイクロイックミラー94は、周波数fの電磁波と周波数fの電磁波とを合波する。さらに、第4のダイクロイックミラー95は、周波数fおよびfの電磁波と周波数fの電磁波とを合波する。従って、第1のダイクロイックミラー92と、第2のダイクロイックミラー93とは分岐部に相当し、第3のダイクロイックミラー94と、第4のダイクロイックミラー95とは合波部に相当する。
【0079】
また、第1のダイクロイックミラー92と第3のダイクロイックミラー94との間には、第1のフィルタ96,第1のミラー97および第1の結像レンズ98が配置される。物体104から発して、第1のダイクロイックミラー92を透過した電磁波は、周波数f以外の成分が第1のフィルタ96によって除去され、第1のミラー97で反射された後に第1の結像レンズ98(結像素子)により撮像素子91の検出面上に、像105を結像する。
【0080】
また、第2のダイクロイックミラー93と第3のダイクロイックミラー94との間には、第2のフィルタ99および第2の結像レンズ100が配置される。物体104から発して、第2のダイクロイックミラー93で反射された電磁波は、周波数f以外の成分が第2のフィルタ99によって除去された後に第2の結像レンズ100(結像素子)により撮像素子91の検出面上に、像105を結像する。
【0081】
さらに、第2のダイクロイックミラー93と第4のダイクロイックミラー95との間には、第3のフィルタ101、第3の結像レンズ102および第2のミラー103が配置される。物体104から発して、第3のダイクロイックミラー93を透過した電磁波は、周波数f以外の成分が第3のフィルタ101によって除去され、第2のミラー103の前段に配置された第3の結像レンズ102(結像素子)により撮像素子91の検出面上に、像105を結像する。
【0082】
撮像素子91は、例えば、本願の第1または第2実施の形態に係る撮像素子10または20を用いることができる。それぞれの周波数f、fおよびfの電磁波による像は、撮像素子91で電気信号へ変換されて、画像処理系により画像情報が作成される。
【0083】
本実施の形態によれば、互いに大きく異なる3つの周波数帯域f、fおよびfの電磁波を、それぞれ分離して異なる結像レンズ98、100および102を用いて撮像素子91に結像させているので、大きく異なる3つの周波数帯の電磁波による画像を、単一の撮像装置90により撮像することができる。また、それぞれの結像レンズにより結像されるべき電磁波は単一の周波数に限られるので、その周波数に対して結像レンズの設計を最適化することができ、f、fおよびfのいずれの周波数に対しても良好な結像性能を容易に得ることができる。
【0084】
本発明の撮像素子および撮像装置は、色収差の影響が非常に大きくなるような場合、例えば、周波数が100倍以上異なる場合に、さらに有効である。
【0085】
なお、第6〜8実施の形態では、2つの周波数fおよびfまたは3つの周波数f、fおよびfを用いた撮像システムの例を示したが、利用できる周波数は厳密にこの2つまたは3つの周波数に限定されるわけではない。物体から発する電磁波に広帯域の周波数成分が含まれる場合、例えば周波数fを中心とするある程度の帯域の電磁波は、周波数fの電磁波と同様に良好な結像が可能である。周波数fおよびf電磁波についても同様である。良好な結像が得られる帯域は、主として結像レンズの色収差の度合いにより決まる。周波数fにおいて結像レンズの色収差が小さいか、あるいはよく補正されている場合には、fを中心とするより広い帯域の電磁波を用いて良好な結像を得ることができる。撮像の目的や結像レンズの色収差を考慮して、結像に寄与する電磁波の帯域を調整したいときには、所望の周波数特性を有するダイクロイックミラーやフィルタを用いればよい。
【0086】
また、第6実施の形態においては、第7および第8実施の形態のように、異なる周波数毎に光路を分岐する構成を含んでも良い。その場合、複合誘電体より成る結像レンズに入射する前の各周波数帯の光路長の差がほぼ0となるように調整することが好ましい。また、第6〜8実施の形態において、第3および第4実施の形態のように、第3および第4実施の形態で示したような、周波数ごとの検出面の光軸方向の位置が異る撮像素子を用い、且つ、その差異が無視できない場合は、その差異を考慮して光路差を設けることが好ましい。
【0087】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、撮像素子の、複数種類の画素群は4種類以上の画素群であっても良い。また、全ての画素群の検出する周波数領域が、全て互いに大きく異なっている必要は無い。例えば、4種類の画素群を有し、そのうち3種類の画素は、R、G、Bの可視光に対応し、他の1種類の画素がミリ波やテラヘルツ波を検出するものであっても良い。
【0088】
また、第7および第8実施の形態に係る撮像装置の結像光学系は、2つまたは3つの異なる周波数帯域に対応していたが、分岐部でより多くの周波数帯域に分岐させることにより、4つ以上の周波数帯に対応する結像光学系を構築することもできる。
【符号の説明】
【0089】
10,20,30,40,50 撮像素子
11,21,35,43 第1の画素
12,22,36,44 第2の画素
13,23 第3の画素
31 第1の基板
32,41 第1面
33 第2の基板
34,42 第2面
35 第1の基板
36 第2の基板
51 基板
52 フォトダイオード
53 マイクロレンズアレイ
54 埋め込みチャネル
55 転送電極
56 遮光膜
57 グランド板
60,70 撮像装置
61,71,91 撮像素子
62 結像レンズ
63,80,104 物体
64,81,105 像
65 複合誘電体
66 第1の誘電体
67 第2の誘電体
72,92 第1のダイクロイックミラー
73,93 第2のダイクロイックミラー
74,96 第1のフィルタ
75,97 第1のミラー
76,98 第1の結像レンズ
77,99 第2のフィルタ
78,103 第2のミラー
79,100 第2の結像レンズ
94 第3のダイクロイックミラー
95 第4のダイクロイックミラー
101 第3のフィルタ
102 第3の結像レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の画素群を備える撮像素子であって、
前記複数種類の画素群は、それぞれ互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出し、且つ、互いに異なる画素配置パターンまたは画素密度を有することを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記互いに異なる周波数帯域の電磁波のうち少なくとも2つの電磁波の中心周波数は、5倍以上異なっていることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記複数種類の画素群の各画素群は、前記検出する電磁波の前記周波数帯域が高いほど、該画素群を構成する画素密度が高いことを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記複数種類の画素群の各画素群は、前記検出する電磁波の前記周波数帯域が低いほど、該画素群を構成する画素の検出面の面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記複数種類の画素群は、それぞれ互いに異なる3以上の周波数帯域の電磁波を検出する3種類以上の画素群であることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記複数種類の画素群は、第1の画素群と第2の画素群とを含み、前記第1の画素群および前記第2の画素群は、互いに積層された第1の検出面および第2の検出面にそれぞれ配列されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記複数種類の画素群は、第1の画素群と第2の画素群とを含み、前記第1の画素群および前記第2の画素群は、同一の基板の表面と裏面とにそれぞれ形成された第1の検出面および第2の検出面にそれぞれ配列されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記第1の画素群は、第1の周波数帯域の電磁波を検出し、前記第2の画素群は、前記第1の周波数帯域よりも低い第2の周波数帯域の電磁波を検出し、前記第1の検出面から入射した前記第2の周波数帯域の電磁波は、前記第1の検出面を透過して前記第2の画素群により検出されることを特徴とする請求項6または7に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記複数種類の画素群は、フォトダイオードを有する第1の画素群と、パッチアンテナを有する第2の画素群とを備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記第1の画素群はCCDとして構成され、前記パッチアンテナの少なくとも一部は、前記第1の画素群の遮光膜を兼ねることを特徴とする請求項9に記載の撮像素子。
【請求項11】
複数種類の画素群を備える撮像素子であって、前記複数種類の画素群は、複数の互いに異なる周波数帯域の電磁波を検出し、且つ、配置のパターンまたは密度において、互いに異なっていることを特徴とする撮像素子と、
前記互いに異なる周波数帯域の電磁波による被写体の像を、前記撮像素子の検出面に結像させる結像光学系と
を備える撮像装置。
【請求項12】
前記結像光学系は、前記互いに異なる周波数帯域の電磁波を分岐する分岐部と、前記分岐部により分岐された前記互いに異なる周波数帯域の前記電磁波を合波する合波部と、前記分岐部と前記合波部との間に設けられ、前記互いに異なる周波数帯域の前記電磁波を、それぞれ前記合波部で合波した後前記検出面に結像させる結像素子とを有することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記結像光学系は、第1の誘電体中に前記第1の誘電体とは誘電率の異なる第2の誘電体を分散させてなる複合誘電体で構成された電磁波素子であって、前記電磁波素子は、所定の第1の波長の電磁波および前記第1の波長よりも長い所定の第2の波長の電磁波に対して略等しい有効誘電率を有し、前記第2の誘電体の平均的な粒径および平均的な間隔は、前記第1の波長よりも小さい電磁波素子を備え、前記互いに異なる周波数帯域の前記電磁波は、2つの周波数帯域の電磁波であり、前記電磁波素子内をそれぞれ前記第1の波長および前記第2の波長で伝播することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記第1の誘電体と前記第2の誘電体の少なくともいずれか一方は、前記第1の波長と前記第2の波長との間に、誘電率が大きく変化する共振波長を有することを特徴とする請求項13に記載の撮像装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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