説明

撮像装置

【課題】受光素子に対する太陽光の影響を有効に抑制する。
【解決手段】撮像装置は、指200から到来する光を受光する複数の受光素子34を基板32の面上に形成した受光部30と、受光部30と指200との間に設置されたバンドパスフィルター64Aと、近赤外光を検査光として指200に照射する光源とを具備する。バンドパスフィルター64Aの透過率がピークとなる波長λFと、検査光の強度がピークとなる波長λLとは、近赤外光の波長域BL内における太陽光の吸収線の波長と一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面状に配列された複数の受光素子を具備する撮像装置は、例えば生体認証用の静脈像の撮像に使用される(特許文献1)。具体的には、携帯電話機等の携帯機器に搭載された撮像装置を電子決済時の生体認証に利用することが可能である。静脈像の撮像には、生体組織に対する透過率が高い近赤外光が使用される。
【0003】
しかし、撮像装置が屋外で使用される場合(例えば撮像装置を搭載した携帯機器が屋外に位置する場合)には、撮像装置の光源から照射された近赤外光とともに太陽光が生体組織を透過して各受光素子に到達し、各受光素子の電荷量が飽和(いわゆる白飛び)して静脈像を適切に撮像できない可能性がある。以上の問題を解決するために、特許文献2や特許文献3には、可視光成分を抑制する光学フィルターを被写体と各受光素子との間に設置した認証装置が開示されている。また、特許文献4には、光源が照射する赤外光の波長域(例えば650nm〜900nm)の全部を通過帯域とする光学フィルターを被写体と各受光素子との間に設置した撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−265269号公報
【特許文献2】特開2008−168118号公報
【特許文献3】特開2009−238205号公報
【特許文献4】特開2009−172263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2や特許文献3の技術では、太陽光の可視光成分が抑制されるに過ぎないから、太陽光に含まれる近赤外光は、光源からの照射光とともに生体組織を透過して各受光素子に到達する。特許文献4の技術でも同様に、太陽光の近赤外光は光学フィルターを透過して各受光素子に到達する。したがって、特許文献2から特許文献4の技術では、実際には各受光素子の電荷量の飽和を有効に防止することが困難である。以上の事情を考慮して、本発明は、受光素子に対する太陽光の影響を有効に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の撮像装置は、被写体から到来する光を受光する複数の受光素子を第1基板(例えば基板32)に形成した受光部と、受光部と被写体との間に設置され、透過率がピークとなる波長(例えば透過ピーク波長λF)が太陽光の吸収線の波長と一致するバンドパスフィルター(例えばバンドパスフィルター64Aやバンドパスフィルター64B)とを具備する。以上の構成では、バンドパスフィルターの透過率がピークとなる波長(透過ピーク波長)が太陽光の吸収線の波長と一致するから、各受光素子に到達する太陽光の強度を低減することが可能である。透過ピーク波長と吸収線の波長とが「一致する」とは、双方の数値が完全に一致する場合のほか、双方の数値が実質的に一致する場合(双方の数値が一致するに等しい場合)も含意する。例えば、透過ピーク波長と吸収線の波長とが形式的には相違する場合でも、例えば両者間の相違が製造誤差の範囲内にあるならば、両者は実質的に一致する(すなわち本発明の範囲に属する)と観念される。
【0007】
本発明の好適な態様において、バンドパスフィルターは、アモルファスシリコンで形成された薄膜を含む。アモルファスシリコンは太陽光のうち可視光成分を吸収する性質があるから、アモルファスシリコンの薄膜を含むバンドパスフィルターを具備する構成によれば、可視光成分を遮光する独立の光学フィルターを設置する必要がない。したがって、撮像装置の薄型化が実現されるという利点がある。
【0008】
本発明の好適な態様の撮像装置は、被写体に光を照射する光源を具備し、バンドパスフィルターの通過帯域は、光源が照射する光の強度がピークとなる波長(発光ピーク波長λL)を含む。以上の態様では、光源が照射する光の強度がピークとなる波長がバンドパスフィルターの通過帯域に包含されるから、光源から照射された光がバンドパスフィルターで減衰されることが抑制される。光源が照射する光の強度がピークとなる波長(発光ピーク波長)が、バンドパスフィルターの透過率がピークとなる波長(透過ピーク波長)と一致する態様によれば、光源による照射光の減衰を抑制するという効果は格別に顕著となる。なお、発光ピーク波長と透過ピーク波長とが「一致する」とは、双方の数値が完全に一致する場合のほか、双方の数値が実質的に一致する場合(双方の数値が一致するに等しい場合)も含意する。例えば、発光ピーク波長と透過ピーク波長とが形式的には相違する場合でも、例えば両者間の相違が製造誤差の範囲内にあるならば、両者は実質的に一致する(すなわち本発明の範囲に属する)と観念される。
【0009】
本発明の好適な態様において、光源は、近赤外光(例えば700nmから900nmの波長の光)を照射し、バンドパスフィルターは、近赤外光の波長域内における太陽光の吸収線の波長を通過帯域に含む。以上の態様では、生体組織を透過する近赤外光を光源が照射するから、被写体を生体(静脈)とする生体認証装置に格別に好適である。
【0010】
本発明の好適な態様の撮像装置は、被写体からの入射光を各受光素子に集光する複数のレンズを第2基板(例えば基板42)の面上に形成した集光部を具備し、バンドパスフィルターは、第2基板の面上に形成される。例えば、バンドパスフィルターは、第2基板のうち受光部側の面上に形成され、複数のレンズは、バンドパスフィルターの面上に形成される。以上の態様では、複数のレンズが形成される第2基板の面上にバンドパスフィルターが形成されるから、バンドパスフィルターが形成される基板を第2基板とは別個に設置した構成と比較して撮像装置の薄型化が実現される。
【0011】
本発明の好適な態様の撮像装置は、受光部と集光部との間に設置され、各受光素子に対応する複数の開口部が形成された遮光部を具備する。以上の態様では、各受光素子に対応する開口部が形成された遮光部が設置されるから、受光素子に入射する光の角度を制限する(ひいては光線クロストークを防止する)ことが可能である。遮光部は、例えば光透過性の第3基板(例えば基板52)と、第3基板に形成されて複数の開口部を有する遮光層とを含む。
【0012】
本発明の撮像装置は各種の電子機器に搭載され得る。電子機器の用途や種類は任意であるが、各受光素子に到達する太陽光の強度が低減されるという本発明の作用を考慮すると、本発明の撮像装置は、太陽光が照射される可能性が高い電子機器(例えば可搬型のパソコンや携帯電話機や携帯情報端末等)に格別に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る撮像装置の斜視図である。
【図2】太陽光のスペクトルである。
【図3】第1実施形態における撮像部の断面図である。
【図4】第1実施形態におけるバンドパスフィルターの特性図である。
【図5】第2実施形態における撮像部の断面図である。
【図6】第2実施形態におけるバンドパスフィルターの断面図である。
【図7】第2実施形態におけるバンドパスフィルターの特性図である。
【図8】第3実施形態における撮像部の断面図である。
【図9】本発明の電子機器の一形態に係る可搬型のパソコンの斜視図である。
【図10】本発明の電子機器の一形態に係る携帯電話機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置100の斜視図である。撮像装置100は、利用者の指の静脈像を被写体として撮像する生体認証装置(静脈センサー)であり、図1に示すように筐体10と撮像部12と複数の光源14とを具備する。
【0015】
筐体10は、撮像部12と複数の光源14とを収容および支持する。指に対応したサイズの長方形状の開口部11が筐体10の上面に形成される。開口部11内に撮像部12の表面(以下「受光面」という)16が露出するように撮像部12は筐体10に固定される。受光面16を覆うように指が開口部11に配置された状態で指と重なる各位置に光源14が配置される。各光源14は、指に対して光(以下「検査光」という)を照射する。例えば発光ダイオードやレーザーダイオードが光源14として好適である。なお、光源14の位置や個数は任意である。例えば、利用者が指を挿入する指ガイド(図示略)を設置した構成では、指ガイドの内壁面にて指を両側から挟む位置に複数の光源14を設置することが可能である。
【0016】
各光源14が照射する検査光は、所定の波長域BL内の波長λL(以下「発光ピーク波長」という)にて強度がピークとなる近赤外光である。波長域BLは、生体組織を透過するとともに静脈中の血液の還元ヘモグロビンにより吸収される帯域であり、例えば700nm以上かつ900nmの範囲(いわゆる「生体の窓」)である。
【0017】
図2は、波長域BL内の太陽光のスペクトルである。図2から理解されるように、太陽光のうち各吸収線(フラウンホーファー線)に対応する波長の成分は他の成分と比較して強度が低い。具体的には、波長域BL内では759nmおよび823nmが太陽光の吸収線に相当する。各光源14が照射する検査光の発光ピーク波長λLは、波長域BL内の太陽光の吸収線の波長と実質的に一致する。第1実施形態では、各光源14の発光ピーク波長λLを759nmに設定する。
【0018】
図3は、撮像部12の断面図である。図3に示すように、撮像部12は、受光部30と集光部40と遮光部50と光学フィルター部60とを具備する。集光部40は、被写体となる指200と受光部30との間に介在する。また、光学フィルター部60は指200と集光部40との間に介在し、遮光部50は集光部40と受光部30との間に介在する。受光部30と遮光部50とは光透過性の接着剤38で相互に固定される。
【0019】
受光部30(例えばCMOSセンサーやCCDセンサー)は、平板状の基板32と複数の受光素子34とを含んで構成される。複数の受光素子34は、基板32のうち指200側(集光部40側,遮光部50側)の表面上に形成されて行列状に配列する。各受光素子34には入射光の光量に応じた電荷が発生する。
【0020】
集光部40は、基板42と複数のレンズ(マイクロレンズ)44とを含んで構成される。基板42は、検査光を透過させる板状部材(例えばガラス基板)である。複数のレンズ44の各々は、基板42のうち受光部30側の表面に形成され、受光部30の各受光素子34に1対1に対応するように行列状に配列する。各レンズ44の光軸はそのレンズ44に対応する受光素子34の中心を通過する。各レンズ44は、指200側からの入射光を受光素子34に対して集光する凸レンズである。複数のレンズ44の形成には、例えば基板42の面上に形成された樹脂膜の表面を加熱溶融により曲面化するリフロー法が好適である。なお、基板42と複数のレンズ44とを例えば射出成形で一体に形成することも可能である。また、基板42のうち指200側の表面に複数のレンズ44を形成した構成も採用される。
【0021】
遮光部50は、基板52と遮光層54とを含んで構成される。基板52は、検査光を透過させる板状部材(例えばガラス基板)である。基板52のうち受光部30側の表面に遮光層54が形成される。遮光層54は、検査光を吸収または反射する遮光性の材料(例えば光吸収材料が混入された樹脂材料やクロム等の金属材料)で形成された薄膜である。集光部40の各レンズ44に1対1に対応する開口部56が遮光層54には形成される。レンズ44の光軸はそのレンズ44に対応する開口部56の中心を通過する。遮光層54は、各レンズ44で集光された光がそのレンズ44に対応する受光素子34以外の受光素子34に到達すること(光線クロストーク)を防止する。各レンズ44に対応する貫通孔が形成された遮光性の平板材を遮光部50として利用することも可能である。
【0022】
図3の光学フィルター部60は、基板62とバンドパスフィルター64Aとを含んで構成される。基板62は、検査光を透過させる板状部材(例えばガラス基板)である。基板62のうち指200側の表面が受光面16に相当する。バンドパスフィルター64Aは、基板62のうち集光部40側(受光面16とは反対側)の面上に形成され、入射光のうち所定の通過帯域(波長域)BF内の成分を選択的に通過させて他の成分を遮光(吸収または反射)する光学フィルターである。
【0023】
図4の実線は、バンドパスフィルター64Aに対する入射光の波長とその光に対するバンドパスフィルター64Aの透過率との関係を示すグラフである。図4から理解されるように、バンドパスフィルター64Aの通過帯域BFは、光源14の発光ピーク波長λL(したがって波長域BL内の太陽光の吸収線の波長)を包含するように設定される。具体的には、バンドパスフィルター64Aの透過率がピークとなる波長λF(以下「透過ピーク波長」という)は、発光ピーク波長λLおよび太陽光の吸収線の波長に相当する759nmに設定される。
【0024】
図3に示すように、第1実施形態のバンドパスフィルター64Aは、第1光学フィルター642と第2光学フィルター644とを積層した構造である。第1光学フィルター642は、例えば酸化珪素(SiO2)で形成された複数の誘電体層と例えば酸化チタン(TiO2)で形成された複数の誘電体層とを交互に積層したバンドパスフィルターである。図4に破線で示すように、以上の構造の第1光学フィルター642単独では、通過帯域BFに加えて短波長側(可視光領域)にも通過帯域βが存在する。そこで、入射光のうち通過帯域β内の成分を遮光(吸収または反射)する第2光学フィルター644が第1光学フィルター642と併用される。例えば多層膜カットフィルターや色ガラスが第2光学フィルター644として利用される。
【0025】
以上の構成において、図3に矢印で示すように、光源14から出射した検査光が指200に入射し、指200の内部を伝播するとともに静脈中の血液の還元ヘモグロビンで吸収される。そして、指200から出射した光が受光面16から光学フィルター部60(基板62)に入射し、入射光のうち通過帯域BF内の成分がバンドパスフィルター64Aを透過する。バンドパスフィルター64Aを透過した光は集光部40に入射し、各レンズ44で集光されたうえで遮光層54の開口部56を通過して受光素子34に到達する。したがって、指200の静脈像が撮像される。
【0026】
第1実施形態では、バンドパスフィルター64Aの通過帯域BFが太陽光の吸収線の波長を包含するから、太陽光のうち近赤外光の波長域の全成分が受光素子34に到達し得る構成(例えば近赤外光の波長域の全部を通過帯域とする光学フィルターを設置した特許文献4の構成)と比較して、各受光素子34に到達する太陽光の強度を低減することが可能である。したがって、各受光素子34の電荷量の飽和(いわゆる白飛び)を抑制してコントラストが高い静脈像を撮像できるという利点がある。第1実施形態では特に、バンドパスフィルター64Aの透過ピーク波長λFが太陽光の吸収線の波長(759nm)に一致するから、透過ピーク波長λFが吸収線の波長と相違する構成と比較して、各受光素子34に到達する太陽光の強度を低減できるという以上の効果は格別に顕著である。屋外で使用される携帯機器(例えば後掲の図9や図10の携帯機器)には太陽光が照射される可能性が高いから、太陽光の影響が低減される第1実施形態の撮像装置100は、携帯機器に搭載される場合に格別に有効である。
【0027】
また、第1実施形態では、バンドパスフィルター64Aの通過帯域BFが光源14の検査光の発光ピーク波長λLを包含するから、バンドパスフィルター64Aでの検査光の減衰が防止される。したがって、コントラストが高い高品位な静脈像を撮像することが可能である。第1実施形態では特に、バンドパスフィルター64Aの透過ピーク波長λFが光源14の発光ピーク波長λLと一致するから、バンドパスフィルター64Aでの検査光の減衰を防止できるという以上の効果は格別に顕著である。
【0028】
ところで、指200に対する太陽光の入射角が大きい場合(例えば指200に西日が照射された場合)、指200を透過した近赤外光の波長域の全成分が受光素子に到達する特許文献2から特許文献4の技術では、静脈像の階調斑(明度のムラ)が発生する。第1実施形態では、太陽光の強度が検査光に対して相対的に低減されるから、太陽光が指200に対して斜め方向に入射するような状況でも、階調斑の少ない高品位な静脈像を撮像できるという利点がある。以上に説明したように第1実施形態では屋内外を問わず良好な静脈像を撮像できるから、静脈像を利用した生体認証の精度を向上させることが可能である。
【0029】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各構成において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0030】
図5は、第2実施形態における撮像部12の断面図である。図5に示すように、第2実施形態の撮像部12の光学フィルター部60は、第1実施形態のバンドパスフィルター64A(第1光学フィルター642および第2光学フィルター644)をバンドパスフィルター64Bに置換した構成である。バンドパスフィルター64Bは、第1実施形態のバンドパスフィルター64Aと同様に、入射光のうち通過帯域BF内の成分を選択的に通過させる。
【0031】
図6は、光学フィルター部60(バンドパスフィルター64B)の断面図である。図6に示すように、バンドパスフィルター64Bは、高屈折率層681と低屈折率層682とを交互に奇数層((2n+1)層)にわたって積層した波長選択フィルターである(nは自然数)。各高屈折率層681は例えばアモルファスシリコン(a−Si)で形成され、各低屈折率層682は例えば酸化珪素(SiO2)で形成される。バンドパスフィルター64Bの第(n+1)番目の層は、光学的距離(光路長)が、透過ピーク波長λF(発光ピーク波長λL)よりも短い600nmの1/4よりも小さくなるように膜厚が選定され、第(n+1)番目以外の各層は、光学的距離が、透過ピーク波長λF(発光ピーク波長λL)よりも短い600nmの1/4となるように膜厚が選定される。
【0032】
図7は、バンドパスフィルター64Bに対する入射光の波長とその光に対するバンドパスフィルター64Bの透過率との関係を示すグラフである。図7に示す通り、第2実施形態のバンドパスフィルター64Bの通過帯域BFは、第1実施形態のバンドパスフィルター64Aと同様に、光源14の発光ピーク波長λL(波長域BL内の太陽光の吸収線の波長)を包含する。具体的には、バンドパスフィルター64Bの透過ピーク波長λFは発光ピーク波長λL(759nm)に設定される。
【0033】
各高屈折率層681の材料であるアモルファスシリコンには、太陽光の可視光成分を吸収する性質がある。したがって、図7から理解されるように、可視光成分の遮光(吸収)に専用される独立の多層膜カットフィルターや色ガラス(第1実施形態の第2光学フィルター642)は不要である。
【0034】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、バンドパスフィルター64Bがアモルファスシリコンの高屈折率層681を含むから、可視光成分を遮光するための光学フィルター(第1実施形態の第2光学フィルター642)を独立に設置する必要はない。したがって、第1実施形態と比較して撮像装置100が薄型化されるという利点がある。
【0035】
<C:第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態における撮像部12の断面図である。図8に示すように、第3実施形態では、独立の光学フィルター部60が省略され、第2実施形態と同様のバンドパスフィルター64Bが集光部40に設置される。具体的には、バンドパスフィルター64Bは、集光部40の基板42のうち受光部30側の表面に形成される。図6を参照して説明した通り、バンドパスフィルター64Bは、アモルファスシリコン(a−Si)の高屈折率層681を含んで構成され、透過ピーク波長λFが光源14の発光ピーク波長λL(波長域BL内の太陽光の吸収線の波長である759nm)に一致する。集光部40の複数のレンズ44は、バンドパスフィルター64Bの表面に形成されて行列状に配列する。図8から理解されるように、基板42のうち指200側の表面が受光面16に相当する。
【0036】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、バンドパスフィルター64Bが複数のレンズ44とともに集光部40の基板42に形成される。したがって、基板42とは別個の基板62にバンドパスフィルター64Bを形成する第2実施形態と比較して、撮像装置100を更に薄型化することが可能である。なお、図8では第2実施形態のバンドパスフィルター64Bを例示したが、第1実施形態のバンドパスフィルター64Aを集光部40の基板42に形成することも可能である。
【0037】
<D:変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0038】
(1)変形例1
発光ピーク波長λLおよび透過ピーク波長λFは759nmに限定されない。例えば、図2を参照して説明したように、近赤外光の波長域BL内の他の吸収線の波長(例えば823nm)に発光ピーク波長λLおよび透過ピーク波長λFを一致させることも可能である。また、発光ピーク波長λLおよび透過ピーク波長λFが太陽光の吸収線の波長に完全に一致する必要はない。すなわち、発光ピーク波長λLや透過ピーク波長λFが例えば製造誤差の範囲内で太陽光の吸収線の波長とは相違しても、発光ピーク波長λLや透過ピーク波長λFは実質的には太陽光の吸収線の波長に一致すると観念される。もっとも、発光ピーク波長λLや透過ピーク波長λFが太陽光の吸収線の波長と一致する構成は、発明の効果の観点から格別に有効な構成ではあるが、太陽光の影響を有効に抑制するという所期の効果にとって必須の構成とまでは言えない。
【0039】
(2)変形例2
バンドパスフィルター64(64A,64B)を設置する位置は任意である。例えば、基板62のうち集光部40とは反対側(指200側)の表面にバンドパスフィルター64を形成した構成や、集光部40の基板42のうち複数のレンズ44とは反対側(指200側)の表面にバンドパスフィルター64を形成した構成も採用される。また、遮光部50の基板52のうち集光部40側の表面や受光部30側の表面(基板52の面上や遮光層54の面上)にバンドパスフィルター64を形成することも可能である。更に、受光部30の面上に各受光素子34を覆うバンドパスフィルター64を形成した構成も採用される。以上の例示から理解されるように、バンドパスフィルター64は、被写体(指200)から各受光素子34に至る経路上の任意の位置に形成され得る。
【0040】
<E:応用例>
前述の各形態の撮像装置100は各種の電子機器に利用される。図9は、前述の各形態の撮像装置100を利用した可搬型のパソコンの斜視図である。図9のパソコン92は、画像を表示する表示部922と、利用者が操作する複数の操作子924と、前述の各形態の撮像装置100とを具備する。撮像装置100が撮像した静脈像を利用した認証処理が実行され、パソコン92の使用開始の許否や電子決済の許否が認証結果に応じて決定される。
【0041】
図10は、前述の各形態の撮像装置100を利用した携帯電話機の斜視図である。図10の携帯電話機94は、画像を表示する表示部942と、利用者が操作する複数の操作子944と、前述の各形態の撮像装置100とを具備する。撮像装置100が撮像した静脈像を利用した認証処理が実行され、操作ロック状態の解除の許否や電子決済の許否が認証結果に応じて決定される。
【0042】
各形態の撮像装置100が適用される電子機器は以上の例示に限定されない。例えば、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistance),デジタルカメラ,ビデオカメラ,カーナビゲーション装置等にも図9や図10の例示と同様に撮像装置100が適用される。
【符号の説明】
【0043】
100……撮像装置、10……筐体、12……撮像部、14……光源、16……受光面、30……受光部、32,42,52,62……基板、34……受光素子、40……集光部、44……レンズ、50……遮光部、54……遮光層、56……開口部、60……光学フィルター部、64A,64B……バンドパスフィルター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から到来する光を受光する複数の受光素子を第1基板に形成した受光部と、
前記受光部と前記被写体との間に設置され、透過率がピークとなる波長が太陽光の吸収線の波長と一致するバンドパスフィルターと
を具備する撮像装置。
【請求項2】
前記バンドパスフィルターは、アモルファスシリコンで形成された薄膜を含む
請求項1の撮像装置。
【請求項3】
前記被写体に光を照射する光源を具備し、
前記バンドパスフィルターの通過帯域は、前記光源が照射する光の強度がピークとなる波長を含む
請求項1または請求項2の撮像装置。
【請求項4】
前記光源が照射する光の強度がピークとなる波長は、前記バンドパスフィルターの透過率がピークとなる波長と一致する
請求項3の撮像装置。
【請求項5】
前記光源は、近赤外光を照射し、
前記バンドパスフィルターは、近赤外光の波長域内における太陽光の吸収線の波長を通過帯域に含む
請求項3または請求項4の撮像装置。
【請求項6】
前記被写体からの入射光を前記各受光素子に集光する複数のレンズを第2基板の面上に形成した集光部を具備し、
前記バンドパスフィルターは、前記第2基板の面上に形成される
請求項1から請求項5の何れかの撮像装置。
【請求項7】
前記バンドパスフィルターは、前記第2基板のうち前記受光部側の面上に形成され、
前記複数のレンズは、前記バンドパスフィルターの面上に形成される
請求項6の撮像装置。
【請求項8】
前記受光部と前記集光部との間に設置され、前記各受光素子に対応する複数の開口部が形成された遮光部
を具備する請求項6または請求項7の撮像装置。
【請求項9】
前記遮光部は、
光透過性の第3基板と、
前記第3基板に形成されて前記複数の開口部を有する遮光層とを含む
請求項8の撮像装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れかの撮像装置を具備する電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217571(P2012−217571A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85277(P2011−85277)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】