説明

撮像装置

【課題】撮像光学系における絞り機構を改善することにより、フレアやゴーストを防ぎ、ダイナミックレンジの範囲を拡大することを可能にした撮像装置を提供することにある。
【解決手段】少なくとも、撮像光学系2と、撮像光学系2により被写体の光学像を結像する撮像素子5とを備える撮像装置1において、撮像光学系2は、その結像光学系において少なくとも1つを反射ミラー4、7で構成するとともに、反射ミラーの1つが絞り機能6、7、8を有することを特徴とする撮像装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載、監視、工業用等において、被写体を撮像する撮像装置に係わり、特に、撮像する被写体画像内の光量差が大きいために発生する、フレアやゴーストの影響を防止することを可能にした撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射光学系を用いた場合の絞り機構として、第1の反射面より前の入射光路内に絞りを配置し、絞りにより入射光束を光束の外周より遮光する構成が開示されている。また、特許文献2には、反射光学系を用いた場合の絞り機構として、光学素子が配置された光路中に絞りを配置する構成が開示されている。
【特許文献1】再公表第00/48033号公報
【特許文献2】特開2006−85194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2に記載の絞り機構では、図9(a)、(b)に示すような、撮像素子に結像されるまでの結像光学系101、102間に光遮断式の光学絞り103が介在する場合、絞り103の口径端面104での反射によるフレアやゴーストの発生によってカメラシステムの画像コントラストを低下させてしまう。特に、撮影する被写体画像の光量比が高い画像の場合には、強い光は、絞り103の端面104で反射し、撮像素子面に散乱集光されるため、撮像画像全体へのフレア成分として極めて大きな影響を与える光ノイズ成分となる。そのため、広ダイナミックレンジの撮像装置においては、広ダイナミックレンジが確保できないという問題がある。
【0004】
また、特許文献2に記載の反射式の光学系内に、光学遮断式の絞り機構を配置するような場合は、絞り機構を往路と復路での結像光を避けて配置しなければならず、結果として、反射面間を長くしたり、反射光学系自体を大きく角度を変えて反射させる必要が発生し、光学系が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題点にかんがみ、撮像光学系における絞り機構を改善することにより、フレアやゴーストを防ぎ、ダイナミックレンジの範囲を拡大することを可能にした撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、少なくとも、撮像光学系と、該撮像光学系により被写体の光学像を結像する撮像素子とを備える撮像装置において、前記撮像光学系は、その結像光学系において少なくとも1つを反射ミラーで構成するとともに、前記反射ミラーの1つが絞り機能を有することを特徴とする撮像装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記撮像光学系は、その結像光学系の全てが反射ミラーで構成されていることを特徴とする撮像装置である。
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段において、前記絞り機能を有する反射ミラーは、透明部材と、該透明部材の入射面とは反対側の面に配置され、反射機能を有するとともに反射面積を可変することにより絞り機能を有する流体材料を配置したことを特徴とする撮像装置である。
第4の手段は、第3の手段において、前記絞り機能を有する反射ミラーの透明部材の入射面とは反対側の面が、曲面又は平面であることを特徴とする撮像装置である。
第5の手段は、第3の手段又は第4の手段において、前記透明部材の表面には、反射防止処理が施されていることを特徴とする撮像装置である。
第6の手段は、第3の手段ないし第5の手段のいずれか1つの手段において、前記流体材料は、高反射率を有する材料で構成されていることを特徴とする撮像装置である。
第7の手段は、第3の手段ないし第6の手段のいずれか1つの手段において、前記流体材料は、前記流体材料の反射面と平行な面に対して略均等に加圧する加圧部材と前記透明部材の間に配置されていることを特徴とする撮像装置である。
第8の手段は、第3の手段ないし第7の手段のいずれか1つの手段において、前記加圧部材は、モータによって駆動されるカム機構を備えていることを特徴とする撮像装置である。
第9の手段は、第3の手段ないし第7の手段のいずれか1つの手段において、前記加圧部材は、高分子アクチュエータであることを特徴とする撮像装置である。
第10の手段は、第1の手段ないし第9の手段のいずれか1つの手段において、前記撮像装置は、広ダイナミックレンジの撮像装置であることを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結像光学系において少なくとも1つを反射ミラーで構成するとともに、反射ミラーの1つに絞り機能を持たせたので、従来の光遮断式の光学絞り機構の絞り口径端面での反射によるフレアやゴーストの発生を心配する必要がなくなり、フレアやゴーストを大幅に低減することができるため、ダイナミックレンジを広範囲化した撮像装置を実現することができる。また、撮像光学系を小型化した撮像装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態を図1ないし図8を用いて説明する。
図1は、本発明に係る撮像装置1(筐体開口部のカバーガラスを外した状態)の斜視図である。
図2は、図1に示した撮像装置1の撮像光学系2の外観を示す斜視図であり、図2(a)は、正面方向から見た撮像光学系2の斜視図、図2(b)は裏面方向から見た撮像光学系2の斜視図である。
図3は、本発明の撮像装置1に適用される光路と平行な切断面から見た撮像光学系2の断面図であり、図3(a)は、流体材料7の反射面積を増大して絞り値(FNo)を小さくしたときの撮像光学系2の断面図、図3(b)は、流体材料7の反射面積を減少して絞り値(FNo)を大きくしたときの撮像光学系2の断面図である。
これらの図において、撮像装置1は、撮像光学系2を保持する筐体3内には、撮像光学系2における結像光学系を構成するために複数枚の反射ミラー4が配置されている。また、筐体3には、撮像素子5が取り付けられ、撮像光学系を通過した光を受光している。加圧部材として機能するアクチュエータ6は、高反射材料が混入されたシリコン系樹脂等からなる流体材料(ゲル)7を筐体3に固定された透明部材である透明板8との間で加圧し、流体材料7が透明板8と接する面が、反射ミラーとして機能するとともに、絞りとして機能している。ここで、アクチュエータ6は、流体材料7を流体材料7の反射面と平行な面に対して略均等に加圧するように構成されている。また、流体材料7が透明板8と接する結像光学系の反射ミラーとして機能する面は、結像光学系を構成する範囲において曲面又は平面のいずれの反射ミラーとして構成しても良い。そのため、流体材料7の反射ミラーとしての形状を規定する透明板8の流体材料7と接する面、つまり、透明板8の光の入射面と反対側の面は、曲面又は平面で構成される。また、透明板8は、光が入射する光入射面と光入射面の反対側で流体材料7が接する面に反射防止コート等の反射防止処理が施されている。撮像光学系2の筐体開口部から入射された光の撮像素子5に入射されるまでの光の光路を9に示している。なお、同図においては、結像光学系の全てを複数枚の反射ミラーで構成したが、絞り機能を有する反射ミラーを除く結像光学系の全てを反射ミラーで構成するものに限定されるものではない。
【0009】
図3に示すように、本発明の撮像光学系2においては、撮像光学系2の光学像を取込む入射口から入射した光は、撮像光学系2内の複数の反射ミラー4や絞り機能を有する流体材料7に反射されて撮像素子5に入射される。図3(a)に示すように、アクチュエータ6が流体材料7への加圧を強める方向に動作すると、流体材料7は加圧されて透明板8の光入射面の反対側の面と略平行な方向への拡張量が増大し、反射ミラーとしての反射面積が増大し、透明板8に入射した光の多くが反射される。一方、図3(b)に示すように、アクチュエータ6が流体材料7への加圧を弱める方向に動作すると、流体材料7は透明板8の光入射面の反対側の面と略平行な方向への拡張量が減少し、反射ミラーとしての反射面積が減少し、減光されて反射される。つまり、アクチュエータ6の動作により流体材料7の反射面積を変化させることにより、絞りとしての機能を持たせることができる。
【0010】
図4は、図3に示したアクチュエータ6として、モータによって駆動されるカム機構を用いたときの、光路と平行な切断面から見た撮像光学系2の断面図であり、図4(a)は、流体材料7の拡張量を増大して絞り値(FNo)を小さくしたときの撮像光学系2の断面図、図4(b)は、流体材料7の拡張量を減少して絞り値(FNo)を大きくしたときの撮像光学系2の断面図である。
これらの図において、モータによって駆動されるカム10aは、筐体3に設けられた1ないし複数のガイドピン10cと摺接する穴、又は溝を設けた押圧板10bを押圧し、流体材料7を流体材料7の反射面と平行な面に対して略均等に加圧する。なお、その他の構成は図3に示した同符号の構成に対応する。
【0011】
図4に示すように、撮像光学系2の光学像を取込む入射口から入射した光は、撮像光学系2内の複数の反射ミラー4や絞り機能を有する流体材料7に反射されて撮像素子5に入射される。図4(a)に示すように、モータによって駆動されるカム10の回転動作により、流体材料7への加圧を強める方向に動作されると、流体材料7は加圧されて透明板8の光入射面の反対側の面と略平行な方向への拡張量が増大し、反射ミラーとしての反射面積が増大し、透明板8に入射した光の多くが反射される。一方、図4(b)に示すように、モータによって駆動されるカム10の回転動作により、流体材料7への加圧を弱める方向に動作すると、流体材料7は透明板8の光入射面の反対側の面と略平行な方向への拡張量が減少し、反射ミラーとしての反射面積が減少し、流体材料7に入射した光は減光されて反射される。つまり、モータによって駆動されるカム10の回転動作により流体材料7の反射面積を変化させ、絞りとしての機能を持たせることができる。
【0012】
図5は、図3に示したアクチュエータ6として、高分子アクチュエータを用いたときの構成を示す図である。
同図において、11は高分子アクチュエータ、12は反射防止コートが施された透明板、13は流体材料7の反射面、14は反射面13で反射された反射光、15は高分子アクチュエータ11に反射されることなく、透明板8、12を透過する透過光である。流体材料7は、2枚の透明板8、12間に挟持され、高分子アクチュエータ11は、透明板12に対して垂直方向に均等に加圧可能に設けられる。このため、高分子アクチュエータ11は、流体材料7の中心を押圧されるように配置されることが望ましいので、透明板12と筐体3に、流体材料7を流体材料7の反射面と平行な面に対して略均等に加圧するように移動するガイド機構を設けてもよい。
同図に示すように、高分子アクチュエータ11が透明板12を介して流体材料7への加圧を強める方向に動作すると、流体材料7は加圧されて透明板8の光入射面の反対側の面と略平行な方向への拡張量が増大し、反射ミラーとしての反射面積が増大し、透明板8に入射した光の多くを反射させることができる。また、高分子アクチュエータ11が透明板12を介して流体材料7への加圧を弱める方向に動作すると、流体材料7は透明板8の光入射面の反対側の面と略水平な方向への拡張量が減少し、反射ミラーとしての反射面積が減少するため、流体材料7に入射した光は減光されて反射する。つまり、高分子アクチュエータ11により流体材料7の反射面積を変化させることにより、絞りとしての機能を持たせることができる。
【0013】
図6は、本発明に係る撮像装置を広ダイナミックレンジの車載用カメラに適用した場合の説明図である。
同図に示すように、車載用カメラ16として適用された広ダイナミックレンジの撮像装置を、車両の左右のヘッドライト付近に装着し、道路の白線認識17に用いると極めて有効である。
【0014】
図7は、本発明に係る撮像装置を交差点等の広ダイナミックレンジの監視用カメラに適用した場合の説明図である。
同図に示すように、監視用カメラ18として適用された広ダイナミックレンジの撮像装置を、交差点19を監視するために、周囲のビルや信号機等に設置し、24時間365日、常時交差点の監視を行うと、朝日や夕日等の強い入射光等が画像に取込まれる環境下にあっても、撮像素子が飽和することなく、状況確認を行うための撮影画像20を取得することができる。
【0015】
図8は、本発明に係る撮像装置を工場内の広ダイナミックレンジのFA(Factory Automation)用カメラに適用した場合の説明図である。
同図に示すように、FA用カメラ21として適用された広ダイナミックレンジの撮像装置を、例えば、レーザー半田付け装置22付近に装備し、電子部品とプリント基板の半田付けの様子を撮像することにより、撮像画像23をTVモニター等に表示する。これによって、作業者はレーザーの危険にさらされずに、レーザー加工状況を安全に確認することができ、場合によっては、撮像素子が飽和せずに安定した画像が得られるため、その画像を画像処理し、半田付け状況を正確に観察して自動半田付けを行うためのアシスト機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る撮像装置1の斜視図である。
【図2】図1に示した撮像装置1の撮像光学系2の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の撮像装置1に適用される光路と平行な切断面から見た撮像光学系2の断面図である。
【図4】図3に示したアクチュエータ6として、モータによって駆動されるカム10を用いたときの、光路と平行な切断面から見た撮像光学系2の断面図である。
【図5】図3に示したアクチュエータ6として、高分子アクチュエータ11を用いたときの構成を示す図である。
【図6】本発明に係る撮像装置を広ダイナミックレンジの車載用カメラ16に適用した場合の説明図である。
【図7】本発明に係る撮像装置を交差点19等の広ダイナミックレンジの監視用カメラ18に適用した場合の説明図である。
【図8】本発明に係る撮像装置を工場内の広ダイナミックレンジのFA用カメラ21に適用した場合の説明図である。
【図9】従来技術に係る光遮断式の光学絞り機構における絞り103の口径端面104での反射によるフレアやゴーストの発生を説明するための図である。
【符号の説明】
【0017】
1 撮像装置
2 撮像光学系
3 筐体
4 反射ミラー
5 撮像素子
6 アクチュエータ
7 流体材料
8 透明板
9 光路
10a モータによって駆動されるカム
10b 押圧板
10c ガイドピン
11 高分子アクチュエータ
12 透明板
13 反射面
14 反射光
15 透過光
16 車載用カメラ
17 道路の白線認識
18 監視用カメラ
19 交差点
20 撮影画像
21 FA用カメラ
22 レーザー半田付け装置
23 撮像画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、撮像光学系と、該撮像光学系により被写体の光学像を結像する撮像素子とを備える撮像装置において、
前記撮像光学系は、その結像光学系において少なくとも1つを反射ミラーで構成するとともに、前記反射ミラーの1つが絞り機能を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像光学系は、その結像光学系の全てが反射ミラーで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記絞り機能を有する反射ミラーは、透明部材と、該透明部材の入射面とは反対側の面に、反射機能を有すると共に反射面積を可変することにより絞り機能を有する流体材料を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記絞り機能を有する反射ミラーの前記透明部材の入射面とは反対側の面が、曲面または平面であることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記透明部材の表面には、反射防止処理が施されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記流体材料は、高反射率を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1つの請求項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記流体材料は、前記流体材料の反射面と平行な面に対して略均等に加圧する加圧部材と前記透明部材の間に配置されていることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか1つの請求項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記加圧部材は、モータによって駆動されるカム機構を備えていることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1つの請求項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記加圧部材は、高分子アクチュエータであることを特徴とする請求項3ないし請求項7のいずれか1つの請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記撮像装置は、広ダイナミックレンジの撮像装置であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1つの請求項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−54843(P2010−54843A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220117(P2008−220117)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】