説明

撮像装置、固体撮像素子、撮像装置用レンズ、及び近赤外光カットフィルタ

【課題】近赤外光カットの性能を満足しつつ、素材の選択肢を広げ、ニーズに応じて小型化などの設計自由度を高めることが可能な固体撮像素子用または受光素子用の近赤外光カットフィルタ、並びに、これを搭載した撮像装置、固体撮像素子、撮像装置用レンズを提供する。
【解決手段】本発明の撮像装置101は、被写体と光電変換素子62の間に、近赤外光を遮蔽する近赤外光カットフィルタ1が設置されているものである。近赤外光カットフィルタ1は、光学部材10と、光学部材10の第2主面12の表層に形成された反射防止層30と、光学部材10の第2主面12、又は/及び第1主面11上に形成された近赤外遮蔽層20とを備える。近赤外遮蔽層20は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層21Rと、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層21Lとを積層したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置に関する。また、撮像装置等に搭載される固体撮像素子、固体撮像素子用レンズに関する。さらに、近赤外光遮蔽効果を有する固体撮像素子、又は受光素子に用いる近赤外光カットフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置は、被写体を固体撮像素子で撮影して画像化する。撮像装置に内蔵された固体撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である。これらの固体撮像素子は、被写体からの光信号を集めて信号電荷に変換し、その電荷をデジタルデータ若しくはアナログデータとして素子外部に取り出して画像化する。これらの固体撮像素子は、通常、特定の波長に感度を有する。例えば、シリコンをベースにした固体撮像素子は、可視光帯域のみならず、近赤外光帯域に対して感度を有する。このため、感度を人間の視感度に近づけるためには、近赤外光カットフィルタを配置する必要がある。
【0003】
近赤外光帯域の光を選択的に吸収する近赤外光カットフィルタとして、フツリン酸塩系ガラスや、リン酸塩系ガラスにCuO等を添加した光吸収型のガラスフィルタが知られている。また、例えば、酸化シリコン(SiO)層と酸化チタン(TiO)層とを交互に光学部材上に積層し、光の干渉によって近赤外光帯域の光を反射して遮蔽する反射型の干渉フィルタや、透明樹脂中に近赤外光帯域の光を吸収する色素を含有させたフィルム等が開発されている(例えば、特許文献1)。また、近赤外光を吸収する色素を含有する樹脂層と近赤外光を反射する層とを積層した近赤外光カットフィルタも開発されている(例えば、特許文献2)。なお、特許文献3〜11については、後述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181028号公報
【特許文献2】特開2008−51985号公報
【特許文献3】特開2005−31298号公報
【特許文献4】特開2006−335881号公報
【特許文献5】特開平5−140400号公報
【特許文献6】特開平8−27284号公報
【特許文献7】国際公開第2010/143683号
【特許文献8】特開2010−61119号公報
【特許文献9】特開平6−281814号公報
【特許文献10】特許4096205号
【特許文献11】国際公開第2011/040578号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の撮像装置の高性能化に伴う用途拡大に伴って、撮像装置は、さらなる高機能化・画質の高精細化等が求められている。その一方で、撮像装置の軽薄短小化なども実現可能な設計自由度の高さも強く求められている。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、近赤外光カットの性能を満足しつつ、素材の選択肢を広げ、ニーズに応じて小型化などの設計自由度を高めることが可能な固体撮像素子用または受光素子用の近赤外光カットフィルタ、並びに、これを搭載した撮像装置、固体撮像素子、撮像装置用レンズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮像装置は、光電変換素子を具備する固体撮像素子を搭載した撮像装置であって、被写体と前記光電変換素子の間に、近赤外光を遮蔽する近赤外光カットフィルタが設置されており、前記近赤外光カットフィルタは、光学部材と、前記光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備える。前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである。
【0008】
本発明の固体撮像素子は、光電変換素子を具備する固体撮像素子であって、前記光電変換素子の前面に、近赤外光を遮蔽するための近赤外光カットフィルタが設置されており、前記近赤外光カットフィルタは、光学部材と、前記光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層とを備える。前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである。
【0009】
本発明の固体撮像素子用レンズは、光電変換素子を具備する固体撮像素子の前面に、当該固体撮像素子と離間して配設して利用される固体撮像素子用レンズであって、前記固体撮像素子用レンズは、近赤外光カットフィルタの機能も兼用するものであり、前記近赤外光カットフィルタは、前記固体撮像素子用レンズである光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備える。前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである。
【0010】
本発明の固体撮像素子用の近赤外光カットフィルタは、固体撮像素子、若しくは受光素子に用いられる近赤外光カットフィルタであって、光学部材と、前記光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備える。前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近赤外光カットの性能を満足しつつ、素材の選択肢を広げ、ニーズに応じて小型化などの設計自由度を高めることが可能な固体撮像素子用または受光素子用の近赤外光カットフィルタ、並びに、これを搭載した撮像装置、固体撮像素子、撮像装置用レンズを提供できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】第1実施形態の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図1B】第1変形例の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図1C】第2変形例の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図1D】第3変形例の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図2A】第1実施形態の撮像装置の一例を示す模式的断面図。
【図2B】第4変形例の撮像装置の一例を示す模式的断面図。
【図3A】第2実施形態の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図3B】第5変形例の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図4】第2実施形態のNIR吸収色素(A)の吸収スペクトル。
【図5A】第3実施形態の固体撮像素子の一例を示す模式的断面図。
【図5B】第6変形例の固体撮像素子の一例を示す模式的断面図。
【図5C】第7変形例の固体撮像素子の一例を示す模式的断面図。
【図6A】第4実施形態の固体撮像素子用レンズの一例を示す模式的断面図。
【図6B】第8変形例の固体撮像素子用レンズの一例を示す模式的断面図。
【図7】第5実施形態の固体撮像素子用レンズの一例を示す模式的断面図。
【図8】第6実施形態の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図9】第7実施形態の近赤外光カットフィルタの一例を示す模式的断面図。
【図10】第8実施形態のCCDセンサの一例を示す模式的斜視図。
【図11】実施例7の近赤外光カットフィルタの模式的断面図。
【図12】実施例7の誘電体層の透過率スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得る。また、以下の実施形態、及び変形例を任意に組み合わせた態様も好適な例である。以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる。また、同一の要素には、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0014】
[第1実施形態]
図1Aは、第1実施形態の近赤外光カットフィルタ1の一例を示す模式的断面図である。第1実施形態の近赤外光カットフィルタ1は、固体撮像素子、若しくは受光素子の前面に配置して利用されるものであり、少なくとも光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30を有する。近赤外遮蔽層20は、光学部材10の第2主面12側に積層され、反射防止層30は、光学部材10の第1主面11側に積層されている。なお、近赤外遮蔽層20は、第2主面12上に代えて第1主面11上に形成してもよいし、第1主面11と第2主面12の両面に形成してもよい。
【0015】
光学部材10は、可視光帯域の光を透過するものであり、支持体としての役割を担う。近赤外遮蔽層20は、近赤外光帯域を遮蔽する役割を担う。後で詳述するが、近赤外遮蔽層20は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層した積層体からなる。反射防止層30は、透過光量の減少や映り込み等を防止する役割を担う層であり、通常、光学部材の光入射側に配置される。従って、通常、光学部材10の第1主面11が光入射側に、第2主面12が固体撮像素子若しくは受光素子側に配置される。
【0016】
なお、本明細書でいう「近赤外光」とは、固体撮像素子の感度に応じて変動し得るものである。通常は、700nm〜1200nmであるが、固体撮像素子の種類や求められる特性によっては、700nm〜2000nmが必要な場合もある。また、光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30の透明性は、JISK−7150の規格に則り、ヘイズ値で評価することが好ましい。光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30のヘイズ値は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値が1%超であると、透過率が低く透明性が悪いので好ましくない。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0017】
<光学部材> 光学部材10は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、ガラス、樹脂等の公知の材料を制限なく利用できる。光学部材10の形状は、特に限定されず、目的や用途に応じて、ブロック状、板状、フィルム状、シート状等を選択できる。また、平面状に限られず、曲面状でもよい。また、光学部材10は、単一材料に限定されず、貼り合わせたものでもよい。光学部材10は、可視光帯域の透過性が高いほど好ましい。
【0018】
近赤外光カットフィルタ1の素材は、薄型化を実現する観点からは、フィルム状、シート状に容易に加工可能な樹脂が好ましい。光学部材10の厚みは、用途によって変わり得るものであり特に限定されないが、ガラスの場合は、装置の小型化、薄型化、及び取り扱い時の破損を抑制する点から、0.03〜5mmの範囲が好ましく、軽量化や強度の点から、0.05〜1mmの範囲がより好ましい。光学部材10として樹脂を用いる場合は、薄型化や小型化の観点から、10〜300μmの範囲が好ましく、薄型化と強度の観点から、40μm〜200μmの範囲がより好ましい。光学部材10の内部、又は/及び表面には、近赤外光吸収物質(例えば、CuO)や紫外光吸収物質等を含有させてもよい。
【0019】
光学部材10として樹脂を用いる場合の好適な例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂や、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0020】
光学部材10として無機材料を用いる場合の好適な例としては、LiNbO、LiTaO,TiO、SrTiO,Al,MgO等の酸化物単結晶や酸化物多結晶が挙げられる。また、CaF,MgFBaF、LiF等のフッ化物からなる単結晶又は多結晶基板でもよい。さらに、NaCl、KBr,KCl等の塩化物、臭化物からなる単結晶、多結晶基板等でもよい。また、無機材料としてガラスを用いる場合は、加工が容易で、光学面における傷や異物等の発生を抑える観点からは、ホウケイ酸ガラスが好ましく、接着性、耐候性の観点からは、アルカリ成分を含まないガラスが好ましい。また、紫外光帯域、又は/及び近赤外光帯域の波長に対して吸収特性を有するガラスを用いてもよい。例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラスフィルタを用いてもよい。使用する装置や近赤外光カットフィルタ1の配置場所等を考慮して、ガラス中のアルカリ成分の有無、線膨張係数の大きさ等の特性を、適宜選択すればよい。
【0021】
近赤外光カットフィルタ1にローパスフィルタや波長板の機能を付与したい場合には、光学部材10として水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶を用いればよい。これらの結晶を用いることによって、近赤外光カットフィルタ1を搭載する撮像装置等の小型化、薄型化を実現できる。
【0022】
光学部材10の耐熱性を高める観点からは、上述した結晶やガラス、あるいは耐熱性の高い樹脂を用いることが好ましい。耐熱性の高い樹脂としては、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、シルセスキオキサン等を含有した有機無機ハイブリッド材料等が挙げられる。光学部材10は、近赤外吸収が可能なガラス、若しくは近赤外光吸収色素等の吸収材を添加したガラス、若しくは樹脂により形成してもよい。
【0023】
<近赤外遮蔽層> 近赤外遮蔽層20は、近赤外光帯域に対して遮蔽性(反射性)を有する層である。近赤外遮蔽層20は、右第1選択波長反射層21R,左第1選択波長反射層21L、右第2選択波長反射層22R,左第2選択波長反射層22Lの4層(以下、これらを「選択波長反射層」とも称する)が光学部材10側からこの順に積層された積層体からなる。右第1選択波長反射層21Rと右第2選択波長反射層22Rは、それぞれ近赤外光帯域のある波長帯域の右円偏光を選択反射するための層である。同様に、左第1選択波長反射層21Lと左第2選択波長反射層22Lは、それぞれ近赤外光帯域のある波長帯域の左円偏光を選択反射するための層である。
【0024】
選択波長反射層21R〜22Lは、それぞれ螺旋軸を有する液晶相(コレステリック液晶、円盤状液晶)を固定した層からなる。各選択波長反射層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化したものと、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化したものとからなる。各選択波長反射層21R〜22Lのそれぞれの螺旋軸を有する液晶相は、多数の層の重なりからなり、その一つの薄い層内において、液晶分子は、例えば長軸を層と平行にすると共に方向を揃えて配列している。そして、その一つの薄い層は、互いに分子の配列方向が螺旋状になるように集積している。螺旋軸は、通常、基板に対して垂直方向となる。このため、螺旋ピッチに対応して左/右円偏光成分のいずれか一方を選択的に反射する。
【0025】
右第1選択波長反射層21R及び左第1選択波長反射層21Lは、概ね同一の螺旋ピッチを有し、右第2選択波長反射層22R及び左第2選択波長反射層22Lは、概ね同一の螺旋ピッチを有する。例えば、右第1選択波長反射層21R,左第1選択波長反射層21Lは、近赤外光帯域のうちの短波長側を反射する役割を担い、右第2選択波長反射層22R,左第2選択波長反射層22Lは、近赤外光帯域のうちの長波長側を反射する役割を担う。すなわち、4層の選択波長反射層を用いることによって相補的に近赤外光帯域を反射する。
【0026】
各選択波長反射層の反射帯域は、概ね数式(1)によって求められる。
Δλ=Δn・p ・・・数式(1)
Δλは、反射帯域(最大反射率×1/2の反射波長帯域)を示し、Δnは屈折率異方性を示し、pは螺旋ピッチを示す。
ここで、Δn=0.3、pが600nmである材料を用いると、反射帯域Δλは180nmとなる。右第1選択波長反射層21Rと左第1選択波長反射層21Lとは、互いに螺旋ピッチが概ね同一であって、液晶相の螺旋方向が互いに逆の層をいう。右第2選択波長反射層22Rと左第2選択波長反射層22Lについても同様である。これによって、反射中心波長λを概ね同一とできる。
【0027】
なお、反射中心波長とは、最も反射強度の強い波長と定義する。また、ここで云う螺旋ピッチが概ね同一とは、反射中心波長が±30nm程度の差も含むものとする。また、近赤外遮蔽層20は、全体で所定の赤外光帯域の反射が実現できればよく、右第1選択波長反射層21Rと左第1選択波長反射層21Lとが、互いに螺旋ピッチが概ね同一であることは必須ではない。換言すると、右第1選択波長反射層21Rと左第1選択波長反射層21Lは、反射波長帯域が概ね同一であるものに限定されず、異なる反射波長帯域のものであってもよい。右第2選択波長反射層22Rと左第2選択波長反射層22Lについても同様である。
【0028】
近赤外遮蔽層20は、可視光帯域において高い透過性を有し、近赤外光において高い遮蔽性を示すことが好ましい。例えば、420〜695nmの可視光を透過し、710〜1100nmの近赤外光帯域を遮蔽することが好ましく、700〜1200nmの光を遮蔽することがより好ましい。第1実施形態の近赤外遮蔽層20は、420〜695nmの可視光の透過率が65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、700〜1100nmの波長域における光の透過率は1%以下が好ましく、特に、710〜860nmの波長域における光の透過率は0.2%以下が好ましい。
【0029】
コレステリック液晶は、通常、棒状のネマチック液晶やスメクチック液晶に対して不斉中心等を持つカイラルドーパントを添加することによって得られる。また、螺旋軸を有する円盤状液晶は、円盤状液晶に対してカイラルドーパントを添加することによって得られる。カイラルドーパントによって、液晶分子に捩じれが生じ、旋光性が付与される。螺旋を誘起するカイラルドーパントの濃度を調整することによって、若しくは液晶性化合物やカイラルドーパントの種類を代えることによって螺旋ピッチを変えることができる。螺旋ピッチを変えることによって特定の波長の光を反射させることが可能となる。螺旋ピッチは、適宜設計可能である。
螺旋ピッチは反射中心波長と屈折率からお概ね以下の数式(2)で決定する。
例えば屈折率が1.5で900nmの反射中心波長としたい場合は600nm=0.6μとする。
螺旋ピッチ=反射中心波長÷屈折率 ・・・数式(2)
【0030】
選択波長反射層を形成するために、水平配向膜等の配向制御膜を形成してもよい。例えば、光学基板10上、又は/及び選択波長反射層間に、ポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を塗膜してラビング処理したラビング膜を設けてもよい。撮像装置の光学経路に粉塵や静電気が発生することを防止する観点からは、直線偏光紫外光を高分子膜上に照射することによって、偏光方向の高分子鎖を選択的に反応させ、これによって異方性を発生させて液晶配向能を付与する光配向制御が好ましい。
【0031】
なお、右第1選択波長反射層21R及び左第1選択波長反射層21Lと、右第2選択波長反射層22R及び左第2選択波長反射層22Lは、それぞれ隣接する位置に配設しているが、積層順は任意である。用いる液晶組成物や、求められる特性等に応じて調整すればよい。
【0032】
<反射防止層> 反射防止層30は、公知の反射防止層を制限なく使用できる。例えば、反射防止層30として、屈折率の低い無機化合物と屈折率の高い無機化合物とを交互に積層した積層体(例えば、特許文献3)や、屈折率の低い無機化合物からなる層(例えば、SiOの塗膜や、特許文献4に記載された中空状のSiOの塗膜)、屈折率の低い樹脂からなる層(例えば、特許文献5のフッ素樹脂の塗膜)が使用できる。
【0033】
屈折率の低い樹脂としては、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フルオロシリコン樹脂などが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に含フッ素重合体からなる低屈折率材料からなる反射防止層が好適な例として挙げられる。市販されているものとしては、アークトップ(URP2199、旭硝子社製)、リアルック(RL7800、RL9000、RL9200、日本油脂社製)などがある。なお、低屈折率とは、具体的には屈折率が1.1〜1.6であることが好ましく、1.2〜1.5であることがより好ましく、1.3〜1.48であることがさらに好ましい。
【0034】
反射防止層30は、上述したものを組み合わせて用いてもよい。第1実施形態においては、真空プロセスを用いないで製造する反射防止層の一例について説明し、第6実施形態、第7実施形態において、真空プロセスを用いて製造する反射防止層の一例について説明する。
【0035】
反射防止層30は、反射防止帯域の広帯域化を達成しつつ、反射特性に優れる膜であることが好ましい。反射防止層30の膜厚は、10〜3000nmの範囲であることが好ましい。10nm未満であると反射防止性能が不十分であり、3000nmを超えるとクラックが入りやすくなったり、干渉縞が発生したり、傷が目立ちやすくなるおそれがある。
【0036】
反射防止層30を構成する塗膜や誘電体多層膜の反射率は、分光光度計で測定できるが、反射防止層30は、狭くとも波長420〜630nmの可視光帯域において、好ましくは波長420〜695nmの可視光帯域において、反射率の最小値が2%以下であることが好ましく、かつ、反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることが好ましい。反射率の最小値が2%超であると、反射防止の機能が不充分となるおそれがある。
【0037】
反射防止層30の表面には、無機物、又は/及び有機物からなる特定の機能を有する塗膜がさらに形成され、ハードコート、着色、導電、帯電防止、偏光、紫外光遮蔽、赤外光遮蔽、防汚、防曇、光触媒、抗菌、蓄光、電池、屈折率制御、撥水、撥油、指紋除去、滑り性等より選ばれる1種、又は2種以上の機能が付与されてもよい。
【0038】
なお、近赤外光カットフィルタ1は、400nm以下の紫外光波長帯域の光を遮蔽する光学特性を有することが好ましく、410nm以下の光の遮蔽性を有することがより好ましい。紫外光波長帯域の光を遮蔽する紫外光遮蔽層、紫外光吸収層を積層してもよいし、紫外光吸収剤等を反射防止層30、光学部材10等に含有させてもよい。また、赤外線吸収層などが積層されていてもよい。あるいは、後述する第6実施形態、第7実施形態で説明するように、反射防止層として、誘電体多層膜を利用し、これらの膜に紫外光反射機能や近赤外反射機能を付与してもよい。
【0039】
<製造方法> 次に、近赤外光カットフィルタ1の製造方法の一例について説明する。但し、近赤外光カットフィルタ1の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0040】
光学部材10は、所望のサイズ、厚みになるように切断・加工され、必要に応じて、研削、研磨、面取り等を行う。その後、光学部材10を洗浄し、必要に応じて、塗膜の密着性をより高める目的等で、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、オゾン処理等の放電処理、水、酸やアルカリ等の化学処理、又は研磨剤を用いた物理的処理を施す。
【0041】
光学部材10として樹脂を用いる場合には、その表面にコロナ処理や易接着処理を施すことが好ましい。光学部材10としてガラスを用いる場合には、表面にシランカップリング剤による表面処理を施してもよい。シランカップリング剤による表面処理が施されたガラス板を用いることにより、近赤外遮蔽層20、反射防止層30との密着性を高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N'−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシランのようなアミノシラン類や、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシシラン類、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランのようなビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を使用できる。
【0042】
次いで、反射防止層30を形成する。第1実施形態においては、組成物を塗布・乾燥・硬化により形成する方法について説明する。なお、反射防止層30として誘電体多層膜を用いる例については、後述する。
まず、反射防止層30の塗膜を形成するための塗布用の組成物を調製し、光学部材10上に公知の方法で塗布する。例えば、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、又はコンマコーター法等のコーティング法等が挙げられる。その他、バーコーター法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等も使用できる。また、塗膜の機械的強度を高める目的で、必要に応じて、加熱や紫外光や電子線等による照射を行ってもよい。加熱する場合、基材の耐熱性を加味して決定する必要があるが、100℃以下とすることが好ましい。
【0043】
反射防止層30の組成物は、例えば、中空状SiOが分散した分散液やこれにマトリックス成分や配合剤を加えた分散液などである。マトリックス成分(バインダ)を混合することによって塗膜の硬度を向上させることができる。マトリックス成分の固形分量は、例えば、反射防止粒子の全固形分量の0.1〜10倍とする。マトリックス成分は、外部エネルギー(熱、活性光線等)によって硬化するものが好ましく、金属酸化物の前駆物質や有機樹脂等が好適な例として挙げられる。
【0044】
反射防止層30を形成するための組成物には、光学部材との濡れ性を向上させるために、適宜、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等の界面活性剤を添加してもよい。また、組成物の固形分濃度は、0.1〜50質量%程度であることが好ましい。組成物は、無機物、又は/及び有機物からなる各種塗料用配合剤が配合され、ハードコート、着色、導電、帯電防止、偏光、紫外光遮蔽、赤外光遮蔽、防汚、防曇、光触媒、抗菌、蓄光、電池、屈折率制御、撥水、撥油、指紋除去、滑り性等より選ばれる1種、又は2種以上の機能が付与されてもよい。
【0045】
また、組成物には、塗膜に求められる機能に応じて、通常使用される添加剤、例えば、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外光吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤等を適宜添加できる。反射防止層30は、光学部材10上に、反射防止層30を形成するための組成物を塗布し、乾燥することによって形成される。必要に応じて、硬化処理を行ってもよい。硬化処理を紫外光照射によって行う場合には、紫外光吸収剤を添加しない、若しくは硬化に支障がない帯域の紫外光吸収剤や添加量とする必要がある。従って、紫外光照射によって硬化処理を行う場合には、近赤外光遮蔽層よりも光入射側に、別の紫外光吸収層を設けて紫外光をカットすることが好ましい。
【0046】
紫外光吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外光吸収剤、ベンゾフェノン系紫外光吸収剤、サリシレート系紫外光吸収剤、シアノアクリレート系紫外光吸収剤、トリアジン系紫外光吸収剤、オキザニリド系紫外光吸収剤、ニッケル錯塩系紫外光吸収剤、無機系紫外光吸収剤等が好ましく挙げられる。市販品として、Ciba社製、商品名「TINUVIN 479」等が挙げられる。無機系紫外光吸収剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等の粒子が挙げられる。
【0047】
次いで、近赤外遮蔽層20を形成するための液晶組成物を調製する。液晶組成物は、例えば、重合性官能基を有するネマチック若しくはスメクチックの液晶性化合物と、重合性官能基を有するカイラルドーパントとを含有する液晶組成物である。また、液晶組成物は、円盤状液晶とカイラルドーパントを含有する液晶組成物でもよい。カイラルドーパントは、必ずしも重合性基を有していなくてもよく、また、重合性基を有するカイラルドーパントと、重合性基を有しないカイラルドーパントを併用してもよい。液晶性化合物も、重合性官能基を有しないものが含まれていてもよい。また、液晶性化合物は、低分子化合物のみならず、ポリマーであってもよい。
【0048】
液晶組成物には、通常、重合開始剤も含まれている。また、必要に応じて、コレステリック液晶相の形成に影響を与えない範囲において、重合開始剤、重合禁止剤、紫外光吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤等を含有していてもよい。また、近赤外遮蔽層20の膜強度を高めるために、可塑剤等を添加することも可能である。
【0049】
光安定剤としては、ヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。液晶組成物中の光安定剤の含有量は、原料成分100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましく、0.1〜0.3質量部が特に好ましい。
【0050】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、ベンジル類、ミヒラーケトン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、及びチオキサントン類等が挙げられる。また熱重合開始剤としてアゾビス系、及び過酸化物系の重合開始剤が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。液晶組成物中の光、又は熱重合開始剤の含有量は液晶組成物の全体量に対して、0.01〜5質量%が好ましく、0.03%〜2質量%が特に好ましい。
【0051】
重合性官能基を有する液晶性化合物は、カイラルドーパントの添加によって螺旋軸を有する液晶相を示し、螺旋軸を有する液晶相を固定化でき、かつ、近赤外光帯域を選択反射可能なものを用いる。これらの条件を満足すれば、その構造は特に限定されない。コレステリック液晶相を形成するための液晶性化合物の一例として、下記化学式(1)、(2)により表わされる液晶性化合物が挙げられる。
【化1】

【化2】

【0052】
但し、化学式(1)(2)中のA、A、Aは、それぞれ独立に、外部エネルギーを加えることによって重合する硬化性官能基であればよく、特に限定されない。外部エネルギーは、例えば、活性光線、加熱、電子線である。これらは、単独で/又は組み合わせて使用できる。このうち、取扱容易性の観点から、紫外光、可視光等の活性光線照射により重合させる方法が好ましい。
【0053】
、A、Aの好ましい例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の硬化性官能基を挙げることができる。このうち、硬化速度を高めることができる点で特に好ましくは、アクリロイル基、メタクリロイル基である。化学式(1)の硬化性化合物は、2つの硬化部位を有する2官能性の化合物であることにより、硬化物の多くは架橋構造を示し、熱可塑性が抑制される。このため、幅広い温度領域において安定して液晶の配向を制御でき好ましい。A、Aの部位の重合には、通常、重合開始剤が用いられる。
【0054】
化学式(1)(2)中のR、R、Rは、それぞれ独立に、−(CHO−、又は−(CH−とすることが好ましい。p及びqは、それぞれ独立に2〜8の整数であることが好ましい。炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。一般に、重合性の液晶組成物を重合させると、重合の前後でΔnの値が低下する傾向があるが、R、R、Rが−(CHO−、又は−(CH−等のポリメチレン基を有する場合、重合の前後におけるΔn値の低下を抑えることができる。
【0055】
化学式(1)(2)中のZ、Zは、液晶性を発現するためのユニットであり、棒状構造を有する。例えば、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレン基、フェニレン基等がエステル結合やカーボネート結合等で連結した2価の基である。
【0056】
液晶組成物に含まれる重合性官能基を有するカイラルドーパントについては、特に限定されないが、例えば、下記化学式(3)〜(6)に示すイソソルビド誘導体、若しくはイソマンニド誘導体等が挙げられる。軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として使用できる。
【化3】

【0057】
重合性官能基を有する液晶性化合物と、カイラルドーパントを少なくとも含む液晶組成物を光学部材10上に塗布する。カイラルドーパントの量は、液晶化合物に対して1〜30モル%であることが好ましい。液晶組成物に溶媒が添加されている場合には、塗膜の乾燥を行う。溶媒を除去し、温度を所定の条件下にすることによって、コレステリック液晶相が発現する。この状態において、重合を行う。重合は、前述したように外部エネルギーを印加することによって行う。コレステリック液晶相を安定して発現させる点からは、コレステリック液晶相−等方相相転移温度(Tc)よりも−10℃以下の温度とすることが好ましい。重合は、ラジカル重合が好ましい。重縮合等で水等の揮発物が重合中に発生する反応や、液晶特性に悪影響を与える副生成物を発生する反応は好ましくない。円盤状液晶性分子の重合については、例えば、特許文献6などに記載された方法で行うことができる。
【0058】
重合として、紫外光による光重合を行う場合には、照射エネルギーは、10mJ〜50J/cmであることが好ましく、50〜15000mJ/cmであることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、100度以下の加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、必要に応じて、酸素濃度、窒素濃度を制御できる。
【0059】
光照射に用いる光源は、特に制限されない。例えば、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管等を用いることができる。光照射は、非偏光でも偏光でもよく、偏光を用いる場合は直線偏光を用いることが好ましい。さらに、フィルタや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0060】
上記工程によって、近赤外遮蔽層20を構成する選択波長反射層の1つが形成される。第1実施形態においては、この操作を4回繰り返すことによって近赤外遮蔽層20が形成される。液晶組成物中の液晶性化合物は、一種類のモノマーであってもよいし、複数のモノマーが混合されたものであってもよい。また、上記化学式(1)、(2)のモノマーが混合されたものでもよい。さらに、非重合性の液晶性化合物や、非液晶性の重合性化合物が液晶組成物中に含有されていてもよい。
【0061】
液晶組成物は、重合性官能基を有する液晶性化合物と重合性官能基を有するカイラルドーパントを合わせて75質量%以上含む液晶組成物であることが好ましく、さらに、90質量%以上を含んでいることが好ましい。液晶組成物としては、重合性液晶組成物を75質量%以上、特に85質量%以上含む液晶組成物が好ましい。上記工程を経て、近赤外光カットフィルタ1が製造される。
【0062】
なお、近赤外遮蔽層20は、上記液晶組成物の例や、上記製造方法に限定されるものではない。例えば、上記特許文献7〜8に記載の液晶性化合物や、製造方法を用いてもよい。上記製造例においては、反射防止層30を光学部材10上に形成した後に、近赤外遮蔽層20を形成する例を述べたが、先に近赤外遮蔽層20を形成し、その後に反射防止層30を形成してもよい。
【0063】
上記特許文献1、2の製造方法によれば、通常、真空蒸着法、スパッタ法、化学気相成長法、イオンビーム法、イオンプレーティング法等の真空成膜法により成膜するため、反り等の変形が生じやすいという問題があった。また、この方法によれば、耐熱性の低い樹脂を用いる場合においても、基板変形が生じやすいという問題があった。
【0064】
一方、第1実施形態の近赤外光カットフィルタの製造方法においては、近赤外遮蔽層20、反射防止層30それぞれについて、組成物を調製して、塗布・(乾燥)・硬化することによって形成する。このため、近赤外遮蔽層20、反射防止層30を真空成膜法に比して低温度で成膜し、反り等の変形の問題を抑制できる。また、光学部材10の材料や、反射防止層30のマトリックス樹脂として、耐熱性の低い樹脂を選択することもできる。これらの結果、素材の選択肢を高めることができる。光学部材10として、例えば、薄型化が求められている場合には薄型化に有利な樹脂材料を選定したり、高性能化が求められている場合には耐熱性は低いが高性能化に有利な素材等の選定もできる。
【0065】
<撮像装置> 次に、図2Aを参照しながら、第1実施形態の近赤外光カットフィルタを搭載した撮像装置の例を説明する。
【0066】
図2Aは、第1実施形態の近赤外光カットフィルタ1を用いた撮像装置の一例の要部を概略的に示す断面図である。撮像装置101は、近赤外光カットフィルタ1、近赤外吸収層40、固体撮像素子50、第1の撮像レンズ51、第2の撮像レンズ52、筺体53、カバーガラス54等を有する。
【0067】
撮像装置101は、筺体53及びカバーガラス54によって固体撮像素子50や近赤外光カットフィルタ1やレンズ等が収容されている。カバーガラス54は、被写体側の最前面に配置されている。カバーガラス54の被写体側とは反対側の主面には、近赤外吸収層40が被覆されている。筺体53内には、第1の撮像レンズ51、第2の撮像レンズ52、近赤外光カットフィルタ1、及び固体撮像素子50が、被写体側からこの順に光軸Xに沿うように互いに離間して配置されている。なお、近赤外吸収層40については、第2実施形態において詳述する。また、近赤外吸収層40は、用途、ニーズ、求められる特性等に応じて設けなくてもよい。
【0068】
近赤外光カットフィルタ1は、固体撮像素子50側に近赤外遮蔽層20が、第2の撮像レンズ52側に反射防止層30が配置されている。被写体側より入射した光は、カバーガラス54及び近赤外吸収層40、第1の撮像レンズ51、第2の撮像レンズ52、近赤外光カットフィルタ1を通って固体撮像素子50に入射する。撮像装置101に入射した光は、近赤外吸収層40によって、近赤外光がある程度吸収される。その後、近赤外光カットフィルタ1を通過することで、固体撮像素子50に到達するまでに近赤外光を遮蔽する。固体撮像素子50は、受光した光を固体撮像素子50において電気信号に変換し、画像信号として出力する。
【0069】
近赤外光カットフィルタとして前述の光吸収型のガラスフィルタを用いる場合には、薄型化やコストの点で課題があった。一方、第1実施形態の近赤外光カットフィルタ1によれば、近赤外遮蔽層20と反射防止層30を用いることによって、光吸収型のガラスフィルタを使用せずに近赤外光カットの性能を満足させることができる。従って、光学部材10の選択肢を広げることができる。その結果、近赤外光カットフィルタの薄型化を実現できる。また、低コスト材料も使用できる。なお、前述したように本発明の近赤外光カットフィルタは、光吸収型のガラスを併用してもよく、光吸収型のガラスを排除するものではない。
【0070】
また、第1実施形態の近赤外光カットフィルタによれば、真空プロセスを用いずに、光学部材10に対して塗布処理により近赤外遮蔽層20、反射防止層30を形成しているので、低温プロセスで製造できる。そのため、近赤外光カットフィルタの反り、変形、変色、劣化を抑制できる。従って、品質の高い近赤外光カットフィルタを提供できる。その結果、第1実施形態の近赤外光カットフィルタ1を搭載した撮像装置の信頼性を高めることができる。また、真空プロセスを用いずに製造できるので、薄型化された光学部材を使用でき、撮像装置の軽薄短小化が可能となる。さらに、真空プロセスを用いずに製造できるため、製造時間を短縮化し、生産性を高めることが可能となる。
【0071】
<第1変形例> 次に、第1実施形態とは異なる近赤外光カットフィルタの例について説明する。第1変形例の近赤外光カットフィルタ及び撮像装置は、以下の点を除く基本的な構成は上記第1実施形態と同様である。すなわち、第1実施形態においては、近赤外遮蔽層20が4層の選択波長反射層によって構成されていたのに対し、第1変形例においては、近赤外遮蔽層が6層の選択波長反射層によって構成されている点において相違する。
【0072】
図1Bは、第1変形例の近赤外光カットフィルタ1Bの一例を示す模式的断面図である。第1変形例の近赤外光カットフィルタ1Bは、図1Bに示すように、6層の近赤外遮蔽層20からなる。具体的には、近赤外遮蔽層20は、右第1選択波長反射層21R,左第1選択波長反射層21L、右第2選択波長反射層22R,左第2選択波長反射層22L、右第3選択波長反射層23R,左第3選択波長反射層23Lの6層が光学部材10側からこの順に積層された積層体からなる。右第3選択波長反射層23Rは、近赤外光帯域の右円偏光を選択反射するための層であり、左第3選択波長反射層23Lは、近赤外光帯域の左円偏光を選択反射するための層である。
【0073】
第1変形例の近赤外光カットフィルタ1Bは、6層の選択波長反射層21R〜23Lが相補的に近赤外光帯域を遮蔽する。6層用いているので、より効果的に近赤外光帯域を反射させたり、近赤外光帯域の反射率を高めたり、用いるコレステリック液晶を発現させるための液晶組成物の組成の選択肢を多くしたりできる。なお、第1変形例においては6層の選択波長反射層を形成する例を述べたが、8層以上の選択波長反射層を用いてもよい。また、選択波長反射層は、所望の近赤外光帯域の右円偏光と左円偏光を反射可能であればよく、3層、5層、7層等の奇数層であってもよい。
【0074】
第1変形例によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態よりも選択波長反射層の層数を増加させることによって、より効果的に近赤外光帯域を反射させたり、近赤外光帯域の反射率を高めたり、選択波長反射層1つあたりの反射帯域の幅を狭めることを可能にすることで液晶性化合物等の選択肢を増やしたりできる。
【0075】
<第2変形例> 第2変形例の近赤外光カットフィルタ及び撮像装置は、以下の点を除く基本的な構成は上記第1変形例と同様である。すなわち、第1変形例においては、近赤外遮蔽層が光学部材10の第2主面12側に配設されていたのに対し、第2変形例においては、近赤外遮蔽層の6層の選択波長反射層のうちの2層は、第1主面11側に配設されている点において相違する。
【0076】
図1Cは、第2変形例の近赤外光カットフィルタ1Cの一例を示す模式的断面図である。第2変形例の近赤外光カットフィルタ1Cは、図1Cに示すように、6層の近赤外遮蔽層20からなる。具体的には、近赤外遮蔽層20は、右第1選択波長反射層21R,左第1選択波長反射層21L、右第2選択波長反射層22R,左第2選択波長反射層22L、右第3選択波長反射層23R,左第3選択波長反射層23Lの6層を備え、右第1選択波長反射層21R,左第1選択波長反射層21L、右第2選択波長反射層22R,左第2選択波長反射層22Lが光学部材10の第2主面12上に、この順に積層され、右第3選択波長反射層23R,左第3選択波長反射層23Lが光学部材10の第1主面11上に、この順に積層された積層体からなる。
【0077】
第2変形例の近赤外光カットフィルタ1Cは、6層の選択波長反射層21R〜23Lが相補的に近赤外光帯域を遮蔽する。また、光学部材10の第1主面11側に選択波長反射層23R,23Lを設ける構成とすることにより、一主面状に形成する選択波長反射層の積層数を低減できる。その結果、選択波長反射層の平坦性をより良好に保ち、各選択波長反射層の品質・信頼性を向上させることができる。なお、第2変形例においては6層の選択波長反射層を形成する例を述べたが、第1主面上に3層、第2主面12上に3層となるように積層してもよい。また、第1主面11上に4層、第2主面12上に4層積層して、合計8層の選択波長反射層からなるようにしてもよい。無論、合計10層以上の選択波長反射層から構成されていてもよい。また、第1主面、第2主面の積層数・積層形態は、適宜設計できる。例えば、第2主面12上には、選択波長反射層を形成せずに、第1主面11上にのみ選択波長反射層を設けてもよい。
【0078】
第2変形例によれば、上記第1変形例と同様の効果を得ることができる。また、第1変形例よりも、一主面上に形成する選択波長反射層の層数を減少させることによって、より信頼性の高い選択波長反射層を製造できる。
【0079】
<第3変形例> 第3変形例の近赤外光カットフィルタ及び撮像装置は、以下の点を除く基本的な構成は上記第1実施形態と同様である。すなわち、第1実施形態においては、近赤外遮蔽層は、4層の選択波長反射層の積層体であったのに対し、第3変形例においては、近赤外遮蔽層は、2層の選択波長反射層の積層体である点において相違する。
【0080】
図1Dは、第3変形例の近赤外光カットフィルタ1Dの一例を示す模式的断面図である。第3変形例の近赤外光カットフィルタ1Dは、図1Dに示すように、2層の近赤外遮蔽層20からなる。具体的には、近赤外遮蔽層20は、右−選択波長反射層24R,左−選択波長反射層24Lの2層を備え、右−選択波長反射層24R,左−選択波長反射層24Lが光学部材10の第2主面12上に、この順に積層されている。
【0081】
第3変形例の近赤外光カットフィルタ1Dの右−選択波長反射層24Rは、近赤外光帯域の右円偏光を反射し、左−選択波長反射層24Lは、近赤外光帯域の左円偏光を反射する。2層の選択波長反射層24R、24Lによって、相補的に近赤外光帯域を遮蔽する。
【0082】
右−選択波長反射層24R及び左−選択波長反射層24Lは、螺旋ピッチが、選択波長反射層24R,24Lの厚み方向において概ね連続的に変化している。例えば、光学部材10から離間するにつれて、螺旋ピッチが大きくなるようになっている。このような選択波長反射層を用いることにより、近赤外光帯域の反射領域の広帯域化を実現できる。
【0083】
右−選択波長反射層24R及び左−選択波長反射層24Lの製造方法は、公知の技術(例えば、特許文献9)等により行うことができる。例えば、コレステリック液晶相を形成後、厚み方向に重合プロファイルが異なるようにする方法がある。光重合を行う場合には、照射プロファイルを変更すればよい。また、反応性の異なる2種類以上の液晶性化合物やカイラルドーパントを用いて、重合の反応速度差等を利用して螺旋ピッチを概ね連続的に変化させてもよい。
【0084】
なお、第3変形例においては、右−選択波長反射層24R及び左−選択波長反射層24Lの計2層を用いる例を述べたが、第1実施形態、第1変形例、第2変形例等と組み合わせて近赤外遮蔽層を形成してもよい。また、第3変形例のような螺旋ピッチが厚み方向に概ね連続的に変化させた右−選択波長反射層と左−選択波長反射層を、それぞれ2層以上積層してもよい。また、第3変形例の選択波長反射層と、螺旋ピッチが厚み方向に一定の選択波長反射層とを組み合わせた積層体としてもよい。また、右−選択波長反射層24Rと左−選択波長反射層24Lは、光学部材10の異なる主面上に形成されていてもよい。
【0085】
第3変形例によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態よりも近赤外遮蔽層の積層数を減少させることができるので、製造時間の短縮化、及び薄型化を実現できる。
【0086】
<第4変形例> 次に、第1実施形態とは異なる撮像装置の例について説明する。第4変形例の撮像装置は、以下の点を除く基本的な構成は上記第1実施形態と同様である。すなわち、第1実施形態においては、近赤外光カットフィルタを固体撮像素子50と第2の撮像レンズ53の間に互いに離間するように配設していたのに対し、第4変形例においては、近赤外光カットフィルタをカバーガラスに設けている点において相違する。また、第4変形例においては近赤外吸収層40を設けていない点においても相違する。
【0087】
図2Bに、第4変形例の撮像装置の一例を示す模式的断面図を示す。撮像装置101Bは、カバーガラス54のあった位置に近赤外光カットフィルタ1を設けている。すなわち、近赤外光カットフィルタ1が、カバーガラス54の役割も兼ね備えている。光学部材10には、上述した無機材料や樹脂材料を好適に使用できる。例えば、近赤外吸収が可能なガラス、若しくは近赤外光吸収色素等の吸収材を添加したガラス、若しくは樹脂により形成してもよい。また、後述する第2実施形態で説明する近赤外吸収層を積層してもよい。
【0088】
第4変形例の撮像装置によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに、近赤外光カットフィルタ1をカバーガラス54の位置に設け、近赤外吸収層をカバーガラス54の主面に形成しない構成を採用しているので、撮像装置101Bの小型化を実現できる。また、部品数を削減できるというメリットもある。なお、カバーガラス54のうち、撮像に寄与する領域が近赤外光カットフィルタであればよく、撮像に寄与しない領域は、別の部材によって構成されていてもよい。また、カバーガラス54は、ガラスである必要はなく、樹脂を主成分とする素材等でもよい。
【0089】
[第2実施形態]
次に、上記第1実施形態とは異なる近赤外光カットフィルタについて説明する。第2実施形態の近赤外光カットフィルタは、近赤外吸収層を有する以外は、上記第1実施形態と同様である。
【0090】
図3Aに、第2実施形態の近赤外光カットフィルタ2の一例を示す模式的断面図を示す。第2実施形態の近赤外光カットフィルタ2は、光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30、近赤外吸収層40を有する。近赤外吸収層40は、近赤外遮蔽層20の上層に形成されている。近赤外吸収層40は、近赤外光を吸収する役割を担う。可視光帯域の光の透過率が高く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化するものが好ましい。なお、近赤外遮蔽層20は、通常、近赤外吸収層40よりも入射光側に配置される。
【0091】
<近赤外吸収層> 近赤外吸収層40は、近赤外光吸収色素、近赤外光吸収粒子等の近赤外光吸収材、及びマトリックスを含有する組成物を光学部材10上に塗布して乾燥させ、必要に応じて硬化することによって得られるものである。近赤外吸収層40は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において公知の近赤外吸収層を制限なく利用できる。
【0092】
近赤外光吸収粒子の好適な例としては、インジウム、インジウム系複合酸化物、錫、錫系複合酸化物、亜鉛、及び亜鉛系複合酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つから構成されるものが挙げられる。具体的には、InやITO(酸化インジウム錫)、Sn、ZnO、AZO(酸化アルミニウム亜鉛)、GZO(GaドープのZnO)等である。また、近赤外光吸収粒子の好適な例として、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子からなるものも挙げられる(特許文献10参照)。
【0093】
また、他の好適な近赤外線吸収粒子として、実質的に下記化学式(7)で表わされる化合物の結晶子からなり、数平均凝集粒子径が、200nm以下のものも挙げられる(特許文献11参照)。
【化4】

式中、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)及びNHからなる群から選ばれる1種以上であり、nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。数平均凝集粒子径は、20〜200nmの範囲であることが好ましい。
【0094】
次に、第2実施形態の近赤外吸収層40の一例として、以下の条件を満たす近赤外吸収色素と、屈折率が1.54以上の透明樹脂とを含有する組成物から形成する例を説明する。
【0095】
近赤外光吸収色素は、アセトンに溶解して測定される波長域400〜1000nmの光の吸収スペクトルにおいて、ピーク波長が695±1nmであり半値全幅が35±5nmである極大吸収ピークを有するもの(以下、このような性質を有する近赤外光吸収色素をNIR吸収色素(A)と称する)を用いることが好ましい。なお、NIR吸収色素(A)をアセトンに溶解して測定される波長域400〜1000nmの光の吸収スペクトルを単にNIR吸収色素(A)の吸収スペクトルという。すなわち、極大吸収ピークのピーク波長における吸光度が1となる濃度でNIR吸収色素(A)をアセトンに溶解した溶液の吸収スペクトルをいう。
【0096】
NIR吸収色素(A)としては、その吸収スペクトルが上記特徴を有する以外に、上記極大吸収ピークのピーク波長における吸光度を1として算出される630nmから該ピーク波長までの領域の平均傾斜が0.01(/nm)である特徴を有することが好ましい。
また、NIR吸収色素(A)の吸収スペクトルにおいては、上記極大吸収ピーク以外に半値全幅が100nm以下の形状がシャープな吸収ピークを有しないことが好ましい。
NIR吸収色素(A)の上記吸光特性は、近赤外光カットフィルタに求められる波長630〜700nm付近の間で急峻に吸光度が変化する光学特性に合致する。
【0097】
このような、NIR吸収色素(A)として、具体的には、そのアセトン溶液を用いて測定される波長域400〜1000nmの光の吸収スペクトルが図4に示されるパターンを有するNIR吸収色素(A)が好ましい。
【0098】
第2実施形態の近赤外吸収層40は、上記NIR吸収色素(A)を、屈折率が1.54以上の透明樹脂(B)に分散させた組成物から形成しているので、波長630〜700nmの間で急峻に吸収曲線が変化する光学特性を維持しながら、遮蔽領域をNIR吸収色素(A)の極大吸収ピークのピーク波長から長波長域にまで広げることが可能となる。
【0099】
透明樹脂(B)としては、屈折率が1.54以上の透明樹脂であれば、特に制限されない。具体的には、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキド系樹脂等の熱可塑性樹脂、エン・チオール系樹脂、エポキシ系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、光硬化型アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、シルセスキオキサン系樹脂等の熱若しくは光により硬化させる樹脂において、屈折率が1.54以上の透明樹脂が用いられる。これらのなかでも、透明性の点から、屈折率が1.54以上のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エン・チオール系樹脂、エポキシ系樹脂等が好ましく用いられ、さらに、屈折率が1.54以上のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂がより好ましく用いられる。
【0100】
透明樹脂(B)の屈折率は、1.55以上が好ましく、1.56以上がより好ましい。なお、本明細書において屈折率は、特に断りのない限り波長589nmにおける屈折率をいう。透明樹脂(B)の屈折率の上限は特にないが、入手のしやすさ等から1.72程度が挙げられる。
【0101】
透明樹脂(B)としては、上記に分類される透明樹脂の製造に際して原料成分の分子構造を調整する等によりポリマーの主鎖や側鎖に特定の構造を導入する等の従来公知の方法で屈折率を上記範囲に調整したものが用いられる。また、透明樹脂(B)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、アクリル系樹脂として、オグソールEA−F5503(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率:1.60)、オグソールEA−F5003(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率:1.59)等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂としては、OKPH4HT(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率:1.64)、OKPH4(商品名、大阪ガスケミカル社製、屈折率:1.61)、バイロン103(商品名、東洋紡社製、屈折率:1.55)等が挙げられる。
【0102】
近赤外吸収層におけるNIR吸収色素(A)の含有量は、透明樹脂(B)100質量部に対して、0.5〜3質量部の割合が好ましく、0.5〜0.8質量%の割合がより好ましい。NIR吸収色素(A)の含有量が透明樹脂(B)100質量部に対して0.5質量%以上であれば、十分な近赤外光吸収特性を維持できる。3質量%以下であれば、可視領域の透過率を損なうことなく、十分な近赤外吸収特性を維持できる。
【0103】
近赤外吸収層40の厚さは、特に限定されない。用途、使用する装置内の配置スペース、要求される吸収特性等に応じて適宜定めればよい。近赤外吸収層40の厚さは、好ましくは1〜100μmの範囲であり、より好ましくは5〜50μmの範囲である。上記範囲とすることで、十分な近赤外光吸収能と膜厚の平坦性を両立できる。1μm以上、さらには5μm以上とすることで、近赤外光吸収能を十分に発現させることができる。100μm以下とすると、膜厚の平坦性が得やすくなり、吸収率のバラツキを生じにくくできる。50μm以下すると、さらに装置の小型化に有利となる。
【0104】
近赤外吸収層の450〜600nmの可視光における透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。また、695〜720nmの波長域における光の透過率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
さらに、数式(3)で表わされる近赤外吸収層の透過率の変化量Dは、−0.5以下が好ましく、−0.82以下がより好ましい。
D(%/nm)
=[T700(%)−T630(%)]/[700(nm)−630(nm)] ・・・数式(3)
式中、T700は、上記近赤外吸収層の透過スペクトルにおける波長700nmの透過率であり、T630は、上記近赤外吸収層の透過スペクトルにおける波長630nmの透過率である。なお、近赤外吸収層の透過率は、紫外可視分光光度計を用いて測定できる。紫外可視分光光度計は日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100形を用いて透過率を測定した。
【0105】
450〜600nmの可視光波長域における透過率が70%以上、好ましくは80%以上であり、695〜720nmの波長域における光の透過率が10%以下、好ましくは5%以下であれば近赤外光カットフィルタとしての用途に有用である。また、透過率の変化量Dが、−0.5以下、好ましくは−0.82以下であれば、波長630〜700nmの間における透過率の変化が十分に急峻となり、例えばデジタルスチルカメラやデジタルビデオ等の近赤外光吸収材に好適となる。透過率の変化量Dが、−0.5以下、好ましくは−0.82以下であれば、さらに、近赤外光帯域の光を遮蔽しつつ可視波長域の光の利用効率が向上し、暗部撮像でノイズ抑制の点で有利となる。
【0106】
<製造方法> 次に、近赤外吸収層40の製造方法の一例について説明する。但し、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の製造方法も本発明の範疇に属する。近赤外吸収層40の製造方法は、以下の方法に限定されるものではなく、公知の技術を適宜利用できる。
【0107】
光学部材10を上記第1実施形態と同様に準備し、必要に応じて、塗膜の密着性をより高める目的等で、上記第1実施形態で説明した物理的処理を施す。そして、第1実施形態と同様の要領で、光学部材10上に反射防止層30、近赤外遮蔽層20を積層する。次いで、近赤外吸収層40を形成するための組成物を調製する。第2実施形態においては、NIR吸収色素(A)、及び透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分と必要に応じて配合される他の成分を、溶媒に分散、又は溶解させて組成物の例について説明する。
【0108】
組成物には、近赤外吸収層40の効果を阻害しない範囲で、他の成分を配合してもよい。他の成分の例としては、上記NIR吸収色素(A)以外の近赤外光ないし赤外光吸収剤、色調補正色素、紫外光吸収剤、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤、熱若しくは光重合開始剤、重合触媒等が挙げられる。これら任意成分は、組成物中の透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分100質量部に対して、それぞれ10質量部以下の量で配合することが好ましい。
【0109】
上記NIR吸収色素(A)以外の近赤外光ないし赤外光吸収剤のうち、有機系色素としては、例えば、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物等が使用できる。
【0110】
上記NIR吸収色素(A)以外の近赤外光ないし赤外光吸収剤のうち、無機微粒子としては、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、ホウ化ランタン等が挙げられる。なかでも、ITO微粒子は、可視光帯域の光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長帯域も含めた広範囲の光吸収性を有するため、赤外波長帯域の光の遮蔽性を必要とする場合に特に好ましい。
【0111】
ITO微粒子の数平均凝集粒子径は、散乱を抑制し、透明性を維持する点から、5〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましく、5〜70nmであることがより一層好ましい。ここで、本明細書において、数平均凝集粒子径とは、検体微粒子を水、アルコール等の分散媒に分散させた粒子径測定用分散液について、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値をいう。動的光散乱式粒度分布測定装置としては日機装社製、マイクロトラック超微粒子粒度分析計UPA−150を用いて測定した。
【0112】
近赤外光ないし赤外光吸収剤は、近赤外吸収層に求められる他の物性を確保しながら、近赤外光ないし赤外光吸収剤がその機能を発揮できる量の範囲として、透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.3〜10質量部の割合で配合できる。
【0113】
紫外光吸収剤、光安定剤、重合開始剤としては、上記第1実施形態で挙げたものを好適に使用できる。無機系紫外光吸収剤を用いる場合、その数平均凝集粒子径は、透明性の点から、5〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましく、5〜70nmであることがより一層好ましい。
紫外光吸収剤は、近赤外吸収層に求められる他の物性を確保しながら、紫外光吸収剤がその機能を発揮できる量の範囲として、透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部の割合で配合できる。
【0114】
組成物中の光安定剤の含有量は、透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。組成物中の光、又は熱重合開始剤の含有量は、透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。
【0115】
組成物が含有する溶媒としては、NIR吸収色素(A)、及び透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分を安定に分散、又は溶解することが可能な溶媒であれば、特に限定されない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メトキシエタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ガソリン、軽油、灯油等の炭化水素類;アセトニトリル、ニトロメタン、水等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0116】
溶媒の量は、透明樹脂(B)又は透明樹脂(B)の原料成分100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、150〜500質量部が特に好ましい。なお、組成物中の不揮発成分(固形分)の含有量は、組成物全量に対して10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
【0117】
組成物の調製には、マグネチックスターラー、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等の撹拌装置を使用できる。高い透明性を確保するためには、撹拌を十分に行うことが好ましい。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。組成物の塗布には、上記第1実施形態の反射防止層を形成するための塗布方法で説明したとおりである。組成物を剥離性のキャリアフィルムに塗布する場合には、上記第1実施形態で説明したキャリアフィルムを好適に使用できる。
【0118】
これら基材上に上記組成物を塗布した後、乾燥させることで該基材上に近赤外吸収層が形成される。組成物が透明樹脂(B)の原料成分を含有する場合には、さらに硬化処理を行う。反応が熱硬化の場合は乾燥と硬化を同時に行うことができるが、光硬化の場合は、乾燥と別に硬化処理を設ける。また、光学部材10上に近赤外遮蔽層20、近赤外吸収層40を順に積層する方法に変えて、剥離性のキャリアフィルム上に近赤外吸収層40、近赤外遮蔽層20をこの順に形成し、反射防止層30を積層した光学部材10と近赤外吸収層20を接合するラミネート処理によって貼り合わせてもよい。
【0119】
第2実施形態の近赤外光カットフィルタ2、撮像装置102によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、近赤外吸収層40と近赤外遮蔽層20とを組み合わせることにより、効率よく、かつ高性能に特定の波長帯域を遮蔽できる。例えば、420〜695nmの可視光を透過し、近赤外光帯域の所定の波長域の光、例えば、710〜1100nmの波長域の光を効率よく、かつ高性能に遮蔽できる。なお、上記数式(1)で表わされる透過率の変化量Dが−0.5以下であることが好ましく、−0.82未満であることがより好ましい点を述べたが、近赤外吸収層40、近赤外遮蔽層20を組み合わせることによって、これらの特性を満足するように設計すればよい。
【0120】
第2実施形態の近赤外吸収層40によれば、含有するNIR吸収色素(A)の光学特性により可視光帯域の光の透過率が高く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化する特性を有し、さらにこれと組み合わせる透明樹脂(B)の作用により、遮光波長帯域が695〜720nmまでの幅広い特性を有する。
【0121】
また、第2実施形態の近赤外吸収層は、組成物を基材上に塗布し、乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させることにより製造するので高温処理が不要である。従って、近赤外光カットフィルタ2の反り、変形、変色等を抑制し、高品質の近赤外光カットフィルタを提供できる。また、近赤外吸収層40を、近赤外光カットフィルタ2内に設けることによって、撮像装置の小型化、薄型化を実現できる。
【0122】
なお、近赤外吸収層40と赤外遮蔽層20との積層順は特に限定されず、任意である。すなわち、図3Aのように、光学部材10の第2主面12上に、近赤外吸収層40、近赤外遮蔽層20をこの順に積層してもよいし、その逆に、光学部材10の第2主面12上に、近赤外遮蔽層20、近赤外吸収層40をこの順に積層してもよい。また、近赤外遮蔽層20を構成する4層の選択波長反射層のいずれかの間に近赤外吸収層40を積層してもよい。
【0123】
<第5変形例> 次に、第2実施形態とは異なる近赤外光カットフィルタの例について説明する。第5変形例の近赤外光カットフィルタは、以下の点を除く基本的な構成は上記第1実施形態と同様である。すなわち、第2実施形態においては、近赤外遮蔽層20が第2主面12上に配設されていたのに対し、第5変形例においては、近赤外遮蔽層20が第1主面11上に配設されている点において相違する。
【0124】
図3Bは、第5変形例の近赤外光カットフィルタ2Bの一例を示す模式的断面図である。第5変形例の近赤外吸収層40は、図3Bに示すように、光学部材10の第2主面12の直上に積層されている。一方、近赤外遮蔽層20は、光学部材10の第1主面11上に形成され、その上層に反射防止層30が積層されている。
【0125】
第5変形例によれば、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第5変形例においては、近赤外遮蔽層20を第1主面11側に配置する例を述べたが、第2変形例のように、第1主面11と第2主面12に分けて配置してもよい。
【0126】
[第3実施形態]
図5Aは、第3実施形態の固体撮像素子50Aの一部を概略的に示す断面図である。第3実施形態の固体撮像素子は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報機器に組み込まれる、小型カメラ等の撮像装置に好適に使用される。
【0127】
固体撮像素子50Aにおいては、図5Aに示すように、光電変換素子62及び遮光層63が形成されたシリコン基板等の半導体基板61上に、平坦化層64、カラーフィルタ層65、近赤外遮蔽層20、及びマイクロレンズである光学部材10が順に設けられている。さらに光学部材10上に、反射防止層30が設けられている。近赤外遮蔽層20、光学部材10、反射防止層30によって、近赤外光カットフィルタ3が構成されている。
【0128】
第3実施形態の固体撮像素子50Aは、固体撮像素子50Aのマイクロレンズを近赤外光カットフィルタ3の光学部材として兼用している。そして、固体撮像素子50Aのマイクロレンズである光学部材10の上層に反射防止層30を設け、マイクロレンズである光学部材10の下層に近赤外遮蔽層20を配設している。
【0129】
光電変換素子62は、半導体基板61の表層に複数形成されている。また、光電変換素子が配設されていない領域に、可視光を含む全光線を遮蔽する遮光層63が形成されている。光電変換素子62に入射された光は、フォトダイオードによって光電変換される。平坦化層64は、光電変換素子62及び遮光層63上に形成され、全体を平らにする役割を担う。
【0130】
カラーフィルタ層65は、光電変換素子62に対応して形成され、例えば、原色系の場合、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルタからなり、補色系(YMC)の場合、イエロー(Y)、マゼンタ(Mg)、シアン(Cy)のカラーフィルタからなる。カラーフィルタの色数に制限はなく、より色再現性を広げるため、例えば上記原色系においては、黄色等を追加して3色以上としてもよい。また、各色の配置も特に制限はない。さらに、第3実施形態では、カラーフィルタ層65が全面に設けられているが、その一部が設けられていないか、あるいはカラーフィルタ層65自体を有さない構造であってもよい。カラーフィルタは、例えば顔料若しくは染料を含有する樹脂により形成される。
【0131】
光学部材10は、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ノボラック樹脂等の樹脂により、加熱成形法やエッチング法等を用いて形成される。光学部材10は、樹脂の他、ガラス、結晶等により形成されてもよい。光学部材10を通過した光が、光電変換素子62に集光される。
【0132】
近赤外遮蔽層20は、第3変形例で用いた右−選択波長反射層24R,左−選択波長反射層24Lの2層よりなる。近赤外遮蔽層20は、例えば、調製した液晶組成物を、反射防止層30付き光学部材10上に塗膜して重合処理することにより形成できる。その後、固体撮像素子50Aの平坦化層64上に接着層等を介して接合すればよい。また、近赤外遮蔽層20は、平坦化層64上に形成し、これと反射防止層30付き光学部材10とを接合するようにしてもよい。なお、塗布、重合処理は、選択波長反射層毎に行う。液晶組成物の調製方法、液晶組成物の塗膜方法、及び重合方法は、上記実施形態、及び変形例で説明したとおりである。
【0133】
赤外吸収層を配設することが望ましい場合には、上記第1実施形態の撮像装置101のように、カバーガラス54の裏側主面等に積層すればよい。また、カバーガラス54自体に赤外吸収層の機能を付与してもよい。また、被写体側の任意の位置に近赤外吸収層を配置してもよい。例えば、光学部材10の上面側に赤外吸収層を設けてもよい。また、近赤外吸収層は2ヶ所以上に分けて設けてもよい。
【0134】
なお、近赤外遮蔽層20は、第3実施形態においては光学部材10の下面に設けられているが、カラーフィルタ層65、平坦化層64の下面に設けてもよく、任意の2ヶ所以上に設けてもよい。複数個所に設置することにより、撮像画像の品質に優れる撮像装置を得ることができる。
【0135】
第3実施形態の近赤外光カットフィルタ3によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、近赤外光カットフィルタ3を固体撮像素子内に組み込むことによって、撮像装置の軽薄短小化を実現できる。
【0136】
<第6変形例> 次に、第3実施形態とは異なる固体撮像素子の例について説明する。第6変形例の固体撮像素子は、近赤外光カットフィルタに近赤外吸収層を設けている点を除く基本的な構成は上記第3実施形態と同様である。
【0137】
図5Bに、第6変形例の固体撮像素子50Bの一例を示す模式的断面図を示す。固体撮像素子50Bは、光学部材10と近赤外遮蔽層20との間に近赤外吸収層40を設けている。
【0138】
第6変形例の固体撮像素子50Bによれば、第3実施形態と同様の効果が得られる。また、固体撮像素子内に近赤外吸収層も設置しているので、さらなる装置の小型化、薄型化を実現できる。また、部品数を削減できるというメリットもある。
【0139】
<第7変形例> 第7変形例の固体撮像素子は、近赤外光カットフィルタに近赤外吸収層を設けている点を除く基本的な構成は上記第3実施形態と同様である。
【0140】
図5Cに、第7変形例の固体撮像素子50Cの一例を示す模式的断面図を示す。固体撮像素子50Cは、平坦化層64とカラーフィルタ層65との間に近赤外吸収層40を設けている。近赤外光カットフィルタ3は、光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30、カラーフィルタ層、近赤外吸収層40により構成される。
【0141】
第7変形例の固体撮像素子50Cによれば、第3実施形態と同様の効果が得られる。また、固体撮像素子内に近赤外吸収層も設置しているので、さらなる装置の小型化、薄型化を実現できる。また、部品数を削減できるというメリットもある。
【0142】
[第4実施形態]
図6Aは、第4実施形態の撮像装置用レンズ70を示す断面図である。この撮像装置用レンズは、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA等の情報機器に組み込まれる小型カメラ等の撮像装置の固体撮像素子に結像させるレンズ系の全部、又は一部を構成するレンズである。
【0143】
図6Aに示す撮像装置用レンズ70は、レンズ本体として機能する光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30を具備する。すなわち、撮像装置用レンズ70は、近赤外光カットフィルタ4として機能する。
【0144】
光学部材10の第1主面11が凸面になっており、第2主面12が凹面となっている。第1主面11上に近赤外遮蔽層20が形成され、第2主面12上に反射防止層30が形成されている。なお、第1主面11上、又は/及び第2主面12上に赤外吸収層を設けてもよい。また、近赤外遮蔽層20は、第2主面12上に設けたり、第1主面11及び第2主面12の両面に形成したりしてもよい。図6Aに示したような凹凸レンズは、凸レンズの機能を有するものは凸メニスカス、凹レンズの機能を有するものは凹メニスカスと呼ばれている。
【0145】
近赤外遮蔽層20、反射防止層30は、上述した製造方法と同様にして製造すればよい。また、光学部材10の第2主面12に従来公知の方法で反射防止層30を設け、第1主面11に、上述した方法で近赤外遮蔽層20を設けるようにしてもよい。
【0146】
光学部材10に用いられるレンズは、撮像装置用レンズとして利用可能なものである範囲において形状や材質等は限定されない。光学部材10を構成する材料としては、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶;BK7、石英、精密プレス成形用低融点ガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの材料は、紫外光帯域、又は/及び近赤外光帯域の波長の光に対して吸収特性を有するものであってもよい。また、光学部材10は、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した色ガラスで構成されていてもよい。また、図面は、いずれも屈折型レンズの例であるが、フレネルレンズ等の回折を利用した回折レンズや、屈折と回折を併用したハイブリッドレンズ等であってもよい。
【0147】
光学部材10がガラスからなるレンズを使用する場合、その表面は、近赤外遮蔽層や反射防止層30との密着性を高めるため、シランカップリング剤による表面処理が施されていてもよい。シランカップリング剤としては、上記実施形態で例示したものを好適に使用できる。光学部材10としてプラスチックからなるレンズを使用する場合、近赤外遮蔽層や反射防止層30を形成する前に、レンズ表面にコロナ処理や易接着処理を施すことが好ましい。
【0148】
なお、複数層の撮像装置用レンズ70において、近赤外遮蔽層20を設け、複数の近赤外遮蔽層20によって近赤外光帯域の遮蔽を実現してもよい。また、第4実施形態の撮像装置用レンズ70を用い、かつ、第1実施形態のような近赤外光カットフィルタを配設して、両者によって近赤外光帯域を遮蔽してもよい。
【0149】
第4実施形態の近赤外光カットフィルタ4によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、近赤外光カットフィルタ4を固体撮像素子用レンズ内に組み込むことによって、撮像装置の軽薄短小化を実現できる。また、部品点数を削減できるというメリットもある。
【0150】
<第8変形例> 次に、第4実施形態とは異なる固体撮像素子用レンズの例について説明する。第8変形例の固体撮像素子用レンズは、2つのレンズが接合されており、これらの間に近赤外遮蔽層20が設けられている点において相違する。
【0151】
図6Bに、第8変形例の固体撮像素子用レンズ70の一例を示す模式的断面図を示す。固体撮像素子用レンズ70は、第1光学部材13と第2光学部材14の間に近赤外遮蔽層20が挟持されている。すなわち、第1光学部材13と第2光学部材14からなる光学部材10内に近赤外遮蔽層20が形成されている。第1光学部材13の最表面には、反射防止層30が、第2光学部材14の最表面には、近赤外吸収層40が被覆されている。上記構成によって、第8変形例の固体撮像素子用レンズ70は、近赤外光カットフィルタ4Bとしても機能する。
【0152】
第8変形例の固体撮像素子用レンズ70は、例えば、反射防止層30を形成した第1光学部材13上に近赤外遮蔽層20を形成し、これと近赤外吸収層40を形成した第2光学部材14を接着剤層等によって接合すればよい。近赤外遮蔽層20のみならず、近赤外吸収層40も第1光学部材13と第2光学部材14の間に挟持するようにしてもよい。
【0153】
第8変形例の近赤外光カットフィルタ4Bによれば、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0154】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態の撮像装置の一例の要部を概略的に示す断面図である。この撮像装置101は、図7に示すように、固体撮像素子50、カバーガラス54、複数のレンズ群56、絞り55、これらを固定する筐体53を有する。カバーガラス54は、近赤外光カットフィルタ5の光学部材10としても機能する。すなわち、カバーガラス54である光学部材10のレンズ群56側には、反射防止層30が形成され、カバーガラス54である光学部材10の固体撮像素子50側には、近赤外遮蔽層20が形成されている。すなわち、近赤外光カットフィルタ5は、上記第1実施形態の近赤外光カットフィルタと同様の構成となっている。
【0155】
複数のレンズ群56は、固体撮像素子50の撮像面に向けて配置された、第1の撮像レンズL1、第2の撮像レンズL2、第3のレンズL3からなる。第3のレンズL3と第2のレンズL2との間に、絞り55が配置されている。固体撮像素子50と、レンズ群56と、絞り55は、光軸Xに沿って配置されている。
【0156】
撮像装置102においては、被写体側より入射した光は、第1の撮像レンズL1、第2の撮像レンズL2、絞り55、第3のレンズL3、及び近赤外光カットフィルタ5を通って固体撮像素子50に受光される。そして、固体撮像素子50によって受光した光は、電気信号に変換され画像信号として出力される。
【0157】
なお、近赤外吸収層を近赤外光カットフィルタ5内に形成してもよい。これにより、より近赤外光を効率よくカットオフできる。また、近赤外吸収層は、レンズ群56のいずれかにその機能を付与したり、カバーガラス54である光学部材10にその機能を付与したりしてもよい。また、近赤外遮蔽層20は、カバーガラス54の両面に形成したり、被写体側に配置された反射防止層とカバーガラス54の間に形成したりしてもよい。さらに、近赤外光カットフィルタをカバーガラスに設けずに、レンズ群56のいずれかに設けたり、レンズ群56、カバーガラス54に併用して配置したりしてもよい。例えば、レンズ群56、カバーガラス54に2層ずつ選択波長反射層を配設するようにしてもよい。すなわち、撮像装置内に複数の近赤外光カットフィルタを配設してもよい。
【0158】
第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、近赤外光カットフィルタ5を固体撮像素子内に組み込むことによって、撮像装置の軽薄短小化を実現できる。また、部品点数を削減できるというメリットもある。
【0159】
[第6実施形態]
次に、近赤外光カットフィルタの反射防止層として、可視光帯域の反射防止機能に加え、近赤外光の反射機能を兼ね備えた誘電体多層膜を用いた例について説明する。図8に、第6実施形態の近赤外光カットフィルタ6の一例を示す模式的断面図を示す。第6実施形態の近赤外光カットフィルタ6は、光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30を有する。
【0160】
反射防止層30は、可視光帯域の反射防止機能を有すると共に、近赤外光の反射機能を兼ね備える誘電体多層膜からなる。換言すると、反射防止層30は、420nm〜695nmの可視光の反射を防止して透過し、近赤外光帯域の所定の波長域を遮蔽する。
【0161】
第6実施形態の近赤外光カットフィルタ6は、近赤外遮蔽層20と反射防止層30が協働して、近赤外光を遮蔽する。これらによって遮蔽される帯域は、710〜1100nmが好ましく、700〜1200nmがより好ましい。さらに、反射防止層30は、400nm以下の紫外光帯域の光を遮蔽する光学特性を有することが好ましく、410nm以下の光の遮蔽性を有することがより好ましい。
【0162】
反射防止層30として誘電体多層膜を用いることによって、近赤外光の急峻なカットをより容易に設計できる。また、紫外光の急峻なカット機能も容易に付加できる。これは、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層することで光の干渉を利用して特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する機能を発現できるためである。近赤外遮蔽層20の特性に応じて、近赤外光の急峻なカットを行う波長を適宜選定すればよい。例えば、630nm〜700nmの近赤外光帯域の急峻なカットが可能な反射機能と可視光帯域の反射防止機能を有する誘電体多層膜を用いたり、700nmより長波長の近赤外光帯域のカットが可能な反射機能と可視光帯域の反射防止機能を有する誘電体多層膜を用いたりできる。また、紫外光帯域の反射機能と可視光帯域の反射防止機能を有する誘電体多層膜を用いたり、これらを併用したりできる。
【0163】
近赤外光帯域の反射機能を有する誘電体多層膜を前述の近赤外遮蔽層20と併用することにより、より効果的に近赤外光をカットできる。紫外光の急峻なカット、又は/及び近赤外光の急峻なカットを実現することにより、高品質な固体撮像素子、若しくは受光素子に用いる近赤外光カットフィルタを提供できる。
【0164】
次に、第6実施形態の近赤外光カットフィルタの製造方法の一例について説明する。第6実施形態の近赤外光カットフィルタは、反射防止層30が誘電体多層膜からなり、反射防止層30を剥離性のキャリアフィルム上に真空成膜法によって成膜している点において第1実施形態と相違する。それ以外の製造方法、構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0165】
反射防止層30をキャリアフィルム上に形成する。具体的には、キャリアフィルム上に複数の誘電体膜を形成する。誘電体膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜を交互に積層することが好ましい。これによって、光の干渉を利用し、特定の波長域の光の透過と遮蔽を制御する機能を発現できる。
【0166】
反射防止層30を塗布する剥離性のキャリアフィルムは、剥離性を有するものであれば、フィルム状、シート状の他、板状でもよい。材料も特に限定されない。具体的には、ガラス板や、離型処理されたプラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等からなるフィルム、ステンレス鋼板等が使用される。
【0167】
高屈折率の誘電体膜を構成する高屈折率材料としては、屈折率がこれと組み合わせて用いられる低屈折率材料に比べて高い材料であれば特に制限されない。具体的には、屈折率が1.6を超える材料が好ましい。より具体的には、Ta(2.22)、TiO(2.41)、Nb(2.3)、ZrO(1.99)などが挙げられる。これらのうちでも、本発明においては、成膜性と屈折率等をその再現性、安定性を含め総合的に判断して、TiO等が好ましく用いられる。なお、化合物の後の括弧内の数字は屈折率を示す。以下、低屈折率材料についても同様に化合物の後の括弧内の数字は屈折率を示す。
【0168】
低屈折率の誘電体膜を構成する低屈折率材料としては、屈折率がこれと組み合わせて用いられる高屈折率材料に比べて低い材料であれば特に制限されない。具体的には、屈折率が1.55未満の材料が好ましい。より具体的には、SiO(1.46)、SiO(1.46以上1.55未満)、MgF(1.38)などが挙げられる。これらのうちでも、本発明においては、SiOが成膜性における再現性、安定性、経済性などの点で好ましい。
【0169】
誘電体多層膜の形成は、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0170】
近赤外遮蔽層20付きの光学部材10は、反射防止層30を形成していない光学部材10上に、第1実施形態と同様にして近赤外遮蔽層20を形成することにより得られる。得られたキャリアフィルム上の誘電体多層膜である反射防止層30は、近赤外遮蔽層20付きの光学部材10の第1主面11とラミネートによって貼り合わせる。キャリアフィルムを剥離する工程を経て、近赤外光カットフィルタが得られる。キャリアフィルムは、通常、ラミネートと同時に、若しくはラミネート後に剥離する。
【0171】
第6実施形態の近赤外光カットフィルタの製造方法によれば、真空プロセスを用いた反射防止層と、真空プロセスを用いずに塗布処理によって形成した光学部材10上の近赤外遮蔽層20とをラミネート処理によって接合している。従って、光学部材10、近赤外遮蔽層20を高温処理する工程を回避しつつ、製造プロセスの選択肢、反射防止層の選択肢を増やすことができる。なお、光学部材10の厚みや強度が十分にある場合には、光学部材10上に反射防止層30を真空中で形成し、その後に、近赤外遮蔽層20を上記第1実施形態と同様の要領で形成してもよい。また、反射防止層30を形成した光学部材10と、キャリアフィルム上に形成した近赤外遮蔽層20とを積層し、その後にラミネートしてもよい。
【0172】
第6実施形態の近赤外光カットフィルタ6によれば、反射防止層30において、近赤外光帯域の反射機能を追加することにより、近赤外遮蔽層20のみによって近赤外光を遮蔽する場合よりも効果的に近赤外光を遮蔽できる。また、近赤外遮蔽層20を構成する選択波長反射層の積層数を減らしたり、近赤外遮蔽層20の設計自由度を高めたりできる。しかも、反射防止層30として誘電体多層膜を用いているので、近赤外光の急峻なカットを容易に実現できる。また、UVカット機能も付与することにより、より高性能な近赤外光カットフィルタを提供できる。また、近赤外光カットフィルタ6は、ラミネートによって反射防止層30を光学部材10上に積層しているので、近赤外遮蔽層20や光学部材10を高温処理プロセスに曝さずに製造できる。
【0173】
[第7実施形態]
図9に、第7実施形態の近赤外光カットフィルタ7の一例を示す模式的断面図を示す。第7実施形態の近赤外光カットフィルタ7は、光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30、近赤外吸収層40を有する。
【0174】
反射防止層30は、可視光帯域の反射防止機能を有すると共に、近赤外光の反射機能を兼ね備える誘電体多層膜からなる。換言すると、反射防止層30は、420nm〜695nmの可視光の反射を防止して透過し、近赤外光帯域の所定の波長域を遮蔽する。詳細には、第6実施形態に記載したとおりである。
【0175】
第7実施形態の近赤外光カットフィルタ7は、近赤外遮蔽層20と反射防止層30と近赤外吸収層40が協働して、近赤外光を遮蔽する。近赤外遮蔽層20は、第1実施形態に記載したものを、赤外吸収層40は、第2実施形態に記載したものを好適に使用できる。近赤外遮蔽層20、反射防止層30、近赤外吸収層40によって遮蔽される帯域の好ましい範囲等は、上述したとおりである。さらに、反射防止層30は、400nm以下の紫外光帯域の光を遮蔽する光学特性を有することが好ましく、410nm以下の光の遮蔽性を有することがより好ましい。
【0176】
反射防止層30として誘電体多層膜を用いることによって、第6実施形態で記載したとおり、近赤外光の急峻なカットや、紫外光の急峻なカット機能も容易に付加できる。
【0177】
反射防止層30は、上記第6実施形態と同様によって製造できる。また、近赤外光カットフィルタ7は、キャリアフィルム上の反射防止層30と、近赤外遮蔽層20及び近赤外吸収層40付きの光学部材10とラミネートを貼り合わせることによって得られる。
【0178】
第7実施形態の近赤外光カットフィルタ7によれば、反射防止層30において、近赤外光帯域の反射機能を追加することにより、近赤外遮蔽層20と近赤外吸収層40によって近赤外光を遮蔽する場合よりも効果的に近赤外光を遮蔽できる。また、近赤外遮蔽層20を構成する選択波長反射層の積層数を減らしたり、近赤外遮蔽層20や近赤外吸収層40の設計自由度を高めたりできる。しかも、反射防止層30として誘電体多層膜を用いているので、近赤外光の急峻なカットを容易に実現できる。また、UVカット機能も付与することにより、より高性能な近赤外光カットフィルタを提供できる。また、近赤外光カットフィルタ7は、ラミネートによって反射防止層を光学部材10上に積層しているので、近赤外遮蔽層20や光学部材10を高温処理プロセスに曝さずに製造できる。
【0179】
なお、光学部材10の厚みや強度が十分にある場合には、光学部材10上に直接、反射防止層30を形成し、その後に近赤外遮蔽層20、近赤外吸収層40を形成してもよい。また、反射防止層30を形成した光学部材10と、キャリアフィルム上に近赤外吸収層40及び近赤外遮蔽層20を積層し、その後にラミネートしてもよい。
【0180】
[第8実施形態]
次に、本発明の近赤外光カットフィルタをCCDセンサに用いる例について説明する。図10に、第8実施形態のCCDセンサの模式図を示す。CCDセンサ90は、撮像素子の受光部91、カバーガラス92、パッケージ93、ピン94等を有する。受光部91は、パッケージ93及びカバーガラス92内に収容されている。受光部91には、半導体センサ部があり、受光部91上にはカバーガラスが嵌め込まれている。
【0181】
カバーガラス92は、本発明の近赤外光カットフィルタが用いられている。すなわち、金赤外光カットフィルタの光学部材がカバーガラス92と兼用され、カバーガラス92の入射光側である第1主面上に反射防止層が、カバーガラス92の受光部91側である第2種面上に近赤外遮蔽層が形成されている。近赤外光カットフィルタは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば特に限定されずに使用できる。例えば、第7実施形態の近赤外光カットフィルタ7が用いられる。
【0182】
第8実施形態のCCDセンサによれば、カバーガラス92を近赤外光カットフィルタと兼用しているので、近赤外光カットフィルタを別個に配置するスペースを確保する必要がない。従って、CCDセンサの軽薄短小化を実現できる。なお、第8実施形態においては、CCDセンサに適用する例について述べたが、CMOSセンサ等にも好適に適用できる。
【0183】
≪実施例≫
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は、実施例によって限定されるものではない。
【0184】
(実施例1)下記化学式(8)のネマチック液晶を1質量部、下記化学式(9)のカイラルドーパントを0.0310質量部、重合開始剤としてイルガキュア819(BASF製)を0.0419質量部、ノニオン系界面活性剤としてサーフロンS−420(AGCセイミケミカル製)を0.0016質量部、有機溶媒としてメチルエチルケトンを1.5652質量部、混合して撹拌することにより液晶組成物を調製した。
【化5】

【化6】

【0185】
次いで、洗浄処理した光学部材であるガラス基板(AN−100、旭硝子(株)社製)上に、上記液晶組成物をスピンコートして塗膜を形成した。そして、塗膜においてコレステリック液晶相が発現していることを確認後、窒素雰囲気下で紫外光照射ランプ(TOSCURE1404FU、東芝社製)を用いて紫外光を照射することにより重合してコレステリック液晶相を固定化した。これにより、選択波長反射層付き透明基板を得た。スピンコート条件は、600rpmで10秒とし、紫外光照射条件は103mW/cmで2分間とした。分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100形)で測定した透過スペクトルから、750〜850nmの帯域の透過率が低下しており、コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズメータ(BYK Gardner社製、haze-gard plus)で測定したヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0186】
(実施例2) コレステリック液晶組成物において、カイラルドーパントである化学式(9)の添加量を0.0283質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって選択波長反射層付き透明基板を得た。近赤外選択波長反射層を形成したガラス基板の透過スペクトルから、850〜950nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0187】
(実施例3) コレステリック液晶組成物において、カイラルドーパントである化学式(9)の添加量を0.0255質量部に変更した以外は、実施例1と同様の方法によって選択波長反射層付き透明基板を得た。透過スペクトルから、950〜1050nmの帯域の透過率が低下しており、コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0188】
(実施例4) コレステリック液晶組成物において、カイラルドーパントとして化学式(9)を下記化学式(10)に変更し、添加量を0.017質量部にした以外は、実施例1と同様の方法によって選択波長反射層付き透明基板を得た。透過スペクトルから、750〜850nmの帯域の透過率が低下しており、コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【化7】

【0189】
(実施例5) コレステリック液晶組成物において、カイラルドーパントである化学式(10)の添加量を0.0151質量部に変更した以外は、実施例4と同様の方法によって選択波長反射層付き透明基板を得た。透過スペクトルから、850〜950nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0190】
(実施例6) コレステリック液晶組成物において、カイラルドーパントである化学式(10)の添加量を0.0136質量部に変更した以外は、実施例4と同様の方法によって選択波長反射層付き透明基板を得た。透過スペクトルから、950〜1050nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0191】
(実施例7) 図11に示すような近赤外光カットフィルタを作製した。すなわち、近赤外光カットフィルタ8は、光学部材10、近赤外遮蔽層20、反射防止層30を有する。近赤外遮蔽層20は、実施例1の選択波長反射層1a、実施例2の選択波長反射層2a、実施例3の選択波長反射層3a、実施例4の選択波長反射層4a、実施例5の選択波長反射層5a、実施例6の選択波長反射層6aをこの順に積層したものである。
【0192】
以下、近赤外光カットフィルタ8の製造方法の一例について説明する。まず、実施例1で用いたガラス基板(光学部材10)の第1主面側に誘電体多層膜からなる反射防止層30を形成した。以下に、反射防止層30の形成方法について説明する。まず、光学部材10であるガラス基板上に、高屈折率の誘電膜と低屈折率の誘電体膜を交互に積層した。高屈折率の誘電膜としてTiO膜、低屈折率の誘電膜としてSiO膜を用いた。誘電膜の成膜は、Ti又はSiをターゲットとしてマグネトロンスパッター装置により作製した。詳細には、ArガスとOガスを導入した反応性スパッタによりTiO膜、SiO膜を積層した。得られたTiO膜、及びSiO膜の光学定数を、分光透過率測定により求めた。
【0193】
高屈折率の誘電膜と低屈折率の誘電膜が交互に積層された誘電体多層膜が形成された構成において、誘電体多層膜の積層数、TiO膜(高屈折率誘電体膜)の膜厚、SiO膜(低屈折率誘電体膜)の膜厚をパラメーターとしてシミュレーションし、波長400〜700nmの光を90%以上透過し、波長715〜900nmの光の透過率が5%以下となるような誘電体多層膜の構成を求めた。得られた誘電体多層膜の構成を表1に示す。また、この誘電体多層膜の透過率スペクトルを図12に示す。表1に示す誘電体多層膜を、反射防止層30として用いた。反射防止層30の全体の膜厚は3536nmであった。この誘電体多層膜は波長400〜700nmの反射防止層として機能するとともに波長700〜715nmの間で急峻に透過率が変化する特性を有するため、透過光波長と遮光波長の境界波長領域で透過率を急峻に変化させる性能が求められる光学フィルタに適している。
【0194】
【表1】

【0195】
上述した反射防止層30を積層したガラス基板上に、さらに、実施例1で積層した選択波長反射層を実施例1と同様の条件で積層した。同様にして、実施例2〜実施例6の選択波長反射層をこの順に積層した。積層条件は、それぞれ実施例2〜実施例6と同様とした。これにより近赤外光カットフィルタを得た。得られた近赤外光カットフィルタを実施例1と同様の分光光度計によって測定したところ、715〜1050nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。このことから、コレステリック液晶相の選択反射により赤外光を除去できることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0196】
(実施例8) 光学部材として、ガラス基板の代わりに赤外吸収色素を混合した樹脂フィルムを用いた。具体的には、赤外吸収色素を混合した樹脂フィルムとして、PETフィルム上にNIR層を配設した市販のNIRフィルム(東洋紡社製、No2832)を用いた。また、反射防止層としてフッ素樹脂含有フィルム(旭硝子社製、商品名:アークトップURP2199)を用いた。フッ素樹脂含有フィルムは、ラミネートにより赤外吸収色素を混合した樹脂フィルムと貼り合わせた。その後、反射防止層を貼り合わせた面とは反対側の赤外吸収色素を混合した樹脂フィルム上に、上記実施例7と同様の方法にて近赤外遮蔽層を形成し近赤外光カットフィルタを得た。
【0197】
得られた近赤外光カットフィルムを実施例1と同様の分光光度計によって測定したところ、750〜1050nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。このことから、コレステリック液晶相の選択反射と赤外吸収色素の吸収の効果により赤外光を除去できることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0198】
(実施例9) 光学部材として、ガラス基板の代わりに低屈折率樹脂層であるポリカーボネ―トフィルムを用いた点と、反射防止層として屈折率の低いフッ素樹脂含有フィルムを用いた点以外は、上記実施例7と同様の条件にて近赤外光カットフィルタを得た。すなわち、反射防止層を形成した面とは反対側のポリカーボネートフィルム上に、上記実施例7と同様の方法にて近赤外遮蔽層を形成した。
【0199】
得られた近赤外光カットフィルタを実施例1と同様の分光光度計によって測定したところ、750〜1050nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。このことから、コレステリック液晶相の選択反射の効果により赤外光を除去できることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【0200】
(実施例10) 実施例7で得られた近赤外光カットフィルタに、さらに、以下の近赤外吸収層を塗布した。近赤外線吸収層は、実施例7で得られた近赤外光カットフィルタの近赤外遮蔽層上に形成した。近赤外線吸収層に含有させる赤外吸収色素として、そのアセトン溶液の吸収スペクトルが図4に示されるNIR吸収色素(A)を用いた。
【0201】
以下、近赤外線吸収層の作製方法について説明する。まず、NIR吸収色素(A)と、アクリル樹脂(大阪ガスケミカル社製、商品名:オグソールEA−5503、屈折率1.60)の50質量%テトラヒドフラン溶液とを、アクリル樹脂100質量部に対してNIR吸収色素(A)が0.8質量部となるような割合で混合した。次いで、室温にて攪拌・溶解することで塗工液を得た。得られた塗工液を、実施例7の近赤外光カットフィルタ上にギャップ30μmのアプリケーターを用いてダイコート法により塗布し、100℃で5分間加熱乾燥させた。その後、塗膜に波長365nmの紫外光を360mJ/cm照射して硬化させ、実施例7の近赤外光カットフィルタ上に膜厚8μmの近赤外線吸収層が形成された近赤外光カットフィルタを得た。得られた近赤外光カットフィルタの透過スペクトルから、700〜1050nmの帯域の透過率が低下していることを確認した。コレステリック液晶相の選択反射により近赤外光をカットオフできることを確認した。また、ヘイズ値は1未満であり、透明性が高いことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明の近赤外光カットフィルタは、単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽特性を有するとともに、十分な小型化、薄型化ができることから、デジタルスチルカメラ等の撮像装置、プラズマディスプレイ等の表示装置、車両(自動車等)用ガラス窓、ランプ等に有用である。本発明の固体撮像素子は、単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽機能と固体撮像素子としての機能を併せ持つことができることから、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA等の情報機器に組み込まれる小型カメラ等の撮像装置に有用である。本発明の撮像装置用レンズは、単独であるいは他の選択波長遮蔽部材と組合せて用いた際に、良好な近赤外線遮蔽機能を有し、かつ撮像装置の十分な小型化、薄型化、低コスト化ができることから、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA等の情報機器に組み込まれる小型カメラ等の、固体撮像素子を用いた撮像装置に有用である。
【符号の説明】
【0203】
1〜8 近赤外光カットフィルタ
10 光学部材
11 第1主面
12 第2主面
13 第1光学部材
14 第2光学部材
20 近赤外遮蔽層
30 反射防止層
40 近赤外吸収層
50 固体撮像素子
51 第1のレンズ
52 第2のレンズ
53 筺体
54 カバーガラス
55 絞り
56 レンズ群
61 半導体基板
62 光電変換素子
63 遮光層
64 平坦化層
65 カラーフィルタ層
70 撮像装置用レンズ
90 CCDセンサ
91 受光部
92 カバーガラス
93 パッケージ
94 ピン
101、102 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子を具備する固体撮像素子を搭載した撮像装置であって、
被写体と前記光電変換素子の間に、近赤外光を遮蔽する近赤外光カットフィルタが設置されており、
前記近赤外光カットフィルタは、
光学部材と、
前記光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、
前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備え、
前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである撮像装置。
【請求項2】
前記近赤外光カットフィルタは、
さらに、近赤外吸収層を具備する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記赤外光カットフィルタの前記光学部材は、(i)前記光電変換素子の前面に前記固体撮像素子と一体的に形成されたレンズ、(ii)被写体と前記固体撮像素子の間に、これらと離間して配置され、前記固体撮像素子と光軸が一致する撮像装置用レンズ、(iii)前記固体撮像素子を保護するために、当該固体撮像素子の前方に設けられた透光性のカバーガラス、(iv)前記固体撮像素子と前記カバーガラスの間に設置された透光性の基材、のいずれかである請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記選択波長反射層は、前記コレステリック液晶相により構成されたものであり、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、膜厚方向に概ね一定であるか、膜厚方向に略連続的に変化するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記反射防止層は、誘電体多層膜である請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
光電変換素子を具備する固体撮像素子であって、
前記光電変換素子の前面に、近赤外光を遮蔽するための近赤外光カットフィルタが設置されており、
前記近赤外光カットフィルタは、
光学部材と、
前記光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、
前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備え、
前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである固体撮像素子。
【請求項7】
前記近赤外光カットフィルタは、さらに、近赤外吸収層を具備する請求項6に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記選択波長反射層は、前記コレステリック液晶相により構成されたものであり、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、膜厚方向に概ね一定であるか、膜厚方向に略連続的に変化するものである請求項6又は7に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記反射防止層は、誘電体多層膜である請求項6〜8のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
光電変換素子を具備する固体撮像素子の前面に、当該固体撮像素子と離間して配設して利用される固体撮像素子用レンズであって、
前記固体撮像素子用レンズは、近赤外光カットフィルタの機能も兼用するものであり、
前記近赤外光カットフィルタは、
前記固体撮像素子用レンズである光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、
前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備え、
前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである固体撮像素子用レンズ。
【請求項11】
前記近赤外光カットフィルタは、
さらに、近赤外吸収層を具備する請求項10に記載の固体撮像素子用レンズ。
【請求項12】
前記選択波長反射層は、前記コレステリック液晶相により構成されたものであり、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、膜厚方向に概ね一定であるか、膜厚方向に略連続的に変化するものである請求項10又は11に記載の固体撮像素子用レンズ。
【請求項13】
前記反射防止層は、誘電体多層膜である請求項10〜12のいずれか1項に記載の固体撮像素子用レンズ。
【請求項14】
固体撮像素子、若しくは受光素子に用いられる近赤外光カットフィルタであって、
光学部材と、
前記光学部材の第1主面の表層に形成された反射防止層と、
前記光学部材の前記第1主面、又は/及び前記第1主面とは反対側の第2主面上に形成された近赤外遮蔽層と、を備え、
前記近赤外遮蔽層は、少なくとも一組の螺旋軸の回転方向が右の液晶相を固定化した選択波長反射層と、螺旋軸の回転方向が左の液晶相を固定化した選択波長反射層とを積層したものである近赤外光カットフィルタ。
【請求項15】
前記近赤外光カットフィルタは、さらに、近赤外吸収層を具備する請求項14に記載の近赤外光カットフィルタ。
【請求項16】
前記選択波長反射層は、前記コレステリック液晶相により構成されたものであり、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、膜厚方向に概ね一定であるか、膜厚方向に略連続的に変化するものである請求項14又は15に記載の近赤外光カットフィルタ。
【請求項17】
前記反射防止層は、誘電体多層膜である請求項14〜16のいずれか1項に記載の近赤外光カットフィルタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−41141(P2013−41141A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178328(P2011−178328)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】