説明

撮像素子パッケージおよび撮像装置

【課題】 熱膨張係数の違いからケーシングや光学ローパスフィルタ構成部材に生じる反りを軽減することができる固体撮像素子パッケージを提供する。
【解決手段】 開口部を有し、撮像素子を保持する筐体と、前記開口部を塞ぐための光学ローパスフィルタ構成部材と、前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを点接触させる点接触部材とを備え、前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを前記点接触部材で点接触させた状態で、前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを接着剤で貼り合わせて、撮像素子パッケージを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子パッケージおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体撮像素子パッケージとして、例えば、特許文献1に開示されたものがある。このパッケージは、ケーシングの凹部の底面に固体撮像素子が埋め込まれ、固体撮像素子を囲む凹部の周縁に設けられた段部にカバーガラスが嵌め込まれて、接着剤によって接着されている。カバーガラスの固体撮像素子側の面には、2枚のリチウムナイオベート板が貼合わされて構成される光学ローパスフィルタが貼付されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−257945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の固体撮像素子パッケージは、ケーシングにカバーガラスを貼り付けているため、お互いの熱膨張係数の違いからケーシングやカバーガラスに反りが生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
開口部を有し、撮像素子を保持する筐体と、
前記開口部を塞ぐための光学ローパスフィルタ構成部材と、
前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを点接触させる点接触部材とを備え、
前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを前記点接触部材で点接触させた状態で、前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを接着剤で貼り合わせて、
撮像素子パッケージを構成した。
【0006】
また、本発明は、開口部を有し、撮像素子を保持する筐体と、
水晶で構成され、前記開口部を塞ぐ光学ローパスフィルタ構成部材とを備えて、
撮像素子パッケージを構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーシングや光学ローパスフィルタ構成部材に生じる反りを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態による固体撮像素子パッケージの平面図、(b)はその横断面図である。
【図2】(a)は本発明の第1の実施形態の変形例による固体撮像素子パッケージの平面図、(b)はその横断面図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態による固体撮像素子パッケージの横断面図、(b)は(a)に示す固体撮像素子パッケージを構成する光学ローパスフィルタを底面側から見た図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態の変形例による固体撮像素子パッケージの横断面図、(b)は(a)に示す固体撮像素子パッケージを構成する光学ローパスフィルタを底面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態について説明する。
【0010】
図1(a)は、第1の実施形態によるセンサパッケージ1を示す平面図であり、同図(b)は、同図(a)のIb−Ib線に沿って破断したセンサパッケージ1の横断面図である。
【0011】
センサパッケージ1は、固体撮像素子2、ケーシング3、光学ローパスフィルタ構成部材4、点接触部材5a、および接着剤6を備えて構成されている。固体撮像素子2はCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどからなり、腐食を防止するためにアルゴン(Ar)などの不活性ガスが封入された、または真空にされたセンサパッケージ1内に収容されている。ケーシング3は、セラミックまたは樹脂からなり、固体撮像素子2を収容する底面の周縁に隆起した段部3aが形成されている。光学ローパスフィルタ(OLPF)は、多重像を作って、空間周波数の高い領域の細かい縞模様を固体撮像素子2の画素間隔レベルでボカす機能を有する。光学ローパスフィルタ構成部材4は、この光学ローパスフィルタの一部を構成し、例えば0.2mmから1.5mmの厚さを有する板状の水晶複屈折板または赤外光吸収ガラスであり、ケーシング3の段部3aに囲まれて形成されるケーシング3の開口部を塞いでいる。
【0012】
点接触部材5aは、所定高さh1を有する三角錐状をしており、ケーシング3の段部3aの上面3bにケーシング3と一体に成形されている。点接触部材5aは、点接触部材5aの尖った先端(三角錐の頂点)と光学ローパスフィルタ構成部材4が段部3aの上面3bに対向する対向面4aとが点接触することで、ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4とを4箇所で点接触させている。ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4とは、点接触部材5aによって上面3bと対向面4aとの間に生じた所定高さh1の隙間に接着剤6が充填されて、接着されている。接着剤6は、センサパッケージ1内に水分などが侵入しないように耐候性を有すると共に、ケーシング3および光学ローパスフィルタ構成部材4間で応力が伝わりづらいように硬化後の粘度が高すぎないものが望ましい。接着剤6は、ケーシング3の熱膨張係数と光学ローパスフィルタ構成部材4の熱膨張係数との間の熱膨張係数を有するもの、望ましくはそれらの中間または中間に近いものが用いられる。点接触部材5aの所定高さh1は、接着剤6による接着層が薄すぎるとケーシング3および光学ローパスフィルタ構成部材4の熱膨張の影響をお互いに与え易く、接着剤6による接着層が厚すぎると水分などがセンサパッケージ1内に入り易くなって耐候性に問題が生じるため、0.01mmから2.0mmの範囲に設定されるのが望ましい。
【0013】
第1の実施形態によれば、ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4とは、光学ローパスフィルタ構成部材4の対向面4aにおいて、ケージング3の上面3bに設けられた三角錐状の点接触部材5aの尖った先端と点接触しているので、ケーシング3に生じる熱膨張、熱収縮は光学ローパスフィルタ構成部材4に伝わり難くなる。同様に、光学ローパスフィルタ構成部材4に生じる熱膨張および熱収縮はケーシング3に伝わり難くなる。
【0014】
ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4とは、点接触部材5aによってケーシング3の段部3aの上面3bとこれに対向する光学ローパスフィルタ構成部材4の対向面4aとの間に形成される所定高さh1の隙間に接着剤6が充填されて接着され、ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4との間に所定高さh1の接着剤6による接着層が形成される。接着剤6の熱膨張係数は、ケーシング3の熱膨張係数と光学ローパスフィルタ構成部材4の熱膨張係数との間の値を有するため、この接着層により、ケーシング3の熱膨張および熱収縮によって生じる応力は接着層に吸収されて光学ローパスフィルタ構成部材4に伝わり難くなる。同様に、光学ローパスフィルタ構成部材4の熱膨張および熱収縮によって生じる応力は接着層に吸収されてケーシング3に伝わり難くなる。この結果、お互いの熱膨張係数の違いからケーシング3や光学ローパスフィルタ構成部材4に反りが生じ難くなる。
【0015】
なお、本実施形態は、以下のように変形することもできる。点接触部材5aをケーシング3に一体に成形した場合について説明したが、例えば、ケーシング3の段部3aの上面3bに金属製等の自発光しない点接触部材5を埋め込むように構成してもよい。
【0016】
三角錐状をした点接触部材5aの尖った先端を光学ローパスフィルタ構成部材4の対向面4aと点接触させた場合について説明したが、例えば、点接触部材5aの尖った先端をケーシング3の段部3aの上面3bと点接触させる構成にしてもよい。
【0017】
点接触部材5aの形状を三角錐状とした場合について説明したが、例えば、点接触部材5aの形状を半球体状とすることで、ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4とが点接触するようにしてもよい。
【0018】
点接触部材5aの形状を三角錐状にした場合について説明したが、例えば、点接触部材5aの形状を図2に示すような球体状にしてもよい。
【0019】
図2(a)は、上述した第1の実施形態の変形例によるセンサパッケージ10の平面図、同図(b)は、同図(a)のIIb−IIb線に沿って破断したセンサパッケージ10の横断面図である。なお、同図において図1と同一の部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0020】
点接触部材5bは、同図に示すように球体状をし、ケーシング3の上面3bと光学ローパスフィルタ構成部材4の対向面4aとの間に設けられ、点接触部材5bの球状表面が上面3bおよび対向面4aとに点接触している。点接触部材5bは、例えばセラミックや樹脂、金属などの自発光しない材質からなり、接着剤6の熱膨張係数と同じ若しくはそれ以下の値のものが用いられる。点接触部材5bは、予め接着剤6に混ぜられてその接着剤6がケーシング3の上面3bに塗られることにより、または、ケーシング3の上面3bに置かれて接着剤6が塗られることにより、ケーシング3の上面3bと光学ローパスフィルタ構成部材4の対向面4aとの間に設けられる。
【0021】
図2に示した変形例によるセンサパッケージ10によれば、ケーシング3と光学ローパスフィルタ構成部材4とは、ケーシング3の上面3bおよびこれに対向する光学ローパスフィルタ4の対向面4aの2面において、球体状をした点接触部材5bの球状表面と点接触させられる。このため、ケーシング3に生じる熱膨張、熱収縮は、光学ローパスフィルタ構成部材4に伝わり難くなる。同様に、光学ローパスフィルタ構成部材4に生じる熱膨張、熱収縮は、ケージング3に伝わり難くなる。
【0022】
図1では点接触部材5aを4箇所以上配置し、図2では点接触部材5bを4箇所以上配置した場合について説明したが、例えば、ケーシング3の上面3b上において二等辺三角形の各頂点に位置するように点接触部材5aまたは5bを3箇所に離して配置する構成にしてもよい。この構成によっても、ケーシング3の上面3b上に光学ローパスフィルタ構成部材4を傾くことなく水平に保持することができる。
【0023】
次に、第2の実施形態について説明する。
【0024】
図3(a)は、第2の実施形態によるセンサパッケージ20の横断面図、同図(b)は、同図(a)に示すセンサパッケージ20を構成する光学ローパスフィルタを底面側から見た図である。なお、同図において図1と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0025】
センサパッケージ20は、ケーシング3の段部3aに囲まれて形成されるケーシング3の開口部が光学ローパスフィルタを構成する水晶複屈折板40によって塞がれている。水晶複屈折板40の固体撮像素子2収容側の面には赤外光吸収ガラス41が設けられており、赤外光吸収ガラス41はケーシング3内に収容されている。固体撮像素子2および赤外光吸収ガラス41が収容されているケーシング3内は、腐食を防止するためにArなどの不活性ガスが封入されている、または真空にされている。
【0026】
このような第2の実施形態によれば、ケーシング3の開口部は光学ローパスフィルタを構成する水晶複屈折板40で塞がれる。光学ローパスフィルタを構成する複屈折板として水晶またはリチウムナイオベートを用いる場合、水晶の厚みをリチウムナイオベートの厚みの約7倍とすることで、複屈折板の機能として同様の特性を得ることができる。リチウムナイオベートを複屈折板として用いる場合、その厚みの薄さから、カバーガラスに貼り付けてケーシング3の開口部を塞ぐことになるので、センサパッケージ20の厚みが厚くなってしまう。これに対して、ケーシング3の開口部を塞ぐ部材として厚さを確保できる水晶複屈折板40を用いることで、ケーシング3の開口部を塞ぐ部材の反りを軽減することができる。
【0027】
第2の実施形態によれば、赤外光吸収ガラス41が、水晶複屈折板40の固体撮像素子2収容側の一面に設けられてケーシング3内に収容されるため、センサパッケージ20の厚みがより抑えられる。
【0028】
なお、上記第2の実施形態では、光学ローパスフィルタを1枚の水晶複屈折板40のみで構成した場合について説明したが、例えば、図4に示すように変形にしてもよい。
【0029】
図4(a)は、第2の実施形態の変形例によるセンサパッケージ30の横断面図、同図(b)は、同図(a)に示すセンサパッケージ30を構成する光学ローパスフィルタを底面側から見た図である。なお、同図において図3と同一の部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0030】
この変形例によるセンサパッケージ30において、光学ローパスフィルタは、2枚の水晶複屈折板40a、40bと、赤外光吸収ガラス41と、水晶波長板42とから構成されている。光学ローパスフィルタは、水晶複屈折板40aに、赤外光吸収ガラス41、水晶波長板42、水晶複屈折板40bが順に積層されている。このような第2の実施形態の変形例によるセンサパケージ30によっても、赤外光吸収ガラス41、水晶波長板42および水晶複屈折板40bがケーシング3内に収容されるため、上記第2の実施形態と同様にセンサパッケージ30の厚みが抑えられる。
【0031】
なお、上述した第1の実施形態およびその変形例、第2の実施形態およびその変形例のいずれの固体撮像素子パッケージであってもカメラモジュールとしてカメラに搭載することも当然可能である。これによれば、固体撮像素子パッケージを構成するケージングや光学ローパスフィルタ構成部材に生じる反りを軽減することができるので、カメラとして光学的な問題が生じ難くなる。
【符号の説明】
【0032】
1,10,20,30…センサパッケージ
2…固体撮像素子
3…ケーシング
3a…段部
3b…上面
4…光学ローパスフィルタ構成部材
4a…対向面
5a,5b…点接触部材
6…接着剤
40,40a,40b…水晶複屈折板
41…赤外光吸収ガラス
42…水晶波長板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、撮像素子を保持する筐体と、
前記開口部を塞ぐための光学ローパスフィルタ構成部材と、
前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを点接触させる点接触部材とを備え、
前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを前記点接触部材で点接触させた状態で、前記筐体と前記光学ローパスフィルタ構成部材とを接着剤で貼り合わせたこと
を特徴とする撮像素子パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子パッケージにおいて、
前記接着剤の熱膨張係数は、前記筐体の熱膨張係数と前記光学ローパスフィルタ構成部材の熱膨張係数との間であること
を特徴とする撮像素子パッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮像素子パッケージにおいて、
前記点接触部材の形状は三角錐であり、
前記三角錐の頂点のうち1つが前記筐体または前記光学ローパスフィルタ構成部材に対して点接触すること
を特徴とする撮像素子パッケージ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の撮像素子パッケージにおいて、
前記点接触部材の形状は球状であり、
前記点接触部材の球面が前記筐体または前記光学ローパスフィルタ構成部材に対して点接触すること
を特徴とする撮像素子パッケージ。
【請求項5】
開口部を有し、撮像素子を保持する筐体と、
水晶で構成され、前記開口部を塞ぐ光学ローパスフィルタ構成部材とを備えること
を特徴とする撮像素子パッケージ。
【請求項6】
請求項5に記載の撮像素子パッケージにおいて、
前記光学ローパスフィルタ構成部材は、前記光学ローパスフィルタに積層された赤外光吸収部材が前記筐体内に収容されるように配置されていること
を特徴とする撮像素子パッケージ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の撮像素子パッケージを備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−176674(P2011−176674A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40000(P2010−40000)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】