説明

撮像装置、位置計測装置及び撮像方法、位置計測方法、並びに構造物の製造方法

【課題】CCDやCMOSセンサなどの撮像素子を用いた薄型の撮像装置が多く用いられており、位置計測対象を複数の撮像装置で撮像して所定の画像処理を施すことにより、位置計測対象の位置を計測している。この時、視野を広くしても、分解能の低下を抑制できる撮像装置、位置計測装置及び撮像方法並びに位置計測方法を提供する。
【解決手段】視野V1〜V3の像を撮像する撮像素子2を備える。複数の視野の像を重ねて撮像素子に撮像可能とする像重ね部3を備える。前記像重ね部は、入射した光の少なくとも一部を前記撮像素子に入射させるビームスプリッターを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、位置計測装置及び撮像方法、位置計測方法、並びに構造物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子(光電変換素子)を用いた薄型の撮像装置が多く用いられており、位置計測対象を複数の撮像装置で撮像して所定の画像処理を施すことにより、位置計測対象の位置を計測する技術が提供されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2004/0179205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像装置において、広い視野を得るためには、例えば、撮像素子のサンプリングピッチと光学視野に依存する。その結果、分解能が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、視野を広くしても、分解能の低下を抑制できる撮像装置、位置計測装置及び撮像方法並びに位置計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、視野の像を撮像する撮像素子を備える撮像装置であって、複数の前記視野の像を重ねて前記撮像素子に撮像可能とする像重ね部を備える撮像装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、本発明の第1の態様の撮像装置を備え、前記視野内の所定の位置を計測する位置計測装置が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、撮像素子を用いて視野の像を撮像する撮像方法であって、複数の前記視野の像を前記撮像素子に重ねて撮像させることと、重ねて撮像した複数の像を切り分けることと、を含む撮像方法が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、本発明の第3の態様の撮像方法を用いて計測対象の位置を計測する位置計測方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、所定の分解能を維持しつつ広い視野を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る撮像装置の一例を示す図である。
【図2】第2実施形態に係る撮像装置の一例を示す図である。
【図3】第3実施形態に係る撮像装置の一例を示す図である。
【図4】第4実施形態に係る撮像装置の一例を示す図である。
【図5】位置計測装置100の外観の一例を示す図である。
【図6】構造物製造システム200のブロック構成図である。
【図7】構造物製造システムによる処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をZ軸方向、水平面内においてZ軸方向と直交する方向をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
ここでは、例えば、3つの視野の像を重ねる撮像装置の例を用いて説明する。
【0014】
図1は、撮像装置の一例を示す図である。
撮像装置1は、第1視野V1を有する第1視野部C1、第2視野V2を有する第2視野部C2、第3視野V3を有する第3視野部C3、各視野V1〜V3の像を撮像する撮像素子2、各視野V1〜V3の像をそれぞれ撮像素子2に導く像重ね部としてのビームスプリッター3、各視野部C1〜C3毎に設けられたシャッター部(像選択部)41〜43、シャッター41〜43の開閉等、撮像装置1の構成機器を統括的に制御する制御部CONTを備えている。
【0015】
第1視野V1、第2視野V2、第3視野V3は、それぞれ略同じ大きさで順次隣り合う画角に設定されており、本実施形態では、一例として25°の画角に設定されている。したがって、第1視野V1、第2視野V2、第3視野V3の方向は、Y軸方向にそって異なる。図1においては、Y軸方向に沿って、第1視野V1、第2視野V2、第3視野V3並んでいる。なお、本実施形態では、視野のそれぞれを25°の画角に設定しているが、これに限られない。例えば、10°、20°、30°、35°でも構わない。
なお本実施形態では、第1視野V1、第2視野V2、第3視野V3の範囲が同じであるが、異なっていても構わない。例えば、第2視野V2の範囲に対して、第1視野V1、第3視野V2の範囲が小さくなっても構わない。
なお、本実施形態ではそれぞれの視野が順次隣りあって配置しているが、その配置はこれに限られない。例えば、それぞれの視野の少なくとも一部が重なりあうように設定されても構わない。
【0016】
第1視野部C1は、第1視野V1の像を撮像素子2に結像させる結像光学系であるレンズL1、レンズL1を介して入射した光をビームスプリッター3に向けて反射するミラーM1を備えている。同様に、第3視野部C3は、第3視野V3の像を撮像素子2に結像させる結像光学系であるレンズL3、レンズL3を介して入射した光をビームスプリッター3に向けて反射するミラーM3を備えている。そして、第2視野部C2は、第2視野V2の像を撮像素子2に結像させる結像光学系であるレンズL2を備えている。
【0017】
ビームスプリッター3は、互いに直交して配置され、入射した光のうち半分を透過させ、半分を反射するハーフミラーHM1、HM2を備えたクロスプリズムが用いられている。撮像素子2は、CCDやCMOSセンサ等の光電変換素子で構成されている。撮像素子には、多数の受光素子が並んでおり、受光した光を電気信号に変換することが可能である。したがって、撮像素子2は、入射した光の強度を撮像信号に変換することが可能である。撮像素子2の撮像信号は制御部CONTに出力される。制御部CONTは、上記シャッター41〜43の動作を制御することで、入射する光を遮ることができる。光を発生する発光点を計測対象とする場合に、その計測対象の位置を光の強度の高い位置として、認識することができる。その場合に、視野内での光の強度の位置から、発光点である計測対象の位置を検出することができる。したがって、制御部CONTは、上記シャッター41〜43の動作を制御するとともに、シャッター41〜43の動作に応じて入力した撮像信号に基づいて、計測対象の位置を検出する。
【0018】
上記構成の撮像装置1においては、例えば、シャッター部41が開いている場合、第1視野V1からの光は、レンズL1及びミラーM1を介してビームスプリッター3に入射する。ビームスプリッター3に入射した第1視野V1からの光のうち、ハーフミラーHM2で反射した光が撮像素子2に入射することで、第1視野V1の像が撮像される。同様に、シャッター部43が開いている場合、第3視野V3からの光は、レンズL3及びミラーM3を介してビームスプリッター3に入射する。ビームスプリッター3に入射した第3視野V3からの光のうち、ハーフミラーHM1で反射した光が撮像素子2に入射することで、第3視野V3の像が撮像される。また、例えば、シャッター部42が開いている場合、第2視野V2からの光は、レンズL2を介してビームスプリッター3に入射する。ビームスプリッター3に入射した第2視野V2からの光のうち、ハーフミラーHM1、HM2を透過した光が撮像素子2に入射することで、第2視野V2の像が撮像される。
【0019】
ここで、シャッター部41〜43のいずれもが開いている状態では、第1視野V1〜第3視野V3の像は重なった状態で撮像素子2によって撮像されるため、各視野毎に計測対象を検出することができない。そのため、制御部CONTは、各視野毎に切り分けて計測対象を選択的に検出可能とするために、シャッター部41〜43を順次作動させて撮像素子2に撮像される視野の像を切り替える。
【0020】
具体的には、第1視野V1の像を撮像する場合には、シャッター部41を開き、シャッター部42、43を閉じ、第2視野V2及び第3視野V3からの光を遮光する。同様に、第2視野V2の像を撮像する場合には、シャッター部42を開き、シャッター部41、43を閉じ、第1視野V1及び第3視野V3からの光を遮光する。そして、第3視野V3の像を撮像する場合には、シャッター部43を開き、シャッター部41、42を閉じ、第1視野V1及び第2視野V2からの光を遮光する。
【0021】
このように、シャッター部41〜43の動作を制御することにより、各視野毎の像を撮像素子2で撮像できるため、各視野V1〜V3毎に得られた撮像信号を用いて画像処理等の処理を施すことにより、各視野V1〜V3毎に、例えば発光点等の計測対象の有無及び当該計測対象の位置を検出する。各視野V1〜V3の絶対位置は既知であるため、視野内における計測対象の位置が検出されれば、当該計測対象の絶対位置を求めることが可能になる。
【0022】
以上のように、本実施形態の撮像装置1では、複数の視野V1〜V2の像を一つの撮像素子2に重ねて撮像可能としているため、例えば一つの視野の画角に対応する大きさの撮像素子2で複数の視野を併せた画角に対応することができる。つまり、本実施形態では、撮像素子2に対して、複数の視野を重ねて撮像することができるので、分解能を維持しつつ3倍の大きさの視野を備えることができ、捉え方を逆にすると、同じ視野の場合には、従来と比較すると3倍の分解能を発現することが可能となっている。本発明では、撮像素子の所定領域において、複数の方向の視野を重ねることができるので、所定領域において、複数の方向の視野での情報を重ねることができる。したがって、複数の方向の視野に応じて、撮像素子の領域を拡大する必要がない。また、撮像素子において、複数の方向の視野を重ねることなく配置すると、一つの方向の視野の場合と比較して、撮像素子内での受光する領域が減少し、分解能が低下する。そのため、本発明では、複数の方向の視野を重ねるので、視野を拡げたことに伴う、分解能の低下を抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態では、シャッター部41〜43を用いて、後行程で画像処理を行う視野を容易に選択できるため、複数の視野V1〜V3の像を一つの撮像素子2に重ねる際にも、処理効率が低下することを防止できる。
なお、本実施形態では、シャッター部41は、レンズL1とビームスプリッタ3との間に配置されているが、配置場所はこれに限られない。シャッター部41とビームスプリッタ3との間に、レンズL1を配置しても構わない。
【0024】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について、図2を参照して説明する。この図において、図1に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第1実施形態では、各視野V1〜V3(各視野部C1〜C3)毎に結像光学系であるレンズを配置する構成としたが、第2実施形態では一つの結像光学系を共用する構成について説明する。
【0025】
図2に示されるように、本実施形態の撮像装置1においては、結像光学系であるレンズLがビームスプリッター3と撮像素子2との間に配置されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0026】
上記構成の撮像装置1においては、各視野V1〜V3からの光はビームスプリッター3を出射した後にレンズLに入射し、各視野V1〜V3の像が撮像素子2に結像することで、撮像される。本実施形態では、ビームスプリッタ3と撮像素子2との間にレンズLを設置することにより、第1実施形態に比べて、レンズLの個数を減らすことができる。
【0027】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について、図3を参照して説明する。この図において、図2に示す第2実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第2実施形態では、3つの視野V1〜V3の像を撮像素子2に重ねて撮像可能とする構成であったが、第3実施形態では、2つの視野V1〜V2の像を撮像素子2に重ねて撮像可能とする構成について説明する。
【0028】
図3に示されるように、本実施形態の撮像装置1は、第1視野V1を有する第1視野部C1、第2視野V2を有する第2視野部C2を備えており、各視野V1〜V2の像は、ハーフミラーHM2を備えるビームスプリッター3A及びレンズLを介して撮像素子2に入力して撮像される。本実施形態では、2つの視野V1〜V2からの光を撮像素子2に導くために、一般的に用いられるハーフプリズムをビームスプリッター3Aとして用いている。
【0029】
上記構成の撮像装置1では、撮像素子2に2つの視野を重ねることにより、撮像素子2に一つの視野の像を作成する場合と同じ分解能で、2倍の大きさの視野の像に関する情報を取得することができる。
また、本実施形態の撮像装置1では、汎用性の高いハーフプリズムを用いることにより、部材調達の容易化及び装置の低価格化に寄与できる。
【0030】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について、図4を参照して説明する。この図において、図2に示す第2実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
上記第2実施形態では、2つのハーフミラーHM1、HM2を有するビームスプリッター3を用いる構成としたが、本実施形態では、図4に示すように、それぞれが一つのハーフミラーを有するハーフプリズムからなる2つのビームスプリッター3A、3Bを直列的に配置する構成を採っている。
【0031】
ビームスプリッター3A、3Bは、撮像素子2への光の入射方向に沿って離間して配置されている。第3視野V3からの光の一部(略半分)は、ビームスプリッター3BのハーフミラーHM1で反射するとともに、さらにその一部(略半分、総光量の1/4)がビームスプリッター3AのハーフミラーHM2を透過し、レンズLを介して撮像素子2に入射する。なお、本実施形態では、ビームスプリッター3A、3Bを離間させているが、図4において、撮像素子2に光が入射する(X軸方向)にそって、ビームスプリッター3Aと3Bを接触させて配置しても構わない。
【0032】
また、第1視野V1からの光の一部(略半分)は、ビームスプリッター3AのハーフミラーHM2で反射し、レンズLを介して撮像素子2に入射する。そして、第2視野V2からの光の一部(略半分)は、ビームスプリッター3BのハーフミラーHM1を透過するとともに、さらにその一部(略半分、総光量の1/4)がビームスプリッター3AのハーフミラーHM2を透過し、レンズLを介して撮像素子2に入射する。
このように3つの視野V1〜V3の像は、重なった状態で撮像素子2により撮像可能となっている。
【0033】
従って、本実施形態では、上記第2実施形態と同様の作用・効果が得られることに加えて、汎用性の高いハーフプリズムを用いることにより、部材調達の容易化及び装置の低価格化に寄与できる。
【0034】
<第5実施形態>
次に、上記撮像装置1を備えた位置計測装置について、図5を参照して説明する。
図5は、接触子51を有するプローブ装置50を計測対象として設置された位置計測装置100の概略的な外観斜視図である。
位置計測装置100の詳細に関しては、例えば、米国特許公開2004/0179205号明細書に記載してある。
【0035】
プローブ装置50は、接触子51と発光点F1〜F3とを備えている。発光点F1〜F3は所定の相対位置関係をもって互いに離間して配置されている。接触子51は、発光点F1〜F3に対して所定の相対位置関係をもって配置されている。従って、発光点F1〜F3の位置を計測することにより、接触子51の位置を検出することが可能になる。
【0036】
位置計測装置100は、上述した撮像装置1(ここでは撮像装置1A〜1Cとする)がプローブ装置50を視野に臨ませて水平方向に沿って互いに間隔をあけて3つ配置された構成となっている。
そして、発光点F1〜F3の発光・発光停止は、制御部CONTによって個別に制御される。
【0037】
以下の説明では、撮像装置1A〜1Cの配列方向をX方向とし、X方向と直交する鉛直方向をZ方向とし、X方向及びZ方向と直交する方向(プローブ装置50と略対向する方向)をY方向とする座標系を用いて説明する。
【0038】
両端側に位置する撮像装置1A、1Cは、X方向に沿ったライン状の撮像範囲を有するCCD素子を撮像素子として備えている。中間に位置する像装置1Bは、Z方向に沿ったライン状の撮像範囲を有するCCD素子を撮像素子として備えている。各撮像装置1A〜1Cは、視野が互いに交差するように配置されている。
【0039】
撮像装置1A〜1Bの撮像信号は、制御部CONTに出力される。制御部CONTは、撮像装置1A〜1Bから出力された撮像信号に基づいて接触子51の位置を検出する(後述)。
【0040】
以下、位置計測装置100によってプローブ装置50の位置計測を行う手順について説明する。なお、撮像装置1A〜1Cの位置・姿勢等はそれぞれ既知であるものとして説明する。
【0041】
まず、発光点F1の位置を計測する場合、制御部CONTが発光点F2、F3を発光停止とした状態で発光点F1のみを発光させる。発光する発光点F1については、上述したように、撮像装置1Aにより撮像することで、その撮像信号及び撮像装置1Aの位置情報に基づいて、撮像装置1Aを基準とする発光点F1のX方向の位置(方位)が計測される。
【0042】
同様に、発光点F1については、撮像装置1Cにより撮像することで、その撮像信号及び撮像装置1Cの位置情報に基づいて、撮像装置1Cを基準とする発光点F1のX方向の位置(方位)が計測される。ここで、撮像装置1Aの視野と撮像装置1Cの視野の重なる方向はZ方向に延在する方向となるため、これら撮像装置1A、1Cを基準とする発光点F1のX方向の位置(方位)を用いることにより、幾何学的にXY平面における発光点F1の位置が計測される。
【0043】
次に、制御部CONTは、発光点F1について、撮像装置1Bにより撮像することで、その撮像信号及び撮像装置1Bの位置情報に基づいて、撮像装置1Bを基準とする発光点F1のZ方向の位置(方位)が計測される。従って、撮像装置1A〜1Cの撮像結果から発光点F1の空間座標が求められる。
【0044】
発光点F2、F3についても、発光点F1と同様に、個別に発光させた状態で撮像装置1A〜1Cを撮像し、位置計測を行うことにより、発光点F2、F3の空間座標を計測することができる。そして、計測された発光点F1〜F3の空間座標を用いて演算処理することにより、接触子51の位置が求められる。求められた接触子51の位置については、制御部CONTにより作業者に対して表示させたり、あるいはプローブ装置50の位置・姿勢を調整する駆動装置が設けられる場合には、所望の位置・姿勢に移動させるためのデータとして用いることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態では、上述した撮像装置1A〜1Cを備えているため、分解能を維持しつつ、より大きな視野を得ることができ、また、同じ視野の場合には、より高度の分解能を発現することができるため、計測対象物の位置を高精度に計測することが可能になる。
【0046】
なお、本実施形態では、発光点F1〜F3の位置を計測することにより、接触子51の位置を検出することが可能としていたが、位置を検出するのは、測定物と接触して測定している位置を特定する接触式プローブの接触子51に限られない。例えば、測定物と接触しないで、測定物の位置を特定する非接触式の計測装置でもかまわない。例えば、非接触式の計測装置として、レーザを用いたライン光を測定物に照射し、測定物の表面に照射されたライン光を撮像する計測装置でも構わない。また、発光点F1〜F3を測定物に固定し、発光点F1〜F3を基準に、測定物内の位置を算出しても構わない。
【0047】
次に、上述した位置計測装置100を備えた構造物製造システムについて説明する。
図6は、構造物製造システム200のブロック構成図である。構造物製造システム200は、上述の位置計測装置100と、その位置計測装置100の計測対象のプローブ装置50と、設計装置110と、成形装置120と、制御装置(検査装置)130と、リペア装置140とを備える。本実施形態においては、構造物製造システム200は、自動車のドア部分などの成形品を作成する。
【0048】
設計装置110は、構造物の形状に関する設計情報を作成し、作成した設計情報を成形装置120に送信する。また、設計装置110は、作成した設計情報を制御装置130の後述する座標記憶部131に記憶させる。ここで、設計情報とは、構造物の各位置の座標を示す情報である。成形装置120は、設計装置110から入力された設計情報に基づいて上記構造物を作製する。成形装置120の成形工程には、鋳造、鍛造、または切削等が含まれる。
【0049】
位置計測装置100は、計測対象のプローブ装置50(計測対象物)の座標を測定し、測定した座標を示す情報を制御装置130へ送信する。また、プローブ装置50は、作成された構造物(被測定物)の座標を測定し、測定した座標を示す情報を制御装置130へ送信する。制御装置130は、座標記憶部131と、検査部132とを備える。座標記憶部131には、前述の通り、設計装置110により設計情報が記憶される。検査部132は、座標記憶部131から設計情報を読み出す。検査部132は、位置計測装置100およびプローブ装置50から受信した座標を示す情報から、作成された構造物を示す情報(形状情報)を作成する。検査部132は、形状測定装置100から受信した座標を示す情報(形状情報)と座標記憶部131から読み出した設計情報とを比較する。検査部132は、比較結果に基づき、構造物が設計情報通りに成形されたか否かを判定する。換言すれば、検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する。検査部132は、構造物が設計情報通りに成形されていない場合、修復可能であるか否か判定する。修復できる場合、検査部132は、比較結果に基づき、不良部位と修復量を算出し、リペア装置140に不良部位を示す情報と修復量を示す情報とを送信する。
【0050】
リペア装置140は、制御装置130から受信した不良部位を示す情報と修復量を示す情報とに基づき、構造物の不良部位を加工する。
【0051】
図7は、構造物製造システム200による処理の流れを示したフローチャートである。まず、設計装置110が、構造物の形状に関する設計情報を作製する(ステップS101)。次に、成形装置120は、設計情報に基づいて上記構造物を作製する(ステップS102)。次に、位置計測装置100はプローブ装置50の座標を測定する(ステップS103)。次に、プローブ装置50は、作成された上記構造物の形状を測定する(ステップS104)。次に制御装置130の検査部132は、位置計測装置100とプローブ装置50とからなる作成された構造物の形状情報と、上記設計情報とを比較することにより、構造物が設計情報通りに作成された否かを検査する(ステップS105)。
【0052】
次に、制御装置130の検査部132は、作成された構造物が良品であるか否かを判定する(ステップS106)。作成された構造物が良品である場合(ステップS106 YES)、構造物製造システム200はその処理を終了する。一方、作成された構造物が良品でない場合(ステップS106 NO)、制御装置130の検査部132は、作成された構造物が修復できるか否か判定する(ステップS107)。
作成された構造物が修復できる場合(ステップS107 YES)、リペア装置140は、構造物の再加工を実施し(ステップS108)、ステップS103の処理に戻る。一方、作成された構造物が修復できない場合(ステップS107 NO)、構造物製造システム200はその処理を終了する。以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0053】
以上により、上記の実施形態における形状測定装置100が構造物の座標を正確に測定することができるので、構造物製造システム200は、作成された構造物が良品であるか否か判定することができる。また、構造物製造システム200は、構造物が良品でない場合、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
【0054】
なお、本実施形態におけるリペア装置140が実行するリペア工程は、成形装置120が成形工程を再実行する工程に置き換えられてもよい。その際には、制御装置130の検査部132が修復できると判定した場合、成形装置120は、成形工程(鍛造、切削等)を再実行する。具体的には、例えば、成形装置120は、構造物において本来切削されるべき箇所であって切削されていない箇所を切削する。これにより、構造物製造システム200は、構造物を正確に作成することができる。
【0055】
なお、上述の構造物の製造システムでは、位置計測装置100とプローブ装置50とから作成された構造物の形状を測定したが、測定する対象はこれに限られない。例えば、位置計測装置100とプローブ装置50とを用いて、構造物における組み立て位置を計測しても構わない。構造物における組み立て位置とは、構造物に他の部材を取り付ける位置、もしくは構造物に加工を加える位置などもしくは、構造物に他の部材が取り付けられた位置、もしくは構造物に加工が加えられた位置である。構造物における組み立て位置を、あらかじめ記憶された組み立て情報と比較することにより、構造物製造システム200は、組み立てられた構造物が良品であるか否かを判断することができる。また、構造物製造システム200は、組み立てられた構造物が良品でないばあいに、構造物の再加工を実施し、修復することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、2つ、あるいは3つの視野の像を重ねて撮像素子2に撮像可能とする構成を例示したが、4つ以上の視野の像を重ねて撮像素子2に撮像可能とする構成にも適用可能であることは言うまでもない。
【0058】
また、上記実施形態では、撮像装置1における視野毎にシャッター部を設ける構成としたがこれに限定されるものではなく、例えば、視野の数をn個としたきには、1つの視野については当該視野からの光が常に撮像素子2に入射する場合でも、他の視野からの光を順次遮光・遮光解除することにより、計測対象である発光点の像がいずれの視野に属するものかを判別できるため、シャッター部の数としては(n−1)とする構成であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、視野の像をビームスプリッターにより重ねたが、重ねる手段はこれに限られない。例えば、ミラーを配置し、そのミラーが第1の視野の像を撮像素子に導く角度と、第2の視野の像を撮像素子に導く角度との間を、移動可能にすることで、第1の視野の像と、第2の視野の像とを重ねることが可能になる。
また、上記実施形態では、第1の視野の像のすべてと、第2の視野の像のすべてとが重なるようにしたが、それぞれの一部が重なるようにしても構わない。この場合においても、第1の視野の像と第2の視野の像とを合わせた領域よりも、小さい領域の撮像素子で、第1の視野の像と第2の視野の像を観察することができる。
【0060】
さらに、上記実施形態では、撮像素子2が撮像した複数の像のうち、所定の処理(画像処理)を行う像を選択する像選択部としてシャッター部を設ける構成を例示したが、これに限られず、例えば、計測対象を臨む位置に俯瞰用カメラを設置しておき、当該俯瞰用カメラが撮像した結果から、計測対象である発光点の像が複数の視野のうち、いずれの視野に属するものかを判別する構成であってもよい。この場合、俯瞰用カメラは、高精度である必要はなく、コスト増を抑えることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、撮像素子2としてCCDセンサを用いる構成を例示したが、これに限られるものではなく、例えばCMOSセンサを用いる構成であってもよい。CMOSセンサを用いる場合には、撮像可能範囲で撮像したデータの一部を選択して転送することが可能なので、必要とされる精度に応じて狭い範囲のデータを制御部CONTに転送することで処理時間を短くして処理効率を向上させることも可能である。
また、上記実施形態では、CCDセンサをラインセンサとする構成としたが、他の撮像範囲を有するセンサを用いることも可能である。
【0062】
また、複数の視野のそれぞれに対して、撮像可能範囲の特定領域を区画して割り当てることにより、重なった複数の視野の像を切り分けることも可能になり、上述したシャッター部や俯瞰用カメラを設ける必要がなくなり、装置の小型化、低価格化を実現することができる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A〜1C…撮像装置、 2…撮像素子、 3…ビームスプリッター(像重ね部)、 41〜43…シャッター部(像選択部)、 100…位置計測装置、 F1〜F3…発光点、 L、L1〜L3…レンズ(結像光学系)、 V1〜V3…視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野の像を撮像する撮像素子を備える撮像装置であって、
複数の前記視野の像を重ねて前記撮像素子に撮像可能とする像重ね部を備える撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置において、
前記像重ね部は、入射した光の少なくとも一部を前記撮像素子に入射させるビームスプリッターを有する撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置において、
前記ビームスプリッターは、クロスプリズムまたはハーフミラーを含む撮像装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像素子が撮像した複数の像のうち、所定の処理を行う像を選択させる処理選択部を備える撮像装置。
【請求項5】
請求項4記載の撮像装置において、
前記処理選択部は、前記複数の視野を含む領域を一括して撮像する撮像部と、該撮像部の撮像結果に基づいて、前記所定の処理の対象となる像を選択する像選択部とを備える撮像装置。
【請求項6】
請求項4記載の撮像装置において、
前記処理選択部は、前記複数の視野の数をn個としたときに、少なくとも(n−1)個の視野の像の前記撮像素子への光路に設けられたシャッター部と、前記シャッター部の開閉に応じた前記撮像素子の撮像結果に基づいて、前記所定の処理の対象となる像を選択する像選択部とを備える撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記視野の像を前記撮像素子に結像させる結像光学系を備える撮像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像素子は、撮像可能範囲の一部で前記視野の像を撮像するCMOSセンサを備える撮像装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の撮像装置を備え、前記視野内の所定の位置を計測する位置計測装置。
【請求項10】
請求項9に記載の位置計測装置において、
前記撮像装置を複数備え、前記複数の撮像装置の視野の重なる方向が、互いに異なる位置計測装置。
【請求項11】
請求項9または10記載の位置計測装置において、
前記視野内の所定の位置には、発光点が形成されている位置計測装置。
【請求項12】
撮像素子を用いて視野の像を撮像する撮像方法であって、
複数の前記視野の像を前記撮像素子に重ねて撮像させることと、
重ねて撮像した複数の像を切り分けることと、
を含む撮像方法。
【請求項13】
請求項12記載の撮像方法を用いて計測対象の位置を計測する位置計測方法。
【請求項14】
構造物の形状に関する設計情報を作製する設計工程と、
前記設計情報に基づいて前記構造物を作成する成形工程と、
作製された前記構造物の形状を請求項13に記載の位置計測方法を用いて計測する工程と、
前記測定工程で得られた形状情報と、前記設計情報とを比較する検査工程と、
を有することを特徴とする構造物の製造方法。
【請求項15】
前記作製された前記構造物の形状を測定する測定装置を、請求項13に記載の位置計測方法で計測することを、
前記計測する工程は含む請求項14に記載の構造物の製造方法。
【請求項16】
前記検査工程の比較結果に基づいて実行され、前記構造物の再加工を実施するリペア工程を有することを特徴とする請求項15に記載の構造物の製造方法。
【請求項17】
前記リペア工程は、前記成形工程を再実行する工程であることを特徴とする請求項16に記載の構造物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−68541(P2013−68541A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207751(P2011−207751)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】