説明

撮像装置における光学系調整治具及び該治具を使用する光学系調整方法

【課題】イメージセンサの位置を安価で高精度に調整することができる、治具を使用する撮像装置における光学系調整方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一端側が断面円形とされる棒状部と、棒状部の一端側先端に設けられ、棒状部の軸心と平行で、かつ軸心と偏心して配置される断面円形のピン部と、を備えてなる治具を使用する光学系調整方法であって、第一の部材と第二の部材の相対的位置を調整する撮像装置における光学系調整方法において、第一の部材には調整治具における棒状部の断面円形部分が挿入される孔が形成され、かつ第二の部材にはピン部が挿入される凹部が形成されており、第一の部材と第二の部材を所定の関係に配置し、第一の部材に形成される孔に棒状部の断面円形部分を挿入し、かつ第二の部材に形成される凹部にピン部を挿入して、棒状部の断面円形部分とピン部の何れか一方を軸として回転させることで、第一の部材と第二の部材の相対的位置を調整することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置における光学系調整治具及び該治具を使用する光学系調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を使用したテレビカメラや画像読取装置(スキャナ)などの撮像装置には、一般にCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサが利用されている。これら撮像装置は、レンズを備えたレンズ筒(鏡筒)103と、該レンズを通して像を読み取るイメージセンサ105と、該イメージセンサ105を固定する取付基板104から構成され、組み立て時に、イメージセンサ105の位置の調整が行われるものである(特許文献1参照)。
【0003】
図14及び図15は、特許文献1に記載されたイメージセンサ105の位置調整方法を示す。
特許文献1に記載のものは、イメージセンサ105の取付基板104が、イメージセンサ105の主走査方向と同一の横方向(X軸方向)、及び上下方向(Y軸方向)に移動可能であり、またレンズの光軸(L軸)を中心に回転可能な構造となっている。そして、レンズの光軸に対しほぼ直角に配置された取付基板104にイメージセンサ105を固定した後、該イメージセンサ105によるパターン132の読み取りが行われ、該読み取り情報に基づいて取付基板104を移動させイメージセンサ105の位置を調整するものである。
【0004】
図14に記載の方法は、例えばオシロスコープを見ながら、ねじ106及びレンチ107を使って手作業により取付基板104を移動させイメージセンサ105の位置の調整を行うものである。
一方、図15に記載の方法は、前記取付基板104をX軸方向、Y軸方向へ移動させ、またL軸を中心として回転させるパルスモータ120〜122をそれぞれ配置するものであり、イメージセンサ105による調整パターン132の読み取り情報に基づいて当該パルスモータ120〜122を駆動制御し取付基板104を移動させ、イメージセンサ105の位置を調整するものである。
【0005】
しかしながら、図14に記載の手動による調整方法では、イメージセンサの位置調整精度は50μm程度であり、それ以上の高精度の調整は望めない。
また、図15に記載のパルスモータを利用した自動調整方法では、装置が大型化したり高価になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−56506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、イメージセンサの位置を安価で高精度に調整することができる、撮像装置における光学系調整治具及び該治具を使用する光学系調整方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、レンズの位置を安価で高精度に調整することができる、撮像装置における光学系調整治具及び該治具を使用する光学系調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、少なくとも一端側が断面円形とされる棒状部と、該棒状部の一端側先端に設けられ、該棒状部の軸心と平行で、かつ該軸心と偏心して配置される断面円形のピン部と、を備えてなる撮像装置における光学系調整治具であって、前記棒状部の断面円形部分が第一の部材に形成される孔に挿入され、かつ前記ピン部が第二の部材に形成される凹部に挿入されて、前記棒状部の断面円形部分と前記ピン部の何れか一方を軸として回転させられることで、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させることを特徴するものである。
【0009】
本発明は、前記第一の部材がイメージセンサを固定するプレートであり、前記第二の部材が前記プレートを固定する部材であることが好ましい。
【0010】
本発明は、前記第一の部材がレンズ筒を固定する部材であり、前記第二の部材が前記レンズ筒であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記調整治具を使用する撮像装置における光学系調整方法であって、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させる撮像装置における光学系調整方法において、前記第一の部材には前記調整治具における棒状部の断面円形部分が挿入される孔が形成され、かつ前記第二の部材には前記ピン部が挿入される凹部が形成されており、前記第一の部材と第二の部材を所定の位置関係に配置し、前記第一の部材に形成される孔に前記棒状部の断面円形部分を挿入し、かつ前記第二の部材に形成される凹部に前記ピン部を挿入して、前記棒状部の断面円形部分と前記ピン部の何れか一方を軸として回転させることで、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、前記第一の部材がイメージセンサを固定するプレートであり、前記第二の部材が前記プレートを固定する部材であることが好ましい。
【0013】
本発明は、前記第一の部材に形成される孔が前記調整治具における棒状部の断面円形部分の直径と略同一の寸法幅を有する長孔であり、前記第二の部材に形成される凹部が前記調整治具におけるピン部の直径と略同一の内径を有するピン穴であることが好ましい。
【0014】
本発明は、前記長孔が、前記第一の部材の長手方向両端側であって該長手方向に延びる一対の長孔と、前記第一の部材の長手方向一端側であって該長手方向に直交する方向に延びる長孔であることが好ましい。
【0015】
本発明は、前記第一の部材がレンズ筒を固定する部材であり、前記第二の部材が前記レンズ筒であることが好ましい。
【0016】
本発明は、前記第一の部材に形成される孔が前記調整治具における棒状部の断面円形部分の直径と略同一の内径を有する孔であり、前記第二の部材に形成される凹部が前記調整治具におけるピン部の直径と略同一の寸法幅を有する周方向溝であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の撮像装置における光学系調整治具によれば、コンパクトで簡単な構造にも関わらず、手作業による単純な操作で10μmオーダーの高精度な光学系の調整を行うことができる。
【0018】
本発明の撮像装置における光学系調整治具は、イメージセンサを固定するプレートと該プレートを固定する部材を相対的に移動させるものとすれば、イメージセンサの位置を安価で高精度に調整することができる。
【0019】
また、本発明の撮像装置における光学系調整治具は、レンズ筒を固定する部材と該レンズ筒を相対的に移動させるものとすれば、レンズの位置調整、即ちレンズのピント合わせを安価で高精度に行うことができる。
【0020】
本発明の撮像装置における光学系調整方法によれば、第一の部材には調整治具における棒状部の断面円形部分が挿入される孔が形成され、かつ第二の部材にはピン部が挿入される凹部が形成されており、第一の部材と第二の部材を所定の位置関係に配置し、第一の部材に形成される孔に前記棒状部の断面円形部分を挿入し、かつ第二の部材に形成される凹部に前記ピン部を挿入して、前記棒状部の断面円形部分と前記ピン部の何れか一方を軸として回転させることで、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させるものであるので、手作業による単純な操作にも関わらず第一の部材と第二の部材を10μmオーダーで相対的に移動させることができ高精度な光学系の調整を行うことができる。
【0021】
本発明の撮像装置における光学系調整方法は、イメージセンサを固定するプレートと該プレートを固定する部材を相対的に移動させるものとすれば、イメージセンサの位置を安価で高精度に調整することができる。
【0022】
本発明の撮像装置における光学系調整方法は、第一の部材に形成される孔が調整治具における棒状部の断面円形部分の直径と略同一の寸法幅を有する長孔であり、第二の部材に形成される凹部が調整治具におけるピン部の直径と略同一の内径を有するピン穴であるものとすれば、前記調整治具をピン部を軸として回転させることで第二の部材に対し第一の部材を相対的にかつ円滑に移動させることができる。
【0023】
また、本発明の撮像装置における光学系調整方法は、前記長孔が、第一の部材の長手方向両端側であって該長手方向に延びる一対の長孔と、第一の部材の長手方向一端側であって該長手方向に直交する方向に延びる長孔であるものとすれば、第二の部材に対し第一の部材を、第一の部材の長手方向及び該長手方向に直交する方向に相対的に移動させることができる。また、第一の部材の長手方向両端側であって該長手方向に延びる一対の長孔を利用して該長手方向に直交する方向に対する相対的な移動量を調整すれば、第二の部材に対する第一の部材の回転角を調整することもできる。
【0024】
本発明の撮像装置における光学系調整方法は、レンズ筒を固定する部材と該レンズ筒を相対的に移動させるものとすれば、レンズの位置調整、即ちレンズのピント合わせを安価で高精度に行うことができる。
【0025】
本発明の撮像装置における光学系調整方法は、第一の部材に形成される孔が調整治具における棒状部の断面円形部分の直径と略同一の内径を有する孔であり、第二の部材に形成される凹部が調整治具におけるピン部の直径と略同一の寸法幅を有する周方向溝であるものとすれば、前記調整治具を棒状部の断面円形部分を軸として回転させることで第一の部材に対し第二の部材を相対的に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】イメージセンサ及び該イメージセンサの回路基板を固定する金属プレートの斜視図。
【図2】金属プレートにイメージセンサ及び該イメージセンサの回路基板を固定した状態におけるイメージセンサ側からの斜視図。
【図3】金属プレートにイメージセンサ及び該イメージセンサの回路基板を固定した状態における回路基板側からの斜視図。
【図4】図3の金属プレートの右側面図。
【図5】カメラケースの内部構造の斜視図。
【図6】カメラケースに金属プレートを固定した状態の平面図。
【図7】調整棒の斜視図。
【図8】図7のA部拡大図。
【図9】カメラケースに対し金属プレートをY軸方向に移動させる様子の説明図。
【図10】カメラケースに対し金属プレートをX軸方向に移動させる様子の説明図。
【図11】カメラケースとレンズ筒並びに調整棒の関係の説明図。
【図12】ピント調整時におけるレンズ筒と調整棒との関係の説明図。
【図13】カメラケースに対しレンズの取付位置を調整する様子の説明図。
【図14】従来のイメージセンサの位置調整方法の説明図。
【図15】従来のイメージセンサの位置調整方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態で用いる、イメージセンサ及び該イメージセンサの回路基板を固定する金属プレートの斜視図を示す。
金属プレート1は、後述するイメージセンサを固定するための梁部11、該イメージセンサの回路基板を固定するための枠部12、孔部18、当該金属プレート1を後述するカメラケースに固定するためのネジ孔13a〜13d、及びカメラケースに対し当該金属プレート1を移動させイメージセンサの位置を調整するために使用する調整孔14〜16を備えるものである。
当該調整孔14〜16は、金属プレート1の梁部11の両端側に一対設けられ、当該梁部11と平行な第1の方向(x軸方向)に延びる長孔からなる第1及び第2調整孔14,15と、金属プレート1の梁部11の一端側に設けられ、前記第1の方向に直交する第2の方向(y軸方向)に延びる長孔からなる第3調整孔16からなるものである。
ここで、金属プレート1は、イメージセンサから発生する熱を放熱する機能を果たすものでもあり、材質としてはアルミとするのが好ましい。
【0028】
図2及び図3は、金属プレートにイメージセンサ及び該イメージセンサの回路基板を固定した状態であって、図2はイメージセンサを固定した側からの斜視図を、図3は回路基板を固定した側からの斜視図をそれぞれ示す。図4は、図3の右側面図を示す。
図2に示すように、イメージセンサ2は金属プレート1の一側面において梁部11に沿って当該梁部11に平行に固定される。一方、図3に示すように、回路基板3は金属プレート1の他側面において枠部12の四隅にネジ31a〜31dで固定される。図4からも明らかなように、イメージセンサ2と回路基板3は金属プレート1に対し当該金属プレート1を挟んだ状態で固定されている。
【0029】
図5は、金属プレートを固定するカメラケースの内部構造の斜視図を示す。
カメラケース4は、図5に示す左右両側に金属プレート1を固定するためのネジ孔41a〜41dを備えるものであり、該ネジ孔41a〜41dの近傍にカメラケース4に対し金属プレート1を移動させイメージセンサ2の位置を調整するために使用するピン穴42〜44を備えるものである。また、カメラケース4は、その略中央部にレンズを通した光をイメージセンサ2に導くための開口45を備えるものである。なお、前記ピン穴42〜44は有底が好ましいが、貫通したものであってもよい。
【0030】
図6は、カメラケースに金属プレートを固定した状態の平面図を示す。
図示されるように、金属プレート1に形成される前記第1乃至第3調整孔14〜16とカメラケース4に形成される前記各ピン穴42〜44とは、カメラケース4に金属プレート1を固定した場合に対応する孔同士が重なるよう配置されている。そして、前記各ピン穴42〜44の直径は、長孔とされる前記各調整孔14〜16よりも小さく形成されている。
【0031】
図7は、本実施の形態において使用する調整棒の斜視図を示す。
調整棒5は、棒状部51と、該棒状部51の先端に設けられる偏心ピン52と、棒状部51の後端に設けられる操作部53から構成されている。
図8は、図7のA部拡大図を示す。
棒状部51先端の前記偏心ピン52は、棒状部51の軸心と平行で、かつ該軸心に対し偏心した位置に設けられている。
調整棒5における前記棒状部51及び偏心ピン52は、ともに断面円形の円筒状又は円柱状に形成される。棒状部51の直径は、金属プレート1の前記各調整孔14〜16の短手方向の幅と略同じ大きさであって、棒状部51が当該各調整孔14〜16に挿入された際に各調整孔14〜16内で回転可能な大きさとされる。偏心ピン52の直径は、カメラケース4の前記各ピン穴42〜44と略同じ大きさであって、偏心ピン52が各ピン穴42〜44に挿入された際に各ピン穴42〜44内で回転可能な大きさとされる。
なお、調整棒5における棒状部51は、少なくとも偏心ピン52が設けられる一端側であって金属プレート1の前記各調整孔14〜16に挿入される部分が断面円形とされていればよい。
【0032】
本実施の形態において、カメラケースに対して金属プレートを移動させイメージセンサの位置を調整する方法について説明する。なお、ここでは、撮像装置の使用時においてイメージセンサの主走査方向と同一となる方向をX軸方向、該主走査方向と直交する方向であって副走査方向と同一となる方向をY軸方向とする。
図9は、カメラケースに対し金属プレートをY軸方向に移動させる様子の説明図を示す。また、図10は、カメラケースに対し金属プレートをX軸方向に移動させる様子の説明図を示す。
まず、図2乃至図4に示すように一側面にイメージセンサ2、他側面に該イメージセンサ2の回路基板3が固定された金属プレート1を準備する。次に、図5に示すカメラケース4の背面側における所定位置に前記金属プレート1を配置する。このとき、前記イメージセンサ2が、カメラケース4の開口45に対向するよう金属プレート1を配置する。そして、金属プレート1に形成されるネジ孔13a〜13d及びカメラケース4に形成されるネジ孔41a〜41dを利用して、当該金属プレート1をネジ17a〜17dによりカメラケース4に仮止めした後、図9及び図10に示すように、イメージセンサ2によるパターン100の読み取りにより、前記調整棒5を用いて金属プレート1をカメラケース4に対し相対的に移動させ、イメージセンサ2の位置の調整を行う。
【0033】
金属プレート1をカメラケース4に対しY軸方向に移動させる場合、図9に示すように、一対の第1及び第2調整孔14,15に調整棒5,5の棒状部51,51先端を挿入する。その際、各調整棒5,5の棒状部51,51先端に設けられる偏心ピン52,52を、前記各調整孔14,15に対応して位置するカメラケース4の各ピン穴42,43に挿入する。そして、各調整棒5,5の操作部53,53を把持し前記各ピン穴42,43に挿入した偏心ピン52,52を軸として調整棒5,5を回転操作する。この時、各調整棒5,5の各棒状部51,51が、各偏心ピン52,52を軸として偏心した状態で回転するため、前記金属プレート1は、当該各棒状部51,51が挿入される各調整孔14,15の内面においてY軸方向に力を受け移動する。
なお、金属プレート1をカメラケース4に対しY軸方向に移動させる方法としては、二本の調整棒を使用して左右同時に操作を行うこともできるし、一方ずつ、あるいは一方のみ操作を行うこともできる。また、左右における移動量を異ならせることで、イメージセンサ2の回転方向における位置を調整することもできる。
【0034】
一方、金属プレート1をカメラケース4のX軸方向に移動させる場合、図10に示すように、右側に設けられる第3調整孔16に調整棒5の棒状部51先端を挿入する。その際、調整棒5の棒状部51先端に設けられる偏心ピン52を、前記調整孔16に対応して位置するカメラケース4のピン穴44に挿入する。そして、調整棒5の操作部53を把持し前記ピン穴44に挿入した偏心ピン52を軸として調整棒5を回転操作する。この時、調整棒5の棒状部51が、偏心ピン52を軸として偏心した状態で回転するため、前記金属プレート1は、当該棒状部51が挿入される調整孔16の内側においてX軸方向に力を受け移動する。
そして、カメラケース4に対するイメージセンサ2の取付位置を調整した後は、ネジ17a〜17dを本締めし金属プレート1をカメラケース4に固定する。
なお、図示しないが、三本の調整棒を同時に使用して、金属プレート1をカメラケース4に対しX,Y両軸方向に同時に移動させイメージセンサ2の位置を調整することもできる。これにより、イメージセンサ2の位置をより高精度に調整することが可能となる。
【0035】
上記イメージセンサ2の位置の調整方法は、金属プレート1をカメラケース4に仮止めした後、調整棒5を用いて前記金属プレート1をカメラケース4に対し相対的に移動させるものであるので、例えばカメラケース4が撮像装置を配備する各種装置や機器に予め取り付けられている場合であって、該カメラケース4に対してイメージセンサ2の位置の調整を行う場合等に有効である。また、金属プレート1がカメラケース4に対し容易に移動しないため、高精度の位置調整を行うことが可能である。
【0036】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図11は、カメラケースとレンズ筒並びに調整棒の関係の説明図を示す。
レンズが装着されるレンズ筒6は、カメラケース4のレンズ装着部46に装着される。レンズ装着部46の側面には調整棒挿入孔47が形成されている。また、該調整棒挿入孔47の上下の位置にはネジ孔48a,48bが形成されており、レンズ筒6をレンズ装着部46内面に対しネジ49a,49bにより固定できるものとなっている。前記レンズ装着部46に装着されるレンズ筒6は、調整棒挿入孔47に挿入される調整棒5′によって前記レンズ装着部46内における軸方向(後述する図12及び図13におけるL軸方向)位置が調整される。
調整棒5′は、図7及び図8に示すものと同様の構造であり、棒状部51′の直径は、前記調整棒挿入孔47の内径と略同一の大きさであって、当該調整棒挿入孔47に挿入されて該挿入孔47内で回転可能な大きさとされる。
【0037】
図12は、ピント調整時におけるレンズ筒と調整棒の関係の説明図を示す。
レンズ筒6の側面には周溝61が形成されている。そして、前記調整棒5′の棒状部51′先端に設けられる偏心ピン52′の直径は、前記周溝61の溝幅と略同一の大きさであって、当該周溝61に挿入されて該周溝61内で回転可能な大きさとされている。
【0038】
ここで、本実施の形態において、カメラケースのレンズ装着部に対しレンズ筒を軸方向に移動させレンズ筒の取付位置、即ちイメージセンサに対するレンズのピントを調整する方法について説明する。
図13は、カメラケースに対しレンズの取付位置を調整する様子の説明図を示す。
まず、カメラケース4のレンズ装着部46にレンズ筒6を装着する。次に、該装着部46に形成されるネジ孔48a,48bを利用してネジ49a,49bによりレンズ筒6を該装着部46内面に仮止めした後、調整棒挿入孔47に調整棒5′の棒状部51′先端を挿入する。その際、調整棒5′の棒状部51′先端に設けられる偏心ピン52′をレンズ筒6の周溝61に挿入する。そして、調整棒5′の操作部53′を把持し前記調整棒挿入孔47に挿入した棒状部51′を軸として調整棒5′を回転操作する。この時、調整棒5′の先端に位置する偏心ピン52′が、棒状部51′を軸として偏心した状態で回転するため、前記レンズ筒6は当該偏心ピン52′が挿入される周溝61の上下の内壁面において上下方向、即ちL軸方向に力を受け移動する。
レンズ装着部46に対するレンズ筒6の取付位置を調整した後は、前記ネジ49a,49bを本締めしレンズ筒6をレンズ装着部46に固定する。
これにより、レンズの微妙なピント調整を精度良く行うことができる。
【0039】
上記レンズ筒6の取付位置の調整は、レンズ筒6を前記レンズ装着部46に仮止めした後、調整棒5′を用いて前記レンズ筒6をレンズ装着部46に対しL軸方向に移動させるものであるので、例えばカメラケース4が撮像装置を配備する各種装置や機器に予め取り付けられている場合であって、該カメラケース4に対してレンズ筒6の取付位置の調整を行う場合等に有効である。また、レンズ筒6は、カメラケース4に対し容易に移動しないため、高精度の位置調整を行うことが可能である。
【0040】
上記各実施の形態において、金属プレート1及びレンズ筒6は、それぞれカメラケース4及びカメラケース4のレンズ装着部46に対し固定することを前提として説明したが、撮像装置が配備される各種装置や機器のハウジングやカバー等、カメラケースの代替となる部材に対し固定するものであってもよい。その場合、金属プレートやレンズ筒が固定されるカメラケースや該カメラケースに形成されるレンズ装着部が、単にハウジングやカバー等の代替部材に置き換わるだけであって、調整棒の先端に設けられる偏心ピンを挿入するためのピン穴やレンズ装着部の側面に形成される調整棒挿入孔が、それら代替部材に形成されることは同様である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の撮像装置における光学系調整治具及び該治具を使用した光学系調整方法によれば、固体撮像素子を使用したテレビカメラや画像読取装置(スキャナ)などの撮像装置において、CCD等のイメージセンサの取付位置や該イメージセンサに対するレンズのピントを、簡単な操作で高精度に調整することができ、非常に利用性の高いものである。
【符号の説明】
【0042】
1 金属プレート
2 イメージセンサ
3 回路基板
4 カメラケース
5,5′ 調整棒
6 レンズ筒
11 梁部
12 枠部
13a〜13d ネジ孔
14 第1調整孔
15 第2調整孔
16 第3調整孔
17a〜17d ネジ
41a〜41d ネジ孔
42,43,44 ピン穴
45 開口
46 レンズ装着部
47 調整棒挿入孔
48a,48b ネジ孔
49a,49b ネジ
51,51′ 棒状部
52,52′ 偏心ピン
53,53′ 操作部
61 周溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端側が断面円形とされる棒状部と、
該棒状部の一端側先端に設けられ、該棒状部の軸心と平行で、かつ該軸心と偏心して配置される断面円形のピン部と、
を備えてなる撮像装置における光学系調整治具であって、
前記棒状部の断面円形部分が第一の部材に形成される孔に挿入され、かつ前記ピン部が第二の部材に形成される凹部に挿入されて、前記棒状部の断面円形部分と前記ピン部の何れか一方を軸として回転させられることで、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させることを特徴する撮像装置における光学系調整治具。
【請求項2】
前記第一の部材はイメージセンサを固定するプレートであり、前記第二の部材は前記プレートを固定する部材である請求項1記載の撮像装置における光学系調整治具。
【請求項3】
前記第一の部材はレンズ筒を固定する部材であり、前記第二の部材は前記レンズ筒である請求項1記載の撮像装置における光学系調整治具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の調整治具を使用する撮像装置における光学系調整方法であって、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させる撮像装置における光学系調整方法において、
前記第一の部材には前記調整治具における棒状部の断面円形部分が挿入される孔が形成され、かつ前記第二の部材には前記ピン部が挿入される凹部が形成されており、
前記第一の部材と第二の部材を所定の位置関係に配置し、前記第一の部材に形成される孔に前記棒状部の断面円形部分を挿入し、かつ前記第二の部材に形成される凹部に前記ピン部を挿入して、前記棒状部の断面円形部分と前記ピン部の何れか一方を軸として回転させることで、第一の部材と第二の部材を相対的に移動させることを特徴とする撮像装置における光学系調整方法。
【請求項5】
前記第一の部材はイメージセンサを固定するプレートであり、前記第二の部材は前記プレートを固定する部材である請求項4記載の撮像装置における光学系調整方法。
【請求項6】
前記第一の部材に形成される孔は前記調整治具における棒状部の断面円形部分の直径と略同一の寸法幅を有する長孔であり、前記第二の部材に形成される凹部は前記調整治具におけるピン部の直径と略同一の内径を有するピン穴である請求項4又は5記載の撮像装置における光学系調整方法。
【請求項7】
前記長孔は、前記第一の部材の長手方向両端側であって該長手方向に延びる一対の長孔と、前記第一の部材の長手方向一端側であって該長手方向に直交する方向に延びる長孔である請求項6記載の光学系調整方法。
【請求項8】
前記第一の部材はレンズ筒を固定する部材であり、前記第二の部材は前記レンズ筒である請求項4記載の撮像装置における光学系調整方法。
【請求項9】
前記第一の部材に形成される孔は前記調整治具における棒状部の断面円形部分の直径と略同一の内径を有する孔であり、前記第二の部材に形成される凹部は前記調整治具におけるピン部の直径と略同一の寸法幅を有する周方向溝である請求項4又は8記載の撮像装置における光学系調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−169964(P2011−169964A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31297(P2010−31297)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】