説明

撮像装置およびドアホンシステム

【課題】撮像素子における露光時間やゲインアンプにおける増幅率の調整を通じて輝度レベルを調整するものであって、フレームレートの変更を抑えて、輝度レベルの調整を迅速に行うことができる撮像素子、およびドアホンシステムを提供する。
【解決手段】撮像素子と、映像信号を増幅させるゲインアンプと、露光時間とゲインアンプの増幅率を調整することで、映像信号を調整する輝度レベル調整処理を行なう輝度レベル調整部と、を備え、輝度レベル調整処理は、露光時間および増幅率を、予め定められた複数ポイントにわたって仮設定する第1処理と、仮設定のなされたポイントごとに、増幅された映像信号の大きさを検出する第2処理と、該検出結果に基づいて、フレームレートを設定する第3処理と、該設定されたフレームレートの下で、露光時間と増幅率を調整する第4処理と、を含む撮像装置および該撮像装置を備えたドアホンシステムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像して映像信号を生成する撮像装置、およびこれを用いたドアホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティー意識の向上に伴い、ドアホン子機として撮像装置を採用し、室内に来客があったことを知らせると共に、ドアホン子機からの映像を室内のドアホン親機にモニター表示し、ドアを開ける前に来客が誰であるかを確認したり、来客がなくても室内のドアホン親機より、ドアホン子機を操作して、屋外に異常がないか映像で確認したりすることができるテレビドアホンシステムの普及が進んでいる。
【0003】
また従来、ドアホン子機のカメラ、及びドアホン親機のモニターは白黒表示であったが、最近ではカラー表示対応の製品も増加しており、視認性がさらに向上している。このようなテレビドアホンシステムでは、屋外が暗くなる夜間などにおいても来客者の判別や、屋外の異常を確認する必要があるため、種々の手段が講じられている。
【0004】
例えば、ドアホン子機に赤外光LEDや白色LEDを内蔵し、来客者等をそれで照らすことによってドアホン子機内の撮像素子に十分な光量を得る手段が一般的に用いられている。しかし赤外光LEDの光を来客者に照らす方法は、来客者に照明されていることを気付かれない利点はあるものの、赤外光の特性上、得られる映像が白黒表示となり視認性が低下する問題がある。また被写体の色によっては赤外光では判別できない場合もあり、異常を見逃すおそれもある。
【0005】
一方、白色LEDの光を来客者に照らす方法は、ドアホン子機から得られる映像はカラーのままであり視認性は低下しないが、来客者に直接照明を当てることになり、来客者に不愉快な思いをさせることがある。また、室内のドアホン親機より、屋外を観察したい場合、白色LEDが点灯するため、室内から屋外を観察していることが屋外にいる人にわかってしまう問題もある。なお赤外光LEDおよび白色LEDのいずれの場合も、ドアホン子機の近傍のみを照明するようになっているため、ドアホン子機の撮像範囲であっても、暗くて確認できない領域ができてしまう問題もある。
【0006】
また被写体の明るさが変動しても、モニター側で安定した(平均的な輝度レベルがほぼ一定である)映像を得ることができるようになっている子機(撮像装置)もある。このようにした撮像装置では、被写体の明るさに応じて、映像信号の大きさ(増幅率)を適切に調整することで輝度レベルを調整するようにしている。ここで、このような撮像装置の一例について、図12を参照しながら以下に説明する。
【0007】
当該撮像装置100は、撮像素子101、ゲインアンプ102、映像信号処理部103、および制御部104などを備えている。撮像素子101は、例えばCCDにより構成されており、各フレームにおいて露光されることで、被写体に応じた量の電荷が各画素について蓄積される。この蓄積された電荷は映像信号として、フレーム毎に後段側に出力される。そのためこの映像信号の大きさ(振幅)は、映像の輝度を表すことになる。
【0008】
また各フレームにおける露光時間は、フレームレート(単位時間あたりにフレームが切替わる回数)により定まる最大時間を上限として、制御部104の指示を通じて制御可能となっている。なお露光時間が長いほど、蓄積される電荷量は増加するから、映像信号は大きくなる。
【0009】
ゲインアンプ102は、撮像素子101の後段に設けられており、制御部104の指示に応じた増幅率にて映像信号を増幅させる。映像信号処理部103は、ゲインアンプ102から出力された映像信号に所定の処理を施して後段側(例えばドアホンシステムにおける親機)に出力する。またマイコン104は、演算制御機能を有しており、撮像装置100においてなされる各種処理を制御する。
【0010】
以上の構成により、撮像装置100は、フレーム毎の被写体の映像を表す映像データを生成し、出力することが可能となっている。また被写体の明るさに応じて、撮像素子101におけるフレーム毎の露光時間、およびゲインアンプ102における増幅率を調整し、出力される映像の全体、もしくは所定範囲内の平均的輝度が、ほぼ一定となるようにする調整(輝度レベル調整)がなされるものとなっている。
【0011】
この輝度レベル調整は、より具体的には、まず撮像素子101の露光時間とゲインアンプ102の増幅率をある値(ポイント)に設定する。そしてこのポイントにて、撮像素子101に映像信号を生成させ、これをゲインアンプ102にて増幅させる。その後マイコン104は、この増幅された映像信号から輝度レベルを算出し、これが適切な輝度レベルとして予め設定されている許容範囲内に収まっているか否かを判定する。
【0012】
その結果、算出された輝度レベルが許容範囲を上回っていれば、撮像素子101における露光時間が短く、または、ゲインアンプ102の増幅率が小さくなるように設定して、再度上記判定を実行する。また逆に、算出された輝度レベルが許容範囲を下回っていれば、撮像素子101における露光時間が長く、または、ゲインアンプ102の増幅率が大きくなるように設定して、再度上記判定を実行する。
【0013】
このようにして、算出された輝度レベルが許容範囲内に収まるポイントが検出されたら、このポイントが通常の映像データ生成処理に適用されることとなる。
【0014】
なお、ゲインアンプ5を使用して映像信号を増幅させる場合は、撮像素子3における露光時間を長くする場合と異なり、ノイズ成分も増幅してしまうことになる。ゲインアンプ5の増幅率を上げすぎるとノイズが増え、映像の視認性が低下するおそれがある。
【0015】
そのため、映像信号の増幅率の調整においては、先に撮像素子3における露光時間を制御し、それでも更に増幅率を上げる必要がある場合に限り、ゲインアンプでの増幅率を上げるようにすることが好ましい。つまり、同じ映像信号の輝度レベルが得られる設定が複数あったとしても、できるだけゲインアンプ5の増幅率が低く、撮像素子3における露光時間の長い方が、ノイズの少ない、視認性の高い映像を得ることが可能となる。
【0016】
このような事情から通常は、算出された輝度レベルが許容範囲よりも高い場合は、まずゲインアンプ102の増幅率を下げることで、目標値に近づけることとする。しかしそれでも、依然として輝度信号レベルが許容範囲より高い場合は、撮像素子101における露光時間を短くすることで、目標値に近づけることとする。
【0017】
また、逆に輝度レベルが許容範囲よりも低い場合は、まず撮像素子101の露光時間を長くすることで、目標値に近づけることとする。しかしそれでも、依然として輝度レベルが許容範囲よりも低い場合は、ゲインアンプ102の増幅率を上げるような制御が行なわれる。これは先述の通り、ゲインアンプ102の増幅率を小さく抑える方が、ノイズの少ない映像を得られる可能性が高いからである。
【0018】
ここで、撮像素子101における露光時間の最大値はフレームレートに依存しているから、例えば1フレームの時間を越えて露光時間を長くするためには、フレームレートを下げる必要がある。例えば、特許文献1に記載のものでは、固体撮像素子のフレームレートを通常動作時より低下させ、露光時間を通常動作時の最大時間より長く取ることによって、固体撮像素子に入力される光量を増加させる方法が用いられている。このようなものでは、例えば通常30フレーム/秒で動作しているグローバルシャッターを用いた固体撮像素子の場合、最大露光時間は約33m秒になるが、低照度時、15フレーム/秒に低下させると、最大露光時間は約66m秒に延び、得られる光量も2倍になる。
【0019】
ただしフレームレートを下げることは、その分モニターに表示される映像の単位時間当たりのフレーム数が減少することになるため、必要最小限に留められることが好ましい。特に、動きの激しい被写体を撮像する場合には、ブレが目立つようになるおそれがあるため、注意が必要である。
【0020】
また特許文献2には、フレームレートが低くなった場合のAE(自動露出)、AF(オートフォーカス)、AWB(オートホワイトバランス)の制御を違和感のない滑らかな動画像で出力できる方法が提案されている。この場合、例えば通常3フレームに1回制御を行なっていたものを、低速フレームレート時は、毎フレーム毎に制御量の1/3ずつ滑らかに変化させ、違和感のない動画を得ることができる。
【0021】
【特許文献1】特開2006−50350号公報
【特許文献2】特開平11−113008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし上述した方法によれば、夜間などの低照度時にフレームレートが低速になることで、輝度レベルの制御に時間がかかるため、使用者がドアホン親機で最適な映像を得るまでに待たされるという問題がある。例えば、フレームレートが30フレーム/秒から1フレーム/秒に変化する場合において、フレームレートがフレーム毎に1フレームずつ変化すると、時間は約3秒かかることになる。
【0023】
またフレームレートが1フレーム/秒になった時点で、露光時間、及び、ゲインアンプの自動制御を行なうと、毎フレーム制御を行なったとしても1回の制御で1秒かかるため、ドアホン親機へ最適な映像が表示されるまで、最低でも3秒、場合によっては、10秒以上かかる場合も考えられる。
【0024】
このように輝度レベルの調整処理において、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことは、輝度レベル調整処理の迅速性を妨げるおそれがある。そこで本発明は上述した問題点に鑑み、撮像素子における露光時間やゲインアンプにおける増幅率の調整を通じて輝度レベルを調整するものであって、フレームレートの変更を抑えて、輝度レベルの調整を迅速に行うことができる撮像素子、およびドアホンシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するために本発明に係る撮像装置は、フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、該映像信号を増幅させて出力するゲインアンプと、前記露光時間と前記ゲインアンプにおける増幅率を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを所定の目標値に近づけるように調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、を備え、前記輝度レベル調整処理は、前記露光時間および前記増幅率を、予め定められた複数ポイントにわたって仮設定する第1処理と、該仮設定のなされたポイントごとに、前記増幅された映像信号の大きさを検出する第2処理と、該検出結果に基づいて、フレームレートを設定する第3処理と、該設定されたフレームレートの下で、前記映像信号に係る輝度レベルが所定の目標値に近づくように、前記露光時間と前記増幅率を調整する第4処理と、を含む構成(第1の構成)としている。
【0026】
本構成によれば、第1処理から第3処理がなされることにより、フレームレートが設定され、その後に、この設定されたフレームレートの下で露光時間とゲインアンプにおける増幅率が調整されるようになっている。そのため輝度レベル調整処理において、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことを回避することが可能となり、輝度レベル調整処理の迅速化を図ることが可能となる。
【0027】
また上記第1の構成において、前記検出の結果は、前記第4処理における、前記露光時間と前記増幅率を調整する処理にも用いられる構成(第2の構成)としてもよい。本構成によれば、第1処理および第2処理の結果を、第4処理にも役立てることができるため、輝度レベル調整処理の迅速性をより向上させることが可能となる。
【0028】
また本発明に係る撮像装置は、フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、該映像信号を増幅させて出力するゲインアンプと、前記露光時間と前記ゲインアンプにおける増幅率を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを所定の目標値に近づけるように調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、前記輝度レベル調整処理におけるフレームレートを設定する処理(「フレームレート設定処理」とする)を行なうフレームレート設定部と、を備え、該フレームレート設定処理は、前記露光時間および前記増幅率を、予め定められた複数ポイントにわたって仮設定する第1処理と、該仮設定のなされたポイントごとに、前記増幅された映像信号の大きさを検出する第2処理と、該検出結果に基づいて、フレームレートを設定する第3処理と、を含む処理である構成(第3の構成)とする。
【0029】
本構成によれば、フレームレート設定部により設定されたフレームレートが輝度レベル調整処理で採用されるため、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことを回避することが可能となり、輝度レベル調整処理の迅速化を図ることが可能となる。なおフレームレート設定処理は、輝度レベル調整処理とは独立して実行させることが可能である。
【0030】
また上記第1から第3の何れかの構成において、時刻を計時する計時手段を有しており、該計時手段を通じて所定時刻の到来が検出されたときに、前記輝度レベル調整処理または前記フレームレート設定処理が実行される構成(第4の構成)としてもよい。本構成によれば、時刻に応じて輝度レベル調整処理を行なうことが可能となるため、装置の利便性を向上させることができる。
【0031】
また本発明に係る撮像装置は、フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、該映像信号を増幅させて出力するゲインアンプと、前記露光時間と前記ゲインアンプにおける増幅率を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、を備え、前記輝度レベル調整処理は、前記露光時間および前記増幅率を、予め定められた複数ポイントのうちの何れかに仮設定する第5処理と、該仮設定のなされたポイントについて、前記増幅された映像信号の大きさを検出し、該検出結果が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する第6処理と、該検出結果が該許容範囲内に収まるまで、前記仮設定の内容を変更しながら前記第5処理と第6処理を繰り返す第7処理と、該検出結果が該許容範囲内に収まったときの前記仮設定の内容に基づいて、前記フレームレートを設定する第8処理と、該設定されたフレームレートの下で、前記映像信号に係る輝度レベルが所定の目標値に近づくように、前記露光時間と前記増幅率を調整する第9処理と、を含む処理である構成(第5の構成)とする。
【0032】
本構成によれば、フレームレートが設定され、その後に、この設定されたフレームレートの下で露光時間とゲインアンプにおける増幅率が調整されるようになっている。そのため輝度レベル調整処理において、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことを回避することが可能となり、輝度レベル調整処理の迅速化を図ることが可能となる。
【0033】
さらに、検出結果が許容範囲内に収まった段階以降は、第5処理や第6処理を実行する必要がないため、処理の迅速化をより向上させることが可能となる。
【0034】
また上記第5の構成において、輝度レベル調整処理において前記検出結果が前記許容範囲内に収まったときの仮設定の内容を記憶する記憶手段を備え、次回の輝度レベル調整処理における前記第5処理での仮設定の内容としては、該記憶手段に記憶されているものが、最初に適用される構成(第6の構成)としてもよい。
【0035】
本構成によれば、前回の輝度レベル調整処理における被写体の明るさが今回と大きく変化していないような場合に、検出結果が早い段階で許容範囲内に収まる可能性が高まる。そのため、輝度レベル調整処理の迅速化を図ることが可能となる。
【0036】
また本発明に係る撮像装置は、フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、少なくとも前記露光時間を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを所定の目標値に近づけるように調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、該輝度レベル調整処理に適用されるフレームレートを、複数種類(大きい方から、F1、F2、・・・Fnとする)のうちの何れかに設定する処理(「フレームレート設定処理」とする)を行なうフレームレート設定部と、を備え、該フレームレート設定処理は、前記映像信号を、フレームレートがFx(1≦x≦nとし、初めはx=1とする)のときに実現可能な最も高い前記輝度レベルに調整する第9処理と、該調整のなされた映像信号の輝度レベルが前記目標値以上となるまで、前記xを1つずつ大きくしながら、前記第9処理を繰り返す第10処理と、
該輝度レベルが該目標値以上となったときの前記Fxを、輝度レベル調整処理に適用されるフレームレートとして設定する第11処理と、を含む構成(第7の構成)とする。
【0037】
本構成によれば、フレームレートが設定され、この設定されたフレームレートの下で露光時間とゲインアンプにおける増幅率が調整されるようになっている。そのため輝度レベル調整処理において、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことを回避することが可能となり、輝度レベル調整処理の迅速化を図ることが可能となる。
【0038】
また、輝度レベル調整処理に適用されるフレームレートを、映像信号の輝度レベルを適切に調整できるようにしながらも、できるだけ大きい値とすることが可能となる。
【0039】
また上記第1から第7の何れかの構成に係る撮像装置を備えた構成(第8の構成)のドアホンシステムであれば、上記構成の利点を享受し得るドアホンシステムを実現することが可能である。
【0040】
また上記第8の構成において、前記撮像装置を備えた子機と、ユーザによる撮像開始の指示がなされたときに、該撮像装置から伝送される映像信号に基づいた映像表示を開始する親機と、を有し、前記輝度レベル調整処理は、前記撮像開始の指示がなされたときに、該映像表示の開始に先立って実行される構成(第9の構成)としてもよい。
【0041】
また上記第5または第6の構成に係る撮像装置を備えた子機と、該撮像装置から伝送される映像信号に基づいて映像を表示させる、映像表示装置を備えた親機と、を有する一方、前記第5から第8処理の何れかにより生じる映像信号に基づいた映像については、表示させないようにする表示防止手段を備えた構成(第10の構成)としてもよい。
【0042】
また第10の構成としてより具体的には、前記表示防止手段は、前記第5から第8処理の何れかにより生じる映像信号が、前記子機から前記親機に伝送されないようにすることで、該映像信号に基づいた映像を表示させないようにする構成(第11の構成)としてもよい。
【0043】
本構成によれば、表示を意図しない映像信号が表示されてしまうことにより、ユーザに不快感を与えることを回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0044】
上述したように本発明に係る撮像装置およびドアホンシステムによれば、フレームレートが設定され、その後に、この設定されたフレームレートの下で露光時間とゲインアンプにおける増幅率が調整されるようになっている。そのため輝度レベル調整処理において、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことを回避することが可能となり、輝度レベル調整処理の迅速化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の実施例について、カメラ付子機(以下、単に「子機」と称する)1台、表示機能付親機(以下、単に「親機」と称する)1台などから構成され、子機内の固体撮像素子のフレームレートを変化させ、暗視性能を向上させながら、輝度レベルの調整を短時間で行なうことのできるテレビドアホンシステム(以下、単に「ドアホンシステム」と称する)を例に挙げて説明する。本実施例に係るドアホンシステムの構成図を、図1に示す。本図に示すように、当該ドアホンシステムは、子機1と親機2が、双方間の信号の伝送経路となる信号線16により接続されて構成されている。
【0046】
先ず子機について説明する。子機1は、一般に屋外に設置されることが想定されており、来客者が操作スイッチを押すことにより、室内の使用者へ来客があったことを伝えると共に、来客者等の映像、音声を室内に設置された親機2へ送信したり、親機2からの音声を再生したりする機能を有している。また子機1は図1に示すように、撮像素子3、TG4、ゲインアンプ5、A/D変換回路6、映像信号処理回路7、フレーム制御回路8、フレームメモリ9、ビデオエンコーダ10、多重化分離化回路11、音声制御回路12、スピーカ・マイク13、操作スイッチ14、および子機制御マイコン15などを備えている。
【0047】
撮像素子3は、来客者や屋外の風景等の被写体を撮像し、その情報を映像信号として後段の回路に伝送する。より具体的には例えばCCD等により構成されており、フレーム毎に、各画素が露光されることによって被写体に応じた電荷を蓄え、映像信号として後段に出力する。そのため同じ明るさの被写体であっても、露光時間の長い方が、より映像信号が大きく(輝度レベルが高く)なる。
【0048】
TG[Timing Generator]4は、撮像素子3を駆動するために必要な各種タイミングに関する信号を生成し、撮像素子3に出力する。
【0049】
ゲインアンプ5は、撮像素子3から伝送される映像信号を、任意の倍率で増幅する役割を果たす。
【0050】
A/D変換回路6は、ゲインアンプ5で増幅された映像信号をディジタル信号に変換する。
【0051】
映像信号処理回路7は、A/D変換回路6でディジタル信号に変換された映像信号に対して、その映像における視認性を高めるための各種処理を行う。
【0052】
フレーム制御回路8は、映像信号処理回路7の後段に設けられており、フレームレートが低速になった場合においても、後段のビデオエンコーダ10に一定のフレームレートの映像信号を送る役割を果たす。
【0053】
フレームメモリ9は、フレーム制御回路8によって、後段のビデオエンコーダに一定のフレームレートの映像信号を送るために使用されるメモリとして機能する。
【0054】
ビデオエンコーダ10は、フレーム制御回路8から出力されたディジタルの映像信号をアナログのビデオ信号に変換する。
【0055】
多重化分離化回路11は、ビデオエンコーダ10から伝送されるアナログの映像信号、子機1のマイクから伝送される音声信号、および操作スイッチ14から伝送される操作信号を、多重化して親機2側へ送信する機能を有している。また親機2側から伝送される、子機1を動作させるための電力や音声信号を分離する機能をも有している。
【0056】
音声制御回路12は、親機2から送信され、多重化分離化回路11で分離された音声信号を増幅してスピーカへ送る機能を備えている。また子機1のマイクから入力された音声信号を、多重化分離化回路11へ送る機能をも有している。
【0057】
スピーカ・マイク13は、音声制御回路12から送られた音声信号を再生したり、来客者の音声を電気信号に変換して音声制御回路12へ送ったりする機能を有している。
【0058】
操作スイッチ14は、主に来客者によって所定の操作がなされることが想定されている。この操作がなされると、子機制御マイコン15によって、来客のあった旨が室内に設置された親機2に報知されるようになっている。
【0059】
子機制御マイコン15は、予め記録されている各種設定値等を使用して、TG4、ゲインアンプ5、映像信号処理回路7、フレーム制御回路8、およびビデオエンコーダ10などを制御し、被写体の映像が最適な状態となるようにコントロールしたり、その他子機1全般の制御を行なったりする。なお子機制御マイコン15は、撮像素子3の露光制御に使用される各種テーブル値も予め記録されている。
【0060】
次に親機2について説明する。親機2は、一般に室内に設置されることが想定されており、来客者があった場合に、子機1から送信された映像を表示したり、子機1を介して来客者と通話したりする機能を有している。また親機2は、多重化分離化回路17、音声制御回路18、スピーカ・マイク19、ビデオデコーダ20、LCDコントローラ21、LCDパネル22、操作スイッチ23、および親機制御マイコン24などを備えている。
【0061】
多重化分離化回路17は、子機1から送信される多重化された映像信号、音声信号、および操作スイッチ14による操作信号を受信および分離して、親機2の音声制御回路18、ビデオデコーダ回路20、および親機制御マイコン24に送ったり、親機2のマイクから入力された音声信号や子機1を動作させるための電力を多重化して子機1へ送信したりする機能を有している。
【0062】
音声制御回路18は、多重化分離化回路17から送られる音声信号を増幅して、親機2のスピーカへ送ったり、親機2のマイクから入力された音声信号を多重化分離化回路17へ送ったりする機能を有している。
【0063】
スピーカ・マイク19は、音声制御回路18から送られた音声信号を再生したり、使用者の音声を電気信号に変換して音声制御回路18へ送ったりする。
【0064】
ビデオデコーダ20は、多重化分離化回路17で分離された子機1から送信されたアナログの映像信号を、ディジタルの映像信号に変換する。
【0065】
LCD[Liquid Crystal Display]コントローラ21は、ビデオデコーダ20から入力されるディジタルの映像信号をLCDパネル22に表示可能な信号形式に変換したり、LCDパネル22を動作させるために必要なタイミング信号の作成を行なったりする。
【0066】
LCDパネル22は、LCDコントローラ21の制御に基づいて、子機1で撮像された映像を表示する。
【0067】
操作スイッチ23は、例えばボタンスイッチやリモコンなどが採用されており、主に使用者によって操作されることが想定されている。これにより親機2に、使用者の意図を反映させた処理を行なわせることが可能となっている。
【0068】
親機制御マイコン24は、LCDコントローラ21、ビデオデコーダ20、および多重化分離化回路17の制御など、親機2においてなされる各処理を全般的に制御する。
【0069】
次に、本実施例に係るドアホンシステムの動作内容について説明を行なう。
【0070】
通常の待機時(来客者がいない場合)、子機1および親機2は、いわゆるスタンバイモードとなっている。このとき親機2は、子機1に対して、子機1がスタンバイモードで動作できる最低限の給電しか行なっていない。
【0071】
そして来客者があり、来客者が子機1の操作スイッチ14を操作すると、子機制御マイコン15はスタンバイモードから復帰し、多重化分離化回路11および信号線16を介して、操作スイッチ14の操作信号を親機2へ送信する。この送信された操作信号は、親機2の多重化分離化回路17で分離され、親機制御マイコン24へ送られる。
【0072】
これにより、来客者があったことを認識した親機制御マイコン24は、多重化分離化回路17より、子機1へ撮像が十分可能な程度に給電量を上げると共に、スピーカ・マイク19を通じて呼出音を出し、室内の使用者に来客者があったことを伝える。そして撮像を行なうのに十分な給電を受けた子機1では、子機制御マイコン15がTG4を制御することにより撮像素子3を駆動し、被写体である来客者を撮像する。
【0073】
撮像素子3で撮像された被写体の情報は、映像信号に変換された後、ゲインアンプ5に入力され、被写体の明るさに応じて映像信号が増幅される。ゲインアンプ5で増幅された映像信号は、A/D変換回路6へ送られ、ディジタルの映像信号に変換される。A/D変換回路6で変換されたディジタルの映像信号は、映像信号処理回路7へ入力される。
【0074】
映像信号処理回路7では、映像の視認性を高めるため、ガンマ補正やエッジ補正などの処理の他、子機制御マイコン15と共にオートホワイトバランス制御、自動黒レベル制御、および自動露光制御等の各種自動制御を行なう。そして映像信号処理回路7で視認性が高められた映像信号は、フレーム制御回路7へ入力される。
【0075】
フレーム制御回路7では、映像信号回路7から入力されるフレーム数と、ビデオエンコーダ10で必要とされるフレーム数の調整を行う。例えば、ビデオエンコーダ10では、常時30フレーム/秒のフレーム数の映像信号入力が必要とする場合において、映像信号処理回路7からの入力フレーム数が15フレーム/秒しかない場合、映像信号処理回路7からの映像信号を一旦フレームメモリ9に記録する。
【0076】
一方、ビデオエンコーダ10へ出力される映像信号は、映像信号処理回路7からの映像信号入力とは非同期で、常時フレームメモリ9より30フレーム/秒のフレーム数の映像信号を読み出し、ビデオエンコーダ10へ出力される。このような構成では、映像信号処理回路7から入力される映像信号のフレーム数によって、ビデオエンコーダ10に出力される映像信号は、同じ映像信号のフレームが複数枚連続する場合もあるが、撮像素子3からの撮像フレーム数が変化しても、ビデオエンコーダ10へは常時規定されたフレーム数の映像信号を出力することが可能となる。
【0077】
ビデオエンコーダ10に入力された映像信号は、アナログの映像信号に変換され、多重化分離化回路11へ入力される。また、子機1のマイク・スピーカ13から入力された来客者の音声信号は、音声制御回路12を介して、多重化分離化回路11へ入力される。そして多重化分離化回路11へ入力された映像信号と音声信号は多重化され、信号線16を通じて親機2へ送信される。
【0078】
この多重化された信号は、親機2の多重化分離化回路17で、映像信号と音声信号に分離される。そして映像信号はビデオデコーダ20に入力され、ディジタルの映像信号に変換される一方、音声信号は音声制御回路18に入力される。
【0079】
ビデオデコーダ20で変換されたディジタルの映像信号は、LCDコントローラ21に入力され、LCDパネル22に表示可能な信号形式に変換される。そしてこの変換された信号はLCDパネル22に入力され、子機1側で撮像された映像がLCDパネル22に表示されることになる。また音声制御回路18に入力された音声信号は、増幅された後にスピーカ・マイク19に入力され、音声として再生される。
【0080】
また使用者の音声は、親機2側のスピーカ・マイク19で音声信号に変換され、音声制御回路18を介して多重化分離化回路17に入力され多重化される。この多重化された信号は、信号線16を通じて子機1へ送信される。そして子機1の多重化分離化回路11で分離され、音声制御回路12へ入力される。音声制御回路12へ入力された音声信号は、増幅後、スピーカ・マイク13へ入力されることにより、室内に居る使用者の音声が再生される。以上の動作が繰り返されることにより、室内の使用者は、屋外の来客者の映像を確認しながら、通話を行なうことが可能となる。
【0081】
ところで子機1においては、被写体が明る過ぎたり或いは暗過ぎたりしても、親機2側のLCDパネル22では適切な輝度レベルの映像が表示されるように、輝度レベル調整処理がなされるようになっている。この輝度レベル調整処理は、撮像素子3における露光時間およびゲインアンプ5における増幅率の調節を通じて実現される。なお露光時間の上限を延ばすために、適宜フレームレートも調整できるようになっている。
【0082】
以下、本実施例に係るドアホンシステムにおける輝度レベル調整処理の内容について、より詳細に説明する。
【0083】
まず本ドアホンシステムでは、通常のフレームレートをfとすると、f、f/2、f/3、f/4の4段階に可変となっている。フレームレートが小さい程、各フレームにおける露光時間をより長く設定することが可能である。また、ゲインアンプ5により得られる増幅率の最大値(AGCMAX)は、フレームレートf時の露光時間の制御で得られる増幅率(SHTMAX_F1)の2倍となっている。
【0084】
ただし、フレームレートがf、f/2、およびf/3の場合におけるゲインアンプ5の制御上の最大増幅率はAGCMAXの1/2としている。これ以上ゲインアンプ5による増幅率を上げると、ノイズの影響が問題となる可能性があるためである。ただし、フレームレートがf/4の場合は、ゲインアンプ5の制御上の最大増幅率もAGCMAXとする。この場合は、これ以上フレームレートを下げて露光時間を延ばすことが出来ず、ひいては、多少ノイズの影響があっても増幅率を優先させることが考えられるからである。
【0085】
本実施例に係るドアホンシステムにおける輝度レベル調整処理において、フレームレートがシステムの最大設定であるfの場合の、被写体照度に対する撮像素子3の露光時間による増幅率、およびゲインアンプ5による増幅率の変化状況を図2の左側に示す。ここで、実線は撮像素子3(露光時間)による増幅を、破線はゲインアンプ5による増幅を示している。また、これらの増幅率を合成させた合成増幅率の変化状況を図2の右側に実線で示す。なお何れの図も、dB表記(対数グラフ表記)であり、また点線は、仮にゲインアンプ5による増幅をAGCMAXまで可能とした場合のものを、参考までに示している。
【0086】
ここで「SHTMAX_F1」は、フレームレートがfの場合に撮像素子3の露光時間の制御により得られる最大増幅率であり、「AGCMAX」は、ゲインアンプ5により得られる最大増幅率である。なお露光時間を延ばすことにより映像信号を大きくすることも、見掛け上、延ばす前の露光時間により得られる映像信号を増幅することと同様に考えることができるから、ここでは「増幅」に含めることとする。
【0087】
また「ILM1_F1」は、撮像素子3の露光時間制御により輝度レベルを適切に調整可能な照度の下限値であるとともに、ゲインアンプ5による増幅を開始する照度の上限値である。「ILM2_F1」は、ゲインアンプ5の増幅率の制御範囲の最大をAGCMAXの1/2までとした場合、ゲインアンプ5の増幅率の制御により輝度レベルを適切に調整可能な照度の下限値である。「ILM3_F1」は、ゲインアンプ5の増幅率をAGCMAXとした場合、ゲインアンプの増幅率の制御により輝度レベルを適切に調整可能な照度の下限値である。
【0088】
被写体照度が∞〜ILM1_F1間では、撮像素子3の露光時間を制御することによって輝度信号レベルの調整を行い、被写体照度がILM1_F1〜ILM2_F1の間はゲインアンプ5の増幅率を調整して輝度レベルの調整を行う。
【0089】
撮像素子3の露光時間による制御と、ゲインアンプ5の増幅率の制御は連動して動作するため、フレームレートf時、システムとして加えることのできる増幅率の最大値は、撮像素子3の露光時間制御によるSHTMAX_F1とゲインアンプ5の増幅率制御によるAGCMAXの1/2を加算した増幅率(以下、適宜「M1」と称する)となり、被写体照度としては、∞〜ILM2_F1間において、輝度レベルを適切に調整することが可能である。なお被写体照度がILM2_F1より低くなると、フレームレートfではそれ以上の増幅率をかけることができなくなり、輝度レベルを適切に調整することができなくなる。
【0090】
また図2と同様に、フレームレートがf/2の場合における被写体照度に対する撮像素子3の露光時間による増幅率、ゲインアンプ5による増幅率、および合成増幅率の変化状況を図3に、またフレームレートがf/3の場合のものを図4に、フレームレートがf/4の場合のものを図5に示す。また、フレームレートがfの場合とf/4の場合における合成増幅率の変化状況を、図6に示す。
【0091】
このように、フレームレートがf/2の場合は、被写体照度が∞〜ILM2_F2間において、SHTMAX_F2+AGCMAX/2(=M2)を上限として合成増幅率を変化させ、輝度レベルを調整することが可能である。また同じくフレームレートがf/3の場合は、被写体照度が∞〜ILM2_F3間において、SHTMAX_F3+AGCMAX/2(=M3)を上限として合成増幅率を変化させ、輝度レベルを調整することが可能である。また同じくフレームレートがf/4の場合は、被写体照度が∞〜ILM3_F4間において、SHTMAX_F4+AGCMAXを上限として合成増幅率を変化させ、輝度レベルを調整することが可能である。
【0092】
各図に示す通り、フレームレートを下げることにより、ゲインアンプ5の増幅率の最大値であるAGCMAXは変化しないが、撮像素子3の露光時間の制御により得られる増幅率であるSHTMAX値は増加する。具体的には図6で確認できるように、フレームレートがf/4の場合は、フレームレートがfの場合に比べて、SHTMAX値はほぼ4倍となり、合成増幅率の調整範囲は大幅に広がっている。これに伴い、適切な輝度レベルの調整が可能となる照度範囲は、∞〜ILM2_F1から、∞〜ILM3_F4にまで拡張されることになる。そのため、被写体がより低照度であっても適切な輝度レベルの映像を得ることが可能になる。
【0093】
ただし先述したように、フレームレートを下げることは、その分単位時間あたりのフレーム数が減少することになる。そのため動画の滑らかさ等を維持するためには、フレームレートの低減は必要最小限に留めることが望まれる。このような事情から、一般的な輝度レベルの調整処理としては、概ね以下に示す流れに沿って実行されるのが通常である。
【0094】
まず初めに、フレームレートを最大値であるfとした後、撮像素子の露光時間を、映像信号の輝度レベルが所定の目標値に近づくように(例えば、目標値を中心とした許容誤差の範囲内に収まるように)制御する。しかし露光時間の制御だけでは適切な映像信号の輝度レベルが得られない場合、ゲインアンプの増幅率をも制御対象とする。
【0095】
これらの制御にて、適切な映像信号の輝度レベルが得られた場合は処理を完了するが、被写体が暗過ぎるために未だ適切な映像信号の輝度レベルが得られなかった場合、フレームレートをfから、f/2に変更し(つまり、露光時間の調整可能範囲を広めて)、再度、撮像素子の露光時間、およびゲインアンプの増幅率を制御して、適切な映像信号の輝度レベルが得られるように制御を試みる。
【0096】
この制御でも適切な映像信号の輝度レベルが得られない場合は、さらにフレームレートをf/3、f/4と順に変更しながら、撮像素子の露光時間、および、ゲインアンプの増幅率を制御し、適切な映像信号レベルが得られるように試みる。
【0097】
しかし、このような流れの処理(自動露光処理)では、極端に低照度の被写体を撮像した場合、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返すことになるため、最適な映像の輝度レベルを得るまでに時間がかかる。特に極端な低速フレームレートを使用するシステムでは、1フレームの映像を得るまでの時間が長くなるため、深刻な問題となる。
【0098】
そこで本実施例のドアホンシステムにおける輝度レベル調整処理では、自動露光処理に先立ち、予めフレームレートを決定しておくこととする。より具体的には、図7のフローチャートで示される流れに沿って実行される。
【0099】
輝度レベル調整処理が実行されるべきタイミングが到来すると、まず子機1における撮像素子3のフレームレート、露光時間、およびゲインアンプ5の増幅率が、図8に示す測定ポイント(測定条件)1に仮設定される。そしてこの仮設定された状態で、映像信号(撮像素子3に試験的に生成させたもの)の輝度レベルを測定する(ステップS11)。
【0100】
なお図8に示す測定ポイント1による映像信号の増幅率は、図9に示すように、フレームレートがfの場合において、露光時間およびゲインアンプの増幅率により調整可能な増幅率の上限(M1)とほぼ同等となっている。そのため、測定ポイント1で測定された輝度レベルが目標値以上であれば、フレームレートをfとしたまま、露光時間やゲインアンプ5の増幅率を調整することで、輝度レベルを目標値に近づけることが可能である。また同じく、測定ポイント2による映像信号の増幅率は、フレームレートがf/2の場合において、露光時間およびゲインアンプの増幅率により調整可能な増幅率の上限(M2)とほぼ同等となっており、測定ポイント3による映像信号の増幅率は、フレームレートがf/3の場合において、露光時間およびゲインアンプの増幅率により調整可能な増幅率の上限(M3)とほぼ同等となっている。
【0101】
ステップS11による測定の結果、測定された輝度レベルが所定の目標値以上(所定の許容範囲内)であれば(ステップS12のY)、フレームレートがfのままでも、輝度レベルを適切に調整できると見込まれる。そこでフレームレートをfに設定する(ステップS13)。
【0102】
しかし測定された輝度レベルが所定の目標値を下回っていれば(ステップS12のN)、フレームレートがfのままでは、輝度レベルを適切に調整できるだけの露光時間を確保することができず、フレームレートを下げる必要があると見込まれる。そこで次に、仮設定の内容を測定ポイント2に変更し、再度映像信号の輝度レベルを測定する(ステップS14)。
【0103】
その結果、測定された輝度レベルが所定の目標値以上(所定の許容範囲内)であれば(ステップS15のY)、フレームレートをf/2とすることによって、輝度レベルを適切に調整できると見込まれる。そこでフレームレートをf/2に設定する(ステップS16)。
【0104】
しかし測定された輝度レベルが所定の目標値を下回っていれば(ステップS15のN)、フレームレートをf/2としても、輝度レベルを適切に調整できるだけの露光時間を確保することができず、さらにフレームレートを下げる必要があると見込まれる。そこで次に、仮設定の内容を測定ポイント3に変更し、再度映像信号の輝度レベルを測定する(ステップS17)。
【0105】
その結果、測定された輝度レベルが所定の目標値以上(所定の許容範囲内)であれば(ステップS18のY)、フレームレートをf/3とすることによって、輝度レベルを適切に調整できると見込まれる。そこでフレームレートをf/3に設定する(ステップS19)。
【0106】
しかし測定された輝度レベルが所定の目標値を下回っていれば(ステップS18のN)、フレームレートをf/3としても、輝度レベルを適切に調整できるだけの露光時間を確保することができず、さらにフレームレートを下げる必要があると見込まれる。そこでフレームレートを、設定可能なフレームレートの下限であるf/4に設定する(ステップS20)
【0107】
以上のようにフレームレートが設定されたら、その設定されたフレームレートの下で、輝度レベルが適切となるように露光時間およびゲインアンプ5における増幅率の調整、つまり先述した自動露光処理を開始する。このように本実施例での輝度レベル調整処理では、事前にフレームレートが適切に設定されている(設定されたフレームレートで、映像信号の輝度レベルが最も高くなるように調整された場合は、少なくとも目標値以上となることが確認されている)から、フレームレートを落としては、露光時間およびゲインアンプの調整を行なうといった処理を繰り返す必要がない。
【0108】
そのため、輝度レベル調整処理を迅速に行なうことが可能となっている。なお上述のように、輝度レベル調整処理に先立ってフレームレートを設定する処理(ステップS11〜S20)を、「フレームレート設定処理」と称する。またフレームレート設定処理では、測定ポイント1から順に適正が判断されるため、フレームレートが不必要に小さく設定されてしまうことはない。
【0109】
また、上述したフレームレート設定処理では、各測定ポイントによる輝度レベルの測定結果をフレームレートの決定にのみに用いたが、測定ポイント数を増やすことにより、撮像素子3における露光時間、及びゲインアンプ5における増幅率の適正値或いは適正値に近い値を予測し、自動露光処理に要する時間を更に短縮させることも可能である。
【0110】
このようにするためには、フレームレート設定処理において、例えば図10に示す内容の各測定ポイントについて、先述の方法と同様に順に輝度レベルを測定するようにすれば良い。なお図10の測定ポイント4、6、および8は、それぞれ、図8における測定ポイント1、2、および3に相当している。
【0111】
その結果、測定ポイント1〜4の何れかにおいて、測定された輝度レベルが目標値以上となっていれば、図11に示すように、フレームレートはfに設定される。また測定ポイント5または6において、測定された輝度レベルが目標値以上となっていれば、フレームレートはf/2に設定される。また測定ポイント7または8において、測定された輝度レベルが目標値以上となっていれば、フレームレートはf/3に設定される。そして測定ポイント8においても測定された輝度レベルが目標値を下回る場合は、フレームレートはf/4に設定される。
【0112】
またその一方で、測定された輝度レベルが目標値以上となった測定ポイントに応じて、適正或いは適正に近いと予測される、露光時間による増幅率やゲインアンプによる増幅率の値(適正予測値)が図11に示す通りに判断される。例えば、測定ポイント3において測定された輝度レベルが目標値以上となっていれば、フレームレートはfに設定されるとともに、露光時間による増幅率の適正予測値はSHTMAX_F1、ゲインアンプによる増幅率の適正予測値は0と判断される。そのため後続する自動露光処理では、先ずは、露光時間による増幅率がSHTMAX_F1となるように、かつ、ゲインアンプによる増幅率が0となるようにそれぞれ設定される。
【0113】
このように、事前にフレームレートの設定だけでなく、適正予測値をも判定しておくことで、後続する自動露光処理における処理負担を軽減させることができ、処理の迅速化を図ることが可能となる。なおここでは測定ポイント数を8としたが、さらに測定ポイント数を増やすことにより、適正予測値の精度を向上させることも可能である。
【0114】
また、フレーム設定処理において各測定ポイントにおける輝度レベルを測定するにあたり、前回の輝度レベル調整処理時の結果(どの測定ポイントで測定された輝度レベルが、目標値以上となったか)を記憶しておき、この記憶されている情報を利用して、測定回数の削減を図ることも可能である。例えば、前回の輝度レベル調整処理において、図10に示す測定ポイント5にて測定された輝度レベルが目標値以上となった場合、この「測定ポイント5」を記憶しておき、今回は測定ポイント5から測定をスタートさせることとすれば、特に被写体の明暗が前回の測定時と大きく変動していない場合には、測定回数を削減できる可能性が高い。
【0115】
また、輝度レベル調整処理(フレーム設定処理および自動露光処理)を開始するタイミングとしては、種々のパターンを採用することが可能である。例えば子機1が起動し、撮像素子3で撮像した映像を表示機能付親機2に送信する直前、つまり、来客者が子機1の操作スイッチ14を操作した場合や、ドアホンシステムの使用者が、親機2の操作スイッチ23を操作してカメラ付子機1を起動させた時(ユーザによる撮像開始の指示がなされたとき)などとすることができる。また更に子機制御マイコン15内のタイマー機能(計時手段)を使用して一定時間毎(例えば、所定時刻の到来ごと)に子機1を起動させ、輝度レベル調整処理を開始させるようにしてもよい。
【0116】
また更に、例えば上述のようにタイマー機能を用いて、一定時間毎にフレーム設定処理だけを行なっておく(自動露光処理までは実行しない)ようにしてもよい。このようにすれば、実際に来客があるなどして子機1が起動された時、予め適切と判定されているフレームレートにおいて自動露光処理を行なうことによって、適切な輝度レベルが得られるまでの時間を短縮することが可能である。また、一定時間毎に行なわれるのはフレーム設定処理だけであるから、処理負担を極力削減することが可能となる。
【0117】
また被写体が暗く、フレームレートを低下させて撮像素子3の露光時間を増加させる必要があるのは、主に、周囲が暗くなる夕方から夜にかけての時間帯であることが分かっている。そのため、適切なフレームレートを判定するのは、夕方以降朝方まで(例えば、17時から7時まで)の時間帯とし、それ以外の時間帯においては被写体の明るさの仮測定は行わず、フレームレートをf(最速状態)に設定することによって、被写体が明るい昼間においては、適切なフレームレートを判定する処理を省略して消費電力を削減する一方、被写体が暗くフレームレートを低下させる必要がある夜間においては、適切なフレームレートを判定することにより、適切な輝度レベルが得られるまでの時間を短縮することができる。
【0118】
また本実施例でのドアホンシステムでは、各測定ポイントにおける輝度レベルの測定が行なわれている間は、映像信号が親機2へ送信されないようになっており、自動露光制御が開始された時点で初めて親機2へ映像信号を送信するようにしている。そのため親機2において、各測定ポイントにて生じた映像信号に基づく映像が表示されることがないため、ドアホンシステムの使用者に不快感を与えることを防止することが可能である。
【0119】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えて実施され得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、ドアホンシステム等の分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施例に係るテレビドアホンシステムの構成図である。
【図2】フレームレートがfの場合における輝度レベル調整処理での、各種増幅率ならびに合成増幅率の変化状況を示すグラフである。
【図3】フレームレートがf/2の場合における輝度レベル調整処理での、各種増幅率ならびに合成増幅率の変化状況を示すグラフである。
【図4】フレームレートがf/3の場合における輝度レベル調整処理での、各種増幅率ならびに合成増幅率の変化状況を示すグラフである。
【図5】フレームレートがf/4の場合における輝度レベル調整処理での、各種増幅率ならびに合成増幅率の変化状況を示すグラフである。
【図6】フレームレートがf、およびf/4の場合における輝度レベル調整処理での、合成増幅率の変化状況を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例に係る輝度レベル調整処理の流れ図である。
【図8】輝度調整処理における測定ポイントの内容を示す表である。
【図9】測定ポイントの内容を説明するための説明図である。
【図10】輝度調整処理における、別の測定ポイントの内容を示す表である。
【図11】図11における測定ポイントによる測定結果に関する表である。
【図12】従来の撮像装置の一例に係る構成図である。
【符号の説明】
【0122】
1 カメラ付子機
2 表示機能付親機
3 撮像素子
4 TG
5 ゲインアンプ
6 A/D変換回路
7 映像信号処理回路
8 子機制御マイコン
9 フレームメモリ
10 ビデオエンコーダ
11 多重化分離化回路
12 音声制御回路
13 スピーカ、マイク
14 操作スイッチ
15 子機制御マイコン
16 信号線
17 多重化分離化回路
18 音声制御回路
19 スピーカ、マイク
20 ビデオデコーダ
21 LCDコントローラ
22 LCDパネル
23 操作スイッチ
24 親機制御マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、
該映像信号を増幅させて出力するゲインアンプと、
前記露光時間と前記ゲインアンプにおける増幅率を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを所定の目標値に近づけるように調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、を備え、
前記輝度レベル調整処理は、
前記露光時間および前記増幅率を、予め定められた複数ポイントにわたって仮設定する第1処理と、
該仮設定のなされたポイントごとに、前記増幅された映像信号の大きさを検出する第2処理と、
該検出結果に基づいて、フレームレートを設定する第3処理と、
該設定されたフレームレートの下で、前記映像信号に係る輝度レベルが所定の目標値に近づくように、前記露光時間と前記増幅率を調整する第4処理と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記検出の結果は、
前記第4処理における、前記露光時間と前記増幅率を調整する処理にも用いられることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、
該映像信号を増幅させて出力するゲインアンプと、
前記露光時間と前記ゲインアンプにおける増幅率を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを所定の目標値に近づけるように調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、
前記輝度レベル調整処理におけるフレームレートを設定する処理(「フレームレート設定処理」とする)を行なうフレームレート設定部と、を備え、
該フレームレート設定処理は、
前記露光時間および前記増幅率を、予め定められた複数ポイントにわたって仮設定する第1処理と、
該仮設定のなされたポイントごとに、前記増幅された映像信号の大きさを検出する第2処理と、
該検出結果に基づいて、フレームレートを設定する第3処理と、
を含む処理であることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
時刻を計時する計時手段を有しており、
該計時手段を通じて所定時刻の到来が検出されたときに、前記輝度レベル調整処理または前記フレームレート設定処理が実行されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の撮像装置。
【請求項5】
フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、
該映像信号を増幅させて出力するゲインアンプと、
前記露光時間と前記ゲインアンプにおける増幅率を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、を備え、
前記輝度レベル調整処理は、
前記露光時間および前記増幅率を、予め定められた複数ポイントのうちの何れかに仮設定する第5処理と、
該仮設定のなされたポイントについて、前記増幅された映像信号の大きさを検出し、該検出結果が所定の許容範囲内に収まっているか否かを判定する第6処理と、
該検出結果が該許容範囲内に収まるまで、前記仮設定の内容を変更しながら前記第5処理と第6処理を繰り返す第7処理と、
該検出結果が該許容範囲内に収まったときの前記仮設定の内容に基づいて、前記フレームレートを設定する第8処理と、
該設定されたフレームレートの下で、前記映像信号に係る輝度レベルが所定の目標値に近づくように、前記露光時間と前記増幅率を調整する第9処理と、
を含む処理であることを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
輝度レベル調整処理において、前記検出結果が前記許容範囲内に収まったときの仮設定の内容を記憶する記憶手段を備え、
次回の輝度レベル調整処理における前記第5処理での仮設定の内容としては、該記憶手段に記憶されているものが、最初に適用されることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
フレーム毎に露光時間に応じた電荷を蓄え、該電荷に基づいて被写体の映像信号を生成する撮像素子と、
少なくとも前記露光時間を調整することで、前記映像信号に係る輝度レベルを所定の目標値に近づけるように調整する処理(「輝度レベル調整処理」とする)を行なう輝度レベル調整部と、
該輝度レベル調整処理に適用されるフレームレートを、複数種類(大きい方から、F1、F2、・・・Fnとする)のうちの何れかに設定する処理(「フレームレート設定処理」とする)を行なうフレームレート設定部と、を備え、
該フレームレート設定処理は、
前記映像信号を、フレームレートがFx(1≦x≦nとし、初めはx=1とする)のときに実現可能な最も高い輝度レベルに調整する第9処理と、
該輝度レベルが前記目標値以上となるまで、前記xを1つずつ大きくしながら、前記第9処理を繰り返す第10処理と、
該輝度レベルが該目標値以上となったときの前記Fxを、輝度レベル調整処理に適用されるフレームレートとして設定する第11処理と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかに記載の撮像装置を備えたことを特徴とするドアホンシステム。
【請求項9】
前記撮像装置を備えた子機と、
ユーザによる撮像開始の指示がなされたときに、該撮像装置から伝送される映像信号に基づいた映像表示を開始する親機と、を有し、
前記輝度レベル調整処理は、
前記撮像開始の指示がなされたときに、該映像表示の開始に先立って実行されることを特徴とする請求項8に記載のドアホンシステム。
【請求項10】
請求項3または請求項7に記載の撮像装置を備えた子機と、
該撮像装置から伝送される映像信号に基づいて映像を表示させる、映像表示装置を備えた親機と、を有する一方、
前記フレームレート設定処理より生じる映像信号に基づいた映像については、表示させないようにする表示防止手段を備えたことを特徴とするドアホンシステム。
【請求項11】
前記表示防止手段は、
前記フレームレート設定処理により生じる映像信号が、前記子機から前記親機に伝送されないようにすることで、該映像信号に基づいた映像を表示させないようにすることを特徴とする請求項10に記載のドアホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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