説明

撮像装置、撮像システム、撮像方法及び画像処理装置

【課題】各種画像処理を行うのに必要な回路規模を比較的小さくできると共に、階調範囲及びダイナミックレンジを比較的広範囲に確保した状態でHDR画像データの情報量を削減することが可能な撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】撮像装置100を、複数種類の露光時間で被写体を撮像できる撮像部10と、複数種類の露光時間で撮像された各被写体の画像データに基づき浮動小数点形式の第1HDR画像データを生成するHDR画像データ生成部11と、メモリアービタ12と、画像データを記憶するフレームメモリ13と、浮動小数点形式の第1HDR画像データに対してノイズ除去処理などの画像処理を行う画像処理部14と、画像処理後の浮動小数点形式の第1HDR画像データの出力形式を変換する出力形式変換部15とを含んで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的広範囲な階調範囲及びダイナミックレンジを確保した状態でHDR画像データの情報量の削減を行うことが可能な撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の多画素化、小型化の結果、ピクセルサイズ(センサセル)が小型化し、その結果、飽和電荷量が減少し、ダイナミックレンジ(Dレンジ)が狭くなっている。
撮像素子のDレンジの狭さを補うために、1フレーム期間に2種類以上の露光時間で撮影できる撮像素子が提案されている。また、2フィールドで1フレームを構成する撮像素子においては、奇数、偶数フィールドで露光時間を替えて撮像する方法も提案され、広いDレンジ撮影が可能である。特に、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のセンサでは、回路構成の工夫により、1フレームの撮像期間に複数回のサンプリングが可能、もしくは多チャンネル化が可能である。また、非破壊読み出し可能なセンサによれば、複数回のサンプリングが容易である。
【0003】
上記2種類以上の露光時間(例えば、標準露光時間、短露光時間など)で撮影した画像を、センサ外部もしくは内部で合成することで、広いDレンジ画像を得る。ここで、従来の画像表示装置では、表現できるコントラスト比の制限から、デシベル換算で50dB、ビット換算で8ビット相当に情報量を削減するトーンマッピングが行われている。この限られたダイナミックレンジ(Dレンジ)の中に収まるように、広いDレンジの画像の情報量を削減するため、コントラスト比の低い画像になる(人が見た印象と異なる)。
【0004】
出力装置の性能に応じて画像を圧縮する技術としては、例えば、特許文献1に記載の撮像装置がある。
さて、PC等コンピュータの世界では、被写体の3次元的な形状、反射率、色合い等や光源をモデル化し、また光源の位置、視点(カメラ)の位置を仮想的に決めて2次元画像が視点からどのように見えるかを計算により求めるコンピュータグラフィック(CG)技術が、映画、デザイン、ゲーム業界などで利用されている。CG技術は、画像を浮動小数点表現したハイダイナミックレンジ(HDR)画像により無限のDレンジが扱え、白とび、黒つぶれが無い、人が見た印象に近い自然な画像表現が行える。一般的に、HDR画像生成の為には、高価な計算資源、専用ソフト、プログラミング技術、膨大な計算資源と時間が必要である。
【0005】
前者(撮像装置)と後者(CG)技術の画像生成(絵作り)の違いをまとめると、前者(撮像装置)は、装置内で出力装置のDレンジを想定して絵作りを行って記録する(Dレンジが固定であるので固定小数点処理)。前者は、輝度のコントラスト情報を圧縮する為、階調情報が損失し、その結果、記録された画像を2次利用、例えば表示装置への表示、印刷などする場合、出力装置側での忠実な再現は難しい。一方、CGは、画像生成を浮動小数点処理で行い、コントラスト情報の損失が無いので、出力装置側で2次利用する場合、表示装置の性能や特性、またはユーザの見え方などに基づいて、最終的な画像を生成することが可能となり、より自然な(人の感性に近い)、更には感性を刺激する画像表現が可能となる。
【0006】
また、物理シミュレーションにおける浮動小数点演算では、ある時刻の演算結果を次の時刻の演算に利用するので、演算誤差の蓄積はシステムに目的の動作を行わせる際の問題となり得る。また3次元CGでは、視点をあるルールに則って変える場合など、演算誤差が蓄積して画像が絵的に崩れる、という問題が起こりうる。
一方、自然画像を撮像しながら、それに対して画像処理を施す場合、処理対象の情報(画像)が常に更新される為、演算誤差の蓄積という問題は起こらない。一方、Dレンジの狭さに起因する白とびや黒つぶれという問題は、画素情報の欠落であり、システムに目的の動作を行わせる際の問題となる。特に、白とびは、マシンビジョンにおいては、それが画像なのか欠陥なのか判別できず、システムに目的の動作とは異なる動作を誘発する恐れがある。また、マシンビジョンでは、領域検出(ラベリング)、エッジ検出、相関検出、2値化処理など、画像を大域的(マクロ)に捉えるので、画素値の演算誤差よりも、白とびや黒つぶれ等の情報損失の方が、認識等のシステム性能を大きく左右する。つまり、マシンビジョンでは、固定小数点演算によって演算誤差を低減するよりも、固定小数点数を浮動小数点数に変換して、Dレンジを人間の目の特性に近づけ(高精度化し)、十分なコントラスト比が得られるようにすることが重要となる。
【特許文献1】特開2000―188717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術においては、撮像装置内の演算処理を固定小数点演算で処理しているため、取り扱う画像のビット数が増加すると、演算に用いる演算器がビット数の増加数に対して指数的に増加し、回路規模や回路コストの著しい増加を招くという恐れがあった。
また、撮像装置からの出力は、各画素値が整数値で表現された画像データとなるため、コントラスト情報の損失が生じる恐れがあった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、各種の画像処理を行うのに必要な回路規模を比較的小さくできると共に、階調範囲及びダイナミックレンジを比較的広範囲に確保した状態でHDR画像データのデータ量を削減することが可能な撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1の撮像装置は、
第1及び第2の露光時間で被写体を撮像する撮像手段と、
前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成手段と、
前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成であれば、撮像手段によって、第1及び第2の露光時間で被写体を撮像することが可能であり、HDR画像データ生成手段によって、前記撮像手段で被写体を第1の露光時間及び第2の露光時間でそれぞれ撮像して得られた第1及び第2の画像データに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成することが可能であり、画像処理手段によって、前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行うことが可能である。
【0011】
更に、HDR画像データ変換手段によって、前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、画素値を仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、基数がX、当該基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換することが可能である。
【0012】
従って、HDR画像データを、仮数部及び指数部のビット数が固定の浮動小数点形式で扱うことができるので、例えば、色補間処理、ディテール処理、ノイズ除去処理などの画像処理における乗算を、仮数部同士の乗算、指数部同士の加算で行うことができるので、固定小数点形式で乗算を行う場合と比較して、回路規模を小型化することができるという効果が得られる。例えば、固定小数点乗算器は、内部の演算精度を確保するために、ビット拡張、例えば数値を整数部10ビット、小数部6ビットに拡張して、16ビット相当の乗算器を構成する。一方、浮動小数点乗算器は、10ビットの乗算器及び10ビット以下の加算器で済む。乗算器と加算器とでは、乗算器の方が回路規模が大きくなりやすく、特に、ビット数の増加に伴う回路規模の増加は指数的に上昇する。また、回路規模は処理速度にも影響を与え、一般に回路規模が小さければ小さいほど処理速度は速くなる。
【0013】
また、浮動小数点形式の第1HDR画像データの仮数部及び指数部のビット数の変換を行って、浮動小数点形式のままデータ量を圧縮するようにしたので、例えば、表示出力やプリントアウトなどの人が視認(又は鑑賞)することを目的とした場合に、人間の目の画像の認識性能に対して十分なコントラスト比及びダイナミックレンジを維持した状態でデータ量を圧縮することができる。これにより、出力の目的等に応じた適切な出力形式でHDR画像データを出力できると共に、データの圧縮により、HDR画像データの転送に必要なバス幅やHDR画像データの記憶に必要なメモリ容量などを低減することができるという効果が得られる。
【0014】
例えば、従来は、32ビットのHDR画像データ(整数値)を、8ビットの整数値に変換していたが、本形態では、例えば、仮数部8ビット、指数部4ビットの浮動小数点数に変換することで、データ量は4ビット分増加するものの、従来のダイナミックレンジ(50db)よりも約32000倍のダイナミックレンジを有するHDR画像データを得ることができる。
【0015】
ところで、固定小数点演算の場合は演算(丸め)誤差(=雑音)は、Dレンジが固定なので一定であるが、浮動小数点演算の場合は、レンジ(指数部の値)により、演算誤差が異なる。一方、画像(信号)の場合、画質はS/Nに依存する。浮動小数点演算の場合、S/Nの分母と分子の指数部は相殺しあい、結果、演算誤差(雑音)は仮数部のビット数(分解能)で決まり、指数部は寄与しない。よって演算誤差によるS/Nの劣化は、指数部に依存せず、浮動小数点の画像処理演算は、精度(誤差)の面でも大きな問題とはならない。
【0016】
また、露光制御は、受光素子から出力される信号レベルを、被写体の明暗に関係なくほぼ一定にすることであり、受光素子出力値(画像データ)を浮動小数点形式とすることで、仮数部をその出力信号値に割り当て、指数部に露光量を割り当てることができるので、飽和させたり、丸めたりすることなく、信号レベルを保持できるという効果も得られる。
【0017】
ここで、上記撮像手段は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等から構成されるセンサセルアレイを有し、電子シャッタ機能等によって露光時間を制御すると共に、各露光時間の読み出しタイミングや、リセットタイミング等を制御して、複数種類の露光時間(第1及び第2の露光時間)で被写体を撮像する。また、撮像で得られた画像データは、例えば、デジタルの画像データに変換してから出力する。以下、撮像システムに関する形態、撮像方法に関する形態、画像処理装置に関する形態、画像処理方法に関する形態などにおいて同じである。
【0018】
また、上記HDR画像データは、例えば、同じ被写体を、標準露光時間で撮像した画像データと、これよりも短い短露光時間で撮像した画像データとにおける、非飽和の画素データを組み合わせて生成される。具体的には、例えば、前記標準露光時間で撮像して得られた画像データにおける飽和した画素データを、前記短露光時間で撮像して得られた画像データにおける非飽和の画素データに置換することでHDR画像データを生成する。以下、撮像システムに関する形態、撮像方法に関する形態、画像処理装置に関する形態、画像処理方法に関する形態などにおいて同じである。
【0019】
〔形態2〕 更に、形態2の撮像装置は、形態1の撮像装置において、
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成して、画素値を固定小数点形式で表した画素データから構成されるHDR画像データを生成する画像合成部と、前記HDR画像データを、前記第1HDR画像データに変換する浮動小数点化処理部とを有することを特徴とする。
【0020】
このような構成であれば、画像合成部において、撮像手段から取得した、第1及び第2の露光時間に対応する固定小数点形式のHDR画像データを合成して、固定小数点形式のHDR画像データを生成することが可能であり、浮動小数点化処理部において、当該固定小数点形式のHDR画像データを、画素値を仮数部がNビット、基数がX及び当該基数の指数部がMビットの浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR画像データに変換することが可能である。
【0021】
〔形態3〕 更に、形態3の撮像装置は、形態1の撮像装置において、
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを、それぞれ、画素値を仮数部が前記Nビット、基数が前記X及び当該基数の指数部が前記Mビットの浮動小数点形式で表した画素データから構成される画像データに変換する浮動小数点化処理部と、当該変換した後の第1及び第2の画像データを合成して前記第1HDR画像データを生成する画像合成部とを有することを特徴とする。
【0022】
このような構成であれば、浮動小数点化処理部において、撮像手段から取得した、第1及び第2の露光時間にそれぞれ対応する固定小数点形式の画像データを、画素値を仮数部がNビット、基数がX及び当該基数の指数部がMビットの浮動小数点形式で表した画素データから構成される画像データに変換することが可能であり、画像合成部において、前記浮動小数点形式に変換後の画像データを合成して前記第1HDR画像データを生成することが可能である。
【0023】
〔形態4〕 更に、形態4の撮像装置は、形態1乃至3のいずれか1の撮像装置において、
前記HDR画像データ生成手段は、前記被写体の画像を構成する画像要素毎に、前記画像要素を構成する画素データの前記指数部の値を同じ値とした前記第1HDR画像データを生成することを特徴とする。
【0024】
このような構成であれば、被写体画像の再生時に、仮数部のみを用いて再生しても、違和感の無い画像を再生することができるという効果が得られる。これは、画像要素毎に指数部を揃えた場合の仮数部のみの画像は、露光時間(露光量)の異なる画像データにおける有効な領域のみを重ね合わせた画像に相当するからである。
ここで、上記画像要素とは、被写体画像における、輝度が近い画素の領域であり、例えば、被写体画像に、壁や窓などの輝度の異なる画像要素が存在するときは、壁、窓などが画像要素となる。以下、撮像システムに関する形態、撮像方法に関する形態、画像処理装置に関する形態、画像処理方法に関する形態などにおいて同じである。
【0025】
〔形態5〕 更に、形態5の撮像装置は、形態1乃至4のいずれか1の撮像装置において、
前記撮像手段は、画素単位に所定の色空間に対応する複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する信号を含む画素信号から構成され、且つ、前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと、画素単位に前記所定の色空間に対応する複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する信号を含む画素信号から構成され、且つ、前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データと、を出力し、
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1の画像データを構成する画素信号と、前記第1の画像データを構成する画素信号に対応する前記第2の画像データを構成する画素信号とに基づき、画素単位に前記複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成される前記第1HDR画像データを生成し、
前記画像処理手段は、前記第1HDR画像データに色補間処理を施して、画素単位に前記複数の色要素の各色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成される前記第1HDR画像データを生成し、
前記HDR画像データ変換手段は、前記第2HDR画像データが前記複数の色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成され、且つ、前記画素データの指数部の値が、画素単位で前記複数の色要素で同じ値となるように、前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部の値及び前記指数部の値を変換することを特徴とする。
【0026】
このような構成であれば、画素単位に所定の色空間に対応する複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する画素値を含む画素データから構成される第1HDR画像データを生成することが可能であり、更に、この第1HDR画像データに対して色補間処理を行うことで、画素単位に各色要素に関する画素値を含む画素データから構成される第1HDR画像データを生成することが可能である(この時点では、各色要素の指数部の値は異なる)。
【0027】
更に、変換して得られる第2HDR画像データの各画素データの指数部の値が、画素単位で複数の色要素で同じ値となるように、色補間処理を行った後の第1HDR画像データを構成する各画素データの仮数部の値及び指数部の値を変換することが可能である。
従って、第2HDR画像データを、画素単位で、各色要素にそれぞれ対応する複数の仮数部のデータと、複数の色要素に共通の1つの指数部のデータとにまとめることができるので、出力用の第2HDR画像データのデータ容量をより低減することができるという効果が得られる。
なお、HDR画像データ変換手段においては、第2HDR画像データへの変換において、各画素値が飽和しないように変換処理を行うことが望ましい。例えば、指数部の値が一番大きい画素値に合わせて変換処理を行う。
【0028】
〔形態6〕 更に、形態6の撮像装置は、形態1乃至4のいずれか1の撮像装置において、
前記撮像手段は、画素単位に所定の色空間に対応する複数の色要素に関する信号を含むカラー画素信号から構成され、且つ、前記第1の露光時間で撮像して得られた第1のカラー画像データと、画素単位に前記所定の色空間に対応する複数の色要素に関する信号を含むカラー画素信号から構成され、且つ、前記第2の露光時間で撮像して得られた第2のカラー画像データと、を出力し、
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1のカラー画像データを構成するカラー画素信号と、前記第1のカラー画像データを構成するカラー画素信号に対応する前記第2のカラー画像データを構成するカラー画素信号とに基づき、画素単位に前記複数の色要素の各色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成される前記第1HDR画像データを生成し、
前記HDR画像データ変換手段は、前記第2HDR画像データが前記複数の色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成され、且つ、各前記画素データの前記指数部の値が、画素単位で前記複数の色要素で同じ値となるように、前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部の値及び前記指数部の値を変換することを特徴とする。
【0029】
このような構成であれば、第1及び第2の露光時間に対応し且つ画素単位に複数の色要素の各色要素にそれぞれ対応した画素信号から構成される第1及び第2のカラー画像データを取得することが可能であり、これら第1及び第2のカラー画像データに基づき、画素単位に各色要素に関する複数の画素値を含む画素データから構成される第1HDR画像データを生成することが可能である。
【0030】
更に、変換して得られる第2HDR画像データの各画素データの指数部の値が、画素単位で複数の色要素で同じ値となるように、第1HDR画像データを構成する各画素データの仮数部の値及び指数部の値を変換することが可能である。
従って、第2HDR画像データを、画素単位で、各色要素にそれぞれ対応する複数の仮数部のデータと、複数の色要素に共通の1つの指数部のデータとにまとめることができるので、出力用の第2HDR画像データのデータ容量をより低減することができるという効果が得られる。
なお、HDR画像データ変換手段においては、第2HDR画像データへの変換において、各画素値が飽和しないように変換処理を行うことが望ましい。例えば、指数部の値が一番大きい画素値に合わせて変換処理を行う。
【0031】
〔形態7〕 更に、形態7の撮像装置は、形態1乃至6のいずれか1の撮像装置において、
前記基数を”2”としたことを特徴とする。
このような構成であれば、第1及び第2HDR画像データの各画素データは、2を基数とした浮動小数点形式のデータとなるので、これにより、撮像装置において扱いやすいデータとすることができるという効果が得られる。
ここで、撮像装置は、露光量をEV値で管理(表現)している。このEV値は、1EV変えるごとに露光量が2倍もしくは1/2になる。つまり、基数を2とすることで、例えば、明るい画像を撮像する為に露光量(EV値)を1段下げたとき、これは第1又は第2HDR画像データの指数部の数値を1上げることと等価であり、一方暗い画像を撮像する為に露光量(EV値)を1段上げることは、指数部の数値を1下げることと等価である。
【0032】
〔形態8〕 更に、形態8の撮像装置は、形態1乃至7のいずれか1の撮像装置において、
前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部が9ビット以上で且つ前記指数部が5ビット以上であるときに、
前記HDR画像データ変換手段は、前記第1HDR画像データを、前記仮数部が8ビット且つ前記指数部が4ビットの画素データから構成される第2HDR画像データに変換することを特徴とする。
【0033】
このような構成であれば、第2HDR画像データは、仮数部が8ビット及び指数部が4ビットの浮動小数点形式の画素データから構成されることになるので、階調性を仮数部の8ビットで表現し、ダイナミックレンジを指数部の4ビットで表現することが可能となる。
これにより、人間の目の画像の認識性能に近い画質を有した画像データを得ることが可能である。ここで、人間の目の画像の認識性能は、階調性の分解能が8ビットで、ダイナミックレンジが約100dBと言われている。指数部を4ビットとすることでダイナミックレンジを従来(50dB)と比べて約32000倍に拡大することが可能である。
【0034】
〔形態9〕 更に、形態9の撮像装置は、形態1乃至8のいずれか1の撮像装置において、
前記画像処理手段は、前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部の値に対して乗算処理を行う乗算回路と、前記指数部の値に対して加算処理を行う加算回路とを含むことを特徴とする。
【0035】
このような構成であれば、浮動小数点値の乗算処理を、乗算回路による仮数部の乗算処理と、加算回路による指数部の加算処理によって行うことが可能である。
従って、固定小数点演算による乗算処理を行う回路構成と比較して、回路規模を小さくすることができるという効果が得られる。
【0036】
〔形態10〕 一方、上記目的を達成するために、形態10の撮像システムは、
第1及び第2の露光時間で被写体を撮像する撮像手段と、
前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成手段と、
前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換手段と、を備えることを特徴とする。
【0037】
これにより、形態1の撮像装置と同等の作用及び効果が得られる。
ここで、本システムは、単一の装置、端末その他の機器として実現するようにしてもよいし、複数の装置、端末その他の機器を通信可能に接続したネットワークシステムとして実現するようにしてもよい。後者の場合、各構成要素は、それぞれ通信可能に接続されていれば、複数の機器等のうちいずれに属していてもよい。
【0038】
〔形態11〕 また、上記目的を達成するために、形態11の撮像方法は、
第1及び第2の露光時間で被写体を撮像する撮像ステップと、
前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成ステップと、
前記HDR画像データ生成ステップで生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理ステップと、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換ステップと、を含むことを特徴とする。
これにより、形態1の撮像装置と同等の作用及び効果が得られる。
【0039】
〔形態12〕 一方、上記目的を達成するために、形態12の画像処理装置は、
第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成手段と、
前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換手段と、を備えることを特徴とする。
これにより、形態1の撮像装置と同等の作用及び効果が得られる。
【0040】
〔形態13〕 また、上記目的を達成するために、形態13の画像処理方法は、
第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成ステップと、
前記HDR画像データ生成ステップで生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理ステップと、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換ステップと、を含むことを特徴とする。
これにより、形態1の撮像装置と同等の作用及び効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明に係る撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法の第1の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1〜図2は、本発明に係る撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法の第1の実施の形態を示す図である。ここで、図1は、撮像装置100の構成を示すブロック図である。
【0042】
以下、図1に基づき、撮像装置100の構成を説明する。
撮像装置100は、図1に示すように、複数種類の露光時間で被写体を撮像できる撮像部10と、当該撮像部10において複数種類の露光時間で撮像された各被写体の画像データに基づき浮動小数点形式の第1HDR画像データを生成するHDR画像データ生成部11と、画像合成部11aとフレームメモリ13との間のデータの書き込み及び読み出しを制御するメモリアービタ12と、画像データを記憶するフレームメモリ13と、浮動小数点形式の第1HDR画像データに対してノイズ除去処理などの画像処理を行う画像処理部14と、画像処理後の第1HDR画像データの出力形式を変換する出力形式変換部15とを含んで構成される。
【0043】
撮像部10は、複数のセンサセル(CMOS等で構成)から構成されるセンサセルアレイ、タイミング制御器、AFE(Analog Front End)などを有し、本実施の形態においては、1フレーム期間(1回の露光期間)に、標準露光時間に対応する被写体を撮像すると共に、当該標準露光時間(ユーザにより任意に設定可能)の露光と同じ1フレーム期間に、標準露光時間よりも短い短露光時間(標準露光時間>短露光時間)に対応する被写体を撮像する機能を有している。なお、2種類の露光時間で被写体を撮像する構成としたが、これに限らず、3種類以上の露光時間で被写体を撮像する構成としても良い。
【0044】
更に、これら2種類の露光時間で撮像して得られた各被写体の画像データを、2つの出力チャンネル(CH1〜CH2)を用いて、HDR画像データ生成部11にそれぞれ独立且つ並列に出力する機能を有している。本実施の形態においては、CH1から被写体を標準露光時間で撮像して得られた画像データ(以下、標準露光画像データと称す)を出力し、CH2から被写体を短露光時間で撮像して得られた画像データ(以下、短露光画像データと称す)を出力することとする。
【0045】
また、本実施の形態において、上記撮像部10で得られる標準露光画像データ及び短露光画像データは、これらを構成する各画素データが10ビットの固定小数点形式のデータから構成されている。以下、この画素データを、RAWIデータと呼ぶこととする。
HDR画像データ生成部11は、画像合成部11aと、浮動小数点化処理部11bとを含んで構成される。
【0046】
画像合成部11aは、乗算器及び加算器を含んで構成され、撮像部10の画素毎に、標準露光時間に対応するRAWIデータ(以下、標準露光RAWIデータと称す)と、短露光時間に対応するRAWIデータ(以下、短露光RAWIデータと称す)とを、メモリアービタ12を介して、フレームメモリ13から読み出す。そして、当該読み出した標準露光RAWIデータ及び短露光RAWIデータを、乗算器において、露光比に応じて予め設定された係数で係数倍し且つ係数倍した標準露光RAWIデータ及び短露光RAWIデータを加算器において加算(線形合成)することで、各画素値が、32ビットの固定小数点形式で表された画素データから構成されるHDR画像データを生成する。以下、このHDR画像データを構成する各画素データを、HDRiデータと呼ぶこととする。
【0047】
ここで、図2は、画像合成方法の種類を示す図である。
HDR画像データを生成するときの画像合成方法としては、図2に示すように、上記説明した線形合成法の他に、ニー方式による合成方法もある。ニー方式は、標準露光時間の画像データと非標準露光時間(短露光時間)の画像データとを加算(単純に加算)することでダイナミックレンジの広い画像データ(HDR画像データ)を得る方法である。
【0048】
また、図示しないが、他にも、画素毎に、複数種類の露光時間に対応したRAWIデータから非飽和のRAWIデータを選択し、当該選択したRAWIデータを露光比に応じて係数倍する方法もある(これも線形合成法の一種である)。
浮動小数点化処理部11bは、画像合成部11aで生成されたHDRiデータを、仮数部がNビット(Nは、32>N≧2の自然数)基数がX(Xは、2〜10の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは、32>N≧2の自然数)の浮動小数点形式の画素データ(以下、第1HDR画素データと称す)に変換する。
【0049】
ここで、1フレーム分の第1HDR画素データから第1HDR画像データが構成される。
また、第1HDR画素データは、仮数部(Nビット)をRAWi、指数部(Mビット)をRAWeとし、RAWi及びRAWeの組が画像処理部14に出力される。
メモリアービタ12は、画像合成部11aなどから読み出し指令が出力されると、その出力された読み出し指令が示す標準露光RAWIデータ及び短露光RAWIデータをフレームメモリ13から読み出し、これらRAWIデータを、読み出し指令の出力元に出力する。また、メモリアービタ12は、画像合成部11aから書き込み指令が出力されると、その出力された書き込み指令が示す標準露光RAWIデータ及び短露光RAWIデータをフレームメモリ13に書き込む。
【0050】
フレームメモリ13は、撮像部10から画素のライン毎に画像合成部11aに入力される標準露光RAWIデータ及び短露光RAWIデータを、メモリアービタ12を介してライン毎に記憶し、当該記憶した2種類のRAWIデータを後段の画像合成処理において同期を取る為に、RAWIデータをバッファリング(蓄積)する。あるいは、2種類のRAWIデータを1フレーム分蓄積後に、画像合成部11aにメモリアービタ12を介してそれぞれ独立に、もしくは並列に出力する。つまり、メモリアービタ12及びフレームメモリ13は、遅延手段としての役割も担っている。
【0051】
画像処理部14は、乗算器及び加算器を含んで構成され、HDR画像データ生成部11から入力された、第1HDR画素データ{RAWi,RAWe}に対して、空間解像度を上げる処理、輝度レベルの補正処理、ノイズ除去処理などの画像処理を施して、画像処理後の第1HDR画素データ{Y(Nビット),E(Mビット)}を、出力形式変換部15に出力する。つまり、各種画像処理は、浮動小数点形式のHDR画素データを用いて行われる。
【0052】
出力形式変換部15は、画像処理部14から入力された、画像処理後の第1HDR画素データ{Y(Nビット),E(Mビット)}を、出力装置200の性能に応じた(扱いやすい)ビット数の画素データに変換する。具体的に、第1HDR画素データ{Y(Nビット),E(Mビット)}を、{Y(nビット(nは、N>nの自然数)),E(mビット(mは、M>mの自然数))}の第2HDR画素データに変換する。
【0053】
ここで、1フレーム分の第2HDR画素データから第2HDR画像データが構成される。
また、この変換処理においては、第1HDR画像データの画像を解析(エッジ抽出など)し、画像の各構成要素の情報を取得する。そして、当該取得した情報から、構成要素毎に、各画素値の指数部(E)の値を同一値とする。指数部の値を同一値にするとは、構成要素毎に、同一とする指数部の値に合わせて、各画素値の仮数部の値を変更する処理となる。
【0054】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
まず、撮像部10において、被写体の光学像が、標準露光時間及び短露光時間の2種類の露光時間で撮像され、標準露光画像データを構成する10ビットの標準露光RAWIデータと、短露光画像データを構成する10ビットの短露光RAWIデータとが、各画素のライン毎に2つの出力チャンネル(CH1〜CH2)を介して、それぞれ独立に画像合成部11aに出力される。
【0055】
画像合成部11aは、撮像部10から短露光RAWIデータが入力されると、当該入力された短露光RAWIデータをメモリアービタ12を介して、フレームメモリ13に記憶する。一方、撮像部10から標準露光RAWIデータが入力されると、画像合成部11aは、メモリアービタ12を介して、フレームメモリ13から、前記入力された標準露光RAWIデータに対応する短露光RAWIデータを読み出す。
【0056】
画像合成部11aは、短露光RAWIデータを読み出すと、画素毎に、標準露光RAWIデータの示す画素値と、これと同じ画素位置の短露光RAWIデータの示す画素値とを、画像合成部11aにおける乗算器において、露光比に応じて設定された係数で係数倍(例えば、1000倍)し、係数倍したこれらRAWIデータの示す画素値を加算器で加算して、画素値を32ビットの固定小数点形式で表したHDR画素データ(HDRiデータ)を生成する。そして、この生成したHDRiデータを、浮動小数点化処理部11bに出力する。
【0057】
浮動小数点化処理部11bは、画像合成部11aからHDRiデータが入力されると、ここでは、下式(1)に従って、当該HDRiデータを、画素値を、仮数部が10ビット、基数が2(X=2)及び当該基数2の指数部が10ビットの浮動小数点形式で表した第1HDR画素データに変換する。

画素値(輝度値)=RAWi×2RAWe−512 ・・・(1)

但し、上式(1)において、RAWi(10ビット)、RAWe(10ビット)、RAWe≧512(29)である。
【0058】
上式(1)より、画素値(出力信号)のレンジは、RAWiが0〜1023及びRAWeが2511となるときの値で決まる。また、最小ステップは、RAWiが1及びRAWeが2-512となるときの値である。
なお、線形合成後の画素値のレンジは、上記乗算器における係数倍率に依存する。例えば、1000倍であれば、指数部の数値は10程度でよく、十分なレンジとなる。
【0059】
つまり、32ビットのHDRiデータを、上式(1)に従って、仮数部10ビット及び指数部10ビットのデータに変換した、RAWi×2RAWe−512が、浮動小数点形式のHDR画素データ(第1HDR画素データ)となる。
この第1HDR画素データは、{RAWi,RAWe}だけが、後段の画像処理部14へと出力される。
【0060】
画像処理部14は、第1HDR画素データ{RAWi,RAWe}が入力されると、空間解像度を上げる処理、輝度レベル補正処理、ノイズ除去処理などの画像処理を行い、{仮数部、指数部}={Y(10ビット),E(10ビット)}を出力する。
これらの画像処理の基本は、積和演算である(例えば下式(2))。

OUT=A×α+B×γ+C×β ・・・(2)

但し、上式(2)において、A、B、Cは係数、α、γ、βは入力値(画素値)である。
【0061】
本実施の形態においては、この基本処理を浮動小数点演算で行う。すなわち画素値及び係数値を浮動小数点表現、例えば、指数部10ビット、仮数部10ビットの精度で行う。ここで、係数は、処理系の増幅率を1にするのが一般的であり(A+B+C=1)、1以下の数値である。そこで、演算精度を確保する為、係数の指数部を、下式(3)の形式とする。

指数部=2k−2(M−1) ・・・(3)

但し、上式(3)において、kは0〜1023の整数値である。
【0062】
ここでは、M=10としたので、指数部は2‐512〜2511の値が表現でき、2進数で小数点以下9ビット(1/512=1/29)まで精度を持たせることができる。
また、仮数部と指数部のビット長が固定の浮動小数点乗算器は、下式(4)の如く仮数部同士の乗算、指数部同士の加算で実現きるので、固定小数点乗算器に比して小型化が可能である。

OUT=A×2×B×2j=A×B×2i+j ・・・(4)

なお、上式(4)における「A×B」の演算結果がDレンジ(10ビット)を越える場合、また結果がDレンジの1/2より小さくなった場合、指数部の演算結果(i+j)に対して、インクリメントもしくはデクリメント処理する。この指数部処理は、デジタルカメラの露出制御に相当し、明るい(輝度が大きくなる)場合、指数部を増やし(EV値を下げ)、暗い(輝度が小さくなる)場合、指数部を減らす(EV値を上げる)。このように、本実施の形態の画像処理においては、基数を2としたので、撮像動作のEV値の概念を拡張し画素値に反映させることが可能である。
【0063】
画像処理後の第1HDR画素データ{Y(10ビット),E(10ビット)}は、出力形式変換部15に出力される。
出力形式変換部15は、画像処理部14から、画像処理後の第1HDR画素データ{Y(10ビット),E(10ビット)}が入力されると、当該第1HDR画素データの仮数部及び指数部のビット数を、出力装置200の性能に応じて変換する。
【0064】
以下、この変換によって得られるHDR画素データを、第2HDR画素データと呼ぶ。
ここでは、出力装置200が、人が出力画像を視認(又は鑑賞)することを目的とする表示装置又は印刷装置であるとし、第1HDR画素データ{Y(10ビット),E(10ビット)}を、第2HDR画素データ{Y(8ビット),E(4ビット)}へと変換する。
【0065】
つまり、出力形式変換部15は、第1HDR画像データを構成する各第1HDR画素データを、人の目の画像の認識性能に近い階調性及びDレンジの第2HDR画素データに変換する。この変換後の第2HDR画素データから第2HDR画像データが構成される。
また、上記変換処理においては、第1HDR画素データ{Y(10ビット),E(10ビット)}から構成される第1HDR画像データの画像を解析(輝度変化抽出、エッジ抽出など)し、画像の各構成要素の情報を取得する。そして、当該取得した情報から、構成要素毎に、各画素値の指数部Eの値を同一値とする。
【0066】
例えば、被写体に窓と壁とが含まれている場合は、窓の画像を構成する画素値における指数部Eの値を全て同じ値に統一し、壁の画像を構成する画素値における指数部Eの値を全て同じ値に統一する。これにより、画像再生時に、仮数部のみでも違和感の無い画像を形成することが可能となる。
以上より、人の目の画像の認識性能に対して適した構成を有し且つデータ量が削減された構成の第2HDR画像データが生成される。
【0067】
上記生成された第2HDR画像データは、出力装置200へと出力され、出力装置200において、第2HDR画像データの画像が表示出力又は印刷出力される。
以上、本実施の形態の撮像装置100は、各画素値が浮動小数点形式で表された第1HDR画素データから構成される第1HDR画像データを生成することが可能であり、この浮動小数点形式の第1HDR画素データを用いて、浮動小数点演算を含む画像処理を行うことが可能である。
【0068】
これにより、画像処理において必要な回路規模を、同レベルのHDR画像データに対して、固定小数点形式で演算処理する場合と比して小型化することが可能である。また、この小型化によって、画像処理速度も向上することが可能である。
また、画像処理後の第1HDR画像データ(例えば、各第1HDR画素データが{Y(10ビット),E(10ビット)})を、出力装置の性能などに応じて変換し、出力装置の階調性能に適し且つ第1HDR画像データに対して情報量の削減された第2HDR画像データ(例えば、各第2HDR画素データが{Y(8ビット),E(4ビット)})を生成することが可能である。
【0069】
これにより、出力装置の性能に適した階調性及びDレンジを有し且つデータ量の削減されたHDR画像データを出力することが可能である。これにより、第1HDR画像データをそのまま出力するよりも、データの転送に必要なバス幅や、データの記憶に必要な容量を低減することが可能となる。
また、HDR画像データ(整数)を、浮動小数点形式の第1HDR画像データに変換するときに、その基数を2とすることで、画像処理において、指数部を露光制御における露光量(EV値)として扱うことが可能である。
【0070】
また、第2HDR画像データにおける、指数部Eの値を、画像の構成要素毎に同一値とすることが可能である。
これにより、画像再生時に、仮数部のみでも違和感の無い画像を形成することが可能となる。
【0071】
上記第1の実施の形態において、撮像部10は、形態1又は2の撮像手段、又は形態10の撮像ステップに対応し、HDR画像データ生成部11は、形態1、2及び4及のいずれか1のHDR画像データ生成手段、又は形態11のHDR画像データ生成ステップに対応し、画像処理部14は、形態1若しくは9の画像処理手段又は、形態11の画像処理ステップに対応し、出力形式変換部15は、形態1又は8のHDR画像データ変換手段、又は形態11のHDR画像データ変換ステップに対応する。
【0072】
また、上記第1の実施の形態において、標準露光画像データは、形態1、2、3、10、11、12及び13のいずれか1の第1の画像データに対応し、短露光画像データは、形態1、2、3、10、11、12及び13のいずれか1の第2の画像データに対応する。
【0073】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明に係る撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法の第2の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図3は、本発明に係る撮像装置、撮像システム及び撮像方法、並びに画像処理装置及び画像処理方法の第2の実施の形態を示す図である。ここで、図3は、撮像装置300の構成を示すブロック図である。
【0074】
本実施の形態は、撮像部が単板式の撮像素子と、光信号を所定の色空間に対応する複数の色要素の各色要素のカラー画素信号に分離するカラーフィルタとを有している点と、色補間処理を行って、各色要素にそれぞれ対応した浮動小数点形式の複数の画素データから構成される第1HDR画像データを生成すると共に、当該第1HDR画像データの第1HDR画素データを、画素単位で、各色要素に対応した仮数部と複数の色要素に共通の指数部とから構成され且つ情報量が削減された構成の第2HDR画素データに変換して、第2HDR画像データを生成する点とが上記第1の実施の形態の撮像装置100と異なる。以下、上記第1の実施の形態の撮像装置100と同じ構成部については、同じ符号を付して適宜説明を省略又は簡略化し、異なる点のみを詳細に説明する。
【0075】
まず、図3に基づき、本実施の形態に係る撮像装置300の構成を説明する。
撮像装置300は、図3に示すように、単板式の撮像素子と、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の色要素からなるRGB色空間に対応する色分離のためのカラーフィルタとを有し、更に、複数種類の露光時間で被写体を撮像できる撮像部16と、当該撮像部16において複数種類の露光時間で撮像された各被写体の画像データに基づき浮動小数点形式の第1HDR画像データを生成するHDR画像データ生成部11と、メモリアービタ12と、フレームメモリ13と、色補間処理、ノイズ除去処理などの画像処理を行う画像処理部17と、画像処理後の各色要素に対応する第1HDR画像データの出力形式を変換する出力形式変換部18とを含んで構成される。なお、図3には、出力装置が図示されていないが、上記第1の実施の形態の撮像装置100と同様に、図1の出力装置200が出力先となる。
【0076】
撮像部16は、単板式の撮像素子と、RGB色空間に対応するカラーフィルタとを有しており、本実施の形態においては、被写体を標準露光時間及び短露光時間で撮像する。この撮像によって、標準露光時間に対応した標準露光カラー画像データ(各RAWIデータが固定小数点形式で且つ10ビット)と、短露光時間に対応した短露光カラー画像データ(各RAWIデータが固定小数点形式で且つ10ビット)とを得る。
【0077】
そして、撮像により得られた標準露光カラー画像データ及び短露光カラー画像データを画像合成部11aに出力する。
ここで、カラーフィルタは、複数のR、G、Bのフィルタ部がベイヤ配列された構成を有するものとする。
画像合成部11aは、撮像部16で得られた、標準露光カラー画像データを構成する各RAWIデータ(以下、標準露光RAWICデータと称す)と、短露光カラー画像データを構成する各RAWIデータ(以下、短露光RAWICデータと称す)とを合成して、画素値が32ビットの固定小数点形式で表されたカラーHDRiデータ(以下、RGBHDRiデータと称す)を生成する。
【0078】
浮動小数点化処理部11bは、画像合成部11aで生成された、RGBHDRiデータ(32ビット)を、画素値を仮数部がNCビット(NCは、32>NC≧2の自然数)、基数がX及び当該基数の指数部がMCビット(MCは、32>MC≧2の自然数)の浮動小数点形式で表した第1カラーHDR画素データへと変換する。
画像処理部17は、色信号処理部17aと、画像補正部17bと、ラインメモリ17cと、ラインメモリ17dとを含んで構成される。
【0079】
色信号処理部17aは、HDR画像データ生成部11から出力される第1カラーHDR画素データ(処理すべき画素のデータ)と、ラインメモリ17cに格納された、処理すべき画素の周辺の第1カラーHDR画素データとを用いて色補間処理を行う。すなわち、ラインメモリにより遅延された、第1カラーHDR画素データを用いて、画像の各点について、RGB色空間に規定される色信号(データ)を生成する処理(色信号処理)を行う。
【0080】
なお、色信号処理には、主に、第1カラーHDR画素データから、画像の各点における色信号を生成(補間)する処理(色補間処理)と、第1カラーHDR画素データを所定の色空間に規定される色データに変換する処理(色空間変換処理)とがある。本実施の形態においては、撮像部16が単板式の撮像素子に対応するベイヤ配列のカラーフィルタを有しているので、前者の色補間処理を実行する。
【0081】
つまり、色信号処理部17aは、上記した色補間処理によって、第1カラーHDR画素データを、画素毎に、RGBの各色要素にそれぞれ対応する画素値が、仮数部がNCビット、基数がX及び当該基数の指数部がMCビットの浮動小数点形式で表されたカラーHDR画素データに変換する。
これにより、画素毎に、Rの色要素に対応する第1RHDR画素データ{Ri,Re}、Gの色要素に対応する第1GHDR画素データ{Gi,Ge}及びBの色要素に対応する第1BHDR画素データ{Bi,Be}を有する}第1カラーHDR画像データが生成される。
【0082】
画像補正部17bは、色信号処理部17aからの第1RHDR画素データ{Ri,Re}、第1GHDR画素データ{Gi,Ge}及び第1BHDR画素データ{Bi,Be}と、ラインメモリ17dに格納された第1RHDR画素データ{Ri,Re}、第1GHDR画素データ{Gi,Ge}及び第1BHDR画素データ{Bi,Be}とを用いて、空間解像度を上げる処理(ディテール処理)、輝度レベルの補正処理、ノイズ除去処理などの画像処理を行う。
【0083】
そして、画像処理後の第1RHDR画素データ{Y(NCビット),E(MCビット)}、第1GHDR画素データ{Y(NCビット),E(MCビット)}及び第1BHDR画素データ{Y(NCビット),E(MCビット)}を、出力形式変換部18に出力する。
出力形式変換部18は、画像処理部14から入力された、画像処理後の第1RHDR画素データ、第1GHDR画素データ及び第1BHDR画素データ(いずれも{Y(NCビット),E(MCビット)})を、出力装置200の性能に応じた(扱いやすい)ビット数の第2RHDR画素データ、第2GHDR画素データ及び第2BHDR画素データに変換する。
【0084】
具体的に、第1カラーHDR画像データを構成する、第1RHDR画素データ、第1GHDR画素データ及び第1BHDR画素データ(いずれも{Y(NCビット),E(MCビット)})を、第2RHDR画素データ、第2GHDR画素データ及び第2BHDR画素データ(いずれも{Y(nビット(nは、NC>nの自然数)),E(mビット(mは、MC>mの自然数))})に変換する。
【0085】
これにより、画素毎に、Rの色要素に対応する第2RHDR画素データ、Gの色要素に対応する第2GHDR画素データ及びBの色要素に対応する第2BHDR画素データを有する第2カラーHDR画像データが生成される。
このとき、各画素に対応する、第2RHDR画素データ、第2GHDR画素データ及び第2BHDR画素データにおける、指数部Eの値を同一値とする。但し、第2RHDR画素データ、第2GHDR画素データ及び第2BHDR画素データの各仮数部の値が飽和しないように且つ最小値となるように指数値を統一する。
【0086】
つまり、第2カラーHDR画像データは、画素毎に、RGBの各色要素にそれぞれ対応した複数(3つ)の仮数部と、RGBに共通の1つの指数部とから構成されるデータとなる。
次に、本実施の形態の動作を説明する。
まず、撮像部16において、被写体が、標準露光時間及び短露光時間の2種類の露光時間で撮像され、標準露光カラー撮像画像データを構成する10ビットの標準露光RAWICデータと、短露光カラー撮像画像データを構成する10ビットの短露光RAWICデータとが、各画素のライン毎に2つの出力チャンネル(CH1〜CH2)を介して、それぞれ独立に画像合成部11aに出力される。
【0087】
画像合成部11aは、撮像部10から短露光RAWICデータが入力されると、当該入力された短露光RAWICデータをメモリアービタ12を介して、フレームメモリ13に記憶する。一方、撮像部10から標準露光RAWICデータが入力されると、画像合成部11aは、メモリアービタ12を介して、フレームメモリ13から、前記入力された標準露光RAWICデータに対応する短露光RAWICデータを読み出す。
【0088】
画像合成部11aは、短露光RAWICデータを読み出すと、画素毎に、標準露光RAWICデータの示す画素値と、これと同じ画素位置の短露光RAWICデータの示す画素値とを、画像合成部11aにおける乗算器において、露光比に応じて設定された係数で係数倍(例えば、1000倍)し、係数倍したこれらRAWICデータの示す画素値を加算器で加算して、画素値が32ビットの固定小数点形式で表されたRGBHDRiデータを生成する。そして、この生成したRGBHDRiデータを、浮動小数点化処理部11bに出力する。
【0089】
浮動小数点化処理部11bは、画像合成部11aからRGBHDRiデータが入力されると、この画素値が32ビットの固定小数点形式で表されたRGBHDRiデータを、上記第1の実施の形態と同様に、上式(1)に従って、画素値が、RAWiが10ビット、基数が2及びRAWeが10ビットの浮動小数点形式で表された第1カラーHDR画素データに変換する。この第1カラーHDR画素データは、{RAWi,RAWe}だけが、後段の画像処理部17へと出力される。
【0090】
画像処理部17は、ラインメモリ17cに、浮動小数点化処理部11bからの第1カラーHDR画素データ{RAWi(10ビット),RAWe(10ビット)}を、ラインメモリ容量分格納すると共に、色信号処理部17aにおいて、ラインメモリ17cの第1カラーHDR画素データと浮動小数点化処理部11bからの第1カラーHDR画素データとに基づき、色補間処理を実行する。
【0091】
これにより、第1カラーHDR画像データの各第1カラーHDR画素データ{RAWi,RAWe}を、R、G、Bの各色要素に対応した、第1RHDR画素データ{Ri(10ビット),Re(10ビット)}、第1GHDR画素データ{Gi(10ビット),Ge(10ビット)}及び第1BHDR画素データ{Bi(10ビット),Be(10ビット)}へと変換する。
【0092】
次に、画像補正部17bにおいて、色信号処理部17aで生成された第1RHDR画素データ{Ri,Re}、第1GHDR画素データ{Gi,Ge}、及び第1BHDR画素データ{Bi,Be}を、ラインメモリ17dに、ラインメモリ容量分格納する。
更に、ラインメモリ17dに格納された{Ri,Re}、{Gi,Ge}及び{Bi,Be}と、色信号処理部17aからの{Ri,Re}、{Gi,Ge}及び{Bi,Be}とに基づき、空間解像度を上げる処理、輝度レベル補正処理、ノイズ除去処理などの画像処理を行い、画像処理後の「{Ri,Re}、{Gi,Ge}、{Bi,Be}」を、出力形式変換部18に出力する。
【0093】
出力形式変換部18は、画像処理部17から、画像処理後の第1カラーHDR画素データ「{Ri(10ビット),Re(10ビット)}、{Gi(10ビット),Ge(10ビット)}、{Bi(10ビット),Be(10ビット)}」が入力されると、当該第1カラーHDR画素データの仮数部及び指数部のビット数を、出力装置200の性能に応じて変換すると共に、画素毎に、指数部の値が共通の値となるように変換した第2カラーHDR画素データを生成する。
【0094】
ここで、指数部の変換については、仮数部の各色要素(R、G、B)の値が飽和しないように且つ最小値となるように指数値を同一の値に変換する。仮数部の値を飽和させないためには、各色要素の画素値における指数部の一番大きなものに合わせて変換を行う。
また、指数部の値を同一値にするとは、同一とする指数部の値に合わせて、各色要素の画素値の仮数部の値を変更する処理となる。仮数部を変更する際に、各色要素の値が飽和しないようにする。
【0095】
ここでは、上記第1の実施の形態と同様に、出力装置200が、人が出力画像を視認(又は鑑賞)することを目的とする表示装置又は印刷装置であるとし、第1カラーHDR画像データを構成する第1RHDR画素データ{Ri(10ビット),Re(10ビット)}、第1GHDR画素データ{Gi(10ビット),Ge(10ビット)}及び第1BHDR画素データ{Bi(10ビット),Be(10ビット)}を、出力装置の性能に合わせて情報量が削減され且つ指数部の値がR、G、Bの各色要素に共通の1つの値となった、第2RHDR画素データ{R(8ビット)}、第2GHDR画素データ{G(8ビット)}及び第2BHDR画素データ{B(8ビット)}、指数部データ{E(4ビット)}へと変換する。
【0096】
つまり、出力形式変換部18は、第1カラーHDR画像データを、出力装置の性能に適した(人の目の画像の認識性能に近い)階調性及びDレンジのカラーHDR画像データ(第2カラーHDR画像データ)へと変換する。
以上より、人の目の画像の認識性能に近い階調性を有し且つデータ量が削減された構成の第2カラーHDR画像データが生成される。
【0097】
上記生成された第2カラーHDR画像データは、出力装置200へと出力され、出力装置200において、第2カラーHDR画像データの画像が表示出力又は印刷出力される。
以上、本実施の形態の撮像装置300は、各画素値が浮動小数点形式で表された第1カラー画素データから構成される第1カラーHDR画像データを生成することが可能であり、この浮動小数点形式の第1カラーHDR画素データを用いて、浮動小数点演算を含む画像処理を行うことが可能である。
【0098】
これにより、画像処理において必要な回路規模を、同レベルのHDR画像データに対して、固定小数点形式で演算処理する場合と比して小型化することが可能である。また、この小型化によって、画像処理速度も向上することが可能である。
また、画像処理後の第1カラーHDR画像データの各画素値(例えば、「{Ri(10ビット),Re(10ビット)}、{Gi(10ビット),Ge(10ビット)}、{Bi(10ビット),Be(10ビット)}」)を、出力装置の性能などに応じて変換し、各画素値が浮動小数点形式で表された画素データから構成され且つ指数部が1つにまとめられた構成の第2カラーHDR画像データ(例えば、画素毎に{R(8ビット),G(8ビット),B(8ビット),E(4ビット)}の画素値で構成されるデータ)を生成することが可能である。
【0099】
これにより、出力装置の性能に適した(人間の目の画像の認識性能に近い)階調性及びDレンジを有し且つデータ量の削減された構成の第2カラーHDR画像データを出力することが可能である。これにより、第1HDR画像データをそのまま出力するよりも、データの転送に必要なバス幅や、データの記憶に必要な容量を低減することが可能となる。
また、カラーHDR画像データ(整数)を、浮動小数点形式の第1カラーHDR画像データに変換するときに、その基数を2とすることで、画像処理において、指数部を露光制御における露光量(EV値)として扱うことが可能である。
【0100】
また、第2カラーHDR画像データにおける、指数部Eの値を、各画素の、全ての色に対して同一値とすることが可能である。
これにより、各画素値の各色の指数部を共通化(1つに)することができるので、データの転送に必要なバス幅や、データの記憶に必要な容量をより低減することが可能となる。
【0101】
上記第2の実施の形態において、撮像部10は、形態5の撮像手段、又は形態11の撮像ステップに対応し、HDR画像データ生成部11は、形態5のHDR画像データ生成手段、又は形態11のHDR画像データ生成ステップに対応し、画像処理部17は、形態5の画像処理手段又は、形態11の画像処理ステップに対応し、出力形式変換部15は、形態5又は8のHDR画像データ変換手段、又は形態11のHDR画像データ変換ステップに対応する。
【0102】
なお、上記第1及び第2の実施の形態においては、HDR画像データ生成部11において、撮像部10又は16から入力される複数種類の露光時間(標準露光時間、短露光時間)に対応した画像データを、画像合成部11aで合成してから、浮動小数点化処理部11bにおいて浮動小数点形式の第1HDR画像データへと変換する構成としたが、撮像部10又は16から入力される画像データを、浮動小数点化処理部11bにおいて、先に浮動小数点形式の画像データに変換してから、画像合成部11aにおいて合成する構成としてもよい。この場合に、撮像部10又は16は、形態3の撮像手段に対応する。
【0103】
また、上記第1及び第2の実施の形態において、撮像装置100又は300を、例えば、撮像部10又は16と、それ以外の構成部とに分け、両者をネットワーク等で接続した撮像システムの構成としても良い。また、撮像部10又は16及びHDR画像データ生成部11における画像合成部11aと、それ以外の構成部とに分けて、両者をネットワーク等で接続した構成にするなど、他の構成としてもよい。この場合に、撮像装置100又は300は、形態10の撮像システムに対応する。
【0104】
また、上記第1及び第2の実施の形態において、撮像装置100又は300から、例えば、撮像部10又は16を除外すると、残りの構成部は、画像処理装置として機能させることが可能である。この画像処理装置は、撮像装置100又は300から、撮像部10又は16及びHDR画像データ生成部11における画像合成部11aを除いた残りの構成部から構成してもよい。この場合に、上記構成の画像処理装置は、形態12の画像処理装置に対応する。また、上記構成の画像処理装置における、HDR画像データ生成部11、画像処理部14又は17、出力形式変換部15又は18は、形態13のHDR画像データ生成ステップ、画像処理ステップ、HDR画像データ変換ステップにそれぞれ対応する。
【0105】
また、上記第2の実施の形態においては、撮像部16を、単板式の撮像素子と、所定の色空間(RGB色空間など)に対応するカラーフィルタとを有する構成としたが、これに限らず、撮像部16を、撮像素子(センサセルアレイ)を、複数(所定の色空間を構成する色要素の数に相当)有すると共に、各撮像素子が複数の色要素におけるそれぞれ異なる色要素に対応したカラーフィルタを有する構成としても良い。例えば、RGB色空間に対応した三板式の撮像素子であれば、各撮像素子は、Rの色要素を色分離するカラーフィルタ、Gの色要素を色分離するカラーフィルタ、及びBの色要素を色分離するカラーフィルタのうちいずれか1つを透過した光によって露光が行われる。
【0106】
また、各カラーフィルタは1つの色要素に限らず、例えば、RGB色空間であれば、三板式の撮像素子において、Gの色要素を色分離するカラーフィルタを2つと、RとBとが配列されたカラーフィルタを1つとを有する構成としてもよい。
また、RGB色空間であっても、2つの撮像素子を有し、Gの色要素を色分離するカラーフィルタを1つと、RとBとが配列されたカラーフィルタを1つとを有する構成としてもよい。
【0107】
また、カラーフィルタに限らず、例えば、三板式の撮像素子において、プリズムで色分離して、各色の信号を各対応する撮像素子に入力する構成など、他の方法で色分離する構成としてもよい。
この場合に、撮像部16は、形態6の撮像手段に対応する。
また、上記第2の実施の形態においては、RGB色空間(原色のカラーフィルタ)を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、Y(イエロー)、Mg(マゼンタ)、Cy(シアン)、G(グリーン)の色要素で構成される色空間などの、補色によって構成されるカラーフィルタを用いる構成としてもよい。
【0108】
また、上記第2の実施の形態において、ベイヤ配列のカラーフィルタを用いる構成としたが、これに限らず、サブピクセル方式のカラー配列を有するカラーフィルタを用いる構成としてもよい。
また、上記第2の実施の形態においては、カラーフィルタを用いて色分離を行う構成としたが、これに限らず、例えば、撮像素子の各画素を、フォトダイオードを3層にすると共に、最も浅い層では全ての光が、最も深い層ではほぼ赤い光だけが光電効果を起こす構成にし、同じ画素位置でRGBの3つの色情報を得られる構成にするなど、他の構成としてもよい。
【0109】
また、上記第1及び第2の実施の形態においては、第2HDR画像データの出力形式を、仮数部が8ビット、基数が2及び指数部が4ビットの構成としたが、これに限らず、仮数部を7ビット以下又は9ビット以上としてもよいし、基数を2以外の数値としてもよいし、指数部を3ビット以下又は5ビット以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】撮像装置100の構成を示すブロック図である。
【図2】画像合成方法の種類を示す図である。
【図3】撮像装置300の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
100,300は撮像装置、200は出力装置、10,16は撮像部、11はHDR画像データ生成部、11aは画像合成部、11bは浮動小数点化処理部、12は、メモリアービタ、13はフレームメモリ、14,17は画像処理部、15,18は出力形式変換部、17aは色信号処理部、17bは画像補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の露光時間で被写体を撮像する撮像手段と、
前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成手段と、
前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換手段と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを合成して、画素値を固定小数点形式で表した画素データから構成されるHDR画像データを生成する画像合成部と、前記HDR画像データを、前記第1HDR画像データに変換する浮動小数点化処理部とを有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1の画像データと前記第2の画像データとを、それぞれ、画素値を仮数部が前記Nビット、基数が前記X及び当該基数の指数部が前記Mビットの浮動小数点形式で表した画素データから構成される画像データに変換する浮動小数点化処理部と、当該変換した後の第1及び第2の画像データを合成して前記第1HDR画像データを生成する画像合成部とを有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記HDR画像データ生成手段は、前記被写体の画像を構成する画像要素毎に、前記画像要素を構成する画素データの前記指数部の値を同じ値とした前記第1HDR画像データを生成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、画素単位に所定の色空間に対応する複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する信号を含む画素信号から構成され、且つ、前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと、画素単位に前記所定の色空間に対応する複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する信号を含む画素信号から構成され、且つ、前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データと、を出力し、
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1の画像データを構成する画素信号と、前記第1の画像データを構成する画素信号に対応する前記第2の画像データを構成する画素信号とに基づき、画素単位に前記複数の色要素のうちいずれか1つの色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成される前記第1HDR画像データを生成し、
前記画像処理手段は、前記第1HDR画像データに色補間処理を施して、画素単位に前記複数の色要素の各色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成される前記第1HDR画像データを生成し、
前記HDR画像データ変換手段は、前記第2HDR画像データが前記複数の色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成され、且つ、前記画素データの指数部の値が、画素単位で前記複数の色要素で同じ値となるように、前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部の値及び前記指数部の値を変換することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、画素単位に所定の色空間に対応する複数の色要素に関する信号を含むカラー画素信号から構成され、且つ、前記第1の露光時間で撮像して得られた第1のカラー画像データと、画素単位に前記所定の色空間に対応する複数の色要素に関する信号を含むカラー画素信号から構成され、且つ、前記第2の露光時間で撮像して得られた第2のカラー画像データと、を出力し、
前記HDR画像データ生成手段は、前記第1のカラー画像データを構成するカラー画素信号と、前記第1のカラー画像データを構成するカラー画素信号に対応する前記第2のカラー画像データを構成するカラー画素信号とに基づき、画素単位に前記複数の色要素の各色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成される前記第1HDR画像データを生成し、
前記HDR画像データ変換手段は、前記第2HDR画像データが前記複数の色要素に関する画素値を含む前記画素データから構成され、且つ、各前記画素データの前記指数部の値が、画素単位で前記複数の色要素で同じ値となるように、前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部の値及び前記指数部の値を変換することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記基数を”2”としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部が9ビット以上で且つ前記指数部が5ビット以上であるときに、
前記HDR画像データ変換手段は、前記第1HDR画像データを、前記仮数部が8ビット且つ前記指数部が4ビットの画素データから構成される第2HDR画像データに変換することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記画像処理手段は、前記第1HDR画像データを構成する前記画素データの前記仮数部の値に対して乗算処理を行う乗算回路と、前記指数部の値に対して加算処理を行う加算回路とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
第1及び第2の露光時間で被写体を撮像する撮像手段と、
前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成手段と、
前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換手段と、を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項11】
第1及び第2の露光時間で被写体を撮像する撮像ステップと、
前記第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと前記第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成ステップと、
前記HDR画像データ生成ステップで生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理ステップと、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換ステップと、を含むことを特徴とする撮像方法。
【請求項12】
第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成手段と、
前記HDR画像データ生成手段で生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
第1の露光時間で撮像して得られた第1の画像データと第2の露光時間で撮像して得られた第2の画像データとに基づき、画素値を仮数部がNビット(Nは2以上の自然数)、基数がX(Xは2以上の自然数)及び当該基数の指数部がMビット(Mは2以上の自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第1HDR(High Dynamic Range)画像データを生成するHDR画像データ生成ステップと、
前記HDR画像データ生成ステップで生成された前記第1HDR画像データに対して、浮動小数点演算処理を含む所定の画像処理を行う画像処理ステップと、
前記画像処理を行った後の前記第1HDR画像データを、前記画素値を前記仮数部がnビット(nは、N>nの自然数)、前記基数の指数部がmビット(mは、M>mの自然数)の浮動小数点形式で表した画素データから構成される第2HDR画像データに変換するHDR画像データ変換ステップと、を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−236726(P2008−236726A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339521(P2007−339521)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】