説明

撮像装置

【課題】撮像素子の前面側に配置された防塵ガラスに付着した塵埃が撮影された画像に写り込むのを防止すると共に撮像素子に入射する迷光の発生を防止する。
【解決手段】被写体からの被写体光による像を撮像する撮像素子14aを有するセンサユニット14と、前記センサユニットよりも前記被写体側に配置された防塵光学部材22を備え、前記防塵光学部材と協働して内部に密閉空間を形成する構造体20と、を有し、前記構造体は、前記撮像素子の受光面と前記防塵光学部材との間の距離を所定の距離に設定し、前記密閉空間内の前記防塵光学部材に近接した位置に絞り部材28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換式デジタルカメラ等の撮像装置は、撮影(交換)レンズの着脱時にカメラ本体の内部空間が外部に晒される構造を有していることから、外部からカメラ本体の内部空間に侵入する塵埃が撮像部に付着するという問題を有する。このため、クイックリターンミラーが収容されているミラーボックス構造部材の前面に透明カバーを配置し、ミラーボックス構造部材内部を密閉空間として塵埃の撮像素子への付着を防止する電子カメラ装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−241869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の電子カメラ装置においては、透明カバーを介してミラーボックス構造部材内部に入射した被写体光がミラーボックス構造部材の底面などで反射することにより生じた迷光が撮像素子に入射し撮影された画像にゴーストが発生する場合があった。
【0005】
本発明の目的は、撮像素子の前面側に配置された防塵ガラスに付着した塵埃が撮影された画像に写り込むのを防止すると共に、撮像素子に入射する迷光の発生を防止する撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のような解決手段により上記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施の形態に対応する符号を付して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
本発明の撮像装置は、被写体からの被写体光による像を撮像する撮像素子(14a)を有するセンサユニット(14)と、前記センサユニットよりも前記被写体側に配置された防塵光学部材(22)を備え、前記防塵光学部材と協働して内部に密閉空間を形成する構造体(20)と、を有し、前記構造体は、前記撮像素子の受光面と前記防塵光学部材との間の距離を所定の距離に設定し、前記密閉空間内の前記防塵光学部材に近接した位置に絞り部材(28)を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像素子の前面側に配置された防塵ガラスに付着した塵埃が撮影された画像に写り込むのを防止すると共に、撮像素子に入射する迷光の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係るカメラの内部構成を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係る絞り部材により迷光の発生を防止している状態を示す図である。
【図3】実施の形態に係る防塵ガラスの押さえ部材の構成を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る絞り部材を備えていない場合に迷光が発生している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るデジタルカメラ(以下、カメラという。)について説明する。図1は、実施の形態に係るカメラの内部構成を示す断面図である。なお、図1はカメラ1のカメラ本体10から交換レンズ40(図2参照)を取り外した状態を示している。また図1においては、カメラ本体10の外観カバーの図示を省略している。なお以降では、図1,2における左側には被写体が存在するため、図中の左側を光軸X方向における被写体側または前面側と称することもある。また、図中の右側を光軸X方向におけるカメラ背面側(背面側)と称することもある。
【0011】
カメラ本体10はボディマウント10Mを備え、ボディマウント10Mに交換レンズ40に設けられているレンズマウントを結合させることによって、カメラ本体10に対して交換レンズ40が装着される。従って、カメラ本体10に対して撮影対象に応じた焦点距離や機能を有する種々の交換レンズ40を装着することができる。
【0012】
カメラ本体10の背面側に配置されている撮像基板12の前面側にはセンサユニット14が保持されている。センサユニット14は、被写体光を電気信号に変換するCCDまたはCMOSなどにより構成される撮像素子14a及び撮像素子14aの前面側に配置されるカバーガラス14bを備えている。センサユニット14の前面側の周縁部には、防塵用のゴム部材16が配置され、ゴム部材16を介してセンサユニット14aの前面側にローパスフィルタ18が配置されている。ここでローパスフィルタ18は、撮像素子14aの受光面に結像される被写体像にモアレなどが発生するのを抑制するためのフィルタである。
【0013】
ローパスフィルタ18の前面側には、角筒形状の遮光構造体20が配置されている。遮光構造体20の背面側とセンサユニット14のカバーガラス14bの前面側との間には、防塵用のゴム部材16が配置され、遮光構造体20の背面側とセンサユニット14のカバーガラス14bとを密着させている。また遮光構造体20の前面側には防塵用の光学部材として防塵ガラス22が配置されている。ここで防塵ガラス22の前面側表面には、帯電防止膜が形成されており、背面側表面には、反射防止膜が形成されている。
【0014】
防塵ガラス22の背面側と遮光構造体20の前面側との間には、遮光構造体20の前面側の周縁部に設けられた防塵用のゴム部材24が配置されている。防塵ガラス22は押さえ部材26により遮光構造体20の前面側に固定される。これにより防塵ガラス22の背面側と遮光構造体20の前面側とを密着させている。
【0015】
従って、遮光構造体20の前面側と防塵ガラス22の間には防塵用のゴム部材24が配置され、遮光構造体20の背面側とセンサユニット14のカバーガラス14bの間には防塵用のゴム部材16が配置されていることから、遮光構造体20の内部を密閉空間とすることができる。従って、密閉空間内への塵埃の侵入を防止することができる。
【0016】
遮光構造体20は、撮像素子14aの受光面と防塵ガラス22の前面との間の光軸方向における距離が所定の距離となる光軸方向の長さを有し、内壁面20aにシボ加工が施されている。ここで所定の距離とは、直径が0.1mm未満の塵埃が防塵ガラス22の表面に付着した場合に、塵埃の像が撮像素子14aの受光面において結像しない距離、即ちコントラストが極めて低くなる(例えば7パーセント未満)距離を撮像素子14aの画素ピッチから求めたものである。
【0017】
また、遮光構造体20は、遮光構造体20内の密閉空間の防塵ガラス22に近接した位置に絞り部材28を備えている。絞り部材28は、黒色の樹脂により形成されており、矩形形状の開口部を形成する縁部28aは、絞り部材28の撮像素子14a側に遮光構造体20の内壁面20a側に傾斜する傾斜面を有する。
【0018】
ボディマウント10Mは、カメラ構造体34の前面側にマウントネジ36によって固定されている。ボディマウント10Mの背面側、即ち防塵ガラス22側には、有害光を遮る絞り部30が形成されている。また、撮像基板12は、カメラ構造体34の背面側にマウントネジ36によって固定されている。
【0019】
この実施の形態に係るカメラ1においては、図2に示すように、絞り部材28により交換レンズ40を介して遮光構造体20の内壁面20aに入射する被写体光Rを遮るため、被写体光Rが内壁面20aで反射することにより生じる迷光の発生を防止することができる。また、絞り部材28の撮像素子14a側の縁部28aが遮光構造体20の内壁面20a側に傾斜する傾斜面を有することから、被写体光がこの傾斜面で反射することにより迷光となるのを防止することができる。更に防塵ガラス22の背面側の表面に反射防止膜が形成されているため、防塵ガラス22の背面側の表面から迷光が発生するのを防止することができる。
【0020】
ここで、本実施形態との比較のために、絞り部材28を備えていない場合の被写体光Rについて説明する。図4は、絞り部材28を備えていない点のみで図2と相違している。図4において被写体光Rは、遮光構造体20の内壁面20aで反射して図示のように撮像素子14aの撮像面上に入射してしまう。すなわち被写体光Rが迷光となって撮像素子14aに入射して画像にゴーストが発生する要因となる。遮光構造体20の内壁面20aの間隔(長さ)が十分に短ければこのような迷光が生じる恐れはない。しかしながら防塵ガラス22に付着した粉塵等の異物の像を撮像素子で撮像させないようにする(像をぼかすようにする)ためには、撮像素子14aの撮像面と防塵ガラス22との光軸方向における間隔を、ある程度確保する必要がある。この間隔を確保するということは、換言すれば遮光構造体20の内壁面20aの光軸方向の長さを長くするということである。
【0021】
上記図4を用いて説明したように、本実施形態に示す防塵ガラス22をカメラ本体10に構成する場合には、内壁面20aの光軸方向の長さをある程度確保する必要がある。本実施の形態(図1、2に示す絞り部材28)を採用すれば、たとえ防塵ガラス22に異物が付着したとしても、その像の写りこみを抑制することができるとともに、迷光によるゴーストの発生も抑制することができる。
【0022】
また、この実施の形態によれば、防塵ガラス22と、センサユニット14との間には、外部と隔絶された密閉空間が形成される。これにより塵埃の密閉空間内部への侵入を抑止できるので、交換レンズ40を交換する際などに、外部から侵入した塵埃がセンサユニット14(撮像素子14aの受光面やローパスフィルタ18)に付着して、塵埃の像が撮像素子14aの受光面に結像するといった不具合を防ぐことができる。なお、交換レンズ40を交換する際に、塵埃が防塵ガラス22の外側表面(前面)に付着した場合には、直径が0.1mm以上のものであれば容易に視認することができるため、拭き取るなどにより容易に除去することができる。また、直径が0.1mm未満のものであれば防塵ガラス22が塵埃の像が撮像素子14aの受光面において結像しない距離に配置されているため、画像に写り込むのを防止することができる。
【0023】
なお、上述の実施の形態においては、押さえ部材26により防塵ガラス22を遮光構造体20に固定しているが、図3(a)に示すように、押さえ部材26の防塵ガラス側押さえ部26aと防塵ガラス22の表面との間に所定の隙間x(例えば0.1mmの隙間)を形成するようにしてもよい。この場合においては、防塵ガラス22の表面に付着した塵埃(直径が0.1mm以上の塵埃)を使用者が拭き取る場合に、拭き取れなかった塵埃を隙間に押し込み保持させることにより、防塵ガラス22の被写体光が通過する領域の塵埃を除去することができる。
【0024】
また、図3(b)に示すように、押さえ部材26の防塵ガラス側押さえ部26aと防塵ガラス22の表面との間に所定の隙間を形成し、防塵ガラス側押さえ部26aに対向する領域の防塵ガラス22の表面に両面テープなどの粘着性部材42を配置するようにしてもよい。この場合においては、防塵ガラス22の表面に付着した塵埃を使用者が拭き取る場合に、拭き取れなかった塵埃を隙間に押し込むと粘着性部材42に貼りついて、塵埃が再度、防塵ガラス22の被写体光が通過する領域に付着するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…カメラ、10…カメラ本体、10M…ボディマウント、12…撮像基板、14…センサユニット、14a…撮像素子、16…ゴム部材、18…ローパスフィルタ、20…遮光構造体、20a…内壁面、22…防塵ガラス、24…ゴム部材、26…押さえ部材、28…絞り部材、42…粘着性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの被写体光による像を撮像する撮像素子を有するセンサユニットと、
前記センサユニットよりも前記被写体側に配置された防塵光学部材を備え、前記防塵光学部材と協働して内部に密閉空間を形成する構造体と、
を有し、
前記構造体は、前記撮像素子の受光面と前記防塵光学部材との間の距離を所定の距離に設定し、前記密閉空間内の前記防塵光学部材に近接した位置に絞り部材を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記絞り部材の開口部を形成する縁部は、前記絞り部材の前記撮像素子側において、前記構造体の内壁面側に傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記絞り部材は、黒色の樹脂製であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記構造体は、所定の長さを有する筒型形状であって、内壁面にシボ加工が施されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記所定の距離は、前記防塵光学部材の表面に付着した所定の大きさの物体の像が前記撮像素子の受光面において結像しない距離であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記防塵光学部材は、前記構造体の前面側に押さえ部材により固定され、
前記押さえ部材の前記防塵光学部材側押さえ部と前記防塵光学部材の表面との間に所定の隙間が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記防塵光学部材側押さえ部に対向する前記防塵光学部材の表面に粘着部材が配置されていることを特徴とする請求項6記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13017(P2013−13017A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145815(P2011−145815)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】