説明

撮像装置、撮像装置の画像処理方法及び画像処理プログラム

【課題】撮影後の画像処理において流し撮り効果を付与する際に、撮影者の設定によって、好みに応じた流し撮り画像を得る。
【解決手段】仮想シャッター時間を設定し(ステップSA3)、シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して第1の被写体画像を取得し(ステップSA7)、シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得し(ステップSA8)、仮想シャッター時間と方向データとに基づいて、被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する。このように、シャッター時間にて被写体を撮像して取得した被写体画像に、仮想シャッター時間中に取得した方向データと仮想シャッター時間とに基づいて変形を加えた流し撮り画像を生成することから、仮想シャッター時間に応じた流し撮り画像を得られ、被写体に好適な流し撮り効果を反映させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタルカメラ等の撮像装置に係り、特に被写体の流し撮り撮影を行う場合に好適な撮像装置、撮像装置の画像処理方法及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メインの被写体の動きに合わせてカメラを的確に追従させることによって、被写体を静止させ、かつ背景を流したように撮影する「流し撮り」と呼ばれる撮影方法がある。このようにして撮像された「流し撮り画像」では、背景に対してメインの被写体が鮮明に強調され、通常の静止画像と比較して臨場感に溢れたものが多い。
【0003】
流し撮り画像を得るためには、シャッターを開放して露光している間にメインの被写体の動きに合わせてカメラを的確に追従させる必要があるが、カメラを動かすスピードをメインの被写体の実際の移動速度と正確に合わせることは困難であり、カメラを動かす際に手ブレが発生しやすい。また、カメラを動かすスピードが速くなるほど背景が大きく流れるので流し撮りの効果を大きく表出できる一方、被写体の像ブレは大きくなる。
【0004】
このため、撮影者によるカメラを動かす動作のみによって流し撮り画像を得るのではなく、デジタルカメラ等では、フィルタリング処理を行うことにより、流し撮りの効果を撮影した画像に事後的に反映させることも可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のものは、連写撮影により複数の画像データを取得し、これらの複数の画像データを比較して被写体の動き情報を取得し、取得した動き情報に基づいてメインの被写体と背景とを判別して、背景のブレ量を増大させる処理を撮影した画像に行う。このようにして流し撮りの効果を反映させるものである。
【0006】
【特許文献1】特開2006−80844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の技術によっても、連写撮影により複数の画像データを得る間はメインの被写体の動きに合わせてカメラを的確に追従させる必要があるので、メインの被写体の実際の移動速度とカメラのスピードが合わない可能性がある。また、カメラのスピードを無理に被写体のスピードに合わせようとすると被写体の像ブレが大きくなってしまうという問題もある。さらに、画像エフェクタ等で撮影後に処理をするのは専門的な知識や操作を要し、操作が煩雑で面倒であったりする。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、撮影後の画像処理において、撮影者の設定に応じた流し撮り効果を付与することによって、撮影者の好みに応じた流し撮り画像を取得可能な撮像装置、撮像装置の画像処理方法、及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため請求項1記載の発明に係る撮像装置にあっては、シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して被写体画像を取得する撮像手段と、所定の時間における被写体の動きを付与するための仮想シャッター時間を設定する設定手段と、シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得する取得手段と、前記仮想シャッター時間と前記方向データとに基づいて、前記被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する画像生成処理手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記仮想シャッター時間は前記シャッター時間とは独立して、ユーザにより任意に設定可能であり、前記撮像手段は、前記シャッター時間に応じた第1の被写体画像を取得することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記取得手段は、加速度センサーによる検出結果又は被写体画像の変化前後における変化量及び変化方向を示す動きベクトルに基づいて方向データを取得することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記撮像手段は、さらに、シャッターキーの押下後前記仮想シャッター時間の経過によって第2の被写体画像を取得し、前記画像生成処理手段は、前記第1の被写体画像と前記第2の被写体画像とに基づいて流し撮り画像を生成することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記取得手段は、前記被写体画像を複数のブロックに分割して、各ブロックごとに前記検出結果又は前記動きベクトルを取得し、前記画像生成処理手段は、各ブロックごとに変形を加えた流し撮り画像を生成することを特徴とする。
【0014】
また、請求項6記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記画像生成処理手段は、加速度センサーによる検出結果又は被写体画像の変化前後における被写体部分の変化量及び変化方向を示す動きベクトルの大小に応じて流し撮り画像を生成することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記撮像手段によって取得された被写体画像から被写体の特徴部を検出する検出手段と、前記画像生成処理手段は、被写体の前記特徴部を除く部分に変形を加えた流し撮り画像を生成することを特徴とする。
【0016】
また、請求項8記載の発明に係る撮像装置の画像処理方法にあっては、シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して被写体画像を取得する工程と、所定の時間における被写体の動きを付与するための仮想シャッター時間を設定する工程と、シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得する工程と、前記仮想シャッター時間と前記方向データとに基づいて、前記被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項9記載の発明に係る撮像装置の画像処理プログラムにあっては、撮像装置が有するコンピュータに、シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して被写体画像を取得する工程と、所定の時間における被写体の動きを付与するための仮想シャッター時間を設定する工程と、シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得する工程と、前記仮想シャッター時間と前記方向データとに基づいて、被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する工程と、を実行させることを特徴とする
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仮想シャッター時間に応じた流し撮り画像を得ることができるので、好適な被写体の流し撮り効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態の撮像装置のデジタルカメラの電気的構成を示したブロック図である。このデジタルカメラは、基本となる動作モードとして撮影を行うための記録モードと、撮影した画像を再生するための再生モードとが設けられている。
【0020】
図1に示したように本実施の形態のデジタルカメラは、撮影レンズ1と、撮影レンズ1により収束された撮影光をシャッター2を介して受光するとともに、受光面に結像された被写体の光学像を光電変換し画像信号として出力する撮像素子であるCMOSセンサー3、CMOSセンサー3の出力信号をデジタルの画像データへ変換するA/D変換器4、変換後の画像データを逐次記憶するDRAM5を備えている。
【0021】
シャッター2の動作はCPU9の命令に従いシャッター制御部8により制御され、CMOSセンサー3及びA/D変換器4の動作はCPU9の命令に従い受光制御部10により制御される。DRAM5に格納された1枚分の画像データ、すなわちRAWデータはデモザイク部11により画素ごとに色情報を補間されてYUVデータに変換された後、液晶表示コントローラ6を介して液晶表示器7にスルー画像として表示される。
【0022】
なお、デモザイク部11は、記録モードでの撮影時においてはRAWデータをYUVデータ(撮影画像)のみならず、必要に応じて輝度情報のみからなる輝度画像データ(輝度画像)へ変換する。また、変換されたYUVデータ及び輝度画像データはDRAM5に一時的に記憶される。
【0023】
記録モードでの撮影時にデモザイク部11によりYUVデータに変換された画像データは、CPU9によってJPEG等の所定の圧縮方式に従い圧縮された後、外部記憶メモリ12に静止画ファイルとして記憶される。外部記憶メモリ12に静止画ファイルとして記憶された画像データは、再生モードにおいては、必要に応じCPU9によって読み出されて伸張された後、液晶表示コントローラ6を介して液晶表示器7において表示される。なお、外部記憶メモリ12は、例えばカメラ本体に着脱可能なメモリカードや、カメラ本体に内蔵されたフラッシュメモリ等により構成される。
【0024】
また、CPU9には、キー入力ブロック13、プログラムメモリ14、被写体検出部15、マッチング部16、画像変形合成加算部17、SRAM18が接続されている。キー入力ブロック13は、ユーザによるデジタルカメラの操作に使用される、電源キーやシャッターキー、ズームボタン(Wボタン,Tボタン)、モード切替キー等を含む複数のスイッチ類から構成される。プログラムメモリ14は、CPU9の動作に必要な種々のプログラム、及びプログラムの実行に際して使用される各種のデータ、ログが記憶されたメモリである。CPU9は、プログラムメモリ14に記憶されたプログラムに従い、キー入力ブロック13におけるいずれかのキーの操作に応じてデジタルカメラの各部の動作を制御するとともに、前述した画像データの圧縮・伸張処理を行う。また、CPU9は、記録モードにおいては本発明の撮像手段、設定手段、取得手段として機能する。
【0025】
被写体検出部15は、被写体画像のうち、メインの被写体とメインの被写体以外の背景とを分離して検出する本発明の検出手段として機能する。メインの被写体は、流し撮りに際して撮影者がフレーム内の中央部分に位置させるようにしてシャッターキーの半押しをした時に認識された物体や、各ブロックごとに検出される動きベクトルによって、動きの量が小さいと認識された物体を特徴部として認識する。なお、CPU9は、撮像した被写体画像から特徴部を検出する処理を検出用プログラムを実行させるようにして行ってもよく、ロバーツフィルタ等のフィルタリング処理によって行うことができる。
【0026】
マッチング部16は、記録モードでの撮影に際して、SRAM18を作業メモリとして使用し、CMOSセンサー3により撮像された被写体画像同士との間でマッチングを行い、時間的に前後する変化前の被写体画像と変化後の被写体画像の相対的な変化量及び変化方向を示す動きベクトルを取得してCPU9に出力する。マッチングは、被写体画像を3×3や4×4等の複数ブロックに分割した各ブロックごとに行う。
【0027】
画像変形合成加算部17は、CPU9の指示に応じ、CMOSセンサー3により撮像された被写体画像に変形を加えて流し撮り画像を生成する本発明の画像生成処理手段である。
【0028】
次に、以上の構成からなるデジタルカメラにおいて、記録モードの下位モードである流し撮りモードが設定されているときの動作について説明する。図2は、記録モードが設定されているとき撮影者によって流し撮りモードが設定された場合におけるCPU9の処理手順を示すフローチャートである。
【0029】
CPU9は、流し撮りモードの設定とともに、周知のOSD(On Screen Display)技術により液晶表示器7にスルー画像に重ねてグリッドを表示させる(ステップSA1)。図3に、液晶表示器7に表示されるグリッドの一例を示す。このグリッド100は、撮影者がカメラの向きをメインの被写体に追従させるとき、メインの被写体をフレーム内の特定位置にガイドするものであり、本実施の形態において上記特定位置はフレーム内の中央部分である。したがって、流し撮りに際して撮影者はメインの被写体を極力フレーム内の中央部分に位置させるようにして所望のシャッターチャンスでシャッターキーを押すこととなる。
【0030】
次に、撮影者が仮想シャッター時間の設定を行うと、その設定操作を検知して(ステップSA2)、CPU9は、仮想シャッター時間Btを設定する(ステップSA3)。なお、撮影者が仮想シャッター時間の設定を行わない場合は、その設定操作を検知せず(ステップSA3)、仮想シャッター時間Btを設定することなく、ステップSA4に進む。すなわち、撮影者が仮想シャッター時間の設定を行わない場合は、公知の流し撮り撮影が行われる。
【0031】
次に、撮影者がシャッターキーの半押しを行うと、その操作を検知して(ステップSA4)、AF処理を行う(ステップSA5)。シャッターキーは、撮像時にレリーズ操作を行うもので、2段階のストロークを有しており、1段目の操作(半押し状態)でオートフォーカス(AF)と自動露出(AE)を行わせるための前処理指示信号を発生し、2段目の操作(全押し状態)で撮像処理を行うための撮像指示信号を発生する。AF処理とAE処理については公知であるので詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、撮影者がシャッターキーの全押しを行うと、その操作を検知して(ステップSA6)、第1の被写体画像G1をCMOSセンサー3によって撮像してDRAM5に記憶する(ステップSA7)。第1の被写体画像G1の撮像は、上記自動露出処理で求めたシャッター時間によって行われる。なお、第1の被写体画像G1の撮像を連写により行う場合には、CMOSセンサー3によって時間的に連続する複数枚の画像のRAWデータを取得し、DRAM5に記憶する。第1の被写体画像G1の撮像中、すなわち、シャッターキーの全押し押下後シャッター時間が経過するまでは、メインの被写体が撮影フレーム内の中央部分(特定位置)に位置するようにメインの被写体の動きに合わせてカメラを追従させる。本実施の形態において、シャッター時間として、自動露出処理で求めたシャッター時間を用いるが、本発明はこれに限定されず、シャッター時間は、被写体を露光する露光時間が被写体を撮像するために適正となる値であればよい。シャッター時間は、例えば、AE処理により得られる適正露光値に基づいて自動的に設定してもよく、あるいはユーザがマニュアル操作で事前に設定するようにしてもよい。また、このように、被写体を露光する露光時間が被写体を撮像するために適正となるように決定されるシャッター時間を本明細書では「適正露光に基づくシャッター時間」ともいう。
【0033】
シャッターキーの全押し押下後から仮想シャッター時間Bt経過までは、カメラの追従によって発生するカメラの加速度を記録する(ステップSA8)。加速度は、カメラに搭載されたジャイロセンサー等の加速度センサーによって検出でき、この検出結果をDRAM5に記録しておく。或いは、スルー画像から得られる動きベクトルの検出によって加速度を得ることができる。
【0034】
なお、第1の被写体画像G1を連写取得している場合には、時間的に連続する前後の画像の動きベクトルの大きさを算出して、カメラの加速度を記録することができる。
【0035】
ステップSA8による加速度の記録は、シャッターキーの全押し押下後から仮想シャッター時間Bt経過まで行われ、Bt経過か否かを判断する(ステップSA9)。ここで、Bt経過と判断すると、第2の被写体画像G2をCMOSセンサー3によって上述したシャッター時間で撮像してDRAM5に記憶する(ステップSA10)。
【0036】
次に、取得された第1の被写体画像G1と第2の被写体画像G2とに基づいて流し撮り効果処理を行う(ステップSA11)。流し撮り効果処理については後述する。
【0037】
最後に、ステップSA11において流し撮り効果処理が行われて生成された流し撮り画像データをDRAM5や外部記憶メモリ12に記録して(ステップSA12)、本サブルーチンを終了する。
【0038】
続いて、図1のステップSA11に示す流し撮り効果処理について説明する。図4は、CPU9の制御によって行われる流し撮り効果処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0039】
まず、CPU9は、被写体検出部15を制御して、第1の被写体画像G1のデータに基づいてメイン被写体部分を検出し、メイン被写体以外の背景部分の動きベクトルを検出する(ステップSB1)。すなわち、メイン被写体部分は、その動きに合わせてカメラを追従させた結果、相対的に画像内での動き(像ブレ)が生じていない部分であり、本実施の形態においては流し撮り効果を付与しない部分である。メイン被写体は、シャッターキーの半押しによって合焦点にある物体を検出して特定する方法の場合、メイン被写体とされた物体についてフィルタリング処理を行ってその輪郭を検出することができる。或いは、タッチパネルの操作によって、メイン被写体を撮影者が選択指示して、選択指示された物体についてフィルタリング処理を行ってその輪郭を検出することができる。図5はフィルタリング処理の一例を示す図であり、図5(a)の枠200をメイン被写体として検出し、その輪郭を検出・追跡してフィルタ領域を設定したのが図5(b)である。また、メイン被写体以外の背景部分の動きベクトルの検出は、第1の被写体画像G1を複数ブロックに分割して、背景部分が含まれるブロックごとの動きベクトルを検出する。すなわち、マッチング部16においては、前フレームと現フレームとの間で、背景部分を追跡対象としてマッチングを行い、双方の間における背景部分の相対的な変化量及び変化方向を示す動きベクトルを取得する。
【0040】
次に、ステップSA8で記録した加速度値が所定の閾値より高いか低いかを判断し(ステップSB2)、所定の閾値より低いか近似している(例えば、0に近い)と判断した場合は、ステップSB1で検出した動きベクトルの方向を方向データDとして設定する(ステップSB3)。一方、ステップSA8で記録した加速度値が所定の閾値より高いか近似していないと判断した場合は、加速度センサーによって得られた方向を方向データDとして設定する(ステップSB4)。すなわち、ステップSB3では、カメラを被写体に追従させておらず、カメラを固定したまま被写体が動いている場合に、被写体の動きに流し撮り効果を付与するための処理であり、ステップSB4では、カメラを被写体に追従させて動かしている場合に、被写体の動きに流し撮り効果を付与するための処理である。
【0041】
次に、仮想シャッター時間Bt、方向データDの値に基づいて、第1の被写体画像G1に画素加算移動平均処理を行う(ステップSB5)。具体的には、第1の被写体画像G1のメイン被写体以外の背景部分について、仮想シャッター時間Btの値だけ方向データDの方向に応じた画素加算を行うことで、仮想シャッター時間Btの大きさが大きいほど平均する画素数を大きくして、流し撮り効果を付与する。一方、メイン被写体部分は流し撮り効果を付与しない。このように、仮想シャッター時間Btに相当する量の画素加算を行うことで、メイン被写体や風景が一定速度で動いていても、仮想シャッター時間を変えることにより様々なスピード感をもった流し撮り画像を得ることができる。
【0042】
最後に、第2の被写体画像G2を用いて第1の被写体画像G1に補間処理を行う(ステップSB6)。これは、第1の被写体画像G1は撮影開始時点の画像であるため、画素加算を行っていくと最終的に仮想シャッター時間Btが経過した時点の端部の画像が不足してしまうことから、これを補うための補間処理を行うものである。以上の処理により、本サブルーチンを終了する。
【0043】
本実施の形態によれば、第1の被写体画像を得るシャッター時間と第2の被写体画像を得る仮想シャッター時間とを使い分け、短いシャッター時間でも十分な流し撮り効果を得ることができるよう仮想シャッター時間を設定することができるので、従来同様に撮影する感覚で手軽に流し撮り画像を得ることができる。その際、メイン被写体とメイン被写体以外の背景の切り分けを行い、背景のみに流し撮り効果を付与することができるので、撮影状況に応じた的確な流し撮り効果の付与が可能となる。
【0044】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の撮像装置は、図1〜図5を参照して説明した第1の実施の形態の撮像装置と構成及び動作が略同様であるので、同様の構成には同様の符号を付して、説明の重複を省略する。
【0045】
図6は、第2の実施の形態の撮像装置が実行する流し撮りの効果処理の処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態の撮像装置は、図6に示すように、第1の実施の形態の撮像装置と、仮想シャッター時間Bt、方向データD、動きベクトルの値に基づいて、第1の被写体画像G1に画素加算移動平均処理を行うステップSB5の処理を、ブロックごとに行う点が第1の実施の形態の撮像装置と異なる。
【0046】
具体的には、ステップSB5に代えてステップSC5を実行して、第1の被写体画像G1のメイン被写体以外の背景部分についてブロックごとに、仮想シャッタ時間Btだけ方向データDの方向に応じた画素加算を行うことで、各ブロックごとに仮想シャッタ時間Btの大きさが大きいほど平均する画素数を大きくして、流し撮り効果を付与する。一方、メイン被写体部分は平均する画素数を小さくして、流し撮り効果を付与しない。さらにこの時、各ブロックの動きベクトルの大きさに応じて画素加算量を微調整して、臨場感のある流し撮り画像を得るようにしてもよい。具体的には、仮想シャッター時間Btによって決まった平均する画素数を、動きベクトルの大きな箇所では、例えば、1.0倍とし、動きベクトルの小さなところでは、例えば、0.5倍となるように、動きベクトルの大きさに応じて画素加算量を増減させてもよい。
【0047】
このように、画素加算移動平均処理を各ブロックごとに行うことで、各ブロックの動きベクトルの大きさに応じた比率で画素加算平均を行うことができる。例えば、図7に示すように、9つのブロック101乃至109に分割した場合、遠くの被写体領域101〜103はほぼ動かないので平均する画素数をより小さく、若干近くの被写体領域104〜106は動きは小さいので平均する画素数を若干小さく、手前の被写体領域107〜109は動きが大きいので平均する画素数を大きくするなど、撮影位置から遠くの被写体は流し撮りの効果を小さくし、近くの被写体は流し撮りの効果を大きくすることができる。これによって、図7に示すように、ブロック101〜103が表す遠くの空はほぼ動いていないように見え、ブロック104〜106が表す若干近くの風景は動きが小さく見え、ブロック107〜109が表す手前の風景は動きが大きいように見えるようにすることができる。
【0048】
本実施の形態によれば、ブロックごとに画素加算移動平均処理を行なうため、上述の実施の形態の撮像装置の効果に加えて、撮影位置から遠くの被写体は流し撮りの効果を小さくし、撮影位置から近くの被写体は流し撮りの効果を大きくするなど、撮影状況に応じた的確できめの細かい流し撮り効果の付与が可能となる。
【0049】
以上、代表的な実施の形態の撮像装置について説明したが、本発明の撮像装置は、CPUとメモリを含む、撮像装置が有するコンピュータを上述した各手段として機能させる画像処理プログラムによって動作させることができる。画像処理プログラムは、通信回線を介して配布することも可能であるし、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0050】
以上、本発明について様々な実施の形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではない。本発明の目的を実現可能な範囲における様々な変形、改良等は本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態の撮像装置の実施の形態であるデジタルカメラの電気的構成を示したブロック図である。
【図2】図1の撮像装置において流し撮りモードが設定された場合におけるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1の撮像装置において流し撮りモードが設定された場合に液晶表示器7に表示されるグリッドの一例を示す図である。
【図4】図1の撮像装置において流し撮り効果処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の撮像装置においてフィルタリング処理の一例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態の流し撮り効果処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】各ブロックごとの動きベクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 レンズ
2 シャッター
3 CMOSセンサー
4 A/D変換器
5 DRAM
6 液晶表示コントローラ
7 液晶表示器
8 シャッター制御部
9 CPU
10 受光制御部
11 デモザイク部
12 外部記憶メモリ
13 キー入力ブロック
14 プログラムメモリ
16 マッチング部
17 画像変形合成加算部
18 SRAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して被写体画像を取得する撮像手段と、
所定の時間における被写体の動きを付与するための仮想シャッター時間を設定する設定手段と、
シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得する取得手段と、
前記仮想シャッター時間と前記方向データとに基づいて、前記被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する画像生成処理手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記仮想シャッター時間は前記シャッター時間とは独立して、ユーザにより任意に設定可能であり、
前記撮像手段は、前記シャッター時間に応じた第1の被写体画像を取得することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記取得手段は、加速度センサーによる検出結果又は被写体画像の変化前後における被写体部分の変化量及び変化方向を示す動きベクトルに基づいて方向データを取得することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、さらに、シャッターキーの押下後前記仮想シャッター時間の経過によって第2の被写体画像を取得し、
前記画像生成処理手段は、前記第1の被写体画像と前記第2の被写体画像とに基づいて流し撮り画像を生成することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記被写体画像を複数のブロックに分割して、各ブロックごとに前記検出結果又は前記動きベクトルを取得し、
前記画像生成処理手段は、各ブロックごとに変形を加えた流し撮り画像を生成することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像生成処理手段は、加速度センサーによる検出結果又は被写体画像の変化前後における被写体部分の変化量及び変化方向を示す動きベクトルの大小に応じて流し撮り画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像手段によって取得された被写体画像から被写体の特徴部を検出する検出手段と、
前記画像生成処理手段は、被写体の前記特徴部を除く部分に変形を加えた流し撮り画像を生成することを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の撮像装置。
【請求項8】
シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して被写体画像を取得する工程と、
所定の時間における被写体の動きを付与するための仮想シャッター時間を設定する工程と、
シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得する工程と、
前記仮想シャッター時間と前記方向データとに基づいて、前記被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する工程と、
を有することを特徴とする撮像装置の画像処理方法。
【請求項9】
撮像装置が有するコンピュータに、
シャッターキーの押下後適正露光に基づくシャッター時間にて被写体を撮像して被写体画像を取得する工程と、
所定の時間における被写体の動きを付与するための仮想シャッター時間を設定する工程と、
シャッターキーの押下後から前記仮想シャッター時間が経過するまでに発生する被写体画像の像ブレの方向データを取得する工程と、
前記仮想シャッター時間と前記方向データとに基づいて、前記被写体画像に変形を加えた流し撮り画像を生成する工程と、
を実行させることを特徴とする撮像装置の画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−226624(P2010−226624A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73878(P2009−73878)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】