説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】フラッシュ非発光時におけるスミア低減を図りつつ、発光時におけるフラッシュ到達距離を延長する。
【解決手段】SW1がオンされると、制御部102は、プログラム線図の選択によって、本露光時の絞り投入輝度を切り替える。すなわち、制御部102は、本露光に用い得る露出制御プログラム線図として、発光判断部115の判断が発光要であれば発光時用の線図(B)、発光不要であれば非発光時用の線図(A)を採用する。線図(B)では、線図(A)に対して、絞り値Avが切り替わる閾値となる輝度Evが、Ev11に代えてより大きいEv14となっている。さらにSW2がオンになると、制御部102は、現在選択されている露出制御プログラム線図を用いて本露光を行い、AE処理部109により入射光量調節機構109aを制御させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
撮像素子に入射する光量を調節する絞り機構を備える撮像装置に適用される露出制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディジタルカメラ等の撮像装置での撮影は、ライブ画(測光)→AF→本露光という流れにて動作するのが一般的であるが、それらの露出設定に関しては各モードでのつながりを考慮した設定となっている。
【0003】
例えば、絞り機構の絞りの切り替え駆動には時間がかかるため、ライブ画、AF、本露光の間で使用される絞り値を同一のものにしておくことで、シーケンス間での絞り切り替えの頻度を極力削減し、タイムラグを短縮する。
【0004】
これらの撮影時の動作シーケンスに関しては、画像の記録準備または記録が指示された時から該指示が解除されるまでの間、当該指示が行われた直前にライブ表示されていた画像の撮像に用いられた絞り値を維持する手法が知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−060409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ライブ画では、スミアを低減させるために、絞り値が絞り方向に切り替わる時の輝度の閾値をなるべく低輝度側の値としたいという思想がある。一方、静止画を撮像する本露光では、フラッシュ到達距離を長めにとりたいという考えから、絞り値をなるべく開放側にしたいという思想がある。従って、上記従来技術のように、ライブ画と静止画とで同じ絞りに合わせた場合、上記両思想が相反してしまうという事態が生じていた。
【0007】
特に最近のコンパクトディジタルカメラにおいては、絞り機構としてNDフィルタで絞りを入れるタイプのものもあり、虹彩絞りと撮影追従輝度範囲を同等に保つために光量1/8前後の濃度を必要とする場合がある。コンパクトディジタルカメラはコンデンサ容量が通常少ないため、NDフィルタで絞りが入った状態だと、フル発光したとしても到達距離不足となりがちであった。
【0008】
これを、図5を用いて説明する。以降、絞り値を絞り方向に切り替えることを「絞りを投入する」とも表現する。
【0009】
従来、例えば、露出制御用のプログラム線図を用いた露光制御においては、被写界画像の輝度の一定の範囲内においては、絞り機構の絞り値を一定に保つと共に輝度が変化するにつれて露光時間を変更して露光量を調節可能にする。そして、被写界画像の輝度がある閾値Xを横切ると、絞り機構の絞り値を切り替える。例えば、被写界画像の輝度が閾値Xを上回ると絞り値を絞り方向に切り替え(絞り投入)、さらに輝度の変化に応じて露光時間を変更していく。
【0010】
上記閾値を低輝度の閾値X1、高輝度の閾値X2のうち、仮に高輝度の閾値X2に設定したとする。この場合、輝度がX1〜X2の間の値であるときは、絞り値が開放側に設定されるので、図5(a)の左側の図に示すように、スミアが大きくなってしまう。
【0011】
一方、仮に、上記閾値を低輝度の閾値X1に設定したとする。この場合、輝度がX1〜X2の間の値であるときは、絞り値が絞り側に設定されるので、図5(b)の左側の図に示すように、スミアは小さくて済む。しかし、ライブ画と静止画とで同じ絞りに合わせ、そのままの露光条件でフラッシュ撮影すると、図5(b)の右側の図に示すように、絞り過ぎによる光量落ちのため被写体アンダーの状態となる。すなわち、発光時におけるフラッシュ到達距離が短いという現象が生じる。
【0012】
このように、フラッシュ非発光時におけるスミア低減を図ることを確保する露光制御の下では、発光時におけるフラッシュ到達距離が短くなる場合が多いという問題があった。
【0013】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、フラッシュ非発光時におけるスミア低減を図りつつ、発光時におけるフラッシュ到達距離を延長することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明にかかる撮像装置は、撮像素子へと入射する光量を調節する入射光量調節機構と、本露光時に照明手段による発光を行うか否かを判断する判断手段と、被写界画像の輝度が閾値を超えない場合よりも超える場合のほうが、前記撮像素子へと入射する光量を減少させるように前記入射光量調節機構の制御を行う制御手段とを有し、前記制御手段は、本露光に際し、前記判断手段により発光を行うと判断された場合は、発光を行わないと判断された場合よりも前記閾値を高輝度側にして前記入射光量調節機構の制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる撮像装置の制御方法は、撮像素子へと入射する光量を調節する入射光量調節機構を備える撮像装置の制御方法であって、本露光時に照明手段による発光を行うか否かを判断する判断工程と、被写界画像の輝度が閾値を超えない場合よりも超える場合のほうが、前記撮像素子へと入射する光量を減少させるように前記入射光量調節機構の制御を行う制御工程とを有し、前記制御工程は、本露光に際し、前記判断工程により発光を行うと判断された場合は、発光を行わないと判断された場合よりも前記閾値を高輝度側にして前記入射光量調節機構の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フラッシュ非発光時におけるスミア低減を図りつつ、発光時におけるフラッシュ到達距離を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における露出制御処理のフローチャートである。
【図3】露出制御用のプログラム線図である。
【図4】第2の実施の形態における露出制御処理のフローチャートである。
【図5】絞りの切り替えとフラッシュ発光の有無による画像の差異を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態では、撮像装置としてディジタルカメラを例示するが、これに限られない。まず、本ディジタルカメラの構成について説明する。
【0020】
本ディジタルカメラにおいて、操作部101は、操作者が本カメラに対して各種の指示を入力するために操作するスイッチやボタン等により構成されている。操作部101の中には、電源スイッチ、シャッタスイッチや、タッチセンサ(表示装置をタッチすることで操作が可能となるもの)も含まれる。制御手段としての制御部102は、同図に示す各部の動作を制御するものであり、操作部101からの指示に応じて各部を制御する。
【0021】
CCD部103は、レンズ108a、入射光量調節機構109aを介して入射される光を受け、その光量に応じた電荷を出力するものである。A/D変換部104は、CCD部103から出力されたアナログ画像信号に対して、サンプリング、ゲイン調整、A/D変換等を行い、ディジタル画像信号として出力する。画像処理部105は、A/D変換部104から出力されたディジタル画像信号に対して各種の画像処理を行い、処理済みのディジタル画像信号を出力する。例えば、A/D変換部104から受けたディジタル画像信号を、YUV画像信号に変換して出力する。
【0022】
画像解析部106は、A/D変換部104、画像処理部105を介して画像信号を取得し、画面全体の輝度情報及び被写体の有無等を判断し、判断手段としての発光判断部115に伝える。発光判断部115は、画像解析部106から画面輝度情報、被写体情報を受け取り、発光の必要性の可否を判断する。
【0023】
露出制御プログラム線図設定部116は、制御部102による制御により、発光判断部115の判断をもとに発光(発光要)と非発光(発光不要)とで本露光時の露出制御用のプログラム線図(図3で後述)を切り替える。切り替えられたプログラム線図が、制御部102によりAE処理部109へと伝えられる。
【0024】
表示部107は、液晶画面等により構成されており、画像処理部105による処理済みの画像データに従った画像を表示する。フォーマット変換部112は、画像処理部105から出力されたディジタル画像信号(画像データ)のフォーマットをJPEG等のフォーマットに変換し、画像記録部113に出力するものである。画像記録部113は、フォーマット変換部112から受けたフォーマット変換済みの画像データを、本ディジタルカメラ内の不図示のメモリや、本ディジタルカメラに挿入されている外部メモリ等に記録する処理を行う。
【0025】
制御部102には、EF処理部110、上記の操作部101のほか、外部機器と通信可能に接続するための外部接続部114が接続されている。EF処理部110には、照明手段としてのフラッシュ部111が接続されている。
【0026】
次に、本ディジタルカメラを用いて撮像を行う場合における本ディジタルカメラの動作、処理について説明する。
【0027】
まず、本カメラの操作者が、操作部101の電源スイッチをオンにすると、制御部102はこれを検知し、本ディジタルカメラを構成する各部に電源を供給する。本ディジタルカメラを構成する各部に電源が供給されるとシャッタが開くので、CCD部103には、レンズ108a、入射光量調節機構109aを介して光が入射することになる。入射光量調節機構109aは、CCD部103に入射する光量を調節する「絞り機構」としての機能を果たす。本実施の形態では、入射光量調節機構109aは、NDフィルタで構成されるものとするが、NDフィルタではなく、虹彩絞り、あるいは丸絞りで構成してもよい。CCD部103を構成する光電変換素子(撮像素子)に蓄積された電荷は読み出され、A/D変換部104にアナログ画像信号として出力される。
【0028】
A/D変換部104は、CCD部103から出力されたアナログ画像信号に対して、サンプリング、ゲイン調整、A/D変換等を行い、ディジタル画像信号として出力する。画像処理部105は、A/D変換部104から出力されたディジタル画像信号に対して各種画像処理を行い、処理済みのディジタル画像信号を出力する。次に、画像解析部106が画像信号を受け取り、画面輝度及び被写体の有無、さらには被写体が存在する場合には、被写体領域、座標、被写体輝度、被写体色情報の取得を行う。これら取得された画像情報を用いて、発光判断部115にて、発光/非発光の判断を下す。ここで下された発光判断が露出制御プログラム線図設定部116に伝えられ、それぞれに最適な露出設定値が決定(プログラム線図が決定)される。決定されたプログラム線図は制御部102を通して、AE処理部109に伝えられて実行される。ここでの発光判断を用いた具体的な露出設定に関しては後述する。
【0029】
また、画像処理部105は、処理済みの画像データを表示部107に出力する。表示部107は、この処理済みの画像データに従った画像を表示する。画像処理部105によって出力された画像に基づいて、制御部102による制御に従って、AF処理部108が被写体にピントを合わせるべくレンズ108aを動作させる。同様に、制御部102による制御に従って、AE処理部109が、画面が最適な露出になるように入射光量調節機構109aを制御する。
【0030】
そして、制御部102は、シャッタスイッチ(図示せず)からSW1なる信号の通知(即ち、シャッタスイッチの半押しの通知)を受けていない限りは、上記処理を繰り返す。一方、制御部102が信号SW1なる信号の通知をシャッタスイッチから受けると、この時点における画像を用いてAF、AE処理を行い、撮影に最適なピント及び露出設定条件を取得する。そして、制御部102は、シャッタスイッチからSW2なる信号の通知(即ち、シャッタスイッチの全押しの通知)を待ち、途中でSW1がオフになったら上記処理に戻る。
【0031】
また、ここで発光判断部115にて発光の判断が下されていた場合は、制御部102よりEF処理部110へ調光制御を実行させる指令を出す。EF処理部110からはフラッシュ部111へプリ発光の指示を出し、プリ発光時の被写体輝度をもとに本発光量を決定し、本露光処理へと移行する。
【0032】
本露光に移行した場合、外界(被写界)からの光がレンズ108a、入射光量調節機構109aを介してCCD部103に入射する。そして、CCD部103の光電変換素子に、入射光量に応じて蓄積された電荷が、A/D変換部104にアナログ画像信号として出力される。また、A/D変換部104、画像処理部105、フォーマット変換部112、画像記録部113が、上記した各動作を行う。次に、上記における発光判断に応じた露出設定について説明する。
【0033】
図2は、本実施の形態における露出制御処理のフローチャートである。
【0034】
まず、制御部102は、初期露出値を設定し、ライブ画の露光を開始する(ステップS201)。次に、制御部102は、画像解析部106が、画像処理部105から画像信号を取得すると共に、該取得した画像信号の解析を行うよう制御する(ステップS202)。
【0035】
この画像信号の解析においては、画像解析部106は、まず、画面全体輝度及び主要被写体の有無を判断する。ここで主要被写体は、ユーザが主として撮影したいと思い、撮影画像において主としてピントを合わせる対象とする被写体を指す。例えば、ポートレート写真においては人物が該当し、風景写真においては、建物や山等が該当する。そして、主要被写体が存在する場合には、被写体領域、座標、被写体輝度、被写体色情報の取得を行う。得られた情報を元に、順光シーンや低輝度シーンや逆光シーンといったシーンの判別もここで実施しておく。制御部102は、画面全体輝度及び主要被写体の有無等の情報は、画像解析部106から発光判断部115に伝えられるよう制御する。
【0036】
次に、制御部102は、シャッタスイッチからSW1信号の通知を受けたか(SW1オンか)否かを判別する(ステップS204)。そして、制御部102は、SW1信号の通知を受けるまで、前記ステップS201〜S204の処理を繰り返す。SW1信号の通知を受けると、制御部102は、発光判断部115による発光判断、すなわち、本露光時にフラッシュ部111による発光を行うか否かを判断する処理を発光判断部115が行うよう制御する(ステップS205)。
【0037】
ここで、発光判断部115は、画像解析部106から受け取った画面輝度情報、被写体情報に基づき、発光の必要性の可否を判断する。発光必要と判断される場合とは、例えば、画面全体輝度値から外光が所定値以下であると判断された場合や、逆光シーンのため被写体輝度値から主要被写体がアンダーであると判断された場合等である。ただし、発光判断に用いる要素は限定されず、画面全体輝度値のみから判断するようにしてもよい。
【0038】
そして、制御部102は、前記ステップS205で発光判断部115により発光要、または発光不要のいずれと判断されたかを判別する(ステップS206)。そして、制御部102は、その判別の結果に応じて、発光要であればステップS207に、発光不要であればステップS208に、それぞれ処理を進める。ステップS207とステップS208とでは、本露光に用いる露出制御用のプログラム線図が異なる。これを図3を用いて説明する。
【0039】
図3は、露出制御用のプログラム線図である。図3において、上側の横軸と左側の縦軸は輝度Ev、下側の横軸は電荷蓄積時間Tv、右側の縦軸は絞り機構である入射光量調節機構109aの絞り値Avを示す。ここで、輝度Evは、被写界画像の画面全体の輝度であり、ISO感度を考慮した値であってもよい。Ev値が大きいほど、同図のより右側の斜線が対応している。電荷蓄積時間Tvは、シャッタ速度に相当し、同図の右側ほど長い。絞り値Avは、上側ほど絞り方向(入射光量が減少する方向)で、下側ほど開放方向(入射光量が増加する方向)である。
【0040】
本露光に用い得るプログラム線図としては、図3に示すように、実線で示す非発光時用の線図(A)と、破線で示す発光時用の線図(B)の2つがある。これら2つのプログラム線図は、予め露出制御プログラム線図設定部116内の記憶部に格納されているとする。直線(C)で示すライブ画での絞り投入輝度(閾値)の情報も同様に格納されているとする。
【0041】
制御部102は、図2のステップS207では発光時用の線図(B)を採用し、ステップS208では非発光時用の線図(A)を採用する。以降、絞り値Avを絞り方向に切り替えることを「絞りを投入する」とも表現する。制御部102は、このようなプログラム線図の選択によって、本露光時の絞り投入輝度(閾値)を切り替える。具体的には、ステップS208では、絞り投入輝度を初期設定のまま(低輝度側)とし、一方、ステップS207では絞り投入輝度を高輝度側にシフトする。
【0042】
図3に示すように、線図(A)では、輝度EvがEv11となるまでは絞り値Avが一定で、電荷蓄積時間Tvだけが変化していく。輝度EvがEv11を超える(横切る)と、絞り値AvがAv3からAv6へと絞り側に変化し、その後再び、輝度Evの増加に伴って絞り値Avが一定で電荷蓄積時間Tvだけが変化していく。従って、Ev11が、絞り値Avの切り替えの閾値(絞り投入輝度)となる。線図(B)でも、基本的には線図(A)と同様であるが、絞り値Avが切り替わる閾値となる輝度Evが、Ev11に代えてより大きいEv14となっている。
【0043】
線図(A)によると、直線(C)で示すライブ画での絞り投入輝度(絞り方向への切り替え輝度)とほぼ同じ輝度(Ev11)にて絞り値Avの切り替えがなされる。ライブ画においては、スミア低減の目的で入射光量を減らすために早めに絞りを投入している。静止画の絞り投入輝度をライブ画とほぼ同じにすることで、ライブ画→静止画のモード変更における絞り設定値の切り替わりを小さく、あるいはなくし、タイムラグの削減を図ったものである。なお、線図(A)での絞り投入輝度をライブ画と全く同じとしてもよい。
【0044】
続く図2のステップS209では、制御部102は、AF処理部108によりAF制御を行うように制御して、主要被写体にピントを合わせる。そして、制御部102は、シャッタスイッチからSW2信号の通知を受けたか(SW2オンか)否かを判別する(ステップS210)。SW2信号の通知を受けていない場合は、制御部102は、シャッタスイッチからSW1信号の通知を受けたか(SW1オンか)否かを判別する(ステップS212)。制御部102は、SW2がオフでSW1がオンの場合は、ステップS210、S212の処理を繰り返し、途中でSW1がオフとなると、処理を前記ステップS201に戻す。一方、SW2がオンになると、制御部102は、現在選択されているプログラム線図を用いて本露光を行う(ステップS211)。すなわち、制御部102は、前記ステップS206またはステップS207で採用されたプログラム線図をAE処理部109に伝え、それに従って、AE処理部109に入射光量調節機構109aを制御させる。
【0045】
本露光でフラッシュ発光を用いる場合に、仮に、線図(A)を採用した場合は、絞り投入が低輝度側(Ev11)で発生することから、Gno(フラッシュ部111におけるガイドナンバ)がその段数分落ちてしまう。そのため、結果的にフラッシュ光の到達距離が短くなってしまう。しかし、発光判断がされた場合に、線図(B)を採用することで、絞り値Avを高輝度側(Ev14)にシフトさせた分、フラッシュ到達距離が延長され、静止画におけるフラッシュ到達距離の不足を防止することが可能となる。
【0046】
図5を例にとって説明する。例えば、輝度Evが、Ev11からEv14までの間の値であったとする。この場合において、ライブ画については、図5(b)の左側の図に示すように、絞り値AvがAv6と設定(絞りが投入)され、スミアが低減される。この場合において、発光不要と判断されたときは、線図(A)により、本露光時の絞り値AvがAv6のままであり、被写体光量は適正となる。一方、発光要と判断されたときは、線図(B)により、本露光時の絞り値Avが開放側のAv3に設定されるので、図5(a)の右側の図に示すように、被写体光量は適正となる。
【0047】
ところで、低輝度側のシャッタを優先することはフリッカを抑制することにも効果がある。フリッカとはカメラのフレームレートと画角内の光源周波数のずれから輝度振幅が起こる現象で、シャッタスピードを同調させることでその輝度振幅を低減することができる。現状電源周波数は低周波のため、これに同期可能なシャッタは低輝度側のシャッタとなる。
【0048】
本実施の形態によれば、本露光に際し、発光要の場合は、発光不要の場合に比べ、絞り値Avが切り替わる閾値がより高輝度側に設定されたプログラム線図を用いて露光制御が行われる。これにより、フラッシュ非発光時におけるスミア低減を図りつつ、発光時におけるフラッシュ到達距離を延長することができる。特に、日中シンクロにおいて効果が大きく、フラッシュ光量が小さい機種で効果が特に大きい。
【0049】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、露出制御処理が第1の実施の形態とは異なり、図2に代えて図4を用いて説明する。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0050】
図4は、第2の実施の形態における露出制御処理のフローチャートである。
【0051】
ステップS401〜S405の処理は、図2のステップS201〜S205の処理と同様である。ステップS406では、制御部102は、AF処理部108によりAF制御を行うように制御して、主要被写体にピントを合わせ、被写体距離情報を取得する。次に、制御部102は、シャッタスイッチからSW2信号の通知を受けたか(SW2オンか)否かを判別する(ステップS407)。SW2信号の通知を受けていない場合は、制御部102は、シャッタスイッチからSW1信号の通知を受けたか(SW1オンか)否かを判別する(ステップS414)。
【0052】
制御部102は、SW2がオフでSW1がオンの場合は、ステップS407、S414の処理を繰り返し、途中でSW1がオフとなると、処理を前記ステップS401に戻す。一方、SW2がオンになると、制御部102は、前記ステップS405で発光判断部115により発光要、または発光不要のいずれと判断されたかを判別する(ステップS408)。そして、制御部102は、その判別の結果に応じて、発光要であればステップS409に、発光不要であればステップS412に、それぞれ処理を進める。
【0053】
ステップS409では、制御部102は、算出手段として、本露光時におけるフラッシュ部111による、主要被写体の調光量を適正レベルにするために必要な発光量(必要発光量)を算出する。この必要発光量は、ステップS406で取得した被写体距離情報とフラッシュ部111のGnoとから算出される。なお、発光量を算出するために用いる手法としては、被写体距離情報からの算出法に限らず、テスト発光の返り値を用いた算出法や、調光センサを用いた調光方式であってもよい。
【0054】
次に、ステップS410では、制御部102は、絞り投入輝度を初期設定のまま(低輝度側)とした場合に、フラッシュ部111を最大可能発光量で発光させたとしても、主要被写体の調光量が適正レベルにならないか否かを判別する。すなわち、仮に、非発光時用の線図(A)を採用した場合において、上記算出した必要発光量が、フラッシュ部111による最大可能発光量を超えたか否かを判別する。
【0055】
その判別の結果、制御部102は、最大可能発光量でも主要被写体の調光量が適正にならない場合は、そのままの絞り値設定ではフラッシュ到達距離が足りないと判断できるので、処理をステップS411に進める。一方、最大可能発光量にて主要被写体の調光量が適正になる場合は、そのままの絞り値設定でフラッシュ到達距離が足りるので、制御部102は、処理をステップS412に進める。
【0056】
ステップS411、S412では、制御部102は、図2のステップS207、S208と同様の処理を実行する。その後、制御部102は、ステップS413で、図2のステップS211と同様の本露光の処理を実行して、本処理を終了する。
【0057】
本実施の形態によれば、フラッシュ非発光時におけるスミア低減を図りつつ、発光時におけるフラッシュ到達距離を延長することに関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
また、本露光に際し、発光を行うと判断され、且つ、算出した必要発光量がフラッシュ部111による最大可能発光量を超えた場合には、発光不要の場合に比べ、閾値がより高輝度側に設定されたプログラム線図(B)を用いて露光制御が行われる。一方、発光を行うと判断された場合であっても、必要発光量が最大可能発光量を超えない場合は、発光不要の場合と同じく、閾値が低輝度側に設定されたプログラム線図(A)を用いて露光制御が行われる。これにより、フラッシュ到達距離が足りないような状況下にだけ、絞り値Avが切り替わる閾値を高くし、到達距離の延長を可能にすることで、状況に応じた適切な露出制御を行うことができる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0060】
上記各実施の形態では、絞り値Avが切り替わる閾値の設定変更(選択)を、2種類のプログラム線図の択一選択によって実現したが、これに限るものではない。結局、閾値を変更可能にし、被写界画像の輝度Evが上記変更した閾値を横切ることに応じて絞り値Avを切り替えるように制御すればよい。従って、例えば、算出式を設け、発光判断の判断結果(ステップS206、S408)や必要発光量の充足判定結果(ステップS410)によって、異なる閾値にて絞り値Avを切り替える制御を行うようにしてもよい。
【0061】
また、図3に例示したプログラム線図では、絞り値Avを切り替える閾値は1つであったが、2つ以上の閾値を設けてもよい。その場合においても、発光判断の結果や必要発光量の充足判定によって、それぞれの閾値が変更されるようにすればよい。
【0062】
なお、発光判断(ステップS205、S405)では、発光要否は画面輝度情報や被写体情報に基づき判断されたが、これに代えて、操作部101等を介したユーザの指示に基づいて発光可否を決定できるように構成してもよい。
【0063】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0064】
102 制御部
109 AE処理部
109a 入射光量調節機構
115 発光判断部
116 露出制御プログラム線図設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子へと入射する光量を調節する入射光量調節機構と、
本露光時に照明手段による発光を行うか否かを判断する判断手段と、
被写界画像の輝度が閾値を超えない場合よりも超える場合のほうが、前記撮像素子へと入射する光量を減少させるように前記入射光量調節機構の制御を行う制御手段とを有し、
前記制御手段は、本露光に際し、前記判断手段により発光を行うと判断された場合は、発光を行わないと判断された場合よりも前記閾値を高輝度側にして前記入射光量調節機構の制御を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、本露光に際し、露出制御用のプログラム線図を用いて露光制御を行い、前記判断手段により発光を行うと判断された場合は、発光を行わないと判断された場合よりも前記閾値が高輝度側に設定されたプログラム線図を用いて前記入射光量調節機構の制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記照明手段による必要発光量を算出する算出手段を有し、前記制御手段は、本露光に際し、前記判断手段により発光を行うと判断され且つ前記算出手段により算出された必要発光量が前記照明手段による最大可能発光量を超えた場合にのみ、発光を行わないと判断された場合よりも前記閾値を高輝度側にして前記入射光量調節機構の制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像素子へと入射する光量を調節する入射光量調節機構を備える撮像装置の制御方法であって、
本露光時に照明手段による発光を行うか否かを判断する判断工程と、
被写界画像の輝度が閾値を超えない場合よりも超える場合のほうが、前記撮像素子へと入射する光量を減少させるように前記入射光量調節機構の制御を行う制御工程とを有し、
前記制御工程は、本露光に際し、前記判断工程により発光を行うと判断された場合は、発光を行わないと判断された場合よりも前記閾値を高輝度側にして前記入射光量調節機構の制御を行うことを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−130073(P2011−130073A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285149(P2009−285149)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】