説明

撮像装置

【課題】撮像素子の撮像面の反りによる悪影響を防止できる。
【解決手段】撮撮像面22の周辺部が後方に反り返っている場合は、それに応じて光学フィルタ10の周辺が厚くなるように加工することで、光学フィルタ10に焦点ずれ補正特性を持たせることができる。撮像面22が逆方向に反っているときは、光学フィルタの中央部が厚くなるようにする。撮像面22の反り量をΔfとすると、光学フィルタ10の厚みの差Δdを、
Δd=Δf/(1−1/n)
ただし、nは第1複屈折板11の屈折率
とすればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材を透過した光束を撮像素子で撮像する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置では、撮像素子の撮像面(受光面)に反りがあると、部分的に焦点位置がずれるため、良好な画像を得ることができない。そこで、撮像面に反りが生じないようにした撮像素子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平2−246272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には撮像面に反りのある撮像素子は少なからず存在し、これをそのまま撮像装置に用いると良好な画像が得られない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、撮像素子と、撮像素子の撮像面の前方に配置された光学部材とを備え、光学部材を透過した光束を撮像素子で撮像する撮像装置に適用され、光学部材は、撮像素子の撮像面の反りによる像面位置のずれの影響を光学的に補正するために、反りに応じて光軸方向の厚さが異なる形状とされる。
光学部材として、撮像結果に悪影響を与える要因を除去する光学フィルタを用いてもよいし、撮像素子の保護カバーを用いてもよい。
撮像面の異なる2点における光軸方向の位置差をΔf、光学部材の屈折率をnとしたときに、当該光学部材の上記2点と対応する2点における厚みの差Δdが、
Δd=Δf/(1−1/n)
となるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、撮像素子の撮像面に反りがある場合でも、それに起因する画像への悪影響を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図4により本発明の一実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るデジタルカメラの概略構成を示す。撮影レンズ1を透過した被写体光束は、ミラー2で反射され、ファインダ光学系3を介して観察される。撮影が指示されると、ミラー2が跳ね上げられるとともに、シャッタ4が開き、光束はシャッタ開口を通過した後、光学フィルタ10を透過して撮像素子20に導かれる。撮像素子20は、受光した光束を光電変換し、その光電変換出力に種々の処理が施されて画像データが生成される。画像データは、不図示の画像記録媒体に記録される。なお、5は撮影画像を表示可能なモニタ装置である。
【0008】
図2は、上記光学フィルタ10および撮像素子20をカメラ側方から見た図である。光学フィルタ10は、光学ローパス特性および赤外カット特性を併せ持つもので、撮影レンズ1側から第1複屈折板11、赤外カットガラス12、波長板13、第2複屈折板14を順に貼り合わせて構成される。被写体光束は、これらの光学部材11〜14を順に透過した後、撮像素子20のカバーガラス(保護カバー)21を透過して撮像面22に入射する。この種の光学フィルタ10を介すことで、撮像結果に悪影響を与える要因を除去できる。
【0009】
撮像面22は、撮影光軸に対して直角な平面であることが理想であるが、撮像素子20によっては撮像面22に反りがあることがあり、この反りが焦点ずれを生ずる。例えば図3の例では、撮像面22の周辺部が後方に反り返っているため、中央部にピントを合わせると周辺部はぼける。
【0010】
そこで本実施形態では、撮像面22の反りによる焦点ずれを、光学フィルタ10の厚さを部分的に変えることで補正するようにした。例えば撮像面22の周辺部が後方に反り返っている場合は、図2に示すように光学フィルタ10の周辺が厚くなるようにすることで、光学フィルタ10に焦点ずれ補正特性を持たせることができる。この例では、最も前方に位置する第1複屈折板11に焦点ずれ補正特性を持たせている。
【0011】
第1複屈折板11の厚さを部分的に変える加工に先立ち、公知の光学式非接触三次元測定器等を用いて、撮像面22の反り量、つまり中央と周辺の焦点位置のずれ量Δf(図4参照)を計測する。そして、このΔfを用いて、次式により第1複屈折板11の中央厚と周辺厚の差Δdを求める。
Δd=Δf/(1−1/n)・・・(1)
ただし、nは光学部材(ここでは第1複屈折板11)の屈折率
【0012】
例えば、n=1.5、Δf=10μmとすると、
Δd=10μm/(1−1/1.5)=30μm
となり、厚み差Δdが30μmの第1複屈折板11を用いることで、撮像面22の反りによる焦点ずれの補正が可能となる。なお、カメラ横方向の反り(例えば、図2をカメラ上面図として見た場合の反り)に対しても同様の手法が適用できる。
【0013】
ここで、複屈折板は例えば水晶から成り、厚さが均一の複屈折板の表面を加工することで、厚さを部分的に変えることができる。水晶やガラスの表面をナノレベルの高精度で三次元加工可能な超精密加工機が各種製品化されており、それらを用いて加工する。他の加工方法としては、半導体製造技術の応用がある。例えば、レジスト塗布、露光、エッチング等の工程から成るリソグラフィー技術や、イオン等によるドライエッチングなどを用いることができる。
【0014】
このように本実施形態では、撮像面22の前方にある光学部材を加工して焦点ずれ補正特性を持たせたので、従来は使用不能だった撮像面22に反りのある撮像素子20を用いることができ、撮像素子の歩留向上に寄与する。一般に撮像素子は非常に高価なものなので、光学部材の加工工程が追加されても従来と比べてコスト的に有利である。
【0015】
図2では第1複屈折板11を加工したが、図5のように第2複屈折板14を加工しても同様の効果が得られる。また図6に示すように、撮像素子20のカバーガラス21に同様の加工を施してもよい。あるいは図7に示すように、同様の加工を施した光学部材31(例えば、白板ガラス)を光学フィルタ20の前面に置き、この光学部材31の透過光が光学フィルタ20に入射するようにしてもよい。この場合、光学フィルタ20は従来型のものを用いる。
【0016】
図8は撮像面22が逆方向に反っている例を示し、この場合は上記(1)式に基づき、光学フィルタ10の中央部が周辺部よりも厚くなるようにする。特にこの例では、第1複屈折板11に反りを持たせ、赤外カットガラス12との貼り合わせ工程において、接着層の厚みを中央と周辺とで変えている。
【0017】
上記図2,図5,図6,図8の例では、既存の光学部材に加工を加えて焦点ずれ補正特性を持たせているので、新たな部材を追加する必要がなく、スペース的に有利である。なお、焦点ずれ補正特性を持たせるための加工は、光学部材の厚さを急激に変化させるような加工ではないため、複屈折板11,14に加工を施しても本来のローパス機能を阻害することはない。
【0018】
ここで、光学部材を加工する際に万一傷がついた場合、その傷による画像への影響は、撮像面22に近い光学部材ほど顕著である。したがって、できるだけ撮像面22から離れた位置にある光学部材に加工を施すのが好ましい。
【0019】
以上では、撮像面22の反りが比較的単純な例を示したが、撮像素子20によってはより複雑な反りが発生している場合がある。図9は、ある撮像素子20の撮像面22の反りを、前述した光学式非接触三次元測定器を用いて計測した結果を示している。このような縦/横複合の複雑な反りに対しては、撮像面22をマトリクス状に複数の領域に分割し、各分割領域に対して上述の手法を用いる。すなわち、各分割領域の中央と周辺の2点間のずれ量Δf(縦および横)を計測し、これらのΔfに基づいて(1)式によりそれぞれΔdを求める。全領域のΔdが判明したら、それらに基づいて光学部材の対応する分割領域をそれぞれ加工する。この方法によれば、撮像面22が波打ったように反っている場合も対応可能である。分割数を多くするほど補正精度が高まることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施形態におけるデジタルスチルカメラの構成図。
【図2】光学フィルタおよび撮像素子をカメラ側面から見た図で、第1複屈折板に焦点ずれ補正特性を持たせた例を示す。
【図3】撮像素子の撮像面に反りがある場合の不具合を説明する図。
【図4】撮像面の反りと第1複屈折板の厚さ分布との関連を説明する図。
【図5】第2複屈折板に焦点ずれ補正特性を持たせた例を示す図。
【図6】撮像素子のカバーガラスに焦点ずれ補正特性を持たせた例を示す図。
【図7】焦点ずれ補正特性を持たせた光学部材を光学フィルタの前に配置した例を示す図。
【図8】撮像面が図2と逆方向に反った例を示す図。
【図9】撮像面に複雑な反りがある例を示す図。
【符号の説明】
【0021】
10 光学フィルタ
11 第1複屈折板
14 第2複屈折板
20 撮像素子
21 カバーガラス
22 撮像面
31 光学部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、該撮像素子の撮像面の前方に配置された光学部材とを備え、前記光学部材を透過した光束を前記撮像素子で撮像する撮像装置において、
前記光学部材は、前記撮像素子の撮像面の反りによる像面位置のずれの影響を光学的に補正するために、前記反りに応じて光軸方向の厚さが異なる形状とされることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記光学部材は、撮像結果に悪影響を与える要因を除去する光学フィルタであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光学部材は、前記撮像素子の保護カバーであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像面の異なる2点における光軸方向の位置差をΔf、前記光学部材の屈折率をnとしたときに、当該光学部材の前記2点と対応する2点における前記厚みの差Δdが、
Δd=Δf/(1−1/n)
となるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−92725(P2009−92725A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260586(P2007−260586)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】