説明

撮像装置

【課題】専用部品を必要することなく、撮像素子の光軸方向の位置調整および傾き調整を行うことができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮影光学系を通過した被写体像を電気信号に変換する撮像素子6と、前記撮像素子6を保持する保持部材5と、前記撮像素子6の受光面の周囲を包囲する防塵部材4とを備える撮像装置であって、前記防塵部材4は、前記保持部材5を前記撮影光学系から離間する方向に付勢する付勢部4dが一体で形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子の光学調整を行うことができる撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像素子の光学調整を行うことができる撮像装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された撮像装置は、CCD地板と撮像素子が固定されたCCD保持板との間に設けられた圧縮バネと、CCD保持板をCCD地板に対して光軸方向に移動させる3つの調整ネジとを含んで構成されている。
【0003】
撮像素子の光学調整を行う場合、3つの調整ネジのねじ込み量を変化させることで撮像素子を光軸方向に微調整することができ、3本の調整ネジのそれぞれのねじ込み量を変化させることで撮像素子の傾きを微調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−325555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の撮像装置では、撮像素子を光学調整するために圧縮バネ等の専用部品が必要となり部品点数が増えてしまい、撮像装置の組み付けが容易ではないという問題がある。また、圧縮バネを配置する自由度が少なく圧縮バネの配置によっては光学調整ができないという問題がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、専用部品を必要することなく、撮像素子の光軸方向の位置調整および傾き調整を行うことができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、撮影光学系を通過した被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、前記撮像素子を保持する保持部材と、前記撮像素子の受光面の周囲を包囲する防塵部材とを備える撮像装置であって、前記防塵部材に、前記保持部材を前記撮影光学系から離間する方向に付勢する付勢部が一体で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品点数の削減を図り撮像装置の組み付け性を向上させると共に、部品配置の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る撮像装置の内部構成を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態に係る撮像素子と保持板との接着状態を示す正面図である。
【図3】本実施形態に係る防塵ゴムを示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る撮像素子のビス止め前の状態を示す断面図である。
【図5】本実施形態に係る撮像素子の光学調整前の状態を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る撮像素子の光学調整後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、撮像装置としてデジタルカメラを取り上げて説明する。各図では、必要に応じてデジタルカメラの撮影方向を前方としてFrで示し、その反対方向を後方としてRrで示している。
図1は、デジタルカメラを構成する構成部品の一部を示す斜視図であり、特に撮像素子周辺の構成部品を中心に示している。
【0010】
図1に示すようにデジタルカメラは、固定地板1、レンズ鏡筒2、光学フィルター3、防塵ゴム4、保持板5、撮像素子6、フレキシブル基板7および調整ネジ8を含んで構成されている。
固定地板1は、レンズ鏡筒2および撮像素子6等を支持する。固定地板1には、レンズ鏡筒2を固定する側と相反する位置に撮像素子6を収容する凹状の収容室1aが形成されている。収容室1a内には、被写体光線の入射光量を決定し、かつ有害光線をカットする開口部1bが形成されている。収容室1aの周囲には、調整ネジ8(調整部材)が螺合される複数の雌ネジ部1cが形成されている。また、各雌ネジ部1cに隣接して光軸方向に沿った有底孔1dが形成されている。
【0011】
光学フィルター3は、撮像素子6の受光面に照射される光のうち高周波ノイズ成分をカットする。光学フィルター3は、平板状であって、固定地板1の収容室1a内の開口部1bの後方の位置で防塵ゴム4によって支持される。
防塵ゴム4(防塵部材)は、弾性力を有し、光学フィルター3と撮像素子6との間にゴミ等の異物の侵入を防止する。防塵ゴム4は、固定地板1の収容室1a内の光学フィルター3の後方の位置で保持板5によって支持される。
【0012】
保持板5(保持部材)は、撮像素子6およびフレキシブル基板7を保持する。保持板5は、平板状であって、撮像素子6のパッケージ全周の一部を収容する開口部5aが形成されている。また、保持板5は、調整ネジ8が挿通される挿通孔5bが形成されていて、調整ネジ8により固定地板1に支持される。
撮像素子6は、撮影光学系を通過した被写体像を電気信号に変換する。撮像素子6は、フレキシブル基板7に半田付けされる。
【0013】
フレキシブル基板7は、変換された電気信号を図示しない他の処理回路に送信する。
保持板5と、撮像素子6と、フレキシブル基板7とは、予め一体化された状態で組み付けられる。図2は、撮像素子6とフレキシブル基板7とを保持板5に組み付けた状態を前方から見た図である。図2に示すように、撮像素子6のパッケージ全周の一部を保持板5の開口部5aに挿入した状態で、撮像素子6のパッケージ全周と保持板5の開口部5aとの間に接着剤9を塗布することで撮像素子6が保持板5に固定される。
【0014】
本実施形態に係る、撮像素子の光軸方向の位置調整および傾き調整には、防塵ゴム4の弾性力を利用している。
ここで、防塵ゴム4の詳細な形状について図3を参照して説明する。図3(a)は、防塵ゴム4を斜め前方から見た斜視図であり、図3(b)は、防塵ゴム4を斜め後方から見た斜視図である。
【0015】
防塵ゴム4は、前方から見ると保持板5の外形よりも小さく保持板5の開口部5aよりも大きい矩形状であって、中央に光学フィルター3の外形よりも小さい開口部4eが形成されている。開口部4eの内周縁における前面は、光学フィルター3の外周縁の後面と当接する押圧部4aが形成されている。この押圧部4aは、光学フィルター3を固定地板1に対して押圧する。
一方、防塵ゴム4の外周縁の後面は、保持板5と当接される。
【0016】
防塵ゴム4は、当接部4bから押圧部4aに向かうにしたがって、前方に向かって突出するように斜めに形成されている。当接部4bと押圧部4aとを繋ぐ部分は、弾性力を有する防塵部4cを構成する。防塵ゴム4が固定地板1に取り付けられた状態では、防塵部4cは、撮像素子6の受光面の周囲を包囲する態様となり、撮像素子6の受光面に塵などが付着することを防止する。
【0017】
また、防塵ゴム4に光軸方向に沿って当接部4bと押圧部4aとの距離を縮めるような力が作用したとき、防塵部4cは、逆に当接部4bと押圧部4aとの距離を離間させるような弾性力が働く。すなわち、後述するように保持板5を光軸方向に対して前方に移動させると、防塵部4cの弾性力によって押圧部4aを介して光学フィルター3を前方に付勢し、当接部4bを介して保持板5を光軸方向に対して後方に付勢する。
このような防塵部4cの弾性力によって、光学フィルター3と防塵ゴム4との間および保持板5と防塵ゴム4との間には常に隙間がなく、光学フィルター3と撮像素子6との間を密閉にし、ゴミ等の異物の侵入を防止している。
【0018】
さらに、防塵ゴム4の当接部4bの外縁部には、光軸方向に対して前方に延出する突起状の付勢部4d(突起部)が一体で形成されている。本実施形態の防塵ゴム4は、当接部4bの上端から2つ、下端から1つの計3つの付勢部4dが形成されている。付勢部4dは、前後方向(光軸方向)に沿った円柱状であって、前後方向に伸縮可能である。各付勢部4dは、固定地板1の対応する有底孔1dにそれぞれ挿入できる外径である。
また、上述したように、固定地板1の有底孔1dと雌ネジ部1cとは互いに隣接させた位置に形成されていることから、防塵ゴム4が固定地板1に取り付けられた状態では、各付勢部4dは3つの調整ネジ8と隣接した位置に配設される。各付勢部4dは、3つの調整ネジ8のねじ込み量を変化させることで後述するように撮像素子6の光軸方向の位置を微調整したり傾きを微調整したりする役割を有する。
【0019】
次に、光学フィルター3、防塵ゴム4、保持板5、撮像素子6およびフレキシブル基板7を固定地板1に取り付ける場合について図4を参照して説明する。図4は、各構成部品を固定地板1に取り付ける前の状態を示す断面図である。なお、図4は、防塵ゴム4の下端から突出する付勢部4dの中心を通るように切断した縦断面図である。
図4に示すように、光学フィルター3と、防塵ゴム4と、撮像素子6およびフレキシブル基板7を保持した保持板5と、を順番に固定地板1の収容室1a内に組み付けていく。このとき、防塵ゴム4の各付勢部4dを固定地板1の対応する有底孔1c内に挿入する。その後、各調整ネジ8を、保持板5の各挿通孔5bに挿通させ、対応する雌ネジ部1cに螺合する。
【0020】
調整ネジ8が各雌ネジ部1cに螺合され、各構成部品が固定地板1に組み付けられた状態の縦断面図を図5に示す。
図5に示すように、防塵ゴム4の押圧部4aと光学フィルター3との間および防塵ゴム4の当接部4bと保持板5との間には隙間がない状態であって、防塵部4cによって撮像素子6の周囲が囲まれている。また、防塵ゴム4の付勢部4dの先端は固定地板1の有底孔1cの底面に当接し、付勢部4dの基端は保持板5に当接している。
【0021】
次に、固定地板1に各構成部品を組み付けた状態において、撮像素子6の受光面が光軸方向に対して位置がズレている場合や直交していない場合において、撮像素子を光軸方向に位置調整したり傾き調整したりする方法について説明する。本実施形態では、調整ネジ8のねじ込み量を変化させることで、撮像素子6の位置調整および傾き調整が行うことができる。
【0022】
まず、図5に示す状態から、3つの調整ネジ8を各雌ネジ部1cに対してねじ込み量が増加する方向に回動させる。すると、各調整ネジ8の頭部8aが保持板5の各挿通孔5dを介して、図6に示すように保持板5全体を光軸方向に対して前方(撮影光学系に近接する方向)に移動させる。このとき、付勢部4dは、保持板5により押圧されることで、光軸方向に対して縮小し径方向に拡大するように変形する(図6を参照)。この変形により付勢部4dには、保持板5を後方に付勢する方向の弾性力が発生する。また、防塵部4cも当接部4bを介して保持板5により押圧されることで、全体が撓みながら光軸方向に変形する(図6を参照)。この変形により防塵部4cには、押圧部4aを介して光学フィルター3を前方に付勢し、当接部4bを介して保持板5を後方に付勢する方向の弾性力が発生する。したがって、各調整ネジ8をねじ込み量が増加する方向に回転させる場合、付勢部4dおよび防塵部4cの弾性力に抗して螺合する必要がある。
【0023】
一方、図6に示す状態から、3つの調整ネジ8を各雌ネジ部1cに対してねじ込み量が減少する方向に回転させる。すると、各調整ネジ8の頭部8aが後方(撮影光学系から離間する方向)に移動する。付勢部4dおよび防塵部4cには保持板5を後方に付勢する方向の弾性力が発生しているので、これらの弾性力が保持板5を、各調整ネジ8の頭部8aに当接させる方向に付勢する。したがって、3つの調整ネジ8によって減少したねじ込み量に応じて、保持板5全体が光軸方向に対して後方に移動する。
【0024】
なお、3本の調整ネジ8のねじ込み量を増加させるように回転させた場合、押圧部4aと防塵部4cとに発生する弾性力は、付勢部4dに発生する弾性力よりも小さくなるように構成されている。したがって、3本の調整ネジ8のねじ込み量を変化させて保持板5を光軸方向に移動させても付勢部4dに発生する弾性力のみで撮像素子6の光学調整を行うことになる。そのため、光学フィルター3の保持および光学フィルター3と撮像素子6との間の密閉構造を保つことができる。
【0025】
このように各調整ネジ8のねじ込み量を増加および減少するように回転させると、保持板5に保持された撮像素子6も光軸方向に対して前方および後方に移動することから、撮像素子6の位置調整を行うことができる。
【0026】
また、3つの調整ネジ8のうち一つずつねじ込み量を変化させることで、保持板5の傾きを調整することができる。
まず、1つの調整ネジ8のねじ込み量が増加するように回転させると、回転させた調整ネジ8に対応する保持板5の部位のみが光軸方向に対して前方に移動し、他の2つの調整ネジ8に対応する保持板5の部位はほぼ変動しない。したがって、他の2つの調整ネジ8を繋ぐ軸線を中心として保持板5が傾動するので、保持板5に保持された撮像素子6も光軸方向に対して傾き調整を行うことができる。
【0027】
逆に、1つの調整ネジ8のねじ込み量が減少するように回転させると、主に回転させた調整ネジ8に隣接する付勢部4dによって、保持板5を調整ネジ8の頭部8aに当接させる方向に付勢する。このとき、他の2つの調整ネジ8に対応する保持板5の部位の位置はほぼ変動しない。したがって、他の2つの調整ネジ8を繋ぐ軸線を中心として保持板5が傾動するので、保持板5に保持された撮像素子6を光軸方向に対して傾き調整を行うことができる。
【0028】
このように1つの調整ネジ8のねじ込み量を増加および減少するように回転させると、保持板5に保持された撮像素子6も光軸方向に対して傾くように移動することから撮像素子6の傾き調整を行うことができる。なお、他の調整ネジ8について同様に回転させることで、自由に光軸方向に対する撮像素子6の傾きを調整することができる。
また、1つの調整ネジ8のねじ込み量が増加するように回転させたとき、回転させた調整ネジ8に隣接する付勢部4dが保持板5により押圧されるので、主にこの付勢部4dが光軸方向に対して縮小し大きな弾性力を発生する。したがって、この調整ネジ8を逆方向に回転させたとき、主にこの付勢部4dで発生している弾性力を利用して保持板5を移動させることで、調整ネジ8の回動に対する保持板5の移動の追従性が向上する。
【0029】
上述したように、防塵ゴム4の押圧部4bの外周縁に光軸方向に延出する付勢部4dを設け、付勢部4dの弾性力を利用することで、撮像素子6の光軸方向の位置調整および傾き調整において、専用部品が不要となり部品点数の削減を図ることができる。
更に、防塵ゴム4の付勢部4dを任意の位置に配置することができるので部品配置の自由度が向上し、撮像素子6の光軸方向の位置調整および傾き調整を容易に行うことができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、調整ネジ8に隣接させて付勢部4dを配置する場合についてのみ説明したが、この場合に限られず、任意の位置に配置してもよい。
また、固定地板1に有底孔1dを形成し、その有底孔1dに防塵ゴム4の付勢部4dを挿入する構成についてのみ説明したが、この場合に限られず、有底孔1dを形成しなくともよい。
また、付勢部4dは円柱状の場合についてのみ説明したが、角柱状であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:固定地板 1c:雌ネジ部 3:光学フィルター 4:防塵ゴム(防塵部材)
4a:押圧部 4b:当接部 4c:防塵部 4d:付勢部 5:保持板(保持部材)
6:撮像素子 8:調整ネジ(調整部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系を通過した被写体像を電気信号に変換する撮像素子と、
前記撮像素子を保持する保持部材と、
前記撮像素子の受光面の周囲を包囲する防塵部材とを備える撮像装置であって、
前記防塵部材は、前記保持部材を前記撮影光学系から離間する方向に付勢する付勢部が一体で形成されていることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記保持部材を前記撮影光学系に近接する方向に移動させる調整部材を備え、
前記付勢部は、前記調整部材に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記付勢部は、光軸方向に伸縮可能な突起状に形成され、
前記付勢部の先端が、前記保持部材が収容される固定地板に形成された有底孔の底面に当接していることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子の受光面に照射される光のうち高周波ノイズ成分をカットする光学フィルターを備え、
前記防塵部材は、前記光学フィルターを押圧する押圧部と、前記保持部材と当接する当接部と、前記押圧部と前記当接部との間を繋ぐ防塵部とが形成され、
前記防塵部は、前記押圧部を介して、前記光学フィルターを前記撮影光学系に向かって付勢することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記防塵部は、前記当接部から前記押圧部に向かって斜めに形成されていることを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記防塵部によって前記押圧部を介して前記光学フィルターを付勢する力は、
前記付勢部によって前記保持部材を付勢する力よりも小さいことを特徴とする請求項4または5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記付勢部は、円柱状のゴムによって形成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−135217(P2011−135217A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291276(P2009−291276)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】