説明

撮像装置、放射線撮像装置及びその製造方法

【課題】 撮像素子の交換が容易な撮像装置を提供する。
【解決手段】 撮像装置は、導電性を有する基台と、撮像素子と、前記基台と前記撮像素子とを固定するための固定部材と、を有し、前記基台と前記撮像素子は、前記固定部材側の表面に導電部を夫々有し、前記固定部材は、通電によって前記基台と前記撮像素子とを分離するための剥離可能樹脂であり、前記基台の前記導電部の領域は、前記固定部材の前記基台との固定領域より広い構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光又は放射線を検出する撮像装置と、その製造方法に関し、特に、医療画像診断装置、非破壊検査装置、分析装置等に用いられる放射線撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に流通している単結晶半導体ウエハはガラス基板に比べて小型である。そのため、単結晶半導体ウエハを用いて大面積の検出器を形成するには、検出素子を形成した単結晶半導体ウエハを分割して複数の撮像素子チップを形成し、所望の面積となるような数の撮像素子チップを並べて形成している。
【0003】
特許文献1には、低コスト化のため、撮像素子チップを装置の一部となるベース基板に接着する前に、撮像素子チップの検査と、欠陥が発見された撮像素子チップの交換とを行うことが記載されている。そして、検査と交換の後、撮像素子チップとベース基板とを接着固定することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、物質が表面から容易に除去されることが望ましい様々な用途において使用することができる接着ボンドおよびコーティングとして、電気化学的に結合解除可能な組成物からなる接着剤が記載されている。
【特許文献1】特開2002−139569号公報
【特許文献2】特開2003−129030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の方法では、複数の撮像素子チップとベース基板とを接着した後に一部の欠陥がある撮像素子チップのみを交換することは難しい。例えば、バキューム装置から取り外す時に、一部の撮像素子チップが静電気により破壊された場合に交換することが困難であり、交換の際に他の正常な撮像素子チップまで破壊してしまう可能性がある。
【0006】
また、特許文献2の電気化学的に結合解除可能な組成物からなる接着剤が記載されているが、この接着剤を使用して撮像素子チップの交換を容易にするための具体的な構成や方法が求められていた。
【0007】
本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、撮像素子の交換が容易な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成すべく本発明の撮像装置は、導電性を有する基台と、撮像素子と、前記基台と前記撮像素子とを固定するための固定部材と、を有し、前記基台と前記撮像素子は、前記固定部材側の表面に導電部を夫々有し、前記固定部材は、通電によって前記基台と前記撮像素子とを分離するための剥離可能樹脂であり、前記基台の前記導電部の領域は、前記固定部材の前記基台との固定領域より広いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の放射線撮像装置は、導電性を有する基台と、放射線が入射され、光を発するシンチレータパネルと、撮像素子と、前記基台と前記撮像素子とを固定するための固定部材と、を有し、前記固定部材は、通電によって前記基台と前記撮像素子とを分離可能な剥離可能樹脂であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の撮像装置の製造方法は、導電性を有する基台を準備する工程と、撮像素子を準備する工程と、前記撮像素子を検査する工程と、前記基台又は前記撮像素子に、被接着物との間で通電して分離するための剥離可能樹脂を塗布する工程と、前記基台と前記撮像素子とを前記剥離可能樹脂を介して固定する工程と、前記基台に固定された撮像素子を検査する工程と、前記検査する工程において、欠陥を有する撮像素子と判断された場合、前記基台と前記欠陥を有する撮像素子との間に電圧を印加して前記欠陥を有する撮像素子を前記基台から剥離する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の放射線撮像装置の製造方法は、導電性を有する基台を準備する工程と、撮像素子を準備する工程と、前記撮像素子を検査する工程と、前記基台又は前記撮像素子に、被接着物との間で通電して分離するための剥離可能樹脂を塗布する工程と、前記基台と前記撮像素子とを前記剥離可能樹脂を介して固定する工程と、前記基台に固定された撮像素子を検査する工程と、前記検査する工程において、欠陥を有する撮像素子と判断された場合、前記基台と前記欠陥を有する撮像素子との間に電圧を印加して前記欠陥を有する撮像素子を前記基台から剥離する工程と、前記撮像素子上にシンチレータを配置する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像素子の交換が容易な撮像装置を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の撮像装置、放射線撮像装置およびその製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明において、光は可視光、赤外線を含み、放射線はX線、α線、β線、γ線を含む。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の撮像装置である。図1(a)は、撮像装置の平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における撮像装置の断面図である。
【0015】
図1に示すように、撮像装置1は、基台2と、基台2上に固定部材5を介して4つの撮像素子10とを有する。そして、4つの撮像素子10は、各撮像素子10が接触した際の電気的機械的な影響を低減するために間隔を有して基台2上に配置されている。なお、基台2に固定された撮像素子10は4つに限定されず、撮像素子10は1つ又は複数配されていればよい。基台2は、絶縁プレート3と導電部4とで構成されているが、撮像素子10側の表面が導電性を有していればよく、導電性を有する樹脂や金属、又は絶縁性基板とその表面に設けられた導電部とで構成されている導電性基台が用いられる。導電性を有する樹脂はポリスチレン系、ナイロン系、フッ素系等があり、金属はAl、SUS、Mo、Fe、又はそれらの合金等が用いられる。他に、カーボン基板なども使用できる。絶縁プレートは、樹脂、セラミック、又はガラス等が用いられる。導電部はAl、Mo、或いはそれらの合金等の薄膜を印刷、接着、箔押し、PVD法やCVD法等により形成される。PVD法やCVD法の場合、導電部は、所望の形状を得るため、マスクを用いての薄膜の堆積や、薄膜の堆積後のエッチングが行われる。基台の導電部は、図1(a)に示すように、撮像素子側から見て少なくとも一部が露出して見えることが好ましい。後述の剥離工程時に電圧印加のためのプローブを接触させやすくするためである。固定部材5は電気的結合解除物質を含む剥離可能樹脂であり、被接着物と剥離可能樹脂との間で電圧を印加して電流が流れた際に被接着物と剥離可能樹脂とが分離可能である。この分離は、イオン伝導性を持つイオン溶媒和分子の酸化還元反応によってなされる。固定部材である剥離可能樹脂は、接着のためのエポキシ、フェノール樹脂、アクリル、メラミン、マレイミド、ポリウレタン等のポリマーと、剥離のための電解質とを有する。剥離のための電解質は、低分子量のアルコキシド、アルコール、アルキルカルボネート、環状エステル、ニトリル、アミド、尿素等からなり、イオン伝導性であるため、電解質中に溶媒和した塩のイオン拡散を補助することができる。固定部材5と、撮像素子10及び基台2とが固定された界面は固定領域であり、図では撮像素子10の面と同じ領域である。撮像素子10は半導体基板11(例えばN型半導体基板)、ウエル領域12(例えばP型ウエル領域)、センサ部13、N型半導体基板上のN領域14、N領域上のN領域15、絶縁膜16、N領域上の導電層17、マイクロレンズ18、絶縁膜19を含む。N型半導体基板は本実施形態ではN型シリコン基板を用いている。センサ部13は入射光を光電変換する。導電層17は、基板10の内部に構成される配線や、基板10と外部回路との間で信号の転送を行うために基板10の表面で露出する複数の端子20を構成する。そして、導電層17、N領域14、N領域15、そして半導体基板11とによって撮像素子10の裏面である固定部材側から表面である固定部材側とは反対側までが導通可能な構成を有している。絶縁膜16、19は、撮像素子10の表面を平坦にするための平坦化膜であることが好ましい。
【0016】
次に、撮像装置1の製造方法を、簡易的な断面図によって各工程を説明する図2を用いて説明する。
【0017】
まず、基台2、固定部材となる第1の接着剤34、撮像素子10を準備する(不図示)。
【0018】
図2(a)は、位置決め工程であり、搬送手段26によって各撮像素子10をステージ25上に配置する。ステージ25は各撮像素子10の配置が乱れないように撮像素子10を吸引によって固定する。矢印は吸引の様子を示している。
【0019】
図2(b)は、撮像素子10の第1の検査工程である。必要であれば、図のように撮像素子10の裏面側をステージ27に接触させて検査を行う。そして、検査手段の一部であるプローブ28を撮像素子10の端子に接触させ、この時点で欠陥を有する撮像素子かを確認し、欠陥が確認されれば交換される。
【0020】
図2(c)は、基台2に撮像素子10を固定部材となる第1の接着剤34を介して接着する固定工程である。固定部材となる第1の接着剤34は、電気的結合解除物質を含む剥離可能樹脂である。図では固定部材となる第1の接着剤34を撮像素子10側に塗布しているが、基台2側に塗布しても良い。なお、本明細書における「固定」とは、基台2と撮像素子10との間に固定部材5のみが配置されている構成に加え、他の導電性を有する材料が配置されている構成を含むとする。
【0021】
図2(d)は、固定部材となる第1の接着剤34の硬化工程である。第1の接着剤34には、例えばエポキシ樹脂を含む熱硬化型があり、オーブン30内のような加熱環境下で熱硬化する。硬化温度(室温〜100℃)、硬化時間(1時間〜24時間)が一般的な条件である。硬化温度は、50〜100℃がより好ましい。
【0022】
図2(e)は、撮像素子10の第2の検査工程である。この時点で欠陥を有する撮像素子か否を確認し、欠陥を有する撮像素子と判断されれば交換される。欠陥が確認されなければ、端子に外部回路が接続される。図2(c)における第1の接着剤は、図2(d)で示される加熱によって熱硬化し、硬化した接着剤、すなわち固定部材5となっている。
【0023】
図3は、図2(e)で撮像素子10に欠陥が確認された場合の、撮像素子10の剥離工程である。図3(a)は、基台2及び撮像素子10のそれぞれにプローブを用いて電圧を印加する方法であり、図3(b)は、一方がプローブで、他方がフレキシブルプリント配線板(FPC)29であることが図3(a)と異なる点である。図3(a)、図3(b)のいずれの場合にも、導通部21と固定部材5を挟んで基台2側は陽極、撮像素子10側は陰極となるように印加する。固定部材5は、被着体の界面で電気化学反応が起こり、陽極側で選択的に剥離するため、基台2の表面から撮像素子10と固定部材5を剥離することができる。そのため、基台2の表面に固定部材の残渣が無く、撮像素子10と固定部材5を容易に取り外すことができる。
【0024】
上記の剥離を行うためには、撮像素子10の固定部材5と接する面は導電性でなくてはならず、且つ、この面と反対側の撮像素子10の表面まで導通が取られていなくてはならない。このような構造を「導通部」と呼ぶが、そのための構成を特に設けたものに限らず、従前の撮像素子チップの半導体基板、導電層等からなる構成も含む。図1(b)において導通部21は、導電層17、N領域15、N領域14、そしてN型半導体基板11が対応する。そして、N型半導体基板11は、固定部材と導通を行うための電極である導電部として機能する。また、撮像素子10の固定部材5側とは反対の表面側において、上記の「導通部」に対し、外部との電気的接続とを取るための構造を「端子」と呼ぶ。撮像素子10の端子20としては、撮像素子10の外部との接続用の電源系信号用端子、アナログ制御系信号用端子、スキャン系信号用端子、センサ動作制御系信号用端子等がある。電源系信号には、プラス電源、バイアス用のマイナス電源、GND、センサリセット電源等がある。アナログ制御系信号には、電流調整等がある。スキャン系信号には、水平シフトレジスタクロック、垂直シフトレジスタクロック等がある。センサ動作制御系信号には、チップセレクト、センサリセット、サンプルホールド、画素加算選択ビット等がある。ここで、撮像素子10の剥離のためには、いずれの種類の端子20も使用できる。例えば、センサ動作制御系信号用のセンサリセット用端子に高電圧を印加することにより、撮像素子10内部のPN接合等がショートし撮像素子内部を導通させることが可能である。そして、撮像素子内部の導通は、導通部21に代表される電源系信号である基板バイアス電源やGNDを用いることが他の撮像素子への影響を小さくするためにより好ましい。なお、撮像素子10は、外部回路と接続しない剥離工程でのみ使用する専用の端子20を有していても良い。なお、撮像素子と外部回路との接続はFPCを用いたが、ワイヤーボンティング等の他の手法を用いても良い。
【0025】
撮像素子10は、スイッチ素子とセンサ部とを有する複数の画素を有する。例えば、CMOSセンサ、CCDセンサ、非晶質シリコン(以下、a−Siと略記)を用いたPIN型やMIS型センサとTFTにより構成された画素を有するa−Siセンサ、SOI(Silicon on insulator)センサ等である。図3(c)は、a−Siセンサの例であり、絶縁性基板上にセンサ部を有する。具体的には、絶縁性基板11であるガラス基板と、ガラス基板上のセンサ部とを有し、ガラス基板の周辺部に設けられた貫通電極24と、ガラス基板の裏面に設けられた第2の導電部6とを有している。貫通電極24が導通部であり、第2の導電部6によって面内に均一に電圧が印加される。電圧は前述のように、貫通電極側が陰極であり、基台側が陽極であることが好ましい。このような構成によって、撮像素子の剥離が可能となる。
【0026】
そして、基台の導電部の領域は、固定部材の基台との固定領域より広い。このような構成により、基台と固定部材とを固定する界面に電圧が印加され、剥離が容易になる。また、撮像素子の導電部の領域は、固定部材の撮像素子との固定領域と同じか広い。例えば、複数の撮像素子に対して一体の固定部材である場合、撮像素子毎に基台から撮像素子と固定部材とを分離することは困難であるからである。
【0027】
以上のように、撮像素子の交換が容易な撮像装置を得ることが可能となる。そして、撮像素子を取り外した基台の面は、固定部材の残渣が少ないため、次の撮像素子の固定が容易になる。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態の撮像装置である。図4(a)は、撮像装置の平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B’線における撮像装置の断面図である。
【0029】
図4の撮像装置1の構成が図1の構成と異なる点は、固定部材5の外周部が撮像素子10の外周部より内側であることである。言い換えれば、固定部材が基台及び撮像素子の各々の導電部と固定された固定領域は、基台及び撮像素子の各々の導電部より狭い。なお、固定部材5が複数のドットで構成されている場合は、複数のドットを含む領域の外周が撮像素子及び基台の外周部より内側であればよい。なお、撮像素子の導電部の領域が固定部材の固定領域より広すぎる事は、固定領域の面積が小さいことによる剥離しやすさにつながり、偶発的な剥離が発生し易くなる。そのため、撮像素子の導電部の領域は、固定部材の固定領域と比べて面積比で2倍以下が好ましく、より好ましくは1.5倍以下である。撮像素子10と固定部材5を共に剥離させる場合は、固定部材5は複数の撮像素子10の各撮像素子毎に分離していることが好ましく、図4の構成によって、剥離させたい撮像素子のみを確実に剥離することがより容易となる。
【0030】
図5は、変形例であり、図5(a)は、撮像装置の平面図であり、図5(b)は図5(a)のC−C’線における撮像装置の断面図である。図5の撮像装置1の構成が図4の構成と異なる点は、基台2の導電部4が撮像素子10毎に対応して分割されている点である。図5の構成により、剥離工程時の電圧が剥離したい撮像素子以外の他の撮像素子には影響がないため、剥離させたい撮像素子のみを確実に剥離することがより容易となる。
【0031】
図6は、図5(a)のC−C’線における撮像装置の断面図の変形例である。
【0032】
図6の撮像装置1の構成が図5(b)の構成と異なる点は、撮像素子10と固定部材5との間に導電部6が配置されている点と、隣り合う撮像素子10の側面に絶縁部22を有する点である。導電部6はAl、Mo等が好ましい。撮像素子10の面方向の抵抗により端子20へ印加した電圧が電圧降下するが、このような構成にすると、導電部6により電圧降下が減少する。そのため、撮像素子10の面内での電位差がより小さくなり、固定部材5へ印加される電圧のバラツキを低減できる。さらに、導電部6によって、固定部材5内に含まれるアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)の拡散を防止することができる。従って、導電部6は、撮像素子の固定部材側の全面に配置されていることが好ましい。
【0033】
絶縁部22は、SiO、SiON、Siなどの無機膜をCVD法、PVD法、塗布等により形成、もしくは、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂などの有機膜を塗布等によりコーティング後加熱硬化により形成する。このような構成により、導電性の異物が撮像素子10間に挟まったとしても絶縁部22によって電気的に隔離されているため、剥離しなくても良い撮像素子を誤って剥離させてしまうことがないため、作業性が向上する。
【0034】
(第3の実施形態)
図7は、図5(a)のC−C’線における撮像装置の断面図の変形例である。
【0035】
図7の撮像装置1の構成が図5(b)の構成と異なる点は、固定部材5に絶縁性のスペーサー7が含まれている点である。このような構成にすると、撮像素子10の基台2からの距離が一定に保たれ、位置精度が向上する。また、撮像素子10と基台2が製造工程の中で偶発的に接触したまま接着されることを防止し、撮像素子10を個々に剥離できるようにする。
【0036】
図8は更なる変形例で、撮像素子10とサポート基板8とが第2の固定部材9で固定され、サポート基板8と基台2とが第1の固定部材5で固定されている。そして、スペーサー7が配置され、サポート基板8と接して固定することで容易に位置精度が向上する。サポート基板8と第2の固定部材9は、導電性を有している。スペーサー7は隣り合う複数の撮像素子が絶縁されるように間に配置されている。そのため、スペーサー7は、絶縁性を有するが、隣り合う複数の撮像素子を絶縁できれば一部が導電性を有していても良い。また、スペーサー7は、基台2の絶縁プレート3と一体に構成されていても良く、その場合は絶縁プレート3は隣り合う複数の撮像素子の間の領域に対応する凸部を有するとも言える。「一体に構成」とは、絶縁プレート3が例えば樹脂である場合、射出成形や直方体のプレートの研削加工などによって形成されるものであり、2つの部材を貼り合わせた構成ではない。新しい撮像素子を基台2の上方から下降させて固定する際には、スペーサー7は撮像素子10側より基台2側が広がったテーパ形状がより好ましい。さらに、サポート基板8もスペーサー7の形状に沿ったテーパ形状であることが好ましい。このような構成にすることで、位置精度と剥離及び取付けの容易性が向上する。
【0037】
(第4の実施形態)
本実施形態の撮像装置は、図9に示すように、撮像素子10の端子20と導電部4とがGND電位とされている。図9の撮像装置1においては、撮像素子10の端子20及び導電部4の各々がFPC29を介して外部回路31のGND端子と接続されている。
【0038】
このように撮像素子10の端子20と基台2を同電位とすることで、製品の使用中等に第1の接着剤が静電気等により偶発的に剥離することを防止することができる。
【0039】
(第5の実施形態)
本実施形態は、シンチレータを有する放射線撮像装置である。検査工程で欠陥を有する撮像素子が無いと判断された場合、基台と撮像素子とが分離しないように、電位共通化工程によって基台と撮像素子の各導電部を共通の電位に固定することが好ましい。
【0040】
図10(a)の放射線撮像装置においては、撮像素子10上にシンチレータパネル42が配置されている。シンチレータパネル42は、Al、カーボン、樹脂等の基板43と放射線を光に変換するシンチレーター44と、シンチレーター44の保護層45を有する。撮像素子10とシンチレータパネル42は、シンチレータ固定部材46で固定されている。図においては、撮像素子上にシンチレータ固定部材となる接着剤が塗布されてシンチレータパネルが固定されているが、撮像素子上に直接シンチレータパネルが機械的に固定されていても良い。
【0041】
図10(b)の放射線撮像装置においては、基台2としての導電性の筐体35に撮像素子10を固定し、撮像素子10と外部回路31とをFPC29を介して固定し、外部回路31は導電性の金属等の固定手段33で筐体35に固定している。
【0042】
なお、本実施形態では、放射線が入射され、光を発するシンチレータと、光電変換を行うセンサ部を有する撮像素子と、を用いた間接型の放射線撮像装置を説明したが、本発明は、放射線を直接電荷に変換するa−Se等の放射線撮像装置にも適用可能である。
【0043】
このように撮像素子10の端子20と筐体35を同電位とすることで、製品の使用中等に撮像素子と筐体とを固定する固定部材が静電気等により偶発的に剥離することを防止することができる。
【0044】
(第6の実施形態)
撮像装置又は放射線撮像装置は、製品の再利用や廃棄の際には、正常に動作可能な撮像素子は再利用される。正常に動作可能な撮像素子は、剥離工程時に静電気等によって撮像素子が破壊されないように行う必要がある。
【0045】
図11は、事前に筐体を分解して撮像素子を露出させ、他の撮像装置に再利用する撮像素子を基台から分離する際の剥離工程を説明する撮像装置の平面図である。本実施形態の撮像装置は、図5の撮像装置の撮像素子にFPCを介して外部回路が接続された構成を有する。基台2は、絶縁性基板3と、絶縁性基板3の表面に分割されて配置された導電部4とを有する。撮像素子110、210は分割された導電部4に対応して基台2に固定部材5を介して固定されている。撮像素子110、210は、対応する外部回路131、231にそれぞれFPC29を介して電気的に接続されている。端子51は端子61に対応するグランド入力端子、端子52は端子62に対応する電源電圧入力用端子、端子53は端子63に対応するクロックパルス入力用端子、端子54は端子64に対応する画像信号出力用端子である。なお、図面左の省略された撮像素子も同様な構成となっている。図11では、撮像素子110を剥離する状態を示しており、グランド入力端子である端子51と導電部4との間に電圧が印加されている。そして、撮像素子110は、端子51のグランド入力端子以外の端子については、半導体素子110内の回路を剥離のための電圧や静電気等の過大な電圧から保護するためにグランド電位としている。また、撮像素子210は、端子51、52、53、54、すなわち全ての端子と、撮像素子210に対応する導電部4は撮像素子210内の回路を同様な理由で保護のためにグランド電位としている。なお、撮像素子が破壊されないように電圧を印加するために、撮像素子側の電源との接続は撮像素子の隅部の端子が好ましい。撮像素子内部の増幅器やA/D変換器などの回路から離れた位置となるからである。
【0046】
図12は、剥離工程で分離した撮像素子を新たな基台に固定する工程を示す図である。取り外した正常に動作可能な撮像素子110はステージ25で吸引して、固定部材となる接着剤を塗布した後、位置合わせを行いながら基台2の導電部4上に配置する。その後、第1の実施形態で説明したように各撮像素子の検査工程を行い、FPCと外部回路を接続し、筐体内に収容する。仮に検査工程で欠陥が確認されると再度欠陥を有する撮像素子は基台から分離され、新たな撮像素子が取り付けられる。
【0047】
このようにして、撮像装置の撮像素子を再利用する際にも、容易に撮像素子を基台等から分離できる。
【0048】
以上、本発明を詳細に説明したが、本明細書に記載された実施形態に限定されず、各実施形態を適宜組み合わせることが可能であり、本発明の範囲は、図示され説明された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の撮像装置の一実施形態を示した平面図及び断面図である。
【図2】本発明の撮像装置の製造方法の一実施形態を示した断面図である。
【図3】本発明の撮像装置の製造方法の一実施形態を示した断面図である。
【図4】本発明の撮像装置の一実施形態を示した平面図及び断面図である。
【図5】本発明の撮像装置の一実施形態を示した断面図である。
【図6】本発明の撮像装置の一実施形態を示した断面図である。
【図7】本発明の撮像装置の一実施形態を示した断面図である。
【図8】本発明の撮像装置の一実施形態を示した断面図である。
【図9】本発明の撮像装置の一実施形態を示した断面図である。
【図10】本発明の放射線撮像装置の一実施形態を示した断面図である。
【図11】本発明の撮像装置の製造方法の一実施形態を示した平面図である。
【図12】本発明の線撮像装置の製造方法の一実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 撮像装置
2 基台
5 固定部材
10 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する基台と、
撮像素子と、
前記基台と前記撮像素子とを固定するための固定部材と、を有し、
前記基台と前記撮像素子は、前記固定部材側の表面に導電部を夫々有し、
前記固定部材は、通電によって前記基台と前記撮像素子とを分離するための剥離可能樹脂であり、
前記基台の前記導電部の領域は、前記固定部材の前記基台との固定領域より広い撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子の前記導電部の領域は、前記固定部材の前記撮像素子との固定領域と同じ、又は前記固定領域より広く、面積比で2倍以下である請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記分離は、前記通電による酸化還元反応によって固定界面の強度が低下することによって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子が複数配されて前記基台と固定され、
前記固定部材は、対応する前記撮像素子毎に分割されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記基台は、前記基台の前記導電部と絶縁プレートとを有し、前記基台の前記導電部は、対応する前記撮像素子毎に分割され、互いに絶縁されていることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
隣り合う前記複数の前記撮像素子の間に、絶縁性を有するスペーサーを有する請求項4又は5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記スペーサーは、前記基台の前記絶縁プレートと一体に構成されている請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の前記撮像素子の互いに隣り合う各前記撮像素子の側面に絶縁部を有する請求項4から7のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像素子は、半導体基板と、前記撮像素子の前記固定部材側の面から反対側の面への導通部を有する請求項1から8のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項10】
前記撮像素子の前記導通部は、N型半導体基板と、前記N型半導体基板上のN領域と、前記N領域上のN領域、前記N領域上の導電層とを有する請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像素子の前記半導体基板の前記固定部材側に更なる導電部を有する請求項9又は10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像素子は、絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に配置されたセンサ部と、前記絶縁性基板の前記固定部材側の面から反対側の面への導通部と、前記絶縁性基板の前記固定部材側の面に配置された更なる導電部と、を有する請求項1から8のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項13】
導電性を有する基台と、
放射線が入射され、光を発するシンチレータパネルと、
撮像素子と、
前記基台と前記撮像素子とを固定するための固定部材と、を有し、
前記固定部材は、通電によって前記基台と前記撮像素子とを分離可能な剥離可能樹脂である放射線撮像装置。
【請求項14】
導電性を有する基台を準備する工程と、
撮像素子を準備する工程と、
前記撮像素子を検査する工程と、
前記基台又は前記撮像素子に、被接着物との間で通電して分離するための剥離可能樹脂を塗布する工程と、
前記基台と前記撮像素子とを前記剥離可能樹脂を介して固定する工程と、
前記基台に固定された撮像素子を検査する工程と、
前記検査する工程において、欠陥を有する撮像素子と判断された場合、前記基台と前記欠陥を有する撮像素子との間に電圧を印加して前記欠陥を有する撮像素子を前記基台から剥離する工程と、を有する撮像装置の製造方法。
【請求項15】
前記剥離する工程において前記基台を陽極とし、前記欠陥を有する撮像素子を陰極として電圧を印加することを特徴とする請求項14に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項16】
前記撮像素子は、外部回路との信号の転送を行うための複数の端子を有し、前記剥離する工程において、前記複数の端子の内、グランド入力端子を陰極とし、前記基台を陽極として電圧を印加する際に、前記グランド入力端子以外の端子をグランド電位とすることを特徴とする請求項14に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項17】
前記検査をする工程において、欠陥を有する撮像素子が無いと判断された場合、前記基台及び前記撮像素子の夫々の導電部を共通の電位に固定する電位共通化工程を有することを特徴とする請求項14に記載の撮像装置の製造方法。
【請求項18】
導電性を有する基台を準備する工程と、
撮像素子を準備する工程と、
前記撮像素子を検査する工程と、
前記基台又は前記撮像素子に、被接着物との間で通電して分離するための剥離可能樹脂を塗布する工程と、
前記基台と前記撮像素子とを前記剥離可能樹脂を介して固定する工程と、
前記基台に固定された撮像素子を検査する工程と、
前記検査する工程において、欠陥を有する撮像素子と判断された場合、前記基台と前記欠陥を有する撮像素子との間に電圧を印加して前記欠陥を有する撮像素子を前記基台から剥離する工程と、
前記撮像素子上にシンチレータを配置する工程と、を有する放射線撮像装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−147326(P2010−147326A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324401(P2008−324401)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】