説明

撮像装置及びその撮影制御方法

【課題】特に複雑な機構を必要とせず、通常のデジタルカメラの構成で、あおり撮影を行えること。
【解決手段】イメージセンサ115の主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に遅延時間t2−t1を持って電荷を蓄積すると共に、例えばフォーカスレンズ102を移動させることにより主走査ラインS1、S2、…、Sn毎にピントの合う被写体までの距離を変化させてあおり撮影に近い撮影を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に複雑な機構を用いることなく、あおり効果を用いた撮影を行う撮像装置及びその撮影制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から大判カメラや中判カメラ等の所謂ビューカメラでは、あおり撮影という手法によって撮影を行う場合がある。
通常の撮影は、撮影レンズの光軸とフィルム面とを直交する位置関係で撮影を行うのに対し、あおり撮影は、撮影レンズの光軸とフィルム面とを直交する位置関係を意図的にずらす操作を行う。このようなあおり撮影を行うことで、例えば、ビルを見上げて撮影するような場合でも、歪みなく、ビルの下方の階と上方の階とを同じ大きさで真っすぐに立ち上がった特殊な撮影を行うことが出来る。又、あおり撮影を行うことで、例えば電車等を斜め方向から撮影した場合、撮影位置から電車の先頭までの距離と最後尾までの距離とが異なっていても、電車の先頭から最後尾まで全ての位置に対してピントが合っている全焦点撮影等を行うことができる。又、あおり撮影では、一部のピントが合っている部分以外を意図的にぼかして被写体を際立たせる逆あおり撮影等の効果もある。
【0003】
このようなあおり効果を用いた撮影を一般的なデジタル一眼レフレックスカメラにより簡単に実現するための方法が例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1は、被写体像を撮像素子に導く光学系を備え、この光学系は、該光学系の光軸と直交する回転軸線を中心にそのレンズ光軸を傾ける方向に揺動可能に設けられた第1調整レンズと、この第1調整レンズと撮像素子との間に配置され前記光学系の光軸と直交する方向に移動可能に設けられた第2調整レンズとを含んで構成され、第1調整レンズの軸線回りの傾き量を検出する検出手段と、この検出手段によって検出された傾き量に対応して撮像素子における結像状態が最良となる第2調整レンズの直交する方向に沿った適正位置を生成する適正値生成手段と、第2調整レンズを光学系の光軸と直交する方向に動かす第2調整レンズ移動手段と、この第2調整レンズ移動手段を制御して第2調整レンズを適正位置に移動させる制御手段とを備えることで、第1調整レンズを通る光路が移動しても、複雑な操作を行うことなく撮像素子における結像状態を良好なものとしている。
【特許文献1】特開2005−292169号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるようなカメラでは、あおり効果を出すための調整用光学系と、あおりによる光軸のずれに応じて補正を行う光学系と、さらにあおり方向にレンズを調整する特別の調整機構が必要となる。このため、部品点数も増加し、機構も複雑化してコストアップにつながる結果となる。
又、上記カメラでは、あおり効果を使用しない通常の撮影を行うことが考慮されていないため、通常の撮影を行う場合、使い勝手が悪くなり、さらに不要な光学系により画質の劣化につながるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題に着目しなされたもので、特に複雑な機構を必要とせず、通常のデジタルカメラの構成で、あおり撮影を行える撮像装置及びその撮影制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主要な局面に係る撮像装置は、光学系により結像される被写体像を撮像して映像信号に変換する撮像素子と、光学系の調整を行う光学調整手段と、光学系に対して第1の調整が行われたときの撮像素子の主走査ライン上の領域における1又は複数の連続する第1ライン領域の撮影により取得される被写体像の映像信号と、光学系に対して第1の調整と異なる第2の調整が行われたときの第1ライン領域と隣接する第2ライン領域の撮影により取得される被写体像の映像信号とに基づいて1画像データを生成する制御手段とを具備する。
【0007】
本発明の主要な局面に係る撮像装置の撮影制御方法は、光学系により結像される被写体の像を撮像して映像信号に変換する撮像素子を有する撮像装置の撮影制御方法において、撮像素子の各主走査ライン毎にそれぞれ時差を持って被写体像を受光したときの電荷を蓄積すると共に、光学系の特性を変化させることにより各主走査ライン毎にピントの合う被写体までの距離を変化させて撮影を行う撮像装置の撮影制御方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特に複雑な機構を必要とせず、通常のデジタルカメラの構成で、あおり撮影を行える撮像装置及びその撮影制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る撮像装置の一例としてのデジタル一眼レフレックスカメラの構成図を示す。又、図2は当該デジタル一眼レフレックスカメラの外観図を示す。本カメラは、交換レンズ101とカメラボディ110とから構成される。交換レンズ101は、カメラボディ110の前面に設けられたカメラマウントを介して設けられ、カメラボディ110に対して着脱自在である。この交換レンズ101は、フォーカスレンズ102と、ズームレンズ群108と、レンズ駆動部103と、レンズCPU104と、フォーカス調整機構106と、エンコーダ107と、ズーム調整機構109とから成る。なお、フォーカス調整機構106は、フォーカスリング106aを備える。ズーム調整機構109は、ズームリング109aを備える。
【0010】
フォーカスレンズ102とズームレンズ群108とは、光軸P上に配置されている。フォーカスレンズ102は、フォーカス調整のためのレンズである。このフォーカスレンズ102は、レンズ駆動部103によって光軸Pと同一方向(矢印A方向)に移動され、これによりズームレンズ群108を通過した被写体からの光束は、カメラボディ110内の撮像素子115にピントの合った被写体像を結ぶ。
フォーカス調整機構106は、ユーザーのフォーカス調整操作に応じた操作信号をエンコーダ107に伝える。すなわち、フォーカス調整機構106は、ユーザーによるフォーカスリング106aの回転操作に応じた操作信号をエンコーダ107に伝える。このエンコーダ107は、フォーカス調整機構106から操作信号を入力し、フォーカス調整操作による変化量を電気信号としてレンズCPU104に出力する。
【0011】
ズームレンズ群108は、その焦点距離を変更するためのレンズである。このズームレンズ群108は、ユーザーがズーム調整機構109を操作することで所望の焦点距離に変更できる。ズーム調整機構109は、ユーザーによるズームリング109aの回転操作に従ってズームレンズ群108を光軸Pと同一方向(矢印B方向)移動させる。なお、ズーム調整機構109は、ユーザーの操作を受け、この操作に従ってズームレンズ群108を移動させる。
【0012】
レンズCPU104は、エンコーダ107からの電気信号をカウントすることで、フォーカス調整機構106に対する操作による変化量を算出する。又、レンズCPU104は、通信コネクタ105を経由して、カメラボディ110内部のシステムコントローラ118との間で相互にデータ通信し、カメラの特性情報やオートフォーカス時のデフォーカス量等の各種の情報、各種コマンドの授受を行う。さらに、レンズCPU104は、フォーカス調整機構106に対する操作による変化量や、カメラボディ110内部のシステムコントローラ118からのデフォーカス量を受けてレンズ駆動部103を駆動制御し、フォーカスレンズ102を光軸Pの方向に移動させる。
なお、レンズ駆動部103とレンズCPU104とズーム調整機構109とによって光学系としてのフォーカスレンズ102によるフォーカスに係る特性又はズームレンズ群108による焦点距離に係る特性を調整する光学調整手段を構成する。
【0013】
一方、カメラボディ110は、メインミラー111と、フォーカシングスクリーン112と、ペンタプリズム113と、接眼レンズ114と、イメージセンサ115と、レリーズ釦116と、設定スイッチ117と、システムコントローラ118と、表示部119と、メモリカード120と、シャッター121とから成る。
【0014】
メインミラー111は、矢印C方向に回動可能に設けられている。このメインミラー111は、撮影時に実線で示す位置にあり、被写体からの光束から退避してイメージセンサ115に被写体像を送る。メインミラー111は、撮影時以外、破線で示す位置にあり、被写体からの光束を反射してフォーカシングスクリーン112に結像させる。
ペンタプリズム113は、フォーカシングスクリーン112に結像された被写体像を正立像として、接眼レンズ114に入射させる。この接眼レンズ114は、ペンタプリズム113からの被写体像をユーザーで観察可能な様に拡大する。これにより、ユーザーは、接眼レンズ114を通して被写体の状態を観察することができる。
【0015】
イメージセンサ115は、光学系としてのフォーカスレンズ102及びズームレンズ群108により結像される被写体像を撮像して映像信号に変換する撮像素子としての機能を有する。
レリーズ釦116は、ユーザーの押し操作によって撮影の開始を指示する。
設定スイッチ117は、撮影モードや、シャッター速度等の設定を行うための複数のスイッチを有する。
表示部119は、例えば液晶ディスプレイ等から成り、撮影した映像やカメラの動作に係る情報等を表示する。
メモリカード120は、撮影により取得した画像データを記録する。
シャッター121は、撮影時に開放して被写体像をイメージセンサ115に結像させ、撮影しない場合に閉じて被写体からの光束をイメージセンサ115に対して遮断する。
【0016】
次に、システムコントローラ118によるあおり撮影に近似する撮影の制御について説明する。
システムコントローラ118は、光学系としてのフォーカスレンズ102がフォーカス調整によって第1の調整位置に移動したときのイメージセンサ115の結像面における主走査ライン(蓄積ライン)上の領域における1又は複数の連続する第1ライン領域の撮影により取得される被写体像の映像信号と、所定時間経過後にフォーカスレンズ102がフォーカス調整によって第1の調整位置と異なる第2の調整位置に移動したときの第1ライン領域と隣接する第2ライン領域の撮影により取得される被写体像の映像信号とに基づいて1画像データを生成する制御手段としての機能を有する。
【0017】
このようなシステムコントローラ118によるイメージセンサ115に対する制御を行うことで、イメージセンサ115は、イメージセンサ115の結像面における複数の主走査ラインのうち第1ライン領域と第2ライン領域と間に時差をつけて撮像動作を行うがこの時差についての詳細は後で説明する。
具体的にイメージセンサ115への電荷蓄積と読み出しとについて説明する。
図3はイメージセンサ115の結像面における主走査ライン(蓄積ライン)の模式図を示す。このイメージセンサ115の結像面には、複数の主走査ラインS1、S2、…、Snを有する。このようなイメージセンサ115は、システムコントローラ118の制御によって主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に時差をもって被写体像を受光したときの電荷の蓄積を開始する。
【0018】
図4はイメージセンサ115における電荷の蓄積と読み出しとの時間関係の一例を示す。主走査ラインS1、S2、…、Snでの電荷の蓄積は、先ず、時刻t0に主走査ラインS1で開始され、この主走査ラインS1での蓄積が時刻t2まで行われる。
この蓄積時間(t0からt2)は、被写体の明るさにより変化するものであり、イメージセンサ115からの映像信号を基に決定される。
【0019】
次に、所定の時差をもって主走査ラインS2の蓄積が開始されるが、この時差は、t1−t0から求められる。さらに時刻t1での主走査ラインS2の開始から前記時差t1−t0と同じ時差をもって、主走査ラインS3の蓄積が開始される。以下同様に、時差としての遅延時間t1−t0を持って各主走査ラインS3、S4、…、Snでの電荷の蓄積がそれぞれ行われる。
主走査ラインS1、S2、…、Snに蓄積された電荷の読み出しは、時刻t2から主走査ラインS1の蓄積電荷の読み出しを開始し、時刻t3で当該主走査ラインS1の蓄積電荷の読み出しを終了する。
次に、時刻t3から主走査ラインS2の蓄積電荷の読み出しを開始し、時刻t4で当該主走査ラインS2の蓄積電荷の読み出しを終了する。
次に、時刻t4から主走査ラインS3の蓄積電荷の読み出しを開始し、時刻t5で当該主走査ラインS3の蓄積電荷の読み出しを終了する。
以下同様に、時差としての遅延時間t1−t0と同一時間で順次主走査ラインS4、S5、…、Snの各蓄積電荷を読み出す。
なお、遅延時間t1−t0は、各主走査ラインS3、S4、…、Snの読み出し時間を最小値として、後述するあおり角及び、フォーカスレンズ102の駆動速度により求められるものである。図4の例では、各主走査ラインS3、S4、…、Snの読み出し時間と、各主走査ラインS3、S4、…、Sn間の遅延時間が一致しているため、遅延時間が最少のケースを示している。
【0020】
システムコントローラ118は、イメージセンサ115の主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に遅延時間t1−t0を持って電荷の蓄積を開始すると共に、図5に示すようにフォーカスレンズ102を移動させることにより主走査ラインS1、S2、…、Sn毎にピントの合う被写体までの距離を変化させてあおり撮影に近い撮影を行わせる。同図にはフォーカスレンズ102を移動させる前の時刻t0における位置Qと、フォーカスレンズ102を移動後の時刻tnにおける位置Rとが示されている。
【0021】
上記のように最初の主走査ラインS1の蓄積開始時間をt0、最終の主走査ラインSnの蓄積終了時間をtn、図5に示すようにイメージセンサ115の結像面における最初の主走査ラインS1と最終の主走査ラインSnとの距離L、イメージセンサ115の結像面の移動量をdfとすると、あおり角度θは、
θ=tan−1(df/L) …(1)
により表される。
従って、システムコントローラ118は、式(1)により表されるあおり角度θを有する1画像データを生成する。
【0022】
また、システムコントローラ118は、フォーカスレンズ102を位置Qから位置Rに移動させるためにかかる時間をTdfとすると、遅延時間t1−t0は、以下の関係が成り立つように決定する時差変更手段としての機能を有する。
t1−t0=Tdf/n …(2)
これにより、時差は、あおり効果に応じた所定の時間に調整可能である。このように時差が設定されると、イメージセンサ115は、主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に設定された時差をもって電荷の蓄積を開始し、撮像動作を行う。
そして、システムコントローラ118は、イメージセンサ115により撮像された1画像分の映像信号から1画像データを生成する。
又、上記設定スイッチ117は、光学系としてのフォーカスレンズ102が撮像中に移動すべき量を設定する機能を有する。しかるに、システムコントローラ118は、設定スイッチ117により設定されたフォーカスレンズ102の移動量に基づいてフォーカスレンズ102を時間経過と共に矢印A方向に移動させる。
【0023】
次に、上記の如く構成されたカメラによるあおり撮影の動作について図6に示すあおり撮影フローチャートに従って説明する。
先ず、ユーザーによる設定スイッチ117に対する操作によりあおり撮影モードが選択されると、システムコントローラ118は、あおり撮影の動作を開始する。あおり撮影の動作が開始されると、メインミラー111が回転してアップした状態となり、これと共にシャッター121が開放し、ライブビューモードに移行する。ライブビューモードは、イメージセンサ115に結像された被写体像をシステムコントローラ118を経由してリアルタイムで表示部119に表示するモードである。ユーザーは、表示部119にリアルタイムに表示される被写体像を確認しながら設定スイッチ117を操作してあおり角度θを操作入力する。システムコントローラ118は、ステップS101において、設定スイッチ117からあおり角度θを受け取り、当該あおり角度θを設定する。
【0024】
システムコントローラ118は、ステップS102において、あおり角度θから上記式1を演算し、フォーカスレンズ102の矢印A方向へのレンズ駆動量を求め、さらにフォーカスレンズ102の駆動速度を決定する。
そして、システムコントローラ118は、当該レンズ駆動量とフォーカスレンズ102の駆動速度とにより駆動時間を求めることができ、この駆動時間より式(2)に基づいて遅延時間t1−t0を決定する。
【0025】
次に、システムコントローラ118は、ステップS103において、イメージセンサ115から読み出した映像信号に基づいてシャッター速度を決定する。このシャッター速度は、シャッター121の開閉でなく、イメージセンサ115の蓄積開始時t0から蓄積終了時tnまでの時間を示す。本実施の形態におけるイメージセンサ118は、主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に蓄積の開始時間に例えば遅延時間t1−t0を設定することができる。これにより、イメージセンサ118は、所謂ローリングシャッターと同等の動作を行うものとなる。シャッター速度は、主走査ラインS1、S2、…、Snの1ライン分の露出時間と、各主走査ラインS1、S2、…、Sn間の遅延時間t1−t0と、イメージセンサ118の主走査ラインS1、S2、…、Snのライン数とを基に決定される。
【0026】
ユーザーがレリーズ釦116を押し操作すると、システムコントローラ118は、ステップS104において、撮影動作の制御を開始する。この撮影動作は、上記説明の通り、システムコントローラ118の制御によって図4に示すようにイメージセンサ115の主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に遅延時間t1−t0を持って電荷を蓄積すると共に、図5に示すように例えばフォーカスレンズ102を上記ステップS102で決定されたフォーカスレンズ102の駆動速度で移動させることにより、主走査ラインS1、S2、…、Sn毎にピントの合う被写体までの距離が変化し、あおり撮影と同等の効果で撮影を行う。
【0027】
このように上記第1の実施の形態によれば、通常のデジタル一眼レフレックスカメラにおいて、図4に示すようにイメージセンサ115の主走査ラインS1、S2、…、Sn毎に遅延時間t2−t1を持って電荷を蓄積すると共に、図5に示すように例えばフォーカスレンズ102を移動させることにより主走査ラインS1、S2、…、Sn毎にピントの合う被写体までの距離が変化し、あおり撮影と同等の効果を持つ画像データを取得できる。しかるに、通常のデジタル一眼レフレックスカメラの構成で、特に複雑な機構が必要なく、あおり撮影の効果を得ることができる。
【0028】
イメージセンサ115の主走査ラインS1、S2、…、Sn毎にフォーカス位置を変えて撮影するので、画像データにおける各主走査ラインS1、S2、…、Sn毎にフォーカス位置が変化して全焦点撮影や、被写体を強調させる効果がある。
設定スイッチ117を操作してあおり角度θを設定するので、この設定されたあおり角度θに基づいて撮影時間とフォーカスレンズ102の調整量とを決定するものとなり、ユーザーが被写体の状態に合わせてあおり量を調整できる。
【0029】
又、あおりの撮影時に、露光間ズーム撮影の要領で、ユーザーがズームリング109aを回転操作することで、あおりにより歪みを補正したのと同等の効果を得ることができる。
ここで、露光間ズーム撮影について説明する。露光間ズーム撮影は、撮影時にイメージセンサ115の露出中にズームリング109aを操作してズームレンズ108を移動させるにより焦点距離を変化させるものである。この露光間ズーム撮影により撮影視野の中心から放射状に被写体が流れた独特の画像を撮影することができる。これは、撮影視野内全体が同時性をもって撮影されるので、この様な効果が得られるものであり、さらに、本実施の形態では、イメージゼンサ115は、ローリングシャッターと同等の動作をしているので、シャッター方向に応じて焦点距離が変化し、あおりを与えて歪み補正した撮影と同様の効果が得られる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は本発明の実施形態に係る撮像装置の他の例としてのコンパクトデジタルカメラの構成図を示す。又、図8(a)(b)は当該コンパクトデジタルカメラの外観図を示し、同図(a)は正面図、同図(b)は背面図を示す。
本カメラは、フォーカスレンズ201と、ズームレンズ202と、レンズ駆動部203と、撮像素子としてのCCD204と、システムコントローラ205と、レリーズボタン206と、設定スイッチ207と表示部208と、メモリカード209とを備える。
【0031】
フォーカスレンズ201は、光軸Pの方向と同一方向に移動し、被写体像をCCD204に結像する際のピントを調整する。
ズームレンズ群202は、複数のレンズより成り、焦点距離を変えることで、CCD204に結像される被写体像の像倍率を切り替える。
レンズ駆動部203は、例えばステッピングモータにより構成され、システムコントローラ205から発せられる駆動パルスに基づいてフォーカスレンズ201を光軸Pと同一方向の矢印A方向に移動駆動し、ズームレンズ群202を光軸Pと同一方向の矢印B方向に移動駆動する。
【0032】
CCD204は、フォーカスレンズ201とズームレンズ群202とを通して結像された被写体像を電気信号に変換し、かつシステムコントローラ205からの制御信号により映像データとして読み出される。
レリーズ釦206は、ユーザーによる押し操作を受けて撮影指示を発生するもので、撮影指示をシステムコントローラ205に送る。
設定スイッチ207は、本カメラの撮影モードや各種機能の設定を行う複数のスイッチを有する。
しかるに、ユーザーによってレリーズ釦206を押し操作することで撮影を指示する。表示部208に表示されたメニューを確認しながら設定スイッチ207をユーザーが操作することで、カメラの動作モードを決定する。又、表示部208に表示されたメニューを確認しながら設定スイッチ207をユーザーが操作することで、撮影モードやあおり角度等の設定も行う。
【0033】
表示部208は、例えば液晶ディスプレイ等から成り、システムコントローラ205から出力される撮影データやメニュー画面の表示を行う。
メモリカード209は、撮影された画像データを記録する。
【0034】
次に、システムコントローラ205によるあおり撮影に近似する撮影の制御について説明する。
システムコントローラ205は、CCD204により撮像された複数枚の画像分の映像信号から1枚目の画像に対応する第1ライン領域の撮影により取得される映像信号と、2枚目の画像に対応する第2ライン領域の撮影により取得される映像信号とを抽出して1画像データを生成する。
図9はCCD204の撮影時の蓄積と読み出しの関係を示す。CCD204における全ての主走査ラインK1、K2、…、Knでの1回目の電荷の蓄積を、時刻t0から時刻t1まで行われる。この1回目の蓄積により読み出される主走査ラインはK1のみで、時刻t1から読み出される。
次に、時刻t1から主走査ラインK1の読み出しと並行して、CD204における全ての主走査ラインK1、K2、…、Knでの2回目の電荷の蓄積が開始され、時刻t2まで行われる。この2回目の蓄積により読み出される主走査ラインはK2のみで、時刻t2から読み出される。
【0035】
以下同様に、CD204における全ての主走査ラインK1、K2、…、Knでの蓄積と各主走査ラインK3、K4、…、Knでの蓄積電荷の読み出しがそれぞれ行われる。
【0036】
蓄積時間t1−t0は、被写体の明るさにより変化するものであり、CCD204からの映像信号をもとに決定される。また、読み出し時間蓄積時間よりも短い時間である必要があるため、主走査ラインの読み出し時間が、蓄積時間の最小値となる。
なお、ここでは、主走査ラインK1、K2、…、Knの1ラインずつの読み出しを行っているが、複数ライン纏めて行ってもよい。
【0037】
システムコントローラ118は、CCD204の主走査ラインK1、K2、…、Kn毎に時差を持って蓄積され電荷を読み出すと共に、例えばフォーカスレンズ201を矢印A方向に移動させることにより主走査ラインK1、K2、…、Kn毎にピントの合う被写体までの距離を変化させてあおり撮影に近い撮影を行わせる。
又、システムコントローラ118は、CCD204により撮像された複数枚の画像分の映像信号から1枚目の画像に対応する第1ライン領域、例えば主走査ラインK1の撮影により取得される映像信号と、2枚目の画像に対応する第2ライン領域、例えば主走査ラインK2の撮影により取得される映像信号とを抽出して1画像データを生成する。この場合、CCD204は、複数枚の画像を撮像する際、1枚目の画像を第1ライン領域により被写体像を撮像して映像信号に変換し、2枚目の画像を第2ライン領域により被写体像を撮像して映像信号に変換する。
【0038】
次に、上記の如く構成されたカメラによるあおり撮影の動作について図10に示すあおり撮影フローチャートに従って説明する。
先ず、ユーザーによる設定スイッチ207に対する操作によりあおり撮影モードが選択されると、システムコントローラ205は、あおり撮影の動作を開始する。CCD204は、結像された被写体像を電気信号に変換し、かつシステムコントローラ205を経由してリアルタイムで表示部208に表示する。
【0039】
ユーザーは、表示部208にリアルタイムに表示される被写体像を確認しながら設定スイッチ207を操作してあおり角度θを操作入力する。システムコントローラ205は、ステップS201において、設定スイッチ207からあおり角度θを受け取り、当該あおり角度θを設定する。
次に、システムコントローラ205は、ステップS202において、CCD204から出力される映像信号を基にシャッター速度を決定する。このシャッター速度は、CCD204の各主走査ラインK1、K2、…、Knの蓄積時間と、これら主走査ラインK1、K2、…、Knのライン数とより求められる。なお、複数ライン纏めて読み出す方式を採用すれば、シャッター速度は短くできる。
【0040】
システムコントローラ205は、設定されたあおり角θにより複数の主走査ラインK1、K2、…、Knの複数のラインが焦点深度内に収まると判断すると、複数ライン纏めて蓄積制御をする。すなわち、あおり角θが大きい場合、複数のラインを纏めて制御できるラインが少なくなり、あおり角θが小さい場合、纏めて制御できるライン数が多くなる。
【0041】
次に、システムコントローラ205は、ステップS203において、上記第1の実施の形態と同様に、CCD204の蓄積開始時t0から蓄積終了時tnまでの時間であるシャッター速度とあおり角度θとから上記式(1)を演算し、フォーカスレンズ201の矢印A方向へのレンズ駆動量を求め、さらにフォーカスレンズ201の駆動速度を決定する。
【0042】
このとき、焦点距離の変更を行う場合は、ズームレンズ群202の矢印B方向へのレンズ駆動量とその駆動速度を決定する。このときのレンズ駆動量は、式(1)を参考にデフォーカス量dfを焦点の変化量dFとして置き換えて計算すれば良い。
【0043】
次に、システムコントローラ205は、ステップS204において、ライン数nを初期化(n←1)し、次のステップS205において、CCD205における電荷の蓄積を開始する。このときの電荷の蓄積は、各主走査ラインK1、K2…Knすべて同時に行われる。
【0044】
次に、システムコントローラ205は、CCD204の主走査ラインK1、K2、…、Knの電荷蓄積が終了すると、ステップS206において、nが示す所定の主走査ラインの蓄積された電荷の読み出しを行う。この主走査ラインK1、K2、…、Knに蓄積された電荷の読み出しは、時刻t1から主走査ラインK1の蓄積電荷の読み出しを開始し、次に、時刻t2から主走査ラインK2の蓄積電荷の読み出しを開始する。以下同様に、蓄積の終了時から対応する各主走査ラインK3、K4、…、Knの蓄積された電荷の読み出しを行う。
【0045】
次に、システムコントローラ205は、ステップS207において、ライン数nを加算(n←n+1)する。なお、ライン数nの加算は、「1」を加算しているが、これに限らず、「1」以上を加算してもよい。例えば、複数ライン纏めて制御する場合は、纏めたライン数分を加算する。
次に、システムコントローラ205は、ステップS208において、電荷の読み出しを行う主走査ラインが最終の主走査ラインKnに到達したか否かを判断する。この判断の結果、最終の主走査ラインKnに到達すると、システムコントローラ205は、撮影を終了する。
【0046】
このように上記第2の実施の形態によれば、CCD204の主走査ラインK1、K2、…、Kn毎に時差を持って蓄積され電荷を読み出すと共に、例えばフォーカスレンズ201を矢印A方向に移動させることにより主走査ラインK1、K2、…、Kn毎にピントの合う被写体までの距離を変化させてあおり撮影と同等の効果を持つ画像の撮影を行うことができ、上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。さらに、ズームレンズ群202を矢印B方向に移動させることで、主走査ラインK1、K2、…、Kn毎に焦点距離が変化する、あおり撮影により歪み補正を行うのと同様の効果の画像を撮影することができる。
以上のように通常のコンパクトデジタルカメラの構成で、特に複雑な機構が必要なく、あおり撮影の効果を得ることができる。
【0047】
以上、第1及び第2の実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
さらに、上述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の一例としてのデジタル一眼レフレックスカメラを示す構成図。
【図2】同カメラを示す外観図。
【図3】同カメラにおけるイメージセンサの結像面における主走査ライン(蓄積ライン)を示す模式図。
【図4】同カメラにおけるイメージセンサでの電荷の蓄積と読み出しとの時間関係を示す図。
【図5】同カメラにおけるあおり撮影に近い撮影を行わせるときのフォーカスレンズ又はズームレンズ群の移動を示す図。
【図6】同カメラによるあおり撮影の動作を行うためのあおり撮影フローチャート。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の他の例としてのコンパクトデジタルカメラを示す構成図。
【図8】同カメラを示す外観図。
【図9】同カメラにおけるCCDの撮影時の蓄積と読み出しの関係を示す図。
【図10】同カメラによるあおり撮影の動作を行うためのあおり撮影フローチャート。
【符号の説明】
【0049】
101:交換レンズ、110:カメラボディ、102:フォーカスレンズ、103:レンズ駆動部、104:レンズCPU、106:フォーカス調整機構、106a:フォーカスリング、107:エンコーダ、108:ズームレンズ群、109:ズーム調整機構、109a:ズームリング、111:メインミラー、112:フォーカシングスクリーン、113:ペンタプリズム、114:接眼レンズ、115:イメージセンサ、115:撮像素子、116:レリーズ釦、117:設定スイッチ、118:システムコントローラ、119:表示部、120:メモリカード、121:シャッター、S1,S2,…,Sn:主走査ライン、201:フォーカスレンズ、202:ズームレンズ、203:レンズ駆動部、204:CCD204、205:システムコントローラ、206:レリーズボタン、207:設定スイッチ、208:表示部、209:メモリカード、K1,K2,…,Kn:主走査ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系により結像される被写体像を撮像して映像信号に変換する撮像素子と、
前記光学系の調整を行う光学調整手段と、
前記光学系に対して第1の調整が行われたときの前記撮像素子の主走査ライン上の領域における1又は複数の連続する第1ライン領域の撮影により取得される前記被写体像の映像信号と、前記光学系に対して前記第1の調整と異なる第2の調整が行われたときの前記第1ライン領域と隣接する第2ライン領域の撮影により取得される前記被写体像の映像信号とに基づいて1画像データを生成する制御手段と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子は、前記第1ライン領域と前記第2ライン領域と間に時差をもって前記撮像動作を行うことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、前記第1ライン領域の露出時間に基づいて前記時差をつけることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記時差を変更する時差変更手段を備え、
前記撮像素子は、前記時差変更手段により前記変更された前記時差をつけて前記撮像動作を行う、
ことを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記撮像素子により撮像された1画像分の前記映像信号から1画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光学調整手段は、前記光学系のフォーカスに係る特性又は前記光学系の焦点距離に係る特性を調整することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学系に含まれるレンズが前記撮像中に移動すべき量を設定する設定手段を備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記移動量に基づいて前記第1の調整と前記第2の調整とを行うことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記撮像素子により撮像された複数枚の画像分の前記映像信号から1枚目の画像に対応する前記第1ライン領域の撮影により取得される映像信号と、2枚目の画像に対応する前記第2ライン領域の撮影により取得される映像信号とを抽出して前記1画像データを生成することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像素子は、複数枚の画像を撮像する際、前記1枚目の画像を前記第1ライン領域により前記被写体像を撮像して前記映像信号に変換し、前記2枚目の画像を第2ライン領域により前記被写体像を撮像して前記映像信号に変換することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記撮像素子の主走査ライン毎に時差を持って蓄積すると共に、前記光学系を移動させることにより前記主走査ライン毎にピントの合う被写体までの距離を変化させてあおり撮影に近い撮影を行わせることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、最初の前記主走査ラインの蓄積開始時間をt0、最終の主走査ラインの蓄積終了時間をtn、前記撮像素子の結像面における前記最初の主走査ラインと前記最終の主走査ラインとの距離L、前記撮像素子の結像面の移動量をdfとすると、あおり角度θ、
θ=tan−1(df/L)
を有する前記1画像データを生成することを特徴とする請求項10記載の撮像装置。
【請求項12】
光学系により結像される被写体の像を撮像して映像信号に変換する撮像素子を有する撮像装置の撮影制御方法において、
前記撮像素子の各主走査ライン毎にそれぞれ時差を持って前記被写体像を受光したときの電荷を蓄積すると共に、前記光学系の特性を変化させることにより前記各主走査ライン毎にピントの合う前記被写体までの距離を変化させて撮影を行うことを特徴とする撮像装置の撮影制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−68134(P2010−68134A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231264(P2008−231264)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】