説明

撮像装置

【課題】フラッシュ光が届かないような被写体の撮影においても、フラッシュ撮影を行った場合と同様な特殊効果を得られるようにする。
【解決手段】被写体像を撮像する撮像部と、撮像部から出力される1フレームのアナログ画像信号を1フレームのデジタル画像信号に変換するA/D変換部と、アナログ画像信号またはデジタル画像信号にゲインを掛けるゲイン部と、A/D変換部から出力される複数のフレームのデジタル画像信号を積算して1フレームのデジタル画像信号として記録する記録部と、ゲイン部により複数のフレームのアナログ画像信号またはデジタル画像信号に掛けるゲインを、複数のフレームうちの1フレームまたは複数のフレームで変化させるようにゲイン部を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割露光画像の合成を行う撮影モードを有する撮像装置に関し、特に分割露光時の感度設定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラにおいて長時間露光を行う場合、ノイズレベルが増加するため、長時間露光を行って得られる画像の画質劣化が問題となっていた。このため、長時間露光時の画質劣化を防止するために、特許文献1には、分割露光に関する技術、即ち短時間露光の積算によって長時間露光に相当する画像を得る技術が開示されている。また、複数画像を合成して1枚の画像を得る技術の応用として、複数画像の露出を変化させる技術がある。
【0003】
特許文献2には、撮像素子のダイナミックレンジを超えるコントラストを持つ被写体を黒つぶれ・白飛びを抑えて画像を得るHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−236422号公報
【特許文献2】特開平10−150620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来からの写真撮影技法のひとつとして、フラッシュ撮影の露光中のフラッシュ発光タイミングを指定することで撮影画像に特徴的な効果を与える先幕シンクロ・後幕シンクロ撮影が知られている。また露光中に複数回フラッシュ発光を行うことで、動く被写体の異なるタイミングでの位置・姿勢を1つの画像に表現するマルチフラッシュ撮影も知られている。しかしながら、フラッシュ光を使用する撮影技法が有効なのは、フラッシュ光が届く被写体に限られる。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラッシュ光が届かないような被写体の撮影においても、フラッシュ撮影を行った場合と同様な特殊効果を得られるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる撮像装置は、被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から出力される1フレームのアナログ画像信号を1フレームのデジタル画像信号に変換するA/D変換手段と、前記アナログ画像信号または前記デジタル画像信号にゲインを掛けるゲイン手段と、前記A/D変換手段から出力される複数のフレームのデジタル画像信号を積算して1フレームのデジタル画像信号として記録する記録手段と、前記ゲイン手段により複数のフレームの前記アナログ画像信号またはデジタル画像信号に掛けるゲインを、前記複数のフレームうちの1フレームまたは複数のフレームで変化させるように前記ゲイン手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フラッシュ光が届かないような被写体の撮影においても、フラッシュ撮影を行った場合と同様な特殊効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタルカメラシステムの構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る分割露光撮影を示すフローチャート図。
【図3】本発明の一実施形態に係る分割露光撮影を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の撮像装置の一実施形態であるデジタルカメラシステム100の構成を示す図である。図1において、デジタルカメラシステム100は、被写体側から順に、撮影レンズ101、絞り102、メカシャッタ108及び撮像素子103を備える。また、撮像素子103の出力が供給される増幅器104、増幅器104の出力が供給される自動利得制御(AGC)回路105、AGC回路105の出力が供給されるアナログ/デジタル(A/D)変換器106を備える。また、A/D変換器106の出力が供給される映像信号処理部107、映像信号処理部107の出力が供給される画像メモリ130、合焦検出部142及び露出検出部143、映像信号処理部107と接続されたホワイトバランス検出部141を備える。また、信号処理ユニット190、信号処理ユニット190の出力が供給されるコントローラ120を備える。また、コントローラ120の出力が各々供給されるズーム制御部121、フォーカス制御部122、絞り制御部123、シャッタ制御部124及びフラッシュ制御部125を備える。さらに、信号処理ユニット190に接続された撮影モード設定部160及び入出力インターフェース(I/F)部170も備える。
【0012】
そして、信号処理ユニット190の出力はAGC回路105にも供給され、合焦検出部142及び露出検出部143の各出力は信号処理ユニット190に供給され、画像メモリ130の出力はI/F部170に供給されるようになされている。
【0013】
また、デジタルカメラシステム100は、フラッシュ制御部125により制御されるフラッシュ109をさらに備え、レリーズボタン検出部150と、撮影モード設定部160の各出力は信号処理ユニット190に供給されるようになされている。
【0014】
上述のようなデジタルカメラシステム(以下、単にデジタルカメラと言う)100は、撮影モード設定部160を操作することにより、例えば、通常撮影モード及び長秒露光モードを設定することができるようになされている。
【0015】
以下、図1を用いて、デジタルカメラ100の動作について説明する。先ず、被写体像は、撮影レンズ101によりデジタルカメラ100に入力されると、絞り102を介して撮像素子103の受光面に投影される。
【0016】
このとき、撮影レンズ101のズーム位置及びフォーカス位置は、コントローラ120に接続されたズーム制御部121及びフォーカス制御部122により制御される。また、絞り102の絞り量も、コントローラ120に接続された絞り制御部123により制御される。
【0017】
撮像素子103は、CCD(Charged Coupled Device)等からなり、受光した被写体像を電気信号に変換して増幅器104に供給する。増幅器104は、撮像素子103からの電気信号(アナログ画像信号であり、以下、映像信号と言う)を増幅してAGC回路105に供給する。AGC回路105は、信号処理ユニット190からの制御信号に基づいて、増幅器104からの映像信号を増幅又は減衰してA/D変換器106に供給する。
【0018】
A/D変換器106は、AGC回路105からの映像信号をデジタル化して画像データ(デジタル画像信号)として映像信号処理部107に供給する。このとき、信号処理ユニット190は、映像信号処理部107に供給された画像データの信号レベルを検出する。そして、検出した信号レベルが所定のレベルより低い場合には、AGC回路105で映像信号に与える利得が上がるような制御信号を生成してAGC回路105に供給する。また、検出した信号レベルが所定のレベルより高い場合には、AGC回路105で映像信号に与える利得が下がるような制御信号を生成してAGC回路105に供給する。これにより、AGC回路105から出力される映像信号は、映像信号処理部107で行われる信号処理に適した所定のレベル幅の信号となる。
【0019】
映像信号処理部107は、A/D変換器106からの画像データに所定の信号処理を施して画像メモリ130に記憶すると共に、ホワイトバランス検出部141、合焦検出部142及び露出検出部143に各々供給する。また映像信号処理部107には、撮影レンズ101の持つ光学特性であるディストーションを補正するディストーション補正部110がある。ディストーション補正部110は、予め撮影レンズ101の特性に応じた補正用パラメータを保持している。それに加えて、信号処理ユニット190から与えられるパラメータに応じて、ディストーションを100%補正するか、光学系の焦点距離を必要以上に変化させない適度な補正量の補正を行うかなど、補正強度が制御できる。
【0020】
ホワイトバランス検出部141は、映像信号処理部107からの画像データのホワイトバランスの状態を検出し、その検出結果を映像信号処理部107に供給する。合焦検出部142は、映像信号処理部107からの画像データから撮影レンズ101の焦点を検出し、その検出結果を信号処理ユニット190に供給する。露出検出部143は、映像信号処理部107からの画像データから撮像素子103における露光量を検出し、その検出結果を信号処理ユニット190に供給する。
【0021】
映像信号処理部107は、ホワイトバランス検出部141からの検出結果に基づいて、A/D変換器106からの画像データに対してカラーバランスの調整を行う。したがって、画像メモリ130には、カラーバランスの調整が行われた画像データが記憶(記録)されることとなる。
【0022】
信号処理ユニット190は、合焦検出部142及び露出検出部143からの各検出結果に基づいて、撮影条件設定のための制御信号を生成してコントローラ120に供給する。コントローラ120は、信号処理ユニット190からの制御信号に基づいて、ズーム制御部121、フォーカス制御部122、絞り制御部123、シャッタ制御部124及びフラッシュ制御部125に各々制御信号を供給する。
【0023】
したがって、ズーム制御部121、フォーカス制御部122及び絞り制御部123は、各々、コントローラ120からの制御信号に基づいて、撮影レンズ101のズーム位置、撮影レンズ101のフォーカス位置、及び絞り102の絞り量が適切な状態となるように制御することとなる。上述のようにして、デジタルカメラ100における撮影条件が適切に設定される。
【0024】
撮影モード設定部160を操作することにより、分割露光撮影(複数のフレームの撮影)を行うモードが選択可能となっている。図2は、分割露光を行うモードにおける、デジタルカメラの撮影フローを示した図である。
【0025】
信号処理ユニット190はレリーズボタン検出部150によりレリーズボタン押下が検出されると撮影動作を行う。撮影における感度設定は、予め信号処理ユニット190による算出、またはユーザーによる任意の指示により決められた感度に基づくゲイン1(第1のゲイン)と、撮影中に操作可能なI/F部170に含まれる感度変更指示(ゲイン指示)ボタンによる感度変更指示がなされたときに採用されるゲイン1よりも高感度であるゲイン2(第2のゲイン)が、コントローラ120に与えられて選択可能になっている。感度変更指示に関しては、ユーザーによる感度変更指示操作に基づくものであるだけでなく、予め所定のタイミングで感度変更指示がなされるモード(パターン)も備えており、一連の露光中に使用する感度値が3通り以上であるモードも備えている。また露光中に使用する感度値はユーザーにより事前に設定可能であり、使用される感度値が自動的に得られるモードも選択可能である。撮影における露光時間は、予め信号処理ユニット190による算出、またはユーザーによる任意の指示により決められた時間であり、コントローラ120に供給されて制御される。
【0026】
S101では露光時間から露光の分割数を以下の式で計算する。
【0027】
分割数=露光時間/分割露光単位時間
分割露光単位時間は、分割露光1回(1フレーム)あたりの露光時間となる。これは撮像素子103の特性に応じて個別に設定される時間である。例えば、シャッタ速度4秒、分割露光単位時間1秒の場合、
分割数=4秒/1秒=4
となる。余りが発生したら最後の分割は分割露光単位時間より短い時間の露光となる。
【0028】
S102では露光を開始するために、撮像素子に対し電子シャッタによるグローバルリセット動作を行い、蓄積電荷をクリアする。S103で、ユーザーによる感度変更指示があったかを判断し、感度変更指示がなければS104に進み、前述したゲイン1に基づく設定を増幅器104とAGC回路105に設定する。露光蓄積動作を行った後、S105で分割露光の最後であるかを判断する。そして、最後の露光でないと判断されれば、メカシャッタ108を閉じないまま、S106で撮像素子103の電荷をライン単位(水平1行ずつの単位)で読み出す。S107では画像の積算処理として、読み出した画像データを順次デジタル加算する。
【0029】
一方、S103で感度変更指示があったときはS108に進み、前述のゲイン2に基づく設定を増幅器104とAGC回路105に設定する。露光蓄積動作を行った後、S109で分割露光の最後であるかを判断し、最後の露光でないと判断されれば、S106同様メカシャッタ108を閉じないまま、S110で撮像素子103の電荷をライン単位で読み出す。
【0030】
S111で、露光開始直後の先頭フレームであるかを判断し、先頭フレームである場合はS112進み、先頭フレームの露光量調節を行う。輝度調節については、図3を参照して説明する。
【0031】
図3(a)は、撮像素子103の露光と読み出しを、横軸を時間軸として示した図である。縦軸は撮像素子103上の位置であり、撮像素子103の電荷をライン単位で読み出すため、撮像素子上部と下部とで読み出しタイミングが異なっていることが表現されている。またグローバルリセットにより蓄積電荷がクリアされて露光が開始する先頭フレームと、メカシャッタが閉じて露光が終了する最終フレームでは、撮像素子103の上部と下部で露光時間が異なることも表現されている。
【0032】
図3(b)は、図3(a)で示した先頭フレーム部分を書き出したものである。分割単位露光時間をTu、読み出し時間をTrとすると、撮像素子最上部の露光時間はTu、撮像素子最下部の露光時間はTu+Trであることがわかる。この先頭フレームにおいて他のフレーム(ゲイン1(G1))と異なるゲイン2(G2)を掛けて読み出し、各フレームを積算して1つの画像を得る場合、トータルの露光量が撮像素子上部と下部で異なることになる。それを補正するためには、ライン毎に読み出す撮像素子の出力データに対し、ライン毎に異なるゲインを掛けることで露光量を調節する必要がある。
【0033】
先頭フレームにG2、第2フレーム以降にG1を掛ける場合、露光開始から第1分割読み出し完了のタイミングまでの露光量を、露光時間×ゲイン値で考えると、撮像素子最上部、最下部の露光量は、それぞれ次のようになる。
【0034】
最上部:Tu・G2+Tr・G1
最下部:(Tu+Tr)・G2
よって露光量は、(G2−G1)・Trだけ、撮像素子最下部の方が大きくなる。この露光量の差異を無くすために、撮像素子103の最上部から最下部までの距離をLと置き、最上部からの距離xのラインに対して掛けるゲインとして、次のようなゲインを掛ける。
【0035】
Gx=G2−(G2−G1)・Tr/(Tu+Tr)・x/L
図3(c)は、図3(a)で示した最終フレーム部分を書き出したものである。最終フレームの露光時間をTeとすると、撮像素子最上部の露光時間はTe、撮像素子最下部の露光時間はTe−Trであることがわかる。この最終フレームにおいて他のフレーム(G1)と異なるゲイン(G2)を掛けて読み出し、各フレームを積算して1つの画像を得る場合、トータルの露光量が撮像素子上部と下部で異なることになる。先頭フレームと同様にそれを補正するために、撮像素子103の最上部からの距離xのラインに次のようなゲインを掛ける。
【0036】
Gx=G2−(Tr/Te)(G2−G1)・(L−x)/L
ここで、図2のシーケンスの説明に戻る。S113ではS107同様、読み出した画像データを順次デジタル加算する。
【0037】
次に、S105で最終フレームであったとき、S114でメカシャッタ108を閉じて、撮像素子103を遮蔽状態にすることで露光を終了する。S115はS106と同様に撮像素子103の電荷を読み出し、S116でS107と同様に画像の積算処理を行い、撮影動作を終了する。
【0038】
最後にS109で最終フレームであったとき、S117でS114同様メカシャッタ108を閉じて露光を終了し、S118ではS106と同様に撮像素子103の電荷を読み出す。S119では図3で説明したように最終フレームでゲインG2を使用する場合の露光量調節を行い、S120ではS107と同様に積算処理を行い、撮影動作を終了する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から出力される1フレームのアナログ画像信号を1フレームのデジタル画像信号に変換するA/D変換手段と、
前記アナログ画像信号または前記デジタル画像信号にゲインを掛けるゲイン手段と、
前記A/D変換手段から出力される複数のフレームのデジタル画像信号を積算して1フレームのデジタル画像信号として記録する記録手段と、
前記ゲイン手段により複数のフレームの前記アナログ画像信号またはデジタル画像信号に掛けるゲインを、前記複数のフレームうちの1フレームまたは複数のフレームで変化させるように前記ゲイン手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段の露光中に操作可能なゲイン指示手段をさらに備え、前記制御手段は、前記A/D変換手段から出力される複数のフレームのデジタル画像信号を積算して1フレームのデジタル画像信号として記録するモードであるときに、前記撮像手段の露光中に前記ゲイン指示手段が操作された場合、露光中のフレームのアナログ画像信号またはデジタル画像信号に掛けるゲインを変化させるように前記ゲイン手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ゲイン指示手段が操作された場合に、前記アナログ画像信号または前記デジタル画像信号にかけるゲインを第1のゲインから該第1のゲインよりも高い第2のゲインに変化させるように前記ゲイン手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記アナログ画像信号または前記デジタル画像信号にかけるゲインの変化のパターンを選択する選択手段をさらに備え、前記制御手段は、前記ゲインを前記選択手段により選択された前記ゲインの変化のパターンに応じて変化させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−106150(P2013−106150A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247963(P2011−247963)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】