説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】メカニカルシャッターと電子シャッターを併用したシャッター機構において、レンズの違い等に起因したシャッター走査方向の露光ムラを減少させる。
【解決手段】撮像装置は、光学ユニットを通過した光を受光して電荷として蓄積する撮像素子と、撮像素子を露光させる方向及び遮光する方向に走行するメカニカルシャッターとを有し、撮像素子の領域ごとに順次、電荷蓄積を開始する走査を行う。撮像装置は、撮像素子を露光させてから電荷蓄積を開始する走査を行い前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第1の露光制御と、前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行わずに前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第2の露光制御とを、光学ユニットの状態に応じて、切り替えて実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシャッターおよび電子シャッターを併用して撮像動作を行う撮像装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一眼レフタイプのデジタルカメラには、フォーカルプレンシャッター(以下、メカニカルシャッターと称す)と電子シャッターを併用して撮像動作を行うものがある。この種のシャッター機構では、メカニカルシャッターにより後幕が構成され、後幕の走行に先行して、撮像素子の画素の電荷蓄積開始走査を行う電子シャッターを駆動することにより撮影が行われる。CMOSセンサを用いた撮像素子では、画素毎、或いは、複数画素からなる領域毎に画素のリセット(画素の蓄積電荷量をゼロにする走査)を行う。その後、画素毎或いは領域毎にそれぞれ所定の時間を経過してから信号読み出しの走査を行うことで電子シャッターを実現できる。即ち、このような撮像素子の電荷蓄積開始走査では、例えば走査ライン毎に各画素のリセットが行われ、電荷蓄積が開始されることになる。以下、このような電荷蓄積開始走査をリセット走査と称する。その後、後幕のメカニカルシャッターによって撮像素子が遮光された後、各画素の素子に蓄積された電荷を読み出す読み出し走査が行われる。従って、このリセット走査の走査パターンは、後幕のメカニカルシャッターの走行特性に合わせたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−41523号公報(段落番号0044〜0050、図1〜図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、一眼レフタイプのデジタルカメラが普及している。一眼レフタイプのデジタルカメラは一般に撮影レンズの交換が可能であり、装着された撮影レンズによりその焦点距離や、射出瞳距離(撮像面からレンズの射出瞳位置までの距離)は変化する。メカニカルシャッターと電子シャッターを併用した上述のシャッター機構を用いて撮像装置を構成する場合、電子シャッターは撮像素子面で機能するが、メカニカルシャッターは撮像素子面から光軸方向に離れて配置される。従って、撮影レンズの焦点距離、射出瞳距離等により、メカニカルシャッターによる撮像面の遮光位置は変化してしまう。このため、特にリセット走査の実行からメカニカルシャッターによる遮光までの時間が短い場合に、装着された撮影レンズによってシャッター走行方向に露出ムラが発生するという課題が生じることを見出した。
【0005】
また、撮影レンズの絞込み、マクロレンズのフォーカス等によっても、射出瞳距離が変化し、メカニカルシャッターによる撮像面の遮光位置が変化するものがある。さらに、防振レンズが装着された場合、そのシフト量に応じて、メカニカルシャッターによる撮像面の遮光位置が変化する。従って、これらの要因によっても、上述したようなシャッター走査方向の露光ムラが発生することになる。
【0006】
そこで、メカニカルシャッターと電子シャッターを併用したシャッター機構において、レンズの状況、あるいは、撮像素子の状況に起因したシャッター走査方向の露光ムラを減少させるために更なる改良が必要であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明による撮像装置は、
光学ユニットを通過した光を受光して電荷として蓄積する撮像素子と、
前記撮像素子を露光させる方向及び遮光する方向に走行するメカニカルシャッターと、
前記撮像素子の領域ごとに順次、電荷蓄積を開始する走査を行う走査手段と、
前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行い前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第1の露光制御と、前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行わずに前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第2の露光制御とを行う制御手段を有し、
前記制御手段は、前記光学ユニットの状態に応じて、前記第1の露光制御と前記第2の露光制御とを切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メカニカルシャッターと電子シャッターを併用したシャッター機構において、レンズの状況に起因したシャッター走査方向の露光ムラが減少する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電子先幕とメカ後幕の関係を示す正面図である。
【図3】撮影動作前半の射出瞳距離とメカ後幕と電子先幕の関係を示す断面図である。
【図4】撮影動作後半の射出瞳距離とメカ後幕と電子先幕の関係を示す断面図である。
【図5】異なる射出瞳距離における電子先幕の走査曲線と、メカ後幕の走行曲線の関係を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる撮像装置の撮影動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態にかかる撮像装置のカメラCPUによる走査パターン制御のための機能構成を説明する図である。
【図8】本発明の第1実施形態にかかる撮像装置の走査パターンの決定処理を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図10】撮影動作前半のレンズのシフト量とメカ後幕と電子先幕の関係を示す断面図である。
【図11】撮影動作後半のレンズのシフト量とメカ後幕と電子先幕の関係を示す断面図である。
【図12】異なるレンズのシフト量における電子先幕の走査曲線と、メカ後幕の走行曲線の関係を示す図である。
【図13】本発明の第2実施形態にかかる撮像装置の撮影動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2実施形態にかかる撮像装置のカメラCPUによる走査パターン制御のための機能構成を説明する図である。
【図15】本発明の第2実施形態にかかる撮像装置の走査パターンの決定処理を説明するフローチャートである。
【図16】本発明の第3実施形態にかかる撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第3実施形態にかかる撮像装置の撮影動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第4実施形態にかかる撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第4実施形態にかかる撮像装置のカメラCPUによる走査パターン制御のための機能構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本実施形態にかかる撮像装置の構成について、図1を用いて説明する。本実施形態の撮像装置は、カメラ本体100と、カメラ本体100に装着される光学ユニットとしての交換レンズ101とを有している。まず、カメラ本体100内の構成について説明する。
【0012】
撮像装置が非撮影状態(図1に示す状態)にある場合において、撮影レンズ114を通過した被写体光束のうちの一部の光束は、撮影光路内に位置するミラー102で反射してファインダ光学系103に導かれる。これにより、撮影者は、ファインダ光学系103を介して被写体像を観察することができる。
【0013】
レリーズ釦が押されて撮像装置が非撮影状態から撮影状態に移行すると、ミラー102が撮影光路から退避する。これにより、撮影レンズ114からの被写体光束は、CMOSセンサである撮像素子104側に向かう。ここで、撮像素子104に対して物体側(レンズ側)にはフォーカルプレンシャッター(以下、メカニカルシャッター)105が配置されている。メカニカルシャッター105は、複数の遮光羽根で構成されたメカ後幕を有する。
【0014】
カメラCPU113は、シャッター駆動回路106を介してメカニカルシャッター105の駆動を制御する。また、撮像素子104には、パルス発生回路107から走査クロック(水平駆動パルス)や所定の制御パルスが供給される。パルス発生回路107で発生した走査クロックのうち垂直走査用のクロックは、垂直駆動変調回路108によって所定のクロック周波数に変調されて、撮像素子104に入力される。この垂直駆動変調回路108によって電子先幕としてのリセット走査の走査パターンが決定される。また、パルス発生回路107は、信号処理回路109にもクロック信号を出力する。信号処理回路109は、撮像素子104から読み出された信号に対して所定の処理(色処理やガンマ補正等)を施すことにより画像データを生成する。生成された画像データは、映像表示回路110に出力されて撮影画像として表示されたり、画像記録回路111に記録されたりする。スイッチユニット112は、撮影条件等を設定するために操作されるスイッチや、撮影準備動作および撮影動作を開始させるために操作されるスイッチ(レリーズ釦)を含む。カメラCPU113は、スイッチユニット112の操作に応じた動作を行う。
【0015】
次に交換レンズ101内の構成について説明する。撮影レンズ114は、光軸方向に移動可能である。ここで、図1では、1つのレンズとして示しているが、実際にはズームレンズ等、複数のレンズユニットで構成されている。レンズCPU115は、レンズ駆動回路116を介して、撮影レンズ114の駆動を制御する。また、レンズCPU115は、絞り駆動回路117を介して絞り駆動機構117aを駆動し、撮影動作時の被写体輝度に応じた絞りの制御を行う。ズーム駆動機構118を操作(本実施形態では手動操作)することによりズーム位置が決定される。決定されたズーム位置はズーム位置検出回路119により検出され、レンズCPU115に送られる。レンズCPU115は、交換レンズ101側の通信接点120およびカメラ本体100側の通信接点121を介して、カメラ本体100内のカメラCPU113と通信可能となっている。レンズCPU115は、当該交換レンズ101の種類や、焦点距離、射出瞳距離、ズーム位置等をカメラCPU113に通知する。走査パターン保持部150は、後述する電子先幕の走査パターン(リセットラインの動作パターン)を複数種類保持する。
【0016】
本実施形態の撮像装置は、一般的なメカ先幕に代えて電子シャッター(電子先幕)を採用し、電子先幕とメカ後幕を用いて本撮影を行う構成となっている。
【0017】
図2は、撮像素子およびメカ後幕をレンズ側から光軸方向に沿って観察した様子を示す図である。図2はレリーズ釦の押下により撮影が開始された後の、電子先幕のリセット走査およびメカ後幕のシャッター走行が途中にあるときの状態を示している。矢印1は、電子先幕のリセット走査の走査方向(電子先幕の走行方向)と、メカ後幕の走行方向を示す。なお、撮影動作で電子先幕のリセット走査を行う場合、撮影レンズ114を介して撮像素子104の撮像面で結像した被写体像は上下が反転する。そのため、図2のように撮像面の下側から上側に向かってリセット走査が行われると、画像上部から画像下部へリセット走査及びシャッター走行が行われることになる。
【0018】
図2において、2は、撮像素子104の撮像面を示している。3は、メカニカルシャッター105のメカ後幕である。図2では、メカ後幕3が撮像面2の一部の領域を遮光している状態が示されている。4は、撮像素子104におけるリセット走査を行っているライン(リセットライン)を示す。リセット走査はリセットライン4上の画素の蓄積電荷量をゼロにするものであり、リセットライン4は電子先幕の先端に相当する。
【0019】
リセットライン4とメカ後幕3の先端部5との間のスリットによって形成される領域6は、撮像素子104において露光による電荷蓄積が行われている領域(電荷蓄積領域)である。電荷蓄積領域は電子先幕とメカ後幕の走行に従って、矢印1の方向へ移動していくことになる。撮像素子104内の画素において、リセットライン4が通過してから、すなわち、リセット動作が開始されてから、メカ後幕3によって遮光状態となるまでの時間は、当該画素の露光による電荷蓄積時間となる。リセットライン4が矢印1の方向へ走行して各ラインの電荷蓄積が開始されるので、電荷蓄積の開始タイミングは撮像素子104のライン毎で異なる。即ち、撮像面2のうち最も下に位置するラインで電荷蓄積動作が最も早く開始され、最も上に位置するラインで電荷蓄積動作が最も遅く開始される。
【0020】
撮像面2の下部から上部へ向かうリセットライン4の移動は、垂直駆動変調回路108により制御される。このリセットライン4の移動は図5の(A)、(B)で後述するように制御され、このリセットライン4の移動パターンを走査パターンと称する。この走査パターンは、撮像素子の領域(ライン)別にリセット走査が行われるタイミングを示したものということができる。走査パターン保持部150にはこのような走査パターンが複数保持されている。カメラCPU113は、これらのうちの一つを選択し、選択した走査パターンに従ってリセットライン4が移動するように垂直変調回路108を制御する。詳細は後述する。
【0021】
図3、図4は撮影レンズとメカニカルシャッター、撮像素子の関係を示す断面図である。図3、図4において、レンズ114aは焦点距離が長く、射出瞳距離が長い状態での撮影レンズを示し、レンズ114bは焦点距離が短く、射出瞳距離が短い状態での撮影レンズを示している。また、7はシャッター地板、8はシャッター羽根押さえである。また、114a'、114b'はそれぞれレンズ114a、114bの瞳位置(射出瞳位置)を示している。
【0022】
図3は撮影動作におけるシャッターの開き始めの状態を示している。スリット幅Aは、射出瞳距離の長いレンズ114aの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。また、スリット幅Bは、射出瞳距離が短いレンズ114bの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。
【0023】
図3のタイミングでは、スリット幅Bの方がスリット幅Aよりも大きい。よって、電子先幕及びメカ後幕を同じ条件で駆動する場合、スリット幅Bに示される領域において、レンズ114bを用いた場合の露光量はレンズ114aを用いた場合の露光量より大きくなる。従って、レンズ114aで適正露光が得られるように電子先幕のリセット走査の走査パターンが設定されていた場合、シャッターの開き出しにおいては、レンズ114bで撮影されたとき、露出がオーバーになってしまうことになる。
【0024】
また、図4は撮影動作後半(撮影終了間近)の状態を示している。スリット幅A'は、焦点距離が長く、射出瞳距離の長いレンズ114aの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。また、スリット幅B'は、焦点距離が短く、射出瞳距離が短いレンズ114bの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。
【0025】
図4に示されるタイミングでは、図3に示したシャッターの開き始めの状態とは逆に、スリット幅B'の方がスリット幅A'よりも小さい。よって、電子先幕及びメカ後幕を同じ条件で駆動する場合、スリット幅A'に示される領域において、レンズ114aを用いた場合の露光量はレンズ114bを用いた場合の露光量より大きくなる。そのため、レンズ114aで適正露光が得られるように電子先幕のリセット走査の走査パターンが設定されていた場合、レンズ114bで撮影されたとき、露出がアンダーになってしまう。以上のような結果、画像の上部と下部とに露光ムラ(所謂、上下方向の露光ムラ)が発生してしまう。
【0026】
図5(A)、(B)は、シャッター制御における電子先幕のリセット走査の走査パターンとメカ後幕の走行パターンとの関係を示す図である。図5(A)、(B)において、横軸は時間、縦軸は撮像素子上の下から上への距離(位置)をあらわしている。図5(A)において、12はメカ後幕の走行カーブを表し、走行開始から徐々に速度が上がる状態を表している。11は電子先幕のリセット走査の走査カーブを表す。走査カーブ11と走行カーブ12の時間方向の距離が撮像素子の各ラインの露光時間を表す。図5(A)では、撮像素子の下から上に渡ってほぼ同じ露光時間となっている。撮影レンズの焦点距離と射出瞳距離が十分長いとき(例えば500mm以上のとき)は、メカ後幕の走行カーブとほぼ同じ形状の走査カーブで適正な露光が得られる。
【0027】
しかし、前述したように焦点距離が短く、射出瞳距離が短いレンズを用いた場合には、射出瞳距離が長いレンズを用いた場合に比べて、レンズを通過した光線の撮像素子への入射角度が光軸に対して大きな角度となり得る。そのため、図5(A)に示すようなシャッター制御では、撮像面下部(=画像の上部)において露出がオーバーとなり、撮像面上部(=画像の下部)において露出がアンダーとなる。そのため、撮像面下部で露光時間を短くし、撮像面上部で露光時間を長くするように、電子先幕の走査カーブを調整する。即ち、図5(B)に示すように走査カーブ11を11'に示す走査カーブに補正することが必要となる。
【0028】
以上のような補正処理について図6のフローチャートを参照して、カメラの動作を追いながら説明する。なお、図6に示す処理はカメラCPU113が主体となって実行される処理である。
【0029】
スイッチユニット112内のレリーズ釦の第1ストローク(所謂、半押し状態)が検出される(SW1ONの状態)と処理はステップS101からステップS102へ進む。ステップS102において、カメラCPU113は装着された交換レンズ101の焦点距離、射出瞳距離等のレンズ情報をレンズCPU115から取得する。次に、装着された交換レンズ101がズームレンズの場合は、ステップS103からステップS104へ進み、レンズCPU115よりズーム位置情報を取得する。なお、交換レンズ101のレンズCPU115は、当該レンズの焦点位置、射出瞳距離等のレンズ情報や、ズーム位置検出回路119で検出されたズーム位置に基づいて生成したズーム位置情報をカメラCPU113の要求に応じて通知する。
【0030】
次いで、ステップS105において、不図示の測光センサからの出力とISO感度設定等の情報により、レンズの絞りを決定する。次に、ステップS106に進み、不図示の測距系によって被写体距離情報が取得され、撮影レンズのフォーカス位置が決定される。そして、ステップS107において、被写体輝度と絞り、ISO感度設定等によりシャッター速度が決定される。次のステップS108では、上記の交換レンズ101の焦点距離、射出瞳距離、ズーム位置、絞り値、フォーカス位置等に基づき、電子先幕の走査カーブパターンが決定される。ここで、カメラCPU113は、垂直駆動変調回路108の設定を、例えば、図5(B)の走査カーブ11'のように変更する。この走査カーブ11'は、焦点距離が短く、射出瞳距離が短いレンズの場合に適切なものである。走査カーブ11'は、メカ後幕の走行カーブ12とほぼ等しい動作を示す走査カーブ11に対して、電子先幕のリセット走査の開始タイミングを遅らせ、かつ、走査終了タイミングを早めたものである。
【0031】
以下、ステップS108の処理を、図7、図8を参照して更に詳細に説明する。図7は本実施形態による電子先幕(リセット走査)の走査パターン制御に関する構成を示すブロック図である。また、図8は走査パターンの設定処理(ステップS108)を表すフローチャートである。
【0032】
カメラCPU113は、情報収集部113a、走査パターン設定部113b、垂直駆動変調回路制御部113cとして機能する。情報収集部113aは、射出瞳距離に関連する情報を収集し、これを走査パターン設定部113bに渡す(ステップS201)。即ち、情報収集部113aは、ステップS102〜S104で取得された情報や、ステップS105〜S107で設定された情報のうち、射出瞳距離の判定に用いる情報を取得する。走査パターン設定部113bは情報収集部113aが取得した情報に基づいて電子先幕の走査パターンを決定する(ステップS202〜S205)。
【0033】
まず、ステップS202において、シャッタースピードが所定値よりも遅い(シャッター秒時が所定値より長い)、あるいは、交換レンズ101がズームレンズではない、のいずれかを満たしているか否を判定する。そしてこの条件を満たしている場合はステップS205へ進み、標準の走査パターンを適用すべき走査パターンに決定する。本実施形態では、標準の走査パターンとして、例えば、図5(A)の走査カーブ11のようにメカ後幕とカーブ形状がほぼ同じもの(撮影開始から終了まで撮像素子の各ラインの露光時間がほぼ同じ)を採用する。
【0034】
撮影レンズの焦点距離、射出瞳距離によって発生する露出ムラは、前述したように高速秒時でシャッターのスリット幅が狭いときに、特に露出ムラが大きく発生する。よって、本実施形態では、シャッター秒時が長く(例えば1/8秒以下)、露出ムラが発生しても十分に無視できるシャッター秒時の範囲では、電子先幕のリセット走査の走査パターンの補正を行わないようにしているのである。もちろんこの構成はオプションであり、ステップS202,S205は省略されてもよい。
【0035】
一方、交換レンズ101がズームレンズであって、かつ、シャッタースピードが所定値以上(シャッター秒時が所定値以下)の場合、処理はステップS202からステップS203へ進む。そして、走査パターン設定部113bはステップS201で取得した情報から射出瞳距離を決定する。そして、ステップS204において、決定した射出瞳距離に基づいて採用すべき走査パターンを決定する。これは言い換えれば、メカニカルシャッター105と撮像素子104間の距離に対する撮影レンズ114の射出瞳位置とメカニカルシャッター105間の距離の比に応じて、採用すべき走査パターンを決定していることになる。本実施形態ではメカニカルシャッター105と撮像素子104の距離が固定されているため、これらを求めずとも、射出瞳距離に関する情報から走査パターンを決定できる。
【0036】
なお、本実施形態では、予め複数の走査パターンが走査パターン保持部150に保持されている。走査パターン設定部113bは情報収集部113aから取得した情報に基づいて決定した射出瞳距離に基づいて適用すべき走査パターンを走査パターン保持部150から選択する。例えば、走査パターン保持部150に、露出ムラを許容範囲に抑えるための走査パターンを射出瞳距離に対応付けて登録しておく。そして、走査パターン設定部113bはステップS203で決定した射出瞳距離に従って対応する走査パターンを走査パターン保持部150から読み出し、適用する走査パターンを決定する。具体的には、例えば、射出瞳距離が短いほど撮像面下部では露光時間を短く、撮像面上部では露光時間を長く設定した走査パターンが選択される。このように、例えばシャッター秒時が同じ場合であっても、射出瞳距離が異なれば走査パターン設定部113bが設定する走査パターンが異なる。
【0037】
図6に戻って、以上のようにして電子先幕のリセット走査の走査パターンが決定された後、レリーズ釦の第2ストローク即ち全押し状態(SW2ON)が検出されると、ステップS110からステップS111へ進み、撮影動作を実行する。まず、ステップS111において、ミラー102をアップする。そして、ステップS112において、ステップS108で決定された走査カーブによる電子先幕の駆動を開始する。すなわち、垂直駆動変調回路113cが、走査パターン設定部113bによって決定された走査パターンに従ってリセット走査を実行するべく、垂直駆動変調回路108を制御する。そして、ステップS113においてメカ後幕を駆動制御する。
【0038】
例えば、交換レンズ101の撮影レンズ114が、焦点距離が短く、射出瞳距離が短いレンズの場合、図5(B)の走査カーブ11'が選択され、この走査パターンに従った電子先幕の駆動(リセット走査)が実行される。また、メカ後幕については走行カーブ12に従った走行が実行される。こうして、撮像素子上で電荷蓄積動作が順次行われ、撮影動作が完了する。最後に、ステップS114において、ミラー102のダウンとシャッターチャージが行われて撮影の一連のシーケンスが終了する。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、撮影レンズの情報により、電子先幕の走査パターンを切り替えることにより、露出ムラの低減された適正画像が撮影可能となる。
【0040】
なお、ステップS203における射出瞳距離の決定は、例えば、装着されている交換レンズ101のレンズCPU115から取得されたレンズ焦点距離により行うことができる。また、特に明示的に射出瞳距離を決定する必要はなく、例えばレンズ焦点距離をそのまま用いて走査パターンを切り替えるようにしてもよい。
【0041】
走査パターンの切替(或いは射出瞳距離の決定)に利用可能な情報の例としては以下のものが挙げられる。なお、本実施形態では、走査パターンの決定に用いるべく取得されるこれらの情報(射出瞳距離そのものの情報を含む)を総称して射出瞳距離に関する情報ということにする。射出瞳距離に関する情報としては例えば以下のものが挙げられる。
【0042】
例えば、マクロレンズ等フォーカス時の繰り出し量の大きいレンズ等では、その繰り出し量によって射出瞳距離が変化する。従って、フォーカス時の繰り出し量といったようなフォーカス情報に従って電子先幕のリセット走査の走査パターンを変更するように構成してもよい。
【0043】
また、開放絞りの大きい(例えばF1.2)レンズなどでは、絞りの開口径を大きくするほど、射出瞳距離が短いレンズと同様の露光ムラが生じる。よって、上述のメカニカルシャッター105を用いるのであれば、絞りの開口径が大きくなるほど、撮像面下部ではリセット走査からメカ後膜が通過するまでの時間を短くし、撮像面上部では長くすればよい。さらに、一般的には、ズームレンズの焦点距離を短くすれば射出瞳距離も短くなるので、ズームレンズの焦点距離が短くなるほど、撮像面下部ではリセット走査からメカ後膜が通過するまでの時間を短くし、撮像面上部では長くすればよい。ただし、レンズの種類によってはズームレンズの焦点距離を短くすると反対に射出瞳距離が長くなることもあるので、レンズの種類に応じて適宜走査パターンを選択する必要がある。
【0044】
またさらに、電子先幕のリセット走査の走査パターンに関しては、露出ムラの許容範囲で、各レンズをグループ分けし、そのグループごとに電子先幕のリセット走査の走査パターンを変更しても良い。この場合、レンズの種別に応じて走査パターンが決定されることになる。
【0045】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態にかかる撮像装置の構成について、図9を用いて説明する。第2実施形態の撮像装置は、第1実施形態(図1)に示した撮像装置に対して、交換レンズ201がシフト可能な撮影レンズ214、レンズシフト機構218およびシフト位置検出回路219を備えている点が異なる。
【0046】
撮影レンズ214は、合焦のために光軸方向に移動可能となっており、更に後述するように光軸に対して横切る(直交する)方向に平行移動が可能なシフト機構を有し、所謂アオリ撮影が可能なレンズである。レンズシフト機構218を操作することにより撮影レンズ214のシフト位置が決定される。決定されたシフト位置はシフト位置検出回路219により検出され、レンズCPU115に送られる。
【0047】
図10、図11は本実施形態における撮影レンズとメカニカルシャッター、撮像素子の関係を示す断面図である。図10、図11において、実線で示したレンズ214aはシフトをさせずに基準光軸位置にある(シフト量がゼロである)レンズを示している。破線で示したレンズ214bはメカニカルシャッターの走行方向と同じ方向に基準光軸位置からシフト量yだけシフトした位置にあるレンズを示している。また、7はシャッター地板、8はシャッター羽根押さえである。
【0048】
図10は撮影動作におけるシャッターの開き始めの状態を示している。スリット幅Cは、シフト量がゼロであるレンズ214aの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。また、スリット幅Dは、シフト量がyであるレンズ214bの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。
【0049】
図10のタイミングでは、スリット幅Dの方がスリット幅Cよりも大きい。よって、電子先幕及びメカ後幕を同じ条件で駆動する場合、スリット幅Dに示される領域において、レンズ214bの位置にある場合の露光量はレンズ214aの位置にある場合の露光量より大きくなる。従って、レンズ214aで適正露光が得られるように電子先幕のリセット走査の走査パターンが設定されていた場合、シャッターの開き出しにおいては、レンズ214bで撮影されたとき、露出がオーバーになってしまうことになる。
【0050】
また、図11は撮影動作後半(撮影終了間近)の状態を示している。スリット幅C’は、シフト量がゼロであるレンズ214aの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。また、スリット幅D’は、シフト量がyであるレンズ214bの光束がメカ後幕3によって遮光されるラインとリセットライン4とによって形成される領域の幅を示している。
【0051】
図11に示されるタイミングでは、図10に示したシャッターの開き始めの状態と同様に、スリット幅D’の方がスリット幅C’よりも大きい。よって、電子先幕及びメカ後幕を同じ条件で駆動する場合、スリット幅D’に示される領域において、レンズ214bの位置にある場合の露光量はレンズ214aの位置にある場合の露光量より大きくなる。従って、レンズ214aで適正露光が得られるように電子先幕のリセット走査の走査パターンが設定されていた場合、レンズ214bで撮影されたとき、露出がオーバーになってしまうことになる。また、シャッターの開き始めから開き終わりまでの間で、露出オーバーになる量は一定ではなく、変化しているため、その結果、画像の上部と下部とに露光ムラ(所謂、上下方向の露光ムラ)が発生してしまう。
【0052】
図12(A)、(B)は、シャッター制御における電子先幕のリセット走査の走査パターンとメカ後幕の走行パターンとの関係を示す図である。図12(A)、(B)において、横軸は時間、縦軸は撮像素子上での下から上への距離をあらわしている。尚、図12(A)は図5(A)と同じものをあらわしている。
【0053】
前述したようにメカニカルシャッターの走行方向と同方向にシフト量yだけシフトした位置にあるレンズの場合には、露出がオーバーになる。具体的には、図12(A)に示すようなシャッター制御では、特に撮像面下部(=画像の上部)において露出がオーバーとなり、撮像面上部(=画像の下部)においても少量の露出オーバーとなる。そのため、撮像面下部で露光時間を多めに短くし、撮像面上部で露光時間を少なめに短くするように、電子先幕の走査カーブを調整する。即ち、図12(B)に示すように走査カーブ11を11”に示す走査カーブに補正することが必要となる。
【0054】
又、上述とは逆に、メカニカルシャッターの走行方向と逆方向に光軸がシフトした位置にあるレンズの場合では、シフト量無しの場合での電子先幕のリセット走査の走査パターンを設定すると、露出がアンダーになる。従って、撮像面下部で露光時間を少なめに長くし、撮像面上部で露光時間を多めに長くするように、電子先幕の走査カーブを調整することになる。
【0055】
以上のような補正処理について図13のフローチャートを参照して、カメラの動作を追いながら説明する。なお、図13に示す処理はカメラCPU113が主体となって実行される処理である。
【0056】
図13のフローチャートは、図6のフローチャートのステップS103、S104およびS108を、ステップS303、S304およびS308に置き換えたものである。ここでは、これらステップS303、S304およびS308について説明する。
【0057】
ステップS102からステップS303に進むと、装着された交換レンズ201がシフトレンズか否かを判定する。交換レンズ201がシフトレンズである場合は、ステップS303からステップS304へ進み、レンズCPU115よりシフト位置情報を取得する。なお、交換レンズ201のレンズCPU115は、当該レンズの焦点位置等のレンズ情報や、シフト位置検出回路219で検出されたレンズのシフト位置に基づいて生成した情報をカメラCPU113の要求に応じて通知する。そしてステップS105に進む。
【0058】
また、ステップS107からステップS308に進むと、上記の交換レンズ201の種類、焦点距離、レンズのシフト位置等に基づき、電子先幕の走査カーブパターンが決定される。ここで、カメラCPU113は、垂直駆動変調回路108の設定を、例えば、図12(B)の走査カーブ11”のように変更する。この走査カーブ11”は、メカニカルシャッターの走行方向と同じ方向に光軸がシフトしたレンズに対して適切なものである。走査カーブ11”は、メカ後幕の走行カーブ12とほぼ等しい動作を示す走査カーブ11に対して、電子先幕のリセット走査の開始タイミングを遅らせ、かつ、走査終了タイミングも開始タイミングの遅延時間より少量分遅らせたものである。
【0059】
以上、第2実施形態ではアオリ撮影可能なレンズで特に光学軸が撮像面に対して平行に移動可能なシフト光学系を有する撮影レンズの場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、撮影時に手振れによるブレ画像が撮影されることを防止するためにレンズ群のうち少なくとも一部をシフトする防振レンズであっても上記と同様の処理を適用できる。また、アオリ撮影可能なレンズで光学軸が撮像面に対して傾倒可能なティルト機構を有する撮影レンズであっても、「シフト」を「ティルト」に置き換えて同様の構成を説明できる。
【0060】
以下、ステップS308の処理を、図14、図15を参照して更に詳細に説明する。図14は本実施形態による電子先幕(リセット走査)の走査パターン制御に関する構成を示すブロック図である。また、図15は走査パターンの設定処理(ステップS308)を表すフローチャートである。
【0061】
カメラCPU113の情報収集部113aは、アオリ撮影可能なレンズにおいては、レンズのシフト位置あるいは、ティルト角度、更に手振れ防止の効果を発揮するレンズにおいては、レンズ群の一部であるシフト光学系のシフト位置に関連する情報を収集する。そして、これを走査パターン設定部113bに渡す(ステップS401)。走査パターン設定部113bは情報収集部113aが取得した情報に基づいて電子先幕の走査パターンを決定する(ステップS402〜S405)。
【0062】
まず、ステップS402において、シャッタースピードが所定値よりも遅い(シャッター秒時が所定値より長い)、あるいは、シフト/ティルトレンズではない、のいずれかを満たしているか否かを判定する。この条件を満たしている場合はステップS405へ進み、標準の走査パターンを適用すべき走査パターンに決定する。本実施形態では、標準の走査パターンとして、例えば、図12(A)の走査カーブ11のようにメカ後幕とカーブ形状がほぼ同じもの(撮影開始から終了まで撮像素子の各ラインの露光時間がほぼ同じ)を採用する。
【0063】
撮影レンズのシフト位置あるいは、ティルト方向とティルト量によって発生する露出ムラは、前述したように高速秒時でシャッターのスリット幅が狭いときに、特に露出ムラが大きく発生する。よって、本実施形態でも、第1実施形態と同様にシャッター秒時が長く(例えば1/8秒以下)、露出ムラが発生しても十分に無視できるシャッター秒時の範囲では、電子先幕のリセット走査パターンの補正を行わないようにしている。もちろんこの構成はオプションであり、ステップS402,S405は省略されてもよい。
【0064】
一方、交換レンズ201がシフト/ティルトレンズであって、かつ、シャッタースピードが所定値以上(シャッター秒時が所定値以下)である場合、処理はステップS402からステップS403へ進む。そして、走査パターン設定部113bはステップS401で取得した情報からシフト位置(あるいはティルト角度)を決定する。そして、ステップS404において、決定したシフト位置(あるいはティルト角度)に基づいて採用すべき走査パターンを決定する。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、撮影レンズの情報により、電子先幕の走査パターンを切り替えることにより、露出ムラの低減された適正画像が撮影可能となる。
【0066】
なお、ステップS403におけるシフト位置(あるいはティルト角度)の決定は、例えば、装着されている交換レンズ201のレンズCPU115から取得されたシフト位置情報により行うことができる。
【0067】
走査パターンの切替に利用可能な情報の例として、本実施形態では、主にアオリ撮影可能なレンズで特に光学軸が平行に移動可能なシフト光学系を有する撮影レンズの場合について説明した。これは、アオリ撮影可能なレンズで光学軸が傾倒可能なティルト機構を有する撮影レンズであっても同様であることは上述したとおりである。
【0068】
又、他にも、撮影時に手振れによるブレ画像が撮影されることを防止するため、レンズ群のうち少なくとも一部をシフトする防振レンズに適用することが考えられる。
【0069】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態にかかる撮像装置の構成について、図16を用いて説明する。第3実施形態の撮像装置は、第2実施形態(図9)に示した撮像装置に対して、それぞれが複数の遮光羽根で構成され、互いに独立して動くメカ先幕とメカ後幕を有するメカニカルシャッター305を備えている点が異なる。尚、このようなメカニカルシャッター305は周知であるので、その構成の詳細な説明は省略する。
【0070】
第3実施形態での補正処理について、図17のフローチャートを参照して、カメラの動作を追いながら説明する。なお、図13に示す処理に対して、一部変更が加えられたフローであるため、以下では変更部分のS511〜S517の箇所について説明する。
【0071】
ステップS304にてレンズCPU115よりシフト位置情報を取得すると、ステップS504にてそのシフト量が所定値以上であるか否かを判定する。シフト量が所定値未満の場合は、電子シャッターを先幕として、メカニカルシャッターを後幕として動作させるために、ステップS105へ進む。反対に、シフト量が所定値以上の場合は、メカニカルシャッターを先幕および後幕として動作させるためにステップS505に進む。
【0072】
レンズのシフト量が大きい場合には、発生し得る露出ムラも大きくなる。従って、電子シャッターによる先幕走行のタイミング補正を大きく必要とするが、補正しきれる範囲を超えた場合には、先幕においてもメカニカルシャッターを使用する。
【0073】
電子シャッターのリセット走査は、メカニカルシャッターを先幕として走行する場合に比べて、露光開始を早いタイミングで行えるため、レリーズタイムラグが短いという利点がある。しかしながら、上述の如く、シフト量が大きく露出ムラの懸念がある場合に限り、メカニカルシャッターを先幕として駆動させる制御に切り替える。
【0074】
次のステップS505、S506、S507、S510およびS511は、図6のステップS105、S106、S107、S110およびS111と同様である。そしてステップS512、S113において、ステップS507で決定されたシャッター速度に応じたタイミングでメカ先幕、メカ後幕をそれぞれ走行させる。
【0075】
なお、上記ではシフトレンズのシフト量に応じて、先幕として電子シャッターを用いるかメカニカルシャッターを用いるかを決定したがこれに限られるものではない。例えば、射出瞳距離が所定値未満の場合には先幕としてメカニカルシャッターを動作させ、所定値より大きい場合には先幕として電子シャッターを動作させることも可能である。他にも、絞りの開口径が所定値よりも大きい場合や、ズームレンズの焦点距離が所定値未満の場合には先幕としてメカニカルシャッターを動作させ、他の場合には先幕として電子シャッターを動作させるようにしてもよい。
【0076】
(第4実施形態)
さらに本発明の第4実施形態にかかる撮像装置の構成について、図18を用いて説明する。第4実施形態の撮像装置は、第1実施形態(図1)に示した撮像装置に対して、防振のためにシフトさせることができる撮像素子404を備えている点が異なる。この撮像素子404は防振機能を持たせるために撮影レンズを光軸位置からシフトさせる代わりに、撮像素子404の中心を光軸位置からシフトさせることで防振機能を持たせたものである。撮像素子404をシフトさせたときのシャッター位置と露光量の関係は、第2実施形態でのレンズのシフト位置、シフト方向と同様に考えることができる。
【0077】
図19は本実施形態による電子先幕(リセット走査)の走査パターン制御に関する構成を示すブロック図である。図7に対して、撮像素子のシフト位置情報を検出するシフト位置検出回路450を備えている点が異なる。
【0078】
図7でも説明したとおり、カメラCPU113は、情報収集部113a、走査パターン設定部113b、垂直駆動変調回路制御部113cとして機能する。情報収集部113aは、交換レンズ401のレンズ情報、適正露光を得るためのシャッタースピード情報に加え、防振機能を動作した時の撮像素子のシフト位置情報を検出する部位450の情報を収集し、これを走査パターン設定部113bに渡す。走査パターン設定部113bは情報収集部113aが取得した情報に基づいて電子先幕の走査パターンを決定する。
【0079】
従って、撮像素子のシフト量に応じてシャッター制御手段による電荷蓄積開始走査の走査パターンを設定する設定手段とを備えて走査パターンを切り替えることにより、露出ムラの低減された適正画像が撮影できる。
【符号の説明】
【0080】
2 撮像面
3 メカ後幕
4 リセットライン
5 メカ後幕の先端部
100 カメラ本体
101、201 交換レンズ
104、404 撮像素子
105、305 メカニカルシャッター
106 シャッター駆動回路
107 パルス発生回路
108 垂直駆動変調回路
109 信号処理回路
113 カメラCPU
113a 情報収集部
113b 走査パターン設定部
113c 垂直駆動変調回路制御部
114 撮影レンズ
115 レンズCPU
116 レンズ駆動回路
117 絞り駆動回路
118 ズーム駆動機構
119 ズーム位置検出回路
150 走査パターン保持部
214 シフトレンズ
218 レンズシフト機構
219 シフト位置検出回路
450 撮像素子のシフト位置検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ユニットを通過した光を受光して電荷として蓄積する撮像素子と、
前記撮像素子を露光させる方向及び遮光する方向に走行するメカニカルシャッターと、
前記撮像素子の領域ごとに順次、電荷蓄積を開始する走査を行う走査手段と、
前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行い前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第1の露光制御と、前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行わずに前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第2の露光制御とを行う制御手段を有し、
前記制御手段は、前記光学ユニットの状態に応じて、前記第1の露光制御と前記第2の露光制御とを切り替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記光学ユニットの焦点距離が所定値未満の場合に、前記第2の露光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記光学ユニット内の絞りの開口径が所定値より大きい場合に、前記第2の露光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記光学ユニットの射出瞳距離が所定値よりも短い場合に、前記第2の露光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光学ユニットは光軸に対して横切る方向に移動可能なシフトレンズを有し、前記制御手段は、前記シフトレンズのシフト量が所定値以上である場合に、前記第2の露光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光学ユニットは光軸に対して傾くことが可能なティルトレンズを有し、前記制御手段は、前記ティルトレンズの傾き量が所定値以上である場合に、前記第2の露光制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
光学ユニットを通過した光を受光して電荷として蓄積する撮像素子と、前記撮像素子を露光させる方向及び遮光する方向に走行するメカニカルシャッターと、前記撮像素子の領域ごとに順次、電荷蓄積を開始する走査を行う走査手段と、を有する撮像装置の制御方法であって、
前記光学ユニットの状態に応じて、前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行い前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第1の露光制御と、前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を露光させてから前記電荷蓄積を開始する走査を行わずに前記メカニカルシャッターを走行させて前記撮像素子を遮光する第2の露光制御と、を切り替えることを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−70417(P2012−70417A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246839(P2011−246839)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【分割の表示】特願2006−193236(P2006−193236)の分割
【原出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】