説明

撮像装置の除塵装置

【課題】 カメラの撮像面に付着する塵埃を除去するための除塵装置のノズル先端が撮像面に衝接することを確実に防止する。
【解決手段】 除塵装置1のハウジング筒12の正面開口内に光軸方向に移動可能に支持され、撮像面に対向配置される可動パッド16を備える。可動パッド16の除塵面161には空気吹出口163が開口され、この周囲にダンパ室162を備える。空気吹出口163から噴き出された空気は可動パッド16と撮像面323aとの間に通流し、撮像面に付着した塵埃を除去する。可動パッド16と撮像面323aとの間隙を流れる空気流のベンチュリ効果によって生じる負圧によって可動パッド16は撮像面側に移動されるが、ダンパ室162に生じる正圧により負圧が緩和され、可動パッド16が撮像面323aに衝突することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタルカメラのような撮像素子を備える撮像装置に関し、特に撮像素子の撮像面に付着した塵埃を好適に除去することを可能にした除塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラのようにCCD素子あるいはCMOS素子等の撮像素子を備えるカメラでは、撮像素子の撮像面に付着する塵埃によって撮像品質が低下してしまう。特に、デジタル一眼レフカメラのようにレンズ交換としたときに撮像素子の撮像面が外部に露呈される状態が生じる撮像装置では、外部の塵埃が撮像面に付着し易くなる。すなわち、カメラ本体に着脱可能な交換レンズを取り外したときに外部の塵埃がレンズマウント開口を通してカメラ本体内に侵入し、その後にシャッタを開いて撮像面を露呈したときにカメラ本体内に侵入していた塵埃が撮像面に付着してしまう。ここで、本願における「撮像面」とは撮像素子の撮像面を覆うように設けられる保護ガラスや各種フィルタ等の光学素子の表面を撮像面として定義する。このような撮像面に付着した塵埃を除去するために特許文献1ではレンズを取り外したカメラ本体のレンズマウントに除塵装置としての清掃装置を取着し、この清掃装置に設けたモータでファンを駆動し、得られた空気圧に基づいてノズルを通して撮像素子の撮像面に空気を吹き付け、撮像面に沿って空気流を生じさせて塵埃を除去している。同様な技術は特許文献2においても提案されている。
【特許文献1】特開2004−326095号公報
【特許文献2】特開2005−24905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような塵埃は静電力や分子間引力により撮像面に付着しているので、塵埃を除去するためには撮像面に対して比較的に高速の空気流を生じさせる必要がある。この空気流速を高めるために、特許文献1,2では清掃装置のノズルを伸縮可能にし、ノズル先端を撮像面に近接する位置まで進出させる構成がとられている。しかしながら、特許文献1,2ではノズルの進出長さを一義的に決定しているため、レンズマウントから撮像面までの距離が異なるカメラに対しては好適な除塵ができなくなる。すなわち、撮像素子の前面に意図的に光学素子を配置していないカメラや光学素子の光軸方向の厚さ寸法が異なるカメラの場合にはレンズマウントから撮像面までの距離が相違するため、清掃装置をカメラ本体に装着したときにノズル先端と撮像面との間隔が相違することになる。この場合、清掃装置をカメラ本体に装着したときにノズル先端が撮像面に衝接して撮像面を損傷するおそれがある。そのため、特許文献1,2では異なるカメラに対応できるようにノズル先端が撮像面に衝接することがないようにノズルの進出長さに所要のマージンを確保することが必要であり、その結果ノズル先端を撮像面に近接させることが難しくなり、大きな空気圧で空気を撮像面に吹き付けることができず、塵埃を除去するのに必要な空気流速が得られないという問題がある。空気流速を大きくするためには、モータやファンに大型のものを用いることも考えられるが、この場合には清掃装置が大型化するとともに製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0004】
本発明の目的は、除塵装置のノズル先端が撮像面に衝接することを確実に防止する一方で、ノズル先端を撮像面に対して可及的に近接させることを可能にし、高い空気流速を得て撮像面に付着した塵埃を効果的に除去することが可能な除塵装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、撮像装置の撮像面に付着した塵埃を除去するための除塵装置であって、撮像装置に対して着脱可能なマウント部と、マウント部を装着したときに撮像装置内に進入される筒状のハウジング部と、ハウジング部の正面開口内に光軸方向に移動可能に支持され、撮像面に対向配置される平坦な正面を有する可動パッドと、可動パッドの正面に開口されて当該正面と撮像面との間隙内に空気流を生じさせるための空気吹出口を有する空気吹出手段と、間隙内を通流された空気を排気するための排気手段とを備えており、可動パッドの正面には空気吹出口に連続する領域を凹設したダンパ室を備えることを特徴とする。また、本発明においては、可動パッドとハウジング部との間に掛装され、可動パッドを撮像面から離す方向に付勢するための弾性手段を備えることが好ましい。また、排気手段又は空気吹出手段の一方には空気流を生じさせるためのモータ及びファンを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の除塵装置によれば、空気吹出口から噴き出された空気は可動パッドと撮像面との間に通流し、撮像面に付着した塵埃を除去する。このとき、可動パッドの正面と撮像面との間隙を流れる空気流のベルヌーイ効果によって生じる負圧によって可動パッドは撮像面側に移動され、撮像面との間隙が低減され、空気流速を高いものとし、塵埃の除去効果が向上される。その一方で、空気吹出口に連続して可動パッドの正面に設けられたダンパ室において吹き出された空気による正圧が生じ、可動パッドと撮像面との間隙のほぼ全域にわたって均一な空気流速、負圧状態にし、可動パッドが撮像面に衝突することなく好適な空気流速に適した間隙を保持することができる。これにより、レンズマウントから撮像面までの光軸方向の長さが相違する種々のデジタルカメラに適用した場合でも、撮像面を損傷することなく好適な塵埃の除去が可能になる。特に、可動パッドを付勢する弾性手段の弾性力を調整し、空気流による生じる負圧とのバランスをとることで、適正な間隙寸法に設定し、好適な空気流速を発生させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
空気吹出口を可動パッドの正面の中心に設け、排気手段には可動パッドの周囲に沿ってハウジング部との間に配設された周方向間隙を備えることにより、可動パッドと撮像面との間隙においては撮像面の中心から周辺に向けて放射状の空気流を発生させ、撮像面に付着している塵埃を除去し、周辺部に向けて排除することができる。
【0008】
また、空気吹出口を可動パッドの正面の複数箇所に設けることにより、撮像面の複数箇所から空気流を発生させ、撮像面全体における空気流速の平均値を高め、塵埃の除去効果を高めることができる。
【0009】
ハウジング部に撮像面に弾接して可動パッドの周囲を封止するためのシール手段を備えることにより、空気流が撮像装置内の撮像面以外の領域に流れ込むことが防止でき、除去した塵埃が撮像装置内の他の領域に付着することが防止できる。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の除塵装置を撮像装置としてのデジタル一眼レフカメラ(以下、カメラと略称する)に適用した場合の外観斜視図であり、カメラ2に対して除塵装置1を着脱可能に構成している。また図2はカメラの垂直断面図であり、このカメラ2はカメラ本体20と、カメラ本体20の前面開口に設けたレンズマウント21に対して着脱可能な撮影レンズ(図示せず)とで構成される。前記レンズマウント21には複数の電極21aが配列される。前記カメラ本体20の上部にはレリーズボタン22,メインスイッチ23、LCD表示装置24、モードダイヤル25等が配設されている。これらについての詳細な説明は省略するが、モードダイヤル25は後述する「クリーニングモード」への設定が可能であり、この「クリーニングモード」時に撮像面の除塵を行うことが可能とされている。
【0011】
カメラ本体20内にはミラーボックス26が設けられており、このミラーボックス26内にメインミラー27が上端部の軸27aを支点にして上下に回動可能に支持されている。また、ミラーボックス26の上部にはフォーカシングスクリーン28が水平に保持されるとともに、その上側にペンタプリズム29が配設され、ペンタプリズム29の背後には接眼光学系30が配設されている。
【0012】
一方、前記カメラ本体20内のミラーボックス26の後部にはシャッタ機構31と、その背後に配置された撮像素子ユニット32が設けられている。撮像素子ユニット32は、CCD或いはCMOS素子等で構成される撮像素子321と、この撮像素子321を内装したパッケージ322と、このパッケージ322の前面を封止するとともにローパスフィルタとして機能する光学部材323とで構成されている。この光学部材323としては、保護ガラスと、これと別体のローパスフィルタとで構成される場合もある。以上の構成のカメラ2では、撮像素子ユニット32においては、撮像素子321の撮像面の直前に光学部材323が密接に近い状態で配設されているので、撮像素子321の撮像面に塵埃が直接付着することは少なく、光学部材323の表面に塵埃が付着され易い。実施例1ではこの光学部材323の表面が本発明における撮像面となり、この撮像面に付着した塵埃を除去するように機能する。したがって、以下において撮像面と称するときは略儀的に撮像素子ユニット表面ということで光学部材323の前面を意味している。
【0013】
このカメラ2では、図示を省略した撮影レンズで結像された被写体光は、図2に鎖線で示すように常態では下方に回動位置されているメインミラー27で上方に反射され、フォーカシングスクリーン28に結像される。フォーカシングスクリーン28に結像された被写体像はペンタプリズム29で反射されて正立像とされ、接眼光学系30を通して撮影者により視認される。また、レリーズ時(撮像時)にはメインミラー27は図2の実線のようにミラーボックス26内の上部に回動位置され、同図のようにシャッタ機構31が開動作したときに撮影レンズで結像される被写体光が光学部材323を通して撮像素子321の撮像面に結像され、当該撮像素子321によって撮像される。さらに、このカメラ2では、例えばモードダイヤル25を操作することによって「クリーニングモード」の設定が可能であり、この「クリーニングモード」時にはメインミラー27をレリーズ時と同様に上方に回動位置するとともに、シャッタ機構31を開いた状態に保つことが可能である。
【0014】
前記除塵装置1はカメラ本体20のレンズマウント21から撮影レンズを取り外し、当該撮影レンズに代えてレンズマウント21に装着して除塵を行う装置として構成されている。図3は除塵装置1の一部を破断した一部の分解斜視図、図4は水平方向の断面図である。除塵装置1はレンズマウント21に着脱可能なバヨネット片111を有する円環状をしたマウント板11と、このマウント板11の正面に軸方向に突出形成され、正面形状が前記シャッタ機構31の開口形状よりも一回り小さい矩形をした矩形筒状のハウジング筒12とを備えている。前記バヨネット片111は撮影レンズに通常設けられているバヨネット片と同じ構成であり、レンズマウント21に対して小角度だけ回転操作することでレンズマウント21に対して着脱することができる。また、前記マウント板11の円周一部には除塵装置1をレンズマウント21に装着したときに、レンズマウント21に配設されている電極21aの一部に接触してカメラ本体20内に装填してある電池(図示せず)の電力を取り込む電極端子が設けられているが図示は省略している。
【0015】
図2ないし図4を参照すると、前記マウント板11の中央には前記ハウジング筒12の内部に連通して短円筒状をした排気口13が開口されており、この排気口13内には小型モータを駆動源とする排気ファン131が内装されている。なお、図には表れないが小型モータは前記マウント板11に設けた電極端子に電気接続される。また、前記マウント板11の一部には小径筒状をした吸気口14が板厚方向に開口されており、この吸気口14内には空気は通流するが塵埃を除去することが可能なフィルタ141が内装されている。
【0016】
前記ハウジング筒12は前記カメラ本体20のミラーボックス26内に進入可能な外形寸法に形成され、またハウジング筒12の軸方向の長さは除塵装置1をカメラ本体20に装着したときにハウジング筒12の先端が前記撮像面(撮像素子ユニット表面、すなわち光学部材323の前面)に対して衝接することがない程度の寸法で対峙する長さに設定されている。前記ハウジング筒12の先端部にはハウジング筒12よりも正面から見て上下左右寸法が若干短い有底筒状をした矩形シリンダ15が設けられており、この矩形シリンダ15の上下左右の各外周面からそれぞれ外方に突出するように配設された複数のリブ片151によってハウジング筒12の内周面に所要の間隙をもって固定支持されている。前記矩形シリンダ15の正面開口は前記ハウジング筒12の正面開口とほぼ同じ軸方向位置(実施例1ではハウジング筒12の正面開口よりも若干寸法だけ軸方向に後退した位置)に配設されており、前記複数のリブ片151により前記矩形シリンダ15の外周面とハウジング筒12の内周面との間には軸方向に連通した微小寸法の周方向間隙151aが形成されることになる。この周方向間隙151aは矩形シリンダ15の周方向に延長されるが、前記複数のリブ片151によって複数の領域に区画されている。また、矩形シリンダ15の底面には小径の円形をした挿通穴152が開設されている。なお、前記マウント板11とハウジング筒12と排気筒13と矩形シリンダ15は樹脂成形等によって一体に形成することが可能である。
【0017】
前記矩形シリンダ15内には正面形状が矩形シリンダ15と同じ矩形をした可動パッド16が内挿されている。可動パッド16は有底浅皿状に形成され、この可動パッド16の開口側が前記矩形シリンダ15の内部に挿入されている。可動パッド16はその外底面、すなわち除塵面161が平坦に形成されるとともに、この除塵面161のほぼ中央には円形に凹設されたダンパ室162が形成される。さらに、このダンパ室162の底面には小径の円形筒状をした空気吹出口163が背面方向に向けて突出され、前記矩形シリンダ15の底面に設けた挿通穴152に挿通されている。この空気吹出口163の先端にはゴムや柔らかい樹脂で形成された可撓性のある連通管142の一端が接続されており、この連通管142の他端は前記マウント板11に設けられた吸気口14に接続されている。また、前記矩形シリンダ15内には2本の引張コイルスプリング17が内装されており、この引張コイルスプリング17の一端を矩形シリンダ15の内底面に係止し、他端を可動パッド16の内底面に係止することによって、可動パッド16を矩形シリンダ15の内底面側に向けて、すなわち、矩形シリンダ15及びハウジング筒12の正面開口から内方の奥方向に向けて付勢する習性を与えている。
【0018】
この除塵装置1を用いてカメラ本体20内の撮像面の表面の除塵を行う際には、図1に示したカメラ2のモードダイヤル25を操作して「クリーニングモード」に設定する。この「クリーニングモード」ではメインミラー27をミラーアップの状態にし、同時にシャッタ機構31を開いた状態にする。これにより、撮像素子ユニット32の前面に配設されている光学部材323の表面がミラーボックス26内に露呈される。そして、図2に示したように撮影レンズを取り外した状態のカメラ本体20のレンズマウント21内に除塵装置1のハウジング筒12を挿入して行き、マウント板11をレンズマウント21に当接させ、バヨネット片111での係合を行うことにより除塵装置1をカメラ2に装着する。このとき、図示を省略した除塵装置1の電極端子はレンズマウント21の電極21aに接触し、カメラ本体20内の内蔵電池からの電力が除塵装置1の排気ファン131のモータに給電される。
【0019】
図5は除塵装置1をカメラ2に装着した状態の概略構成を示す水平断面図であり、カメラ2に装着された除塵装置1のハウジング筒12の正面開口は開いた状態にあるシャッタ機構31を貫通して撮像素子ユニット32の撮像面323aに対して比較的に小さい間隔で対向配置される。そして、カメラ2からの電力の供給を受けて小型モータが回動し排気ファン131が駆動されると、除塵装置1ではハウジング筒12の内部の空気が排気口13から排出される。そのため、ハウジング筒12内は負圧になり、矩形シリンダ15とハウジング筒12との間の周方向間隙151aを通してハウジング筒12の正面、すなわち可動パッド16の除塵面161に対向する領域が負圧になる。これにより、外部の空気が吸気口14からフィルタ141を通して吸気され、さらに連通管142を通して可動パッド16の空気吹出口163からダンパ室162内に空気が吹き出される状態となる。吹き出された空気は可動パッド16の除塵面161と撮像素子ユニット32の撮像面323aに沿って両者間の間隙を通流し、周方向間隙151aを通してハウジング筒12内に流入し、排気口13から外部に排出されることになる。図5の矢印はこの一連の空気流を示すものである。このように空気吹出口163からダンパ室162に吹き出され、さらに可動パッド16の除塵面161と撮像面323aとの間に通流される空気は、可動パッド16の除塵面161と撮像面323aとの間隔が微小であることからベルヌーイ効果によって空気流速が高められ、この高められた空気流速によって撮像面323aに付着している塵埃を効果的に除去し、空気と共にハウジング筒12の内部に移送し、さらには排気口13を通して外部に排出することができ、撮像面323aをクリーニングすることが可能になる。
【0020】
また、このとき、前述したベンチュリ効果によって可動パッド16の除塵面161と撮像面323aとの間の空気圧が大気圧よりも低い負圧になるため、この負圧によって可動パッド16は引張コイルスプリング17のバネ力に抗して正面側、すなわち撮像面323a側に移動され、撮像面323aとの間隙がさらに低減されることになる。このとき仮にダンパ室162が設けられていないとした場合には、図6に一点鎖線Bで示す圧力分布のように、ベンチュリ効果によって生じる負圧は空気流速が高い領域、すなわち空気吹出口163が設けられた可動パッド16の除塵面161の中央領域において顕著になるため、この中央領域での負圧によって可動パッド16が勢いよく撮像面323a側に吸引移動され、当該除塵面161が撮像面323aに衝接するおそれが生じ、この衝接によって撮像面323aにダメージを受けることがある。しかしながら、この実施例1では可動パッド16の除塵面161には空気吹出口163を含む領域にダンパ室162が設けられており、このダンパ室162の領域においては前記したベンチュリ効果が生じることはなく、むしろ空気吹出口163から吹き出された空気の空気圧が撮像面323aに対しては空気圧を正圧側に引き上げる作用を呈するため、この正圧がダンパ室162の周囲領域におけるベルヌーイ効果による負圧と相殺し、結果として図6に実線Aで示すように、正圧から負圧へなだらかに変化し、可動パッド16の除塵面161と撮像面323aの狭小に保持された間隔のほぼ全域にわたって均一かつ早い空気流速を生成し、撮像面323aのほぼ全域において塵埃を好適に除去することが可能になる。なお、ダンパ室下面の撮像面323aは、空気吹出口163からの吹き出しにより清掃される。
【0021】
したがって、実施例1では除塵装置1をカメラ2に装着したときに、レンズマウント21から撮像面323aまでの光軸方向の長さが相違するカメラの場合であっても、除塵装置1を駆動したときには、可動パッド16の除塵面161と撮像面323aとの間にベンチュリ効果によって生じる負圧によって可動パッド16が自動的に突出して除塵面161が撮像面323aに対して所要の間隙で近接対峙する位置に設定されることになるので、可動パッド16の除塵面161と撮像面323aとの間隙を大きめに設計して両者の衝接による損傷を防止するように構成している場合でも、除塵装置1を駆動したときには可動パッド16の除塵面161を撮像面323aに対して一定の間隙で対峙させ、好適な空気流速を得て塵埃を確実に除去することができる。その一方で、ダンパ室162による負圧の抑制作用によって可動パッド16の除塵面161が撮像面323aに衝接することが防止でき、撮像面323aの損傷を確実に防止できる。
【0022】
なお、本発明における可動パッド16の除塵に際しての動作形態からみれば引張コイルスプリング17は必ずしも必要ではないとも考えられるが、可動パッド16がハウジング筒12の内部から脱落しないようにするとともに、可動パッド16のハウジング筒12内での位置に節度を与えるためには当該引張コイルスプリング17を設けておくことが必要である。また、可動パッド16の除塵面161に正面方向に突出する微細な突起を設け、この突起をストッパとして撮像面323aに当接させることで可動パッド16が撮像面323aに衝接することを防止する構成を採用することも考えられるが、このようにした場合でも当該ストッパが撮像面323aに当接したときに生じる衝撃によって撮像面323aに損傷を生じさせることが懸念される。実施例1では可動パッド16は撮像面323aに非接触であるためこのような問題が生じることはない。
【0023】
なお、既存のカメラには実施例1のような「クリーニングモード」が用意されていない場合があるので、実施例1の除塵装置1を既存のカメラに適用する際にはカメラ側の操作によって除塵装置を動作させることは難しい。この場合には除塵装置1に独立したスイッチを配設しておき、このスイッチにより小型モータを駆動させるようにする。このとき、カメラ2ではメインミラー26をミラーアップすると同時にシャッタ機構31を開いた状態にすればよく、例えば既存の「バルブ撮影モード」に設定すればよい。
【実施例2】
【0024】
図7は実施例2の除塵装置の断面図であり、実施例1の図5に相当する図である。この実施例2では、排気口13と吸気口14とを外部連通管17によって連通している。また、ハウジング筒12の正面開口の周縁に沿ってゴム帯や柔軟な樹脂帯からなるシール帯18を配設し、撮像素子ユニット32の撮像面323aの周囲に密接させる構成としている。実施例2では、外部連通管17によって撮像面に吹き付けられる空気は除塵装置1内で循環され、外部の空気が除塵装置1のハウジング筒12内に入り込むことがないので、撮像面323aに吹き付ける空気を清浄化する効果が高められ、撮像面323aに新たに塵埃が付着することが防止できる。また、シール帯18によって撮像面323aをカメラ本体20内の他の領域と隔絶しているので、空気流がカメラ本体20内の撮像素子ユニット32以外の領域まで通流して塵埃が当該他の領域にまで移動して付着するようなこともない。なお、このシール帯18は柔軟であるので撮像面323aに接しても、撮像面323aに損傷を生じさせるようなことはない。
【実施例3】
【0025】
図8は実施例3の除塵装置の正面図である。図8(a)では、ダンパ室162Aを可動パッド16の外形に合わせて相似型の矩形に形成している。このようにすることで、ダンパ室162Aから周方向間隙151aまで距離を均一化し、除塵面161での負圧の均一化を図ることができる。また、図8(b)では、空気吹出口163を可動パッド16の除塵面161の左右2箇所に開口し、各空気吹出口162に対応してそれぞれ円形のダンパ室162を形成している。また、空気吹出口163の間の領域には逃げ穴164を開口している。この逃げ穴164は例えば可動パッド16の除塵面161から内方に向けて連通筒を突出し、この連通筒を矩形シリンダ15を貫通させてハウジング筒12の内部にまで達する長さに設定している。この構成では、2つの空気吹出口162から吹き出された空気はそれぞれ可動パッド16の除塵面161に沿って流れた上で周囲の周方向間隙151aに流れると同時に逃げ穴164にも流れ込み、除塵面161の左右の各領域においてさらに均一な空気流速と負圧を得ることが可能になり、撮像面323aの空気流速をさらに均一化し、除塵効果を均一化することができる。
【0026】
以上の実施例では、撮像素子ユニットの前面に配設されている光学部材の表面を撮像面とし、この撮像面に付着した塵埃を除去する例を示したが、撮像素子の撮像面が直接にカメラ内に露呈される撮像装置であれば、当該撮像面に付着した塵埃を除去することが可能であることは言うまでもない。また、本発明をデジタル一眼レフカメラに適用した例を示したが、撮像面や光学部材に塵埃が付着する環境にある撮像装置であれば本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の除塵装置とカメラの外観斜視図である。
【図2】カメラの内部構造と除塵装置の縦断面図である。
【図3】除塵装置の一部を破断した一部分解斜視図である。
【図4】除塵装置の水平方向の断面図である。
【図5】除塵装置の除塵動作を説明するための概略断面図である。
【図6】除塵面における空気圧の分布を示す図である。
【図7】実施例2の図5と同様の断面図である。
【図8】実施例3の除塵装置の正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 除塵装置
2 カメラ
11 マウント板
12 ハウジング筒
13 排気口
14 吸気口
15 矩形シリンダ
16 可動パッド
17 引張コイルスプリング
161 除塵面
162 ダンパ室
163 空気吹出口
20 カメラ本体
21 レンズマウント
25 モードダイヤル
26 ミラーボックス
27 メインミラー
31 シャッタ機構
32 撮像素子ユニット
321 撮像素子
323 光学部材(フィルタ)
323a 撮像面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の撮像面に付着した塵埃を除去するための除塵装置であって、撮像装置に対して着脱可能なマウント部と、前記マウント部を装着したときに前記撮像装置内に進入される筒状のハウジング部と、前記ハウジング部の正面開口内に光軸方向に移動可能に支持され、前記撮像面に対向配置される平坦な正面を有する可動パッドと、前記可動パッドの正面に開口されて当該正面と撮像面との間隙内に空気流を生じさせるための空気吹出口を有する空気吹出手段と、前記間隙内を通流された空気を排気するための排気手段とを備え、前記可動パッドの正面には前記空気吹出口に連続する領域を凹設したダンパ室を備えることを特徴とする撮像装置の除塵装置。
【請求項2】
前記可動パッドと前記ハウジング部との間に掛装され、前記可動パッドを前記撮像面から離す方向に付勢するための弾性手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置の除塵装置。
【請求項3】
前記排気手段又は前記空気吹出手段の一方には空気流を生じさせるためのモータ及びファンを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置の除塵装置。
【請求項4】
前記空気吹出口は前記可動パッドの正面の中心に設けられ、前記排気手段は前記可動パッドの周囲に沿って前記ハウジング部との間に配設された周方向間隙を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の撮像装置の除塵装置。
【請求項5】
前記空気吹出口は前記可動パッドの正面の複数箇所に設けられる請求項1ないし3のいずれかに記載の撮像装置の除塵装置。
【請求項6】
前記ハウジング部は前記撮像面に弾接して前記可動パッドの周囲を封止するためのシール手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の撮像装置の除塵装置。
【請求項7】
前記撮像装置はレンズ交換が可能なデジタル一眼レフカメラであり、前記マウント部はレンズを装着するためのレンズマウントに着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の撮像装置の除塵装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−154127(P2008−154127A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342091(P2006−342091)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】