説明

撮像装置およびその制御方法

【課題】焦点調節制御装置において、焦点状態の検出部を構成する画素領域を有効に利用してハイブリッドAF(オートフォーカス)の応答性を向上させること。
【解決手段】撮像装置は焦点検出光学系を構成する結像レンズ138および位相差検出部139を備える。AF信号処理部134は、撮像素子141からの撮像信号を処理して焦点調節用の評価値を算出する。フォーカス制御部133は、AF信号処理部134からの評価値および位相差検出部139の出力から得られる焦点状態の検出情報を用いてフォーカスレンズ131を駆動して焦点調節制御を行う。パララックス調整により設定される主画素領域と、該領域を除く領域から選択した副画素領域により焦点状態検出が行われ、フォーカス制御部133は第1の制御モードで主画素領域による測定結果を用いて位相差AFを行い、第2の制御モードでは副画素領域による測定結果を補助情報として撮像信号AFを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置の自動焦点調節制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ等の撮像装置に搭載されるオートフォーカス(AF)の方式としては、撮像信号を利用したコントラストAF(撮像信号AFともいう。)が一般的である。この方式では、撮像素子で得た映像信号の高周波成分を抽出し、焦点状態を示す信号としてAF評価値を生成して、この値が最大となるようにフォーカスレンズの位置を制御する。
また、ハイブリッドAFでは、合焦精度の高いコントラストAFと、合焦の速い位相差AFを組み合わせて使用する。位相差AFでは、被写体までの距離を測距センサにより検出し、検出距離に基づいてフォーカスレンズの位置を制御する。位相差AFのうち外部測距方式の場合、測距センサの光学系が撮像光学系とは独立して設けられる。測距センサの光学系と撮像光学系の間にパララックスが生じるため、測距センサを撮像装置に組み付ける際には機械的な調整が必要であった。この機械的な調整の代わりに、測距センサを撮像装置に組み付けた時のパララックスデータを基に、測距に用いる画素を選択することで、調整を簡略化する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−292367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、測距に用いる画素とパララックスの調整用画素を含む領域を予め確保する必要があるため、測距センサが大きくなる傾向がある。また、一部の画素から得た検出距離を用いて位相差AFが行われるため、他の画素に基づく検出距離の情報をハイブリッドAFの制御に生かせなかった。
そこで本発明は、焦点調節制御装置において、焦点状態の検出部を構成する画素領域を有効に利用してハイブリッドAFの応答性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、撮像光学系を通して被写体を撮像する撮像素子と、焦点検出光学系および該焦点検出光学系を通した像を検出する複数の検出部を備えた撮像装置であって、前記撮像素子による撮像信号を処理して焦点調節用の評価値を算出する信号処理手段と、前記信号処理手段からの前記評価値、および前記複数の検出部の出力から得られる焦点状態の検出情報を用いて焦点調節用レンズを駆動して焦点調節制御を行う制御手段を備える。前記制御手段は、第1の制御モードにて、前記複数の検出部の主画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報を用いて焦点調節制御を行い、第2の制御モードでは、前記複数の検出部の副画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報、および前記焦点調節用の評価値から、前記焦点調節用レンズに係る合焦方向を判別して焦点調節制御を行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、焦点状態の検出部を構成する画素領域を有効に利用してハイブリッドAFの応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図2乃至8と併せて本発明の第1実施形態を説明するために、撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】焦点状態検出センサの構成例を示す(A)図および位相差AFにおける像信号を例示する(B)図である。
【図3】フォーカス制御部の構成例を示す図である。
【図4】焦点状態検出センサのレイアウトを例示する図である。
【図5】パララックスの補正方法を説明するための図である。
【図6】図7とともに焦点検出および焦点調節動作を説明するフローチャートであり、処理の前半部を示す図である。
【図7】図6に続く処理の後半部を示す図である。
【図8】撮像信号AF制御を説明するフローチャートである。
【図9】第2実施形態における焦点状態検出センサの構成例を示す図である。
【図10】第2実施形態におけるパララックスの補正方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の各実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する撮像装置は被写体までの距離または撮像光学系に係る焦点状態検出量を取得して位相差AFを行う機能と、撮像信号を処理して焦点調節用の評価値を算出してコントラストAFを行う機能を有する。
【0009】
[第1実施形態]
図1は焦点調節制御装置を搭載した撮像装置の構成例を示す図である。ここで言う撮像装置は、被写体を撮影して動画や静止画のデータを、テープや固体メモリ、光ディスクや磁気ディスク等の各種メディアに記録する、いわゆるビデオカメラやデジタルスチルカメラ等を含む。装置内の各ユニットは、バス160を介して接続されており、各ユニットはメインCPU(中央演算処理装置)151によって制御される。
レンズユニット101は、固定1群レンズ102、ズームレンズ111、絞り103、固定3群レンズ121、フォーカスレンズ131を含む。これらの光学部材を通して撮像素子141上に結像する被写体像は電気信号に変換される。ズーム制御部113はメインCPU151の指示に従い、ズームモータ112を介してズームレンズ111を駆動して焦点距離を変更する。また、フォーカスレンズ131はフォーカスモータ132によって駆動されて、焦点調節状態が制御される。フォーカスレンズ131は焦点調節用レンズであり、図1には単レンズで簡略的に示す。
撮像素子141上に結像されて光電変換された画像は、撮像信号処理部142で画像信号として整えられ、撮像信号(TVS参照)がAF信号処理部134に出力される。AF信号処理部134は、撮像信号TVSから測距ゲートにて画面内の一部のみを抽出し、不図示のバンドパスフィルタおよび検波部によってAF評価値(FV参照)を示す信号を生成し、フォーカス制御部133へ出力する。AF評価値は、撮像信号を処理して得た焦点調節用の評価値であり、撮像信号AFで使用される。AF信号処理部134は、撮像信号から被写体像のコントラスト状態を示す信号を生成する第1の焦点検出手段を構成する。
【0010】
レンズユニット101の外部に設けられている焦点状態検出センサ130は、被写体からの光を分割して得た複数の像を検出する第2の焦点検出手段を構成する。結像レンズ138は焦点検出光学系を構成し、該レンズを通した像を位相差検出部139が検出する。焦点状態検出センサ130は、フォーカスレンズ131を合焦位置に移動させる制御に用いる焦点状態の検出情報として、撮像装置から被写体までの検出距離Lを示す信号を算出し、フォーカス制御部133へ出力する。フォーカス制御部133は、位相差AFによる検出距離Lと、前記AF評価値FVに基づいてフォーカスモータ132を駆動する。フォーカスレンズ131の移動制御により、AF機能が実現される。
撮像信号処理部142の出力する画像データは撮像制御部143に送られ、一時的にRAM(ランダム・アクセス・メモリ)154に蓄積される。RAM154に蓄積された画像データは画像圧縮伸長部153にて圧縮された後で画像記録媒体157に記録される。これと並行して、RAM154に蓄積された画像データは、画像処理部152にて最適なサイズへの縮小・拡大処理が行われる。最適なサイズに処理された画像データはモニタディスプレイ150に送られて画像表示されることで、リアルタイムで撮影画像がユーザに提示される。また、撮影直後にはモニタディスプレイ150が所定時間だけ撮影画像を表示することで、ユーザは撮影画像を確認できる。
操作部156はユーザが装置への指示を行うために使用する。操作指示信号はバス160を介してメインCPU151に送られる。バッテリ159は、電源管理部158により適切に管理されて撮像装置全体に安定した電源供給を行う。フラッシュメモリ155には撮像装置の動作に必要な制御プログラムが記憶されている。ユーザ操作により撮像装置がOFF状態から起動すると、フラッシュメモリ155に格納されていたプログラムがRAM154の一部にロードされる。メインCPU151はRAM154にロードされたプログラムに従って動作制御を行う。
【0011】
図2(A)はレンズユニット101に対して外部に設けられた焦点状態検出センサ130の構成例を示す図である。
第1の検出部203と第2の検出部205は、基線長Bだけ互いに離れて設置されている。被写体201からの光のうち、第1の結像レンズ202を通った光は、第1の検出部203上に結像する。また、第2の結像レンズ204を通った光は第2の検出部205上に結像する。検出部203、205はそれぞれ90個の画素から構成されるものとする。検出部203、205は不図示のAGC(自動利得制御)回路を有しており、該回路は検出部203、205の出力するデータのサンプリングおよびゲイン調整を行う。なお、各検出部を構成する画素から、AGC回路で用いる画素を自由に設定できるものとする。
図2(B)は、検出部203、205の出力信号(以下、像信号という)を例示する。縦軸は像信号のレベルを表し、横軸は画素位置を表す。図中のグラフ曲線P1は検出部203の像信号を表し、グラフ曲線P2は検出部205の像信号を表す。
検出部203と205は基線長Bだけ離れているため、検出部203の像信号(P1参照)と検出部205の像信号(P2参照)は、画素数Xだけずれた信号となる。そこで、2つの像信号に対して相関演算が行われる。この相関演算では、画素をずらしながら2つの像信号の相関値が演算され、相関値が最大になる位置同士の差が像ずれ量Xとして算出される。相関演算はメインCPU151で行われ、検出部203、205に係る90個の画素のうち、任意の30画素に対して実行される。画素数を制限する理由は、画素数が多すぎると、いわゆる遠近競合での測距となり、精度が低下するためである。
像ずれ量Xと基線長B、結像レンズ202、204の焦点距離(fと記す)を用いて、三角測距の原理で被写体までの距離(被写体距離)Lは、「L=B・(f/X)」の関係式から求められる。被写体までの検出距離に基づいて、メインCPU151は被写体に対して合焦状態を得るためのフォーカスレンズ位置を算出する。この算出には計算式を用いた演算だけでなく、予め不図示のメモリに記憶された、被写体距離に対する合焦位置のデータを読み出すことも含む。
【0012】
図3はフォーカス制御部133の構成例を示す。
焦点状態検出センサ130は、撮像装置から被写体までの検出距離Lを示す情報(該検出距離に基づく合焦フォーカスレンズ位置の情報を含む)を、撮像信号AF制御部401とAF方式選択部410に出力する。
AF信号処理部134は、AF評価値FVの情報(現在のフォーカスレンズ位置の情報を含む)を、撮像信号AF制御部401とAF方式選択部410に出力する。
撮像信号AF制御部401は、いわゆる微小駆動および山登り駆動の動作制御を行う。微小駆動の動作ではフォーカスレンズ131を微小量で駆動し、微小駆動する前の状態と、微小駆動後の状態とでAF評価値FVを比較する。AF評価値が増加している場合、フォーカスレンズ131をさらに同一方向に動かし、またAF評価値が減少している場合にはフォーカスレンズ131を逆方向に動かす制御が実行される。この繰り返しにより、同一方向への連続した駆動の場合には、その方向に合焦点があると見なすことができる。また、山登り駆動の動作では、合焦方向の判別後に、フォーカスレンズ131を大きな移動量で動かす制御が実行される。
AF方式選択部410は、位相差AFと撮像信号AFを選択できるように切り換え部(図にはスイッチの記号で示す)411を制御することにより、ハイブリッドAFを実現している。検出距離Lに基づいてフォーカスレンズ131を駆動した場合、現在のフォーカスレンズ位置が検出距離Lに基づく合焦フォーカスレンズ位置と一致するならば、撮像信号AFに切り換わる。また、撮像信号AFのみでフォーカスレンズ131を駆動することも可能である。この際、検出距離Lを撮像信号AFの補助情報として用いることができる。
【0013】
図4は、焦点状態検出センサ130のレイアウトを表す図である。図中のz軸をレンズユニット101の光軸に平行な軸とし、これに直交する平面内にて左右方向にx軸を設定し、上下方向にy軸を設定する。
撮像装置を被写体側から見た正面にて、撮像光学系としてのレンズユニット101の左側には焦点状態検出センサ130が設置されている。x軸方向にて、レンズユニット101の撮像面501と、代表例としての検出部203の検出面502が横列に並んで位置している。図4には撮像面501に対応する撮像画角503と、検出面502に対応するセンサ画角504を示す。図4(A)では被写体側を見て撮像画角503の右側にセンサ画角504の一部がはみ出しており、図4(B)では撮像画角503の左側にセンサ画角504の一部がはみ出している。これらは一例であり、焦点状態検出センサ130を撮像装置本体にて正面右側や斜め上などに設置しても構わない。撮像面501および検出面502には各々のレンズを介して結像するため、撮像画角503、センサ画角504の被写体に対してそれぞれ逆像が得られる。
焦点状態検出センサ130は撮像光学系の外側に配置しているため、パララックスが生じる。理想的には、調整距離においてセンサ画角504の中心と撮像画角503の中心が一致することが望ましい。しかし実際には、焦点状態検出センサ130を撮像装置に取り付けて固定した際の機械的なずれによって、図4(A)および(B)に示すように、センサ画角504の中心が撮像画角503の中心から僅かにずれることがある。
【0014】
図5はパララックスの調整方法を示す説明図であり、図4(A)の場合に相当する。この調整は、以下の手順で行われる。
・焦点状態検出センサ130とレンズユニット101とのパララックスの程度を予め測定すること。
・検出部に係る画素から相関演算に用いる画素領域を選択すること。
検出部の画素領域のうち、撮像光学系に対する焦点検出光学系の視差に従って選択される第1の画素領域(主画素領域)が設定される。この画素領域の選択により、焦点状態検出センサ130を左右方向(x軸方向)にずらすのと同等の調整を行える。
図5(A)に示すように、撮像画角503の中心にコントラストを有する被写体(縦線参照)が使用され、これに対して焦点状態検出センサ130の検出部から像信号を取得する処理が実行される。像信号を図5(B)に例示する。縦軸は像信号のレベルを表し、横軸は画素位置(1乃至90)を表す。太線で示すグラフ曲線Pは測定された像信号を例示し、細線で示すグラフ曲線Qはパララックスの無い場合を示す(そのピークは検出部の中心位置にあり、画素位置45を中央とする)。
センサ画角504の中心と撮像画角503の中心がずれている分に応じて、像信号のピークが中心からずれて出力される。像信号のピークが中央から何画素分ずれているかを測定することでAが求まり、これは補正ずれ量として不図示のメモリに記憶される。以降の被写体距離の測定では、センサ画角504の中心から補正ずれ量Aの画素分だけずらした領域が相関演算に用いる領域として選択される。
【0015】
本例では、焦点状態検出センサ130の検出部に係る90個の画素の範囲内で、補正ずれ量Aに応じて30画素が、相関演算を行う領域(主画素領域)として選択される。主画素領域の30画素は、焦点状態検出センサ130を装置に固定した際のパララックスの程度に応じて、左右方向にずれる。図5(A)では、被写体側から撮像装置を見た場合に、左側にずれた状態を例示する。補正ずれ量Aは最大で±30画素まで可能である。これは、焦点状態検出センサ130の検出部の端から、主画素領域として30画素分を確保できる最大のずらし量である。x軸方向にて検出部の中心から補正ずれ量Aに相当する画素分だけずらして主画素領域を選択した場合、残りの画素領域は2つに分割される(主画素領域の端部が検出部の端に来ない場合)。図5(B)の例では、主画素領域の右側に位置する領域が30画素よりも多い領域となり、左側に位置する領域は30画素よりも少ない領域となる。このうち、30画素よりも多い領域からは、主画素領域に隣り合う30画素分の第2の画素領域(副画素領域)が選択される。
以下では、主画素領域による測定結果から相関演算で算出した被写体までの距離を「被写体距離L1」とする。フォーカス制御部133は被写体距離L1に基づいて位相差AFを行う。また、副画素領域による測定結果から相関演算で算出した被写体までの距離を「被写体距離L2」とする。主画素領域による測定で被写体距離L1が得られなかった場合、フォーカス制御部133は被写体距離L2を補助情報として、撮像信号AFを行う。副画素領域を用いた被写体距離L2に関しては、大まかな被写体の位置を捉えられるため、撮像信号AFでの合焦方向判別に用いることができる。撮像信号AFにおける微小駆動の動作を省略し、あるいは微小駆動の回数を減らすことにより、撮像信号AFにかかる時間を短縮できる。よって、全体としてハイブリッドAFに要する時間を短くすることができる。
【0016】
図6および7は、本実施形態におけるAF処理例を示すフローチャートである。
S701で処理が開始し、S702においてメインCPU151は初期設定を行う。本例では、モードを特定するAFMOD(変数)と、補助FLG(フラグ)が用意されており、初期値としてAFMODEに1が設定される。補助FLGは、撮像信号AFで被写体距離L2を補助情報として用いるか否かを判定するためのフラグであり、初期値0に設定される。補助FLGが1を示す場合、撮像信号AFで被写体距離L2を用いるものとする。
S703にて、前記の調整によって設定されてメモリに記憶されている補正ずれ量Aを読み込む処理が行われる。S704では、焦点状態検出センサ130の検出部に係る90個の画素のうち、(31+A)から(60+A)番目にかけての画素が主画素領域として選択され、AGC領域に設定される。AGC領域では、不図示のAGC回路による自動利得制御が行われる。S705にて、補正ずれ量Aはゼロと比較され、正または負が判定される。補正ずれ量Aが正値の場合、S706へ移行し、負値の場合にはS707へ移行する。なお、補正ずれ量Aの正負は図5(B)の左右方向に対応する。S706では、主画素領域の左側の領域にて、(1+A)から(30+A)番目にかけての画素が副画素領域に選択される。S707では、主画素領域の右側の領域にて、(61+A)から(90+A)番目にかけての画素が副画素領域に選択される。
S708で検出部の画素蓄積が開始し、AGC領域における像信号のモニタリング処理が実行される。S709は、像信号が一定のレベルに達したか否かを確認することで、蓄積が終了したか否かを判定する処理である。画素の蓄積が終了した場合、S710へ移行し、蓄積が未終了の場合には、S708に戻る。S710にて、主画素領域および副画素領域の像信号がそれぞれ読み出され、S711では主画素領域と副画素領域の各々で相関演算が実行される。その結果、被写体距離L1、L2がそれぞれ算出される。その際には、被写体距離L1、L2の信頼性を示す量(信頼度)が併せて算出される。信頼度は、像信号のコントラストおよび相関演算を行った際の像の一致度から算出される。これと同時に、AF信号処理部134はAF評価値FVを算出する。
【0017】
図7に進み、S712では、主画素領域による被写体距離L1の信頼性が高いか否かが判定される。つまり、前記S711で算出した信頼度を所定の閾値と比較することで、信頼度が閾値を超える場合に信頼性が高いと判定される。信頼性が高い場合にはS718へ移行し、信頼性が高くない場合には、S713へ移行する。
S713では、副画素領域による被写体距離L2の信頼性が高いか否かが判定される。信頼度が閾値と比較されて、被写体距離L2の信頼性が高いと判定された場合にS714へ移行し、信頼性が高くないと判定された場合にはS715へ移行する。S714では、副画素領域による被写体距離L2を信頼できるものと見なし、補助FLGに1が設定された後、S716へ移行する。またS715では、被写体距離L2が信頼できないと判定されたため、補助FLGに0が設定された後、S716に進む。S716は、AFMODEが1であるか否かの判定処理である。AFMODEが1の場合、S717へ移行し、AFMODEが1でない場合にはS718へ移行する。S717にて、AFMODEの値が2に変更される。これは、副画素領域による被写体距離L2について位相差AFでは用いずに、撮像信号AFの補助情報として用いるためである。そしてS718に進み、AFMODEの値に応じて3つの条件分岐処理が実行される。AFMODEの値が1の場合(第1の制御モード)、位相差AFによる合焦制御を行うためにS721へ移行する。また、AFMODEの値が2の場合(第2の制御モード)、撮像信号AFによる合焦制御を行うためにS731へ移行する。AFMODEの値が3の場合(第3の制御モード)には、S741へ移行する。この場合、合焦動作が完了した状態から変化が起きたか否かが監視され、状態に変化があった場合、AFMODEの値を1または2に設定する処理が実行される。
【0018】
まず、第1の制御モード(AFMODEの値が1の場合)を説明する。S721にてフォーカス制御部133は、主画素領域による被写体距離L1と、現在のフォーカスレンズ位置に基づいてレンズ駆動方向と速度を決定する。次のS722では、被写体距離L1に対応する合焦位置と現在のフォーカスレンズ位置が一致したか否かについて判定される。両者が一致したと判定された場合、S723へ移行し、不一致と判定された場合、S751へ移行する。S723にて、位相差AFの後、合焦近傍にて撮像信号AFを行うため、補助FLGに0が設定され、AFMODEに2が設定される。S751に進み、S721で決定されたレンズ駆動方向と速度でフォーカスモータ132が駆動され、フォーカスレンズ131が移動する。そして図6のS708に戻る。
次に第2の制御モード(AFMODEの値が2の場合)を説明する。S731において、撮像信号AFの制御が行われる。図8は撮像信号AF制御を説明するフローチャートである。
S801で処理が開始し、S802で微小駆動動作と合焦方向判別が行われる。S803は、補助FLGが1であるか否かの判定処理である。補助FLGが1の場合、S804へ移行し、補助FLGが0の場合にはS806へ移行する。S804では、S802で判別した合焦方向と、被写体距離L2に相当する合焦位置のある方向とが同一の方向であるか否かについて判定される。両者が同一方向である場合、S805へ移行し、同一方向でない場合にはS806へ移行する。S805では、合焦方向の判別回数の閾値(thと記す)が、α回に設定される。またS806では、閾値thがβ回に設定される。ここで、α<βである。これは、位相差AFと撮像信号AFとで合焦位置の方向が一致する場合には、合焦方向判別を行う回数を少なくするためである。これにより、山登り動作へと素早く移行させることができる。
【0019】
S807において、合焦方向の判別回数が閾値thと比較される。その結果、閾値th回以上に亘って連続して同一方向と判定された場合、S808へ移行し、それ以外の場合にはS810へ移行する。S808にて、山登り駆動の動作が行われ、フォーカス制御部133はフォーカスレンズ131の合焦位置を探索し、S809にて、AF評価値FVがピークを通過したか否かを判定する。AF評価値がピークを通過した場合、S811へ移行し、ピークを通過していない場合にはS808へ戻り、山登り駆動を継続する。S811でフォーカス制御部133は、合焦位置を見つけたと判断し、AFMODEの値として3が設定された後、リターン処理となる。
S807からS810に進んだ場合、微小駆動の動作においてフォーカスレンズ位置が所定回数に亘って同一エリアを往復したかどうかが判定される。所定回数に亘る同一エリアの往復が判定された場合、S811へ移行し、当該判定が下されない場合にはS812へ移行する。S812において、合焦位置を見つけていないと判断され、AFMODEの値として2が設定された後、撮像信号AFを継続するためにリターン処理となる。
【0020】
次に第3の制御モード(AFMODEの値が3の場合)を説明する。
図7のS741において、フォーカスレンズ131は、AF評価値FVのピーク位置へと戻って停止する。S742でフォーカス制御部133はAF評価値FVが所定値(閾値)以上変化したか否かについて監視する。FVの値が閾値以上変化した場合、S743へ移行し、閾値未満の場合、S751へ移行する。S743にて、被写体距離L1またはL2の検出距離が、合焦位置での値から変化したか否かについて判定される。検出距離の変化量が所定の閾値以上である場合、S744へ移行し、閾値未満の場合、S745へ移行する。S744では、被写体距離(検出距離)およびAF評価値FVがともに変化しているため、被写体像のボケ量が大きいと判断され、AFMODEの値として1が設定される。そしてS751へ移行する、また、S745では、AF評価値FVは変化しているが、被写体距離(検出距離)は変化していないため、被写体像のボケ量が小さいと判断され、AFMODEの値として2が設定され、S751へ移行する。
以上のように、第1実施形態では、パララックス調整により選択した主画素領域以外に、副画素領域が選択される。すなわち、検出領域内で主画素領域を除く領域から副画素領域を選択し、主画素領域と副画素領域で被写体距離をそれぞれ測定することができる。よって、センサの大型化を伴わずに複数の測定結果が得られる。主画素領域を用いて十分な測定結果が得られた場合には、位相差AFに従ってフォーカスレンズを駆動した後で撮像信号AFが行われる。また、主画素領域による検出で十分な検出距離が得られなかった場合でも、副画素領域を用いた測定結果を撮像信号AFの補助情報として利用できる。よって、撮像信号AFの合焦にかかる時間を短縮でき、ハイブリッドAFとして、高速な合焦制御が実現可能となる。
【0021】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では、第1実施形態との相違のみを説明し、第1実施形態の場合と同様の構成要素については既に使用した符号を用いることにより、それらの詳細な説明を省略する。
図9は第2実施形態に係る焦点状態検出センサ130の構成例を示す。検出部902は上段のラインセンサ905と下段のラインセンサ906から構成される。同様に、検出部904は上段のラインセンサ907と下段のラインセンサ908から構成される。被写体からの光のうち、第1の結像レンズ901を通過した光は第1の検出部902に到達する。また、被写体からの光のうち、第2の結像レンズ903を通過した光は第2の検出部904に到達する。
【0022】
焦点状態検出センサ130を撮像装置に固定する際の機械的なずれは、横方向だけでなく、縦方向にも生じる。そのため、このような2次元的な広がりを持つ検出部に対して、縦方向において主画素領域と副画素領域が選択される。図10(A)は第2実施形態におけるパララックスの調整例を示す。x、y、z軸の設定については図5と同様である。なお、図9には一方の検出部だけを示す。
x軸方向に沿って、レンズユニット101の撮像面1001と、焦点状態検出センサ130の検出部902の検出面1002、1003が配置される。検出面1002は上段のラインセンサ905の検出面を表し、検出面1003は下段のラインセンサ906の検出面を表す。図10(A)には、撮像画角1004と、これに対してx軸方向にずれたラインセンサ画角1005、1006を例示する。ラインセンサ画角1005は上段のラインセンサ905に対応する画角を表し、ラインセンサ画角1006は下段のラインセンサ906に対応する画角を表す。パララックス調整時に撮像画角1004の中心には、縦横にコントラストを有する被写体(十字線参照)を用いる。上段のラインセンサ905は、その画角1005が撮像画角1004のy軸方向におけるほぼ中央に位置しており、十字線の横線部を検出するため、x軸方向に亘ってほぼ一様な像信号を出力する。また、下段のラインセンサ906は、その画角1006が撮像画角1004のy軸方向における中央よりも上方に位置しており、十字線の縦線上半部を検出するため、図5(B)と同様の像信号を出力する。図10(B)に示すように、主画素領域、副画素領域におけるx軸方向の位置は、下段に位置するラインセンサの検出面1003での像信号を用いて、第1実施形態の場合と同様に決定される。またy軸方向については、2列あるラインセンサのうち、一様な像信号を出力している上段のラインセンサ905の検出領域の一部が主画素領域として決定される。副画素領域は、下段のラインセンサ906の検出領域から決定される。主画素領域と副画素領域は、y軸方向にて隣接した範囲に選択される。
第2実施形態では、横方向(x軸方向)だけでなく、縦方向(y軸方向)に対しても主画素領域、副画素領域を選択することができ、第1実施形態の場合と同様に図6および7に示すフローチャートに従って焦点調節制御が行われる。
【0023】
[その他の変形例]
前記実施形態では、焦点状態検出センサの検出部に係る画素数を90画素とし、そのうちで相関演算に用いる画素数を30画素としているが、検出部の画素数、相関演算を行う画素数ともに任意に設定可能である。また、主画素領域を複数の領域とする場合でも、前記と同様に副画素領域を設定可能である。副画素領域については主画素領域と隣り合った画素領域でもよいし、主画素領域から所定数の画素分だけ離れた位置に副画素領域を設定してもよい。また、副画素領域に係る相関演算を行う前に、画素値が飽和していないかの確認や、画像のコントラストが十分得られているか否かの確認を行ってもよい。
焦点状態検出センサの検出部に複数列のラインセンサを用いる場合には、ラインセンサ毎に主画素領域と副画素領域を選択することができる。この場合、主画素領域での検出距離同士と、副画素領域での検出距離同士をそれぞれ平均し、最終的な被写体距離を決定して合焦制御を行えばよい。あるいは、被写体を捉えていると判断される、いずれか1つの主画素領域での検出距離と副画素領域での検出距離を選択して最終的な被写体距離を決定し、合焦制御を行ってもよい。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0024】
101 レンズユニット
130 焦点状態検出センサ
131 フォーカスレンズ
133 フォーカス制御部
134 AF信号処理部
138 結像レンズ
139 検出部
141 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を通して被写体を撮像する撮像素子と、焦点検出光学系および該焦点検出光学系を通した像を検出する複数の検出部を備えた撮像装置であって、
前記撮像素子による撮像信号を処理して焦点調節用の評価値を算出する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの前記評価値、および前記複数の検出部の出力から得られる焦点状態の検出情報を用いて焦点調節用レンズを駆動して焦点調節制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、第1の制御モードにて、前記複数の検出部の主画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報を用いて焦点調節制御を行い、第2の制御モードでは、前記複数の検出部の副画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報、および前記焦点調節用の評価値から、前記焦点調節用レンズに係る合焦方向を判別して焦点調節制御を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記主画素領域は、パララックス調整により、前記撮像光学系に対する前記焦点検出光学系の視差に従って選択された複数の画素で構成され、前記副画素領域は前記主画素領域とは異なる画素領域から選択した画素で構成されることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記主画素領域は、前記検出部の中心位置から、前記撮像光学系に対する前記焦点検出光学系の視差に相当するずれ量をもって補正した位置を含む範囲内の画素で構成されることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記副画素領域は、前記主画素領域によって分割される前記検出部の画素領域のうち、画素数の多い領域から選択されることを特徴とする請求項2または3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記検出部は複数列のラインセンサによって構成され、前記主画素領域および前記副画素領域は異なる列のラインセンサの画素領域からそれぞれ選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数の検出部の副画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報により判別される合焦方向と、前記焦点調節用の評価値により判別される合焦方向とが一致するか否かを判定し、合焦方向が一致していると判定した場合に設定する判別回数の閾値を、合焦方向が一致していないと判定した場合に設定する判別回数の閾値よりも小さく設定して、前記焦点調節用レンズの合焦位置を探索することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像光学系を通して被写体を撮像する撮像素子と、焦点検出光学系および該焦点検出光学系を通した像を検出する複数の検出部を備えた撮像装置にて実行される制御方法であって、
前記撮像素子による撮像信号を処理して焦点調節用の評価値を算出する信号処理ステップと、
第1の制御モードでは、前記複数の検出部に設定した主画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報を用いて焦点調節制御を行い、第2の制御モードでは、前記複数の検出部に設定した副画素領域の出力から得られる焦点状態の検出情報、および前記焦点調節用の評価値から、焦点調節用レンズを移動させる合焦方向を判別して焦点調節制御を行う制御ステップを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−247604(P2012−247604A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118906(P2011−118906)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】