説明

撮像装置

【課題】測定対象物の広範囲にわたる画像を取得できる撮像装置を提供する。
【解決手段】可視光線を検出して画像を取得する撮像素子と、測定対象物の被照射領域に可視光線を照射し測定対象物における被照射領域の隣接部分に対して被照射領域が反射する可視光線の色彩を画像により識別可能に異ならせる発光部、および被照射領域からの可視光線を検出する受信部を有し被照射領域における発光部からの距離を測定する測定部と、画像の所定範囲を抽出画像としたとき、2つの抽出画像P1、P2であって、一方の抽出画像中に発光部により可視光線を照射されている被照射領域W1の像が含まれているとともに、他方の抽出画像中における被照射領域に対応する対応領域W3が発光部により可視光線を照射されていないものを測定対象物Wが連続するようにつなぎ合わせて結合画像Q1を作成する画像結合部とを備え、画像結合部は他方の抽出画像中の対応領域の像を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭い空間内に挿入されて画像を取得する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、管路などの比較的狭い空間内で測定対象物の状態や物性などを測定することが行われている。
その一例として特許文献1に示す光ファイバを備える内視鏡(撮像装置)が知られている。この光ファイバでは、断面が略円形のライトガイド用光ファイバの中心に観察用光ファイバが、ライトガイド用光ファイバ内の観察用光ファイバから離間した位置に実写用ガラス筒が、それぞれ埋め込まれている。ライトガイド用光ファイバによって誘導された照明用の光は、ライトガイド用光ファイバの先端部から放射されて患部の照射面(測定対象物)で反射され、反射された光は観察用光ファイバで集光されて基端部に案内され観察される。
一方で、実写用ガラス筒によってレーザー光が先端部に誘導され、先端部から照射されたレーザー光は、レーザー光が照射された被照射領域を照射面に形成する。実写用ガラス筒は観察用光ファイバから所定の距離だけ離間して配置されているので、光ファイバの先端部と照射面との距離の大小によって、観察視野内における被照射領域の観測位置が変化する。
【0003】
この内視鏡は、上記光ファイバ以外に、光をライトガイド用光ファイバに導くハロゲン光源と、レーザー光を実写用ガラス筒に導くレーザー光源と、観察用光ファイバによって得られた画像を取得する撮像装置と、取得された画像を表示するモニタとを備えている。
内視鏡を使用することで、モニタによる観察視野内の中心から被照射領域までの距離と、光ファイバの先端から照射面までの距離との関係に基づいて、光ファイバの先端部から測定対象物の被照射領域までの距離を検出することができる。このとき、観察視野内で距離が測定された測定位置(被照射領域)を認識しながら、内視鏡による観察を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−285541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された内視鏡では、光ファイバの先端は、一般的に小径の挿入部に配置されるので、光ファイバの先端において測定対象物に対する充分な観察視野を確保することができない。このため、測定対象物の局所的な画像しか取得することができないという問題がある。
また、この画像にはレーザー光を照射された測定位置の像が含まれているので、画像中における測定位置の状態を測定位置の近傍の状態と比較しにくくなっている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、狭い空間内に挿入された状態で周囲を観察可能であるとともに、測定対象物上の被照射領域を確認しながら測定対象物の状態を測定し、測定対象物の広範囲にわたる画像を取得することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の撮像装置は、可視光線を検出し、検出した前記可視光線から画像を取得する撮像素子と、測定対象物の被照射領域に可視光線を照射し前記測定対象物における前記被照射領域に隣接する部分に対して前記被照射領域が反射する可視光線の明るさ及び色彩の少なくとも一つを前記画像により識別可能に異ならせる発光部、および、前記被照射領域からの赤外線、可視光線および音波の少なくとも一つを検出する受信部を有し、前記被照射領域における前記発光部からの距離、温度、および振動状態の少なくとも一つを測定する測定部と、前記撮像素子、前記発光部および前記受信部が配置された小径で長尺の挿入部と、前記被照射領域を含む前記測定対象物の一部で反射された可視光線による前記画像のうちの所定範囲を抽出画像としたとき、互いに異なる2つの前記抽出画像であって、一方の前記抽出画像中に前記発光部により可視光線を照射されている前記被照射領域の像が含まれているとともに、他方の前記抽出画像中における一方の前記抽出画像中の前記被照射領域に対応する対応領域が前記発光部により可視光線を照射されていないものを、前記測定対象物の形状が連続するようにつなぎ合わせて結合画像を作成する画像結合部と、を備え、前記画像結合部は、前記結合画像を作成するときに他方の前記抽出画像中の前記対応領域の像を用いることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の撮像装置は、可視光線および赤外線を検出し、検出した前記可視光線および赤外線から画像を取得する撮像素子と、測定対象物の被照射領域に赤外線を照射し前記測定対象物における前記被照射領域に隣接する部分に対して前記被照射領域が反射する赤外線の強度を前記画像により識別可能に異ならせる発光部、および、前記被照射領域からの赤外線、可視光線および音波の少なくとも一つを検出する受信部を有し、前記被照射領域における前記発光部からの距離、温度、および振動状態の少なくとも一つを測定する測定部と、前記撮像素子、前記発光部および前記受信部が配置された小径で長尺の挿入部と、前記被照射領域を含む前記測定対象物の一部で反射された可視光線および赤外線による前記画像のうちの所定範囲を抽出画像としたとき、互いに異なる2つの前記抽出画像であって、一方の前記抽出画像中に前記発光部により赤外線を照射されている前記被照射領域の像が含まれているとともに、他方の前記抽出画像中における一方の前記抽出画像中の前記被照射領域に対応する対応領域が前記発光部により赤外線を照射されていないものを、前記測定対象物の形状が連続するようにつなぎ合わせて結合画像を作成する画像結合部と、を備え、前記画像結合部は、前記結合画像を作成するときに他方の前記抽出画像中の前記対応領域の像を用いることを特徴としている。
【0009】
また、上記の撮像装置において、前記結合画像における前記被照射領域の位置情報を、前記測定部による測定値に対応付けて記憶する記憶部を備えることがより好ましい。
【0010】
また、上記の撮像装置において、前記撮像素子が有する検出面に前記可視光線または前記赤外線を結像させる少なくとも一つのレンズを備え、前記所定範囲は、少なくとも一つの前記レンズによる歪曲収差の小さい前記画像の中央部分であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の撮像装置によれば、狭い空間内に挿入された状態で周囲を観察可能であるとともに、測定対象物上の被照射領域を確認しながら測定対象物の状態を測定し、測定対象物の広範囲にわたる画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1実施形態の内視鏡装置の全体図である。
【図2】同内視鏡装置のブロック図である。
【図3】同内視鏡装置で測定対象物を撮像するときの状態を説明する図である。
【図4】同内視鏡装置のLCDに表示される画像を説明する図である。
【図5】同内視鏡装置の画像結合部が抽出画像をつなぎ合わせる処理を説明する図である。
【図6】同内視鏡装置の主メモリに記憶されている位置情報と距離を説明する図である。
【図7】同内視鏡装置で取得した測定対象物の画像の配置を説明する図である。
【図8】同内視鏡装置の画像結合部が作成した結合画像の図である。
【図9】同結合画像における距離を測定した被照射領域の位置を表す図である。
【図10】本発明の1実施形態の変形例の内視鏡装置における要部の斜視図である。
【図11】本発明の2実施形態のパイプカメラの先端部の斜視図である。
【図12】図11におけるA方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る撮像装置の第1実施形態を、撮像装置が内視鏡装置である場合について、図1から図10を参照しながら説明する。内視鏡装置は、管路内などに挿入され、管路内を観察するとともに測定対象物までの距離を測定する装置である。
図1に示すように、本内視鏡装置1は、前方を観察するとともに前方の画像を取得可能な小径で長尺の挿入部10と、挿入部10の基端に接続され挿入部10などを操作する操作部30と、操作部30に接続された内視鏡本体40と、挿入部10で取得された画像などを表示する表示部60とを備えている。
【0014】
図1および図2に示すように、挿入部10は、先端に配置された先端硬質部11と、先端硬質部11の基端に接続され湾曲可能な湾曲部12と、湾曲部12の基端に接続され可撓性を有する可撓管部13(図1参照)と、を有している。
一般的に、挿入部の外径として5mm以上15mm以下のものが用いられ、挿入部の長さとして2m以上20m以下のものが用いられる。
先端硬質部11の先端面には、白色の可視光線を前方に照射する発光ダイオードを有する照明ユニット16および可視光線を集光する観察レンズ(レンズ)17が配置され、先端硬質部11には、可視光線から画像を取得するCCD(撮像素子)18、内視鏡本体40の後述する通信制御部42との間で信号の送受信を行う通信制御部19、および、測定対象物Wまでの距離を測定する距離測定部(測定部)20が内蔵されている。
【0015】
観察レンズ17は、挿入部10の前方における所定の視野角θ1内の可視光線による像を集光し、CCD18の検出面18a上に結像させる。CCD18は、検出面18aに結像された可視光線を検出して画像を取得する。視野角θ1に対応して画像が取得される測定対象物W上の範囲が、表示部60で表示される観察視野となる。
通信制御部19は、通信制御部19に先端が接続され挿入部10内を通る電線23の本数を、たとえば3本にするために、複数の信号を1つの信号に重畳したり分離したりする処理を行う。
【0016】
本実施形態では、距離測定部20として、レーザー光が照射されてから測定対象物で反射されて検出されるまでの時間に基づいて測定対象物までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)型の距離センサが用いられている。
距離測定部20は、赤色のレーザー光L1を前方に照射する発光部24と、通信制御部19からの信号に基づいて発光部24を制御する光制御部25と、赤色の可視光線を検出する受光部(受信部)26と、受光部26で検出したレーザー光L1の信号を増幅する戻光検出部27と、発光部24から測定対象物Wまでの距離を算出する距離算出部28とを有している。
発光部24および受光部26は、先端硬質部11の先端面に配置されている。
光制御部25は、通信制御部19と電気的に接続されていて、通信制御部19から受信した信号に基づいて、発光部24への電力の供給状態を切替える。
使用者は、発光部24が測定対象物Wの表面の一部である被照射領域W1にレーザー光L1を照射したときに、被照射領域W1が、観察ユニット12の視野角θ1内であって、さらに、観察視野内における観察レンズ17による歪曲収差の小さい歪曲低減角θ2内に位置するように、挿入部10の先端から被照射領域W1までの距離を調節して使用する。
測定対象物Wの表面において、被照射領域W1、および被照射領域W1に隣接する隣接領域W2は、照明ユニット16により白色の可視光線で照明される。発光部24は、赤色のレーザー光L1を被照射領域W1に照射することで、隣接領域W2に対して被照射領域W1が反射する可視光線の色彩を、CCD18が取得する画像により後述する画像結合部45が識別可能となるように異ならせることができる。
【0017】
被照射領域W1と隣接領域W2とが画像により識別可能となるように色彩を異ならせるために、レーザー光L1の色彩は測定対象物Wの表面の色彩と異なるものを用いることが好ましい。また、たとえば、外界の光を遮断して被照射領域W1および隣接領域W2を白色光で100lx(ルクス)の照度で照明したときに、被照射領域W1を照射する赤色のレーザー光L1の単独の照度を150lx以上とすることが好ましい。
【0018】
受光部26には、PSD(Position Sensitive Detector)やCCDなどの、指向性が高く、前方から受光部26に向かう受信方向Dからの赤色の可視光線を検出する素子を適宜選択して用いることができる。
一般的に、発光部24から測定対象物Wまでの距離は、発光部24と受光部26との間の距離に比べて充分大きくなっている。さらに本実施形態では、発光部24と受光部26との相対位置が変わらないように構成されているので、湾曲部12を湾曲したときに、発光部24がレーザー光L1を照射する被照射領域W1から受光部26に向かう方向が受信方向Dとなる。
距離算出部28は、発光部24でレーザー光L1が照射された時から、被照射領域W1で反射されたレーザー光L1が受光部26で受光される時までの時間差に基づいて、発光部24から測定対象物Wの被照射領域W1までの距離を算出し、その結果を信号として通信制御部19に送信する。
【0019】
図1に示すように、操作部30には、湾曲部12を湾曲操作するための湾曲操作ボタン31と、内視鏡本体40、および表示部60などを操作するための主操作ボタン32とが設けられている。
【0020】
内視鏡本体40は、図1および図2に示すように、ケーシング41と、ケーシング41に内蔵された、前述の通信制御部19との間で信号の送受信を行う通信制御部42、照明ユニット16を制御する照明制御部43、CCD18が取得した画像などを処理して一時的に保存する画像処理部44、複数の画像をつなぎ合わせて結合画像を作成する画像結合部45、内視鏡本体40全体としての制御処理を行う処理部46、距離測定部20による測定結果を記憶する主メモリ(記憶部)47、および挿入部10や表示部60などに電力を供給する電源部48とを有している。
【0021】
前述の電線23は、中間部が操作部30に接続されているとともに、基端が通信制御部42に接続されている。
通信制御部42、画像処理部44、および画像結合部45は、この順で直列となるように接続されている。
通信制御部42は、通信制御部19と同様に信号の重畳、分離処理を行う。
画像処理部44は、不図示のメモリを有していて、CCD18が取得した画像などを保存することができる。
画像結合部45は、画像処理部44に保存された画像から、観察レンズ17による歪曲収差の小さい画像の中央部分である抽出画像を抽出するとともに、互いに異なる2つの抽出画像を、測定対象物Wの形状が連続するようにつなぎ合わせて結合画像を作成する。また、主メモリ47は、結合画像における被照射領域W1の位置情報を、測定部20によって測定された距離に対応付けて記憶している。画像結合部45が行う処理、および主メモリ47が記憶している具体的な内容については、後で詳しく説明する。
処理部46は、照明制御部43、画像結合部45および主メモリ47と電気的に接続されている。
【0022】
ケーシング41の外面には、処理部46および電源部48に電気的に接続されたコネクタ49が取付けられている。
【0023】
表示部60は、ケーシング41に着脱自在に配設されている。表示部60は、画像などを表示するLCD61と、コネクタ49に着脱可能な配線62とを有している。
配線62をコネクタ49に接続することで、表示部60は電源部48から所定の電力を供給されるとともに、処理部46から送信された画像などをLCD61に表示することができる。
【0024】
次に、画像結合部45が行う処理について説明する。
図3に示すように、測定対象物Wに対して挿入部10の可撓管部13を固定した状態で操作部30を操作することで、照明ユニット16により測定対象物Wの一定の範囲を照明しながら、発光部24により測定対象物Wの被照射領域W1にレーザー光L1を照射する。
このとき、図4に示すように表示部60のLCD61には、前述の観察レンズ17による歪曲収差の小さい適正範囲R(図2における歪曲低減角θ2に対応する観察視野)内に被照射領域W1が表示される。LCD61に表示される画像のうち適正範囲R内の部分が、前述の抽出画像となる。
【0025】
画像結合部45は、図5に示すように、互いに異なる2つの抽出画像P1、P2であって、抽出画像P1中に発光部24により赤色のレーザー光L1を照射されている被照射領域W1の像が含まれているとともに、抽出画像P2中における抽出画像P1中の被照射領域W1に対応する対応領域W3が発光部24によりレーザー光L1を照射されていないものをつなぎ合わせて結合画像Q1を作成する。
被照射領域W1および対応領域W3は、測定対象物Wの表面上の同一の範囲である。ただし、可撓管部13を固定した状態で湾曲部12を湾曲させて観察レンズ17による観察視野を移動させることで、この同一の範囲が、抽出画像P1中ではレーザー光L1を照射された被照射領域W1となり、抽出画像P2中ではレーザー光L1が照射されない対応領域W3となる。
画像結合部45は、2つの抽出画像P1、P2をつなぎ合わせるときに、抽出画像P1に含まれる特徴領域R1、抽出画像P2に含まれる特徴領域R2であって、特徴領域R1と特徴領域R2とが互いに同一のものをそれぞれ検出し、特徴領域R1、R2を互いに重ねるように抽出画像P1、P2をつなぎ合わせるという公知の方法を用いる。
【0026】
特徴領域とは、たとえば、画像における各画素の輝度を所定の閾値で2値化して、測定対象物全体の輪郭形状や、測定対象物を構成する面の輪郭形状などを求め、この形状の種類と形状を表す数値を特定したものである。特徴領域の形状の種類としては、直線、曲線、円、折れ線、および分岐形状などが挙げられる。また、特徴領域が直線である場合の形状を表す数値としては、直線の長さや傾きなどが挙げられる。
図5の例では、画像結合部45は、抽出画像P1における直線である特徴領域R1と、抽出画像P2における直線である特徴領域R2との長さおよび傾きを同一と認定したので、特徴領域R1、R2を重ねるように2つの抽出画像P1、P2をつなぎ合わせる。
【0027】
画像結合部45は、抽出画像P1において、隣接する画素の色彩を比較し、たとえば、隣合う画素における赤色の輝度の差が所定の閾値以上である場合に、この隣合う画素が測定対象物Wにおける隣接領域W2と赤色のレーザー光L1を照射された被照射領域W1との境界であるとして、測定対象物W上にレーザー光L1を照射された被照射領域W1の位置と大きさを特定することで隣接領域W2から被照射領域W1を識別する。そして、抽出画像P1において特徴領域R1から被照射領域W1までの方向ベクトルE1を求め、抽出画像P2において特徴領域R2から方向ベクトルE1移動した対応領域W3の周辺の画素における赤色の輝度分布を求める。この周辺の画素における隣合う画素の赤色の輝度の差が所定の閾値より小さい場合には、抽出画像P2中の対応領域W3にはレーザー光L1は照射されていないと認定する。
画像結合部45は、上記のように隣接領域W2から被照射領域W1を識別し、対応領域W3にレーザー光L1は照射されていないと認定したときに結合画像Q1を作成する。この結合画像Q1を作成するときに、抽出画像P1の被照射領域W1の像に代えて、抽出画像P2の対応領域W3の像を用いる。
【0028】
さらに、画像結合部45は、結合画像Q1における角部Oを原点として互いに直交するX軸およびY軸を設定し、結合画像Q1における被照射領域W1のX座標およびY座標(位置情報)を求めて信号に変換し、主メモリ47に送信する。なお、抽出画像P1、P2のうちX軸の座標値が最も小さい位置にある画素の位置を角部OのX座標とし、抽出画像P1、P2のうちY軸の座標値が最も小さい位置にある画素の位置を角部OのY座標とする。
主メモリ47は、図6に示すように、送信された被照射領域W1のX座標およびY座標を、抽出画像P1のもととなる画像を取得したときに測定した発光部24から被照射領域W1までの距離Kに対応付けて記憶する。
【0029】
次に、以上のように構成された内視鏡装置1を管路内に挿入して測定対象物Wを撮像するときの動作について説明する。
まず、使用者は、操作部30の主操作ボタン32を操作して内視鏡本体40の処理部46を起動する。
【0030】
続いて、照明ユニット16から白色の照明光を照射して挿入部10の前方を照明するとともに、発光部24から赤色のレーザー光L1をガイド光として照射して距離測定部20で受信方向Dからの赤色の可視光線を検出し距離を測定しながら、不図示の管路内に挿入部10を挿入していく。
このとき、表示部60のLCD61には、CCD18で取得された反射された赤色のレーザー光L1も含む可視光線による映像、および、発光部24からレーザー光L1が反射された位置までの距離が表示される。この距離は、所定の時間間隔ごとに測定値が更新される。
使用者は、LCD61に表示される映像および距離を見て挿入部10の前方の状況を確認しながら、挿入部10を管路内に挿入していく。
【0031】
図3に示すように、挿入部10の先端が測定対象物Wの近傍に達すると、測定対象物Wの一定の範囲が照明ユニット16により照明され、測定対象物Wの被照射領域W1にガイド光であるレーザー光L1が照射される。このとき、LCD61には、図4に示すように、測定対象物W、およびガイド光であるレーザー光L1が照射された被照射領域W1の映像、および発光部24から被照射領域W1までの距離Vが表示される。
ここで、図3に示すように、測定対象物Wに対して挿入部10の可撓管部13を固定した状態で、CCD18により測定対象物Wの一部の画像を取得すると同時に、距離測定部20により発光部24から被照射領域W1までの距離を測定する。同時に取得された画像および距離は、互いに対応付けられた状態で通信制御部19、42を通して、画像処理部44に送信され、画像処理部44のメモリに記憶される。
使用者は、操作部30の湾曲操作ボタン31を操作して湾曲部12を一定量湾曲させ、測定対象物Wの画像を取得すると同時に被照射領域W1までの距離を測定することを繰り返し、測定対象物Wのほぼ全体にわたる画像を取得する。このとき、図7に示すように、隣合う画像から抽出した2つの抽出画像P1、P2において、抽出画像P1中にレーザー光L1を照射されている被照射領域W1の像が含まれているとともに、抽出画像P2中における抽出画像P1に対応する対応領域W3がレーザー光L1を照射されていないように画像を取得する。
【0032】
画像結合部45は、画像処理部44のメモリに保存された複数の画像から抽出画像を抽出するとともに複数の抽出画像をつなぎ合わせ、図8に示すように、測定対象物Wのほぼ全体の像が含まれる結合画像Q2を作成する。この結合画像Q2では、レーザー光L1が照射された被照射領域W1の像に代えてレーザー光L1が照射されていない対応領域W3の像が用いられている。このため、隣接領域W2に対して対応領域W3だけ赤色のレーザー光L1で照射されていることがなく、測定対象物Wの表面の色彩を比較しやすくなっている。
また、主メモリ47は、結合画像Q2において、角部O、X軸およびY軸を設定する。続いて、図9に示すように、角部Oに対するそれぞれの抽出画像中の被照射領域W1のX座標およびY座標を求める。そして、図6に示すように、求めた被照射領域W1のX座標およびY座標を、抽出画像のもととなる画像に対応付けて画像処理部44のメモリに記憶された距離Kに対応付けて記憶する。
本実施形態では、表示部60のLCD61に、測定対象物Wの結合画像Q2に多数の被照射領域W1を重ね合わせて表示することができる。この状態において、被照射領域W1を指定すると、主メモリ47に記憶された位置情報と距離Kとの対応付けから、指定された位置に対応する距離Kが主メモリ47から読み出され距離Kの値がLCD61に表示される。
【0033】
このように、測定対象物Wに対して挿入部10の可撓管部13を固定した状態で測定対象物Wの撮像を終えた後で、必要に応じて他の測定対象物の撮像を同様に繰り返して行う。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡装置1によれば、使用者は、たとえば、CCD18で取得した映像をLCD61で確認しながら管路内に挿入部10を挿入していく。そして、測定対象物Wの近傍に挿入部10の先端を配置し、発光部24から赤色のレーザー光L1を測定対象物Wの被照射領域W1に照射し、受光部26で被照射領域W1からの可視光線を検出することで距離測定部20により発光部24から被照射領域W1までの距離を測定する。
使用者は、挿入部の湾曲部12を湾曲させつつCCD18により可視光線による画像を取得することで、互いに異なる2つの画像の中央部分である抽出画像P1、P2であって、抽出画像P1中に発光部24によりレーザー光L1を照射されている被照射領域W1の像が含まれているとともに、抽出画像P2中に発光部24により可視光線を照射されていない対応領域W3の像が含まれているものを取得する。
画像結合部45は、この2つの抽出画像P1、P2を測定対象物Wの形状が連続するようにつなぎ合せて結合画像Q2を作成する。その際に、結合画像Q2に、抽出画像P1の被照射領域W1の像に代えて抽出画像P2の対応領域W3の像を用いる。
【0035】
このように、CCD18が配置されている挿入部10が小径かつ長尺であって、CCD18を測定対象物Wの広範囲の画像を一度に取得する仕様にできない場合であっても、画像結合部45により取得した画像をつなぎ合わせることで、測定対象物Wのより広範囲の画像であって発光部24によりレーザー光L1を照射された領域のない結合画像Q2を作成することができる。
また、測定対象物Wの画像を取得するときに、発光部24により隣接領域W2に対して被照射領域W1が識別可能となっているので、使用者が被照射領域W1の像の位置を容易に認識して、つなぎ合わせるための画像を容易に取得することができる。
【0036】
内視鏡装置1は主メモリ47を備えるため、結合画像Q2中における被照射領域W1のX座標およびY座標を指定することで、発光部24から被照射領域W1までの距離Kを主メモリ47から読み出すことができる。
CCD18で得られた画像から抽出画像を抽出しているため、観察レンズ17に歪曲収差がある場合であっても、抽出画像の歪みを抑えることができる。
【0037】
なお、前記第1実施形態では、撮像装置は内視鏡装置1であり、発光部24および受光部26を有する距離測定部20は内視鏡装置1の先端硬質部11に配置されているとした。しかし、図10に示すように、撮像装置が、内視鏡装置1に対して距離測定部20を備えない構成とした内視鏡装置71と、内視鏡装置71の挿入部72の先端硬質部11の外周面に取付けられる距離測定ユニット(距離測定部)73とを備える内視鏡システム2であるとしてもよい。距離測定ユニット73を挿入部72の先端硬質部11に、不図示のバンド部材などで取付けるようにしてもよい。
内視鏡システム2をこのように構成しても、湾曲部12を一定量湾曲させ、測定対象物Wの画像を取得すると同時に距離測定ユニット73からレーザー光L1を照射して被照射領域W1までの距離を測定することを繰り返すことで、前記第1実施形態と同様に、測定対象物Wのほぼ全体にわたる画像を取得することができる。
また、撮像装置が、前述の内視鏡装置71と、内視鏡装置71の挿入部72を挿通可能なチャンネルが形成され先端に距離測定部が配置されたガイドチューブ装置とを備えるとしてもよい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図11および図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。本実施形態では、撮像装置がパイプカメラである場合について説明する。
図11および図12に示すように、パイプカメラ3は、前記内視鏡装置1の挿入部10に代えて挿入部80を備えた構成となっている。
挿入部80は、先端に配置された観察ユニット81と、先端が観察ユニット81に接続され、観察ユニット81を自身の軸線C1回りに回動可能に支持する棒状の支持体82とを有している。
【0039】
観察ユニット81は、支持体82に接続されたベース部材85と、ベース部材85に回転可能に接続されたユニット本体86と、支持体82の先端部に取付けられ、ベース部材85およびユニット本体86を覆うカバー87とを有している。
ベース部材85の基端は、支持体82により軸線C1回りに回動可能に支持されている。ベース部材85は、自身の先端側に、互いに離間した状態で軸線C1に平行に延びる一対の腕部85aを有している。
ユニット本体86は、一対の腕部85aの間に配置されるとともに、一対の腕部85aの先端部の間に架け渡された軸部材88に接続されることで、軸部材88の軸線C2回りに回動可能に支持されている。
本実施形態では、カバー87は、樹脂などの透明な材料で球殻状に形成されている。
【0040】
ユニット本体86は、箱状のケーシング91と、ケーシング91の先端面において、中央部に配置された観察レンズ17、観察レンズ17を囲うようにリング状に配置された複数の発光ダイオード92、および複数の発光ダイオード92を挟むように配置された発光部24および受光部26と、を有している。
ケーシング91には、不図示のCCD18、光制御部25、戻光検出部27、および距離算出部28が内蔵されている。
一般的に、パイプカメラ3において、カバー87の外径として15mm以上20mm以下のものが用いられ、挿入部80の長さとして10m以上30m以下のものが用いられる。
支持体82は、通常の使用においては湾曲しない程度に剛性の高い材料で形成されている。
【0041】
パイプカメラ3は、図示はしないが、ベース部材85を軸線C1回りに回動させる機構、および、ユニット本体86を軸線C2回り回動させる機構を備えていて、ベース部材85を軸線C1回りに360°、ユニット本体86を軸線C2回りに180°それぞれ回動させることができる。
【0042】
このように構成されたパイプカメラ3によれば、狭い空間内に挿入された状態で周囲を観察可能であるとともに、測定対象物W上の被照射領域W1を確認しながら測定対象物Wの状態を測定し、測定対象物Wの広範囲にわたる画像を取得することができる。
【0043】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、発光部24が赤色のレーザー光L1を照射し、被照射領域W1と隣接領域W2との色彩を異ならせることで、画像結合部45が被照射領域W1と隣接領域W2とを識別可能となるように構成した。しかし、発光部が所定の照度以上の白色の可視光線を照射して隣接領域W2より被照射領域W1の明るさを異ならせることで、画像結合部45が被照射領域W1と隣接領域W2とを識別可能となるように構成してもよい。
このとき、たとえば、照明ユニット16が被照射領域W1および隣接領域W2を白色光で100lxの照度で照明したときに、発光部24が被照射領域W1を照射する白色光単独の照度を150lx以上とすることが好ましい。
【0044】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、受信部である受光部26が検出した被照射領域W1で反射された赤色の可視光線の検出結果に基づいて、測定部である距離測定部20が発光部24から被照射領域W1までの距離を測定するとした。しかし、たとえば、受信部が被照射領域W1からの赤外線を検出し、その検出結果に基づいて測定部が被照射領域W1における温度を測定するように構成してもよいし、受信部が被照射領域W1からの音波を検出し、その検出結果に基づいて測定部が被照射領域W1における振動状態を測定するように構成してもよい。
【0045】
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、発光部24が赤色のレーザー光L1を照射し、CCD18が可視光線を検出するものとし、発光部24は、照射するレーザー光L1により被照射領域W1と隣接領域W2とを画像結合部45が識別可能となるように色彩を異ならせるとした。
しかし、発光部が赤外線を照射し、挿入部10のCCDが可視光線および赤外線を検出可能なものであり、発光部は、自身が照射する赤外線により被照射領域W1と隣接領域W2とを画像結合部45が識別可能となるように赤外線の強度を異ならせるように構成してもよい。また、CCDが可視光線および赤外線を検出可能なものであってもよい。
同様に、発光部が紫外線を照射し、CCDが可視光線および紫外線を検出可能なものであり、発光部は、自身が照射する紫外線により被照射領域W1と隣接領域W2とを画像結合部45が識別可能となるように紫外線の強度を異ならせるように構成してもよい。
【0046】
発光部24から照射される光がレーザー光などの平行光の場合、発光部24から被照射領域W1までの距離Kが長くなるのに伴って、観察視野内での被照射領域W1の大きさが小さくなる。このため、前記第1実施形態および第2実施形態では、予め、距離Kに対する画像上での被照射領域W1の大きさの関係を求めておくことで、画像結合部45が被照射領域W1を識別するのに要する時間を短縮ことができる。
前記第1実施形態および第2実施形態では、前記第1実施形態では、CCD18が取得した画像のうち観察レンズ17による歪曲収差の小さい部分である抽出画像から結合画像を作成した。しかし、観察レンズ17による歪曲収差が問題ないほど小さいと考えられる場合などには、抽出画像は画像と同じものであるとしてよく、CCD18が取得した画像全体から結合画像を作成してもよい。
【0047】
前記第1実施形態および第2実施形態では、後に距離測定部20で測定した距離を必要としない場合などには、内視鏡装置またはパイプカメラに主メモリ47は備えられなくてもよい。
前記第1実施形態および第2実施形態では、距離測定部20としてTOF型の距離センサを用いた。しかし、これに限ることなく、三角測量方式や位相差検出方式などの距離センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 内視鏡装置(撮像装置)
2 内視鏡システム(撮像装置)
3 パイプカメラ(撮像装置)
10、72、80 挿入部
17 観察レンズ(レンズ)
18 CCD(撮像素子)
20 距離測定部(測定部)
24 発光部
26 受光部(受信部)
45 画像結合部
47 主メモリ(記憶部)
73 距離測定ユニット(距離測定部)
P1、P2 抽出画像
Q1 結合画像
W 測定対象物
W1 被照射領域
W3 対応領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線を検出し、検出した前記可視光線から画像を取得する撮像素子と、
測定対象物の被照射領域に可視光線を照射し前記測定対象物における前記被照射領域に隣接する部分に対して前記被照射領域が反射する可視光線の明るさ及び色彩の少なくとも一つを前記画像により識別可能に異ならせる発光部、および、前記被照射領域からの赤外線、可視光線および音波の少なくとも一つを検出する受信部を有し、前記被照射領域における前記発光部からの距離、温度、および振動状態の少なくとも一つを測定する測定部と、
前記撮像素子、前記発光部および前記受信部が配置された小径で長尺の挿入部と、
前記被照射領域を含む前記測定対象物の一部で反射された可視光線による前記画像のうちの所定範囲を抽出画像としたとき、互いに異なる2つの前記抽出画像であって、一方の前記抽出画像中に前記発光部により可視光線を照射されている前記被照射領域の像が含まれているとともに、他方の前記抽出画像中における一方の前記抽出画像中の前記被照射領域に対応する対応領域が前記発光部により可視光線を照射されていないものを、前記測定対象物の形状が連続するようにつなぎ合わせて結合画像を作成する画像結合部と、
を備え、
前記画像結合部は、前記結合画像を作成するときに他方の前記抽出画像中の前記対応領域の像を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
可視光線および赤外線を検出し、検出した前記可視光線および赤外線から画像を取得する撮像素子と、
測定対象物の被照射領域に赤外線を照射し前記測定対象物における前記被照射領域に隣接する部分に対して前記被照射領域が反射する赤外線の強度を前記画像により識別可能に異ならせる発光部、および、前記被照射領域からの赤外線、可視光線および音波の少なくとも一つを検出する受信部を有し、前記被照射領域における前記発光部からの距離、温度、および振動状態の少なくとも一つを測定する測定部と、
前記撮像素子、前記発光部および前記受信部が配置された小径で長尺の挿入部と、
前記被照射領域を含む前記測定対象物の一部で反射された可視光線および赤外線による前記画像のうちの所定範囲を抽出画像としたとき、互いに異なる2つの前記抽出画像であって、一方の前記抽出画像中に前記発光部により赤外線を照射されている前記被照射領域の像が含まれているとともに、他方の前記抽出画像中における一方の前記抽出画像中の前記被照射領域に対応する対応領域が前記発光部により赤外線を照射されていないものを、前記測定対象物の形状が連続するようにつなぎ合わせて結合画像を作成する画像結合部と、
を備え、
前記画像結合部は、前記結合画像を作成するときに他方の前記抽出画像中の前記対応領域の像を用いることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
前記結合画像における前記被照射領域の位置情報を、前記測定部による測定値に対応付けて記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子が有する検出面に前記可視光線または前記赤外線を結像させる少なくとも一つのレンズを備え、
前記所定範囲は、少なくとも一つの前記レンズによる歪曲収差の小さい前記画像の中央部分であることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−78710(P2012−78710A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225791(P2010−225791)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】