撮像素子
【課題】色バランスと色再現性とがよく、薄い撮像素子を提供すること。
【解決手段】色成分を抽出するフィルタは、透明フィルタと、黄フィルタと、赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率の波長範囲が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上。補正フィルタが、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントイエロー139の各顔料を含む着色樹脂組成物で形成されたこと。
【解決手段】色成分を抽出するフィルタは、透明フィルタと、黄フィルタと、赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率の波長範囲が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上。補正フィルタが、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントイエロー139の各顔料を含む着色樹脂組成物で形成されたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子を具備する撮像素子に関し、特に、受光素子の光入射側にカラーフィルタを配置し、観測対象の色成分の観測を可能とし、色バランスと色再現性がよい撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子(イメージセンサー)として、デジタルカメラ、ビデオカメラなどで用いられる二次元イメージセンサー、または、ファクシミリや複写機で用いられるリニアイメージセンサーなどの一次元イメージセンサーがあげられる。
撮像素子に具備される例えばCMOSやCCDなどの受光素子(光電変換素子)は、素子に入射した光を電気信号に変換する。受光素子は、人間の視覚感度域である可視光波長域(例えば、400nm〜700nmの波長域)外の領域でも高い感度を有し、特に、可視光波長域より長波長側の波長域(以下、「赤外域」という。例えば、700nm〜1100nmの波長域)についても高い感度を有する。
【0003】
各受光素子の光入射側には、入射光から特定の色成分を抽出する色分離を行うために3原色(あるいは補色)の有機カラーフィルタが設置される。受光素子は、入射光を有機カラーフィルタ経由で受ける。入射光は有機カラーフィルタによって色分離されるため、観測対象とされている色成分が受光素子によって観測される。
【0004】
受光素子は、入射した光の色の判別を行うことはなく、入射した光をこの光の強さに応じた電気信号に変換し、入射した光の明るさを検知するのみである。このため、受光素子の光入射側に、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の有機カラーフィルタが備えられる。有機カラーフィルタは、撮影対象からの光を色分離して特定の光を取り出す。赤、緑、青の各カラーフィルタを通過した光は、各カラーフィルタに対向する受光素子に入射され、この各受光素子で電気信号に変換される。光電変換により得られた出力値(通常、電圧値)を合成することにより、撮影対象をカラー画像として再現させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、有機カラーフィルタには赤外域の光(赤外光)のカット機能がないため、人間の視覚感度域外(例えば700nmより長波長側)の光が受光素子に入射される場合がある。このため、撮像素子で得られる撮影対象の色は、人間が目視で観察した撮影対象の色と異なる場合があるという問題がある。
【0006】
このような人間の視覚感度域外の光により影響を受ける色分離を避けるため、赤外線カットフィルタが用いられる。すなわち、赤外線カットフィルタで、入射光から赤外域の光をカットする。しかる後、赤外域をカットされた光を各カラーフィルタに入射させ、赤外域の影響を削減する。
【0007】
図7は、人間の視覚感度、受光素子の感度(SPD感度)、受光素子の感度に対して好ましい赤外域カットフィルタの透過率の関係の例を示すグラフである。
【0008】
受光素子の感度は、赤外域にも広がっている。このため、赤外線カットフィルタにより、受光素子の赤外域の観測を抑制することにより、人間の視覚感度に近い測定が可能となる。すなわち、赤外線カットフィルタで図7中の斜線部の光をカットすれば、受光素子は人間の視覚感度に近い測定が可能となる。
【0009】
赤外線カットフィルタには、反射型と吸収型の2種類がある。
【0010】
図10は、反射型の赤外線カットフィルタと吸収型の赤外線カットフィルタにおける光の波長と透過率との関係の例を示すグラフである。
【0011】
反射型の赤外線カットフィルタは、例えば、ガラス板上に無機多層膜を形成して構成される。無機多層膜による反射型の赤外線カットフィルタは、フィルタ面に垂直な方向の入射光に対して高い赤外線のカット機能を持つが、斜め入射などの角度のついた赤外線に対しては十分なカット機能を実現することが困難である。
【0012】
吸収型の赤外線カットフィルタは、染料又は銅イオンによる光の吸収を利用して赤外線を吸収する。なお、一般的な吸収型の赤外線カットフィルタは、無機ガラス等の基材に銅イオンなどの金属イオンや有機顔料を入れて構成される。
【0013】
ここで、反射型の赤外線カットフィルタと吸収型の赤外線カットフィルタとを比較すると、吸収型の赤外線カットフィルタの方が反射型の赤外線カットフィルタよりも安価である。また、上述したように、吸収型の赤外線カットフィルタの方が反射型の赤外線カットフィルタよりも角度のついた入射光の赤外線カット性能がよい。
【0014】
このため、一般的に、吸収型の赤外線カットフィルタの方が反射型の赤外線カットフィルタよりも使用される傾向にある。
【0015】
また、無機多層膜による反射型の赤外線カットフィルタのカット機能を補い、赤外線の斜め入射又は再入射の影響を低減させる目的で、吸収型の赤外線カットフィルタと無機多層膜による反射型の赤外線カットフィルタとが併用される場合がある。
【0016】
しかしながら、吸収型の赤外線カットフィルタと反射型の赤外線カットフィルタとを併用すると、構造が複雑になるため、吸収型の赤外線カットフィルタのみを用いることが一般的である。
【0017】
一般的な撮像素子においては、撮影対象からの光を観測するために、受光素子の光入射側にレンズ等からなる光学系を具備する。上述した赤外線により観測結果が影響を受けることを防止するために、撮像素子の光学系に赤外線カットフィルタを挿入する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0018】
特許文献1では、赤色光と緑色光との境界および/または緑色光と青色光との境界における特定の波長域の光を選択的にカットすることによって色純度を補正する機能を有し、さらに赤外線をカットする機能を有する色純度補正フィルタを具備する固体撮像素子について説明されている。
【0019】
また、特許文献2では、赤外光域の透過率を大幅に減少させ可視光波長域の光を透過させる赤外線吸収剤が配合されて赤外カット能力が付与され、撮像素子本体前面に分光フィルタが配設されているカラー撮像素子について説明されている。
【0020】
上述したように、この特許文献1及び特許文献2では、CMOSやCCDなどのような受光素子の全体を覆う形で、赤外線カットフィルタが光学系に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2000−19322号公報
【特許文献2】特開昭63−73204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
吸収型の赤外線カットフィルタにおいては、赤外線の吸収性を充分に持たせるために、厚みが1〜3mm程度となる。吸収型の赤外線カットフィルタを撮像素子に用いる場合、この吸収型の赤外線カットフィルタの厚みのため、光学系を含めた撮像素子の小型化は困難である。
【0023】
また、吸収型の赤外線カットフィルタを用いる場合、カメラ部材として、レンズ系に赤外線カットフィルタを組み込む工程が必要となり、製造コスト削減が困難となる。
【0024】
上記特許文献1及び特許文献2の撮像素子は、撮像素子本体の前面全体を覆う赤外線カットフィルタを備える。このため、撮像素子に備えられている全ての受光素子に対して赤外線がカットされ、受光素子による観測と人間の視覚感度とで差が生じる場合がある。
【0025】
例えば、特許文献2では、この特許文献2の図2及び図10に示すように、赤外線カットフィルタが人間の可視光波長域550nm〜700nmの光も吸収してしまう。このため、撮像素子に備えられている全ての受光素子に対して赤外線をカットすると、緑の感度、特に赤の感度が低下する場合がある。
【0026】
近年、撮像素子については、多画素化の要求が高まっており、画素の微細化が進んでいる。微細画素になると、一画素当たりの面積が小さくなるため受光素子に入射する光の量が減少し、受光素子の感度が低下し、画質が低下する(暗い画像となる)場合がある。そのため、受光素子に入射する光の集光性を上げるためカラーフィルタの上方にマイクロレンズを形成する技術が提案されている。
【0027】
前述のように、観測対象から来た光を色分離するために、受光素子の光入射側には、赤、緑、青の3原色のカラーフィルタが配設されている。
【0028】
図8は、赤、緑、青の3原色のカラーフィルタの分光透過率の一例を示すグラフである。この図8のグラフに示すように、青、緑の透過率の頂点部は80%前後の値となっている。カラーフィルタの透過率が低いと、その分、受光素子に到達する光量が減ることになり、画質の低下(暗い画像)を進めることになる。
【0029】
上記図7に示すCMOSやCCDなどの受光素子の分光感度(SPD感度)において、受光素子は、光の波長でおよそ400nm〜1000nmの広い感度領域を持っている。しかし、上記図7に示すように、受光素子は、赤の波長域(700nm)付近で高い感度を有するが、短波長域に行くにつれ感度が低下している。青の波長域(400nm〜500nm)付近では、赤の半分程度の感度となる。
【0030】
上記図8の赤、緑、青のカラーフィルタの分光透過率を示すグラフでは、青のカラーフィルタの透過率は、緑、赤のカラーフィルタの透過率より低くなっている。
【0031】
以上の観点から、赤、緑、青の3原色のカラーフィルタを有する撮像素子では、青領域において受光素子の感度が低く、かつ、赤や緑のカラーフィルタの透過率よりも、青のカラーフィルタの透過率の方が低いことが分かる。このため、従来の撮像素子では、緑、赤よりも青の感度が低くなり、色全体として見た場合の色バランスを厳密に再現することが困難となる。
【0032】
また、上記図10の吸収型の赤外線カットフィルタの分光透過率に示すように、吸収型の赤外線カットフィルタは、およそ550nm〜700nmの可視光波長域においても光を吸収する領域を持つ。すなわち、吸収型の赤外線カットフィルタの透過率は、550nm〜700nmの可視光波長域で徐々に低くなる。この550nm〜700nmの可視光波長域は、緑、赤の光域に相当する。したがって、吸収型の赤外線カットフィルタを撮像素子に用いた場合、特に、赤の感度が低下するという問題がある。すなわち、吸収型の赤外線カットフィルタにより赤外線のカットを行う撮像素子では、青のみではなく赤の色再現性も損なわれる場合がある。
【0033】
一方、従来より、受光素子への光量の低下に対応するため、黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)からなる補色系のカラーフィルタを用いる技術が提案されている。
【0034】
黄(Y)のカラーフィルタを用いることで、赤と緑との合成光を取り出すことができる。マゼンタ(M)のカラーフィルタを用いることで、赤と青との合成光を取り出すことができる。シアン(C)のカラーフィルタを用いることで、緑と青との合成光を取り出すことができる。
【0035】
補色系のカラーフィルタは、各々2色ずつの光を透過するため、透過率が高くなる。
【0036】
しかし、黄、マゼンタ、シアンの補色系のカラーフィルタを透過した光から青、緑、赤の3原色の光を取り出すには、例えば青=(シアン+マゼンタ−黄)/2、緑=(シアン+黄−マゼンタ)/2、赤=(マゼンタ+黄−シアン)/2などのように、補色系のカラーフィルタを経由し、受光素子で観測された各値から赤、緑、青の3原色に相当する値を算出するための煩雑な計算を行う必要があるため、原色に近い鮮やかな色を表現することが困難な場合がある。
【0037】
また、撮像素子においては、受光素子の周囲には、受光素子で発生した電気信号を転送する配線が配置されているが、その配線に不要な光があたるとノイズが発生することがある。また、受光素子以外の部分に入射した光が撮像素子内で迷走し、迷光となる場合がある。この迷光は、その後受光素子に入射するとノイズとなる。
そのため、受光素子に入射すべき光以外の不要な光によるノイズを防止するため、受光素子の有効開口部周辺、配線部の上部、および半導体基板の一部(例えば受光素子を形成した半導体基板の外周)に、遮光膜を形成する場合がある。
【0038】
遮光膜は半導体デバイスの形成時に金属薄膜などで形成することも可能であるが、製造コスト、製造の容易性などを考慮し、受光素子の上部にカラーフィルタを形成する際に、カラーフィルタと同じ材料、工程にて形成することが一般的となっている。しかし、単色のカラーフィルタで形成した遮光膜では完全に光を遮断できないことが多い。その場合は、2色、3色のカラーフィルタを積層しなければならない。
【0039】
ここで、カラーフィルタは0.7μm〜1μm程度の膜厚を有するため、遮光膜を複数色のカラーフィルタの積層で形成すると、遮光膜の膜厚が例えば1.5μm〜2μmと厚くなる。なお、主顔料にチタンやカーボンを用いた黒色層で遮光膜を形成することもあるが、この黒色層であっても、例えば400nm〜570nmの可視光の透過を5%以下に抑えるためには、少なくとも1.5μm程度の膜厚が必要である。
【0040】
遮光膜の膜厚が厚くなると、マイクロレンズを形成した撮像素子において、マイクロレンズが十分な集光性を発揮できなくなり感度が低下するという問題が生じるといえる。なぜならば、遮光層の膜厚が厚いと、カラーフィルタと遮光膜との上部に形成する平坦化層の膜厚も厚くせざるを得ず、その分、平坦化層上に形成したマイクロレンズと受光部まで
の距離が長くなり、マイクロレンズが取り込める光が限定されるためである。
【0041】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、色バランスと色再現性とがよく、薄い撮像素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23とC.I.ピグメントイエロー139との各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成されたことを特徴とする撮像素子である。
【0043】
また、本発明は、入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23と、C.I.ピグメントイエロー139と、C.I.ピグメントレッド254の各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成したことを特徴とする撮像素子である。
【0044】
また、本発明は、上記発明による撮像素子において、前記受光素子は、
1)前記入射光を前記透明フィルタ経由で観測する入射光受光素子と、前記入射光を前記黄フィルタ経由で観測する黄受光素子と、前記入射光を前記赤フィルタ経由で観測する赤受光素子と、前記入射光を前記補正フィルタ経由で観測する補正受光素子とを含み、
2)前記入射光受光素子で観測された観測結果から、前記黄受光素子で観測された観測結果を引き算し、青の観測結果を求める演算手段と、前記黄受光素子で観測された観測結果から、前記赤受光素子で観測された観測結果を引き算し、緑の観測結果を求める演算手段と、前記赤受光素子で観測された観測結果から、前記補正受光素子で観測された観測結果を引き算し、補正された赤の観測結果を求める演算手段とをさらに具備することを特徴とする撮像素子である。
【0045】
また、本発明は、上記発明による撮像素子において、前記補正フィルタと同じ材質から
なる遮光膜を、前記入射光の入射側であり、前記受光素子に前記入射光を入射させる領域を除いた領域に設けたことを特徴とする撮像素子である。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、青の感度の低下を抑制することができる。また、本発明では、有機顔料の組み合わせで補正フィルタの分光特性を調整できる。そのため、従来の赤外線カットフィルタを用いた場合に発生していた問題、すなわち、赤外線カットフィルタが人間の可視光波長域550nm〜700nmの光も吸収してしまい、緑および赤の感度が低下し、色再現性が低下するという問題を解決出来き、観測結果の色バランスを向上させることができる。
【0047】
本発明では、レンズなどを含む光学系厚みが増すことを防止することができ、撮像素子を小型化、薄型化させることができる。
【0048】
本発明においては、受光素子の有効開口部周辺、配線部上部及び、半導体基板の一部(
例えば半導体基板の外周)に、可視光を遮断する性能に優れた遮光膜を配置している。そのため、この遮光膜により、受光素子を除く他の部分に入射した光が吸収され、また、受光素子に迷光及び不要な光が入射することを防止することができ、ノイズを低減させることができ、撮像素子によって得られる画質を向上させることができる。
【0049】
また、本発明の遮光膜は可視光を遮断する性能に優れるため、膜厚を例えば1.1μmと1μm程度に薄くすることが可能となる。そのため、平坦化膜を介してマイクロレンズを形成した撮像素子であっても、平坦化膜の膜厚を薄く出来、その結果、マイクロレンズと受光素子との距離を短くすることが出来る。そのためマイクロレンズは十分な集光性を発揮でき、撮像素子の感度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる撮像素子におけるフィルタの配列状態の一例を示す正面図である。
【図2】第1の実施の形態に係わる撮像素子の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わるカラーフィルタの配列の一例を示す正面図である。
【図4】透明フィルタ、黄フィルタ、赤フィルタ、補正フィルタについての分光透過率の一例を示すグラフである。
【図5】第1の実施の形態に係わる撮像素子の演算によって得られる見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタについての分光透過率の一例を示すグラフである。
【図6】従来の撮像素子の実際の分光特性の例を示すグラフである。
【図7】人間の視覚感度、受光素子の感度、受光素子の感度に対して好ましい近赤外域カットフィルタの透過率の関係を示すグラフである。
【図8】赤、緑、青の三原色のカラーフィルタの分光透過率の一例を示すグラフである。
【図9】第2の実施の形態に係わる撮像素子の一例を示す断面図である。
【図10】反射型の赤外線カットフィルタと吸収型の赤外線カットフィルタにおける光の波長と透過率の関係の例を示すグラフである。
【図11】第3の実施の形態に係わる撮像素子の一例を示す断面図である。
【図12】第2の実施の形態に係わる補正フィルタの分光透過率特性の説明図である。
【図13】第3の実施の形態に係わる撮像素子の遮光膜の配置位置の1例を示す正面図である。
【図14】第3の実施の形態に係わる撮像素子の遮光膜の配置位置の1例を示す断面図である。
【図15】第1の実施の形態に係わる補正フィルタの分光透過率特性の説明図である。
【図16】補正フィルタの分光透過率特性の分光特性の一例を示す説明図である。
【図17】RGB表色系の等色関数である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において同一の要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、CMOSやCCDなどの受光素子を具備し、特に、受光素子の光入射側にフィルタ層を設け、観測対象の色成分を観測する撮像素子について説明する。
【0053】
図1は、本実施の形態に係る撮像素子におけるフィルタの配列状態の一例を示す正面図である。この図1では、光入射側からみたフィルタの状態の例が表されている。図3は、本発明に関わるカラーフィルタの配列の一例を示す正面図である。
【0054】
図2は、本実施の形態に係る撮像素子の一例を示す断面図である。この図2では、上記図1のI−I断面が表されている。なお、この図2では、受光素子がCCDの場合を例として図示しているが、受光素子がCMOSの場合も同様である。以下、撮像素子の他の断面図においても同様である。
【0055】
本実施の形態に係る撮像素子1は、入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタ層2と、入射光をフィルタ層2経由で観測する受光素子3W、3Y、3R、3Blkと、演算部4を具備する。
【0056】
フィルタ層2は、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkを含む。それぞれ一つずつの透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkにより色分離の一単位が形成される。透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkは、マス目状に隣接配列されることにより面を形成する。これにより、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkが適切に配置される。
【0057】
透明フィルタ2Wは、主に400nm以降の長波長の光を吸収することなく、透過することが望ましい。例えば、透明フィルタ2Wとしては400nm以降の長波長の光の透過率が95%以上のフィルタが望ましい。
なお、本発明で示す透過率の値は、屈折率nが約1.5の透明ガラスをリファレンス(100%)としている。
また、紫外線によるノイズを防止して青の観測データを向上させるため、透明フィルタ2Wに400nmより短波長域の紫外線吸収機能を持たせることは好ましい。そのため、透明フィルタ2Wに紫外線吸収剤を添加することは好ましいといえる。
【0058】
黄フィルタ2Yは、入射光のうち黄成分(赤成分と緑成分が合成された光)の抽出に用いられるフィルタである。この黄フィルタ2Yは、補色系のフィルタである。一般的に、補色系のフィルタは、赤、緑、青の3原色系のカラーフィルタよりも光の透過率が高い。
【0059】
赤フィルタ2Rは、入射光のうち赤成分の抽出に用いられる赤のカラーフィルタである。一般的に、赤のカラーフィルタは、3原色系の他のカラーフィルタである青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタよりも透過率が高い。
【0060】
補正フィルタ2Blkは、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有するフィルタであり、赤外域の透過率の方が可視光波長
域の透過率よりも高い特性を持つ。具体的には、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率の波長範囲が620nm〜690nmであり、波長700nmの光に対する透過率が70%以上としている。
【0061】
本発明に関わる補正フィルタ2Blkは、基本的に可視光波長域400nm〜700nmで低透過率とし、目視で黒に近いことが好ましく、逆に波長700nm以降の赤外域を含む長波長域は高い透過率が必要である。
【0062】
また、後述するように、本発明の眼目は補正フィルタ2Blkに赤外透過フィルタ機能を付与して受光素子の出力値から演算(引き算)して実効的に赤外カット機能を持たせることにある。通常用いられる赤外カットフィルタ(図10の吸収型参照) の吸収が550nm付近から始まる。そのため、本発明においては赤外カットを行う手段となる補正フィルタ2Blkの透過域の立ち上がりは最短の光の波長で550nmを考慮することになる。従って、補正フィルタ2Blkの低透過(透過率5%以下)の範囲は400nm〜700nmとしている。
【0063】
前述したように、本発明に関わる補正フィルタ2Blkは、赤外カット機能のための演算処理を前提として波長550nm以降で、赤及び、近赤外域の方向に透過特性を付与する。この場合に、人間の視感度を前提に計算されたRGB表色系の等色関数(図17)の原刺激[R]は、600nm付近をピークに700nmに向けてダウンする形状である。
【0064】
従って、補正フィルタ2Blkの分光透過率特性は、600nm付近から立ち上がり、700nm付近から高い透過率になる形状が好ましい。ゆえ、その分光透過率特性の50%透過率の波長範囲(半値の範囲)は、620nm〜690nmであることが望ましい。補正フィルタ2Blkは、可視光波長域で透過抑制特性(低透過特性)を持つとしているため、目視では黒(Black)に見える。
【0065】
本実施の形態において、補正フィルタ2Blkは、少なくともC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントイエロー139の各顔料を含む着色樹脂組成物で形成される。または、少なくともC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド254の各顔料を含む着色樹脂組成物で形成される。
【0066】
受光素子である入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkは、フィルタ層2の光入射側の反対側に配置され、受けた光を電気信号に変換し、観測データ値を求める。
【0067】
入射光受光素子3Wは、透明フィルタ2Wに対応付けされており、入射光を透明フィルタ2W経由で観測する。
【0068】
黄受光素子3Yは、黄フィルタ2Yに対応付けされており、入射光を黄フィルタ2Y経由で観測する。
【0069】
赤受光素子3Rは、赤フィルタ2Rに対応付けされており、入射光を赤フィルタ2R経由で観測する。
【0070】
補正受光素子3Blkは、補正フィルタ2Blkに対応付けされており、入射光を補正フィルタ2Blk経由で観測する。
【0071】
受光素子とフィルタとの一対一の組み合わせが、画素に相当する。
【0072】
演算部4は、青演算部4B、緑演算部4G、赤演算部4Rを具備する。この演算部4は、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkによる観測データ値Dw、Dy、Dr、Dblkに基づいて、青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrを求める機能を持つ。
【0073】
青演算部4Bは、入射光受光素子3Wで観測された観測データ値Dwから、黄受光素子3Yで観測された観測データ値Dyを引き算し、青の観測データ値Db(=Dw−Dy)を求める。
【0074】
緑演算部4Gは、黄受光素子3Yで観測された観測データ値Dyから、赤受光素子3Rで観測された観測データ値Drを引き算し、緑の観測データ値Dg(=Dy−Dr)を求める。
【0075】
赤演算部4Rは、赤受光素子3Rで観測された観測データ値Drから、補正受光素子3Blkで観測された観測データ値Dblkを引き算し、補正された赤の観測データ値HDr(=Dr−Dblk)を求める。
【0076】
なお、上記図2では、赤フィルタ2Rと補正フィルタ2Blkとを横断するとともに、赤受光素子3Rと補正受光素子3Blkとを横断する断面が表されている。しかしながら、他のフィルタ、他の受光素子を横断する断面についても同様の構成とする。
【0077】
半導体基板5の光入射側には、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkが形成、配設される。
【0078】
図2に示すように、本実施の形態では、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkの形成された半導体基板5の光入射側の面には、平坦化層6が積層される。これにより、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkを平坦な設置面に形成できる。なお、撮像素子1を薄くするために、平滑化層6は省略されてもよい。
【0079】
平坦化層6の光入射側には、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkにそれぞれ対応する透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkが配置され、フィルタ層2が形成される。
【0080】
フィルタ層2の光入射側には、樹脂層(透明平滑化層)7が積層される。
【0081】
樹脂層7の光入射側には、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkに対応するマイクロレンズ8が樹脂層7上に備えられる。マイクロレンズ8は、各透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkと対をなすように、各透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkの上方に配置されている。マイクロレンズ8は、アクリル樹脂などにより形成され、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkへの集光性を高める。
【0082】
本実施の形態において、各フィルタの膜厚は、それぞれ1.0μm〜1.1μm、画素ピッチ(透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkのピッチ)は2.6μmとした。
【0083】
平坦化層6は、紫外線吸収剤を添加した熱硬化型のアクリル樹脂によって形成され、膜
厚は、0.3μmとした。ここで、平坦化層6に対して紫外線吸収剤が添加されるとしたのは、フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタを形成する際に、下地となる半導体基板5からのハレーションを防止することにより、形状のよいフィルタを形成するためである。
【0084】
なお、本実施の形態では、平坦化層6を形成するとしているが、撮像素子をさらに薄くすることを目的として、平坦化層6を省略してもよい。
【0085】
本実施の形態において、透明フィルタ2Wは、アルカリ可溶型の感光性アクリル樹脂(屈折率n=1.55)にて、膜厚約1μmで形成されている。
【0086】
黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkは、透明樹脂に色素(顔料、染料)を添付した着色感光性樹脂溶液を用いて形成される。なお、透明フィルタ2Wは、着色物を添加しない透明樹脂で形成されるとしてもよい。
【0087】
本実施の形態において、色フィルタである黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkは、透明フィルタ2Wの形成に用いられた透明樹脂(例えば、感光性アクリル樹脂)に、所定の有機顔料を添加、分散させた着色感光性樹脂で形成される。
【0088】
なお、黄フィルタ2Yの形成に用いられる有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー150が用いられる。
【0089】
赤フィルタ2Rの形成に用いられる有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177と、C.I.ピグメントレッド48:1と、C.I.ピグメントイエロー139との混合が用いられる。
【0090】
補正フィルタ2Blkの形成に用いられる補正フィルタ用着色樹脂組成物は、下記に示す3種類の有機顔料を用いている。
C.I(カラーインデックス).ピグメントレッド254(以下、R254と略記する)、
C.I.ピグメントイエロー139(以下、Y139と略記する)、
C.I.ピグメントバイオレット23(以下、V23と略記する)。
【0091】
なお、この3種類の有機顔料のうち、R254の顔料を除くこともできる。さらに、この3種類の有機顔料の他に、色(透過波長)調整用に微量の他の種類の顔料を付加することが可能である。
【0092】
補正フィルタ用着色樹脂組成物に含まれる3種類の有機顔料(R254、Y139、V23)の重量比率(%)は、それぞれ、R254=0〜15%、Y139=30〜40%、V23=55〜65%である。
【0093】
なお、補正フィルタ用着色樹脂組成物は、前述したように、各有機顔料の他に、樹脂、溶液が含まれる。例えば、有機顔料Y139単体を分散させるためには、顔料R139、7部(重量部)に対して以下のものが含まれる。
アクリル樹脂溶液(固形分20%) 40部
分散剤 0.5部
シクロヘキサノン 23.0部
また、有機顔料V23も有機顔料R254と同じ溶液を用いて分散する。
【0094】
補正フィルタは、前述したように、各有機顔料を混合して分散させて樹脂で固定したも
のであるが、実施の形態の補正フィルタの具体的製造法を説明する。
【0095】
前述した2種類の各有機顔料Y139、V23の顔料ペーストを、前述した重量比率の各重量分準備する。
Y139;14.70部、V23;20.60部
アクリル樹脂溶液;14.00部
アクリルモノマー;4.15部
開始剤;0.7部
増感剤 ; 0.4部
シクロヘキサノン ; 27.00部
PGMAC ; 10.89部
を混合して補正フィルタ用着色樹脂組成物とする。
【0096】
そして、この補正フィルタ用着色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて、乾燥膜厚が1.1μmとなるように塗膜形成する。次に、ホットプレート上で70℃、1分間乾燥する。次に、i線ステッパーを用いて、5μmの画素パターンが形成できるマスクを介して露光を行う。なお、露光感度は1000mj/cm2である。
【0097】
次に、有機アルカリ水溶液を用いて、スピンをさせながらシャワー方式にて60秒間現像する。純水による十分なリンスの後、スピンにより水を振切り、乾燥させる。次に、ホットプレート上で220℃、6分間の熱処理を行い、画素パターンを硬膜させ、厚さ1.1μmの補正フィルタを得る。
【0098】
残る黄フィルタ2Y、および赤フィルタ2Rは、公知のフォトリソ法を用い、同様に形成した。
【0099】
なお、各フィルタ用着色樹脂組成物に含まれる各有機顔料を固定する担体は、前述したアクリル樹脂のように、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の樹脂である。
【0100】
透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および活性エネルギー線硬化性樹脂が含まれ、その前駆体には、活性エネルギー線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0101】
このように製造された補正フィルタの分光透過率特性を図15を用いて説明する。実施の形態の補正フィルタの分光透過率特性は、図15のBlk1に示すように、波長400nm及び波長550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率となる波長の位置が620〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上である。
【0102】
図4は、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkについての分光透過率の一例を示すグラフである。
なお、図4に示すように本発明に関わるフィルタは、短波長域で低透過率であり、中波長域で透過率が立ち上がり、長波長域で高い透過率となる、略S字状の分光特性曲線を有するものを使用するのが好ましい。
【0103】
撮像素子1は、各受光素子による観測データ値Dw、Dy、Dr、Dblkに基づいて演算(引き算)を行い、青、緑、補正された赤の3原色の観測データ値Db、Dg、HD
rを得る。
【0104】
すなわち、撮像素子1は、この演算を行うことにより、見かけ上(仮想的に)、青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタを具備していると考えることができる。
【0105】
図5は、撮像素子1の演算によって得られる見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタについての分光透過率の一例を示すグラフである。
【0106】
この図5に示す撮像素子1の見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタの分光透過率と、上記図8に示す従来の青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタ、赤のカラーフィルタの分光透過率とを比較すると、撮像素子1の見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタの分光透過率には以下の特徴がある。
【0107】
すなわち、撮像素子1の見かけ上の青フィルタ、緑フィルタの透過率は、それぞれの色の波長域において、従来の青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタよりも透過率が高いという特徴を持つ。特に、見かけ上の青フィルタの透過率は、青の波長域において、従来の青のカラーフィルタより透過率が高くなる。このため、撮像素子1では、青の感度が向上し、色バランスが改善される。
【0108】
また、撮像素子1により得られる青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrは、それぞれ赤外域における観測データ値が引かれて算出される。このため、見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ及び赤フィルタにおける分光透過率の曲線は、従来の青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタ、赤のカラーフィルタの分光透過率の曲線において、赤外域が抑制(カット)された状態となる。
【0109】
したがって、本実施の形態に係る撮像素子1においては、赤外線カットフィルタを省略でき、薄くすることができる。また、吸収型の赤外線カットフィルタを配設した場合に生じる赤の感度低下を防止することができ、赤の色再現性を向上させることができる。
【0110】
以下で本実施の形態に係る撮像素子1と従来の撮像素子とを比較して説明する。
【0111】
図6は、従来の撮像素子の実際の分光特性の例を示すグラフである。従来の撮像素子の分光特性は、受光素子の感度と、この受光素子の光入射側に配置されているフィルタの透過率とを掛け合わせた積の値と等価と考えられる。
【0112】
この図6に示すように、従来の撮像素子における青のカラーフィルタは、透過率が他の緑及び赤のカラーフィルタよりも低く、また、青の波長域における受光素子の感度は他の緑及び赤の波長域における感度よりも低い。このため、従来の撮像素子において、感度比で、青/緑は赤/緑より小さくなりすぎ、色再現性が低下するという問題がある。
【0113】
これに対して、本実施の形態における撮像素子1は、3原色である青、緑、赤のカラーフィルタに代えて、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkを備えている。
【0114】
このため、本実施の形態における撮像素子1の分光特性は、受光素子の感度と、この受光素子の光入射側に配置されている透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkの透過率とを掛け合わせた積の値と等価と考えられる。
【0115】
透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2Rの透過率は、青のカラーフィルタや緑のカラーフィルタよりも高い。したがって、この透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y
、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blk経由で入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkにより観測された観測データ値Dw、Dy、Dr、Dblkに基づいて算出された観測データ値Db、Dg、HDrは、高い透過率により得られた観測結果といえる。
【0116】
特に、青の観測データ値Dbについては、高い光強度で観測されたことと同等となり、青/緑の感度比を大きくすることができ、色再現性を向上させることができる。
【0117】
さらに、本実施の形態では、青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrを、引き算という簡単な演算を一回行うのみで求めることができる。したがって、従来の補色系のカラーフィルタを用いた撮像素子よりも演算を簡略化することができ、原色に近い鮮やかな色を表現できる。
【0118】
従来の撮像素子においては、赤外域の光まで受光素子が観測し、観測結果の精度が低下する場合があった。
【0119】
これに対して、本実施の形態では、入射光受光素子3Wの観測データ値Dw、黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Drから、それぞれ黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Dr、補正受光素子3Blkの観測データ値Dblkを引き算するため、各受光素子における赤外域の観測結果が相殺(除去)され、赤外域における観測結果の影響を軽減した青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrを得ることができ、撮像素子の構成から赤外線カットフィルタを削除し、薄型化を図ることができる。
【0120】
上記図6に示すように、受光素子は、光が入射していない場合であっても、僅かに電流を発生させている。このような光が入射していないにもかかわらず受光素子から流れる電流は、暗電流(dark current)と呼ばれ、ノイズの原因となる。従来の赤、緑、青の3原色のカラーフィルタは、分光特性上、所定の波長域の光を透過し、光を遮断する波長域も存在する。しかしながら、受光素子は、光の遮断される波長域についても暗電流を発生させる。このため、従来の撮像素子の観測結果には、光を透過する波長域における光の観測結果に加えて、暗電流によるノイズも含まれており、このノイズにより色再現性が低下する場合がある。
【0121】
これに対して、本実施の形態に係る撮像素子1は、上述したように、入射光受光素子3Wの観測データ値Dw、黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Drから、それぞれ黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Dr、補正受光素子3Blkの観測データ値Dblkを引き算するため、暗電流の値が相殺され、観測結果からノイズを除去できる。これにより、色再現性を向上させることができる。
【0122】
上記図6に示すように、従来の赤、緑、青のカラーフィルタの分光透過率において、青、赤のカラーフィルタの分光曲線の裾部の透過率は数%と低いが、緑のカラーフィルタの分光曲線の裾部の透過率は10%程度と高くなっている。このように、裾部の透過率が高いことを分光の浮きが大きいという。
【0123】
従来の撮像素子においては、緑のカラーフィルタの分光曲線の裾部が青、赤の波長域に存在し、かつ、緑の裾部の分光は大きいため、緑の観測結果に青、赤が混色することになり、緑の再現性が低下するという問題があった。
【0124】
これに対して、本実施の形態に係る撮像素子1では、上述したように、入射光受光素子
3Wの観測データ値Dw、黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Drから、それぞれ黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Dr、補正受光素子3Blkの観測データ値Dblkを引き算するため、分光の浮きを小さくすることができ、色再現性を向上させることができる。
【0125】
本発明に関わる補正フィルタ2Blkは、図15に示すように、上記図10に示す一般的な吸収型の赤外線カットフィルタと異なり、およそ600nm〜650nm付近の透過率が低いため、演算(引き算)後の赤の演色性をさらに向上させることができる。
【0126】
なお、補正フィルタ2Blkの透過率は、およそ400nm〜550nmの光の波長域及び750nm以降の波長域において、赤のカラーフィルタ(例えば、上記図8に示す透過率特性を有する赤フィルター)の透過率と5%以内の差となるようにすることが好ましい。
【0127】
これにより、赤外線や他の色の影響のない補正された赤の観測データ値HDrを得ることができ、赤の色再現性が向上する。
【0128】
本実施の形態に係る撮像素子1において、補正された赤の観測データ値HDrは、赤の観測データ値Dr−補正用の観測データ値Dblkによって求められる。したがって、補正フィルタ2Blkの光透過率を図16のようにすることにより、補正された赤の観測データ値HDrは、赤外線及び他の色の光から影響を受けることを防止することができる。また、赤の感度が高く、赤の色再現性のよい撮像素子1を得ることができる。
【0129】
また、CMOS、CCDなどの受光素子は、人間の感じない紫外線域にも若干の感度を有する。このため、本実施の形態に係る透明フィルタ2Wは、400nm以下の短波長の光を不透過あるいは低透過とし、主に400nm以降の波長の光を吸収することなく通すことが望ましい。
【0130】
そこで、本実施の形態に係る透明フィルタ2Wに紫外線吸収剤や、樹脂の硬化に用いる光開始剤や硬化剤を添付し、透明フィルタ2Wに紫外線吸収機能を付加してもよい。
【0131】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サルチル酸系化学物、クマリン系化合物を用いることができる。また、紫外線吸収剤に、例えばヒンダードミン系化合物などの光安定化剤、クエンチャーなどを添加して用いてもよい。また、赤外線吸収性化合物や赤外線吸収剤を、透明フィルタ2Wを構成する樹脂に添加してもよく、ペンダント(反応性染料など、反応型赤外線吸収剤などの形で樹脂分子鎖に組み込む)方式により透明フィルタ2Wを構成する樹脂に添加してもよい。
【0132】
あるいは、透明フィルタ2Wの形成に用いる樹脂のポリマーやモノマー、ないし、硬化剤に紫外線吸収性能を有する官能基をペンダントしたり、ポリマーに取り込まれるような基を持たせて重合してもよい。例えば、キノン類、アントラセンをポリマーに導入してもよいし、紫外線吸収性の基をもつモノマーを添加してもよい。
【0133】
以上説明した本実施の形態に係る撮像素子1においては、見かけ上、高透過の青、緑、赤のフィルタを具備した場合と同等の効果を得ることができ、特に従来の撮像素子よりも青、赤の観測精度を向上させることができる。
【0134】
また、本実施の形態に係る撮像素子1においては、人間の可視域ではない赤外域の光の観測結果を削除することができ、人間の視覚に近い撮影結果を得ることができる。
【0135】
また、本実施の形態に係る撮像素子1においては、上記図10に示す透過特性を持つ一般的な吸収型の赤外線カットフィルタを用いる場合と異なり、550nmから650nmの波長領域の光の吸収を緩和させることができるため、赤の演色性を向上させることができる。
【0136】
また、本実施の形態においては、赤の観測データ値Drから補正用の観測データ値Dblkを差し引くことで、赤外線吸収機能を実現している。また、他の色(青、緑)については、それぞれ赤外域の引かれた観測結果が得られる。この結果、従来のカメラモジュールの光学系に備えられていた赤外線吸収型の赤外線カットフィルタを省略することができ、カメラを薄くすることができる。
【0137】
なお、図2の黄フィルタ2Y、補正フィルタ2BLKの形状と同様に、単独で透明フィルタ2Wを形成した後に、各フィルタを被覆するように平坦化層7を形成してもよい。または、図9に示すように、透明フィルタを形成することなく平坦化層を形成し、平坦化層が透明フィルタを兼用することであっても構わない。
【0138】
この場合、透明フィルタ10Wと透明平滑化層との形成工程とを一体化することができ、フィルタの形成において、透明フィルタのパターン形成工程を独自に設ける必要がなく、撮像素子9の製造プロセスを簡略化させることができる。
【0139】
または、図11に示すように、透明フィルタ12Wとマイクロレンズとを一体化させることであっても構わない。その場合、撮像素子11を薄くすることが可能となる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、基本的に第1の実施の形態と同様であるが、補正フィルタを形成する顔料ペーストの顔料構成を下記のようにした。用いた顔料は、以下の3種類とした。また、補正フィルタの膜厚は、1.1μmとした。
Y139;11.3部、R254;4.23部、V23;19.77部
本実施の形態のBlk2の分光特性を、図12に示す。前記したように、Blk2の補正フィルタ用着色樹脂組成物に含まれる顔料構成は、第1の実施の形態の顔料組成(顔料V23と顔料Y139)に顔料R254を、追加した場合の分光透過率特性となる。
【0140】
そして、このような2つの実施の形態の補正フィルタが有するBlk1、Blk2は、光の波長(nm)を横軸とし各波長の光の透過率(%)を縦軸とする分光透過率特性のグラフ上において、波長400nm及び波長550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率の波長範囲が620〜690nm波長700nmの光に対する透過率が70%以上の各条件を満たす。
【0141】
また、この2つの実施の形態の補正フィルタのBlk1、Blk2は、400〜550nmの透過率を低く抑えることができるので、可視波長の光は遮断され、この補正フィルタが取付けられた撮像素子に対する色ノイズの発生が抑制される。
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、入射光のうち受光素子に入射する光を除く他の光の反射を抑制する遮光膜を、基板の入射光の入射側であり受光素子に入射光を入射させる領域を除く他の領域すなわち、受光素子の有効開口部周辺、配線部上、および半導体基板の一部(例えば半導体基板5の外周)に設けた撮像素子について説明する。
【0142】
図13、及び図14は、本実施の形態に係る撮像素子の遮光膜の配置位置の1例を示す正面図、及びA−A’線での断面図である。
【0143】
この図13に示す撮像素子は、フィルタの設置されている有効画素部19の外周部に、
光の反射を抑制する遮光膜15を具備する。なお、撮像素子は外部との電気的接続を取るためのアルミ(Al)パッド16を有するので、アルミ(Al)パッド部には遮光膜は形成していない。また、本実施の形態では配線部の上部にも遮光膜を形成しているが、配線部は図示を省略している。
【0144】
この遮光膜15は、上記各実施の形態で説明した補正フィルタと同じ材質にて、補正フィルタの形成と同時に形成することができる。すなわち、第1の実施の形態で補正フィルタを膜厚1.1μmで形成しているので、遮光膜も膜厚1.1μmで形成している。
【0145】
遮光膜15を、撮像素子の有効画素部19の外周部に配設することは、撮像素子の観測結果がノイズの影響を受けることを防ぐことができ、画質を高めることができる点で有効である。特に、遮光膜15として上記各種の補正フィルタと同じ材料を用いることで、可視光波長域の光をカットすることができ、撮像素子周辺の迷光を減少させることができる。また、本発明の遮光膜は可視光を遮断する性能に優れるため、膜厚を例えば1.1μmと1μm程度で十分な遮光性を有している。
【0146】
従来の撮像素子においては、受光素子以外の部分に入射した光が撮像素子内で迷走し、迷光となる場合がある。この迷光は、その後受光素子に入射するとノイズとなる。また、受光素子の周辺領域に不要な光が入射するとノイズの原因となる。
【0147】
しかしながら、本実施の形態においては、受光素子の有効開口部周辺や、半導体基板の一部(例えば半導体基板の外周)に、可視光波長域において透過抑制特性を持つ遮光膜15を配置しているため、この遮光膜15により、受光素子を除く他の部分に入射した光が吸収される。
【0148】
これにより、受光素子に迷光及び不要な光が入射することを防止することができ、ノイズを低減させることができ、撮像素子によって得られる画質を向上させることができる。特に、遮光膜15として補正フィルタを用いた場合、可視光波長域の光をカットでき、撮像素子の周辺で発生する迷光を減少させることができ、受光素子周辺からのノイズ発生を軽減できる。
【0149】
なお、遮光膜15として補正フィルタを用いた場合、この遮光膜15は、赤外域の光及び紫外域の光を透過する。そのため、赤外線及び紫外線によるノイズを防止するため、遮光膜上に赤外線及び紫外線を吸収する膜を積層しても構わない。積層する赤外線及び紫外線を吸収する膜には、マイクロレンズ8の形成に用いる透明樹脂に赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤を添加した樹脂を用いることにより、材料費を軽減させることができる。これにより、受光素子3ではない部分に入射した赤外線及び紫外線が迷走し、迷光となり、ノイズが発生することも防止することができる。
【符号の説明】
【0150】
1、9、11…撮像素子、2…フィルタ層、2W,10W,12W…透明フィルタ、2Y…黄フィルタ、2R…赤フィルタ、2Blk…補正フィルタ、2V…バイオレットのフィルタ、3…受光素子、3W…入射光受光素子3W、3Y…黄受光素子、3R…赤受光素子、3Blk…補正受光素子、4…演算部、4B…青演算部,4G…緑演算部、4R…赤演算部、5…半導体基板、6…平坦化層、7…樹脂層、8…マイクロレンズ、15…遮光膜、16…パッド、19…撮像素子の有効画素部
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子を具備する撮像素子に関し、特に、受光素子の光入射側にカラーフィルタを配置し、観測対象の色成分の観測を可能とし、色バランスと色再現性がよい撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子(イメージセンサー)として、デジタルカメラ、ビデオカメラなどで用いられる二次元イメージセンサー、または、ファクシミリや複写機で用いられるリニアイメージセンサーなどの一次元イメージセンサーがあげられる。
撮像素子に具備される例えばCMOSやCCDなどの受光素子(光電変換素子)は、素子に入射した光を電気信号に変換する。受光素子は、人間の視覚感度域である可視光波長域(例えば、400nm〜700nmの波長域)外の領域でも高い感度を有し、特に、可視光波長域より長波長側の波長域(以下、「赤外域」という。例えば、700nm〜1100nmの波長域)についても高い感度を有する。
【0003】
各受光素子の光入射側には、入射光から特定の色成分を抽出する色分離を行うために3原色(あるいは補色)の有機カラーフィルタが設置される。受光素子は、入射光を有機カラーフィルタ経由で受ける。入射光は有機カラーフィルタによって色分離されるため、観測対象とされている色成分が受光素子によって観測される。
【0004】
受光素子は、入射した光の色の判別を行うことはなく、入射した光をこの光の強さに応じた電気信号に変換し、入射した光の明るさを検知するのみである。このため、受光素子の光入射側に、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の有機カラーフィルタが備えられる。有機カラーフィルタは、撮影対象からの光を色分離して特定の光を取り出す。赤、緑、青の各カラーフィルタを通過した光は、各カラーフィルタに対向する受光素子に入射され、この各受光素子で電気信号に変換される。光電変換により得られた出力値(通常、電圧値)を合成することにより、撮影対象をカラー画像として再現させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、有機カラーフィルタには赤外域の光(赤外光)のカット機能がないため、人間の視覚感度域外(例えば700nmより長波長側)の光が受光素子に入射される場合がある。このため、撮像素子で得られる撮影対象の色は、人間が目視で観察した撮影対象の色と異なる場合があるという問題がある。
【0006】
このような人間の視覚感度域外の光により影響を受ける色分離を避けるため、赤外線カットフィルタが用いられる。すなわち、赤外線カットフィルタで、入射光から赤外域の光をカットする。しかる後、赤外域をカットされた光を各カラーフィルタに入射させ、赤外域の影響を削減する。
【0007】
図7は、人間の視覚感度、受光素子の感度(SPD感度)、受光素子の感度に対して好ましい赤外域カットフィルタの透過率の関係の例を示すグラフである。
【0008】
受光素子の感度は、赤外域にも広がっている。このため、赤外線カットフィルタにより、受光素子の赤外域の観測を抑制することにより、人間の視覚感度に近い測定が可能となる。すなわち、赤外線カットフィルタで図7中の斜線部の光をカットすれば、受光素子は人間の視覚感度に近い測定が可能となる。
【0009】
赤外線カットフィルタには、反射型と吸収型の2種類がある。
【0010】
図10は、反射型の赤外線カットフィルタと吸収型の赤外線カットフィルタにおける光の波長と透過率との関係の例を示すグラフである。
【0011】
反射型の赤外線カットフィルタは、例えば、ガラス板上に無機多層膜を形成して構成される。無機多層膜による反射型の赤外線カットフィルタは、フィルタ面に垂直な方向の入射光に対して高い赤外線のカット機能を持つが、斜め入射などの角度のついた赤外線に対しては十分なカット機能を実現することが困難である。
【0012】
吸収型の赤外線カットフィルタは、染料又は銅イオンによる光の吸収を利用して赤外線を吸収する。なお、一般的な吸収型の赤外線カットフィルタは、無機ガラス等の基材に銅イオンなどの金属イオンや有機顔料を入れて構成される。
【0013】
ここで、反射型の赤外線カットフィルタと吸収型の赤外線カットフィルタとを比較すると、吸収型の赤外線カットフィルタの方が反射型の赤外線カットフィルタよりも安価である。また、上述したように、吸収型の赤外線カットフィルタの方が反射型の赤外線カットフィルタよりも角度のついた入射光の赤外線カット性能がよい。
【0014】
このため、一般的に、吸収型の赤外線カットフィルタの方が反射型の赤外線カットフィルタよりも使用される傾向にある。
【0015】
また、無機多層膜による反射型の赤外線カットフィルタのカット機能を補い、赤外線の斜め入射又は再入射の影響を低減させる目的で、吸収型の赤外線カットフィルタと無機多層膜による反射型の赤外線カットフィルタとが併用される場合がある。
【0016】
しかしながら、吸収型の赤外線カットフィルタと反射型の赤外線カットフィルタとを併用すると、構造が複雑になるため、吸収型の赤外線カットフィルタのみを用いることが一般的である。
【0017】
一般的な撮像素子においては、撮影対象からの光を観測するために、受光素子の光入射側にレンズ等からなる光学系を具備する。上述した赤外線により観測結果が影響を受けることを防止するために、撮像素子の光学系に赤外線カットフィルタを挿入する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0018】
特許文献1では、赤色光と緑色光との境界および/または緑色光と青色光との境界における特定の波長域の光を選択的にカットすることによって色純度を補正する機能を有し、さらに赤外線をカットする機能を有する色純度補正フィルタを具備する固体撮像素子について説明されている。
【0019】
また、特許文献2では、赤外光域の透過率を大幅に減少させ可視光波長域の光を透過させる赤外線吸収剤が配合されて赤外カット能力が付与され、撮像素子本体前面に分光フィルタが配設されているカラー撮像素子について説明されている。
【0020】
上述したように、この特許文献1及び特許文献2では、CMOSやCCDなどのような受光素子の全体を覆う形で、赤外線カットフィルタが光学系に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2000−19322号公報
【特許文献2】特開昭63−73204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
吸収型の赤外線カットフィルタにおいては、赤外線の吸収性を充分に持たせるために、厚みが1〜3mm程度となる。吸収型の赤外線カットフィルタを撮像素子に用いる場合、この吸収型の赤外線カットフィルタの厚みのため、光学系を含めた撮像素子の小型化は困難である。
【0023】
また、吸収型の赤外線カットフィルタを用いる場合、カメラ部材として、レンズ系に赤外線カットフィルタを組み込む工程が必要となり、製造コスト削減が困難となる。
【0024】
上記特許文献1及び特許文献2の撮像素子は、撮像素子本体の前面全体を覆う赤外線カットフィルタを備える。このため、撮像素子に備えられている全ての受光素子に対して赤外線がカットされ、受光素子による観測と人間の視覚感度とで差が生じる場合がある。
【0025】
例えば、特許文献2では、この特許文献2の図2及び図10に示すように、赤外線カットフィルタが人間の可視光波長域550nm〜700nmの光も吸収してしまう。このため、撮像素子に備えられている全ての受光素子に対して赤外線をカットすると、緑の感度、特に赤の感度が低下する場合がある。
【0026】
近年、撮像素子については、多画素化の要求が高まっており、画素の微細化が進んでいる。微細画素になると、一画素当たりの面積が小さくなるため受光素子に入射する光の量が減少し、受光素子の感度が低下し、画質が低下する(暗い画像となる)場合がある。そのため、受光素子に入射する光の集光性を上げるためカラーフィルタの上方にマイクロレンズを形成する技術が提案されている。
【0027】
前述のように、観測対象から来た光を色分離するために、受光素子の光入射側には、赤、緑、青の3原色のカラーフィルタが配設されている。
【0028】
図8は、赤、緑、青の3原色のカラーフィルタの分光透過率の一例を示すグラフである。この図8のグラフに示すように、青、緑の透過率の頂点部は80%前後の値となっている。カラーフィルタの透過率が低いと、その分、受光素子に到達する光量が減ることになり、画質の低下(暗い画像)を進めることになる。
【0029】
上記図7に示すCMOSやCCDなどの受光素子の分光感度(SPD感度)において、受光素子は、光の波長でおよそ400nm〜1000nmの広い感度領域を持っている。しかし、上記図7に示すように、受光素子は、赤の波長域(700nm)付近で高い感度を有するが、短波長域に行くにつれ感度が低下している。青の波長域(400nm〜500nm)付近では、赤の半分程度の感度となる。
【0030】
上記図8の赤、緑、青のカラーフィルタの分光透過率を示すグラフでは、青のカラーフィルタの透過率は、緑、赤のカラーフィルタの透過率より低くなっている。
【0031】
以上の観点から、赤、緑、青の3原色のカラーフィルタを有する撮像素子では、青領域において受光素子の感度が低く、かつ、赤や緑のカラーフィルタの透過率よりも、青のカラーフィルタの透過率の方が低いことが分かる。このため、従来の撮像素子では、緑、赤よりも青の感度が低くなり、色全体として見た場合の色バランスを厳密に再現することが困難となる。
【0032】
また、上記図10の吸収型の赤外線カットフィルタの分光透過率に示すように、吸収型の赤外線カットフィルタは、およそ550nm〜700nmの可視光波長域においても光を吸収する領域を持つ。すなわち、吸収型の赤外線カットフィルタの透過率は、550nm〜700nmの可視光波長域で徐々に低くなる。この550nm〜700nmの可視光波長域は、緑、赤の光域に相当する。したがって、吸収型の赤外線カットフィルタを撮像素子に用いた場合、特に、赤の感度が低下するという問題がある。すなわち、吸収型の赤外線カットフィルタにより赤外線のカットを行う撮像素子では、青のみではなく赤の色再現性も損なわれる場合がある。
【0033】
一方、従来より、受光素子への光量の低下に対応するため、黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)からなる補色系のカラーフィルタを用いる技術が提案されている。
【0034】
黄(Y)のカラーフィルタを用いることで、赤と緑との合成光を取り出すことができる。マゼンタ(M)のカラーフィルタを用いることで、赤と青との合成光を取り出すことができる。シアン(C)のカラーフィルタを用いることで、緑と青との合成光を取り出すことができる。
【0035】
補色系のカラーフィルタは、各々2色ずつの光を透過するため、透過率が高くなる。
【0036】
しかし、黄、マゼンタ、シアンの補色系のカラーフィルタを透過した光から青、緑、赤の3原色の光を取り出すには、例えば青=(シアン+マゼンタ−黄)/2、緑=(シアン+黄−マゼンタ)/2、赤=(マゼンタ+黄−シアン)/2などのように、補色系のカラーフィルタを経由し、受光素子で観測された各値から赤、緑、青の3原色に相当する値を算出するための煩雑な計算を行う必要があるため、原色に近い鮮やかな色を表現することが困難な場合がある。
【0037】
また、撮像素子においては、受光素子の周囲には、受光素子で発生した電気信号を転送する配線が配置されているが、その配線に不要な光があたるとノイズが発生することがある。また、受光素子以外の部分に入射した光が撮像素子内で迷走し、迷光となる場合がある。この迷光は、その後受光素子に入射するとノイズとなる。
そのため、受光素子に入射すべき光以外の不要な光によるノイズを防止するため、受光素子の有効開口部周辺、配線部の上部、および半導体基板の一部(例えば受光素子を形成した半導体基板の外周)に、遮光膜を形成する場合がある。
【0038】
遮光膜は半導体デバイスの形成時に金属薄膜などで形成することも可能であるが、製造コスト、製造の容易性などを考慮し、受光素子の上部にカラーフィルタを形成する際に、カラーフィルタと同じ材料、工程にて形成することが一般的となっている。しかし、単色のカラーフィルタで形成した遮光膜では完全に光を遮断できないことが多い。その場合は、2色、3色のカラーフィルタを積層しなければならない。
【0039】
ここで、カラーフィルタは0.7μm〜1μm程度の膜厚を有するため、遮光膜を複数色のカラーフィルタの積層で形成すると、遮光膜の膜厚が例えば1.5μm〜2μmと厚くなる。なお、主顔料にチタンやカーボンを用いた黒色層で遮光膜を形成することもあるが、この黒色層であっても、例えば400nm〜570nmの可視光の透過を5%以下に抑えるためには、少なくとも1.5μm程度の膜厚が必要である。
【0040】
遮光膜の膜厚が厚くなると、マイクロレンズを形成した撮像素子において、マイクロレンズが十分な集光性を発揮できなくなり感度が低下するという問題が生じるといえる。なぜならば、遮光層の膜厚が厚いと、カラーフィルタと遮光膜との上部に形成する平坦化層の膜厚も厚くせざるを得ず、その分、平坦化層上に形成したマイクロレンズと受光部まで
の距離が長くなり、マイクロレンズが取り込める光が限定されるためである。
【0041】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、色バランスと色再現性とがよく、薄い撮像素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23とC.I.ピグメントイエロー139との各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成されたことを特徴とする撮像素子である。
【0043】
また、本発明は、入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23と、C.I.ピグメントイエロー139と、C.I.ピグメントレッド254の各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成したことを特徴とする撮像素子である。
【0044】
また、本発明は、上記発明による撮像素子において、前記受光素子は、
1)前記入射光を前記透明フィルタ経由で観測する入射光受光素子と、前記入射光を前記黄フィルタ経由で観測する黄受光素子と、前記入射光を前記赤フィルタ経由で観測する赤受光素子と、前記入射光を前記補正フィルタ経由で観測する補正受光素子とを含み、
2)前記入射光受光素子で観測された観測結果から、前記黄受光素子で観測された観測結果を引き算し、青の観測結果を求める演算手段と、前記黄受光素子で観測された観測結果から、前記赤受光素子で観測された観測結果を引き算し、緑の観測結果を求める演算手段と、前記赤受光素子で観測された観測結果から、前記補正受光素子で観測された観測結果を引き算し、補正された赤の観測結果を求める演算手段とをさらに具備することを特徴とする撮像素子である。
【0045】
また、本発明は、上記発明による撮像素子において、前記補正フィルタと同じ材質から
なる遮光膜を、前記入射光の入射側であり、前記受光素子に前記入射光を入射させる領域を除いた領域に設けたことを特徴とする撮像素子である。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、青の感度の低下を抑制することができる。また、本発明では、有機顔料の組み合わせで補正フィルタの分光特性を調整できる。そのため、従来の赤外線カットフィルタを用いた場合に発生していた問題、すなわち、赤外線カットフィルタが人間の可視光波長域550nm〜700nmの光も吸収してしまい、緑および赤の感度が低下し、色再現性が低下するという問題を解決出来き、観測結果の色バランスを向上させることができる。
【0047】
本発明では、レンズなどを含む光学系厚みが増すことを防止することができ、撮像素子を小型化、薄型化させることができる。
【0048】
本発明においては、受光素子の有効開口部周辺、配線部上部及び、半導体基板の一部(
例えば半導体基板の外周)に、可視光を遮断する性能に優れた遮光膜を配置している。そのため、この遮光膜により、受光素子を除く他の部分に入射した光が吸収され、また、受光素子に迷光及び不要な光が入射することを防止することができ、ノイズを低減させることができ、撮像素子によって得られる画質を向上させることができる。
【0049】
また、本発明の遮光膜は可視光を遮断する性能に優れるため、膜厚を例えば1.1μmと1μm程度に薄くすることが可能となる。そのため、平坦化膜を介してマイクロレンズを形成した撮像素子であっても、平坦化膜の膜厚を薄く出来、その結果、マイクロレンズと受光素子との距離を短くすることが出来る。そのためマイクロレンズは十分な集光性を発揮でき、撮像素子の感度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる撮像素子におけるフィルタの配列状態の一例を示す正面図である。
【図2】第1の実施の形態に係わる撮像素子の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わるカラーフィルタの配列の一例を示す正面図である。
【図4】透明フィルタ、黄フィルタ、赤フィルタ、補正フィルタについての分光透過率の一例を示すグラフである。
【図5】第1の実施の形態に係わる撮像素子の演算によって得られる見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタについての分光透過率の一例を示すグラフである。
【図6】従来の撮像素子の実際の分光特性の例を示すグラフである。
【図7】人間の視覚感度、受光素子の感度、受光素子の感度に対して好ましい近赤外域カットフィルタの透過率の関係を示すグラフである。
【図8】赤、緑、青の三原色のカラーフィルタの分光透過率の一例を示すグラフである。
【図9】第2の実施の形態に係わる撮像素子の一例を示す断面図である。
【図10】反射型の赤外線カットフィルタと吸収型の赤外線カットフィルタにおける光の波長と透過率の関係の例を示すグラフである。
【図11】第3の実施の形態に係わる撮像素子の一例を示す断面図である。
【図12】第2の実施の形態に係わる補正フィルタの分光透過率特性の説明図である。
【図13】第3の実施の形態に係わる撮像素子の遮光膜の配置位置の1例を示す正面図である。
【図14】第3の実施の形態に係わる撮像素子の遮光膜の配置位置の1例を示す断面図である。
【図15】第1の実施の形態に係わる補正フィルタの分光透過率特性の説明図である。
【図16】補正フィルタの分光透過率特性の分光特性の一例を示す説明図である。
【図17】RGB表色系の等色関数である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において同一の要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、CMOSやCCDなどの受光素子を具備し、特に、受光素子の光入射側にフィルタ層を設け、観測対象の色成分を観測する撮像素子について説明する。
【0053】
図1は、本実施の形態に係る撮像素子におけるフィルタの配列状態の一例を示す正面図である。この図1では、光入射側からみたフィルタの状態の例が表されている。図3は、本発明に関わるカラーフィルタの配列の一例を示す正面図である。
【0054】
図2は、本実施の形態に係る撮像素子の一例を示す断面図である。この図2では、上記図1のI−I断面が表されている。なお、この図2では、受光素子がCCDの場合を例として図示しているが、受光素子がCMOSの場合も同様である。以下、撮像素子の他の断面図においても同様である。
【0055】
本実施の形態に係る撮像素子1は、入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタ層2と、入射光をフィルタ層2経由で観測する受光素子3W、3Y、3R、3Blkと、演算部4を具備する。
【0056】
フィルタ層2は、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkを含む。それぞれ一つずつの透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkにより色分離の一単位が形成される。透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkは、マス目状に隣接配列されることにより面を形成する。これにより、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkが適切に配置される。
【0057】
透明フィルタ2Wは、主に400nm以降の長波長の光を吸収することなく、透過することが望ましい。例えば、透明フィルタ2Wとしては400nm以降の長波長の光の透過率が95%以上のフィルタが望ましい。
なお、本発明で示す透過率の値は、屈折率nが約1.5の透明ガラスをリファレンス(100%)としている。
また、紫外線によるノイズを防止して青の観測データを向上させるため、透明フィルタ2Wに400nmより短波長域の紫外線吸収機能を持たせることは好ましい。そのため、透明フィルタ2Wに紫外線吸収剤を添加することは好ましいといえる。
【0058】
黄フィルタ2Yは、入射光のうち黄成分(赤成分と緑成分が合成された光)の抽出に用いられるフィルタである。この黄フィルタ2Yは、補色系のフィルタである。一般的に、補色系のフィルタは、赤、緑、青の3原色系のカラーフィルタよりも光の透過率が高い。
【0059】
赤フィルタ2Rは、入射光のうち赤成分の抽出に用いられる赤のカラーフィルタである。一般的に、赤のカラーフィルタは、3原色系の他のカラーフィルタである青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタよりも透過率が高い。
【0060】
補正フィルタ2Blkは、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有するフィルタであり、赤外域の透過率の方が可視光波長
域の透過率よりも高い特性を持つ。具体的には、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率の波長範囲が620nm〜690nmであり、波長700nmの光に対する透過率が70%以上としている。
【0061】
本発明に関わる補正フィルタ2Blkは、基本的に可視光波長域400nm〜700nmで低透過率とし、目視で黒に近いことが好ましく、逆に波長700nm以降の赤外域を含む長波長域は高い透過率が必要である。
【0062】
また、後述するように、本発明の眼目は補正フィルタ2Blkに赤外透過フィルタ機能を付与して受光素子の出力値から演算(引き算)して実効的に赤外カット機能を持たせることにある。通常用いられる赤外カットフィルタ(図10の吸収型参照) の吸収が550nm付近から始まる。そのため、本発明においては赤外カットを行う手段となる補正フィルタ2Blkの透過域の立ち上がりは最短の光の波長で550nmを考慮することになる。従って、補正フィルタ2Blkの低透過(透過率5%以下)の範囲は400nm〜700nmとしている。
【0063】
前述したように、本発明に関わる補正フィルタ2Blkは、赤外カット機能のための演算処理を前提として波長550nm以降で、赤及び、近赤外域の方向に透過特性を付与する。この場合に、人間の視感度を前提に計算されたRGB表色系の等色関数(図17)の原刺激[R]は、600nm付近をピークに700nmに向けてダウンする形状である。
【0064】
従って、補正フィルタ2Blkの分光透過率特性は、600nm付近から立ち上がり、700nm付近から高い透過率になる形状が好ましい。ゆえ、その分光透過率特性の50%透過率の波長範囲(半値の範囲)は、620nm〜690nmであることが望ましい。補正フィルタ2Blkは、可視光波長域で透過抑制特性(低透過特性)を持つとしているため、目視では黒(Black)に見える。
【0065】
本実施の形態において、補正フィルタ2Blkは、少なくともC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントイエロー139の各顔料を含む着色樹脂組成物で形成される。または、少なくともC.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド254の各顔料を含む着色樹脂組成物で形成される。
【0066】
受光素子である入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkは、フィルタ層2の光入射側の反対側に配置され、受けた光を電気信号に変換し、観測データ値を求める。
【0067】
入射光受光素子3Wは、透明フィルタ2Wに対応付けされており、入射光を透明フィルタ2W経由で観測する。
【0068】
黄受光素子3Yは、黄フィルタ2Yに対応付けされており、入射光を黄フィルタ2Y経由で観測する。
【0069】
赤受光素子3Rは、赤フィルタ2Rに対応付けされており、入射光を赤フィルタ2R経由で観測する。
【0070】
補正受光素子3Blkは、補正フィルタ2Blkに対応付けされており、入射光を補正フィルタ2Blk経由で観測する。
【0071】
受光素子とフィルタとの一対一の組み合わせが、画素に相当する。
【0072】
演算部4は、青演算部4B、緑演算部4G、赤演算部4Rを具備する。この演算部4は、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkによる観測データ値Dw、Dy、Dr、Dblkに基づいて、青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrを求める機能を持つ。
【0073】
青演算部4Bは、入射光受光素子3Wで観測された観測データ値Dwから、黄受光素子3Yで観測された観測データ値Dyを引き算し、青の観測データ値Db(=Dw−Dy)を求める。
【0074】
緑演算部4Gは、黄受光素子3Yで観測された観測データ値Dyから、赤受光素子3Rで観測された観測データ値Drを引き算し、緑の観測データ値Dg(=Dy−Dr)を求める。
【0075】
赤演算部4Rは、赤受光素子3Rで観測された観測データ値Drから、補正受光素子3Blkで観測された観測データ値Dblkを引き算し、補正された赤の観測データ値HDr(=Dr−Dblk)を求める。
【0076】
なお、上記図2では、赤フィルタ2Rと補正フィルタ2Blkとを横断するとともに、赤受光素子3Rと補正受光素子3Blkとを横断する断面が表されている。しかしながら、他のフィルタ、他の受光素子を横断する断面についても同様の構成とする。
【0077】
半導体基板5の光入射側には、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkが形成、配設される。
【0078】
図2に示すように、本実施の形態では、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkの形成された半導体基板5の光入射側の面には、平坦化層6が積層される。これにより、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkを平坦な設置面に形成できる。なお、撮像素子1を薄くするために、平滑化層6は省略されてもよい。
【0079】
平坦化層6の光入射側には、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkにそれぞれ対応する透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkが配置され、フィルタ層2が形成される。
【0080】
フィルタ層2の光入射側には、樹脂層(透明平滑化層)7が積層される。
【0081】
樹脂層7の光入射側には、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkに対応するマイクロレンズ8が樹脂層7上に備えられる。マイクロレンズ8は、各透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkと対をなすように、各透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkの上方に配置されている。マイクロレンズ8は、アクリル樹脂などにより形成され、入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkへの集光性を高める。
【0082】
本実施の形態において、各フィルタの膜厚は、それぞれ1.0μm〜1.1μm、画素ピッチ(透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkのピッチ)は2.6μmとした。
【0083】
平坦化層6は、紫外線吸収剤を添加した熱硬化型のアクリル樹脂によって形成され、膜
厚は、0.3μmとした。ここで、平坦化層6に対して紫外線吸収剤が添加されるとしたのは、フォトリソグラフィー法によりカラーフィルタを形成する際に、下地となる半導体基板5からのハレーションを防止することにより、形状のよいフィルタを形成するためである。
【0084】
なお、本実施の形態では、平坦化層6を形成するとしているが、撮像素子をさらに薄くすることを目的として、平坦化層6を省略してもよい。
【0085】
本実施の形態において、透明フィルタ2Wは、アルカリ可溶型の感光性アクリル樹脂(屈折率n=1.55)にて、膜厚約1μmで形成されている。
【0086】
黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkは、透明樹脂に色素(顔料、染料)を添付した着色感光性樹脂溶液を用いて形成される。なお、透明フィルタ2Wは、着色物を添加しない透明樹脂で形成されるとしてもよい。
【0087】
本実施の形態において、色フィルタである黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkは、透明フィルタ2Wの形成に用いられた透明樹脂(例えば、感光性アクリル樹脂)に、所定の有機顔料を添加、分散させた着色感光性樹脂で形成される。
【0088】
なお、黄フィルタ2Yの形成に用いられる有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー150が用いられる。
【0089】
赤フィルタ2Rの形成に用いられる有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177と、C.I.ピグメントレッド48:1と、C.I.ピグメントイエロー139との混合が用いられる。
【0090】
補正フィルタ2Blkの形成に用いられる補正フィルタ用着色樹脂組成物は、下記に示す3種類の有機顔料を用いている。
C.I(カラーインデックス).ピグメントレッド254(以下、R254と略記する)、
C.I.ピグメントイエロー139(以下、Y139と略記する)、
C.I.ピグメントバイオレット23(以下、V23と略記する)。
【0091】
なお、この3種類の有機顔料のうち、R254の顔料を除くこともできる。さらに、この3種類の有機顔料の他に、色(透過波長)調整用に微量の他の種類の顔料を付加することが可能である。
【0092】
補正フィルタ用着色樹脂組成物に含まれる3種類の有機顔料(R254、Y139、V23)の重量比率(%)は、それぞれ、R254=0〜15%、Y139=30〜40%、V23=55〜65%である。
【0093】
なお、補正フィルタ用着色樹脂組成物は、前述したように、各有機顔料の他に、樹脂、溶液が含まれる。例えば、有機顔料Y139単体を分散させるためには、顔料R139、7部(重量部)に対して以下のものが含まれる。
アクリル樹脂溶液(固形分20%) 40部
分散剤 0.5部
シクロヘキサノン 23.0部
また、有機顔料V23も有機顔料R254と同じ溶液を用いて分散する。
【0094】
補正フィルタは、前述したように、各有機顔料を混合して分散させて樹脂で固定したも
のであるが、実施の形態の補正フィルタの具体的製造法を説明する。
【0095】
前述した2種類の各有機顔料Y139、V23の顔料ペーストを、前述した重量比率の各重量分準備する。
Y139;14.70部、V23;20.60部
アクリル樹脂溶液;14.00部
アクリルモノマー;4.15部
開始剤;0.7部
増感剤 ; 0.4部
シクロヘキサノン ; 27.00部
PGMAC ; 10.89部
を混合して補正フィルタ用着色樹脂組成物とする。
【0096】
そして、この補正フィルタ用着色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて、乾燥膜厚が1.1μmとなるように塗膜形成する。次に、ホットプレート上で70℃、1分間乾燥する。次に、i線ステッパーを用いて、5μmの画素パターンが形成できるマスクを介して露光を行う。なお、露光感度は1000mj/cm2である。
【0097】
次に、有機アルカリ水溶液を用いて、スピンをさせながらシャワー方式にて60秒間現像する。純水による十分なリンスの後、スピンにより水を振切り、乾燥させる。次に、ホットプレート上で220℃、6分間の熱処理を行い、画素パターンを硬膜させ、厚さ1.1μmの補正フィルタを得る。
【0098】
残る黄フィルタ2Y、および赤フィルタ2Rは、公知のフォトリソ法を用い、同様に形成した。
【0099】
なお、各フィルタ用着色樹脂組成物に含まれる各有機顔料を固定する担体は、前述したアクリル樹脂のように、透明樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の樹脂である。
【0100】
透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および活性エネルギー線硬化性樹脂が含まれ、その前駆体には、活性エネルギー線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0101】
このように製造された補正フィルタの分光透過率特性を図15を用いて説明する。実施の形態の補正フィルタの分光透過率特性は、図15のBlk1に示すように、波長400nm及び波長550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率となる波長の位置が620〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上である。
【0102】
図4は、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkについての分光透過率の一例を示すグラフである。
なお、図4に示すように本発明に関わるフィルタは、短波長域で低透過率であり、中波長域で透過率が立ち上がり、長波長域で高い透過率となる、略S字状の分光特性曲線を有するものを使用するのが好ましい。
【0103】
撮像素子1は、各受光素子による観測データ値Dw、Dy、Dr、Dblkに基づいて演算(引き算)を行い、青、緑、補正された赤の3原色の観測データ値Db、Dg、HD
rを得る。
【0104】
すなわち、撮像素子1は、この演算を行うことにより、見かけ上(仮想的に)、青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタを具備していると考えることができる。
【0105】
図5は、撮像素子1の演算によって得られる見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタについての分光透過率の一例を示すグラフである。
【0106】
この図5に示す撮像素子1の見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタの分光透過率と、上記図8に示す従来の青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタ、赤のカラーフィルタの分光透過率とを比較すると、撮像素子1の見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ、赤フィルタの分光透過率には以下の特徴がある。
【0107】
すなわち、撮像素子1の見かけ上の青フィルタ、緑フィルタの透過率は、それぞれの色の波長域において、従来の青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタよりも透過率が高いという特徴を持つ。特に、見かけ上の青フィルタの透過率は、青の波長域において、従来の青のカラーフィルタより透過率が高くなる。このため、撮像素子1では、青の感度が向上し、色バランスが改善される。
【0108】
また、撮像素子1により得られる青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrは、それぞれ赤外域における観測データ値が引かれて算出される。このため、見かけ上の青フィルタ、緑フィルタ及び赤フィルタにおける分光透過率の曲線は、従来の青のカラーフィルタ、緑のカラーフィルタ、赤のカラーフィルタの分光透過率の曲線において、赤外域が抑制(カット)された状態となる。
【0109】
したがって、本実施の形態に係る撮像素子1においては、赤外線カットフィルタを省略でき、薄くすることができる。また、吸収型の赤外線カットフィルタを配設した場合に生じる赤の感度低下を防止することができ、赤の色再現性を向上させることができる。
【0110】
以下で本実施の形態に係る撮像素子1と従来の撮像素子とを比較して説明する。
【0111】
図6は、従来の撮像素子の実際の分光特性の例を示すグラフである。従来の撮像素子の分光特性は、受光素子の感度と、この受光素子の光入射側に配置されているフィルタの透過率とを掛け合わせた積の値と等価と考えられる。
【0112】
この図6に示すように、従来の撮像素子における青のカラーフィルタは、透過率が他の緑及び赤のカラーフィルタよりも低く、また、青の波長域における受光素子の感度は他の緑及び赤の波長域における感度よりも低い。このため、従来の撮像素子において、感度比で、青/緑は赤/緑より小さくなりすぎ、色再現性が低下するという問題がある。
【0113】
これに対して、本実施の形態における撮像素子1は、3原色である青、緑、赤のカラーフィルタに代えて、透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkを備えている。
【0114】
このため、本実施の形態における撮像素子1の分光特性は、受光素子の感度と、この受光素子の光入射側に配置されている透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blkの透過率とを掛け合わせた積の値と等価と考えられる。
【0115】
透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y、赤フィルタ2Rの透過率は、青のカラーフィルタや緑のカラーフィルタよりも高い。したがって、この透明フィルタ2W、黄フィルタ2Y
、赤フィルタ2R、補正フィルタ2Blk経由で入射光受光素子3W、黄受光素子3Y、赤受光素子3R、補正受光素子3Blkにより観測された観測データ値Dw、Dy、Dr、Dblkに基づいて算出された観測データ値Db、Dg、HDrは、高い透過率により得られた観測結果といえる。
【0116】
特に、青の観測データ値Dbについては、高い光強度で観測されたことと同等となり、青/緑の感度比を大きくすることができ、色再現性を向上させることができる。
【0117】
さらに、本実施の形態では、青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrを、引き算という簡単な演算を一回行うのみで求めることができる。したがって、従来の補色系のカラーフィルタを用いた撮像素子よりも演算を簡略化することができ、原色に近い鮮やかな色を表現できる。
【0118】
従来の撮像素子においては、赤外域の光まで受光素子が観測し、観測結果の精度が低下する場合があった。
【0119】
これに対して、本実施の形態では、入射光受光素子3Wの観測データ値Dw、黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Drから、それぞれ黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Dr、補正受光素子3Blkの観測データ値Dblkを引き算するため、各受光素子における赤外域の観測結果が相殺(除去)され、赤外域における観測結果の影響を軽減した青の観測データ値Db、緑の観測データ値Dg、補正された赤の観測データ値HDrを得ることができ、撮像素子の構成から赤外線カットフィルタを削除し、薄型化を図ることができる。
【0120】
上記図6に示すように、受光素子は、光が入射していない場合であっても、僅かに電流を発生させている。このような光が入射していないにもかかわらず受光素子から流れる電流は、暗電流(dark current)と呼ばれ、ノイズの原因となる。従来の赤、緑、青の3原色のカラーフィルタは、分光特性上、所定の波長域の光を透過し、光を遮断する波長域も存在する。しかしながら、受光素子は、光の遮断される波長域についても暗電流を発生させる。このため、従来の撮像素子の観測結果には、光を透過する波長域における光の観測結果に加えて、暗電流によるノイズも含まれており、このノイズにより色再現性が低下する場合がある。
【0121】
これに対して、本実施の形態に係る撮像素子1は、上述したように、入射光受光素子3Wの観測データ値Dw、黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Drから、それぞれ黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Dr、補正受光素子3Blkの観測データ値Dblkを引き算するため、暗電流の値が相殺され、観測結果からノイズを除去できる。これにより、色再現性を向上させることができる。
【0122】
上記図6に示すように、従来の赤、緑、青のカラーフィルタの分光透過率において、青、赤のカラーフィルタの分光曲線の裾部の透過率は数%と低いが、緑のカラーフィルタの分光曲線の裾部の透過率は10%程度と高くなっている。このように、裾部の透過率が高いことを分光の浮きが大きいという。
【0123】
従来の撮像素子においては、緑のカラーフィルタの分光曲線の裾部が青、赤の波長域に存在し、かつ、緑の裾部の分光は大きいため、緑の観測結果に青、赤が混色することになり、緑の再現性が低下するという問題があった。
【0124】
これに対して、本実施の形態に係る撮像素子1では、上述したように、入射光受光素子
3Wの観測データ値Dw、黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Drから、それぞれ黄受光素子3Yの観測データ値Dy、赤受光素子3Rの観測データ値Dr、補正受光素子3Blkの観測データ値Dblkを引き算するため、分光の浮きを小さくすることができ、色再現性を向上させることができる。
【0125】
本発明に関わる補正フィルタ2Blkは、図15に示すように、上記図10に示す一般的な吸収型の赤外線カットフィルタと異なり、およそ600nm〜650nm付近の透過率が低いため、演算(引き算)後の赤の演色性をさらに向上させることができる。
【0126】
なお、補正フィルタ2Blkの透過率は、およそ400nm〜550nmの光の波長域及び750nm以降の波長域において、赤のカラーフィルタ(例えば、上記図8に示す透過率特性を有する赤フィルター)の透過率と5%以内の差となるようにすることが好ましい。
【0127】
これにより、赤外線や他の色の影響のない補正された赤の観測データ値HDrを得ることができ、赤の色再現性が向上する。
【0128】
本実施の形態に係る撮像素子1において、補正された赤の観測データ値HDrは、赤の観測データ値Dr−補正用の観測データ値Dblkによって求められる。したがって、補正フィルタ2Blkの光透過率を図16のようにすることにより、補正された赤の観測データ値HDrは、赤外線及び他の色の光から影響を受けることを防止することができる。また、赤の感度が高く、赤の色再現性のよい撮像素子1を得ることができる。
【0129】
また、CMOS、CCDなどの受光素子は、人間の感じない紫外線域にも若干の感度を有する。このため、本実施の形態に係る透明フィルタ2Wは、400nm以下の短波長の光を不透過あるいは低透過とし、主に400nm以降の波長の光を吸収することなく通すことが望ましい。
【0130】
そこで、本実施の形態に係る透明フィルタ2Wに紫外線吸収剤や、樹脂の硬化に用いる光開始剤や硬化剤を添付し、透明フィルタ2Wに紫外線吸収機能を付加してもよい。
【0131】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サルチル酸系化学物、クマリン系化合物を用いることができる。また、紫外線吸収剤に、例えばヒンダードミン系化合物などの光安定化剤、クエンチャーなどを添加して用いてもよい。また、赤外線吸収性化合物や赤外線吸収剤を、透明フィルタ2Wを構成する樹脂に添加してもよく、ペンダント(反応性染料など、反応型赤外線吸収剤などの形で樹脂分子鎖に組み込む)方式により透明フィルタ2Wを構成する樹脂に添加してもよい。
【0132】
あるいは、透明フィルタ2Wの形成に用いる樹脂のポリマーやモノマー、ないし、硬化剤に紫外線吸収性能を有する官能基をペンダントしたり、ポリマーに取り込まれるような基を持たせて重合してもよい。例えば、キノン類、アントラセンをポリマーに導入してもよいし、紫外線吸収性の基をもつモノマーを添加してもよい。
【0133】
以上説明した本実施の形態に係る撮像素子1においては、見かけ上、高透過の青、緑、赤のフィルタを具備した場合と同等の効果を得ることができ、特に従来の撮像素子よりも青、赤の観測精度を向上させることができる。
【0134】
また、本実施の形態に係る撮像素子1においては、人間の可視域ではない赤外域の光の観測結果を削除することができ、人間の視覚に近い撮影結果を得ることができる。
【0135】
また、本実施の形態に係る撮像素子1においては、上記図10に示す透過特性を持つ一般的な吸収型の赤外線カットフィルタを用いる場合と異なり、550nmから650nmの波長領域の光の吸収を緩和させることができるため、赤の演色性を向上させることができる。
【0136】
また、本実施の形態においては、赤の観測データ値Drから補正用の観測データ値Dblkを差し引くことで、赤外線吸収機能を実現している。また、他の色(青、緑)については、それぞれ赤外域の引かれた観測結果が得られる。この結果、従来のカメラモジュールの光学系に備えられていた赤外線吸収型の赤外線カットフィルタを省略することができ、カメラを薄くすることができる。
【0137】
なお、図2の黄フィルタ2Y、補正フィルタ2BLKの形状と同様に、単独で透明フィルタ2Wを形成した後に、各フィルタを被覆するように平坦化層7を形成してもよい。または、図9に示すように、透明フィルタを形成することなく平坦化層を形成し、平坦化層が透明フィルタを兼用することであっても構わない。
【0138】
この場合、透明フィルタ10Wと透明平滑化層との形成工程とを一体化することができ、フィルタの形成において、透明フィルタのパターン形成工程を独自に設ける必要がなく、撮像素子9の製造プロセスを簡略化させることができる。
【0139】
または、図11に示すように、透明フィルタ12Wとマイクロレンズとを一体化させることであっても構わない。その場合、撮像素子11を薄くすることが可能となる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、基本的に第1の実施の形態と同様であるが、補正フィルタを形成する顔料ペーストの顔料構成を下記のようにした。用いた顔料は、以下の3種類とした。また、補正フィルタの膜厚は、1.1μmとした。
Y139;11.3部、R254;4.23部、V23;19.77部
本実施の形態のBlk2の分光特性を、図12に示す。前記したように、Blk2の補正フィルタ用着色樹脂組成物に含まれる顔料構成は、第1の実施の形態の顔料組成(顔料V23と顔料Y139)に顔料R254を、追加した場合の分光透過率特性となる。
【0140】
そして、このような2つの実施の形態の補正フィルタが有するBlk1、Blk2は、光の波長(nm)を横軸とし各波長の光の透過率(%)を縦軸とする分光透過率特性のグラフ上において、波長400nm及び波長550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における50%透過率の波長範囲が620〜690nm波長700nmの光に対する透過率が70%以上の各条件を満たす。
【0141】
また、この2つの実施の形態の補正フィルタのBlk1、Blk2は、400〜550nmの透過率を低く抑えることができるので、可視波長の光は遮断され、この補正フィルタが取付けられた撮像素子に対する色ノイズの発生が抑制される。
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、入射光のうち受光素子に入射する光を除く他の光の反射を抑制する遮光膜を、基板の入射光の入射側であり受光素子に入射光を入射させる領域を除く他の領域すなわち、受光素子の有効開口部周辺、配線部上、および半導体基板の一部(例えば半導体基板5の外周)に設けた撮像素子について説明する。
【0142】
図13、及び図14は、本実施の形態に係る撮像素子の遮光膜の配置位置の1例を示す正面図、及びA−A’線での断面図である。
【0143】
この図13に示す撮像素子は、フィルタの設置されている有効画素部19の外周部に、
光の反射を抑制する遮光膜15を具備する。なお、撮像素子は外部との電気的接続を取るためのアルミ(Al)パッド16を有するので、アルミ(Al)パッド部には遮光膜は形成していない。また、本実施の形態では配線部の上部にも遮光膜を形成しているが、配線部は図示を省略している。
【0144】
この遮光膜15は、上記各実施の形態で説明した補正フィルタと同じ材質にて、補正フィルタの形成と同時に形成することができる。すなわち、第1の実施の形態で補正フィルタを膜厚1.1μmで形成しているので、遮光膜も膜厚1.1μmで形成している。
【0145】
遮光膜15を、撮像素子の有効画素部19の外周部に配設することは、撮像素子の観測結果がノイズの影響を受けることを防ぐことができ、画質を高めることができる点で有効である。特に、遮光膜15として上記各種の補正フィルタと同じ材料を用いることで、可視光波長域の光をカットすることができ、撮像素子周辺の迷光を減少させることができる。また、本発明の遮光膜は可視光を遮断する性能に優れるため、膜厚を例えば1.1μmと1μm程度で十分な遮光性を有している。
【0146】
従来の撮像素子においては、受光素子以外の部分に入射した光が撮像素子内で迷走し、迷光となる場合がある。この迷光は、その後受光素子に入射するとノイズとなる。また、受光素子の周辺領域に不要な光が入射するとノイズの原因となる。
【0147】
しかしながら、本実施の形態においては、受光素子の有効開口部周辺や、半導体基板の一部(例えば半導体基板の外周)に、可視光波長域において透過抑制特性を持つ遮光膜15を配置しているため、この遮光膜15により、受光素子を除く他の部分に入射した光が吸収される。
【0148】
これにより、受光素子に迷光及び不要な光が入射することを防止することができ、ノイズを低減させることができ、撮像素子によって得られる画質を向上させることができる。特に、遮光膜15として補正フィルタを用いた場合、可視光波長域の光をカットでき、撮像素子の周辺で発生する迷光を減少させることができ、受光素子周辺からのノイズ発生を軽減できる。
【0149】
なお、遮光膜15として補正フィルタを用いた場合、この遮光膜15は、赤外域の光及び紫外域の光を透過する。そのため、赤外線及び紫外線によるノイズを防止するため、遮光膜上に赤外線及び紫外線を吸収する膜を積層しても構わない。積層する赤外線及び紫外線を吸収する膜には、マイクロレンズ8の形成に用いる透明樹脂に赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤を添加した樹脂を用いることにより、材料費を軽減させることができる。これにより、受光素子3ではない部分に入射した赤外線及び紫外線が迷走し、迷光となり、ノイズが発生することも防止することができる。
【符号の説明】
【0150】
1、9、11…撮像素子、2…フィルタ層、2W,10W,12W…透明フィルタ、2Y…黄フィルタ、2R…赤フィルタ、2Blk…補正フィルタ、2V…バイオレットのフィルタ、3…受光素子、3W…入射光受光素子3W、3Y…黄受光素子、3R…赤受光素子、3Blk…補正受光素子、4…演算部、4B…青演算部,4G…緑演算部、4R…赤演算部、5…半導体基板、6…平坦化層、7…樹脂層、8…マイクロレンズ、15…遮光膜、16…パッド、19…撮像素子の有効画素部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23とC.I.ピグメントイエロー139との各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成されたことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23と、C.I.ピグメントイエロー139と、C.I.ピグメントレッド254の各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成したことを特徴とする撮像素子。
【請求項3】
前記受光素子は、
1)前記入射光を前記透明フィルタ経由で観測する入射光受光素子と、前記入射光を前記黄フィルタ経由で観測する黄受光素子と、前記入射光を前記赤フィルタ経由で観測する赤受光素子と、前記入射光を前記補正フィルタ経由で観測する補正受光素子とを含み、
2)前記入射光受光素子で観測された観測結果から、前記黄受光素子で観測された観測結果を引き算し、青の観測結果を求める演算手段と、前記黄受光素子で観測された観測結果から、前記赤受光素子で観測された観測結果を引き算し、緑の観測結果を求める演算手段と、前記赤受光素子で観測された観測結果から、前記補正受光素子で観測された観測結果を引き算し、補正された赤の観測結果を求める演算手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記補正フィルタと同じ材質からなる遮光膜を、前記入射光の入射側であり、前記受光素子に前記入射光を入射させる領域を除いた領域に設けたことを特徴とする請求項1または請求1〜3に記載の撮像素子。
【請求項1】
入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23とC.I.ピグメントイエロー139との各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成されたことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
入射光のうち特定の色成分の抽出に用いられるフィルタと、前記入射光を前記フィルタ経由で観測する受光素子とを具備する撮像素子において、
1)前記フィルタは、透明フィルタと、黄成分の抽出に用いられる有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された黄フィルタと、赤成分の抽出に用いられ、有機顔料を分散させた着色樹脂組成物で形成された赤フィルタと、可視光波長域において透過抑制特性を有し、可視光波長域より長波長側において透過特性を有する補正フィルタとを含み、
2)前記補正フィルタは、波長400nm〜550nmの光に対する透過率が5%以下、分光透過率特性における透過率が50%となる波長の位置が620nm〜690nm、波長700nmの光に対する透過率が70%以上であり、
3)前記補正フィルタの透過率は、400nm〜550nmの光の波長域及び750nm〜1000nmの波長域において、前記赤フィルタの透過率との差が、5%以内の差であり、
4)前記補正フィルタがC.I.ピグメントバイオレット23と、C.I.ピグメントイエロー139と、C.I.ピグメントレッド254の各有機顔料を含む着色樹脂組成物で形成したことを特徴とする撮像素子。
【請求項3】
前記受光素子は、
1)前記入射光を前記透明フィルタ経由で観測する入射光受光素子と、前記入射光を前記黄フィルタ経由で観測する黄受光素子と、前記入射光を前記赤フィルタ経由で観測する赤受光素子と、前記入射光を前記補正フィルタ経由で観測する補正受光素子とを含み、
2)前記入射光受光素子で観測された観測結果から、前記黄受光素子で観測された観測結果を引き算し、青の観測結果を求める演算手段と、前記黄受光素子で観測された観測結果から、前記赤受光素子で観測された観測結果を引き算し、緑の観測結果を求める演算手段と、前記赤受光素子で観測された観測結果から、前記補正受光素子で観測された観測結果を引き算し、補正された赤の観測結果を求める演算手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記補正フィルタと同じ材質からなる遮光膜を、前記入射光の入射側であり、前記受光素子に前記入射光を入射させる領域を除いた領域に設けたことを特徴とする請求項1または請求1〜3に記載の撮像素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−48245(P2013−48245A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194096(P2012−194096)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2005−215598(P2005−215598)の分割
【原出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2005−215598(P2005−215598)の分割
【原出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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