説明

撮像装置

【課題】小型化に寄与すると共に、光学フィルタに付着した異物を画像上で目立ちにくくする。
【解決手段】交換レンズ2とセンサ41との間において光軸C0方向における互いに異なる位置に、光透過率が異なるフィルタ109が配置される。フィルタ109の各々は、光軸C0に略垂直な面内で光路上の位置と光路から退避した位置との間で進退移動する。フィルタ109のうち、光透過率が最も高いものがセンサ41から最も遠い位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタを複数備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NDフィルタ等の複数の光学フィルタを備えた撮像装置が知られている(特許文献1)。この装置では、光軸に略垂直な同一の平面内に複数の光学フィルタをターレット式に保持し、そのうち1つを選択して光路中に挿脱可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−91384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、同一平面上に光学フィルタが並列に並ぶので、光軸方向の投影面積が大きくなり、光学フィルタの枚数を増やしてより細かな光量調節を行う場合に製品外形の小型化に不利となる。また、光学フィルタにゴミ等の異物が付着した場合、再生画像においてその異物が目立ってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型化に寄与すると共に、光学フィルタに付着した異物を画像上で目立ちにくくすることができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、撮像素子の前方において光軸方向における互いに異なる位置に配設され、互いに光透過率が異なる複数の光学フィルタと、前記光学フィルタの各々を、光軸に略垂直な面内で光路上の位置と光路から退避した位置との間で進退移動させる駆動手段とを有し、前記複数の光学フィルタのうち、光透過率が最も高いものを前記撮像素子から最も遠い位置に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型化に寄与すると共に、光学フィルタに付着した異物を画像上で目立ちにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撮像装置の交換レンズを分離した状態を示す斜視図、本体の前方部分の分解斜視図である。
【図2】センサユニットの斜視図、縦断面図である。
【図3】NDユニットをそれぞれ撮影者側、撮像レンズ側から見た斜視図である。
【図4】NDユニットの内部構成の正面図、側面図、背面図である。
【図5】NDユニットの内部構成、揺動レバー、ギヤの斜視図である。
【図6】フィルタがそれぞれ待機位置、使用位置にある状態を示す図である。
【図7】NDユニットの内部構成の斜視図、ギヤの斜視図、センサの撮像面と4枚のフィルタの各々が使用位置にあるときの光軸方向の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係る撮像装置の交換レンズを分離した状態を示す斜視図である。
【0011】
本実施の形態では、撮像装置としてレンズ交換方式のカメラを例示する。撮像装置本体1(以下「本体1」と記す)の前方部分70には、レンズマウント部3が備えられ、撮像レンズである交換レンズ2が着脱可能に取り付けることが可能である。本体1の背面部の上部にはファインダ4が備えられる。本体1の側面に配置されているボタン5、ボタン6は、後述する光学フィルタを切り替えるための切り替え操作ボタンである。レンズマウント部3の奥側において、カバーガラス71がホルダ72に取り付けられている。
【0012】
図1(b)は、本体1の前方部分70の分解斜視図である。前方部分70において、被写体側からカバーガラス71、NDユニット100、センサユニット40の順番に並んでいる。
【0013】
図2(a)、(b)は、センサユニット40の斜視図、縦断面図である。センサユニット40において、撮像素子であるセンサ41が基板42に実装されている。センサ41は、図2(b)の左側に撮像面47を有する。基板42のうちセンサ41の裏側に対応する部分が四角形に繰り抜かれて穴となっている。センサ41側に絞り曲げてある取り付け板45とセンサ41の裏面41aが接着剤46で接着固定されている。
【0014】
図3(a)、(b)は、NDユニット100をそれぞれ撮影者側、撮像レンズ側から見た斜視図である。NDユニット100は、撮像素子であるセンサ41の前方に配置される。
【0015】
撮影者側を覆う金属製のベースプレート201とレンズ側を覆う樹脂製のモールドカバー202とがNDユニット100の外装となっている。ベースプレート201、モールドカバー202にはそれぞれ、交換レンズ2の光線通過用の開口203、204が形成されている。NDユニット100はさらに、本体1のシャーシにネジ止め固定されるための4か所の受け部205、206、207、208を備えている。
【0016】
次に、図4〜図7で、NDユニット100の内部構成及び動作を説明する。
【0017】
図4(a)、(b)、(c)は、NDユニット100の内部構成の正面図(被写体側からみた図)、側面図、背面図である。図5(a)は、NDユニット100の内部構成の斜視図である。
【0018】
NDユニット100の内部には、光軸C0(図1(a)、図6、図7(c)参照)の方向に重なって配置される4つのフィルタユニット108(108a〜108d)が設けられる(図7(a)参照)。4つのフィルタユニット108(108a〜108d)の構成や動作は基本的に同じである。図4〜図6では、1つのフィルタユニット108aについて説明する。フィルタユニット108aには、図示しない締結部材により光学フィルタであるフィルタ109aが保持されている(図4(a)、(c)、図5(a)参照)。
【0019】
駆動手段であるモータ101にギヤ102が圧入されており(図4(a)、(b))、モータ101の回転がギヤ103及びギヤ103bを介してギヤ104に伝達される。ギヤ104には揺動レバー105が係合する。
【0020】
図5(b)、(c)は、それぞれ揺動レバー105、ギヤ104の斜視図である。揺動レバー105の下端面はカム摺動面1051となっている(図4(c)、図5(b)参照)。
【0021】
図5(c)に示すように、ギヤ104の中心軸には放射状に90度の位相差でカムリブ104a、104b、104c、104dが延出形成されている。これらカムリブ104a、104b、104c、104dは、順番に光軸C0の方向に所定量Zずつずれた位置に配置されている。図4(c)、図5(a)では、カムリブ104aがカム摺動面1051に当接した状態を表している。
【0022】
図6を用いてフィルタユニット108aの動きの原理を説明する。図6(a)、(b)は、フィルタ109aがそれぞれ待機位置、使用位置にある状態を示す図である。
【0023】
図6に示すように、軸106、軸107がベースプレート201(図3(a)参照)にカシメにより固定されている。揺動レバー105の一端は軸106に回動自在に軸支されており、揺動レバー105の他端は連結レバー112の一端に対して軸111を中心に回動自在に連結されている。さらに、連結レバー112の他端はフィルタユニット108aの一端に対して軸110を中心に回動自在に連結されている。フィルタユニット108aは軸107に回動自在に軸支されている。軸110は軸107を挟んでフィルタ109aと反対側に位置している。
【0024】
また、軸110の近傍で連結レバー112にバネ113の一端が取り付けられ、バネ113の他端がベースプレート201に固定されている。バネ113はフィルタユニット108aを上方(図6(a)の反時計方向)に付勢するよう、他端を下側に向けて固定されている。
【0025】
フィルタユニット108aは、バネ113により付勢され、ストッパーシャフト300に当接してその位置にて保持される。この位置がフィルタユニット108aの「待機位置」である。待機位置においては光線範囲Aにフィルタユニット108aが干渉しない位置で保持される。光線範囲Aは有効光線が透過する光路に相当するものである。モータ101の駆動力により、フィルタ109aは、光軸C0に略垂直な面内で光路上の位置(使用位置;図6(b))と光路から退避した位置(待機位置;図6(a))との間で進退移動する。
【0026】
モータ101により駆動されてギヤ104が順回転(図6の反時計回転)もしくは逆回転すると、いずれかのカムリブ104a〜104dのうち1つがカム摺動面1051を摺動し、軸106を中心として揺動レバー105が矢印F0の方向に回動する。それに連動して、連結レバー112が図6(b)の矢印F1の方向に動き、その結果、フィルタユニット108aには、軸107を中心とした矢印F2、矢印F3の方向への動きを生じる。
【0027】
例えば、図6(a)の待機位置からギヤ104が順回転すると、カムリブ104aがカム摺動面1051を摺動することにより、揺動レバー105は図6(a)の左端が上昇する方向に回動する。すると、フィルタユニット108aは、軸107を中心としてその先端(フィルタ109が配設される側)が下がる方向(図6(a)の時計方向)に回動する。そして、フィルタ109aが使用位置に遷移する(図6(b))。使用位置においては、フィルタ109aが完全に光線範囲Aを覆う位置で保持される。
【0028】
図7(a)は、NDユニット100の内部構成の斜視図であり、4枚すべてのフィルタユニット108を図示している。
【0029】
フィルタユニット108a〜108dの各々に固定された光学フィルタ(フィルタ109a〜109d)は、光透過率(透明度)が互いに異なっている。各フィルタユニット108はすべて同形状であり、軸107に挿通されて、光軸C0の方向に所定量Zの間隔で積層状態に並んでいる。すなわち、隣接するフィルタ109a〜109dの光軸C0の方向のずれ量は、対応するカムリブ104a〜104dのずれ量(所定量Z)と同じである。
【0030】
フィルタユニット108b、108c、108dには、フィルタユニット108aと同様に、揺動レバー105、連結レバー112、バネ113、軸110、軸111が連結されている。そして、4つのフィルタユニット108が4枚の揺動レバー105に挿通されて、揺動レバー105の各々が軸106を中心に回動可能に固定されている。
【0031】
カムリブ104a〜104dは、フィルタユニット108a〜108dの各々に対応する揺動レバー105に摺動可能なように位置が対応している。また、カムリブ104a、104b、104c、104dが90度の位相差を持っているので、ギヤ104が90度回転するごとに摺動関係となるカムリブ104a〜104dと揺動レバー105との組が切り替わる。これにより、使用位置に入るフィルタユニット108が一枚ずつ入れ替わる。
【0032】
図7(b)は、ギヤ104の斜視図である。ギヤ104は同心のリブ104fを有し、リブ104fの1カ所にスリット104eが形成される。また、4個のフォトインタラプタ600〜603が、90度の位相差でリブ104fをまたぐように配置されている。
【0033】
ギヤ104の回転位置はフォトインタラプタ600〜603で検出される。すなわち、4枚のフィルタ109のうちいずれかが使用位置に位置したときに、スリット104eがフォトインタラプタ600〜603のいずれかに検出される位置関係に配置してある。ギヤ104が90°回転する度に、いずれかのフォトインタラプタ600〜603によりスリット104eが検出され、モータ101が停止する。
【0034】
図7(c)は、センサ41の撮像面47と4枚のフィルタ109a〜109dの各々が使用位置にあるときの光軸C0方向の位置関係を示す図である。
【0035】
仮に、フィルタ109a、109b、109c、109dが同じ光透過率のフィルタであるとし、ゴミ等の同じ異物がそれぞれの表面に付着したとする。その場合、記録された画像において最も異物の輪郭がはっきりと見えるのは、撮像面47に近いフィルタ109aに付着した異物である。撮像面47から一番遠いフィルタ109dは、ピントが合う面である撮像面47から離れているので輪郭がぼけて目立たなくなるのである。
【0036】
一方、一般に、付着する異物自体の光透過率は低いことが考えられる。そのため、光透過率の高いフィルタと低いフィルタとの比較では、周囲とのコントラストを考えると光透過率の高いフィルタに異物が付着した場合の方がより再生画像上、目立ちやすい。
【0037】
そこで、本実施の形態では、光軸C0に沿って撮像面47から遠い方から順番に、透明度の高い光学フィルタを配置した。つまり、光透過率の高い方から順にフィルタ109d、109c、109b、109aと設定し、光透過率が高いものほどセンサ41の撮像面47から遠い位置となるよう順番に配置した。フィルタ109dは透明ガラスであり、フィルタ109d以外の3つのフィルタ109a〜109cはNDフィルタ(減光フィルタ)である。
【0038】
モータ101にはステッピングモータを使用している。モータ101の起動には、ボタン5、ボタン6を用いる。例えば、ボタン5を押すと透明度の低いフィルタ109に切り替わり、ボタン6を押すと透明度の高いフィルタ109に切り替わる。
【0039】
本実施の形態によれば、光軸方向における互いに異なる位置に配設したフィルタ109a〜109dが、光路上の位置と光路から退避した位置との間で進退移動する。これにより、NDユニット100の外形を製品に対して小さい投影面積で構成することが可能となり、撮像装置の小型化に寄与する。また、4つのフィルタ109のうち、光透過率が最も高いフィルタ109dをセンサ41から最も遠い位置に配置したので、フィルタ109に付着した異物を画像上で目立ちにくくすることができる。特に、センサ41から遠い方から順に光透過率が高いフィルタ109を配置したので、いずれのフィルタ109に付着した異物に対しても、輪郭を効果的にぼけさせ、目立たなくすることができる。
【0040】
なお、撮像装置としては光学フィルタを複数備えるものであればよく、ビデオカメラ、デジタルカメラ等が好適である。光学フィルタについては、光透過率が異なるものを複数備えればよく、数や種類は問わない。また、レンズ交換方式の撮像装置でなく、固定レンズ方式の撮像装置でも構わない。
【0041】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
2 交換レンズ
41 センサ
101 モータ
109 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の前方において光軸方向における互いに異なる位置に配設され、互いに光透過率が異なる複数の光学フィルタと、
前記光学フィルタの各々を、光軸に略垂直な面内で光路上の位置と光路から退避した位置との間で進退移動させる駆動手段とを有し、
前記複数の光学フィルタのうち、光透過率が最も高いものを前記撮像素子から最も遠い位置に配置したことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記複数の光学フィルタは、光透過率が高いものほど前記撮像素子から遠い位置に配置したことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数の光学フィルタのうち前記撮像素子から最も遠い位置に配置されたものは透明ガラスであり、
前記複数の光学フィルタのうち前記撮像素子から最も遠い位置に配置されたもの以外はNDフィルタであることを特徴とする請求項1または2記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92664(P2013−92664A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234917(P2011−234917)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】