説明

撮像装置、撮像方法およびプログラム

【課題】複数台の監視カメラの自律的な処理によって、パノラマ映像の境界に出現した物体が不動体であるか否かを判定する。
【解決手段】二つの監視カメラ21,22が取得する映像を合成してパノラマ映像を構築し、このパノラマ映像を用いて不動体を監視する監視装置であって、二つの監視カメラ21,22は物体を検出して物体情報を生成し、一方の監視カメラは、映像の外周に接する物体を検出した場合には、当該検出した物体の存在時間が不動体条件を満たすかを判定し、満たす場合には、他方の監視カメラ22が生成した物体情報を受信して一方のカメラ21自身が生成した物体情報と結合して新たな物体情報を生成し、生成した新たな物体情報を用いて物体の大きさが不動体条件を満たすかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、撮像方法およびプログラムに関する。特に、複数台の監視カメラの映像を合成して構築されるパノラマ映像を用いる不動体判定技術によって不動体を監視する撮像装置、撮像方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数台のカメラの映像を組み合わせて、一枚のパノラマ映像を作成する技術が存在している。例えば、特許文献1には、PC上で動作するクライアントアプリケーションが複数台のカメラからの映像を受信し、合成することにより、パノラマ映像を作り出す技術が開示されている。
映像解析技術も進歩しており、背景差分の技術を用いることにより映像データ中に存在する物体を検出することが可能である。例えば特許文献2には、背景差分を用い映像から物体を正確に抽出する手法が説明されている。このようにして得られた物体に対して、予め設定されている条件と照らし合わせながら解析することにより、検出した物体が不動体か否かを判定する不動体判定の技術も実現されている。一般的には、物体の存在時間や物体の大きさに関する情報が条件を満たしている場合に不動体であると判定される。こうした不動体を検出する技術を活用することにより、映像中に不審な物体が出現し留まっている際に、警告を発することで、危険を未然に防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−68041号公報
【特許文献2】特開2000−20722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パノラマ映像を用いる従来の監視システムにおいては、各監視カメラが不動体判定処理を独立して行う場合には、不動体判定処理の判定指標である物体の存在時間や大きさに関する情報は、パノラマ映像を構築する全ての監視カメラに対して設定される。
しかしながら、パノラマ映像内に出現した物体が、各カメラ映像の境界に架かる場合、当該物体は複数の監視カメラによって、その一部が撮影されることになる。このため、物体の大きさは不動体としての判定基準を満たしているにも関わらず、各監視カメラで行なわれる不動体判定処理では、不動体と判断するため必要な物体の大きさを満たさない可能性がある。その結果として、どの監視カメラでも不動体として検知されない場合が考えられ、不動体判定処理が期待したように動作しなくなる問題があった。
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、パノラマ映像を構築する複数の映像の境界に架かる物体が出現した場合であっても、当該物体の大きさを推定して不動体であるか否かを判定できる監視装置、監視方法およびプログラムを提供することである。特に、パノラマ映像を構築する複数の映像を撮像する複数台の監視カメラの自律的な処理によって、パノラマ映像の境界に架かる物体に対しる不動体判定処理を実行できる監視装置、監視方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の撮像装置は、映像を取得する第1の映像取得手段と、前記第1の映像取得手段が取得した映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成する第1の物体検出手段と、前記第1の物体情報を用いて、前記物体の存在時間及び前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定する第1の不動体判定手段と、第2の物体検出手段が生成する第2の物体情報を受信できる情報受信手段と、前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成する第1の物体情報結合手段と、を有し、前記第1の物体検出手段が前記映像の外周に接する物体を検出した場合には、前記第1の不動体判定手段は、前記物体の存在時間が前記不動体条件を満たすか否かを判定し、前記物体の存在時間が前記不動体条件を満たす場合には、前記情報受信手段は前記第2の物体情報を受信し、前記第1の物体情報結合手段は、前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて前記第3の物体情報を生成し、前記第1の不動体判定手段は、前記第3の物体情報を用いて前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記物体の大きさが前記不動体条件を満たすと判定した場合には、前記物体が不動体であると判定する不動体判定処理を実行することを特徴とする。
本発明の撮像方法は、第1の映像を取得するステップと、前記第1の映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成するステップと、前記第1の物体情報を用いて前記物体の存在時間及び前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定するステップと、を有し、前記物体が前記第1の映像の外周に接する場合には、さらに、前記第1の映像と繋がることによりパノラマ映像を構成する第2の映像を取得するステップと、前記第2の映像から前記物体を検出して前記物体に関する第2の物体情報を生成するステップと、前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成するステップと、前記第3の物体情報を用いて前記物体が不動体であるか否かの判定を実行するステップと、を有することを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピュータに、第1の映像を取得するステップと、前記第1の映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成するステップと、前記第1の物体情報を用いて前記物体の存在時間及び前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定するステップと、を実行させ、前記物体が前記第1の映像の外周に接する場合には、さらに、前記第1の映像と繋がってパノラマ映像を構成する第2の映像を取得するステップと、前記第2の映像から前記物体を検出して前記物体に関する第2の物体情報を生成するステップと、前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成するステップと、前記第3の物体情報を用いて前記物体が不動体であるか否かの判定を実行するステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パノラマ映像を構成している複数台のカメラが、それぞれ自立的に物体情報のやり取りを実行する。それにより、パノラマ映像の境界に出現したために、映像の中にその一部しか映っていない物体に対しても、物体本来の大きさを推定した上で不動体判定処理を実施できるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明を適用した監視カメラのブロック図である。
【図2】図2は、本発明を適用した監視カメラを用い、パノラマ映像を用いて監視を行なう監視装置のシステム構成図である。
【図3】図3は、本発明を適用した監視カメラが、パノラマ映像の境界に出現した物体に対して不動体判定を行なう際に従うシーケンス図である。
【図4】図4(a)は物体情報の構成を示す図である。図4(b)は本発明を適用した一方の監視カメラが撮像する映像と生成する物体情報との例を示した図である。図4(c)は本発明を適用した他方の監視カメラが撮像する映像と生成する物体情報との例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。
本発明の実施形態にかかる撮像装置は、第1の物体検出手段が映像の外周に接する物体を検出した場合には、第1の不動体判定手段は、物体の存在時間が不動体条件を満たすか否かを判定し、物体の存在時間が不動体条件を満たす場合には、情報受信手段は、第2の物体検出手段が生成する第2の物体情報を受信し、第1の物体情報結合手段は、第1の物体情報と第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成し、第1の不動体判定手段は、第3の物体情報を用いて物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、物体の大きさが不動体条件を満たすと判定した場合には、物体が不動体であると判定する不動体判定処理を実行することを特徴とする。
また、本発明の実施形態にかかる撮像装置は、映像を撮像できる第1の撮像手段を更に有し、第1の映像取得手段は第1の撮像手段が撮像した映像を取得することを特徴とする。
また、本発明の実施形態にかかる撮像装置は、第2の映像を取得する第2の映像取得手段と、第1の映像取得手段が取得する第1の映像と第2の映像取得手段が取得する第2の映像とを繋ぎ合せてパノラマ映像を生成する処理機器と、処理機器に第1の物体情報を送信する第1の情報送信手段と、処理機器に第2の物体情報を送信する第2の情報送信手段とを備え、第1の不動体判定手段は、物体がパノラマ映像の境界に出現したか否かを判定し、物体がパノラマ映像の境界に出現した場合にのみ不動体判定処理を実行することを特徴とする。
また、本発明の実施形態にかかる撮像装置は、前記第2の物体情報を用いて前記不動体判定処理を実行する第2の不動体判定手段を更に有し、前記処理機器は、前記第1の不動体判定手段と前記第2の不動体判定手段に前記不動体判定処理を実行する優先順位を設定し、前記第1の不動体判定手段と前記第2の不動体判定手段のうちの前記優先順位の高い一方が前記不動体判定処理を実行することを特徴とする。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明を適用した撮像装置としての監視カメラ22,23を、機能ブロック単位で表現したブロック図である。監視カメラ22,23は、撮像素子101と、撮像制御部102と、CPU103と、映像処理部104と、記録媒体制御部105と、記録媒体106と、メモリー制御部107と、メモリー108と、通信制御部109と、通信物理層部110とを有する。
撮像素子101は、レンズを通して入力される光を電気的な信号へ変換することが可能である。撮像素子101は、映像を撮像する撮像手段として機能する。
撮像制御部102は、撮像素子101からの電気信号の入力をデジタルデータに変換することが可能である。撮像制御部102は、撮像手段としての撮像素子101が撮像した映像を取得する映像取得手段として機能する。
CPU(中央演算処理装置)103は、各モジュールの制御や、各モジュールから得られる情報を元に所定の演算処理をおこなうことが可能である。また、CPU103は本実施例においてソフトウェア(プログラム)での実装を想定している物体検出機能や不動体判定も処理することが可能である。このように、CPU103は、ソフトウェアを実行することにより、物体検出手段および不動体判定手段として機能する。
映像処理部104は、撮像制御部102より送られてくる撮像データを処理する事により、決められた形式の動画データを生成することが可能である。
記録媒体制御部105は、CPU103からの命令に従い、記録媒体106への各種設定データなどの読み出しや書き込みを制御することが可能である。
記録媒体106は、記録媒体制御部105から要求されるデータの読み出しや書き込みが可能である。
メモリー制御部107は、CPU103からの命令に従い、メモリー108へのデータの一時記録や、記録されているデータの読み出しを制御することが可能である。
メモリー108は、監視カメラ21,22の内部状態や、処理待ちの動画データを一時的に保存しておくことが可能である。
通信制御部109は、CPU103からの命令に従い、通信装置内のデータを通信物理層部110に送出する処理や、または通信物理層部110で受信したデータを通信装置内に読み込むための処理を制御する。通信物理層部110は、外部機器との間で実際にデータの送受信を行うことが可能である。すなわち、通信制御部109および通信物理層部110は、情報受信手段として機能する。
【0010】
図2は本発明を適用した監視カメラ21,22を用いて構築する、パノラマ映像を用いた監視装置1のシステム構成図である。図2に示すように、監視装置1は、2台の監視カメラ21,22と、PC(パーソナルコンピュータ)23とを含む。PC23は、処理機器(監視カメラ21,22の外部機器)として機能する。2台の監視カメラ21,22により撮影された映像は、ネットワークを介してPC23に送信される。PC23においては、所定のアプリケーション24が実行されている。PC23は、このアプリケーション24によって、監視カメラ21,22の映像を受信し、各監視カメラ21,22の映像を合成する(=繋ぎ合せる)ことによりパノラマ映像を構築する。また、監視カメラ21,22は、背景差分に基づく映像中から物体を検出する物体検出機能を実装している。そして、監視カメラ21,22は、動作している間は、常に撮影した映像に対して物体検出機能を働かせている。さらに、監視カメラ21,22は、物体検出機能が検出した物体情報に対して不動体判定処理を行う。不動体判定処理は、検出した物体が不動体であるか否かを判定する処理であり、検出した物体の物体情報が不動体としての条件(不動体であると判定される条件)を満たすか否かを判定することにより実行される。この「不動体であると判定される条件」を、以下、「不動体条件」と称する。そして、監視カメラ21,22には、撮像した映像中に不動体が存在していると判断した際には、ネットワークを通じて、PC23(アプリケーション24)が受け取れる形式で警告メッセージを送信する機能(=情報送信手段)が実現されている。また、アプリケーション24は、監視カメラ21,22の不動体判定処理における不動体条件をネットワーク越しに設定するための機能も実装されている。PC23は、この機能を用いて、監視カメラ21,22に対して、ユーザーが希望する不動体条件で不動体判定処理を行なうための設定を実行することが可能となる。さらに、通信処理は、PC23(アプリケーション24)との情報のやり取りのみならず、必要に応じて監視カメラ21,22間での情報のやり取りにも利用される。本実施例では、通信処理は、先の物体検知機能により得られる物体情報のやり取りのために利用されることを想定している。なお、物体検出機能および不動体判定処理は、CPU103がソフトウェアを実行することにより実現される。すなわち、CPU103は、ソフトウェアを実行することにより、物体検出手段および不動体判定手段として機能する。
【0011】
本実施例における不動体判定のための不動体条件の項目として、物体の存在時間と物体の大きさとに対して値を規定したもの想定している。すなわち、検出された物体の存在時間(=映像に映っている時間)の値が所定の条件を充足し、大きさの値が所定の条件を充足する場合に、当該検出された物体は不動体であると判定される。監視カメラ21,22の不動体判定手段は、物体検出手段より得られる物体の大きさと存在時間の情報を、不動体条件と照らし合わせる事で不動体の有無を判断できる。
【0012】
図3は、本発明を適用した撮像装置としての監視カメラ21が、パノラマ映像の画面の境界に出現した物体に対して実施する不動体判定処理を示すシーケンス図である。同様のシーケンスに従う処理を、監視カメラ22でも実行している。なお、この処理は、監視カメラ21,22のCPU103がソフトウェアを実行することによって実現される。
まずS301において、監視カメラ21は、映像取得手段としての撮像制御部102が、撮像手段としての撮像素子101が撮像した映像(フレーム画像)を受け取ったか否かの判定を行う。監視カメラ21の撮像素子101は、一般的に、決められたフレームレートで撮像を行う。監視カメラ21は、撮像制御部102がある時間におけるフレーム画像を受信したことを確認すると(「Yes」の場合)、S302へ移行する。監視カメラ21のCPU103は、撮像制御部102がフレーム画像を受信したことを確認できない間は(「No」の場合)、S301の処理を繰り返す待機状態となる。
次に、S302において、監視カメラ21のCPU103は、物体検出機能を活性化させて物体検出手段として機能し、撮影している映像内に物体が存在するか否かの調査を実行する。本実施例における物体検出機能は、CPU103上で動作するソフトウェアにより実現される。そして、CPU103は、物体検出機能により(=物体検出手段として)フレーム画像内に物体が検出された場合には、検出された物体についての物体情報を生成する。図4(a)は物体情報の構成を示す図である。物体情報は、たとえば図4(a)に示すように、{識別ID、座標、大きさ、存在時間}の項目から構成される。
S303では、監視カメラ21のCPU103は、物体検出機能により物体検出手段として機能し、物体情報の有無の確認を行う。監視カメラ21のCPU103は、物体検知機能から生成される物体情報が存在しない場合には、フレーム画像内に物体が存在しなかったと判断し(「No」)、S301の処理に戻る。一方、監視カメラ21のCPU103は、一つ以上の物体情報が生成された場合には(「Yes」)、S304へ移行する。本実施例においては、図2に示すような監視カメラ21,22のフレーム画像を合成してパノラマ映像が構築されることを想定している。よって、監視カメラ21において、図4(b)に示すように、2つの物体情報が生成され、その後にS304へ移行することを想定している。図4(b)は本発明を適用した一方の監視カメラが撮像する映像と生成する物体情報との例を示した図である。
S304では、監視カメラ21のCPU103は、S302で生成された全ての物体情報に対して、S305以下の処理が行なわれたか否かの判定を行う。全ての物体情報に対して処理が行なわれたと判定された場合には、S302で受信したフレーム画像より生成された全ての物体情報に対する処理が完了したことを意味する。このため、監視カメラ21のCPU103は、S301に移行する。一方、未処理の物体情報がある場合には、S305へ移行する。
S305において、監視カメラ21のCPU103は、まず対象とする物体情報を選択する。一般的には、たとえば、物体情報の識別IDの順番で処理する方法が適用できる。
次にS306において、監視カメラ21のCPU103は、選択した物体情報の項目から、{座標、大きさ}の二つの情報に抽出する処理を行い、S307へ移行する。
次にS307において、監視カメラ21のCPU103は、{座標、大きさ}の情報をもとに、対象としている物体がパノラマ映像の境界に架かっているか否か(換言すると、画面の外周に接しているか否か)の判定を行う。パノラマ映像の境界に架かっているか否かの判定のためには、2つの監視カメラ21,22の4つの画面境界(=画面の外周の四辺)うち、いずれの画面境界がパノラマ映像の画面の境界(=パノラマ映像の繋ぎ目)であるかを示す情報が必要である。図2に示す本実施例の監視装置1においては、PC23(PC23において動作するアプリケーション24)が2つの監視カメラ21,22に対して設定を行うことを想定している。監視カメラ21においては、図4(b)に示すように、右端の画面境界がパノラマ映像の境界であることが、既にPC23(アプリケーション24)により設定されている。つまり、図4(b)の識別ID=2を持つ物体情報を処理した際に、S307の判定結果が真(「Yes」)となることを意味している。
ここではまず、監視カメラ21のCPU103が、識別ID=2の物体がパノラマ映像に関わる画面境界に架かっていないと判定し、S308に移行した場合を説明する。この場合には、S308において、通常の不動体判定処理が開始される。まずS309において、監視カメラ21のCPU103は、物体情報に含まれる物体の大きさが不動体条件を満たしているかの判定を行う。満たしている場合はS310に移行し、満たしていない場合にはS304に戻る。たとえば、不動体条件として、200〜600pixcelの大きさの範囲が指定されているとする。この場合には、図4(b)の監視カメラ21が検出した識別ID=2の物体情報(大きさが400pixcel)は、不動体条件のうちの「大きさ」の項目を満たす。
次にS310において、監視カメラ21のCPU103は、不動体判定手段として機能し、物体情報に含まれる存在時間の情報が不動体条件を満たしているかの判定を行う。満たしている場合はS311に移行し、満たしていない場合にはS304に戻る。たとえば、存在時間が500〜2000frameの範囲にある場合に不動体条件の「存在時間」の項目を満たすと設定されているとする。この場合には、図4(b)の監視カメラ21が検出した識別ID=2の物体情報(存在時間が600frame)は、不動体条件のうちの「存在時間」の項目を満たすことを意味する。
そして、処理がS311に至った時点で、処理対象となっている物体の物体情報は、不動体条件の「大きさ」と「存在時間」の項目を満たしていると判定される。すなわち、処理対象となっている物体が、不動体であると判定される。S311においては、通信制御部109および通信物理層部110は、情報送信手段として、不動体を検出したことを通知するメッセージをPC23(アプリケーション24)に送信する処理を行う。
その後、S304に移行し、次の物体情報に対する処理に移行を開始する。
一方、監視カメラ21のCPU103は、S307において、物体がパノラマ映像の画面境界に架かっていると判定した場合(「Yes」)には、S312以降の処理を実行する。S312以降の処理は、特殊不動体判定処理である。
まず、S313において、監視カメラ21のCPU103は、検出した物体の物体情報の存在時間の項目が不動体条件を満たしているかの判定を行う。そして、満たしている場合はS314に移行し、満たしていない場合にはS304に戻る。この段階では、物体情報に含まれる物体の「大きさ」の項目に関する判定は行わない点がポイントである。
次に、S314に至った時点で、監視カメラ21のCPU103は、監視カメラ22が保持している物体情報を取得するための要求を、ネットワークを通じて監視カメラ22に送信する処理を行う。前記のとおり、監視カメラ22が撮像する映像と監視カメラ21が撮像する映像とが合成されてパノラマ映像が構築される。
S315では、通信制御部109および通信物理層部110は、情報受信手段として機能し、対応する物体情報であって、監視カメラ22が生成した物体情報の受信処理を行う。
次にS316では、監視カメラ21のCPU103は、自身が生成した物体情報と、他方の監視カメラ22から受信した物体情報を用いて、パノラマ映像の境界に架かる物体の本来の大きさを推定する処理を行う。この推定処理においては、監視カメラ21のCPU103は、まず、S315において取得した他方の監視カメラ22における全ての物体情報を用い、監視カメラ21自身が現在処理対象としている物体と繋がっている物体がないかを調査する。この調査は、他方の監視カメラ22から受信した物体情報の座標情報を用いて実行される。そして、繋がっていると判断される物体があった場合には、監視カメラ21のCPU103は、自身が生成した当該物体の物体情報に含まれる物体の大きさの値に、受信した当該物体の物体情報に含まれる大きさの値を足し合わせる。そして、足し合わせた値が、当該物体の本来の大きさであると推定する。このように、監視カメラ21のCPU103は、自身が生成した物体情報と、他方の監視カメラ22から受信した物体情報とを用いて新たな物体情報を生成する物体情報結合手段として機能する。本実施例においては、図2に示すように、物体がパノラマ映像の境界に架かっている状態を想定している。図4(b)は本発明を適用した一方の監視カメラ21が撮像する映像と生成する物体情報の例を示した図である。図4(c)は本発明を適用した他方の監視カメラ22が撮像する映像と生成する物体情報の例を示した図である。図4(b)(c)は、処理対象の物体として鞄を例に示す。図4(c)に示すように、監視カメラ21のCPU103は、自身が生成した鞄(識別ID=2の物体)の物体情報と、他方の監視カメラ22の物体情報のうちの鞄(識別ID=1の物体)の物体情報と合わせて、処理対象の物体としての鞄の大きさを推定する。そして、監視カメラ21のCPU103は、パノラマ映像の境界に架かる物体について、新たな物体情報を生成する。この新たな物体情報の「大きさ」の項目には、推定された物体の大きさが適用される。
S317では、監視カメラ21のCPU103は、生成した新たな物体情報の「大きさ」の項目(=推定した物体の大きさ)が、不動体条件を満たすか否かの判定を行う。監視カメラ21のCPU103は、推定した物体が不動体条件を満たしていると判定した場合には、S318へ移行する。一方、監視カメラ21のCPU103は、不動体条件を満たしていないと判定した場合にはS304に移行し、次の物体情報に対する処理に移行する。
処理がS318に至った時点で、パノラマ映像の境界にかかる形で物体が出現した場合の特殊な不動体検知処理において、処理対象となっている物体の物体情報の「大きさ」と「存在時間」の項目の値が不動体条件を満たしていると判定される。最後にS318において、通信制御部109および通信物理層部110は情報送信手段として機能し、不動体を検出したことを通知するメッセージをPC23(アプリケーション24)に送信する処理を行う。その後、S304に移行する。そして、監視カメラ21のCPU103は、次の物体情報に対する処理への移行を開始する。
このように、特殊不動体判定処理においては、新たな物体情報が不動体条件を満たすか否かが判定され、満たしていると判定された場合には、物体が不動体であると判定される。
以上のように、監視カメラ21のCPU103は、検出した物体がパノラマ映像の画像の境界に架かっているか否かに応じて、不動体判定の処理を切り替える。これにより、出現した物体が2つの監視カメラ21,22の映像に架かっている場合でも、監視カメラ21,22は、それぞれ自立した処理において不動体の検出を行なうことができる。
【0013】
本実施例の説明においては、S307の判定処理においてパノラマ映像の境界に架かっていると判定された物体情報の全てに対してS312以降の特殊不動体検知処理を実行する方法を説明した。このような構成であると、実際に物体が2つの監視カメラ22,23で構成されているパノラマ映像の境界に架かっている場合には、監視カメラ21,22の双方が同じ処理を行うことになる。つまり、PC23(アプリケーション24)は、2つの監視カメラ21,22の双方から不動体検知の情報を受け取る事になる。そこで、そうした煩雑な状態を回避するために、次のような構成が適用できる。すなわち、図3のS312とS313との間に、処理対象の物体情報の「大きさ」の項目の値が、不動体条件として設定される大きさの最小値の2分の1以上であるか否かを判定する処理が追加される。そして、この処理の判定結果が「No」である場合には、S304に戻るようにする。なぜならば、物体の大きさが、不動体条件として設定される大きさを満たすためには、監視カメラ22,23のうち、少なくとも一方の監視カメラで検出される物体の大きさが、不動体条件として設定される大きさの最小値の2分の1以上である必要がある。つまり、物体の大きさが、不動体条件として設定される大きさの最小値の2分の1未満の場合、不動体としての判定は、他方の監視カメラでの物体の大きさ次第ということになるからである。したがって、その際には、一方の監視カメラ21は無駄な不動体判定処理を行なわず、他方の監視カメラ22に不動体判定処理自体を任せることが可能になる。したがって、2台の監視カメラ21,22が物体情報を送信する事は無くなる。
【0014】
また同じく、煩雑な状態を回避するための手法として、監視カメラ21,22に優先順位をつけておく構成が適用できる。この構成においては、予めPC23(アプリケーション24)は、監視カメラ21,22に優先順位を割り振っておく。これにより、PC23は、パノラマ映像の境界に架かって出現した物体に対する不動体検知処理を、優先順位の高い監視カメラ21,22に実行させる事ができる。したがって、無駄な不動体判定処理をなすことが可能になり、2台の監視カメラ21,22が不動体情報を送信する事は無くなる。
【0015】
また、図3のS306とS307との間に、処理対象としている物体の座標が、映像内の所定の領域内であるか否かを判定する処理を追加する構成であってもよい。すなわち、監視カメラ21のCPU103は、映像取得手段としての映像処理部104が取得する映像に所定の領域を設定する領域設定手段として機能する。そして、不動体判定手段は、物体検出手段が検出した物体の座標が、領域設定手段が設定する領域内にあるか否かを判定する。検出した物体の座標が、領域設定手段が設定する領域内にあると判定された場合にはS307以下に移行して通常の不動体判定処理または特殊不動体判定処理を実行する。一方、領域内にないと判定された場合には、当該物体については、通常の不動体判定処理と特殊不動体判定処理のいずれも実行せずにS304に移行する。なお、前記不物体検出手段および動体判定手段は、監視カメラ21のCPU103がソフトウェアを実行することにより実現される手段である。なお、領域設定手段は、映像取得手段が取得する映像のうちの、パノラマ映像の境界近傍の領域を所定の領域として設定する。
【0016】
以上、本発明の実施形態(実施例)について詳細に説明したが、前記実施形態(実施例)は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態(実施例)に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0017】
また、前記実施形態(実施例)の機能を実現するプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステムまたは装置に供給して実行する構成も、本発明に含まれる。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、当該コンピュータに供給されてインストールされるプログラムコード自体も、本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのプログラム自体も本発明に含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW等が適用できる。また、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリも適用できる。
【符号の説明】
【0018】
103:CPU(中央演算装置)、21,22:監視カメラ、23:PC(パーソナルコンピュータ)、24:アプリケーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を取得する第1の映像取得手段と、
前記第1の映像取得手段が取得した映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成する第1の物体検出手段と、
前記第1の物体情報を用いて、前記物体の存在時間及び前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定する第1の不動体判定手段と、
第2の物体検出手段が生成する第2の物体情報を受信できる情報受信手段と、
前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成する第1の物体情報結合手段と、
を有し、
前記第1の物体検出手段が前記映像の外周に接する物体を検出した場合には、前記第1の不動体判定手段は、前記物体の存在時間が前記不動体条件を満たすか否かを判定し、
前記物体の存在時間が前記不動体条件を満たす場合には、前記情報受信手段は前記第2の物体情報を受信し、
前記第1の物体情報結合手段は、前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて前記第3の物体情報を生成し、
前記第1の不動体判定手段は、前記第3の物体情報を用いて前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記物体の大きさが前記不動体条件を満たすと判定した場合には、前記物体が不動体であると判定する不動体判定処理を実行することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
映像を撮像できる第1の撮像手段を更に有し、
前記第1の映像取得手段は前記第1の撮像手段が撮像した映像を取得することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
第2の映像を取得する第2の映像取得手段と、
前記第1の映像取得手段が取得する第1の映像と前記第2の映像取得手段が取得する第2の映像とを繋ぎ合せてパノラマ映像を生成する処理機器と、前記処理機器に前記第1の物体情報を送信する第1の情報送信手段と、
前記処理機器に前記第2の物体情報を送信する第2の情報送信手段と、
を備え、前記第1の不動体判定手段は、前記物体が前記パノラマ映像の境界に出現したか否かを判定し、前記物体が前記パノラマ映像の境界に出現した場合にのみ前記不動体判定処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の物体検出手段が生成する物体情報には、少なくとも前記物体の識別IDと、前記物体の大きさと、前記物体の存在時間とが含まれることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の不動体判定手段は、前記不動体の判定の条件として、前記物体の存在時間と前記物体の大きさとを用いることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の不動体判定手段は、前記パノラマ映像の境界に出現した物体の大きさを判定し、前記物体の大きさが前記不動体条件として設定される大きさの2分の1以上の大きさである場合に、前記不動体判定処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記第2の物体情報を用いて前記不動体判定処理を実行する第2の不動体判定手段を更に有し、
前記処理機器は、前記第1の不動体判定手段と前記第2の不動体判定手段に前記不動体判定処理を実行する優先順位を設定し、
前記第1の不動体判定手段と前記第2の不動体判定手段のうちの前記優先順位の高い一方が前記不動体判定処理を実行することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の映像取得手段が取得する映像に対して所定の領域を設定する領域設定手段を更に有し、
前記第1の不動体判定手段は、前記物体の座標が前記パノラマ映像の境界であって前記領域設定手段が設定する領域内にある場合に、前記不動体判定処理を実行することを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
映像を取得する第1の映像取得手段と、
前記第1の映像取得手段が取得した映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成する第1の物体検出手段と、
前記第1の物体情報を用いて、前記物体が不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定する第1の不動体判定手段と、
第2の物体検出手段が生成する第2の物体情報を受信できる情報受信手段と、
前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成する第1の物体情報結合手段と、
を有し、
前記第1の物体検出手段が前記映像の外周に接する物体を検出した場合には、前記第1の不動体判定手段は、前記物体が前記不動体条件を満たすか否かを判定し、
前記物体が前記不動体条件を満たす場合には、前記情報受信手段は前記第2の物体検出手段が生成した第2の物体情報を受信し、
前記第1の物体情報結合手段は、前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて前記第3の物体情報を生成し、
前記第1の不動体判定手段は、前記第3の物体情報を用いて前記物体が不動体条件を満たすか否かを判定し、前記物体が前記不動体条件を満たすと判定した場合には、前記物体が不動体であると判定する不動体判定処理を実行することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
第1の映像を取得するステップと、
前記第1の映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成するステップと、
前記第1の物体情報を用いて前記物体の存在時間及び前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定するステップと、
を有し、
前記物体が前記第1の映像の外周に接する場合には、さらに、
前記第1の映像と繋がることによりパノラマ映像を構成する第2の映像を取得するステップと、
前記第2の映像から前記物体を検出して前記物体に関する第2の物体情報を生成するステップと、
前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成するステップと、
前記第3の物体情報を用いて前記物体が不動体であるか否かの判定を実行するステップと、
を有することを特徴とする撮像方法。
【請求項11】
コンピュータに、
第1の映像を取得するステップと、
前記第1の映像から物体を検出して前記物体に関する第1の物体情報を生成するステップと、
前記第1の物体情報を用いて前記物体の存在時間及び前記物体の大きさが不動体条件を満たすか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて前記物体が不動体であるか否かを判定するステップと、
を実行させ、
前記物体が前記第1の映像の外周に接する場合には、さらに、
前記第1の映像と繋がってパノラマ映像を構成する第2の映像を取得するステップと、
前記第2の映像から前記物体を検出して前記物体に関する第2の物体情報を生成するステップと、
前記第1の物体情報と前記第2の物体情報とを用いて第3の物体情報を生成するステップと、
前記第3の物体情報を用いて前記物体が不動体であるか否かの判定を実行するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115623(P2013−115623A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260266(P2011−260266)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】