説明

撮像装置

【課題】微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を安価に撮像することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】撮像装置100は、点光源として機能する孔34と、撮像を行う撮像素子53とを、基板60の互いに反対側に位置させた状態で備える。孔34から出た光は、L2/L1倍に拡大されて撮像素子53の撮像面53Aに至り、レンズなしでの拡大撮像が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための技術についての需要がある。
例えば、特開2008−128677、特開2009−115590などに開示されているバイオセンサ技術で、そのような需要がある。
参考までに記述すると、これらバイオセンサ技術は、以下のようなものである。
【0003】
このバイオセンサ技術では、検出の対象となるバイオ物質(例えば、抗原。以下、簡単のため、バイオ物質が抗原であるとして説明を進める。)を検出するにあたり、まず、検出の対象となる抗原と対になる抗体でその表面を修飾したナノメートルオーダーの大きさの磁性ナノ粒子を、抗原が含まれる可能性の高い溶液に混入させ攪拌する。すると、磁性ナノ粒子を修飾する抗体に、溶液中に存在すれば抗原が抗体抗原反応により結合する。
次に、抗体を介して抗原が付着した磁性ナノ粒子を含む溶液を、その表面の任意の場所に抗体を付着させた基板の上に供給する。そうすると磁性ナノ粒子に抗体を介して結合していた抗原は、基板上の抗体に抗体抗原反応により結合する。基板上には、基板、抗体、抗原、抗体、磁性ナノ粒子の並びで、磁性ナノ粒子が固定される。
次に、基板上に、マイクロメートルオーダーの大きさの磁性マイクロ粒子を混入させた溶液を供給し、そして基板上に磁界を発生させる。そうすると、磁化された磁性ナノ粒子に、これも磁化された磁性マイクロ粒子が磁力により多くの場合複数結合する。基板上のどこに抗体が付着させられているかが予め分かっている場合、その場所に磁性マイクロ粒子が複数存在しているのであれば、抗原が含まれる可能性の高かった上述の溶液中に抗原が存在したと判断することができる。
このような技術において、基板上の抗体が付着させられている部位に磁性マイクロ粒子が存在しているか否かは、光学的な撮像により検出することが可能である。顕微鏡を用いれば、マイクロメートルのオーダーの対象物を撮像することは技術的に困難ではないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マイクロメートルのオーダーの対象物を撮像するために用いられる顕微鏡はそれほど安価なものではなく、数百万円以上の価格であることも稀ではないので、バイオセンサ技術を広範に普及させることには困難がある。
【0005】
また、これには限られないが、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための技術には需要があるが、これを安価に実現する技術は知られていない。
【0006】
本願発明は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を安価に撮像することを可能とする技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本願発明は、大きく2つの発明に分けられる。2つの発明をそれぞれ第1発明、第2発明として以下説明を行う。
【0008】
第1発明は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像装置であって、前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられる、照明光を照射する光源、及び撮像を行う素子である撮像素子を備えており、前記光源は点光源であり、前記撮像素子は、多数の画素が配列されたその撮像面を前記基板に臨ませるようにされている、撮像装置である。
第1発明の撮像装置は、基板と、撮像素子との間に像光の拡大のために通常用いられるレンズや反射鏡を持たないという点で斬新なものである。しかしながら、点光源である光源からの照明光は、基板を透過して撮像素子に至るまでの間に拡大するので、第1発明の撮像素子では光学的に拡大した対象物の像を得られる。
また、第1発明の撮像装置は、レンズを用いないものであり、NAが非常に小さく、焦点深度が深いため、基板の厚みがある程度大きかったとしても、また基板の撮像装置に近い側から遠い側までのどこに対象物が存在したとしても、或いは、基板の撮像素子からの距離が幾らか変化しても、対象物を焦点が合った状態で撮像できる。
光源を点光源とするのは、撮像素子の撮像面上にできる対象物の像の輪郭をなるべく明確にするためである。もっとも、光源をまったく面積のない点光源とすることは、理論上はともかく事実上不可能であり、本願でいう点光源は、ピンホールなどで実現される事実上の点光源であれば足りるものとする。
【0009】
光源と基板の間の距離と、基板と撮像素子の間の距離とは、任意に定めることができる。光源から基板までの距離をL1、光源から撮像素子までの距離をL2とすると光学倍率はL2/L1となるので、必要な倍率が得られるように光源と基板と撮像素子の位置を決定すればよい。
また、前記撮像素子は、撮像されることが予定された前記対象物の前記撮像面上の像が前記画素の大きさよりも大きくなるように、前記基板から離して配されるようになっていてもよい。撮像素子の撮像面上の画素よりも撮像面上に落ちた対象物の像が小さい場合、対象物の像の形状を撮像素子で捉えることが難しくなる。対象物の像を撮像素子で捉えるには、撮像面上に落ちた対象物の像が複数の画素に跨るとよい。上述の条件により、撮像面上に落ちた対象物の像が複数の画素に跨るという条件が充足されることになる。撮像面上に落ちた対象物の像は、複数個の画素に跨るのが良いが、例えば3×3の9個の画素に跨るのであれば、像の形状を把握するのが容易になるであろう。
もっとも、対象物が「有る」、又は「無い」ということを検出するための装置として本願の撮像装置が用いられるのであれば、撮像面上に落ちた対象物の像は必ずしも複数の画素に跨るようになっている必要はない。一つの画像が像を捉えたか否かのみで、対象物の有無を検出可能である。
【0010】
第1発明の撮像装置は、前記基板を、前記光源と前記撮像素子の間の所定の位置に位置決めして保持する保持手段を備えていてもよい。このような保持手段があれば、L2/L1で定められる上述の光学倍率を所望の数値で再現性を持って得ること、或いは撮像面上に落ちた対象物の像が複数の画素に跨るようにさせることが可能となる。
保持手段が存在する場合、保持手段と、光源と、撮像素子の相対的な位置関係を可変とすることができる。例えば、固定された基板に対して光源と、撮像素子を可変としたり、固定された光源と撮像素子の間で基板の位置を可変としたり、或いは光源、基板、撮像素子の位置をすべて可変とすることができる。いずれの場合でも、撮像が予定された対象物の大きさが異なる場合であっても、L2/L1で定められる上述の光学倍率を所望の数値で再現性を持って得ること、或いは撮像面上に落ちた対象物の像が複数の画素に跨るようにさせることが可能となる。
なお、保持手段は、必ずしも基板を固定するものではなく、その上に基板を載置するなど、基板を単に係止するものであっても構わない。
【0011】
本願発明者は、第1発明の撮像装置と同様の作用効果を奏する方法も提案する。
その方法の一例は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像方法であって、前記基板と、照明光を照射する点光源である光源と、撮像を行う素子であり多数の画素が配列された撮像面を有する撮像素子とを、前記光源と撮像素子とが前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられるように、且つ前記撮像面が前記基板に臨ませられるように配する過程と、前記光源から前記撮像素子に向けて照明光を照射する過程と、を含んでいる、撮像方法である。
【0012】
本願発明者が提案する第2発明は以下のようなものである。
第2発明は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像装置であって、前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられる、照明光を照射する光源、及び撮像を行う素子である撮像素子を備えており、前記光源は平行光を照射する平行光源であり、前記撮像素子は、多数の画素が配列されたその撮像面を前記基板に臨ませるようにされている、撮像装置である。
第2発明の撮像装置は、第1発明の撮像装置と同様、基板と、撮像素子との間に像光の拡大のために通常用いられるレンズや反射鏡を持たないという点で斬新なものである。しかしながら、平行光源である光源からの照明光は、基板を透過して撮像素子に至るまでの間に拡大しないので、第2発明の撮像装置の撮像素子では、第1発明の場合と異なり、光学的に拡大した対象物の像を得られない。
また、第2発明の撮像装置は、第1発明の撮像装置と同様の理由で焦点深度が深いため、基板の厚みがある程度大きかったとしても、また基板の撮像装置に近い側から遠い側までのどこに対象物が存在したとしても、或いは、基板の撮像素子からの距離が幾らか変化しても、対象物を焦点が合った状態で撮像できる。
第2発明で光源を平行光源とするのは、撮像素子の撮像面上にできる対象物の像の輪郭をなるべく明確にするためである。もっとも、光源を完全な平行光源とすることは理論上はともかく事実上ほとんど不可能であり、本願でいう平行光源は、点光源とコンデンサレンズの組合せ、点光源とフレネルレンズの組合せ等による平行光源として知られている周知の平行光源でも足りるものとする。
【0013】
第2発明の前記撮像素子は、撮像されることが予定された前記対象物の前記撮像面上の像が前記画素の大きさよりも大きくなるようなものとなっていてもよい。そのような撮像素子を選択すれば、撮像面上に落ちた対象物の像が複数の画素に跨ることになり、対象物の像を撮像素子で捉えるに好適である。撮像面上に落ちた対象物の像は、複数個の画素に跨るのが良いが、例えば3×3の9個の画素に跨るのであれば、像の形状を把握するのが容易になるであろう。
もっとも、対象物が「有る」、又は「無い」ということを検出するための装置として本願の撮像装置が用いられるのであれば、撮像面上に落ちた対象物の像は必ずしも複数の画素に跨るようになっている必要がないことは第1発明の場合と同様である。
【0014】
第2発明の撮像装置も、前記基板を、前記光源と前記撮像素子の間の所定の位置に位置決めして保持する保持手段を備えていても構わない。 第2発明の撮像装置の保持手段は、第1発明の撮像装置の場合と同様、必ずしも基板を固定するものではなく、その上に基板を載置するなど、基板を単に係止するものであっても構わない。
なお、第2発明の撮像装置は第1発明の撮像装置と同様、保持手段が存在する場合、保持手段と、光源と、撮像素子の相対的な位置関係を可変とすることができる。もっとも、第2発明の場合には、これらの相対的な位置関係を変更しても光学倍率の変更は生じないため、保持手段と、光源と、撮像素子の相対的な位置関係を可変とする意味はそれほどない。
【0015】
本願発明者は、第2発明の撮像装置と同様の作用効果を奏する方法も提案する。
その方法の一例は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像方法であって、前記基板と、平行光を照射する平行光源である光源と、撮像を行う素子であり多数の画素が配列された撮像面を有する撮像素子とを、前記光源と撮像素子とが前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられるように、且つ前記撮像面が前記基板に臨ませられるように配する過程と、前記光源から前記撮像素子に向けて照明光を照射する過程と、を含んでいる、撮像方法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の第1実施形態による撮像装置の構成を概略的に示す側面図。
【図2】図1に示された撮像装置の保持部の構造を示す平面図。
【図3】図1に示された撮像装置の撮像部の構造を示す平面図。
【図4】図1に示された撮像装置における照明光の振舞いを概略的に示す側面図。
【図5】本願発明の第2実施形態による撮像装置の構成を概略的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい第1、第2実施形態を説明する。両実施形態の説明では、共通する対象には共通の符号をふすものとし、また、共通する説明は場合により省略するものとする。
【0018】
≪第1実施形態≫
第1実施形態の撮像装置100の概略を、図1に示す。この撮像装置100は、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するためのものである。
【0019】
撮像装置100は、ベース10と、ポール20とを備えている。
ベース10は、板状の形状をしており、ポール20及びそれに固定される後述する部品を安定感を持って支えられるようにするためのものである。ベース10は、ある程度の重さが必要となるため、必ずしもこの限りではないがこの実施形態では金属製とされている。
ポール20は、ベース10に対してこの実施形態では鉛直な方向に立てられた柱である。必ずしもこの限りではないが、ポール20は細長い円筒形状となっている。
【0020】
ポール20には、上から、照明部30、保持部40、撮像部50が設けられている。照明部30、保持部40、撮像部50はそれぞれ、板である板材31、41、51、及び固定部32、42、52を介してポール20に固定されている。
必ずしもこの限りではないが、固定部32、42、52はいずれも、ポール20に対して上下方向に移動でき、且つ任意の位置でポール20に対して固定できるようになっている。これにより、照明部30、保持部40、撮像部50はいずれも、ポール20の長さ方向における任意の位置に位置決め可能となっている。
なお、固定部32、42、52をポール20の長さ方向における任意の位置に位置決め可能とするための構造は、例えば、ポール20の外側をネジ切りしておくとともに、固定部32、42、52内に、固定部32、42、52に対して回転可能とされ、且つポール20に対して螺合するナットを仕込んで置く、或いは固定部32、42、52とポール20の少なくとも一方に磁石を仕込んで置き、固定部32、42、52をポール20の任意の位置に吸着できるようにする等、公知、周知の適当な技術を採用することが可能である。
かかる構造は、固定部32、42、52のすべてにおいて同一でも良いし、そうでなくても良い。
この実施形態では、以上のように、照明部30、保持部40、撮像部50のすべてがポール20の長さ方向に移動できるようになっていたが、例えば、保持部40がポール20に固定され、照明部30と撮像部50のみがポール20の長さ方向に移動できるようになっていてもよいし、逆に照明部30と撮像部50がポール20に固定され、保持部40のみがポール20の長さ方向に移動できるようになっているなど、照明部30、保持部40、撮像部50のうちの幾つかがポール20の長さ方向に移動できるようになっていても構わない。
【0021】
照明部30は、上述したように、板材31を備えている。この板材31は、必ずしもこの限りではないが、矩形で且つ金属製であり、その略中心に、すり鉢状の凹部33が設けられている。凹部33の中心における板材31の厚さは極めて薄くなっており、その中心には極めて小さな直径の孔34が穿たれている。この孔34は、所謂ピンホールであり、この実施形態では具体的には数μm程度の大きさである。
板材31の上には、略直方体形状のケース35が載置されている。ケース35は、孔34を覆っており、光を通さない素材、この実施形態では適当な金属でできている。
ケース35の天井部分には、孔34にその光軸が向くようにして照明36が配置されている。照明36は、特定の波長の光を照射するものであり、図示せぬスイッチによりオン・オフ可能である。照明36から出た光は、孔34からのみケース35の外部へ出るようになっている。これにより、照明部30は、その孔34が事実上の点光源として機能するようになっている。なお、孔34を介して照明部30から照射される照明36からの光は、照明36の発光する部分(例えば、照明36が白熱灯であるときのフィラメント、或いは照明36がLEDであるときの発行するLEDチップ)そのものの形状を、投影してしまう。そのようなことを防ぐためには、照明36から後述する基板までの間の適当な位置に、光を拡散する拡散板(例えば、摺ガラス)を配しておくのがよい。
このように、この実施形態における照明部30は、点光源からの照明光を基板に向けて照射するようになっている。その限りにおいて、照明部30の構成を変更することは可能である。
【0022】
保持部40は、上述のように板材41を備えている。図2に保持部40の平面図を示すが、板材41は、図2の平面図に示したような矩形であり、また、矩形の開口43を備えている。開口43の大きさは、その内側の縁の適当な部分で、撮像の対象となる基板の外側の縁の適当な部分を保持(この実施形態では、下から支える)できるような大きさ、形状となっている。
図1、図2における60が、基板であるが、図2に示したように、開口43は、その内側の縁で、基板60の長手方向の両端の縁を下から支えられるようになっている。なお、板材41は、公知の適宜な技術により、開口43の大きさを可変としていてももちろん構わない。また、板材41は単に下から基板60を支えるだけでなく、着脱自在に基板60を固定する、例えばクリップの如き公知の適当な手段を備えていても構わない。
【0023】
撮像部50は、上述のように板材51を備えている。板材51の上の所定の位置には、撮像素子53が載置されている。撮像素子53は、板材51に固定されていてもよく、また固定されていなくてもよいが、この実施形態では板材51に固定されている。
撮像素子53は、撮像部50の平面図である図3に示したように平面視矩形であり、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などにより構成可能である。撮像素子53は、画素を多数有する撮像面53Aを備えている。撮像面53Aは、図1における上側であり、撮像装置100の使用時には、基板60を挟んで点光源となる孔34に臨むことになる。
撮像素子53は、図示せぬディスプレイと接続されており、撮像素子53が撮像した画像は、この実施形態ではリアルタイムで、そのディスプレイに表示されるようになっている。ディスプレイと撮像素子53の接続は無線でも構わないし、有線でも構わないが、この実施形態では図示を省略のケーブルにより有線での接続が行われている。また、撮像素子53とディスプレイとの接続は、直接なされていても構わないし、或いはコントロールボックス等の所定の機材を挟んでなされても構わない。例えば、ディスプレイが、パーソナルコンピュータのディスプレイである場合、撮像素子53は、コンピュータ本体と接続され、そのコンピュータがディスプレイと接続されるという構成になる。もっとも、撮像素子53で撮像した画像の確認が不要なのであれば、撮像素子53は必ずしもディスプレイと接続されている必要はなく、撮像素子53で撮像された画像のデータが、ハードディスクドライブなどの所定の記録媒体に記録されるようになっていても構わない。
【0024】
次に、この撮像装置100の使い方について説明する。
この撮像装置100で撮像されるのは、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板60であり、より詳細には、その基板60の表面、又は内部に存在する対象物である。基板60は、必ずしも透明である必要はないし、その一部が不透明であっても良いが、照明部30からの照明光が、撮像素子53での撮像が可能な程度に撮像素子53の撮像面53Aに届く程度の透光性を有する必要がある。
この実施形態の基板60は、本願明細書の背景技術の欄で説明したバイオセンサ技術における基板であり、撮像の対象となる対象物は、マイクロメートルオーダーの大きさの磁性マイクロ粒子であるものとする。撮像用の基板の作り方は繰り返しになるので省略するが、背景技術の欄で説明した通りである。なお、撮像装置100で撮像する場合には、磁性マイクロ粒子と磁性ナノ粒子の結合を維持するため、磁性マイクロ粒子と磁性ナノ粒子を磁化したままにしておく必要があり、そのために磁性マイクロ粒子と磁性ナノ粒子を磁界中に置いておく必要がある。それを実現するには、例えば、基板60の例えば直ぐ傍に位置するようにして、板材41の上に磁石を置いておけばそれで足りる。
なお、磁性マイクロ粒子を含む溶液の表面の動きにより撮像に影響がでる場合には、溶液の上に薄いカバーガラスを載せることもできる。
【0025】
撮像装置100で、基板60を撮像するには、基板60を図1、2に示したような位置となるように、板材41の上に載置し、そして、照明部30、保持部40、撮像部50の相互の位置関係を調整する。もっとも、かかる照明部30、保持部40、撮像部50の相互の位置関係の調整と、基板60の板材41の上への載置の先後は不問である。
次いで、照明36のスイッチをオンにし、照明36に照明光を照射させる。照明光は、図1に二点鎖線で示したように、孔34を通過する。上述したように孔34は、点光源として機能する。点光源としての孔34からの照明光は、基板60を透過して撮像部50の撮像素子53に向かい、撮像素子53の撮像面53Aに捉えられる。
こうして、撮像素子53は、基板60における対象物を撮像する。撮像素子53が撮像を行うことによって生成された画像についてのデータは、図示せぬケーブルを経て図示せぬディスプレイに送られる。ディスプレイには、撮像素子53が撮像を行って生成された画像が、ほぼリアルタイムで表示されることになる。
【0026】
この場合の、照明光の振舞いを、図4の側面図に二点鎖線で概略的に示す。なお、61は磁性マイクロ粒子である対象物である。
照明光は、直径Xの孔34を絞られた状態で通過して、基板60へ向かう。そして、基板60を通過して、撮像素子53の撮像面53Aへ向かう。このとき、孔34から基板60までの距離をL1、孔34から撮像素子53の撮像面53Aまでの距離をL2とすると、この撮像装置100における光学倍率はL2/L1となり、対象物61の像は、L2/L1倍に拡大される。
図4では、撮像素子53の下方に、二点差線による二重の円61A、61Bを示しているがこれは、撮像素子53の撮像面53Aに落ちる対象物61の像である。円61Aと、円61Bの中程に想定される円の大きさが拡大された対象物の像となるが、その大きさは、対象物61のL2/L1倍になっている。円61Aの内側は、撮像素子53にて撮像された画像上で焦点の合った状態となり、円61Bと円61Aの間の部分は同画像上で多少ぼけた状態となる。
好ましいのは、円61Bがある程度大きく、また、円61Aがなるべく円61Bに近い大きさとなっている場合である。
円61B(或いは、円61Aと、円61Bの中程に想定される円)の大きさは撮像素子53で撮像される画像における対象物61の大きさであるから、対象物の形状まで把握したいのであれば、これがある程度大きい方が良い。この場合、円61Bは、撮像面53Aにある画素の複数(例えば、2、3個)、できれば3×3の9個以上に跨っているのが好ましい。孔34の直径Xと、孔34から基板60までの距離L1と、孔34から撮像素子53の撮像面53Aまでの距離L2と、対象物61の大きさと、撮像面53A上の画素の大きさとが予め判っているのであれば、円61Bが3×3個以上の画素に跨る条件は簡単に導けるのであるから、照明部30、保持部40、撮像部50の相互の位置関係を調整する場合には、そのような条件を満たすように調整を行えばよい。そして、この実施形態では、そのような条件を満たすような調整を行った結果、円61Bは5×5個の画素に跨ることになった。
もっとも、対象物の有無のみを把握したいのであれば、円61Bは、撮像面53Aにある画素の1つにかかれば足りるので、必ずしも画素の複数に跨るようになっている必要はない。この実施形態では、磁性マイクロ粒子が、例えば予定された位置に、存在するかどうかを把握できればとりあえず足りるので、円61Bは、撮像面53Aにある画素の複数に跨っている必要はない。
なお、円61Aの大きさを円61Bに近付けるには、L1とL2の差が小さく、また、孔34の直径であるXが小さいことが必要である。L1とL2は上述のように拡大倍率に直結するので、孔34の直径Xをなるべく小さくすることが円61Aの大きさを円61Bに近付けるには肝要である。これが、この実施形態の撮像装置100で、照明に事実上の点光源を用いる理由となる。
【0027】
≪第2実施形態≫
第2実施形態の撮像装置200の概略を、図5に示す。この撮像装置200も、第1実施形態の場合と同様に、微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するためのものである。第2実施形態でも、第1実施形態の場合と同様の基板が撮像対象となるものとする。
【0028】
第2実施形態の撮像装置200が第1実施形態の撮像装置100と異なるのは、事実上、照明部30の構造のみである。
第1実施形態の場合と同様、第2実施形態の撮像装置200は、ベース10と、ポール20とを備えている。これらの構造は、第1実施形態の場合と変わらない。また、第2実施形態の撮像装置200のポール20には、第1実施形態の撮像装置100の場合同様、上から、照明部30、保持部40、撮像部50が設けられている。第2実施形態の撮像装置200の保持部40、撮像部50の構造は、第1実施形態の場合とまったく変わらない。また、第2実施形態の200の照明部30における固定部32の構造も、第1実施形態の場合とまったく変わらない。
【0029】
第2実施形態の照明部30は、板材31を備えているが、その構造が第1実施形態の場合と多少異なる。第1実施形態の板材31には、凹部33の代わりに孔37が開けられており、そこに、その焦点の位置にある点光源からの光を平行光に変えるフレネルレンズ38が嵌っている。
第2実施形態の板材31の上には、第1実施形態の場合と同様直方体状のケース35があり、そして、第2実施形態のケース35の天井部分には、第1実施形態の場合と同様の照明36が配置されている。
第2実施形態のケース35の板材31と照明36との間には、この実施形態では板材31と平行とされた上板材39が配されている。上板材39には、第1実施形態の板材31に設けられていたのと同様の凹部33が設けられ、その中心にピンホールである孔34が開けられている。そして、この孔34の位置は、フレネルレンズ38の焦点の位置に一致している。
照明36から出た光は、ケース35の上板材39よりも下側の空間に、孔34からのみ至るようになっており、また、ケース35の外部の空間に、フレネルレンズ38からのみ至るようになっている。
ピンホールである孔34は事実上、フレネルレンズ38の焦点に存在する点光源として機能するので、フレネルレンズ38を通過した光は平行光となる。
このように、この実施形態における照明部30は、平行光を基板に向けて照射するようになっている。その限りにおいて、照明部30の構成を変更することは可能である。例えば、フレネルレンズ38をコンデンサレンズに変えるが如きである。
【0030】
次に、この撮像装置200の使い方について説明する。
撮像装置200で、基板60を撮像する方法は、基本的に第1実施形態の場合と同様である。撮像装置200で基板60を撮像するには、基板60を板材41の上に載置し、そして、照明部30、保持部40、撮像部50の相互の位置関係を調整する。照明部30、保持部40、撮像部50の相互の位置関係の調整と、基板60の板材41の上への載置の先後が不問である点は、第1実施形態と同様である。
次いで、照明36のスイッチをオンにし、照明36に照明光を照射させる。照明光は、図5に二点鎖線で示したように、孔34を通過し、フレネルレンズ38を経て平行光となる。平行光となった照明光は、基板60を透過して撮像部50の撮像素子53に向かい、撮像素子53の撮像面53Aに捉えられる。
こうして、撮像素子53は、基板60における対象物を撮像する。撮像素子53が撮像を行うことによって生成された画像についてのデータは、第1実施形態の場合と同様、図示せぬケーブルを経て図示せぬディスプレイに送られる。ディスプレイには、撮像素子53が撮像を行って生成された画像が、ほぼリアルタイムで表示されることになる。
【0031】
撮像素子53で撮像される像は、第1実施形態の場合とは異なり、対象物と等倍であり(光学倍率が1であり)、また、第1実施形態の場合のような焦点の合っている部分と合っていない部分の2つに分かれることなく、そのすべての部分で焦点が合った状態となる。
対象物の像は、第1実施形態の場合と同様、この撮像装置で対象物の形状まで把握したいのであれば、撮像面53Aにある画素の複数、できれば3×3の9個以上に跨っているのが好ましい。また、この撮像装置で対象物の有無だけ把握できれば足りるのであれば、撮像面53Aは撮像面53Aにある画素の複数に跨るような大きさである必要はない。
対象物の径と、撮像面53A上の画素の大きさが予め判っているのであれば、これらの条件を導くのは容易である。この実施形態ではそのような条件が満たされる撮像素子53を撮像に用いた。
【符号の説明】
【0032】
10 ベース
20 ポール
30 照明部
31 板材
34 孔
35 ケース
36 照明
38 フレネルレンズ
39 上板材
40 保持部
41 板材
43 開口
50 撮像部
51 板材
53 撮像素子
53A 撮像面
60 基板
61 対象物
100 撮像装置
200 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像装置であって、
前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられる、照明光を照射する光源、及び撮像を行う素子である撮像素子を備えており、
前記光源は点光源であり、
前記撮像素子は、多数の画素が配列されたその撮像面を前記基板に臨ませるようにされている、
撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子は、撮像されることが予定された前記対象物の前記撮像面上の像が前記画素の大きさよりも大きくなるように、前記基板から離して配されるようになっている、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記基板を、前記光源と前記撮像素子の間の所定の位置に位置決めして保持する保持手段を備えている、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像方法であって、
前記基板と、照明光を照射する点光源である光源と、撮像を行う素子であり多数の画素が配列された撮像面を有する撮像素子とを、前記光源と撮像素子とが前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられるように、且つ前記撮像面が前記基板に臨ませられるように配する過程と、
前記光源から前記撮像素子に向けて照明光を照射する過程と、
を含んでいる、撮像方法。
【請求項5】
微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像装置であって、
前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられる、照明光を照射する光源、及び撮像を行う素子である撮像素子を備えており、
前記光源は平行光を照射する平行光源であり、
前記撮像素子は、多数の画素が配列されたその撮像面を前記基板に臨ませるようにされている、
撮像装置。
【請求項6】
前記撮像素子は、撮像されることが予定された前記対象物の前記撮像面上の像が前記画素の大きさよりも大きくなるようなものとなっている、
請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
前記基板を、前記光源と前記撮像素子の間の所定の位置に位置決めして保持する保持手段を備えている、
請求項5記載の撮像装置。
【請求項8】
微小な撮像の対象物がその表面、又は内部に存在する透光性の基板に存する対象物を撮像するための撮像方法であって、
前記基板と、平行光を照射する平行光源である光源と、撮像を行う素子であり多数の画素が配列された撮像面を有する撮像素子とを、前記光源と撮像素子とが前記基板を挟んで互いに反対側に位置させられるように、且つ前記撮像面が前記基板に臨ませられるように配する過程と、
前記光源から前記撮像素子に向けて照明光を照射する過程と、
を含んでいる、撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24640(P2013−24640A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157869(P2011−157869)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(300053553)スカラ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】